(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態のセンサ基板およびセンサ装置について、添付の図面を参照して説明する。以下の説明において、上面等のように上下を区別して記載しているが、これは便宜的なものであり、実際にセンサ基板等が使用される際の上下を限定するものではない。
<センサ基板>
<第1実施形態>
【0008】
図1(a)は、本発明の第1実施形態のセンサ基板を示す上面図であり、
図1(b)は
図1(a)のA−A線における断面図である。
【0009】
センサ基板10は、例えばディーゼルエンジン車またはガソリンエンジン車の排気ガス中の煤等の粒子状物質(Particulate Matter:PM)を検知するセンサ装置に用いられる(例えば、自動車の排気ガスの排気通路に配設される)ものである。このセンサ基板10は、上面および下面を有する絶縁基板1と、この絶縁基板1の表面に位置する正極2および負極3を有する検知電極Kと、絶縁基板1の表面に位置しており、正極2と電気的に接続された正極端子4および負極3と電気的に接続された負極端子5を含む接続端子Tとを有している。また、本実施形態では、センサ基板10は、絶縁基板1の内部に位置する発熱部6を有している。検知電極Kは、絶縁基板1の表面のうち上面および下面の両方に位置している。
【0010】
絶縁基板1は、例えば長方形の板状(薄い直方体状)であり、検知電極Kの正極2および負極3を互いに電気的に絶縁させて設けるための基体部分である。この絶縁基板1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、ガラスセラミック焼結体またはジルコニア系セラミック(酸化ジルコニウム質焼結体)等のセラミック焼結体によって形成されている。絶縁基板1は、このようなセラミック焼結体からなる複数の絶縁層が積層されている。
【0011】
絶縁基板1は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体からなる複数の絶縁層が積層されて形成されている場合であれば、以下の方法で製作することができる。なお、以下のように製作された絶縁基板1では、上下に位置し合う絶縁層同士が両者の界面部分で焼結し合うことで、層間の位置を明確には視認できない場合がある。
【0012】
まず、酸化アルミニウム(Al2O3)の粉末に焼結助材として酸化珪素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化マンガン(Mn2O3)等の原料粉末を添加し、さらに適当なバインダ、溶剤および可塑剤を添加する。次に、これらの混合物を混錬してセラミックスラリーを作製する。その後、このセラミックスラリーをドクターブレード法またはカレンダーロール法等によってシート状に成形してセラミックグリーンシートを作製し、セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともにこれを必要に応じて複数枚積層し、高温(約1300〜1600℃)で焼成する。以上の工程によって、絶縁基板1を製作することができる。
【0013】
検知電極Kは、互いに隣り合って位置する正極2および負極3を有している。なお、以下の説明において、簡単のため、正極2および負極3を含む検知電極Kの個々を特に区別せず、単に電極という場合がある。また、絶縁基板1の上面および下面にそれぞれ位置している検知電極Kは、特に区別せず、まとめて検知電極Kという場合がある。
【0014】
センサ基板10のうち検知電極Kが位置している部分において、絶縁基板1に付着するすす等の粒子状物質を介した正極2と負極3との電気的な絶縁性の低下または短絡等が生じる。これによって、センサ基板10が配置された環境におけるすす等の存在を検知することができる。この電気的な短絡等は、例えば正極2と負極3とに接続された外部の検知回路によって検知することができる。なお、上記の環境は、例えば前述した自動車の排気ガス等である。
【0015】
絶縁基板1の表面(
図1の例では上面および下面)には接続端子Tが配置されている。接続端子Tは、正極2または負極3と電気的に接続され、これらの電極に正または負の電位を与える機能を有している。すなわち、本実施形態のセンサ基板10は、正極2と電気的に接続された正極端子4を有している。また、このセンサ基板10は、負極3と電気的に接続された負極端子5を有している。正極端子4および負極端子5が、上記の接続端子Tを構成している。
【0016】
正極2および負極3を含む検知電極K、ならびに正極端子4および負極端子5を含む接続端子Tは、例えば自動車の排気ガス等の高温(例えば数百〜1000℃程度)の気流等の環境において、その全体が酸化するようなことがない金属材料で形成されている。これによって、長期間にわたる粒子状物質の検知ができるようになっている。このような金属材料としては、例えば、不動態化しやすい金属材料および白金等の金属材料が挙げられる。白金は、高温における耐酸化性に優れる物性を有しているため、その全体が参加するような可能性が小さい。また、不動態化しやすい金属材料は、露出する表面が不動態膜で覆われるため、その全体が酸化するような可能性が小さい。
【0017】
不動態化しやすい金属材料としては、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロムおよびケイ素の少なくとも一種を含む卑金属系材料が挙げられる。検知電極を形成している金属材料は、例えばこのような卑金属系材料の少なくとも一種を約80質量%以上の割合で含有している。これらの卑金属系材料は粒子状物質の分解に対して触媒作用がないため、付着した粒子状物質が誤って分解される可能性を低減して、検知精度を高める上では有利である。また、検知電極Kは、上記卑金属系材料とは異なる他の金属材料を含有していても構わない。他の金属材料は、必ずしも不動態膜を形成しやすい金属材料である必要はなく、例えばタングステン等であってもよい。
【0018】
検知電極Kおよび接続端子Tは、例えば次のようにして製作されている。まず、上記の卑金属系材料の粉末を有機溶剤およびバインダとともに混練して金属ペーストを作製する。次に、この金属ペーストを、絶縁基板1となるセラミックグリーンシートの主面等に所定パターンで塗布する。金属ペーストの塗布は、例えばスクリーン印刷法によって行なう。その後、これらの金属ペーストとセラミックグリーンシートとを同時焼成する。以上の工程によって検知電極Kおよび接続端子Tが表面に配置された絶縁基板1を製作することができる。
【0019】
なお、接続端子Tについては、高温の環境下で用いられるものとは限らないため、必ずしも不動態膜が必要なものとは限らない。そのため、接続端子Tは、センサ基板10の使用される形態等に応じて、適宜材料を選択すればよい。例えば、センサ基板10が高温環境下で用いられるものでなければ、接続端子Tは、タングステンまたはモリブデン等の金属材料からなるものでも構わない。
【0020】
本実施形態のセンサ基板10において、負極3の平面視における大きさが、正極2の平面視における大きさよりも小さい。
図1に示す例では、互いに隣り合って位置する正極2および負極3はいずれも直線(線分)状であり、負極3の線幅が正極2の線幅よりも小さい(狭い)。ここで、本発明の実施形態に係るセンサ基板10は、負極3の体積が正極2の体積よりも小さければよく、上述のような平面視における大きさの大小関係に限定されるものではなく、例えば負極3および正極2が面積同一で負極3の厚みが正極2の厚みよりも小さくしてもよい。両電極の構成の大小関係については、他の構成要素との関係で適宜選択すればよい。
【0021】
このような本実施形態に係るセンサ基板10によれば、負極3の体積(あるいは、面積および厚みなど。以下同じ。)が比較的小さいため、小型化が容易である。また、検知電極Kの配置密度の向上による検知精度の向上に対しても有効である。また、正極2の体積(あるいは、面積および厚みなど。以下同じ。)が比較的大きいため、正極2の損耗による影響低減することができ、正極2から負極3へのマイグレーションに起因した電極機能の低下を低減することができる。すなわち、正負極間に電界が存在するため、イオンマイグレーションが発生した場合、正極から負極へと析出が進行する。そのとき、正極に空隙等の欠陥が生じた場合でも、正極の体積が比較的大きいため、電極機能が低下する可能性を低減できる。この詳細については後述する。
【0022】
なお、被検知物である粒子状物質は、例えばすす(微粉のカーボン)であり、正に帯電しやすい。そのため、粒子状物質は負極3およびその付近に付着しやすい。したがって、負極3の大きさ(線幅等)を正極に比べて小さくしたとしても、検知電極Kにおけるすす等の付着を有効に検知することができる。このときに、正の電位が付与されて酸化反応が生じやすい正極3の損耗が抑制されているので、検知電極Kの導通抵抗の増加または断線も効果的に抑制される。したがって、小型化および検知感度の向上が容易なセンサ基板10を提供することができる。
【0023】
なお、
図1に示す例においては、正極2および負極3ともにくし歯状電極である。すなわち、正極2および負極3が、それぞれ、線幅方向に互いに離れ合って配列された直線状の複数の電極線2a、3aと、複数の電極線2a、3aの端部間を直線状に連結している連結線2b、3bとを有している。負極3の電極線3aの線幅が、その負極3の電極線3aに隣り合う正極2の電極線2aの線幅よりも小さい。なお、連結線2b、3bは、上述のように複数の電極線2a、3aの端部間を直線状に連結しているのに代えて、例えばジグザグに連結するなど他の連結構成を採用することができる。
【0024】
検知電極Kについて、くし歯状電極であることにより、正負の複数の電極線2a、3aが狭い間隔で互いに隣り合う構造を容易に実現できる。また、複数の電極線2a、3aにまとめて正または負の電位を与えることも容易である。この場合、正極2の複数の電極線2aは、それぞれの端部間を直線状に連結している1つの連結線2bによって正極端子4と電気的に接続されている。また、負極3の複数の電極線3aは、それぞれの端部間を直線状に連結している1つの連結線3bによって負極端子5と電気的に接続されている。くし歯状電極の複数の電極線2a、3aは、これらの接続端子T(4、5)とまとめて電気的に接続されて、正または負の電位が与えられる。
【0025】
くし歯状電極であるときの検知電極Kは、例えば、正極2の電極線2aの線幅が約80〜120μmに設定される。これに対して、負極3の電極線3aの線幅は、約40〜60μmに設定される。すなわち、正極2の線幅に対して負極3の線幅が約50%程度に設定される。このときに、絶縁基板1の外形寸法は、例えば平面視で約60×4mmの四角形状で厚みが約600〜1200μmの平板状である。このうち上面および下面の検知電極Kが配置される領域は、例えば、例えば1辺の長さが約3.0〜3.6mm程度の矩形状の領域である。正極2と負極3との隣接間隔(互いに隣り合う外辺間の距離)を約40〜100μmに設定すれば、約16〜35対の正負の電極線2a、3aを絶縁基板1の上面および下面にそれぞれ配置することができる。
【0026】
なお、上記電極の対の数は、
図1において互いに隣り合う正の電極線2aと負の電極線3aとを1対としてカウントしたものである。例えば、
図1(a)に示す例では、最も右側に位置する負の電極線3aとその左側に隣り合っている正の電極線2aとで第1の電極対D1が構成されている。また、電極対D1を構成している正の電極線2aと、その左側に隣り合っている負の電極線3aとで第2の電極対D2が構成されている。このように、配列の途中に位置する正または負の電極線2a、3aは、互いに隣り合う2つの電極対に兼用されている。
【0027】
このような本実施形態のセンサ基板10に対して、負極の大きさが正極の大きさと同じである従来技術のセンサ基板(図示せず)であれば、次のように電極の対の数が本実施形態のセンサ基板10よりも少ない。すなわち、負極の線幅が本実施形態の一例における正極の線幅と同じであり、それ以外の各部位の寸法が本実施形態の一例と同じであるとすると、最大で、約14〜29対の正負の電極線の対を絶縁基板上面および下面それぞれに配置される。これは、本実施形態のセンサ基板10に比べて約83〜88%程度である。また、仮に電極の対の数が本実施形態のセンサ基板10と比較例のセンサ基板とで互いに同じであるとすると、上記の対の数の比率の逆に、絶縁基板1の平面視における面積を小さく(例えば約83〜89%程度に)抑えることができる。このように、本実施形態のセンサ基板10は、小型化および検知精度の向上に対して有効である。
【0028】
本実施形態のセンサ基板10において、絶縁基板1の内部に発熱部6が位置している。発熱部6は、例えば抵抗発熱によって約700℃に加熱され、第1検知電極2および第2検知電極3およびその付近に付着した粒子状物質を分解除去する機能を有する。
【0029】
発熱部6は、例えば抵抗発熱する線幅が狭い線状導体であり、ヒーターである。絶縁基板1の上面および下面には、発熱部6と電気的に接続されたヒーター端子7が位置している。ヒーター端子7が外部の電源と電気的に接続され、外部の電源からヒーター端子7を介して発熱部6に電流が通電される。この電流によって発熱部6で熱(抵抗発熱)が生じる。外部の電源は、例えば直流電源であり、20V程度である。
【0030】
図1に示す例では、ヒーター端子7から発熱部6にかけて、線幅が発熱部の線幅よりも広く、電気抵抗が比較的小さい接続導体(符号なし)が配置されている。接続導体に比べて線幅が小さい発熱部6の導体において電気抵抗が比較的大きくなり、ヒーター端子7から供給される電流によって抵抗発熱が生じる。
【0031】
図1に示す例では、絶縁基板1の上面側および下面側のそれぞれにおいて内部に発熱部6が位置している。そのため、発熱部6で生じた熱が絶縁基板1の上面および下面に効果的に伝導される。また、この例において、発熱部6は、平面視において絶縁基板1の外周部に位置している。これにより、外部に熱が逃げやすい外周部を含めて、効率よく絶縁基板1の上面および下面を加熱することができる。このような発熱部6の存在によって、検知電極Kおよびその付近に付着したすす等の粒子状物質を効果的に加熱して、分解除去することができる。したがって、いわゆる再生に要する時間を極力短く抑えることができる、実用性の高いセンサ装置の製作が容易なセンサ基板10とすることができる。
<第2実施形態>
【0032】
図2は、本発明の第2実施形態のセンサ基板10を示す断面図である。
図2において
図1と同様の部位には同様の符号を付している。
図2に示す例においては、負極3が、平面視において、絶縁基板1の外周に沿って位置する外周部3cを有している。また、この外周部3cよりも内側(内方)において、正極2と負極3とが互いに隣り合って位置している。互いに隣り合っている正極2および負極3は、ともに直線状(線分状)であり、線幅方向に並んでいる。また、負極3の線幅が、正極2の線幅よりも狭い。すなわち、負極3の平面視における大きさが、正極2の平面視における大きさよりも小さい。
【0033】
この場合にも、負極3の線幅を比較的狭くしているので、絶縁基板1において検知電極Kの配置の密度を効果的に向上させることができる。したがって、小型化および検知精度の向上に対して有効なセンサ基板10を提供することができる。なお、負極3の外周部3cの線幅と同じ程度に設定することができる。そのため、外周部3cが絶縁基板1の上面または下面に位置していたとしても、絶縁基板1の平面視における大きさを小さく抑えることは容易である。
【0034】
また、正極2の線幅を比較的広くしているので、正極2と負極3とで構成される検知電極Kの電極機能を長期にわたって確保する上で有効である。すなわち、正負の電極2、3に電界が存在するため、正極2と負極3との間でイオンマグレーションが発生する可能性がある。イオンマイグレーションが発生した場合、正極2から負極3へと金属材料の移動、析出が進行する。そのとき、仮に正極2に、金属材料の移動に起因した空隙等の欠陥が生じたとしても、正極の面積(体積、厚み)が比較的大きいため、その欠陥が正極2に占める体積の割合は比較的小さく抑えられる。そのため、正極2の機能の低下を抑制することができ、検知電極Kにおける電極機能、すなわち粒子状物質の付着に起因した正負極2、3間の電気的短絡の検知等の機能が低下する可能性を低減できる。
【0035】
また、この場合には、負極3が外周部3cを有しているため、絶縁基板1の外周部に、正に帯電したすす等の粒子状物質を効果的に引き寄せることができる。すなわち、センサ基板10が配置された環境におけるすす等の吸着の効率向上に対して有効なセンサ基板10とすることができる。このすす等の引き寄せおよび吸着に際して、外周部3cが検知電極Kの全体を囲む広い範囲で絶縁基板1の上面の外周部に位置しているため、上記吸着等が効果的に行なわれる。
【0036】
図2に示す例において、複数の正極2は、絶縁基板1の内部に位置する接続線2cを介して正極端子4と電気的に接続されている。複数の正極2のそれぞれは、正極2から接続線2cにかけて絶縁基板1を厚み方向に貫通している貫通導体(図示せず)等によって接続線2cと電気的に接続されている。また、複数の負極3は、外周部3cを介して負極端子5と電気的に接続されている。複数の負極3のそれぞれの両端が外周部3cと直接に接続されて、複数の負極3と外周部3cとが互いに電気的に接続されている。すなわち、検知電極Kを構成しているそれぞれ複数の正極2および負極3が、1つの正極端子4または負極端子5にまとめて電気的に接続されている。そのため、この例においても、複数の正極2および負極3に対する電位の付与が容易である。
【0037】
なお、
図2に示す例では、複数の負極3のそれぞれの両端が外周部3cと直接に接続されている。つまり、個々の負極3は、外周部3の一部とともに、それぞれに正極2を平面視で囲む枠状のものである。このように負極3が正極2を囲むパターンであることによって、負極3およびその周辺の絶縁基板1表面に優先的に吸着するすす等の粒子状物質を介した、負極3の正極2との電気的な短絡が生じやすくなる。つまり、環境中のすす等の検知精度(低濃度検知)の向上に対して有効である。
【0038】
ただし、外周部3cに対する個々の負極3の端部の接続は、必ずしも、負極3の両端である必要はない。直線状の負極3のいずれか1つの端部が外周部3cと接続されていれば、外周部3cを介した負極3と負極端子5との電気的な接続は可能である。これによって、複数の負極3のそれぞれに、すす等の吸着に有効な電位を負極端子5から与えることができる。
【0039】
外周部3c、貫通導体および接続線2cは、
図1に示す例における検知電極Kおよび接続端子Tと同様の金属材料を用い、同様の方法で形成することができる。貫通導体は、例えば、絶縁基板1となるセラミックグリーンシートにあらかじめ設けておいた貫通孔内に金属ペーストを充填して焼成する方法で形成することができる。貫通孔は、機械的な打ち抜き加工またはレーザ加工等の孔あけ加工で設けることができる。この場合、貫通導体および接続線2c等の、高温環境には露出しない導体部分については、接続端子Tと同様の金属材料を用いて形成してもよい。ただし、貫通導体については、その上端部分等の正極3との接続部分は正極3からの距離が比較的近い。そのため、貫通導体のうち上端部分等の端部は、例えば検知電極Kと同様に不動態膜を形成しやすい金属材料からなるものとしてもよい。
<第3実施形態>
【0040】
図3(a)は本発明の第3実施形態のセンサ基板10を示す平面図であり、
図3(b)は
図3(a)のB−B線における断面図である。
図3において
図1と同様の部位には同様の符号を付している。
図3に示す例において、検知電極Kは、それぞれ柱状導体である正極2Aおよび負極3Aによって構成されている。柱状導体の検知電極Kは、例えば、絶縁基板1の上面から厚み方向の一部を貫通している貫通導体である。柱状導体は例えば円柱状であり、実際に環境中に位置してすす等が吸着される正極2Aおよび負極3Aは、円形状である。また、
図3に示すように、複数の負極3Aのそれぞれの直径が、複数の正極2Aのそれぞれの直径よりも小さい。
【0041】
この例においても、負極3の直径を比較的小さくしているので、絶縁基板1において検知電極Kの配置の密度を効果的に向上させることができる。したがって、小型化および検知精度の向上に対して有効なセンサ基板10を提供することができる。また、正極の直径を比較的大きくしているので、上記のくし歯状電極の場合と同様に、検知電極Kの電極機能の低下の可能性を効果的に低減することができる。
【0042】
なお、円形状の負極3Aの直径は、例えば約50〜80μmであり、円形状の正極2Aの直径は、例えば約100〜120μmの範囲であるとともに負極3Aに対して約1.5〜2倍程度の寸法である。
【0043】
それぞれ柱状である正極2および負極3は、例えば、絶縁基板1の内部に位置する回路状の内部配線(図示せず)を介して接続端子Tと電気的に接続されている。この場合複数の正極2Aまたは負極3Aと接続された内部配線は、正負それぞれ対応して絶縁基板1の上面に配置された接続用の導体4a、5aを介して接続端子Tと電気的に接続されている。接続用の導体4a、5aは、絶縁基板1の上面の検知電極Kが配置された領域に隣接する部分から接続端子Tにかけて位置している。
【0044】
図3に示す例のように、検知電極Kを構成している複数の正極2Aおよび負極3Aが平面視で円形状であるときには、絶縁基板1の上面において個々の正極2Aおよび負極3Aそれぞれの占める面積を小さく抑える上で有利である。そのため、互いに隣り合う正極2Aと負極3Aとの電極対の数を多くすること、または電極対の配置されている面積を小さく抑えること等が容易である。したがって、効果的な小型化および検知精度の向上に対して有利なセンサ基板10とすることができる。
<センサ装置>
【0045】
前述したように、上記構成のセンサ基板1と、接続端子Tに接続された直流電源Pとによって、本発明の実施形態のセンサ装置20が基本的に構成されている。
図4では、この直流電源Pを回路記号によって模式的に示している。
図4に示す例において、センサ基板10の接続端子Tと直流電源Pの電源端子とはリード端子8によって互いに電気的に接続されている。正極端子4に接続されたリード端子8が正の電源端子と接続され、負極端子5に接続されたリード端子8が負の電源端子と接続される。
【0046】
リード端子8は、すす等の粒子状物質の検知に直接関与しない。そのため、リード端子8を形成する材料は、その用いられる環境、センサ基板10としての生産性および経済性等の条件に応じて、適宜選択してもよい。例えば、リード端子8が白金または金等の耐酸化性に優れた金属材料からなるものであれば、センサ装置10としての信頼性向上の点で有利である。また、リード端子8は、経済性等を重視して、鉄−ニッケル−コバルト合金等の鉄系合金、または銅等からなるもので形成してもよい。また、リード端子8が鉄系合金等からなるときに、その露出する表面が金めっき層等のめっき層(図示せず)で保護されていてもよい。
【0047】
リード端子8の接続端子Tに対する接合は、例えば、銀ろう(銀銅ろう材)または金ろう等のろう材(符号なし)によって行なわれる。ろう材についても、リード端子8と同様に、センサ基板10およびセンサ装置20が製造または使用されるときの種々の条件に応じて、適宜その材料が選択される。
【0048】
センサ装置20において、正極2と負極3との電気絶縁性の低下または電気的な短絡の発生、すなわちすす等の付着の検知は、正負一対のリード端子8の間にテスタ等の検知器を接続しておくことで、行なうことができる。この場合、例えば検知器として電流計を用いる。電流計は、正極2と負極3との間で電気的な短絡が生じたときに電流が流れるように接続される。例えば、正負一対のリード端子8の間に、直流電源Pおよび電流計を順次直列に接続すればよい。
【0049】
本発明の実施形態に係るセンサ装置によれば、上述の実施形態に係るセンサ基板と同様、小型化および検知精度の向上に対して有効である。
【0050】
なお、本発明は上述の実施形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば種々の変形は可能である。
【0051】
例えば、検知電極Kは、絶縁基板1の上面側と下面側とで検知電極Kの形状および正負の隣接間隔等の配置形態を異ならせるようにしてもよい。また、検知電極Kは、絶縁基板1の上面および下面以外の表面、例えば、直方体状の絶縁基板の平面視における長辺に沿った側面または短辺に沿った側面(端面)に位置していてもよい。
【0052】
また、負極3が外周部3cを有する構成において、外周部3内に円形状(柱状導体)である正極および負極を配置するようにしてもよい。この場合には、環境中のすす等の粒子状物質を外周部3cで効果的に引き寄せることができるとともに、そのすす等を、比較的高い密度で配置された正極および負極によって効果的に絶縁基板1の表面に付着させることができる。
【0053】
また、複数の正極2と複数の負極3とのそれぞれの隣接間隔は、互いに異なるものであってもよい。この場合には、隣接間隔が比較的小さい部分ですす等の付着を速やかに検知することができるとともに、隣接間隔が比較的大きい部分で、より長期にわたってすす等の新たな付着を検知することができる。
【0054】
また、円形状の正極2Aおよび負極3Aは、
図3の例のような格子状の配列には限定されず、互いに隣り合うもの同士で斜め方向にずれた配置(いわゆる斜め格子状の配列)であってもよい。この場合には、互いに隣り合う正極2Aおよび負極3A間の隣接間隔を小さくする上で有利である。