特許第6923503号(P6923503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6923503樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6923503
(24)【登録日】2021年8月2日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/58 20060101AFI20210805BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20210805BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20210805BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   B29C43/58
   B29C43/36
   B29C43/34
   H01L21/56 T
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-220990(P2018-220990)
(22)【出願日】2018年11月27日
(65)【公開番号】特開2020-82534(P2020-82534A)
(43)【公開日】2020年6月4日
【審査請求日】2020年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】中村 守
(72)【発明者】
【氏名】岡本 良太
(72)【発明者】
【氏名】林口 慎也
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−176874(JP,A)
【文献】 特開2003−231145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/58
B29C 43/36
B29C 43/34
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒状樹脂を用いて樹脂成形を行う樹脂成形装置であって、
前記顆粒状樹脂が撒かれた状態を撮像する樹脂撮像部と、
前記樹脂撮像部により得られた樹脂画像データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御する制御部とを備える樹脂成形装置。
【請求項2】
樹脂成形品の状態を計測する成形品計測部を有し、
前記制御部は、前記樹脂画像データおよび前記成形品計測部により得られた成形品計測データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御する、請求項1記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記成形品計測部は、前記樹脂成形品の複数箇所の厚みを計測するもの、又は、前記樹脂成形品を撮像するものである、請求項2記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記成形品計測データに基づいて前記樹脂成形品の不良検査を行い、前記樹脂成形品を不良と判断した場合に、前記樹脂画像データに基づいて前記顆粒状樹脂の均一性に関する判定を行い、前記顆粒状樹脂が不均一と判定した場合に、前記顆粒状樹脂の撒き条件をフィードバック制御する、請求項2又は3記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
成形対象物の状態を計測する対象物計測部を有し、
前記制御部は、前記樹脂画像データおよび前記対象物計測部により得られた対象物計測データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
成形型の温度を計測する温度計測部を有し、
前記制御部は、前記樹脂画像データおよび前記温度計測部により得られた温度計測データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項7】
成形型を型締めする型締め機構における型締め位置を計測する位置計測部を有し、
前記制御部は、前記樹脂画像データおよび前記位置計測部により得られた位置計測データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項8】
前記制御部は、少なくとも前記顆粒状樹脂の撒き状態を変更させるべく前記樹脂成形条件をフィードバック制御する、請求項1乃至7の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料を用いて樹脂成形を行う樹脂成形装置としては、特許文献1に示すものが考えられている。
【0003】
特許文献1の樹脂成形装置は、液状樹脂をディスペンサのノズルから被成形品に供給して、被成形品の半導体チップを樹脂封止するものである。そして、樹脂成形装置は、成形品のばらつきを低減するために、被成形品に搭載されている半導体チップの有無、半導体チップの厚さ、及び樹脂成形品の厚さを計測して、被成形品に供給する樹脂量を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−315184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、半導体チップの樹脂封止に用いられる液状樹脂は高粘度であることから、ディスペンサのノズルから平面状の成形範囲に供給しても、当該範囲内において均一に供給することが難しい。これにより、1枚の成形品において厚みのばらつきが生じる恐れがある。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたものであり、樹脂成形品の厚みのばらつきを低減することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る樹脂成形装置は、顆粒状樹脂を用いて樹脂成形を行う樹脂成形装置であって、前記顆粒状樹脂が撒かれた状態を撮像する樹脂撮像部と、前記樹脂撮像部により得られた樹脂画像データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成した本発明によれば、樹脂成形品の品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の樹脂成形装置の構成を模式的に示す平面図である。
図2】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を示す図である。
図3】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を示す図である。
図4】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を示す図である。
図5】同実施形態の各部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0011】
本発明の樹脂成形装置は、前述のとおり、顆粒状樹脂を用いて樹脂成形を行う樹脂成形装置であって、前記顆粒状樹脂が撒かれた状態を撮像する樹脂撮像部と、前記樹脂撮像部により得られた樹脂画像データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0012】
顆粒状樹脂を用いて樹脂成形を行う場合には、撒かれた状態での顆粒状樹脂のばらつきが成形品の例えば厚さ等の品質に悪影響を与えることになる。本発明の樹脂成形装置であれば、顆粒状樹脂が撒かれた状態を撮像して得られた樹脂画像データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御しているので、成形品の例えば厚さ等の品質を向上させることができる。なお、従来のように液状樹脂を用いていないので、その粘度を考慮する必要が無く、顆粒状樹脂を用いることによって、成形範囲内に均一に配置しやすくなる。
【0013】
ここで、樹脂成形条件には、例えば以下の項目(1)〜(7)の少なくとも1つが含まれる。なお、樹脂成形条件には、樹脂成形品の品質に影響を与えるものであれば、その他のものを含んでも良い。
(1)樹脂量:樹脂成形品に必要な顆粒状樹脂の量
(2)樹脂撒き動作:具体的には、樹脂材料投入機構から供給される単位時間当たりの量及び/又は移動テーブルの移動速度
(3)型締め位置:成形型の型締め位置
(4)成形型の温度:顆粒状樹脂を軟化又は溶融して成形する際に必要な温度
(5)成形時間:成形型内で顆粒状樹脂が硬化して成形する際に必要な時間
(6)真空度:樹脂成形時において密閉空間を排気した真空状態の度合い
(7)型締め圧値:成形型を型締めする際に歪みゲージによって歪み量を計測した値
【0014】
樹脂成形品の状態を計測することによって、樹脂成形品の品質の良否を判断し、樹脂成形品の品質を向上させるためには、樹脂成形装置は、樹脂成形品の状態を計測する成形品計測部を有し、前記制御部は、前記樹脂画像データおよび前記成形品計測部により得られた成形品計測データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御することが望ましい。
【0015】
成形品計測部の具体例としては、前記成形品計測部は、前記樹脂成形品の複数箇所の厚みを計測するものであることが望ましい。樹脂成形品の複数箇所の厚みを計測することにより、樹脂成形品の例えば厚さ等の品質をより一層向上させることができる。また、樹脂成形品の外観等の品質を向上させるためには、成形品計測部は、前記樹脂成形品を撮像するものであることが望ましい。
【0016】
成形品計測データおよび樹脂画像データを用いた制御シーケンスとしては、前記制御部は、前記成形品計測データに基づいて前記樹脂成形品の不良検査を行い、前記樹脂成形品を不良と判断した場合に、前記樹脂画像データに基づいて前記顆粒状樹脂の均一性に関する判定を行い、前記顆粒状樹脂が不均一と判定した場合に、前記顆粒状樹脂の撒き条件をフィードバック制御するものであることが望ましい。
【0017】
顆粒状樹脂の撒かれた状態だけでなく、その他の情報を用いて、樹脂成形条件をフィードバック制御することができれば、樹脂成形品の品質がより一層向上することになる。このため、樹脂成形装置は、成形対象物の状態を計測する対象物計測部を有し、前記制御部は、前記樹脂画像データおよび前記対象物計測部により得られた対象物計測データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御するものであることが望ましい。このように、成形対象物の状態を計測することによって、例えば顆粒状樹脂の樹脂量や撒き方などの撒き条件をフィードバック制御することができる。
【0018】
また、樹脂成形装置は、成形型の温度を計測する温度計測部を有し、前記制御部は、前記樹脂画像データおよび前記温度計測部により得られた温度計測データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御するものであることが望ましい。このように、成形型の温度を計測することによって、例えば成形型の設定温度の補正などの樹脂成形条件をフィードバック制御することができる。
【0019】
さらに、樹脂成形装置は、成形型を型締めする型締め機構における型締め位置を計測する位置計測部を有し、前記制御部は、前記樹脂画像データおよび前記位置計測部により得られた位置計測データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御するものであることが望ましい。このように、型締め位置を計測することによって、例えば型締め位置の補正などの樹脂成形条件をフィードバック制御することができる。
【0020】
特に、樹脂成形品の厚さの品質をより一層向上させるためには、前記制御部は、少なくとも前記顆粒状樹脂の撒き状態を変更させるべく前記樹脂成形条件をフィードバック制御することが望ましい。
【0021】
また、上述した樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法も本発明の一態様である。
【0022】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0023】
<樹脂成形装置100の全体構成>
本実施形態の樹脂成形装置100は、成形対象物である基板Wに搭載された電子部品Wxを樹脂材料Jにより樹脂封止して樹脂成形品Pを製造するものである。なお、基板としては、例えば金属基板、樹脂基板、ガラス基板、セラミックス基板、回路基板、半導体基板、リードフレーム等を挙げることができる。また、樹脂材料Jは、例えば顆粒状樹脂である。
【0024】
この樹脂成形装置100は、図1に示すように、基板供給・収納モジュールAと、2つの樹脂成形モジュールBと、樹脂材料供給モジュールCとを、それぞれ構成要素として備える。各構成要素(各モジュールA〜C)は、それぞれの構成要素に対して着脱可能かつ交換可能である。
【0025】
基板供給・収納モジュールAは、封止前基板Wを供給する基板供給部11と、封止済基板W(樹脂成形品P)を収納する基板収納部12と、封止前基板W及び樹脂成形品Pを受け渡しする基板載置部13と、封止前基板W及び樹脂成形品Pを搬送する基板搬送機構14とを有する。基板載置部13は、基板供給・収納モジュールA内において、基板供給部11に対応する位置と基板収納部12に対応する位置との間でY方向に移動する。基板搬送機構14は、基板供給・収納モジュールA及びそれぞれの樹脂成形モジュールB内において、X方向及びY方向に移動する。
【0026】
基板供給・収納モジュールAには、封止前基板Wの状態を計測する対象物計測部20が設けられている。この対象物計測部20は、光学的に封止前基板Wを計測するものであり、例えばレーザ変位計を用いることができる。この対象物計測部20によって、封止前基板Wに搭載されている電子部品数(チップ数)、電子部品Wxのスタック数(段数)及び電子部品Wxのマップ情報(チップ有無の配置情報)を計測することができる。
【0027】
また、基板供給・収納モジュールAには、樹脂成形品Pの状態を計測する成形品計測部21が設けられている。この成形品計測部21は、光学的に樹脂成形品Pを計測するものであり、樹脂成形品Pにおける樹脂封止面の複数箇所の厚みを計測する厚み計測部21aと、樹脂成形品Pの樹脂封止面を撮像する成形品撮像部21bとを有する。厚み計測部21aとしては、レーザ変位計を用いることができる。厚み計測部21aにより得られた厚みデータ及び成形品撮像部21bにより得られた成形品画像データは、後述する制御部26に送信される。
【0028】
各樹脂成形モジュールBは、キャビティ2Cが形成された第1の成形型である下型2と、基板Wを保持する第2の成形型である上型3と、下型2及び上型3を型締めする型締め機構4とを有する。具体的な構成について後述する。
【0029】
樹脂材料供給モジュールCは、移動テーブル15と、移動テーブル15上に載置される樹脂材料収容部16と、樹脂材料収容部16に樹脂材料Jを計量して投入する樹脂材料投入機構17と、樹脂材料収容部16を搬送して下型のキャビティ2Cに樹脂材料Jを供給する樹脂材料供給機構18とを有する。移動テーブル15は、樹脂材料供給モジュール内においてX方向及びY方向に移動する。樹脂材料供給機構18は、樹脂材料供給モジュールC及びそれぞれの樹脂成形モジュールB内において、X方向及びY方向に移動する。
【0030】
樹脂材料投入機構17には、樹脂材料Jを計量する計量部22が設けられており、当該計量部22により得られた樹脂計量データは、後述する制御部26に送信される。
【0031】
また、樹脂材料供給モジュールCには、樹脂材料収容部16における樹脂材料Jが撒かれた状態を撮像する樹脂撮像部23が設けられている。この樹脂撮像部23により得られた樹脂画像データは、後述する制御部26に送信される。
【0032】
<樹脂成形モジュールBの具体的構成>
次に、本実施形態における樹脂成形モジュールBの具体的な構成について以下に説明する。
【0033】
樹脂成形モジュールBは、上述したように、図2に示すように、キャビティ2Cが形成された下型2と、基板Wを保持する上型3と、下型2及び上型3が取り付けられるとともに下型2及び上型3を型締めする型締め機構4とを有する。
【0034】
型締め機構4は、下型2が取り付けられる可動盤41と、上型3が取り付けられる上部固定盤42と、可動盤41を昇降移動させるための駆動機構43とを有している。
【0035】
可動盤41は、その上面に下型2が取り付けられるものであり、下部固定盤44に立て設けられた複数の支柱部45により昇降移動可能に支持されている。
【0036】
上部固定盤42は、その下面に上型3が取り付けられるものであり、左右一対の支柱部45の上端部において可動盤41と対向するように固定されている。
【0037】
駆動機構43は、可動盤41及び下部固定盤44の間に設けられており、可動盤41を昇降移動させることによって下型2及び上型3を型締めするとともに所定の成形圧を加えるものである。本実施形態の駆動機構43は、サーボモータ等の回転を直線移動に変換するボールねじ機構431を用いて可動盤41に伝達する直動方式のものであるが、サーボモータ等の動力源を例えばトグルリンクなどのリンク機構を用いて可動盤41に伝達するリンク方式のものであっても良い。
【0038】
なお本実施形態は、下部固定盤44、支柱部45及び上部固定盤42によって、可動盤41及び駆動機構43を収容する固定フレーム40を構成している。
【0039】
そして、下型2と可動盤41との間には、下型保持部46が設けられている。この下型保持部46は、下型2を加熱するヒータプレート461と、当該ヒータプレート461の下面に設けられた断熱部材462と、ヒータプレート461の上面に設けられて下型2の周囲を取り囲む側壁部材463と、当該側壁部材463の上端に設けられたシール部材464とを有している。
【0040】
上型3と上部固定盤42との間には、上型保持部47が設けられている。この上型保持部47は、上型3を加熱するヒータプレート471と、当該ヒータプレート471の上面に設けられた断熱部材472と、ヒータプレート471の下面に設けられて上型3の周囲を取り囲む側壁部材473と、当該側壁部材473の下端に設けられたシール部材474とを有している。そして、駆動機構43による型締め時において側壁部材463のシール部材464及び側壁部材473のシール部材474が密着して、下型2及び上型3を収容する空間が外気と遮断される。なお、シール部材464又はシール部材474の一方を設けない構成としても良い。
【0041】
上型3は、基板Wの裏面を吸着して保持するものである。上型3の下面には吸着孔(不図示)が形成されており、上型3の内部には吸引流路(不図示)が形成されている。この内部流路は外部の吸引装置(不図示)に接続されている。
【0042】
下型2には、図2及び図3に示すように、基板Wに搭載された電子部品Wx及び樹脂材料Jを収容するキャビティ2Cが形成されている。具体的に下型2は、キャビティ2Cの底面を形成する単一の部材である底面部材201と、当該底面部材201を取り囲む側面部材202とを有している。この底面部材201の上面と側面部材202の内周面によってキャビティ2Cが形成される。本実施形態の底面部材201は平面視矩形状をなす平板であり、側面部材202は平面視矩枠状をなすものである。側面部材202は、底面部材201に対して相対的に上下移動可能に設けられている。具体的は、下型2のベースプレート203に対してコイルばね等の複数の弾性部材204によって支持されている(図2参照)。なお、本実施形態の下型2は、樹脂成形品Pの離型性を向上させるために離型フィルム28で覆われる。
【0043】
また、樹脂成形モジュールBには、成形型(下型2又は上型3)の温度を計測する温度計測部24が設けられている。温度計測部24は、成形型の温度を直接計測するものであっても良いし、成形型を保持する型保持部(例えばヒータプレート等)の温度を計測するものであってもよい。この温度計測部24により得られた成形型の温度データは、後述する制御部26に送信される。
【0044】
さらに、樹脂成形モジュールBには、下型2又は上型3を型締めする型締め機構4における型締め位置を計測する位置計測部25が設けられている。本実施形態の位置計測部25は、可動盤41を昇降させる駆動源であるサーボモータのエンコーダ値を算出して間接的に型締め位置を検出するものである。この位置計測部25により得られた型締め位置データは、後述する制御部26に送信される。なお、位置計測部25は、駆動機構43の方式によって種々変更可能である。
【0045】
<樹脂成形装置100の動作>
この樹脂成形装置100における樹脂成形(樹脂封止)の動作について図1図4を参照して説明する。以下に示す動作は、制御部26が樹脂成形装置100の各部を制御することにより行われる。なお、制御部26は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換器等を有する専用又は汎用のコンピュータである。
【0046】
基板供給・収納モジュールAにおいて、基板供給部11から基板載置部13に封止前基板Wを送り出す。次に、所定の待機位置にある基板搬送機構14を移動させて、基板載置部13から封止前基板Wを受け取る(図1参照)。そして、基板搬送機構14を樹脂成形モジュールBに移動させて、封止前基板Wを型開きされた上型3に保持する(図2参照)。その後、基板搬送機構14を、所定の待機位置に戻す。
【0047】
上記の封止前基板Wの搬入工程において、対象物計測部20により封止前基板Wの電子部品数、電子部品Wxのスタック数、及びマップ情報が計測される。
【0048】
一方、樹脂材料供給モジュールCにおいて、離型フィルム28を所定の形状にし、所定の待機位置にある移動テーブル15を移動させて、その上に離型フィルム28と枠部材(不図示)とを順次載置して樹脂材料収容部16とする。その後、樹脂材料収容部16を樹脂材料投入機構17に移動させる(図1参照)。次に、樹脂材料投入機構17から樹脂材料収容部16の枠部材の内側に所定量の樹脂材料Jを投入する。その後、移動テーブル15を所定の待機位置に戻す。
【0049】
この樹脂投入工程において、計量部22により樹脂材料Jが計量されるとともに、樹脂撮像部23により樹脂材料収容部16に投入されて撒かれた状態の樹脂材料Jが撮像される。
【0050】
次に、所定の待機位置にある樹脂材料供給機構18を移動させて、移動テーブル15から樹脂材料Jを収容した樹脂材料収容部16を受け取る。そして、樹脂材料供給機構18を樹脂成形モジュールBに移動させて、樹脂材料収容部16の離型フィルム28と樹脂材料収容部16に収容されている樹脂材料Jとを型開きされた下型2のキャビティ2Cに供給する(図2参照)。その後、樹脂材料供給機構18を、所定の待機位置に戻す。なお、離型フィルム28は、樹脂材料Jをキャビティ2Cに供給する前に密着させてもよい。
【0051】
ここで、下型2はヒータプレート461によって予め所定温度に加熱されており、樹脂材料Jは軟化又は溶融した状態である。
【0052】
上記の工程の後、樹脂成形モジュールBにおいて、駆動機構43によって可動盤41を上昇させて、上型保持部47のシール部材474と下型保持部46のシール部材464とを密着させることで密閉空間を形成する(図3参照)。この状態で、図示しない排気機構によって密閉空間を真空状態とする。
【0053】
そして、駆動機構43によって可動盤41を更に上昇させて、側面部材202が上型3に押されて弾性部材204が圧縮変形するとともに、基板Wの電子部品Wxが樹脂材料Jに浸漬するとともに基板Wの部品搭載面が樹脂材料Jにより被覆される。この状態で下型2と上型3とは所定の型締め圧により型締めされる(図3参照)。所定時間が経過した後、型締め機構4により下型2を下降させて下型2と上型3とを型開きする(図4参照)。なお、型締めの途中で、密閉空間を大気圧に戻しても良い。
【0054】
この型締め工程において、温度計測部24により成形型の温度が計測されるとともに、位置計測部25により型締め位置が計測される。
【0055】
次に、基板供給・収納モジュールAの基板搬送機構14を移動させて、型開きされた上型3から樹脂成形品Pを受け取る。基板搬送機構14を基板載置部13に移動させて、基板載置部13に樹脂成形品Pを受け渡す(図1参照)。基板載置部13から基板収納部12に封止済基板Wを収納する。このようにして、樹脂封止が完了する。
【0056】
この樹脂成形品Pの搬出工程において、厚み計測部21aにより樹脂成形品Pの樹脂封止面の複数箇所の厚みが計測されるとともに、成形品撮像部21bにより樹脂成形品Pの樹脂封止面が撮像される。
【0057】
そして、制御部26は、上記の各工程において樹脂成形装置100の各部から情報を収集し、その情報に基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御する。
【0058】
具体的に制御部26は、図5に示すように、樹脂成形毎に、以下の(1)〜(8)の情報を収集する。
(1)対象物計測部20により得られた電子部品数データ及びスタック数データ。
(2)対象物計測部20により得られた電子部品Wxのマップデータ。
(3)計量部22により得られた樹脂計量データ。
(4)樹脂撮像部23により得られた樹脂画像データ。
(5)温度計測部24により得られた成形型の温度データ
(6)位置計測部25により得られた型締め位置データ
(7)厚み計測部21aにより得られた厚みデータ。
(8)成形品撮像部21bにより得られた成形品画像データ。
【0059】
<樹脂成形品Pの不良検出>
そして、制御部26は、樹脂成形品Pの厚みデータに基づいて、樹脂成形品Pの厚み不良を検出する。このとき、制御部26は、例えば予め設定された厚み基準値と厚みデータとを比較して、樹脂成形品Pの厚み不良を検出する。
【0060】
また、制御部26は、樹脂成形品Pの成形品画像データに基づいて、樹脂成形品Pの外観不良(例えば、電子部品Wxの未充填又は樹脂漏れ等)を検出する。このとき、制御部26は、例えば予め設定された基準画像データと成形品画像データとを比較して、樹脂成形品Pの外観不良を検出する。
【0061】
<不良要因の判定>
制御部26は、(a)厚み不良を検出した場合と(b)外観不良を検出した場合とで、以下のようにそれらの不良要因を判定する。
【0062】
(a)厚み不良を検出した場合
制御部26は、電子部品数データ及びスタック数データを用いて、電子部品Wxの誤認識の有無、及び樹脂量計算値が正しいか否かを判定する。また、制御部26は、樹脂計量データを用いて、樹脂計量値が正しいか否かを判定する。
【0063】
また、制御部26は、樹脂画像データを用いて、樹脂材料Jの撒き状態の均一性に関する判定を行う。ここで、判定方法としては、例えば、撒き状態が均一である場合の基準画像データと比較する、又は、樹脂画像データを画像処理して撒き状態を数値化して判定すること等が考えられる。
【0064】
さらに、制御部26は、型締め位置データを用いて、成形時の型締め位置が正しいか否かを判定する。このとき、制御部26は、例えば予め設定された基準位置と計測された型締め位置とを比較して判定する。また、制御部26は、成形型の温度データを用いて、成形時の成形型の温度が正しいか否かを判定する。このとき、制御部26は、例えば予め設定された基準温度と計測された成形型の温度とを比較して判定する。
【0065】
(b)外観不良を検出した場合
制御部26は、マップデータを用いて、電子部品Wxの実装配列が正しいか否かを判定する。このとき、制御部26は、予め入力された基準配列と計測された実装配列とを比較して判定する。
【0066】
また、制御部26は、樹脂画像データを用いて、樹脂材料Jの撒き状態の均一性に関する判定を行う。ここで、判定方法としては、例えば、撒き状態が均一である場合の基準画像データと比較する、又は、樹脂画像データを画像処理して撒き状態を数値化して判断すること等が考えられる。
【0067】
さらに、制御部26は、型締め位置データを用いて、成形時の型締め位置が正しいか否かを判定する。このとき、制御部26は、例えば予め設定された基準位置と計測された型締め位置とを比較して判定する。また、制御部26は、成形型の温度データを用いて、成形時の成形型の温度が正しいか否かを判定する。このとき、制御部26は、例えば予め設定された基準温度と計測された成形型の温度とを比較して判定する。
【0068】
<樹脂成形条件のフィードバック制御>
(a)厚み不良を検出した場合
制御部26は、上記の電子部品数データ及びスタック数データを用いた判定結果に基づいて、投入する樹脂量の設定値を変更する。また、制御部26は、上記の計量データを用いた判定結果に基づいて、計量部22による樹脂計量値を補正する。
【0069】
また、制御部26は、上記の樹脂画像データを用いた判定結果に基づいて樹脂材料Jが不均一と判定した場合には、樹脂材料Jの撒き条件を変更すべく、樹脂撒き時の移動テーブル15の同期動作を変更する。例えば、樹脂画像データにおいて撒かれた樹脂材料Jが多い部分では移動テーブル15の移動速度を速くし、撒かれた樹脂材料Jが少ない部分では移動テーブル15の移動速度を遅くすることが考えられる。
【0070】
さらに、制御部26は、上記の型締め位置データを用いた判定結果に基づいて、型締め位置の設定位置を変更する。また、制御部26は、上記の成形型の温度データを用いた判定結果に基づいて、成形型の設定温度を変更する。
【0071】
(b)外観不良を検出した場合
制御部26は、上記のマップデータを用いた判定結果に基づいて、電子部品Wxの位置に応じて樹脂撒き量を増減させる。ここで、樹脂撒き量を増減させる方法としては、樹脂材料投入機構17からの投入量を増減させるようにしても良いし、移動テーブル15の移動速度又は移動タイミングを制御して増減させることが考えられる。
【0072】
また、制御部26は、上記の樹脂画像データを用いた判定結果に基づいて樹脂材料Jが不均一と判定した場合には、樹脂材料Jの撒き条件を変更すべく、樹脂撒き時の移動テーブル15の同期動作を変更する。例えば、樹脂画像データにおいて撒かれた樹脂材料Jが多い部分では移動テーブル15の移動速度を速くし、撒かれた樹脂材料Jが少ない部分では移動テーブル15の移動速度を遅くすることが考えられる。
【0073】
さらに、制御部26は、上記の型締め位置データを用いた判定結果に基づいて、型締め位置の設定位置を変更する。また、制御部26は、上記の成形型の温度データを用いた判定結果に基づいて、成形型の設定温度を変更する。
【0074】
上記の通り、制御部26が、判定結果に基づいて各部の制御量を変更することによって、次回の樹脂成形時においては、それらがフィードバックされた樹脂成形が行われる。
【0075】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、粒状の樹脂材料Jが撒かれた状態を撮像して得られた樹脂画像データに基づいて樹脂成形条件をフィードバック制御しているので、樹脂成形品Pの例えば厚さ等の品質を向上させることができる。なお、従来のように液状樹脂を用いていないので、その粘度を考慮する必要が無く、顆粒状樹脂を用いることによって、成形範囲内に均一に配置しやすくなる。
【0076】
また、本実施形態によれば、不良が検出される毎にその要因を特定してフィードバックしているので、不良品を次の工程に出さないようにすることができる。
【0077】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0078】
例えば、前記実施形態の制御部は、厚み不良と外観不良とに分けてそれぞれの要因を判定するようにしているが、それらを区別することなく要因を判定するようにしてもよい。
【0079】
また、制御部は、1つの不良要因を1つの樹脂成形条件を変更させることにより解消するものであったが、1つの不良要因を複数の樹脂成形条件を変更することによって解消するようにしてもよい。
【0080】
前記実施形態においては、基板供給・収納モジュールAと樹脂材料供給モジュールCとの間に、2個の樹脂成形モジュールBを接続した構成であるが、基板供給・収納モジュールAと樹脂材料供給モジュールCとを1つのモジュールにして、そのモジュールに樹脂成形モジュールBを接続した構成としても良い。また、樹脂成形装置は、前記実施形態のように各モジュールにモジュール化されていなくても良い。
【0081】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0082】
100・・・樹脂成形装置
J ・・・樹脂材料(顆粒状樹脂)
W ・・・成形対象物
Wx ・・・電子部品
P ・・・樹脂成形品
2 ・・・下型(成形型)
3 ・・・上型(成形型)
4 ・・・型締め機構
20 ・・・対象物計測部
21 ・・・成形品計測部
21a・・・厚み計測部
21b・・・成形品撮像部
22 ・・・計量部
23 ・・・樹脂撮像部
24 ・・・温度計測部
25 ・・・位置計測部
26 ・・・制御部
図1
図2
図3
図4
図5