(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1貫通孔は、前記第1板部の一方側の面から他方側の面に向って縮径し、前記第2貫通孔は、前記第2板部の前記一方側の面から前記他方側の面に向って拡径する請求項1記載の燃料タンク。
前記燃料タンク本体は、底壁と側壁と上壁で囲まれ内部に燃料が貯留されると共に、第1貯留部と、第2貯留部と、前記第1貯留部の上部と前記第2貯留部の上部とを連通させる連結部と、を有し、前記第1貯留部、前記第2貯留部にはそれぞれ前記セパレータが配設されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の先行技術のように、燃料タンクの内部にセパレータを配設した場合であっても、異音の発生を抑制する点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、燃料タンクにおいて異音の発生を一層抑制した燃料タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係る燃料タンクは、底壁と側壁と上壁で囲まれ内部に燃料が貯留される燃料タンク本体と、前記底壁及び前記上壁の少なくとも一方に取り付けられた支柱と、板厚方向に貫通する第1貫通孔が形成されると共に
前記支柱のみに取り付けられ前記支柱から径方向に沿って延在する第1板部と、板厚方向に貫通する第2貫通孔が形成されると共に
前記支柱のみに取り付けられ前記支柱を挟んで前記第1板部と反対側に径方向に沿って延在す
る第2板部と、を有するセパレータと、を備え、前記第1板部と前記第2板部とで流体抵抗が異なるように、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔の形状、大きさ及び孔数の少なくとも1つが異なって設定されている。
【0008】
このように形成された燃料タンクは、支柱を挟んで反対側に設けられた第1板部と第2板部とを有するセパレータを備える。したがって、第1板部と第2板部によって燃料の揺動が抑制され、燃料タンクにおける異音の発生が抑制される。
【0009】
また、第1板部と第2板部では、流体抵抗が異なるように、第1板部に形成された第1貫通孔と第2板部に形成された第2貫通孔の孔数、大きさ及び形状の少なくとも1つが異なって設定されている。
【0010】
例えば、第2板部の流体抵抗が第1板部の流体抵抗よりも大きくなるように第1貫通孔と第2貫通孔が形成されている場合、燃料が揺動すると、平面視で流体抵抗の小さい第1板部の第1貫通孔を介して反対側に流動する燃料の流量が流体抵抗の大きい第2板部の第2貫通孔を介して反対側に流れる燃料の流量よりも大きくなる。この結果、平面視で支柱を中心として第1板部から第2板部に向って回転する燃料の流れ(以下、「回転流」という)が発生する。したがって、燃料の揺動時にセパレータの第1板部の第1貫通孔、第2板部の第2貫通孔を通過した燃料が燃料タンク本体の側壁に向うことが抑制される。すなわち、燃料タンク本体の側壁に揺動した燃料が衝突することによる異音の発生が一層抑制される。
【0011】
請求項2記載の発明に係る燃料タンクは、請求項1記載の燃料タンクにおいて、前記第1板部及び前記第2板部のいずれか一方のみに前記第1貫通孔又は前記第2貫通孔が形成されている。
【0012】
この燃料タンクでは、セパレータの第1板部と第2板部のいずれか一方のみに第1貫通孔又は第2貫通孔が形成されている。例えば、第1板部にのみ第1貫通孔が形成されており、第2板部には第2貫通孔が形成されていない場合、第1貫通孔が形成された第1板部は第2貫通孔が形成されていない第2板部よりも流体抵抗が小さくなる。すなわち、燃料が揺動した場合、第1板部の第1貫通孔を通過する燃料により、平面視で支柱を中心として第1板部から第2板部に向かう燃料の回転流を生じる。この結果、第1貫通孔を介して燃料タンク本体の側壁に向う揺動燃料の流れを抑制することができる。すなわち、燃料タンクにおける異音の発生を一層抑制することができる。
【0013】
請求項3記載の発明に係る燃料タンクは、請求項1記載の燃料タンクにおいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔が円形の孔であり、孔径が異なる。
【0014】
このように形成された燃料タンクでは、円形の孔である第1貫通孔と第2貫通孔の孔径が異なる。例えば、第1貫通孔の孔径が第2貫通孔の孔径よりも大きければ、第1板部の流体抵抗が第2板部の流体抵抗よりも小さくなる。すなわち、燃料が揺動した場合、第1板部の第1貫通孔を通過する燃料流量が第2板部の第2貫通孔を通過する燃料流量よりも大きくなる。この結果、平面視で支柱を中心として第1板部から第2板部に向かう燃料の回転流を生じ、第1貫通孔、第2貫通孔を介して燃料タンク本体の側壁に向う揺動燃料の流れを抑制することができる。すなわち、燃料タンクにおける異音の発生を一層抑制することができる。
【0015】
請求項4記載の発明に係る燃料タンクは、請求項1記載の燃料タンクにおいて、前記第1貫通孔は、前記第1板部の一方側の面から他方側の面に向って縮径し、前記第2貫通孔は、前記第2板部の前記一方側の面から前記他方側の面に向って拡径する。
【0016】
このように形成された燃料タンクでは、第1貫通孔が第1板部の一方側の面から他方側の面に向って縮径し、第2貫通孔が第2板部の一方側の面から他方側の面に拡径するように形成されている。すなわち、第1貫通孔と第2貫通孔のテーパの向き(拡径する方向)が逆向きとされている。したがって、燃料の揺動する方向が第1貫通孔の縮径する方向(第2貫通孔の拡径する方向)であれば、第1板部では第1貫通孔を通過する燃料の流入量が大きく(流速が大きく)、第2貫通孔を通過にする燃料の流量が小さく(流速が小さく)なる。この結果、平面視で支柱を中心として第1板部から第2板部に向かう燃料の回転流を生じ、第1貫通孔、第2貫通孔を介して燃料タンク本体の側壁に向う揺動燃料の量を抑制することができる。すなわち、燃料タンクにおける異音の発生を一層抑制することができる。
【0017】
請求項5記載の発明に係る燃料タンクは、請求項1〜4のいずれか1項記載の燃料タンクにおいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔の延在方向と同一の方向に当該支柱を貫通する支柱貫通孔が形成されている。
【0018】
セパレータの支柱にも、第1板部の第1貫通孔、第2板部の第2貫通孔の延在方向と同方向に支柱を貫通する支柱貫通孔が形成されているため、セパレータを通過する燃料の流れが第1板部の第1貫通孔、第2板部の第2貫通孔を通過するものと、支柱貫通孔を通過するものにより細分化され、通過した燃料の流速(流体エネルギ)が一層低下する。この結果、揺動した燃料が燃料タンク本体の側壁に衝突したことによる異音の発生が一層抑制されることになる。
【0019】
請求項6記載の発明に係る燃料タンクは、底壁と側壁と上壁で囲まれ内部に燃料が貯留される燃料タンク本体と、前記底壁及び前記上壁の少なくとも一方に取り付けられた支柱と、
前記支柱のみに取り付けられ前記支柱から径方向に沿って延在する第1板部と、
前記支柱のみに取り付けられ前記支柱を挟んで前記第1板部と反対側に径方向に沿って延在する第2板部と、を有するセパレータと、を備え、前記第1板部の曲げ剛性と前記第2板部の曲げ剛性が異なる。
【0020】
このように形成された燃料タンクでは、支柱を挟んで反対側に設けられた第1板部と第2板部とを有するセパレータを有する。第1板部と第2板部は、曲げ剛性が異なる。したがって、燃料タンク本体内で燃料が揺動した場合に、第1板部と第2板部の曲げ変形量が異なる。
【0021】
例えば、第2板部の曲げ剛性が第1板部の曲げ剛性よりも高い場合、燃料が揺動すると、相対的に曲げ変形量の大きい第1板部の周囲を通過する燃料の流量が、第2板部の周囲を通過する燃料の流量よりも大きい。この結果、平面視で支柱を中心として第1板部から第2板部に向う燃料の流れ(回転流)が発生する。これにより、燃料タンク本体の側壁に向う揺動燃料の流量が抑制される。この結果、燃料タンク本体の側壁に揺動した燃料が衝突することによる異音の発生が抑制される。
【0022】
請求項7記載の発明に係る燃料タンクは、請求項6記載の燃料タンクにおいて、前記第1板部と前記第2板部との少なくとも一方に補強リブが形成されている。
【0023】
このように形成された燃料タンクでは、第1板部及び第2板部の少なくとも一方に補強リブが設けられるため、他方の板部よりも曲げ剛性が高く設定されている。
【0024】
例えば、第2板部にのみ補強リブを設けることによって、第2板部の曲げ剛性が第1板部の曲げ剛性よりも高く設定されている場合、燃料が揺動すると、相対的に曲げ変形量の大きい第1板部の周囲を通過する燃料の流量が、第2板部の周囲を通過する燃料の流量よりも大きくなる。この結果、平面視で支柱を中心として第1板部から第2板部に向う燃料の流れ(回転流)が発生する。これにより、燃料タンク本体の側壁に向う揺動燃料の流量が抑制される。この結果、燃料タンク本体の側壁に揺動した燃料が衝突することによる異音の発生が抑制される。
【0025】
請求項8記載の発明に係る燃料タンクは、請求項1〜7のいずれか1項記載の燃料タンクにおいて、前記燃料タンク本体は、底壁と側壁と上壁で囲まれ内部に燃料が貯留されると共に、第1貯留部と、第2貯留部と、前記第1貯留部の上部と前記第2貯留部の上部とを連通させる連結部と、を有し、前記第1貯留部、前記第2貯留部にはそれぞれ前記セパレータが配設されている。
【0026】
このように形成された鞍型の燃料タンクでは、一対の貯留部のそれぞれにセパレータが設けられているため、各貯留部で揺動した燃料が各貯留部の側壁に衝突することによる異音の発生を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1〜8記載の発明の燃料タンクは、上記構成としたので異音の発生を一層抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る燃料タンクについて
図1〜
図8を参照して説明する。以下の説明においては、各図面において、車両前方を矢印FR、車両上方を矢印UP、車幅方向を矢印Wで示す。
【0030】
(構成)
先ず、燃料タンク10の全体について
図1を参照して説明する。燃料タンク10は、車幅方向に延在する底壁12と、底壁12の車幅方向両端部から車両上方に延在する左壁14、右壁16と、左壁14、右壁16の上端同士を結んで車幅方向に延在する上壁18とを備える燃料タンク本体20を有する。燃料タンク本体20は、底壁12と、左壁14と右壁16とを含む側壁と、上壁18によって閉塞されており、内部に燃料を貯留可能とされている。
【0031】
底壁12は、車両のドライブシャフト19と排気管21を回避するために、車幅方向中央部が車両上方側に突出した凸部22を有する。すなわち、この燃料タンク10は、いわゆる鞍型の燃料タンクである。また、燃料タンク10は、樹脂から成形された樹脂燃料タンクである。なお、ドライブシャフト19と排気管21は、
図1にのみ図示し、他の図では図示省略する。
【0032】
燃料タンク本体20の内部は、凸部22よりも車幅方向左側に位置する第1貯留部24と車幅方向右側に位置する第2貯留部26と、第1貯留部24と第2貯留部26の上部同士を連結(連通)する連結部28と、に分かれている。
【0033】
なお、底壁12、上壁18のうち、第1貯留部24を構成する部分をそれぞれ第1底壁部12A、第1上壁部18A、第2貯留部26を構成する部分をそれぞれ第2底壁部12B、第2上壁部18B、連結部28を構成する部分をそれぞれ第3底壁部12C、第3上壁部18Cという。
【0034】
図2に示すように、第1貯留部24には、後述する取付用孔部64を挟んで車両後方側と車両前方側に、車両上下方向に延在する支柱34A、支柱34Bがそれぞれ配設されている。
【0035】
第1底壁部12Aにおいて支柱設置位置には、
図3に示すように、車両上方に突出した取付部30が形成されている。また、第1上壁部18Aにおいて支柱設置位置に車両下方に突出した取付部32が形成されている。この取付部30、32間に、車両上下方向に延在する支柱34Aが配設されている。
【0036】
支柱34Aは、
図4に示すように、略円筒形状である支柱本体36と、支柱本体36の両端部で径方向外側に突出形成されたフランジ部38と、を有する。このフランジ部38が、それぞれ取付部30、32に接合されることによって、第1上壁部18Aと第1底壁部12Aとの間に支柱34Aが配設されている。
【0037】
支柱34Aには、セパレータ100Aが設けられている。
図3及び
図4に示すように、セパレータ100Aは、支柱34Aから車幅方向外側に延在して設けられた第1板部102Aと、支柱34Aから車幅方向内側に延在して設けられた第2板部104Aと、を有する。
図4に示すように、第1板部102A、第2板部104Aは、それぞれ支柱34Aの外周面の車両後方側にリブ106A、108Aを介して接続されている。すなわち、第1板部102Aと第2板部104Aは、支柱34Aを挟んで車幅方向に沿って左右対称に設けられている。なお、第1板部102Aと第2板部104Aは、支柱34Aと一体成形されている。
【0038】
第1板部102Aと第2板部104Aは、左右対称である点と後述する第1貫通孔110A、第2貫通孔112Aを除き、面積や形状が同一とされている。
【0039】
第1板部102Aには、車両前後(板厚)方向に延在する第1貫通孔110Aが5個形成されている。一方、第2板部104Aには、車両前後(板厚)方向に延在する第2貫通孔112Aが3個形成されている。また、第2貫通孔112Aの径は、第1貫通孔110Aの径よりも小さく設定されている。すなわち、第2貫通孔112Aの断面積は、第1貫通孔110Aの断面積よりも小さく設定されている。
【0040】
なお、支柱34Bは、セパレータが設けられていない点を除いて、支柱34Aと同様の構成とされている。
【0041】
また、
図2に示すように、第2貯留部26にも、第1貯留部24と同様に、車両上下方向に延在する一対の支柱44A、44Bが配設されている。支柱44Aは、
図3に示すように、支柱34Aと同様に、略円筒形状である支柱本体46と、支柱本体46の両端部で径方向外側に突出形成されたフランジ部48と、を有している。このフランジ部48がそれぞれ取付部40、42に接合されることにより、第2上壁部18Bと第2底壁部12Bとの間に支柱44Aが配設されている。
【0042】
また、支柱44Aには、セパレータ100Bが設けられている。このセパレータ100Bは、セパレータ100Aと同様の構成なので、セパレータ100Aの構成部材と同一の参照番号にBを付してその詳細な説明を省略する(
図3、
図4参照)。
【0043】
なお、支柱44Aの車両前方側に位置する支柱44Bは、セパレータが設けられていない点を除いて、支柱44Aと同様の構成とされている。
【0044】
さらに、
図2に示すように、連結部28には、第3底壁部12Cから車両上方に突出形成された円錐台形状の突出部と、第3上壁部18Cから車両下方に突出形成された円錐台形状の突出部が接合されたスタンドオフ62A〜62Cが形成されている。すなわち、連結部28において、車幅方向に所定間隔をあけて3ヵ所のスタンドオフ62A〜62Cが形成されている。
【0045】
また、
図1に示すように、第1貯留部24の第1上壁部18Aには、燃料タンク10の内蔵部品を燃料タンク本体20の内部に取り付けるための取付用孔部64が形成されている。
【0046】
取付用孔部64は、第1上壁部18Aの中央やや車両前方側に形成されている。
図1に示すように、取付用孔部64は、円筒形の支持部68と、支持部68にインサート成形された金属製のインサートリング66と、を有する。
【0047】
図1に示すように、このインサートリング66に蓋体74が搭載され、図示しない金具によってインサートリング66に締結されることによって、取付用孔部64が閉塞される構成である。
【0048】
図1に示すように、第1貯留部24において、取付用孔部64の下方には、ポンプモジュール80が配設されている。
【0049】
ポンプモジュール80は、サブカップ82の内部に燃料タンク本体20の外部に燃料を供給するための燃料ポンプ84と、燃料ポンプ84に吸入される燃料から異物を除去するフィルタ86を備えている。また、ポンプモジュール80では、燃料タンク本体20の外部に燃料を供給する燃料供給管88が燃料ポンプ84から蓋体74を貫通して外部まで延在している。
【0050】
ポンプモジュール80には、第2貯留部26側の燃料を燃料移送管90を介して吸引するための図示しないジェットポンプが内部に設けられており、燃料移送管90の端部がジェットポンプに接続されている。
【0051】
一方、第2貯留部26では、
図1に示すように、車両前方側の支柱44Bにブラケット92が取り付けられており、ブラケット92から第2底壁部12Bに向って延在するアーム94の先端に、第2貯留部26から第1貯留部24のポンプモジュール80に燃料を供給するための燃料移送管90の一端が接続されたフィルタ部96が配設されている。
図2に示すように、フィルタ部96は、第2貯留部26の第2底壁部12B上において一対の支柱44A、44B間に配設されている。
【0052】
燃料移送管90は、
図1に示すように、フィルタ部96とポンプモジュール80(ジェットポンプ)とを接続(連通)するものである。
【0053】
(作用)
続いて、第1実施形態に係る燃料タンク10の作用について説明する。なお、セパレータ100Aとセパレータ100Bの作用効果は同様なので、セパレータ100Aについてのみ説明し、セパレータ100Bについての説明は省略する。
【0054】
燃料タンク10では、セパレータ100Aが第1貯留部24に配設されているため、例えば、減速時等に第1貯留部24内で車両前方側に燃料が揺動することがセパレータ100Aの第1板部102A、第2板部104Aで抑制される。これにより、揺動した燃料が燃料タンク本体20の側壁に衝突することによる異音の発生が抑制される。
【0055】
また、第1板部102Aと第2板部104Aは左右対称で同形状(同面積)であるが、第1板部102Aに形成された第1貫通孔110Aは5個であり、第2板部104Aに形成された第2貫通孔112Aは3個である。また、第1貫通孔110Aの径は、第2貫通孔112Aの径よりも大きい。すなわち、第2板部104Aの流体抵抗が第1板部102Aの流体抵抗より大きく設定されている。
【0056】
これにより、
図5(A)に模式的に示すように、セパレータ100Aの第1板部102Aの第1貫通孔110Aを通過した揺動燃料の流量(矢印P参照)が、第2板部104Aの第1貫通孔112Aを通過した揺動燃料の流量(矢印Q参照)よりも大きくなる。
【0057】
この結果、平面視で支柱34Aを中心として第1板部102Aから第2板部104Aに向う燃料の回転する流れ(以下、「回転流」という)(
図5(B)、矢印R参照)を生ずる。
【0058】
したがって、第1板部102Aの第1貫通孔110Aと、第2板部104Aの第2貫通孔112Aとを通過した揺動燃料の大部分が燃料タンク本体20の側壁に衝突しなくなる。すなわち、第1貫通孔110Aと第2貫通孔112Aとを通過した揺動燃料の一部しか、燃料タンク本体20の側壁に衝突しなくなる。この結果、燃料タンク10における異音の発生が一層抑制される。
【0059】
また、
図5(B)に示すように、この回転流が燃料の揺動方向(車両前方)と反対方向(車両後方)で第2板部104Aに到達するため、燃料の揺動によるセパレータ100A(第2板部104A)の変形を抑制することができる。
【0060】
さらに、セパレータ100Aは、支柱34Aに第1板部102A、第2板部104Aを設けることによって形成されている。この支柱34Aは、第1上壁部18Aと第1底壁部12Aとを接続するものであり、樹脂製の燃料タンク10、特に第1上壁部18Aと第1底壁部12Aの変形を抑制するものである。すなわち、セパレータ100Aは、変形抑制用の支柱34Aに第1板部102A、第2板部104Aを設けているため、部品点数を削減することができる。
【0061】
また、鞍型の燃料タンク10では、第1貯留部24と第2貯留部26とが分離されているため、燃料残量が少なくなった場合には、第1貯留部24と第2貯留部26で燃料がそれぞれ揺動することになる。燃料タンク10では、第1貯留部24と第2貯留部26にセパレータ100A、100Bをそれぞれ設けたため、第1貯留部24と第2貯留部26のそれぞれで燃料の揺動を抑制する。また、第1貫通孔110A、110B、第2貫通孔112A、112Bを通過した燃料に平面視で支柱34A、44Aを中心とした回転流を生じさせて燃料タンク本体20の側壁に衝突することを抑制することができる。したがって、燃料タンク10における異音の発生を効果的に抑制することができる。
【0062】
(バリエーション)
なお、本実施形態では、セパレータ100Aの第1板部102A、第2板部104Aで、第1貫通孔110Aと第2貫通孔112Aとの個数と径(大きさ)を変更することによって、第1貫通孔110Aと第2貫通孔112Aとを通過する燃料流量に差をつけていたが、これに限定されるものではない。
【0063】
例えば、
図6に示すように、第1貫通孔110Aと第2貫通孔112Aとの個数を違えるが、径を同一にすることが考えられる。あるいは、
図7に示すように、第1貫通孔110Aと第2貫通孔112Aの径は違えるが、個数を同一にすることが考えられる。
【0064】
これらの構成でも、第1貫通孔110Aを通過する燃料流量が第2貫通孔112Aを通過する燃料流量よりも大きくなり、平面視で支柱34A回りの回転流を生じさせることにより、異音の発生を一層抑制することができる。
【0065】
さらに、この第1貫通孔110Aと第2貫通孔112Aの個数及び径の少なくとも一方を違えることには、第1貫通孔110A又は第2貫通孔112Aの個数又は径を0にすることが含まれる。例えば、
図8に示すように、第1板部102Aには第1貫通孔110Aを形成するが、第2板部104Aには第2貫通孔を形成しないことも含まれる。この場合でも、第1板部102A側のみ第1貫通孔110Aを通過して車両前方側に燃料が流動するため、平面視で支柱34A回りの回転流を生じることになり、異音の発生を一層抑制することができる。
【0066】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る燃料タンクについて、
図9〜
図11を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と異なるのは、セパレータの形状のみなので、該当部分のみを説明する。
【0067】
(構成)
第2実施形態の燃料タンク(図示せず)は、第1実施形態の燃料タンク10のセパレータ100A、100Bを後述するセパレータ200A、200Bに置換したものである。
【0068】
なお、セパレータ200Aとセパレータ200Bの作用効果は同様なので、セパレータ200Aについてのみ説明し、セパレータ200Bについての説明は省略する。
【0069】
セパレータ200Aは、
図9に示すように、第1板部102Aと第2板部104Aにそれぞれ4個の第1貫通孔110Aと第2貫通孔112Aとを形成している。
【0070】
第1貫通孔110Aは、
図10に示すように、第1板部102Aの車両後方側の第1面140Aに開口した車両後方側端部が大径部120A、第1板部102Aの車両前方側の第2面142Aに開口した車両前方側端部が小径部122Aとなるように、車両前方に向って縮径するテーパ形状とされている。
【0071】
一方、第2貫通孔112Aは、第2板部104Aの車両後方側の第1面144Aに開口した車車両後方側端部が小径部122Aと同径の小径部124A、第2板部104Aの車両前方側の第2面146Aに開口した車両前方側端部が大径部120Aと同径の大径部126Aとなるように、車両前方に向って拡径するテーパ形状とされている。
【0072】
すなわち、第1貫通孔110Aと第2貫通孔112Aは、同形状で逆向きのテーパ形状とされている。
【0073】
(作用)
車両が減速することによって、燃料タンク本体20内部燃料が車両前方に揺動すると、第1貯留部24では、セパレータ200Aの第1板部102A、第2板部104Aによって燃料の揺動が抑制され、異音の発生が抑制される。
【0074】
また、第1板部102Aの第1貫通孔110Aでは、
図11(A)に示すように、車両後方側端部が大径部120Aとされているため、内部に多くの燃料が流入し、車両前方に向って縮径しているため、燃料の流速が高められて排出される。
【0075】
一方、第2板部104Aの第2貫通孔112Aでは、
図11(B)に示すように、車両後方側端部が大径部120Aよりも径の小さい小径部124Aとされているため、内部に流入する燃料の流量が小さい。しかも、第2貫通孔112Aは車両前方に向って拡径しているため、燃料の流速が低下する。
【0076】
これにより、
図5(A)に模式的に示すように、セパレータ100Aの第1板部102Aの第1貫通孔110Aを通過した揺動燃料の流量(矢印P参照)が、第2板部104Aの第2貫通孔112Aを通過した揺動燃料の流量(矢印Q参照)よりも大きくなる。
【0077】
この結果、平面視で支柱34Aを中心として第1板部102Aから第2板部104Aに向かう燃料の回転流を生ずる(
図5(B)、矢印R参照)。
【0078】
したがって、第1板部102Aの第1貫通孔110Aと、第2板部104Aの第2貫通孔112Aとを通過した揺動燃料の大部分が燃料タンク本体20の側壁に衝突しなくなる。すなわち、第1貫通孔110Aと第2貫通孔112Aとを通過した揺動燃料の一部しか、燃料タンク本体20の側壁に衝突しなくなる。この結果、燃料タンク10における異音の発生が一層抑制される。
【0079】
(バリエーション)
なお、本実施形態に係るセパレータ200Aでも、第1板部102Aと、第2板部104Aで、第1貫通孔110Aと第2貫通孔112Aとの個数や径(大きさ)を変更することができる。すなわち、第2貫通孔112Aよりも第1貫通孔110Aの個数を増加させることや、第2貫通孔112Aよりも第1貫通孔110Aの径を大きくすること等が可能である。
【0080】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る燃料タンクについて、
図12及び
図13を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と異なるのは、セパレータの形状のみなので、該当部分のみを説明する。
【0081】
(構成)
第3実施形態の燃料タンク(図示せず)は、第1実施形態の燃料タンク10のセパレータ100A、100Bを後述するセパレータ300A、300Bに置換したものである。
【0082】
なお、セパレータ300Aとセパレータ300Bの作用効果は同様なので、セパレータ300Aについてのみ説明し、セパレータ300Bについての説明は省略する。
【0083】
セパレータ300Aは、
図12に示すように、第1板部102Aに4個の第1貫通孔110Aを、第2板部104Aに2個の第2貫通孔112Aをそれぞれ形成している。なお、第1貫通孔110Aと第2貫通孔112Aは、同径(同形状)である。
【0084】
また、支柱34Aの支柱本体36は、
図13に示すように、略円筒形であるが、その外周壁の車両前方側に複数の孔部130A、車両後方側に複数の孔部132Aが形成されている。
【0085】
この孔部130A、132Aは、車幅方向及び車両上下方向で一致する位置に形成されており、一対の孔部130A、132Aで支柱を貫通する支柱貫通孔として形成されている。
【0086】
(作用)
セパレータ300Aでは、車両の減速により燃料タンク内で燃料が車両前方に揺動する。この際、第1板部102A、第2板部104Aにより第1貯留部24内での燃料の揺動が抑制される。この結果、揺動した燃料が燃料タンク本体20の側壁に衝突することによる異音の発生が抑制される。
【0087】
また、第1板部102Aと第2板部104Aでは、同径(同一形状、同一大きさ)である第1貫通孔110Aの個数が第2貫通孔112Aの個数よりも多い。この結果、第1貫通孔110Aを通過して車両前方側に流れる燃料の流量が第2貫通孔112Aを通過する燃料の流量よりも大きく、平面視で支柱34A回りの燃料の回転流を生じさせる。この結果、燃料タンク本体20の側壁に衝突する燃料を低減でき、異音の発生を一層抑制することができる。
【0088】
さらに、セパレータ300Aでは、支柱34Aの支柱本体36に孔部130A、132Aを形成することで、支柱本体36の内部(円筒形状の中空部分)を介して車両前後方向に延在する支柱貫通孔を形成している。したがって、車両後方から揺動によりセパレータ300Aに到達した燃料は、第1貫通孔110A、第2貫通孔112Aのみならず、孔部130A、132Aを通過して車両前方側に移動する。したがって、セパレータ300Aを通過する燃料の流れが細分化され、セパレータ300Aを通過する流体エネルギ(流速)が一層低減される。この結果、セパレータ300Aを通過した燃料が燃料タンク本体20の側壁に衝突することが抑制され、異音の発生が一層抑制される。
【0089】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る燃料タンクについて、
図14を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と異なるのは、セパレータの形状のみなので、該当部分のみを説明する。
【0090】
(構成)
第4実施形態の燃料タンク(図示せず)は、第1実施形態の燃料タンク10のセパレータ100A、100Bを後述するセパレータ400A、400Bに置換したものである。
【0091】
なお、セパレータ400Aとセパレータ400Bの作用効果は同様なので、セパレータ400Aについてのみ説明し、セパレータ400Bについての説明は省略する。
【0092】
図14(A)、(B)に示すように、セパレータ400Aは、支柱34Aの支柱本体36から第2板部104Aの車両前方側面402Aに延在する平面視三角形の補強リブ404A、406Aが車両上下方向で所定距離離間して設けられている。
【0093】
(作用)
このように構成されたセパレータ400Aでは、第2板部104Aにのみ補強リブ404A、406Aが設けられているため、第2板部104Aの曲げ剛性が第1板部102Aの曲げ剛性よりも高くなる。
【0094】
ここで、車両の減速時等に燃料タンク本体20内の燃料が車両前方に揺動すると、車両前方に揺動する燃料に押圧された第1板部102Aの方が、第2板部104Aよりも大きく車両前方側に曲げられる。
【0095】
この結果、
図5(A)に示すように、第1板部102Aの周囲を車両前方側に流動する燃料の流量が、第2板部104Aの周囲を車両前方側に流動する燃料の流量よりも大きくなる。したがって、
図5(B)に示すように、平面視で支柱34A回りに第1板部102Aから第2板部104Aに向う燃料の流れ(回転流)を生じ、車両前方側に揺動した燃料が燃料タンク本体20の側壁に衝突する量が抑制される。この結果、異音の発生が一層抑制される。
【0096】
セパレータ200Bでも、セパレータ200Aと同様の作用効果を奏する。
【0097】
(バリエーション)
本実施形態では、第2板部104Aにのみ補強リブ404A、406Aを設けたが、第1板部102Aにも補強リブを設けても良い。この場合でも、第1板部102Aと第2板部104Aとの間で、補強リブの個数等で差を付けることにより曲げ剛性を異ならせていれば、同様の作用効果を奏する。
【0098】
また、第1板部102A、第2板部104Aに補強リブ以外の手段で曲げ剛性を異ならせても良い。例えば、第1板部102A、第2板部104Aの形状を異ならせることで、曲げ剛性を異ならせることが考えられる。
【0099】
[その他]
なお、一連の実施形態の燃料タンク10では、セパレータ100A、100B、200A、200B、300A、300B、400A、400B(以下、「セパレータ100A〜400B」という)を第1貯留部24の支柱34A、第2貯留部26の支柱44Aに設けていたが、これに限定されるものではない。すなわち、セパレータ100A〜400Bを支柱34B、44Bに設けていても良い。また、セパレータ100A〜400Bを支柱34A、34B、44A、44Bの双方に設けていても良い。
【0100】
さらに、一連の実施形態では、セパレータ100A〜400Bの第1板部102A、102B、第2板部104A、104Bを支柱本体36、46に対して一体成形したものについて説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、支柱本体36、46に対してブラケットを介して第1板部102A、102B、第2板部104A、104Bを取り付けることにより、セパレータ100A〜400Bを構成しても良い。
【0101】
また、一連の実施形態では、セパレータ100A〜400Bに対して第1板部102A、102Aと第2板部104A、104Bが左右対称に形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、左右非対称、例えば、第2板部104A、104Bの面積が第1板部102A、102Bの面積よりも大きく形成することができる。
【0102】
さらに、一連の実施形態では、セパレータ100A〜400Bの第1板部102A、102Bと第2板部104A、104Bが支柱本体36、46を挟んで車幅方向に延在していたが、これに限定するものではない。例えば、第1板部102A、102Bと第2板部104A、104Bが支柱本体36、46を挟んで車両前後方向に延在していても良い。
【0103】
また、第1板部102A、102Bと第2板部104A、104Bは、支柱本体36、46を挟んで一直線上に配置してあることが好ましいが、これに限定するものでもない。
【0104】
さらに、一連の実施形態では、底壁12と上壁18とを接続する支柱34A、44Aに第1板部102A、102B、第2板部104A、104Bを設けたが、これに限定するものではない。底壁12又は上壁18の一方から他方に向って延在する(他方には接続しない)支柱に第1板部102A、102B、第2板部104A、104Bを設けても良い。
【0105】
なお、一連の実施形態では、第1貫通孔110A、第2貫通孔112Aを断面円形の孔として記載したが、これに限定するものではない。例えば、断面四角形の孔でも良い。
【0106】
さらに、第1〜第4実施形態のうちの複数の実施形態を組み合わせて適用することも可能である。