(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記窪んだ半導体層は前記トンネル接合層に隣接して設けられ、前記第2半導体層及び前記第3半導体層は、前記トンネル接合層及び前記窪んだ半導体層によって前記第2半導体層及び前記第3半導体層の全体に渡って互いに分離されている請求項1乃至3のいずれか1に記載の垂直共振器型窒化物半導体発光素子。
前記活性層の発光波長をλ、前記窪んだ半導体層及び前記活性層間の半導体層の平均屈折率をnとしたとき、前記窪んだ半導体層及び前記活性層間の層厚方向の距離が、λ/2nのk倍(kは自然数)である請求項1乃至4のいずれか1に記載の垂直共振器型窒化物半導体発光素子。
前記窒化物半導体DBR層は、互いに組成の異なる第1組成及び第2組成の窒化物半導体層が交互に積層されて構成され、少なくとも1の前記第1組成の窒化物半導体層が前記窪んだ半導体層として形成されている請求項1乃至5のいずれか1に記載の垂直共振器型窒化物半導体発光素子。
前記第2反射鏡は、互いに組成の異なる第3組成及び第4組成の窒化物半導体層が交互に積層されて構成された窒化物半導体多層膜反射鏡であり、少なくとも1の前記第3組成の窒化物半導体層が前記窪んだ半導体層である請求項1乃至6のいずれか1に記載の垂直共振器型窒化物半導体発光素子。
連続した前記第1組成及び前記第2組成の窒化物半導体層、又は連続した前記第3組成及び前記第4組成の窒化物半導体層が前記窪んだ半導体層である請求項6又は7に記載の垂直共振器型窒化物半導体発光素子。
前記窪んだ半導体層は、積層方向に上層又は下層との界面で高濃度となる不純物濃度分布を有するように不純物がドープされている請求項1乃至8のいずれか1に記載の垂直共振器型窒化物半導体発光素子。
前記第1反射鏡、前記第2反射鏡、前記第1半導体層、前記活性層、前記第2半導体層及び前記第3半導体層からなる半導体積層体は、積層方向の軸を中心軸とする回転対称形状を有し、前記窪んだ半導体層は前記半導体積層体と同軸の回転対称形状を有する請求項1乃至9のいずれか1に記載の垂直共振器型窒化物半導体発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例1】
【0010】
本実施例に係る半導体発光素子は、垂直共振器型発光素子であり、面発光レーザ(VCSEL)10と称する。面発光レーザ10について、
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1は、面発光レーザ10の出射面に対して垂直な積層方向の中心軸CAを含む断面を示す断面図である。
図2は、面発光レーザ10を模式的に示す上面図である。図の明確さのため、
図2においては、上面図の一部の構成要素にハッチングを施して示す。
[面発光レーザ10の構成]
図1に示すように、面発光レーザ10は、第1半導体層12、活性層15、第2半導体層21、トンネル接合層22、第3半導体層23からなる半導体構造層27を有する。また、面発光レーザ10は、半導体構造層27を介して互いに対向して配置された第1反射鏡11及び第2反射鏡24を有する。第1反射鏡11、第1半導体層12、活性層15、第2半導体層21、トンネル接合層22、第3半導体層23がこの順に、下地層16上に形成されている。下地層16はアンドープGaN層であり、GaNからなる基板17上に形成されている。
【0011】
第3半導体層23上には、第3半導体層23に電気的に接続された上部n電極25が設けられている。第1半導体層12が有するn型半導体層13A上には、n型半導体層13Aに電気的に接続された下部n電極26が設けられている。
図1は、
図2の上面図に示すA−A線に沿った断面図である。
図2の上面図における上部n電極25の形成領域に、ハッチングを施している。
【0012】
第1反射鏡11は、互いに異なる組成及び活性層15からの出射光に対して互いに異なる屈折率を有する半導体層が交互に複数層積層された多層膜反射鏡である。第1反射鏡11を構成する第1組成の半導体層A1及び半導体層A1とは異なる屈折率を有する第2組成の半導体層B1の層厚は、面発光レーザ10の発振波長λの1/4を各層の屈折率nで除した値(λ/4n)となるように設計され、第1反射鏡11は、高反射のミラーとして形成されている。
【0013】
つまり、第1反射鏡11は、半導体材料からなる分布ブラッグ反射器(DBR:Distributed Bragg Reflector)、すなわち半導体DBRである。本実施例において、第1反射鏡11は、AlInN層A1及びGaN層B1が交互に積層されて形成されている。AlInN層A1及びGaN層B1が交互に積層される積層数は、所望の反射率に応じて設定することができる。例えばAlInN層A1と、GaN層B1とを交互に積層して40.5ペア(すなわち、AlInN層A1が41層、GaN層B1が40層)とすることができる。なお、本実施例において、AlInN層A1及びGaN層B1には不純物はドープされていない。
【0014】
n型半導体層(第1半導体層)13は、例えばSiをドープしたn−GaNである。
活性層15は多重量子井戸層(MQW:Multiple Quantum Well)であり、例えば障壁層としてのGaN層と井戸層としてのGaInN層から構成されている。p型半導体層(第2半導体層)21はp型半導体層21A及びp型半導体層21Bからなる。p型半導体層21Aは例えばMgドープAlGaN電子障壁層であり、p型半導体層21Bは例えばMgドープしたp−GaN層からなる。
【0015】
なお、第1半導体層としてのn型半導体層13は、少なくとも1の半導体層から構成されていればよい。また、第2半導体層としてのp型半導体層21は、少なくとも1の半導体層から構成されていれば良い。例えばp型半導体層21はMgドープしたp−GaN層のみから構成されていても良い。なお、本実施例において、n型半導体層13が2層に分かれて形成されている場合において、一方をn型半導体層13A、他方をn型半導体層13Bと称する。
【0016】
トンネル接合層22は、高濃度p型半導体層22A及び高濃度n型半導体層22Bがこの順にp型半導体層21上に形成されている。高濃度p型半導体層22Aは、例えば高濃度のMgがドープされたGaInN層である。高濃度p型半導体層22Aの不純物としてのMg濃度は、例えば5×10
19cm
-3〜1×10
21cm
-3程度、より詳細には、1×10
20cm
-3〜3×10
20cm
-3程度が好ましい。
【0017】
高濃度n型半導体層22Bは、例えば高濃度のSiがドープされたGaN層である。高濃度n型半導体層22Bの不純物としてのSi濃度は、例えば1×10
20cm
-3〜1×10
21cm
-3程度、より詳細には、3×10
20cm
-3〜6×10
20cm
-3程度が好ましい。
【0018】
トンネル接合層22上に、n型半導体層(第3半導体層)23が形成されている。すなわち、第3半導体層(n型半導体層)23は、第2半導体層(p型半導体層)21に対して、反対の導電型を有している。n型半導体層23は、トンネル接合層22上に形成されており、第2半導体層21及び第3半導体層23は、トンネル接合層22によって、第2半導体層21及び第3半導体層23の全体に渡って互いに分離されて設けられている。
【0019】
図3(a)は、
図1の破線に囲まれた部分Rを示す部分拡大図である。本実施例においては、
図3(a)に示すように、第2半導体層21、トンネル接合層22及び第3半導体層23は、共通の側壁(本実施例において、円柱形状の側壁)を有している場合について説明するが、これに限らない。
【0020】
例えば、
図3(b)に示すように、第3半導体層23が、トンネル接合層22及び第2半導体層21に対して窪んで形成されていてもよい。すなわち、第3半導体層23は、トンネル接合層22及び第2半導体層21の共通の側壁に対して、窪んだ側壁を有していてもよい。また、
図3(c)に示すように、第3半導体層23及びトンネル接合層22の共通の側壁が、第2半導体層21の側壁に対して、窪んだ側壁を有していてもよい。
【0021】
つまり、共通の側壁を有しているか否かに関わらず、第2半導体層21及び第3半導体層23が、トンネル接合層22によって、第2半導体層21及び第3半導体層23の全体に渡って互いに分離されて設けられていればよい。なお、第3半導体層としてのn型半導体層23は、少なくとも1の半導体層から構成されていればよい。本実施例において、n型半導体層23は、Siがドープされたn型GaN層として説明する。
【0022】
n型半導体層23上には、第2反射鏡24が配されている。本実施例において、第2反射鏡24は誘電体層A2と、誘電体層A2とは異なる屈折率を有する誘電体層B2とが交互に複数層積層されて構成されている。本実施例において第2反射鏡24は誘電体材料からなる分布ブラッグ反射器、すなわち誘電体DBRであり、SiO
2層A2とNb
2O
5層B2とが交互に積層されている。第2反射鏡24は、他にAl
2O
3層とNb
2O
5、TiO
2とSiO
2等の透光性絶縁体の組み合わせにより形成されていてもよい。
【0023】
図4(a)は、
図1に示す第1半導体層12の破線で囲まれた部分R2を拡大して示す部分拡大図である。第1半導体層12は、n型半導体層13A及びn型半導体層13Bから構成されている。本実施例において、第1半導体層12は、n型半導体層13の側壁よりも内側に窪んだ側壁RSを有する半導体層14Rを有している。
【0024】
すなわち、窪んだ半導体層14Rは、半導体層14Rに隣接し、半導体層14Rを挟む上層のn型半導体層13B及び下層のn型半導体層13Aの側壁よりも内側に窪んだ半導体層として形成されている。そして、側壁RSの外側には間隙G14が形成されている。なお、
図4(b)に示すように、半導体層14Rの上層は、活性層15であってもよい。また、本実施例において、内側に窪んだ半導体層14Rは、Al(アルミニウム)を含んでいる。
【0025】
当該内側に窪んだ半導体層14Rは、例えば、n型半導体層13と共通の側壁を有する半導体層(半導体層14と称する)に対するウェットエッチングにより形成できる。n型半導体層13及び半導体構造層27に対するエッチングレートよりも半導体層14に対するエッチングレートが高く、選択比の大きいエッチング液を用いることで、n型半導体層13A及びn型半導体層13Bを含む半導体構造層27よりも内側に窪んだ側壁RSが形成され、内側に窪んだ半導体層14Rを形成することができる。
【0026】
上記したような選択比の大きいエッチング液による選択エッチングによって、窪んだ半導体層14Rを形成できる半導体層として、例えば、Al(アルミニウム)を組成に含む窒化物半導体層が挙げられる。例えば、Al
xIn
yGa
(1-x-y)N系半導体層(0<x<1、0≦y<1)を用いて組成比を適宜調整すれば、組成にAlを含まないGaN系半導体層に対するエッチング選択性を得ることができる。特にはGaを含まないAl
xIn
yN(x+y=1)が好ましく、さらには0.15≦x≦0.215であることが好ましい。また、半導体層14よりも選択比の小さい半導体層として、組成にAlを含まない窒化物半導体層、例えば、In
yGa
(1-y)N系半導体層(0≦y<1)が挙げられる。
【0027】
[面発光レーザ10の電流狭窄構造]
次に、面発光レーザ10の電流狭窄構造について説明する。トンネル接合層22は、トンネルダイオードの特性を有するトンネル接合を有している。トンネル接合では、一般にダイオードが示す整流特性と異なり、n層からp層に向かって低い抵抗で電流が流れ得る。従って、トンネル接合層22において、高濃度n型半導体層22Bから高濃度p型半導体層22Aに向かって電流を流すことができる。すなわち、上部n電極25から下部n電極26に電流を流すことができる。
【0028】
上部n電極25からの電流は、n型半導体層23を横方向に広がって流れ、トンネル接合層22を低い抵抗で通過し、p型半導体層21に流れる。p型半導体層21、活性層15、n型半導体層12を通過した電流は、窪んだ半導体層14Rによって電流狭窄される。間隙G14には半導体層が存在せず、例えば空気が存在する。従って、電流は間隙G14には流れずに、窪んだ半導体層14Rの領域に流れ、電流は狭窄される。
【0029】
すなわち、面発光レーザ10に流れる電流は、n型半導体層23及びトンネル接合層22を横方向に広がって低抵抗で流れ、窪んだ半導体層14Rによって効率良く電流狭窄される。
【0030】
一方、トンネル接合層22は、電流狭窄構造ではない。例えば、トンネル接合層のドライエッチングによる電流狭窄層、及び当該ドライエッチングされた表面に半導体層を成長させた埋め込み層よる電流狭窄構造において、ドライエッチング層と埋め込み層の界面(特に側壁)に欠陥が生じ易い。そして、欠陥の生じた当該界面付近に電流が流れ易くなり、リークパスとなる場合がある。しかし、本実施例のトンネル接合層22においては、下層である第2半導体層21の表面の全体に渡ってトンネル接合層22が形成されている。また、トンネル接合層22上の全面に渡って形成された上層としての第3半導体層23を有しており、リークパスが生じ得るような構成を有していない。
【0031】
また、上記した構成とは別の電流狭窄構造として、透明電極及び絶縁層を用いた電流狭窄構造が挙げられる。透明電極及び絶縁層を用いた電流狭窄構造において、例えばITOなどの透明電極はp型半導体層に接触して設けられている。当該透明電極は、p型半導体層との間の接触抵抗が高いこと、透明電極による光吸収が大きいことなどが、面発光レーザの特性の劣化に繋がる場合がある。
【0032】
しかし、面発光レーザ10においては、トンネル接合層22及び窪んだ半導体層14Rによる電流狭窄構造を有しており、透明電極及び絶縁層による電流狭窄構造は有していない。p型半導体層21には、トンネル接合層22からの電流が流れる。従って、透明電極による光吸収や透明電極とp型半導体層21との間の接触抵抗は生じない。従って、面発光レーザ10は、リーク電流が少なく低抵抗の電流狭窄構造及び電流経路を有している。また、面発光レーザ10は、レーザ光の経路における光の吸収も少なく、高出力で発振特性に優れている。
【0033】
加えて、窪んだ半導体層14Rは横モード制御の機能も有している。活性層15から放出される光は、第1反射鏡11と第2反射鏡24との間において、基板17に対して垂直方向に反射を繰り返して共振状態に至り、レーザ発振を行う。レーザ光の一部は第2反射鏡24あるいは第1反射鏡11を透過して外部に取り出される。従って、面発光レーザ10は、基板17に対して垂直な方向にレーザ光を出射する。
【0034】
当該共振状態は、上記したように、第1反射鏡11及び第2反射鏡24が分布ブラッグ反射鏡を形成していることによって成立している。活性層15から放出される放射光の波長に合わせて、当該放射光を反射するように第1反射鏡11及び第2反射鏡24を構成する各層の層厚が設計されているため、各層の各境界面からの反射波の位相が揃い、高い反射率が得られることによって共振状態が得られる。
【0035】
一方で、
図4(a)に示すように、n型半導体層12において、活性層15から放出される光の経路内に、内側に窪んだ半導体層14R及び間隙G14が存在する。間隙G14は、窪んだ半導体層14Rよりも低い屈折率を有している。従って、レーザ光のフィールドは、窪んだ半導体層14Rに閉じ込められ、横モード制御がなされる。
【0036】
横モード制御された出射光は、効率良くレンズやファイバへ結合することができる。また、電流や温度などの駆動条件の変化に対して安定な横モードを維持することができる。なお、間隙14は、空隙(空気が存在)あるいは半導体層14Rよりも低屈折率の材料などが充填されていてもよい。
【0037】
また、
図4(a)に示すように、窪んだn型半導体層14Rと活性層15との層厚方向の距離Dをとする。このとき、窪んだn型半導体層14Rは、距離Dがλ/2n
avのk倍(kは自然数)となる位置に形成されていることが望ましい。λは面発光レーザ10の発振波長、n
avは活性層15と窪んだn型半導体層14Rとの間に形成された半導体層の平均屈折率である。
【0038】
距離Dは、活性層15及び窪んだn型半導体層14Rの層厚方向における中心位置間の距離(中心間距離)であることが好ましい。活性層15からの放射光によって発生した定在波の腹を窪んだn型半導体層14Rに整合させることで、高い横モード制御効果を得ることができる。
【0039】
以上、説明したように、面発光レーザ10は、窪んだ半導体層14Rに電流が集中して流れる電流狭窄構造を有しており、リーク電流が少ない構造を有している。また、トンネル接合層22によって低抵抗の電流経路が確保されている。従って、安定性の高い電流経路を確保することができ、長寿命で信頼性の高い面発光レーザ10を提供することができる。また、横モード制御性に優れ、効率良くレンズやファイバへ結合することができ、電流や温度などの駆動条件の変化に対して安定な横モードを維持することができる。従って、発振特性、安定性、信頼性に優れた面発光レーザ10を提供することができる。
【0040】
なお、窪んだ半導体層14Rがn型半導体層12に設けられている例について説明したが、これに限らない。p型半導体層21又はn型半導体層23に設けられていても良い。つまり、第1半導体層(n型半導体層)12、第2半導体層(p型半導体層)21、第3半導体層(n型半導体層)23のうち少なくとも1に設けられていればよい。なお、窪んだ半導体層14Rは、活性層15からの積層方向の距離D(
図4(a)参照)が小さい位置に設けることが好ましい。
【0041】
また、窪んだn型半導体層14Rは、積層方向において不純物濃度が均一ではなく、不純物濃度分布を有するように形成されていることが好ましい。例えば、窪んだn型半導体層14Rは、窪んだn型半導体層14Rの上層又は下層との界面で高濃度となるように不純物がドープされていることが好ましい。より詳細には、窪んだn型半導体層14Rは、窪んだn型半導体層14Rの上層との界面又は下層との界面において、不純物濃度が高濃度となるようにドープされていることが好ましい。これにより、界面の電気抵抗を低減することができる。
【0042】
本実施例においては、第1反射鏡11、半導体構造層27、第2反射鏡24からなる半導体積層体LYは、積層方向すなわち半導体積層体LYの半導体層に垂直な方向の軸を中心軸CAとした回転対称形状を有している。回転対称形状としては、例えば楕円柱を含む円柱、角柱、正多角柱などが挙げられる。本実施例において、窪んだ半導体層14Rも半導体積層体LYと同軸の回転対称形状を有している。具体的には、半導体積層体LY及び窪んだ半導体層14Rは同軸の円柱形状を有している。
【0043】
なお、半導体積層体LYは、必ずしも回転対称形状でなくともよい。また、窪んだ半導体層14Rは、中心軸CAに関して回転対称形状を有することが好ましいが、これに限らない。窪んだ半導体層14Rは、所望のビームプロファイル又は横モード制御に応じた形状を有していれば良い。
【0044】
以上、詳細に説明したように、面発光レーザ10によれば、リーク電流が少なく低抵抗の電流狭窄構造及び電流経路を有していることで、信頼性が高く、長寿命の面発光レーザを提供することができる。また、光の損失が少なく、横モード制御性に優れ、発振特性、安定性、信頼性に優れた面発光レーザを提供することができる。
【実施例2】
【0045】
図5(a)及び
図5(b)を参照し、実施例2に係る面発光レーザ30について説明する。
図5(a)は、面発光レーザ30の出射面に対して垂直な積層方向の中心軸CAを含む断面を示す断面図である。面発光レーザ30において、実施例1の面発光レーザ10と実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
[面発光レーザ30の構成]
図5(a)に示すように、面発光レーザ30は、第1半導体層32、活性層15、第2半導体層21、トンネル接合層22、第3半導体層23からなる半導体構造層47を有する。また、面発光レーザ30は、半導体構造層47を介して互いに対向して配置された第1反射鏡31及び第2反射鏡24を有する。
【0046】
第1反射鏡31、第1半導体層32、活性層15、第2半導体層21、トンネル接合層22、第3半導体層23がこの順に、n型下地層36上に形成されている。n型下地層36はSiがドープされたn−GaN層であり、n−GaNからなるn型基板37上に形成されている。第3半導体層23上には、第3半導体層23に電気的に接続された上部n電極25が設けられている。また、n型下地層36に電気的に接続された下部n電極46が設けられている。
【0047】
第1反射鏡31は、実施例1の第1反射鏡11と同様に、半導体DBRであり、第1組成の半導体層A3及び半導体層A3とは異なる屈折率を有する第2組成の半導体層B3から構成されている。第1反射鏡31は、第1組成の半導体層A3及び第2組成の半導体層B3にそれぞれ不純物がドープされてn型半導体層となっている点において、実施例1の第1反射鏡11と異なっている。本実施例において、第1組成の半導体層A3は、Siがドープされたn−AlInNであり、第2組成の半導体層B3は、Siがドープされたn−GaNである。つまり、第1反射鏡31は、n−AlInN層A3及びn−GaN層B3が交互に複数層積層されて形成されている。
【0048】
図5(b)は、
図5(a)中の破線で囲まれた部分R3を拡大して示す部分拡大断面図である。上記したように、第1反射鏡31は、第1組成の半導体層A3及び第2組成の半導体層B3が交互に複数層積層されて形成されている。このうち活性層15に近い方から少なくとも1層の半導体層A3は、半導体層A3を挟む半導体層B1の側壁よりも内側に窪んだ側壁RS2を有している。以下においては、側壁RS2を有する半導体層A3を半導体層A3Rとして説明する。すなわち、半導体層A3Rは、半導体層A3Rを挟む半導体層B3、すなわち半導体層A3Rに隣接し、半導体層A3Rを挟む上層の半導体層B3及び下層の半導体層B3の側壁よりも内側に窪んだ半導体層として形成されている。そして、側壁RS2の外側には、上層の半導体層B3及び下層の半導体層B3に挟まれた間隙G31が形成されている。
【0049】
当該内側に窪んだ半導体層A3Rは、例えばウェットエッチングにより形成できる。半導体層B3及び半導体構造層47に対するエッチングレートよりも半導体層A3に対するエッチングレートが高く、選択比の大きいエッチング液を用いることで、半導体層B3及び半導体構造層47よりも内側に窪んだ側壁RS2が形成され、内側に窪んだ半導体層A3Rを形成することができる。
【0050】
[面発光レーザ30の電流狭窄構造]
上記したように、トンネル接合層22において、高濃度n型半導体層22Bから高濃度p型半導体層22Aに向かって電流を流すことができる。上部n電極25からの電流は、n型半導体層23を横方向に広がって流れ、トンネル接合層22を低い抵抗で通過し、p型半導体層21に流れる。本実施例において、p型半導体層21からの電流は、活性層15及び第1半導体層32を通り、第1反射鏡31、n型下地層36、及びn型基板37を通って下部n電極46に流れる。従って、上部n電極25から下部n電極46に向かって電流を流すことができる。
【0051】
n型半導体層32を通過した電流は、第1反射鏡31に流れ、窪んだ半導体層A3Rによって電流狭窄される。すなわち、電流は第1反射鏡31が有する間隙G31には流れず、窪んだ半導体層A3Rの領域に集中して流れる。つまり、面発光レーザ30は、n型半導体層23及びトンネル接合層22を横方向に広がって低抵抗で流れる電流が、窪んだ半導体層A3Rによって狭窄される電流狭窄構造を有している。
【0052】
一方、上述したように、トンネル接合層22は、電流狭窄構造ではなく、リークパスが生じ得るような構成を有していない。また、面発光レーザ30は、p型半導体層との間の接触抵抗が高く、光吸収が大きい透明電極を用いた電流狭窄構造なども有していない。従って、本実施例の電流狭窄構造は、リーク電流が少なく、低抵抗の電流狭窄構造である。従って、面発光レーザ30によって、長寿命で、高出力の信頼性が高い面発光レーザ30を提供することができる。
【0053】
加えて、窪んだ半導体層A3Rは横モード制御の機能も有している。面発光レーザ30は、n型基板37に対して垂直な方向にレーザ光を出射する。また、上述したように、第1反射鏡31及び第2反射鏡24を構成する各層の層厚は、活性層15から放出される放射光の波長に合わせて、当該放射光を反射するように設計されており、各層の各境界面からの反射波の位相が揃い、高い反射率が得られることによって共振状態が得られる。
【0054】
一方、
図5(b)に示すように、第1反射鏡31において、活性層15から放出される光の経路内に、内側に窪んだ半導体層A3R及び間隙G31が存在する。半導体層B3同士が間隙G31によって隔てられている領域においては、半導体層B3の各界面からの反射波の位相が揃わず、高い反射率が得られないため、共振状態は得られない。従って、活性層15から放出された光は、窪んだ半導体層A3Rと窪んだ半導体層A3Rに隣接する半導体層B3とが構成する領域CRで反射する。
【0055】
また、本実施例において、窪んだ半導体層A3Rと半導体層A3Rに隣接する半導体層B3(窪んだ半導体層A3Rが2層以上設けられた場合においては、半導体層A3Rに挟まれた半導体層B3)とが構成する領域CRは、その外側の領域(間隙G31を含む領域)よりも屈折率が高い。従って、レーザ光は、当該領域CRに導波される。
【0056】
換言すれば、当該領域CRは光閉じ込め領域又は屈折率導波領域として機能する。従って、本実施例において、レーザ光は、窪んだ半導体層A3Rによって横モードが制御されて出射される。なお、間隙31は、空隙(空気が存在)あるいは半導体層A3よりも低屈折率の材料などが充填されていてもよい。
【0057】
以上、説明したように、面発光レーザ30は、トンネル接合層22と内側に窪んだ半導体層A3Rが形成されていることで、リーク電流が少なく、低抵抗の電流狭窄構造を有している。また、窪んだ半導体層A3Rにより、レーザ光の横モード制御がなされる。従って、長寿命で高出力の信頼性が高い面発光レーザ30を提供することができる。また、レンズやファイバへの結合効率が良く、発振特性に優れた面発光レーザ30を提供することができる。
【0058】
なお、本実施例において、窪んだ半導体層A3Rが1層設けられた例について説明したが、2層以上設けても良い。また、第1反射鏡31を形成する半導体層A3のうち、窪んだ半導体層A3Rを形成しない層については、選択的エッチングにより窪んだ半導体層A3Rを形成する際に、半導体層A3の側面をレジストなどで保護して形成すれば良い。
【0059】
また、窪んだ半導体層A3Rは、積層方向において不純物濃度が均一ではなく、不純物濃度分布を有するように形成されていることが好ましい。例えば、窪んだ半導体層A3Rは、窪んだ半導体層A3Rの上層又は下層との界面で高濃度となるように不純物がドープされていることが好ましい。より詳細には、窪んだ半導体層A3Rは、窪んだ半導体層A3Rの上層との界面又は下層との界面において、不純物濃度が高濃度となるようにドープされていることが好ましい。これにより、界面の電気抵抗を低減することができる。
【0060】
本実施例においては、第1反射鏡31、半導体構造層47、第2反射鏡24からなる半導体積層体LY2は、積層方向すなわち半導体積層体LY2の半導体層に垂直な方向の軸を中心軸CAとした回転対称形状を有している。本実施例において、半導体積層体LY2及び窪んだ半導体層A3Rは同軸の円柱形状を有している。
【0061】
なお、半導体積層体LY2は、必ずしも回転対称形状でなくともよい。また、窪んだ半導体層A3Rは、中心軸CAに関して回転対称形状を有することが好ましいが、これに限らない。窪んだ半導体層A3Rは、所望のビームプロファイル又は横モード制御に応じた形状を有していれば良い。
【0062】
以上、詳細に説明したように、本実施例の面発光レーザ10によれば、安定性、信頼性が高く、長寿命の面発光レーザを提供することができる。また、光の損失が少なく、横モード制御性に優れ、発振特性に優れた面発光レーザを提供することができる。
【実施例3】
【0063】
実施例1及び2において、第2反射鏡として誘電体DBRを用いた場合について説明したが、第2反射鏡にも半導体DBRを採用することができる。
図6を参照し、実施例3に係る面発光レーザ50について説明する。面発光レーザ50において、実施例1の面発光レーザ10及び実施例2の面発光レーザ30と実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。実施例2の面発光レーザ30と比較して、面発光レーザ50は、第2反射鏡として半導体DBRを採用している点、及び第2反射鏡に窪んだ半導体層A4Rを設けている点において相違している。
【0064】
図6に示すように、面発光レーザ50は、半導体構造層47を介して互いに対向して配置された第1反射鏡31及び第2反射鏡64を有する。第3半導体層23上に、第2反射鏡64が配されている。第2反射鏡64上に、第2反射鏡64に電気的に接続された上部n電極65が設けられている。
【0065】
第2反射鏡64は、第3組成の半導体層A4と、半導体層A4とは異なる屈折率を有する第4組成の半導体層B4とが交互に積層されて構成されている。本実施例において、第2反射鏡64は、不純物がドープされたn型の半導体DBRからなる。第3組成の半導体層A4は例えばn−AlInNからなり、第4組成の半導体層B4は、例えばn−GaNからなる。第2反射鏡64は、内側に窪んだ側壁RS3を有する半導体層A4Rを有し、側壁RS3の外側に間隙G41を有している。第2反射鏡64を構成する第3組成の半導体層A4のうち少なくとも1層が、窪んだ半導体層A4Rとして形成されている。
【0066】
本実施例において、上部n電極65からの電流は、トンネル接合層22の特性によって、下部n電極46に向かって流れる。より詳細には、n型半導体層23から、トンネル接合層22を通り、p型半導体層21へ電流が流れ、上部n電極65から下部n電極46に向かう方向に電流が流れる。上部n電極65からの電流は、窪んだ半導体層A4Rにおいて電流狭窄される。電流狭窄された電流が、n型半導体層23、トンネル接合層22、p型半導体層21を通って、活性層15に到達する。狭窄された電流が活性層に流れることによって、効率良く活性層15からの放射光を出射させることができる。
【0067】
また、本実施例において、第2半導体層21、トンネル接合層22及び第3半導体層23は、共通の側壁を有している。従って、トンネル接合層22は、電流狭窄構造ではなく、リーク電流が生じ得るような構成も有していない。また、面発光レーザ50は、p型半導体層21との間の接触抵抗が高い構造や、光吸収が大きい構造を有していない。従って、本実施例の電流狭窄構造は、リーク電流が少なく、低抵抗の電流狭窄構造である。
【0068】
また、本実施例において、活性層15からの出射光は、窪んだ半導体層A4Rと窪んだ半導体層A4Rに挟まれた(又は隣接する)半導体層B4とが構成する領域CR2に導波され、横モード制御され安定したレーザ光が得られる。この場合、窪んだ半導体層A4Rは面発光レーザ50の積層方向の軸を中心軸CAとした回転対称形状を有し、中心軸CAと同軸に形成されていることが好ましい。
【0069】
以上、説明したように、本実施例の面発光レーザ50によれば、狭窄された電流を低抵抗な電流経路を経て活性層に流すことができ、効率の良い電流狭窄構造を得ることができる。従って、リーク電流が少なく低抵抗の高効率な電流狭窄構造及び電流経路を確保することができる。また、横モード制御性にも優れ、高信頼性、かつ、高出力な面発光レーザを提供することができる。
【実施例4】
【0070】
実施例1の改変例として、内側に窪んだ半導体層を、第2半導体層21に設けることもできる。
図7を参照し、実施例4に係る面発光レーザ70について説明する。実施例1の面発光レーザ10と比較して、第2半導体層(p型半導体層)21に窪んだ半導体層21Rが設けられている点、及び第1半導体層12に窪んだ半導体層14Rが設けられていない点が面発光レーザ10と異なる。
【0071】
第2半導体層21は、2層に分かれて形成されており、2層のうち一方の層に対して基板17に近い側に位置する下層を第2半導体層(p型半導体層)21A、21Aに対して上層に位置する層を第2半導体層(p型半導体層)21Bと称する。第2半導体層21B及び第3半導体層23は、トンネル接合層22によって、第2半導体層21B及び第3半導体層23の全体に渡って互いに分離されて設けられている。
【0072】
また、窪んだ半導体層21Rは、半導体層21Rに隣接して半導体層21Rを挟む上層の第2半導体層21B及び下層の第2半導体層21Aの側壁よりも内側に窪んだ半導体層として形成されている。
【0073】
本実施例において、上部n電極25からの電流は、トンネル接合層22の特性によって、下部n電極26に向かって流れる。そして、n型半導体層23から、トンネル接合層22を通り、p型半導体層21Bへ電流れる電流は、窪んだ半導体層21Rにおいて電流狭窄される。電流狭窄された電流は、p型半導体層21Aを通って活性層に流れる。p型半導体層21Aにおいて、電流の広がりは、n型半導体層と比較して小さい。従って、電流狭窄された電流は、大きく広がることなく活性層に到達し、高い効率で活性層15からの放射光を出射させることができる。
【0074】
また、本実施例において、第2半導体層21B、トンネル接合層22及び第3半導体層23は、共通の側壁を有している。従って、トンネル接合層22は、電流狭窄構造ではなく、リーク電流が生じ得るような構成も有していない。また、面発光レーザ70は、p型半導体層21A及びp型半導体層21Bとの間の接触抵抗が高い構造や、光吸収が大きい構造を有していない。従って、面発光レーザ70は、リーク電流が少なく、低抵抗の電流狭窄構造及び電流経路を有している。
【0075】
加えて、p型半導体層21において、活性層15から放出される光の経路内に、内側に窪んだ半導体層21R及び間隙G21が存在する。間隙G21は、窪んだ半導体層21Rよりも低い屈折率を有している。従って、レーザ光のフィールドは、窪んだ半導体層21Rに閉じ込められ、横モード制御がなされる。
【0076】
以上、説明したように、本実施例の面発光レーザ70においても、リーク電流が少なく低抵抗の高効率な電流狭窄構造及び電流経路を確保することができる。また、横モード制御性にも優れ、信頼性が高く、長寿命の面発光レーザを提供することができる。
【実施例5】
【0077】
実施例1の別の改変例として、内側に窪んだ半導体層を、第3半導体層23に設けることもできる。また、実施例1は、実施例2と組み合わせることができる。
図8を参照し、実施例5に係る面発光レーザ80について説明する。本実施例は、実施例2に係る面発光レーザ30の構成に加えて、第3半導体層(n型半導体層)23に窪んだ半導体層21Rが設けられて構成されている。
【0078】
第2半導体層23は、2層に分かれて形成されており、2層のうち一方の層に対してn型基板37に近い側(下層)に位置する層を第3半導体層(n型半導体層)23A、23Aに対して上層に位置する層を第3半導体層(n型半導体層)23Bと称する。第2半導体層21及び第3半導体層23Aは、トンネル接合層22によって、第2半導体層21及び第3半導体層23Aの全体に渡って互いに分離されて設けられている。
【0079】
また、窪んだ半導体層23Rは、半導体層23Rに隣接し、半導体層23Rを挟む上層の第3半導体層23B及び下層の第2半導体層23Aの側壁よりも内側に窪んだ半導体層として形成されている。
【0080】
本実施例において、上部n電極25からの電流は、トンネル接合層22の特性によって、下部n電極46に向かって流れる。上部n電極25からn型半導体層23に注入された電流は、窪んだ半導体層23Rにおいて低い抵抗で電流狭窄され、トンネル接合層22を通り、p型半導体層21へ電流れる。p型半導体層21を通って活性層に流れる電流は、第1半導体層32を通り、第1反射鏡が有する窪んだ半導体層A3Rによって、再び狭窄される。従って、より高い効率で活性層15からの放射光を出射させることができる。
【0081】
また、本実施例において、第2半導体層21、トンネル接合層22及び第3半導体層23Aは、共通の側壁を有している。従って、トンネル接合層22は、電流狭窄構造ではなく、リーク電流が生じ得るような構成も有していない。また、面発光レーザ80は、p型半導体層21との間の接触抵抗が高い構造や、光吸収が大きい構造を有していない。従って、面発光レーザ80は、リーク電流が少なく、低抵抗の電流狭窄構造及び電流経路を有している。
【0082】
加えて、n型半導体層23において、活性層15から放出される光の経路内に、内側に窪んだ半導体層23R及び間隙G23が存在する。間隙G23は、窪んだ半導体層23Rよりも低い屈折率を有している。従って、レーザ光のフィールドは、窪んだ半導体層23Rに閉じ込められ、横モード制御がなされる。
【0083】
以上、説明したように、本実施例の面発光レーザ80においても、リーク電流が少なく低抵抗の高効率な電流狭窄構造及び電流経路を確保することができる。また、横モード制御性にも優れ、信頼性が高く、長寿命の面発光レーザを提供することができる。
【0084】
なお、実施例1乃至5は、適宜組み合わせることができる。例えば、実施例1と実施例4とを組み合わせて、電流狭窄構造を二重に設けることができる。電流の狭窄を増大させ、より高い横モード制御性を得ることができる。
【0085】
[面発光レーザ10の製造方法]
図9を参照し、実施例1に係る面発光レーザ10の製造方法について説明する。
図9は面発光レーザ10の製造工程の概要を示すフローチャートである。
図9に示すように、面発光レーザ10の製造工程において、まず、第1反射鏡11及び半導体構造層27を構成する半導体層を成長させる(ステップS11)。
【0086】
半導体層の成長は、本実施例においてMOVPE(Metal-organic Vapor Phase Epitaxy)装置を用いたエピタキシャル成長により行う。なお、本実施例では、結晶成長法としてMOVPE法を用いているが、MOVPE法に代えて、例えばより低温で低速の結晶成長を行う場合などに分視線エピタキシー法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法等を用いてもよい。
【0087】
次に、レジストパターンをマスクとして、ドライエッチングにより半導体構造層27をエッチングしてメサ形状を形成する(ステップS12)。
【0088】
続いて、活性化アニールによりp型半導体層21を活性化し(ステップS13)、ウェットエッチングにより窪んだ半導体層14Rを形成する。具体的には、ステップP14において、熱硝酸(例えば、処理温度100℃)などのエッチング液を用いてn型半導体層14の側面を選択的にエッチングすることで、内側に窪んだ半導体層14Rを形成する。
【0089】
その後、電極を形成する(ステップS15)。具体的には、金属膜を積層することによって、上部n電極25及び下部n電極26を形成する。電極に用いる金属としては、例えば、Ti、Al、Auなどが挙げられる。本実施例において、上部n電極25は、例えばTi/Al/Ti/Auを積層した構造を有している。上部電極25は、第3半導体層23上に(電流狭窄領域を内側に含む)リング状に形成される。
【0090】
最後に、リフトオフ法などにより、第3半導体層23上に第2反射鏡24を配する(ステップS16)。以上の工程を経て、面発光レーザ10を製造する。
【0091】
ステップS11における第1反射鏡11及び半導体構造層27を構成する半導体層の成長工程の詳細について説明する。まず、GaN基板17上に下地層16として、アンドープGaNを例えば500nm成長させる。例えば、基板温度を1050℃とし、TMGa(トリメチルガリウム)及びアンモニアガスを原料ガスとして供給する。なお、使用する基板は、C面基板でもよく、非極性面、半極性面や任意のオフ角を有していても良い。
【0092】
次に、第1反射鏡11を下地層16上に形成する。本実施例においては、410nmを中心波長として、45nmのAlInN層と、10nmのGaN層を交互に40.5ペア積層する。例えば、AlInN層の成長は、基板温度を815℃とし、原料ガスとしてTMA(トリメチルアルミニウム)、TMI(トリメチルインジウム)、及びアンモニアガスを反応炉内に供給して行う。また、GaN層の成長は、基板温度を815℃とし、TMGa及びアンモニアガスを反応炉内に供給して行う。なお、AlInNの組成は例えばAl
0.82In
0.18Nである。
【0093】
続いて、第1反射鏡11上に、第1半導体層12を形成する。本実施例において、第1半導体層12はn型半導体層13とn型半導体層14を有している。例えば、n型半導体層13としてのn型GaN層13Aを350nm成長させ、不純物としてSiを7×10
18cm
-3の濃度でドープする。続いて、n型GaN層13A上にn型半導体層14としてのAlInN層14を成長させ、1〜6×10
19cm
-3の濃度でドープする。そして、AlInN層14上に、n型半導体層13としてのn型GaN層13Bを40nm成長させる。
【0094】
第2半導体層12上に、活性層15を形成する。例えば、3nmのGaInN量子井戸層と6nmの障壁層とを少なくとも1層以上、交互に積層して活性層15を形成する。
【0095】
次に、活性層15上に第2半導体層21を成長させる。第2半導体層21は、少なくとも1の半導体層から構成されていれば良く、本実施例において、p型半導体層21A及びp型半導体層21Bから構成されている。例えば、p型半導体層21Aは、Al
0.15Ga
0.85N層を20nm成長させ、CP
2Mg(シクロヘ゜ンタシ゛エニルマク゛ネシウム)ガスを原料としてMgを2×10
19cm
-3の濃度でドープして形成する。そして、p型半導体層21Bは、p型半導体層21A上にGaN層を70nm成長させ、Mgを2×10
19cm
-3の濃度でドープして形成する。
【0096】
続いて、p型半導体層21上に、トンネル接合層22を成長させる。トンネル接合層22は、高濃度p型半導体層22A及び高濃度n型半導体層22Bをこの順に形成する。
高濃度p型半導体層22Aは、例えば、基板温度を710℃とし、高濃度のMgがドープされたGaInN層を3nm成長させる。高濃度p型半導体層22Aの不純物としてのMg濃度は、例えば5×10
19cm
-3〜1×10
21cm
-3程度、より詳細には、1×10
20cm
-3〜3×10
20cm
-3程度が好ましい。
【0097】
次に、高濃度n型半導体層22Bとして、例えば、高濃度のSiがドープされたGaN層を7.5nm成長させる。高濃度n型半導体層22Bの不純物としてのSi濃度は、例えば1×10
20cm
-3〜1×10
21cm
-3程度、より詳細には、3×10
20cm
-3〜6×10
20cm
-3程度が好ましい。
【0098】
続いて、トンネル接合層22上に、n型半導体層(第3半導体層)23を形成する。第3半導体層(n型半導体層)23は、例えば、SiがドープされたGaN層を110nm成長させる。Si不純物濃度は、例えば7×10
18cm
-1である。
【0099】
以上の方法により、第1反射鏡11及び半導体構造層27を形成する。本実施例の製造方法において、第1反射鏡11及び半導体構造層27を構成する全ての半導体層(基板17及び下地層16を除く)を、MOVPEによるエピタキシャル成長面上に形成することができる。
【0100】
例えば、トンネル接合層のドライエッチングによる電流狭窄層を形成し、その後、ドライエッチングされた表面に半導体層を成長させた埋め込み層よる電流狭窄構造を形成するような場合において、ドライエッチングされた表面と埋め込み層との界面(特に側壁)に欠陥が生じ易い。そして、欠陥の生じた当該界面付近に電流が流れ易くなり、リークパスとなる場合がある。
【0101】
しかし、本実施例の製造方法においては、ドライエッチング後の表面に埋め込み層を形成するなど、他の工程を経た表面上に、再びMOVPEによる半導体層の成長を行う必要がない。従って、リークパスが発生する原因となる工程が不要であり、リーク電流の増大といった問題が生じない。また、膜厚制御を高精度に行うことができ、欠陥の少ない高品質な半導体層を成長することができる。
【0102】
なお、実施例3の面発光レーザ50の構成の場合は、第1反射鏡31、半導体構造層47に加えて、第2反射鏡64の形成についてもステップS11において行うことができ、電極形成後に第2反射鏡を形成する必要がない。また、電極の形成が容易となる。
【0103】
なお、第1反射鏡、半導体構造層、第2反射鏡を構成する半導体層のうち、窪んだ半導体層を形成するエッチング液に対する耐性が無く、窪んだ半導体層を形成しない半導体層については、ステップS14のウェットエッチングを行う前に、ウェットエッチング液に対して耐性のあるレジスト等で保護すればよい。
【0104】
以上、詳細に説明したように、本発明の垂直共振器型発光素子によれば、リーク電流が少なく低抵抗の電流狭窄構造及び電流経路を有し、信頼性が高く、長寿命の面発光レーザを提供することができる。また、光の損失が少なく、横モード制御性に優れ、発振特性、安定性、信頼性に優れた面発光レーザを提供することができる。
【0105】
また、本発明の製造方法によれば、リーク電流の発生し難い方法で、高精度な膜厚制御により半導体層構造層を形成することができ、リーク電流が少なく、安定性、信頼性に優れた面発光レーザを製造することができる。