(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単離された抗CD47モノクローナル抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3と軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3とを含み、ここで
(i) HCDR1が配列番号1に示されるとおりであり、HCDR2が配列番号9に示されるとおりであり、HCDR3が配列番号17に示されるとおりであり、LCDR1が配列番号23に示されるとおりであり、LCDR2が配列番号25に示されるとおりであり、そしてLCDR3が配列番号27に示されるとおりであり;
(ii) HCDR1が配列番号2に示されるとおりであり、HCDR2が配列番号10に示されるとおりであり、HCDR3が配列番号18に示されるとおりであり、LCDR1が配列番号23に示されるとおりであり、LCDR2が配列番号25に示されるとおりであり、そしてLCDR3が配列番号27に示されるとおりであり;
(iii) HCDR1が配列番号3に示されるとおりであり、HCDR2が配列番号11に示されるとおりであり、HCDR3が配列番号17に示されるとおりであり、LCDR1が配列番号23に示されるとおりであり、LCDR2が配列番号25に示されるとおりであり、そしてLCDR3が配列番号27に示されるとおりであり;
(iv) HCDR1が配列番号1に示されるとおりであり、HCDR2が配列番号9に示されるとおりであり、HCDR3が配列番号19に示されるとおりであり、LCDR1が配列番号23に示されるとおりであり、LCDR2が配列番号25に示されるとおりであり、そしてLCDR3が配列番号28に示されるとおりであり;
(v) HCDR1が配列番号4に示されるとおりであり、HCDR2が配列番号9に示されるとおりであり、HCDR3が配列番号19に示されるとおりであり、LCDR1が配列番号23に示されるとおりであり、LCDR2が配列番号25に示されるとおりであり、そしてLCDR3が配列番号28に示されるとおりであり;または
(vi) HCDR1が配列番号5に示されるとおりであり、HCDR2が配列番号12に示されるとおりであり、HCDR3が配列番号19に示されるとおりであり、LCDR1が配列番号23に示されるとおりであり、LCDR2が配列番号25に示されるとおりであり、そしてLCDR3が配列番号28に示されるとおりである、
前記抗体またはそれの抗原結合性断片。
前記フレームワーク配列の少なくとも一部分がヒトコンセンサスフレームワーク配列である、請求項6に記載の単離されたモノクローナル抗体またはそれの抗原結合性断片。
請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗CD47モノクローナル抗体またはそれの抗原結合性断片をコードする核酸を発現させるのに適当である条件下で、請求項11または12に記載の宿主細胞を培養することを含む、前記抗CD47モノクローナル抗体またはそれの抗原結合性断片の調製方法。
対象において癌もしくは腫瘍を治療するための、または癌もしくは腫瘍の症状を緩和するための医薬の製造における、請求項1〜7および14のいずれか一項に記載の抗CD47抗体もしくはそれの抗原結合性断片または請求項15に記載の医薬組成物の使用。
前記癌または腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、リンパ腫、乳癌、頭頸部癌、胃癌、肺癌、食道癌、腸癌、卵巣癌、頸癌、肝癌、腎臓癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸直腸癌、神経膠腫、黒色腫および他の固形腫瘍からなる群より選択される血液学的腫瘍および固形腫瘍である、請求項16または17に記載の使用。
請求項1〜7および14のいずれか一項に記載の抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片を含み、そして腫瘍療法の効果を測定するために使用されるキットであって、該療法の前後に対象からの試料中のCD47発現癌細胞の数を決定するために使用される試薬を含み、ここで該療法後のCD47発現癌細胞の数の減少が該療法が効果的であることを示す、キット。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、抗CD47抗体、該抗D47抗体に関連した組成物、キット、方法および使用を提供する。
【0012】
本発明者らは、本発明において開発された抗体が有意な抗腫瘍活性を有し、腫瘍増殖を大幅に阻害することができ、かつ腫瘍の完全消失さえも可能にするという驚くべき発見を成し遂げた。
【0013】
ある態様では、本発明は、CD47もしくはその断片(好ましくはヒトCD47タンパク質)に結合する抗CD47抗体、またはその抗体断片(好ましくはそれの抗原結合性断片)を提供する。
【0014】
ある態様では、本発明にかかる抗CD47抗体または抗原結合性断片は、下記の重鎖相補性決定領域(HCDRs)の群:(i) 配列番号1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 98および99から成る群より選択されたアミノ酸配列を含むHCDR1、(ii) 配列番号9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 100及び101から成る群より選択されたアミノ酸配列を含むHCDR2、(iii) 配列番号17, 18, 19, 20, 21, 22, 102及び103から成る群より選択されたアミノ酸配列を含むHCDR3、および(iv) 少なくとも1アミノ酸でかつ多くても5アミノ酸のアミノ酸置換(例えば保存的置換)、欠失もしくは挿入を含む、前記(i), (ii)および(iii)に記載のHCDRsから成る群より選択された1〜3つのHCDRsの配列を含むまたはから成り、ここで改変されたCDRsを含む前記抗CD47抗体は、CD47に結合する能力をまだ保有している。
【0015】
ある実施形態では、本発明にかかる抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片は、下記の軽鎖相補性決定領域(LCDRs)の群:(i) 配列番号23および24のアミノ酸配列を含むLCDR1、(ii) 配列番号25と26のアミノ酸配列を含むLCDR2、(iii) 配列番号27, 28, 29および30のアミノ酸配列を含むLCDR3、および(iv) 少なくとも1アミノ酸でかつ多くても5アミノ酸のアミノ酸置換(例えば保存的置換)、欠失もしくは挿入を含む、前記(i), (ii)および(iii)に記載のLCDRs、から成る群より選択された1〜3つのLCDRsの配列を含むまたはから成り、ここで改変されたCDRsを含む前記抗CD47抗体は、CD47に結合する能力をまだ保有している。
【0016】
ある実施形態では、本発明にかかる抗CD47抗体または抗原結合性断片は、A)下記の重鎖相補性決定領域(HCDRs)の群:(i) 配列番号1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 98および99から成る群より選択されたアミノ酸配列を含むHCDR1、(ii) 配列番号9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 100及び101から成る群より選択されたアミノ酸配列を含むHCDR2、(iii) 配列番号17, 18, 19, 20, 21, 22, 102及び103から成る群より選択されたアミノ酸配列を含むHCDR3、および(iv) 少なくとも1アミノ酸でかつ多くても5アミノ酸のアミノ酸置換(例えば保存的置換)、欠失もしくは挿入を含む、前記(i), (ii)および(iii)に記載のHCDRs
から成る群より選択された1〜3つのHCDRs;およびB)下記の軽鎖相補性決定領域(LCDRs)の群:(i) 配列番号23および24のアミノ酸配列を含むLCDR1、(ii) 配列番号25と26のアミノ酸配列を含むLCDR2、(iii) 配列番号27, 28, 29および30のアミノ酸配列を含むLCDR3、および(iv) 少なくとも1アミノ酸でかつ多くても5アミノ酸のアミノ酸置換(例えば保存的置換)、欠失もしくは挿入を含む、前記(i), (ii)および(iii)に記載のLCDRsから成る群より選択された1〜3つのLCDRsを含むまたはから成り、ここで改変されたCDRsを含む前記抗CD47抗体は、CD47に結合する能力をまだ保有している。
【0017】
ある実施形態では、本発明の抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片は、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、ここでHCDR1は配列番号1,2,3,4,5,6,7,8,98および99から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2は配列番号9,10,11,12,13,14,15,16, 100および101から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3は配列番号17,18,19,20, 21, 22, 102および103から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成る。
【0018】
ある実施形態では、本発明の抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片は、軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、ここでLCDR1は配列番号23および24に示されたアミノ酸配列から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2は配列番号25および26に示されたアミノ酸配列から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3は配列番号27, 28, 29および30に示されたアミノ酸配列から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成る。
【0019】
ある実施形態では、本発明の抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片は、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3と軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3とを含み、ここでHCDR1は配列番号1,2,3,4,5,6,7,8,98および99から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2は配列番号9,10,11,12,13,14,15,16, 100および101から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3は配列番号17,18,19,20, 21, 22, 102および103から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR1は配列番号23および24に示されたアミノ酸配列から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2は配列番号25および26に示されたアミノ酸配列から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3は配列番号27, 28, 29および30に示されたアミノ酸配列から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成る。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片であって、重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3と軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3とを含み、ここでHCDR1は配列番号98または99に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2は配列番号100または101に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3は配列番号102または103に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR1は配列番号23および24に示されたアミノ酸配列から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2は配列番号25および26に示されたアミノ酸配列から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3は配列番号27, 28, 29および30に示されたアミノ酸配列から成る群より選択されたアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片を提供する。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片であって、ここでHCDR1が配列番号1に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2が配列番号9に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3が配列番号17に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR1が配列番号17に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2が配列番号25に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3が配列番号27に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片を提供する。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片であって、ここでHCDR1が配列番号2に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2が配列番号10に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3が配列番号18に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR1が配列番号23に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2が配列番号25に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3が配列番号27に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片を提供する。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片であって、ここでHCDR1が配列番号3に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2が配列番号11に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3が配列番号17に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR1が配列番号23に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2が配列番号25に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3が配列番号27に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片を提供する。
【0024】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片であって、ここでHCDR1が配列番号1に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2が配列番号9に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3が配列番号19に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR1が配列番号23に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2が配列番号25に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3が配列番号28に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片を提供する。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片であって、ここでHCDR1が配列番号4に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2が配列番号9に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3が配列番号19に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR1が配列番号23に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2が配列番号25に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3が配列番号28に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片を提供する。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片であって、ここでHCDR1が配列番号5に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2が配列番号12に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3が配列番号19に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR1が配列番号23に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2が配列番号25に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3が配列番号28に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片を提供する。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片であって、ここでHCDR1が配列番号6に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2が配列番号13に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3が配列番号20に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR1が配列番号24に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2が配列番号26に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3が配列番号29に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片を提供する。
【0028】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片であって、ここでHCDR1が配列番号7に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2が配列番号14に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3が配列番号20に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR1が配列番号24に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2が配列番号26に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3が配列番号29に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片を提供する。
【0029】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片であって、ここでHCDR1が配列番号8に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2が配列番号15に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3が配列番号21に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR1が配列番号24に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2が配列番号26に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3が配列番号30に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片を提供する。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片であって、ここでHCDR1が配列番号7に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR2が配列番号16に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;HCDR3が配列番号22に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR1が配列番号24に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR2が配列番号26に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成り;LCDR3が配列番号30に示されたアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性結合断片を提供する。
【0031】
幾つかの実施形態では、本発明の抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片は、配列番号44, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52および53から成る群より選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはから成る、重鎖可変領域HCVRを含む。幾つかの実施形態では、前記抗CD47抗体の重鎖可変領域HCVRが、配列番号44, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52および53から成る群より選択されたアミノ酸配列に比較して1つ以上のアミノ酸置換(例えば保存的置換)、挿入または欠失を有するアミノ酸配列を含むが、しかし前記HCVRを含む抗CD47抗体はまだCD47に結合する能力を保有している。
【0032】
幾つかの実施形態では、本発明の抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片は、配列番号54,55, 57および58に示されたアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはから成る、軽鎖可変領域LCVRを含む。幾つかの実施形態では、前記抗CD47抗体の軽鎖可変領域LCVRが、配列番号54, 55, 57および58に示されたアミノ酸配列に比較して1つ以上のアミノ酸置換(例えば保存的置換)、挿入または欠失を有するアミノ酸配列を含むが、しかし前記LCVRを含む抗CD47抗体はまだCD47に結合する能力を保有している。
【0033】
幾つかの実施形態では、本発明の抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片は、重鎖可変領域(HCVR)と軽鎖可変領域(LCVR)とを含み、ここで重鎖可変領域HCVRが配列番号44, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52および53から成る群より選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはから成り、そして軽鎖可変領域LCVRが配列番号54, 55, 57および58に示されたアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはから成る。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖可変領域HCVRが配列番号44に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り;そして軽鎖可変領域LCVRが配列番号54に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖可変領域HCVRが配列番号45に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り;そして軽鎖可変領域LCVRが配列番号54に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0036】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖可変領域HCVRが配列番号46に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り;そして軽鎖可変領域LCVRが配列番号54に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0037】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖可変領域HCVRが配列番号47に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り;そして軽鎖可変領域LCVRが配列番号55に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0038】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖可変領域HCVRが配列番号48に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り;そして軽鎖可変領域LCVRが配列番号55に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖可変領域HCVRが配列番号49に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り;そして軽鎖可変領域LCVRが配列番号55に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖可変領域HCVRが配列番号50に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り;そして軽鎖可変領域LCVRが配列番号57に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0041】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖可変領域HCVRが配列番号51に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り;そして軽鎖可変領域LCVRが配列番号57に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0042】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖可変領域HCVRが配列番号52に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り;そして軽鎖可変領域LCVRが配列番号58に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0043】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖可変領域HCVRが配列番号53に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り;そして軽鎖可変領域LCVRが配列番号58に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0044】
幾つかの実施形態では、本発明の抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片は、重鎖を含み、ここで前記重鎖が配列番号74, 76, 77, 78, 80, 81, 82, 84, 85, 87, 88, 89, 90, 91, 92, 93, 94, 95, 96および97から成る群より選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはから成る。幾つかの実施形態では、前記CD47抗体の重鎖が配列番号74, 76, 77, 78, 80, 81, 82, 84, 85, 87, 88, 89, 90, 91, 92, 93, 94, 95, 96および97から成る群より選択されたアミノ酸配列に比較して1つ以上のアミノ酸置換(例えば保存的置換)、挿入または欠失を有するアミノ酸配列を含むが、前記重鎖を含む抗CD47抗体はCD47に結合する能力をまだ保有している。
【0045】
幾つかの実施形態では、本発明の抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片は、軽鎖を含み、ここで前記軽鎖が配列番号75, 79, 83および86に示されたアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはから成る。幾つかの実施形態では、前記CD47抗体の軽鎖が配列番号75, 79, 83および86から成る群より選択されたアミノ酸配列に比較して1つ以上のアミノ酸置換(例えば保存的置換)、挿入または欠失を有するアミノ酸配列を含むが、前記軽鎖を含む抗CD47抗体はCD47に結合する能力をまだ保有している。
【0046】
幾つかの実施形態では、本発明の抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片は、重鎖と軽鎖とを含み、ここで前記重鎖が配列番号74, 76, 77, 78, 80, 81, 82, 84, 85, 87, 88, 89, 90, 91, 92, 93, 94, 95, 96および97から成る群より選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはから成り、そして前記軽鎖が配列番号75, 79, 83および86に示されたアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはから成る。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号74に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号75に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号76に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号75に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0049】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号77に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号75に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号78に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号79に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号80に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号79に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0052】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号81に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号79に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号82に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号83に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0054】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号84に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号83に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0055】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号85に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号86に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号87に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号86に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号88に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号75に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号89に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号75に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0059】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号90に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号75に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0060】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号91に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号79に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0061】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号92に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号79に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0062】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号93に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号79に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0063】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号94に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号83に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0064】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号95に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号83に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号96に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号86に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0066】
好ましい実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片であって、重鎖が配列番号97に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成り、そして軽鎖が配列番号86に示されるアミノ酸配列を含みまたはから成る、抗CD47抗体またはそれの抗原性断片を提供する。
【0067】
幾つかの実施形態では、本発明の抗体は、抗CD47抗体のアミノ酸配列の変異体、CD47への結合に対して前記抗体のいずれかと競合する抗体、および前記抗体のいずれかと同じCD47エピトープに結合する抗体も包含する。
【0068】
幾つかの実施形態では、抗CD47抗体がモノクローナル抗体である。ある実施形態では、抗CD47抗体がヒト化抗体である。ある実施形態では、抗CD47抗体がヒト抗体である。ある実施形態では、抗CD47抗体のフレームワーク配列の少なくとも一部分がヒトコンセンサスフレームワーク配列である。一実施形態では、本発明の抗CD47抗体が、好ましくは次の抗体断片:Fab, Fab’-SH, Fv, scFv, または(Fab’)
2断片から成る群より選択されたそれの抗体断片も包含する。
【0069】
幾つかの実施形態では、本発明の抗CD47抗体がSIRPαへのCD47の結合を遮断する遮断抗体である。
【0070】
一態様では、本発明は、上述した抗CD47抗体またはその断片のいずれかをコードする核酸を提供する。一実施態様では、前記核酸を含むベクターが提供される。一実施態様では、該ベクターが発現ベクターである。一実施態様では、該ベクターを含む宿主細胞が提供される。一実施形態では、宿主細胞が真核細胞である。別の実施形態では、宿主細胞が、酵母細胞、哺乳類細胞、または前記抗体もしくはそれの抗原結合性断片を調製するのに適当である他の細胞、から成る群より選択される。別の実施形態では、宿主細胞が原核細胞である。
【0071】
一実施形態では、本発明は、抗CD47抗体またはそれの断片(好ましくは抗原結合性断片)を調製する方法を提供し、該方法は、前記抗体またはそれの断片(好ましくは抗原結合性断片)をコードする核酸を発現させるのに適する条件下で宿主細胞を培養し、そして所望により前記抗体またはその断片(好ましくは抗原結合性断片)を単離することを含む。特定の実施形態では、該方法が更に、宿主細胞から前記抗CD47抗体またはその断片(好ましくは抗原結合性断片)を回収することを含む。
【0072】
一実施形態では、本発明は、本発明の方法により調製された抗CD47抗体またはその断片を提供する。
【0073】
幾つかの実施形態では、本発明は、前記抗CD47抗体またはその断片(好ましくはその抗原結合性断片)のいずれかを含有する組成物を提供し、好ましくは該組成物は医薬組成物として機能する。一実施形態では、該組成物は医薬担体も含有する。
【0074】
一態様では、本発明は、対象においてSIRPαへのCD47の結合を阻害する方法であって、該対象に本発明の抗CD47抗体またはその断片のいずれかの有効量を投与することを含む方法に向けられる。本発明は更に、対象においてSIRPαへのCD47の結合を阻害するための組成物または医薬を調製することにおける、本開示の抗CD47抗体またはその断片のいずれかの使用に向けられる。
【0075】
一態様では、本発明は、対象においてマクロファージ貪食を促進する方法であって、該対象に本開示の抗CD47抗体またはその断片のいずれかの有効量を投与することを含む方法に向けられる。本発明は更に、対象においてマクロファージ貪食を促進するための組成物または医薬を調製することにおける、本開示の抗CD47抗体またはその断片のいずれかの使用に向けられる。一実施形態では、本発明の抗CD47抗体は、対照に比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%または100%以上マクロファージ貪食を増強することができる。
【0076】
別の態様では、本発明は、対象においてCD47関連疾患を治療する方法であって、該対象に本開示の抗CD47抗体またはその断片のいずれかの有効量を投与することを含む方法に向けられる。本発明は更に、対象においてCD47関連疾患を治療するための医薬の調製における、本開示の抗CD47抗体またはその断片のいずれかの使用に向けられる。
【0077】
幾つかの実施形態では、CD47関連疾患が、様々な血液疾患および固形腫瘍であり、例えば限定されないが、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫(MM)、リンパ腫、乳癌、胃癌、肺癌、食道癌、腸癌、卵巣癌、頸癌、腎臓癌、膵臓癌、膀胱癌、神経膠腫、黒色腫および他の固形腫瘍を含む。
【0078】
一態様では、本発明は、標的であるCD47を有する腫瘍に対する免疫療法のための方法であって、対象に本開示の抗CD47抗体またはその断片のいずれかの有効量を投与することを含む方法に向けられる。本発明は、腫瘍を治療するための医薬の調製における本開示の抗CD47抗体またはその断片のいずれかの使用にも向けられる。
【0079】
一態様では、本発明は、CD47活性を除去、阻害または減少させることにより改善、遅延、阻害または予防することができる任意の疾患または障害を治療する方法に向けられる。
【0080】
別の態様では、本発明の方法は更に、併用療法を用いて腫瘍を治療する方法であって、本開示の抗CD47抗体またはその断片のいずれかの有効量と1以上の別の医薬の有効量とを対象に投与することを含む方法に向けられる。幾つかの実施形態では、本開示の方法は、本開示の抗CD47抗体またはその断片が第一の医薬である一方、第二の医薬の有効量を対象に同時投与することを更に含む。一実施形態では、第二の医薬が、関連疾患を治療するための化学療法薬、放射線療法薬、または生体高分子薬である。一実施形態では、該生体高分子薬が例えば、T細胞による認識を通して腫瘍細胞を攻撃する、様々なモノクローナル抗体医薬、例えばリツキシマブ、セツキシマブおよびトラスツズマブ等である。本明細書中で用いる場合の「第二の医薬」という表現は、第一の医薬とは異なる唯一の種類の医薬であるとして解釈してはならない。すなわち、第二の医薬は1つの医薬である必要はなく、複数のそのような医薬から成ってもまたは含んでよい。
【0081】
幾つかの実施形態では、対象または個体は哺乳類、好ましくはヒトである。
【0082】
幾つかの実施形態では、本発明により提供される抗CD47抗体またはその抗原結合性断片は、マクロファージ貪食を促進するのに効果的でありうる。
幾つかの実施形態では、本発明により提供される抗CD47抗体またはその抗原結合性断片は、驚くべきことに、対照抗体と比較して腫瘍の増殖を効果的に阻害することができる。
【0083】
より好ましい実施形態では、本発明により提供される抗CD47抗体またはその断片は、完全に予測できない、技術の現状において一度も報告されていない、腫瘍の完全退縮を可能にする。
【0084】
一観点では、本発明は、サンプル中のCD47タンパク質を検出する方法であって、(a) 該サンプルを本開示の抗CD47抗体またはその断片のいずれかと接触させ;そして(b) 抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片と該CD47タンパク質との間の複合体形成を検出することを含む方法に向けられる。特定の実施形態では、前記CD47がヒトCD47である。一実施形態では、検出方法がインビトロ(生体外)またはインビボ(生体内)法である。一実施形態では、前記抗CD47抗体が、抗CD47抗体を用いる療法に適する対象を選択するために用いられる。一実施形態では、抗CD47抗体が検出可能に標識される。
【0085】
別の態様では、本発明は、腫瘍治療の有効性を測定する方法であって、治療前と後の対象からのサンプル中のCD47発現癌細胞の数を決定することを含み、CD47発現癌細胞の数の減少が該治療が効果的であることを示す方法に向けられる。
【0086】
本発明はまた、本明細書に記載の実施形態のいずれかの組み合わせも包含する。本明細書に記載のいずれかの実施形態または任意組み合わせは、本明細書に記載の発明の抗CD47抗体もしくはその断片、方法および使用それぞれに適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
本発明を下記に詳述する前に、本発明が本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されないこと、それらが異なってもよいことを理解すべきである。ここで用いる用語は特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するつもりではないこと、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるであろうことも理解すべきである。特に断らない限り、全ての技術用語と科学用語は、本発明が属する技術の通常の当業者により一般に解釈されるのと同じ意味を有する。
【0090】
本発明の解釈上、次の定義が適用され、そして適当ならば常に、単数形での用語は複数形も含み、またはその逆もそうである。本明細書中で用いる用語は特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定であることは意図しない。
【0091】
用語「約」は、数値と組み合わせて用いられる場合、特定された数値より5%低い下限から特定された数値より5%高い上限までの範囲内の数値を包含するものである。
【0092】
用語「保存的置換」は、1つのアミノ酸から同じクラスの別のアミノ酸への置換を指し、例えば酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸による置換、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸による置換、および中性アミノ酸の別の中性アミノ酸による置換を指す。典型的な置換は下記の表に示される。
【0094】
用語「抗体」は、本明細書中では最も広範な意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、その例としては限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異的抗体(例えば二特異的抗体)、およびそれらが所望の抗原結合活性を示す限り抗体断片を包含する。完全抗体は、一般に二本の全長重鎖と二本の全長軽鎖とを含み、ある状況では、より短い鎖を含むことができ、例えばラクダでは、天然型抗体は重鎖のみを含みうる。
【0095】
本明細書中で用いられる用語「抗原結合性成分」は、標的抗原に特異的に結合する成分を指す。この用語は、標的分子に特異的に結合することができる、抗体や他の天然分子(例えば受容体、リガンド)または合成分子(例えばDARPins)を包含する。好ましい実施形態では、本発明の抗体の抗原結合性成分は抗体断片である。
【0096】
用語「全長抗体」、「無傷の抗体」および「完全抗体」は互換的に用いられ、生来の抗体構造に実質的に類似した構造を有する抗体、または本明細書中で定義されるようなFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0097】
本明細書中で用いる場合の「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という語は、単一アミノ酸組成を有する抗体分子の調製物を指し、任意の特定方法による抗体の産生を必要とすると解釈すべきでなない。モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージ提示技術、合成技術、例えばCDR移植法、またはそのような技術の組み合わせ、または当業界で既知の他の技術により、作製することができる。
【0098】
本明細書中で用いる場合の「〜に結合する」および「〜に特異的に結合する」という語は、インビトロアッセイ、好ましくは精製された野生型抗原を用いるバイオライト干渉分光法(ForteBio)において抗原性エピトープに結合する抗体または抗原結合性成分を指す。ある実施形態では、抗体または抗原結合性成分は、それがタンパク質および/または高分子の複合混合物の中で標的抗原を優先的に認識する時、その抗原を特異的に結合すると言われる。
【0099】
重鎖の定常領域のアミノ酸配列に依存して、抗体は「クラス」:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに分類され、そしてそれらのクラスの幾つかはサブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4、IgA1並びにIgA2に更に細分される。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常領域はα、δ、ε、γおよびμと称される。5クラスの全てに見つかる軽鎖定常領域(CL)はκ(カッパ)およびλ(ラムダ)と称される。全長軽鎖と重鎖では、可変領域と定常領域が典型的には約12以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、そして重鎖は約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。例えばFundamental Immunology, Ch. 7 (Paul, W.編、第2版、Raven Press, N.Y. (1989)を参照のこと(これはあらゆる目的でその全内容が参考により本明細書中に組み込まれる)。各軽鎖/重鎖ペアの可変領域は典型的に抗原結合部位を形成する。
【0100】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗原への抗体結合に関与する抗体のドメインを指す。生来の抗体の重鎖と軽鎖の可変ドメインは、全体的に類似した構造を有し、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの相補性決定領域を含む。(例えばKindt他、Kuby Immunology, 第6版, W.H. Freeman and Co., p.91 (2007)を参照)。単一のVHとVLドメインでも抗原結合特異性を付与するのに十分である場合もある。更に、特定の抗原を結合する抗体は、該抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使ってそれぞれ相補的VLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることにより単離することができる。例えばPortolano他、J. Immunol. 150: 880-887 (1993); Clarkson他、Nature 352: 624-628 (1991)を参照のこと。
【0101】
可変領域は、3つの超可変領域(これは相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる)により連結された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の典型的に同じ一般構造を示す。一般的に、各ペアからの2本の鎖のCDRがフレームワーク領域により整列され、それによりCDRがエピトープに特異的に結合できるようになる。N末端からC末端の方に向かって、2つの軽鎖および重鎖可変領域は、典型的にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4ドメインを含む。
【0102】
「相補的決定領域」または「CDR領域」または「CDR」または「超可変領域」(これらの用語は超可変領域「HVR」と互換的に用いることができる)は、主として抗原のエピトープへの結合を担う、抗体可変領域中のアミノ酸領域である。重鎖と軽鎖のCDRは、N末端から順に番号付けられ、典型的にCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれる。抗体の重鎖可変ドメイン中に存在するCDRは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3と呼ばれ、そして抗体の軽鎖可変ドメイン中に存在するCDRは、LCDR1、LCDR2およびLCDR3と呼ばれる。
【0103】
所定のVHまたはVLのCDR配列を同定する方法および技術は、当業界で周知である:Kabat相補性決定領域 (CDRs)は、配列変化に基づいて同定され、そして最も汎用されている(Kabat他、Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。Chothia定義は代わりに構造ループの位置を参照し(Chothia他(1987) J Mol. Biol. 196: 901-917; Chothia他(1989) Nature 342: 877-883)、AbM HVRはKabat HVRsとChothia構造ループの間の折衷案であり、Oxford Molecular’s AbM 抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「contacting」(Contact) HVRは、利用可能な複雑な結晶構造の解析に基づいている。CDRを同定するための様々な慣例に従って、それらのHVRs中のHVR/CDR残基の各々が次のように記載される。
【0105】
一実施形態では、本発明の抗体のCDRは、Kabat番号付与法に従って下記のKabat残基位置に存在するCDR配列を有する:
VL中の第24〜34位(LCDR1)、第50〜56位(LCDR2)、および第89〜97位(LCDR3)、並びにVH中の第27〜35位(HCDR1)、第50〜65位(HCDR2)、および第93〜102位(HCDR3)。
【0106】
CDRは、参照CDR配列と同じKabat番号を有する位置に基づいて同定することもできる(例えば本発明の典型的なCDRの1つ)。
【0107】
「抗体断片」は、完全抗体が結合する抗原に結合する、完全抗体の一部分を含む、完全抗体ではない分子を指す。
【0108】
「親和性(アフィニティー)」は、ある分子(例えば抗体)の単一結合部位とそれの結合相手(例えば抗原)との間の非共有結合的相補作用の総和の強度を言う。特に断らない限り、本明細書中で用いる時、「結合親和性」は、結合ペア(例えば抗体と抗原)のメンバー間の1:1相補作用を反映する固有の結合親和性を指す。それの結合相手Yに対する分子Xの親和性は、一般に解離定数(Kd)により表される。従来周知のものおよび本明細書に記載のものを含む当業界で既知の常法により測定することができる。
【0109】
同一のエピトープに対して競合する抗原結合性タンパク質(例えば中和抗原結合タンパク質または中和抗体)に関して用いられる用語「競合する」は、下記のようなアッセイにより決定される抗原結合タンパク質間の競合を意味する:アッセイにおいて試験すべき抗原結合性タンパク質(例えば抗体またはそれの免疫学的機能性誘導体(immunologically functional thereof))は、共通の抗原(例えばCD47またはその断片)への参照抗原結合性タンパク質(例えばリガンドまたは参照抗体)の特異的結合を阻止または阻害する(例えば減少させる)。抗原結合性タンパク質が別のものと競合するかどうかを決定するために、多数の競合結合アッセイが利用可能である。例えば、それらのアッセイは固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接エンザイムイムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイである(例えば、Stahli他, 1983, Methods in Enzymology 9: 242-253参照)。典型的には、該アッセイは、固体表面に結合された精製抗原、または試験すべき未標識の抗原結合性タンパク質か標識された参照抗原結合性タンパク質のいずれかが付着された細胞の使用を含む。競合阻害は、試験すべき抗原結合性タンパク質の存在下で、固体表面にまたは細胞に結合した標識の量を検出することにより測定される。通常、試験すべき抗原結合性タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイにより同定された抗原結合性タンパク質(競合型抗原結合性タンパク質)は、参照抗原結合性タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合性タンパク質;および、2つのエピトープ間で相互立体障害が起こる位に参照抗原結合性タンパク質により結合されたエピトープに十分に近い、隣接エピトープに結合する抗原結合性タンパク質を含む。競合結合を測定する方法に関する追加の詳細は、本明細書中の実施例の項目に提供される。一般に、過剰に存在する時、競合する抗原結合性タンパク質は、参照の抗原結合性タンパク質の特異的結合を少なくとも40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、または75%以上阻害する(例えば減少させる)だろう。ある場合には、結合は少なくとも80〜85%、85〜90%、90〜95%、95〜97%または97%以上阻害される。
【0110】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生された抗体のものに相当するアミノ酸配列を有するもの、またはヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト起源に由来もしくは別のヒト抗体をコードする配列に由来するアミノ酸配列を有する抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合性残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0111】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最大に共通して存在するアミノ酸残基を表すフレームワークを言う。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブタイプからの選択である。通常、配列のサブタイプは、Kabat他、“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,第5版, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), 1-3巻中に記載のものである。一実施形態では、VLについて、サブタイプがKabat他におけるようなサブタイプκIである(上記参照)。一実施形態では、VHについて、サブタイプがKabat他におけるようなサブタイプκIIIである(上記参照)。
【0112】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVRからのアミノ酸残基とヒトFRからのアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を言う。ある実施形態では、ヒト化抗体は少なくとも1つの、典型的には2つの、可変ドメインの実質的全てを含むだろう。ここでHVRの全部または実質的に全部(例えばCDR)が非ヒト抗体のものに相当し、そしてFRの全部または実質的に全部がヒト抗体のものに相当する。ヒト化抗体は任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでよい。抗体の「ヒト化された形」、例えば非ヒト抗体とは、ヒト化を受けている抗体を指す。
【0113】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合性部位を有する抗体断片であり、該断片は同じポリペプチド鎖中で軽鎖可変ドメイン(V
L)に連結された重鎖可変ドメイン(V
H)を含む(V
H−V
L)。同一鎖上で2つのドメイン間を対合させるには短すぎるリンカーを使用することで、それらのドメインが、2つの抗原結合部位を作出するように別の鎖の相補的ドメインと強制的に対合させられる。ダイアボディは二価または二特異的であることができる。ダイアボディは例えば欧州特許EP 404,097号;国際出願WO 1993/01161;Hudson他、Nat. Med. 9: 129-134 (2003);およびHollinger他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)中により詳細に記載されている。トリボディとテトラボディもHudson他、Nat. Med. 9: 129-134 (2003)中に記載されている。
【0114】
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因しうるものでかつ抗体イソタイプで異なる、それらの抗体の生物学的活性を指す。抗体のエフェクター機能の例としては次のものが挙げられる:C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC);貪食;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)のダウンレギュレーション;およびB細胞活性化。
【0115】
用語「有効量」および「治療有効量」は、単回投与でまたは複数回投与で対象に投与した後、該対象の疾患の改善(例えば1以上の症状の改善)および/または症状の進行の遅延などといった、治療した対象において期待の効果をもたらす、本発明の抗体または抗原結合性断片の量を指す。「有効量」および「治療有効量」が、CD47シグナルを低下させるのに十分な量(例えばYamauchi他、2013 Blood, Jan 4; Soto-Pantoja他、2013 Expert Opin Ther Targets, 17: 89-103; Irandoust他、2013 PLoS One, Epub Jan 8; Chao他、2012 Curr Opin Immunol, 24: 225-32; Theocharides他、2012 J Exp Med, 209 (10): 1883-99)、例えば、マクロファージのCD47/SIRPαシグナル伝達軸上のCD47/SIRPα間の相互作用から生じる貪食を阻害するシグナルを減少させるのに十分な抗体の量を指すこともでき、すなわち、本発明の抗体はCD47発現細胞のマクロファージ媒介貪食を促進する。
【0116】
一実施形態では、本発明の抗CD47抗体の有効量は、対照に比較して、マクロファージ貪食を10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%増強/増加することができる。
【0117】
治療有効量は、次の多様な要因を考慮して、当業者に任された医師により容易に決定することができる:哺乳類の種;サイズ、年齢および一般的健康状態;関与する疾患;疾患の程度または重症度;個々の患者の反応;投与される特定の抗体;投与形式;投与される製剤のバイオアベイラビリティプロファイル;選択される投与レジュメ;任意の併用療法の使用。
【0118】
上述したように、ある状況下では、抗体とそれの標的抗原との相互作用は、該標的の機能性を妨害しうる。更に、要求される投与量は、特異的抗原への抗体の結合親和性に依存するだけでなく、投与される対象における抗体のクリアランス速度にも依存する。非限定例として、本発明の抗体または抗体断片の治療有効量は、典型的には約0.1 mg/kg体重〜約100 mg/kg体重の範囲内である。幾つかの実施形態では、本発明の抗体は、0.1 mg/kg、0.5 mg/kg、1 mg/kg、2 mg/kg、5 mg/kg、10 mg/kg、15 mg/kg、20 mg/kg、25 mg/kg、30 mg/kg、50 mg/kg、75 mg/kg、100 mg/kgまたはそれ以上の用量で対象に投与される。一般的な投与頻度は、例えば、1日2回から週1回、2週に1回、3週に1回、月1回、2カ月に1回、3か月に1回、半年に1回までの範囲である。
【0119】
本明細書中で用いる用語「遮断」とは、本発明の抗体の存在下でのCD47シグナル伝達の減少を示す。CD47媒介シグナル伝達の遮断は、本発明の抗CD47抗体の存在下でのCD47シグナル伝達レベルが、対照のCD47シグナル伝達レベル(すなわち、本発明の抗体の不在下でのCD47シグナル伝達レベル)よりも低いことを意味し、ここで減少の程度は、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、99%または100%以上の範囲である。CD47シグナル伝達レベルは、多数の標準技術、例えば下流の遺伝子の活性化および/またはCD47に反応する活性化を測定する、ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて測定することができる。当業者は、CD47シグナル伝達レベルが、例えば市販のキットなどの多数の試験を用いて測定することができると理解すべきである。
【0120】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞系」および「宿主細胞培養物」は互換的に用いられ、そして、中に外来核酸が挿入されている細胞を指し、この細胞の子孫も含む。宿主細胞は「形質転換体」と「形質転換細胞」を含み、それらは初代の形質転換細胞と、継代の数に関係なくそれらから誘導された子孫とを包含する。子孫は核酸含量の点で完全に親細胞と同一でなくてもよく、変異を含んでもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたのと同じ機能または生物活性を有する突然変異子孫も、その中に含まれる。
【0121】
用語「細胞毒性薬」は、本明細書中では細胞機能を抑制または阻害するそして/または細胞死または破壊を引き起こす物質を指すために用いられる。
【0122】
用語「ベクター」は、本明細書中で用いる時、それに連結される別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。該用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、並びにそれが導入された後で宿主細胞のゲノム中に取りこまれるベクターを含む。ある種のベクターは、それに作用可能に連結された核酸の発現を指令することができる。そのようなベクターは「発現ベクター」と呼ばれる。
【0123】
「免疫抱合体(コンジュゲート)」は、1つ以上の非相同分子、例えば非限定的に細胞毒性薬が抱合された抗体である。
【0124】
「個体」または「対象」は哺乳類を含む。哺乳類には、限定されないが、家禽(例えばウシ、ヒツジ、ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類(ヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、およびげっ歯類(例えばマウスやラット)が含まれる。ある実施形態では、個体または対象がヒトである。
【0125】
「単離された」抗体は、それの生来の環境の成分から分離されているものである。幾つかの実施形態では、抗体は、例えば電気泳動(例えばSDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えばイオン交換または逆相HPLC)により測定した時に95%超または99%超の純度に精製される。抗体純度の評価方法の概説については、例えば、Flatman他、J. Chromatogr. B848: 79-87 (2007)を参照のこと。
【0126】
「単離された」核酸は、それの生来の環境の成分から分離されている核酸分子を指す。単離された核酸は、核酸分子を通常含む細胞中に含まれた核酸分子を含むが、その核酸分子は、染色体外に存在するか、またはその生来の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0127】
「抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片をコードする単離された核酸」は、該抗体(またはそれの抗原結合性断片)の重鎖と軽鎖をコードする1以上の核酸分子を指し、例えば単一ベクター中または別個のベクター中に存在するそのような核酸分子、および宿主細胞内の1以上の位置に存在するそのような核酸分子を包含する。
【0128】
参照ポリペプチド配列に対比した「アミノ酸配列同一性の百分率(%)」は、最大の配列同一性%が得られるように、必要であれば配列を整列させそしてギャップを導入した後、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と一致する候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義され、これは配列同一性の一部としていずれの保存的置換も考慮に入れない。アミノ酸配列同一性を決定する目的での整列(アラインメント)は、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMEGALIGN (DNASTAR)ソフトウェアのような公表されているコンピュータソフトウェアを使って、技術的に様々な方法を用いて達成することができる。当業者はアラインメントを測定するのに適当なパラメータを決定することができ、例えば、比較しようとする配列の全長に渡って最大アラインメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む。
【0129】
本出願の配列同一性%に言及する時、それらの百分率は、特に別記しない限り、より長鎖の配列の全長に渡って計算される。長鎖の配列の全長に渡る計算法は、核酸配列とポリペプチド配列の両方に適用できる。
【0130】
用語「赤血球」と「RBC」は同義語であり、互換的に用いられる。
【0131】
用語「凝集」は細胞の凝集を指し、そして用語「血球凝集反応」は、細胞の特定サブセット(すなわち赤血球)の凝集を指す。従って、赤血球凝集反応は凝集の1種である。
1.2 本発明の抗CD47抗体
【0132】
用語「インテグリン会合タンパク質(IAP)」および「CD47」は、本明細書中で用いる時、特に断らない限り、任意の脊椎動物源、例えば哺乳類、例えば霊長類(例えばヒト)とげっ歯類(例えばマウスやラット)由来の任意の生来のCD47を指す。この用語は「全長」のプロセシングを受けていないCD47、並びに細胞中でのプロセシングから生じる任意の形態のCD47またはそれの任意断片を包含する。この用語は、CD47の天然変異体、例えはスプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。
【0133】
用語「抗CD47抗体」、「抗CD47」、「CD47抗体」および「CD47に結合する抗体」は、CD47を標的とする診断薬および/または治療薬として該抗体を使用することができるような程度に十分な親和性で、CD47タンパク質またはそれの断片に結合することができる抗体を指す。一実施形態では、無関係の非CD47タンパク質への抗CD47抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した時に、CD47への抗体の結合の約10%未満である。幾つかの実施形態では、本明細書中に提供される抗CD47抗体は≦1μM、≦100 nM、≦10 nM、≦1nM、≦0.1 nM、≦0.01 nMまたは≦0.001 nM(例えば10
-8 Mまたは10
-8 M以下、例えば10
-8 M〜10
-13 M、例えば10
-9 Mから10
-13 Mまで)の解離定数(Kd)を有する。
【0134】
幾つかの実施形態では、本発明の抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片は、置換、挿入または欠失を含む。好ましい実施形態では、置換、挿入または欠失はCDRの外側の領域中(例えばFR中)に存在する。あるいは、本発明の抗CD47抗体は、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、軽鎖または重鎖上に翻訳後修飾を含む。
【0135】
本発明で提供される抗CD47抗体は、例えばCD47発現を阻害するため(例えば細胞表面上のCD47発現を阻害するため)、活性および/またはシグナル伝達を阻害するため、またはCD47とSIRPαの間の相互作用を妨害するため、阻害活性を示す。本発明で提供される抗CD47抗体は、CD47(例えばヒトCD47)に結合した後または相互作用した後は、完全にもしくは部分的に減少もしくは調節されたCD47発現または活性を生じる。当該抗体とヒトCD47ポリペプチドおよび/またはペプチドとの間の相互作用の後、CD47の生物学的機能が完全に、有意に、または部分的に、減少または調節される。本明細書に記載の抗体の存在下でのCD47発現または活性レベルが、該抗体との相互作用(例えば該抗体への結合)の不在下でのCD47発現または活性レベルに比較して、少なくとも95%(例えば96%、97%、98%、99%または100%)低減される時、該抗体はCD47発現または活性を完全に阻害することができると見なされる。本明細書に記載の抗CD47抗体の存在下でのCD47発現または活性レベルが、該抗CD47抗体への結合の不在下でのCD47発現または活性レベルに比較して、少なくとも50%(例えば55%、60%、75%、80%、85%または90%)低減される時、該抗CD47抗体はCD47発現または活性を有意に阻害することができると見なされる。本明細書に記載の抗体の存在下でのCD47発現または活性レベルが、該抗体との相互作用(例えば該抗体への結合)の不在下でのCD47発現または活性レベルに比較して、95%未満(例えば10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%または90%)低減される時、該抗体はCD47発現または活性レベルを部分的に阻害することができると見なされる。
【0136】
幾つかの実施形態では、1以上のアミノ酸置換を本発明の抗体のFc領域中に導入し、それによりFc領域変異体を作製することができる。Fc領域変異体は、1箇所以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1, IgG2, IgG3またはIgG4 Fc領域)を含むことができる。
【0137】
幾つかの実施形態では、抗体の1個以上の残基がシステイン残基で置換されているシステイン改変抗体、例えば「thioMAbs」を作出することが望ましいだろう。
【0138】
幾つかの実施形態では、当業界で既知でありかつ容易に入手可能である別の非タンパク様成分を含むように更に修飾されてもよい。抗体の誘導体化に適当な成分としては、限定されないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの非限定例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーかランダムコポリマーのいずれか)、デキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0139】
幾つかの実施形態では、本発明は抗CD47抗体の断片を含む。抗体断片の例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)
2;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv);および抗体断片から形成される多特異的抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合性断片(その各々が単一の抗原結合部位を有する)と、残りの「Fc」断片(その名称は容易に結晶化“crystallize”する能力を反映する)とを生成する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、まだ抗原を架橋する能力があるF(ab’)
2断片を生じる。
【0140】
幾つかの実施形態では、本発明の抗CD47抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体の様々な調製方法が当業者に知られており、例えば、Almagro & Franssonにより概説されており、その全内容が参照として本明細書中に組み込まれる(Almagro J.C. & Fransson J., (2008) Frontiers in Bioscience 13: 1619-1633)。Almagro & Franssonは、合理的方法と経験的方法を識別した。合理的方法は、幾つかの改変抗体変異体を作製し、それらの結合特性または任意の他の目的の特性を評価することにより特徴づけられる。設計した変異体が期待の効果を発揮しない場合には、設計と結合評価の新しいラウンドが開始されるだろう。合理的アプローチは、CDR移植、再表面提示、超ヒト化、およびヒト文字列内容最適化(Human String Content Optimization)を含む。対照的に、経験的アプローチは、ヒト化変異体の大型ライブラリーを作製し、濃縮技術またはハイスループット・スクリーニングを用いて最適クローンを選別することに基づく。それにより、経験的アプローチは、多数の抗体変異体に対して検索することができる、信頼できる選別および/またはスクリーニング法に依存する。インビトロ・ディスプレイ(提示)技術、例えばファージ・ディスプレイ法およびリボソーム・ディスプレイ法はそれらの要件を満たし、当業者に周知である。経験的アプローチにはFRライブラリー、Guided selection、フレームワーク・シャフリング、およびヒューマニアリング(Humaneering)が含まれる。
【0141】
ある実施形態では、本発明の抗CD47抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、当業界で既知の様々な技術を使って調製することができる。ヒト抗体は一般にvan Dijk & van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001)およびLonberg, Curr. Opin. Immunol. 20: 450-459 (2008)中に記載されている。
【0142】
本発明の抗体は、1または複数の所望の活性を有する抗体についてコンビナトリアル・ライブラリーをスクリーニングすることにより単離できる。例えば、ファージ提示ライブラリーを作製しそしてそれらのライブラリーを所望の結合特性を有する抗体についてスクリーニングするための様々な方法が当業界で知られている。それらの方法は例えば、Hoogenboom他、Methods in Molecular Biology 178: 1-37 (O’Brien他編、Human Press, Totowa, NJ, 2001)中に概説されており、更に例えばMcCafferty他、Nature 348: 552-554; Clackso他、Nature 352: 624-628 (1991); Marks他、J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks & Bradbury : Methods in Milecular Biology 248: 161-175 (Lo編、Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu他、J. Mol. Biol. 338 (2): 299-310 (2004); Lee他、J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 (34): 12467-12472 (2004); およびLee他、J. Immunol. Methods 284 (1-2): 119-132 (2004)中にも記載されている。
【0143】
本発明における使用に適切な「抗体およびそれの抗原結合性断片」としては、限定されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一価抗体、二特異的抗体、非相同的に結合された抗体、多特異的抗体、組換え抗体、異種抗体、非相同的にハイブリダイズされた抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体(特にCDR移植した抗体)、脱免疫化抗体またはヒト抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)
2断片、Fab発現ライブラリーから作製された断片、Fd、Fv、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、一本鎖抗体(例えばscFv)、ダイアボディ、テトラボディ(Holliger P.他(1983)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90(14), 6444-6448)、ナノボディ(単一ドメイン抗体とも呼ばれる)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)並びに上述したいずれか1つのエピトープ結合性断片が挙げられる。
【0144】
幾つかの実施形態では、本発明の抗体は一特異的、二特異的または多特異的であることができる。多特異的モノクローナル抗体は、標的ポリペプチド上の異なるエピトープに特異的であるか、または複数の標的ポリペプチドに対して特異的な抗原結合性ドメインを含んでもよい。例えばTutt他(1991) J. Immunol. 147: 60-69を参照のこと。モノクローナル抗CD47抗体は、別の機能性分子(例えば別のペプチドまたはタンパク質)に連結させることができまたはそれと同時発現させることができる。例えば、抗体またはそれの断片は、二次より高次の結合特異性を有する二特異的または多特異的抗体を作出するために、1以上の別の分子に機能的に連結(例えば化学カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合または他の形式により)させることができる。
【0145】
幾つかの実施形態では、本発明の抗体はヒトCD47タンパク質に結合する。
【0146】
1.3 本発明の核酸およびそれを含む宿主細胞
一態様では、本発明は、上述した抗CD47抗体またはその断片のいずれかをコードする核酸を提供する。該核酸は、抗体の軽鎖および/または重鎖可変領域を含むアミノ酸配列、または抗体の軽鎖および/または重鎖を含むアミノ酸配列をコードする。
【0147】
一実施形態では、該核酸を含む1以上のベクターが提供される。一実施形態では、該ベクターは発現ベクターである。
【0148】
一実施形態では、ベクターを含む宿主細胞が提供される。抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現のための適当な宿主細胞としては、本明細書中に記載される原核細胞または真核細胞が挙げられる。例えば、抗体は、特にグリコシル化とFcエフェクター機能が必要でない場合には、細菌中で産生することができる。細菌中での抗体断片とポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号および同第5,840,523号明細書;並びにCharlton, Methods in Molecular Biology, 第248巻(Lo, B.K.C編、Human Press, Totowa, NJ (2003), 245-254頁、E.コリ中での抗体断片の発現を記載している)を参照のこと。発現後、抗体を可溶性画分の細菌細胞ペーストから単離することができ、そして更に精製することができることを理解すべきである。
【0149】
一実施形態において、宿主細胞は真核細胞である。別の実施形態では、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳類細胞または抗体もしくはそれの抗原結合性断片の調製に適当である他の細胞からなる群より選択される。例えば、糸状菌または酵母のような真核微生物が、抗体をコードするベクターのための適当なクローニングまたは発現宿主であり、例えばグリコシル化経路が「ヒト化」され、部分的にもしくは完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす真菌や酵母株がそれに含まれる。Gerngross, Nat. Biotech. 22: 1409-1414 (2004), およびLi他、Nat. Biotech. 24: 210-215 (2006)参照。発現するグリコシル化抗体に適当な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)からも誘導される。脊椎動物細胞も宿主として使用できる。例えば、懸濁液中で増殖させるのに適する哺乳類細胞が使用可能である。有用な哺乳類宿主細胞系の別の例は、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1系(COS-7);ヒト胚腎臓細胞系(293または293T細胞、例えばGraham他、J. Gen. Virol. 36: 59 (1977)中に記載)である。有用な哺乳類宿主細胞株の例としては、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 216 (1980));および骨髄腫細胞系、例えばY0、NS0およびSp2/0が挙げられる。抗体産生に適当な特定の哺乳類細胞系の概説については、例えば、Yazaki & Wu, Methods in Molecular Biology, 第248巻(B.K.C.Lo編、Humana Press, Totowa, NJ), 255-268頁(2003)を参照のこと。
【0150】
一実施形態では、抗CD47抗体の調製方法が提供され、該方法は、前記抗体の発現に適当な条件下で、上述の抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養し、そして所望により宿主細胞から(または宿主細胞培養培地から)該抗体を回収することを含む。抗CD47抗体の組換え生産には、抗体、例えば上述した抗体をコードする核酸を単離し、そして宿主細胞中での更なるクローニングおよび/または発現のために1以上のベクター中に挿入する。そのような核酸は、常用手段を使って容易に単離し、配列決定することができる(例えば、該抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)。
【0151】
1.4 医薬組成物と医薬製剤
本発明は更に、CD47に結合する1以上のモノクローナル抗体またはそれの免疫学的活性断片を含む医薬組成物を提供する。本発明で提供される抗CD47抗体または医薬組成物は、担体、賦形剤、および同時投与用製剤に適する他の剤の中に製剤化することができ、それにより輸送、伝達、寛容性などの改善をもたらすことができる。
【0152】
用語「医薬組成物」とは、製剤中に含まれる活性成分の生物活性をもたらすような形態で存在し、そして該製剤を投与しようとする対象にとって許容できないほど毒性である追加の成分を全く含まない製剤を言う。
【0153】
用語「医薬担体」は、治療薬と共に投与される、希釈剤、アジュバント(例えば完全または不完全フロイント・アジュバント)、賦形剤またはビヒクルを指す。
【0154】
本明細書中で用いられる「治療」は、現存する症状、障害、状態または疾患の進行または重症度を緩和し、中断し、遅延させ、軽減し、停止させ、減少させ、または復帰させ、そして関連の疾患の再発を回避することを言う。
【0155】
幾つかの実施形態では、本発明は、治療モジュール、例えば細胞毒性薬または免疫抑制薬に結合された抗CD47モノクローナル抗体(「免疫抱合体(イムノコンジュゲート)」)を含む。細胞毒性薬には細胞に対して有毒な任意の薬品が含まれる。免疫抱合体の形成に適する細胞毒性薬の例(例えば化学療法薬)は当技術分野で周知である。例えばWO05/103081を参照のこと。例えば、細胞毒性薬としては、限定されないが、放射性同位体(例えばAt
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212、およびLuの放射性同位体);化学療法剤または薬〔例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他の挿入剤〕;増殖阻害剤;酵素およびその断片、例えば核酸分解酵素;抗生物質;毒素、例えば細菌、真菌、植物または動物起源の小分子毒素もしくは酵素活性毒素(それの断片および/または変異体を含む);および様々な既知の抗腫瘍剤または抗癌剤が挙げられる。
【0156】
本発明は更に、抗CD47抗体を含む組成物(医薬組成物または医薬製剤を含む)および抗CD47抗体をコードするポリ核酸を含む組成物を包含する。特定の実施形態では、該組成物は、CD47に結合する1以上の抗体、またはCD47に結合する1以上の抗体をコードする1以上のポリ核酸を含有する。それらの組成物は、適当な医薬担体、例えば当業界で既知の医薬賦形剤、例えば緩衝剤を更に含んでもよい。
【0157】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体と医薬担体とを含むことができる。それらの医薬組成物はキット、例えば診断キット中に含めることが可能である。
【0158】
本発明における使用に適当な医薬担体は、無菌液体、例えば水および油、例えば石油、動物、植物もしくは合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油等であることができる。医薬組成物が静脈内投与される場合には水が好ましい担体である。生理食塩水溶液、ブドウ糖水溶液およびグルセロール溶液も、特に注射液剤用に、液体担体として使用することができる。適当な医薬担体としては、デンプン、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦、石灰(チョーク)、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、ポリプロピレングリコール、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。賦形剤の使用法およびそれの用途については、“Handbook of Pharmaceutical Excipients”,第5版、R.C. Rowe; P.J. Seskey & S.C. Owen, Pharmaceutical Press, London, Chicagoも参照のこと。所望であれば、該組成物は、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含むことができる。それらの組成物は液剤、懸濁液剤、乳剤、錠剤、ピル、カプセル剤、粉剤、徐放性製剤などの形態をとることができる。経口製剤は標準担体、例えば薬用のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、およびサッカリンを含むことができる。
【0159】
本明細書に記載の本発明の抗CD47抗体を含む医薬製剤は、所望の純度を有する本発明の抗CD47抗体を、1以上の任意の医薬担体と混合することにより(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第16版、Osol, A.編(1980))、好ましくは凍結乾燥製剤または水溶液の形で調製することができる。
【0160】
典型的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号明細書に記載されている。水性抗体製剤は、米国特許第6,171,586号明細書およびWO 2006/044908号公報中に記載されたものを含み、後者の製剤はヒスチジン酢酸塩緩衝液を含む。
【0161】
本発明の医薬組成物または医薬製剤は、処置すべき特定の適応症に必要であるならば複数の活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない補完活性を有するものを更に含むことができる。例えば、理想的にスタチンも共に提供される。活性成分は、目的の使用に効果的な量で適切に組み合わせて存在する。
【0162】
徐放性製剤を調製してもよい。適当な徐放性製剤の例としては、抗体を含む固形の疎水性ポリマーの半透過性マトリクスが挙げられ、該マトリクスは造形された物品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルである。
【0163】
1.5 抗体を用いる治療方法およびそれの使用
一態様では、本発明は、対象におけるSIRPαへのCD47の結合を阻害するおよび/または拮抗する方法であって、本明細書に記載の抗CD47抗体またはその断片のいずれかの有効量を該対象に投与することを含む方法に向けられる。別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗CD47抗体またはその断片のいずれかの有効量を該対象に投与することを含む、対象における食細胞の貪食を促進する方法に向けられる。一態様では、本発明は、治療標的であるCD47関連疾患を治療する方法であって、対象に本開示の抗CD47抗体またはその断片のいずれかの有効量を投与することを含む方法に向けられる。一態様では、本発明は、SIRPαへのCD47の結合を排除、阻害または減少させることにより任意の疾患または障害を抑制、遅延、阻害または予防することができる方法に向けられる。別の態様では、本発明は、必要とする対象において癌または腫瘍を治療する方法であって、本発明の抗CD47抗体またはその断片を該対象に投与することを通して、該対象の癌または腫瘍の症状を軽減するため、および該対象において癌または腫瘍の再発を回避するための方法を提供する。
【0164】
一態様では、本発明において提供される抗CD47抗体、それの抗原結合性断片およびそれを含む医薬組成物は、対象における異常なCD47発現、活性および/またはシグナル伝達に関連した疾患と障害の診断、予後診断、経過観察(モニタリング)、治療、緩和および/または予防のために治療薬として使用することができる。対象において異常なCD47発現、活性および/またはシグナル伝達に関連した疾患と障害の存在を標準アッセイにより同定する際に、本明細書に開示される抗CD47抗体、それの抗原結合性断片およびそれを含む医薬組成物を投与することができる。
【0165】
更なる態様では、本発明は、上述した関連疾患または障害を治療するための医薬品を製造または調製する際の抗CD47抗体の使用を提供する。
【0166】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法および使用は、少なくとも1つの追加の治療薬、例えば化学療法薬、放射線療法薬または生体高分子薬の有効量を、前記個体に投与することを更に含む。一実施形態では、前記生体高分子薬は、例えば、T細胞による認識を通して腫瘍細胞を攻撃する様々なモノクローナル抗体医薬、例えばリツキシマブ、セツキシマブおよびトラスツズマブである。
【0167】
上述した併用療法は、組み合わせ投与(2種以上の治療薬が同一製剤中または個別製剤中に含まれる)および個別投与を包含し、ここで本発明の抗CD47抗体の投与は、追加の治療薬および/またはアジュバントの投与の前、同時、および/または後に行うことができる。
【0168】
本発明の抗体(および任意の追加の治療薬)は適当な手段により、例えば非経口、肺内及び鼻腔内投与により、そして局所治療が望ましい場合には、病巣内に投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。
投与は適当な経路を介することができ、投与の短期または長期性質にある程度依存するが、注射、例えば静脈注射または皮下注射によることができる。限定されないが、様々な時点に渡る単回または多数回投与、ボーラス投与およびパルス注入をはじめとする様々な投薬スケジュールが本発明で意図される。
【0169】
疾患の予防または治療には、本発明の抗体の適当な投与量(単独で使用する時または1以上の他の追加の治療薬と併用する時)は、処置すべき疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度と経過、抗体が予防目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、前回の治療(previous therapy)、患者の臨床履歴と抗体への応答、担当医の裁量に依存するだろう。抗体は一回でまたは一連の治療に渡って患者に適当に投与される。
【0170】
別の態様では、本発明の抗体はインビボまたはインビトロでCD47関連疾患の治療の過程を検出するのに有用でありうる。例えば、疾患の治療のためまたは症状を緩和するための特定の治療法が効果的かどうかは、CD47発現細胞(例えば癌細胞)の数の増加または減少を測定することにより決定することができる。
【0171】
大部分の抗CD47抗体は、ヒト赤血球の血球凝集反応を誘導すると報告されている。赤血球凝集反応は、同型相互作用の一例であり、二価のCD47結合体での処置が2つのCD47発現細胞の集合または凝集を誘導する。例えば、完全IgGまたはF(ab’)
2としての抗CD47抗体MABLは、赤血球の血球凝集反応を可能にすると報告されており、その効果はMABLがscFvまたは二価scFに改変された場合にのみ弱められた(例えばUno S, Kinoshita Y, Azuma Y他、Antitumor activity of a monoclonal antibody against CD47 in xenograft models of human leukemia, Oncol Rep 2007; 17:1189-94; Kikuchi Y., Uno S, Yoshimura Y他、A bivalent single-chain Fv fragment against CD47 induces apoptosis for leukemic cells, Biochem Biophys Res Commun 2004; 315: 912-8)。別の既知抗CD47抗体(B6H12、BRC126およびCC2C6を含む)も、RBCの血球凝集反応を引き起こしうる。従って、細胞の凝集が現存の完全IgG抗体を用いてCD47を治療的にターゲッテングするときの主たる限定要因である。
貪食作用を促進するSIPRαとのCD47の相互作用を遮断する当該技術分野で開示されているほとんどの抗体が明白な細胞凝集を生じるとすると、マクロファージ貪食を効果的に促進することができないだけでなく、細胞の凝集にも至らない新規な抗CD47抗体の大きな必要がなおある。この点での要望は、本出願明細書中に開示される抗CD47抗体により満たされ、貪食を促進するのに効果的であり、抗腫瘍成長および腫瘍の除去という優れた効果を発揮するだけでなく、治療効果を発揮しながら明白な細胞凝集を引き起こさず、それにより有意に減少した副作用を有する。
【0172】
当業者は、通常の実験、例えばRBCの赤血球凝集反応により、凝集レベルを定量することができる。例えば、血球凝集試験は本発明の抗CD47抗体の存在下で当業者により実施され、続いて下記の実施例に記載のように、RBCスポットの面積を測定して血球凝集反応のレベルを決定することができる。ある場合には、本発明の抗CD47抗体の存在下と本発明の抗CD47抗体の非存在下で(すなわち血球凝集反応なしの条件下で)、並びに既知の別の抗CD47抗体の存在下で、RBCスポットの面積間の比較を行った。このようにして、血球凝集反応をベースライン対照に対して定量した。RBCスポットの面積が大きければ大きいほど、血球凝集反応のレベルが高くなる。あるいは、血球凝集反応はPBCスポットの密度分析により定量することもできる。
1.6 診断および検出のための方法と組成物
【0173】
ある実施形態では、本明細書に提供される抗CD47抗体またはそれの抗原結合性断片のいずれも、生物学的試料中のCD47の存在を検出するのに有用である。本明細書で使用する「検出」は、定量的または定性的検出を含む。特定の実施形態では、生物学的試料は、血液、血清または生物学的起源の他の液体試料である。特定の実施形態では、生物学的試料が細胞または組織を含む。
【0174】
幾つかの実施形態では、標識抗CD47抗体が提供される。標識としては、限定されないが、直接検出される標識もしくは成分(例えば蛍光標識、発色団標識、電子密度標識、化学発光標識および放射性標識)、並びに間接的に検出される、例えば酵素反応もしくは分子相互作用を通して検出される、酵素やリガンドのような成分が挙げられる。典型的な標識としては、限定されないが、放射性同位体
32P、
14C、
125I、
3Hおよび
131I、フルオロフォア、例えば希土類キレートまたはフルオレセインとその誘導体、ローダミンとその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えば蛍ルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号明細書)、フルオレセイン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、西洋わさびペルオキシダーゼ(HR)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を使用してHR、ラクトペルオキシダーゼまたはミクロペルオキシダーゼのような色素前駆体を酸化する酵素とカップリングされた、複素環式オキシダーゼ、例えばウリカーゼやキサンチンオキシダーゼ;ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカル等が挙げられる。
【0175】
本発明を次の実施例により更に説明する。しかしながら、本発明は、限定すること以外の例示的な方法で実施例を用いて記載され、そして当業者により様々な変更をなしうることは理解されるだろう。
1.7 本発明の典型的抗CD47抗体の配列
【0185】
本発明の抗体の重鎖と軽鎖の全長アミノ酸配列
ADI26624−IgG4
HCのアミノ酸配列(配列番号74):
【0189】
ADI29336−IgG4
HCのアミノ酸配列(配列番号76)
【0191】
LCのアミノ酸配列(配列番号75)
ADI29340−IgG4
HCのアミノ酸配列(配列番号77)
【0193】
LCのアミノ酸配列(配列番号75)
ADI26630−IgG4
HCのアミノ酸配列(配列番号78)
【0197】
ADI29341−IgG4
HCのアミノ酸配列(配列番号80)
【0199】
LCのアミノ酸配列(配列番号79)
ADI29349−IgG4
HCのアミノ酸配列(配列番号81)
【0201】
LCのアミノ酸配列(配列番号79)
ADI26591−IgG4
HCのアミノ酸配列(配列番号82)
【0205】
ADI29371−IgG4
HCのアミノ酸配列(配列番号84)
【0207】
LCのアミノ酸配列(配列番号83)
ADI30793−IgG4
HCのアミノ酸配列(配列番号85)
【0211】
ADI30794−IgG4
HCのアミノ酸配列(配列番号87)
【0213】
LCのアミノ酸配列(配列番号86)
ADI26624−IgG1
HCのアミノ酸配列(配列番号88)
【0215】
LCのアミノ酸配列(配列番号75)
ADI29336−IgG1
HCのアミノ酸配列(配列番号89)
【0217】
LCのアミノ酸配列(配列番号75)
ADI29340−IgG1
HCのアミノ酸配列(配列番号90)
【0219】
LCのアミノ酸配列(配列番号75)
ADI26630−IgG1
HCのアミノ酸配列(配列番号91)
【0221】
LCのアミノ酸配列(配列番号79)
ADI29341−IgG1
HCのアミノ酸配列(配列番号92)
【0223】
LCのアミノ酸配列(配列番号79)
ADI29349−IgG1
HCのアミノ酸配列(配列番号93)
【0225】
LCのアミノ酸配列(配列番号79)
ADI26591−IgG1
HCのアミノ酸配列(配列番号94)
【0227】
LCのアミノ酸配列(配列番号83)
ADI29371−IgG1
HCのアミノ酸配列(配列番号95)
【0229】
LCのアミノ酸配列(配列番号83)
ADI30793−IgG1
HCのアミノ酸配列(配列番号96)
【0231】
LCのアミノ酸配列(配列番号86)
ADI30794−IgG1
HCのアミノ酸配列(配列番号97)
【0233】
LCのアミノ酸配列(配列番号86)
CD47タンパク質のアミノ酸配列(配列番号56)
【0235】
添付図面に示された陰性対照の配列は以下の通りである:
【0238】
IgG1クラスの陰性対照は、IgG1クラスの試験抗体を用いる場合に使用され;そしてIgG4クラスの陰性対照はIgG4クラスの試験抗体を用いる場合に使用される。
【実施例】
【0239】
実施例1.抗CD47抗体および対照抗体の産生と精製
本願の「配列表」の項目に、本発明に代表される10種の抗体(ADI-26624, ADI-29336, ADI-29340, ADI-26630, ADI-29341, ADI-29349, ADI-26591, ADI-29371, ADI-30793, ADI-30794)のCDR領域、軽鎖および重鎖可変領域、並びに軽鎖および重鎖のアミノ酸配列と、対応するヌクレオチド配列が列挙される。更に、本発明において上述した典型的抗体の軽鎖、重鎖、軽鎖および重鎖可変領域についての配列番号付けが第1表に示される。
本発明の抗体は酵母細胞中とCHO-S細胞中で発現させ、次いで精製した。
【0240】
酵母細胞中での発現と精製
現行手順(WO 2009036379;WO 2010105256; WO 2012009568)に従って、酵母ベースの抗体提示ライブラリー(Adimab)を、各ライブラリーが1×10
9の多様性になるように増幅させた。簡単に言えば、Miltenyi ComanyからのMACSシステムを使って、最初の2ラウンドのスクリーニングにより磁気活性化細胞選別を行った。1ラウンド目は、該ライブラリーの酵母細胞(〜1×10
10細胞/ライブラリー)を別々に、100 nMビオチン標識CD47抗原(Acro Biosystems, カタログ番号CD7-H5227-1 mg)を含有するFACS洗浄緩衝液(0.1%ウシ血清タンパク質を含むリン酸塩緩衝液)中で室温にて15分間インキュベートした。細胞を50 mLの予冷したFACS洗浄緩衝液で洗浄し、次いで40 mLの同洗浄緩衝液中に再懸濁し、そして500μLのストレプトマイシンマイクロビーズ(Miltenyi LS)の添加後、4℃にて15分間インキュベートした。1000 rpmでの5分間の遠心分離により上清を捨て、細胞ペレットを5 mLのFACS洗浄緩衝液中に再懸濁し、その細胞懸濁液をMiltenyi LSカラムに投入した。添加が終了した後、カラムを各洗浄3 mLのFACS洗浄緩衝液で3回洗浄した。Miltenyi LSカラムを磁気領域から取り外し、次いで5 mLの培養培地を用いて溶出させた。溶出した酵母細胞を収集し、37℃で一晩増殖させた。
【0241】
次のラウンドの細胞選別にはフローサイトメーターを使用した。MACSシステムでのスクリーニングから得られた約1×10
8個の酵母細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、ビオチン標識CD47抗原を含む培養ブロス中で低濃度(100-1 nM)で室温にて培養した。培養ブロスを捨て、細胞をFACS洗浄緩衝液で2回洗浄し、次いでLC-FITC(ヒト免疫グロブリンF(ab’)κ鎖に対するFITC標識ヤギ抗体、Southern Biotech)(1:100希釈)試薬と混合し、次いでSA-633(ストレプトアビジン-633、Molecular Probes)(1:500希釈)またはSA-PE(ストレプトアビジン−フィコエリスリン、Sigma)(1:50希釈)試薬と混合し、4℃で15分間インキュベートした。細胞を予冷FACS洗浄緩衝液で2回溶出させ、遠心分離し、0.4 mLの同緩衝液中に再懸濁し、フィルターを付けた分離管に移した。細胞をFACS ARITA (BD Biosciences)を用いて選別した。
【0242】
スクリーニングを通して得られた、抗CD47抗体を発現する酵母細胞を、振盪しながら30℃で48時間、CD47に対する抗体を発現させるよう誘導した。誘導の完了後、酵母細胞を1300 rpmでの10分間の遠心分離により除去し、上清を回収した。上清中の抗CD47抗体をプロテインAカラム上で精製し、pH 2.0の酢酸溶液を用いて溶出させた。>95%の抗体純度で抗CD47抗体が得られた。対応するFab断片は、パパイン消化とKappaSelect(GE Healthcare Life Sciences)を用いた精製により得ることができた。
【0243】
CHO-S細胞中での発現と精製
当該抗体を発現するCHO-S細胞系は、Freedom(登録商標)CHO-S(登録商標)キット(Invitrogen)を使って製造元の指示書に従って確立した。まず、抗体分子の重鎖と軽鎖のDNA配列を同じpCHO1.0プラスミド中に、重鎖が軽鎖の上流にくるように挿入した。作製されたpCHO1.0プラスミドを次いで化学的トランスフェクションとエレクトロポレーションによりCHO細胞系中に導入した。トランスフェクションの48時間後に、ForteBioを使って抗体の収量を検出してトランスフェクション効率を測定した。トランスフェクト細胞を2ラウンドの選択的スクリーニングにかけた後、高い抗体発現率を有する細胞プールを得た。次いで細胞プールを増殖させて抗体を高度に発現させ、細胞上清を収集し、プロテインAカラム上で>95%の抗体純度に精製した。
【0244】
第1表.本発明において得られた10種の典型的抗体の軽鎖、重鎖、軽鎖および重鎖可変領域のアミノ酸配列の番号付け
【0245】
【表7】
【0246】
実施例で使用する下記の対照抗体は、293HEK細胞中で発現させ、精製された:
【0247】
【化28】
【0248】
Hu5F9は、293HEK細胞中で一時的に発現されたヒト抗CD47抗体であり、米国特許第2015/0183874 A1号明細書中の抗体「5F9」のものと同じ配列を有する。AB6.12は、293HEK細胞中で一時的に発現されたヒト化抗CD47抗体であり、米国特許第9045541号の抗体「AB6.12」と同じ配列を有する。米国特許第US 9045541号に開示された抗体「AB6.12」は、明白な細胞凝集を引き起こさないであろう抗CD47抗体である。
【0249】
293HEK細胞中での抗体の一時的発現には、ベクターpTT5を使用した。まず、抗体の重鎖と軽鎖を単一のpTT5ベクター中でクローニングした。抗体重鎖と軽鎖を担持するpTT5ベクターを、化学的トランスフェクションにより293HEK細胞中に導入した。使用した化学的トランスフェクション試薬はPEI(Polysciencesから購入)であり、293HEK細胞の一時的トランスフェクションは製造元により提供されたプロトコルに従って実施した。まず、プラスミドDNAとトランスフェクション試薬をクリーンベンチ内で調製し、F17培地(Gibco)の半量(トランスフェクション容量の1/5である容積)をそれぞれ50 mL遠心分離管に添加し、一方の半量はろ過済みのプラスミド(130μg/100 mL)が補足され、もう半量はろ過済みのPEI(1 g/L、Polysciences)が補足され(質量比(プラスミド:PEI)=1:3)、その各々を5分間十分に混合した。次いで、その2つの部分を穏やかに20回攪拌し、15〜30分間静置しておき、ただし30分より長くは置かなかった。DNA/PEI混合物を静かに293HEK細胞中に注ぎ入れ、十分混合した。37℃、8%CO
2の条件下で7日間細胞を培養し、その間、48時間毎に新鮮な培地を加えた。7日後、または≦60%の細胞生存度にまで連続培養した後、13000 rpmで20分間の遠心分離を行った。上清を収集し、プロテインAカラム上で>95%の抗体純度にまで精製した。
【0250】
実施例2.本発明の抗CD47抗体の親和性測定
本発明の上述した10種の典型的抗体の平衡解離定数(K
D)を、生物光学干渉法(bio-light interferometry)(ForteBio)アッセイを用いて決定した。
【0251】
ForteBio親和性アッセイは、以前に記載された通りに実施した(Estep, P.他、High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binding. MAbs 2013, 5(2): p270-8)。簡単に言えば、センサーをオフラインでアッセイ緩衝液中30分間平衡化させ、次いでオンラインで60秒間テストしてベースラインを求めた。上記の通り得られた精製抗体をオンラインでAHQセンサー(ForteBio)上に負荷し、ForteBio親和性測定を実施した。次いで、抗体をロードしたセンサーを100 nMのCD47抗原に5分間暴露し、続いて該センサーをアッセイ緩衝液中に5分間移し、解離速度を測定した。1:1結合モデルを使って、速度論的分析を実施した。
【0252】
上記アッセイに記載の通り実施した試験において、ADI-26624、ADI-26630、ADI-26591、ADI-29336、ADI-29340、ADI-29341、ADI-29349、ADI-29371、ADI-30793およびADI-30794の親和性を第2表に示す。
【0253】
第2表:生物光学干渉法により測定されたIgG1型の本発明抗体の結合
【0254】
【表8】
【0255】
注:N.B.は結合なしを示す。
本発明の上記10種の抗体の全てが、当業界で認められている既知の抗CD47抗体であるHu5F9の親和性に匹敵する、非常に高い親和性を呈することが分かる。
【0256】
実施例3.ヒトCD47に結合する本発明の抗CD47抗体
フローサイトメトリーに基づいたアッセイにおいて、ヒトCD47への前記10種の典型的な本発明抗体の結合を測定した。
【0257】
多重クローニング部位(MCS)中にクローニングされたヒトCD47 cDNA(Sino Biological)を担持するpCHO1.0ベクター(Invitrogen)を、CHO細胞にトランスフェクトすることにより、ヒトCD47を過剰発現するCHO細胞(CHO-hCD47細胞)を作出した。CHO-hCD47細胞(0.2×10
6細胞)を、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBS中で様々な濃度の試験抗体(本発明の前記10種の典型的抗体およびHu5F9、900 nMの最大濃度、3倍希釈、合計11種の濃度で試験した)と共に混合し、氷上で30分間インキュベートした。次いで細胞を少なくとも2回洗浄し、次いで0.1%BSAを含むPBS中で二次抗体(PE標識ヤギ抗ヒトIgG抗体、Southern Biotech、最終濃度5μg/mL)と共に氷上で30分間インキュベートした(遮光下)。細胞を少なくとも2回洗浄し、フローサイトメトリーにより分析した。フローサイトメトリーはAccuri C6システム(BD Biosciences)上で実施し、細胞のMFIに従って、濃度依存曲線をGraphPadに当てはめた。
【0258】
ADI-26591、ADI-26624およびADI-26630(IgG1型、酵母中で発現)は、CHO細胞上に過剰発現されたhCD47(配列番号56)に、それぞれ3.77 nM、2.254 nMおよび3.895 nMのEC
50値で結合し、これはCHO細胞上に過剰発現されたhCD47への対照抗体Hu5F9の結合能(対照抗体Hu5F9のEC
50値は3.726 nMである)に匹敵する(
図1参照)。
【0259】
上記アッセイにおいて記載した通りに実施した試験において、酵母細胞中で産生されたIgG1型のADI-29336、ADI-29340、ADI-29341、ADI-29349、ADI-29371、ADI-30793およびADI-30794は、それぞれ、CHO細胞上に過剰発現されたhCD47に、6.725 nM、3.529 nM、3.344 nM、3.13 nM、2.132 nM、2.921 nM、および3.697 nMのEC
50値で結合し、これはCHO細胞上に過剰発現されたCD47への対照抗体Hu5F9の結合能(3.726nMのEC
50値を有する)と本質的に一致する。
【0260】
CHO細胞中で産生されたADI-29336、ADI-29340、ADI-29341、ADI-29349およびADI-29371抗体は、CHO細胞上に過剰発現されたhCD47に、それぞれ2.475 nM、2.194 nM、1.892 nM、2.043 nMおよび2.31 nMで結合し、細胞レベルでのそれらの抗体のhCD47への親和性は全て、対照抗体Hu5F9の結合能(3.726
nMのEC50値を有する)より高い。
【0261】
実施例4.ヒトCD47リガンドSIRPαとCD47との相互作用を遮断する本発明の抗CD47抗体
SIRPαへのヒトCD47の結合を遮断する10種の典型的抗体の能力を、フローサイトメトリーにより測定した。
【0262】
実施例3において上述した通りに調製した0.2×10
6個のヒトCD47発現CHO細胞を、0.1%BSAを含むPBS中で試験抗体(ADI-26624、ADI-26630、ADI-29336、ADI-29340、ADI-29341、ADI-29349およびHu5F9、最大濃度900 nM、3倍希釈、全て11種の濃度で試験した)および200 nMのマウスFc標識SIRPαタンパク質(Acro Biosystems)と共に氷上で30分間同時インキュベートした。次いで細胞を3回洗浄し、続いて二次抗体であるヤギ抗マウスIgG−APC(アロフィコシアニン)(Biolegend)と共に、0.1%BSAを含むPBS中で、氷上で30分間インキュベートした(遮光下で)。細胞を3回洗浄した。Accuri C6システム(BD Biosciences)上でフローサイトメトリーアッセイを実施し、C6ソフトウェアを使ってMFIを算出した。
【0263】
酵母細胞中で産生されたIgG1型のADI-26624、ADI-29336、ADI-29340、ADI-29371、ADI-26630、ADI-29341、およびADI-29349の、CD47へのヒトSIRPα-APC結合を遮断する能力は、対照抗体のAB6.12のものと一致する。
【0264】
具体的には、CD47へのヒトSIRPα-APC結合を遮断するIgG1型のADI-26624、ADI-29336およびADI-29340の能力についてのIC
50値は、それぞれ11.2 nM、8.548 nMおよび5.081 nMである。CD47へのヒトSIRPα-APC結合を遮断するADI-26630、ADI-29341およびADI-29349の能力についてのIC
50値は、それぞれ2.986 nM、2.476 nMおよび3.097 nMである。CD47へのヒトSIRPα-APC結合を遮断する対照抗体AB6.12の能力のIC
50値は3.385 nMである(
図2参照)。
【0265】
CHO細胞中で産生されたIgG4型の抗体ADI-26624、ADI-26630、ADI-29336、ADI-29340、ADI-29341およびADI-29349の、CD47へのヒトSIRPα-APC結合を遮断する能力は全て、対照抗体AB6.12とHu5F9のものよりわずかに高い。
【0266】
具体的には、CD47へのヒトSIRPα-APC結合を遮断するADI-26624、ADI-29336およびADI-29340の能力についてのIC
50値は、それぞれ1.043 nM、1.389 nMおよび1.223 nMである。CD47へのヒトSIRPα-APC結合を遮断するADI-26630、ADI-29341およびADI-29349の能力についてのIC
50値は、それぞれ1.123 nM、0.642 nMおよび0.7355 nMである。CD47へのヒトSIRPα-APC結合を遮断する対照抗体AB6.12およびHu5F9の能力のIC
50値はそれぞれ1.768 nMおよび1.843 nMである(
図3参照)。
【0267】
実施例5.マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を促進する本発明の抗CD47抗体の能力の検出
フローサイトメトリーに基づくアッセイにおいて、本発明の抗体(ADI-26624、ADI-29336、ADI-29340、ADI-26630、ADI-29341、ADI-29349、ADI-29371、ADI-30793およびADI-30794)の、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を促進する能力を測定した。
【0268】
ドナーから採取した新鮮な血液を密度勾配遠心にかけ、末梢血単核球(PBMC)を得た。キット(EasySep
TM(商標)ヒトCD14 Positive Selection Kit、Steam Cell)の説明書に従って単離したPBMCからCD14陽性単球を単離し、精製し、そして10 ng/mLの顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、R&D Systems)を添加し、次いで連続7日間に渡り付着培養し、その間、5日目に1時間の刺激のために20 ng/mLのインターフェロンγ(IFN-γ、Acro Biosystem)を添加し、その後、48時間の追加刺激のために100 ng/mLのリポ多糖(LPS, Sigma)を添加した。これにより単球がマクロファージに誘導された。標的腫瘍細胞CCRF-CEM(ATCCから購入)を、CellTrace
TM(商標)CFSEキットの説明書に従って蛍光標識した。試験抗体を様々な濃度で添加し、37℃で3時間インキュベートしながら、標識腫瘍細胞を上記の分化したマクロファージと4:1の比で共培養した。その後、細胞を少なくとも2回洗浄し、続いてアロフィコシアニン(APC)標識抗CD14抗体(BDから購入)を添加し、氷上で30分間(暗所で)0.1%BSAを含むPBS中でインキュベートした。細胞を少なくとも2回洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。貪食された細胞集団は、CD14と蛍光色素CFSE(カルボキシフルオレセインジアセテート・スクシンイミジルエステル)の両方に対して陽性である生存細胞の集団である。
【0269】
酵母細胞中で産生したIgG1型のADI-29336、ADI-29340、ADI-29341、ADI-29349、ADI-30793、およびADI-30794はすべて、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を促進する非常に強力な能力を有する。マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を促進するADI-29340の能力は、対照抗体Hu5F9およびAB6.12のそれよりも強力であるが、その一方でマクロファージによる腫瘍細胞の貪食を促進するADI-30793とADI-30794の能力は対照抗体AB6.12のものと同等である(
図4と
図5参照)。
【0270】
CHO細胞中で産生されたIgG4型のADI-26624およびADI-26630は、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を効率的に促進することができる。マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を促進するADI-26624およびADI-26630の能力は、対照抗体Hu5F9のそれと同等である(
図6参照)。
【0271】
CHO細胞中で産生されるIgG4型のADI-29336、ADI-29340、ADI-29341、ADI-29349およびADI-29371はすべて、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を促進する非常に強力な能力を有する。これらの結果から、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を促進するADI-29336、ADI-29340、ADI-29341およびADI-29349の能力は、対照抗体Hu5F9のそれより有意に高く、そしてマクロファージによる腫瘍細胞の貪食を促進するADI-29371の能力は、対照抗体Hu5F9のそれと同等であることが分かる(
図7参照)。
【0272】
実施例6.本発明の抗CD47抗体の抗腫瘍活性
本発明の抗CD47抗体(ADI-26624、ADI-26630、ADI-29340およびADI-29341)の抗腫瘍効果を、NOD/SCIDマウスモデルにおいて試験した。
手順は以下の通りである:
ヒトバーキットリンパ腫Raji細胞(ATCC# CCL-86)はATCCから購入し、その後のインビボ実験のためATCCの必須要件に厳密に従って、規定通りに継代培養した。細胞を遠心分離により採取し、滅菌PBS中に再懸濁し、そして10
7細胞/mLの細胞密度になるよう調整した。0.1 mLの細胞懸濁液を取り、Matrigelと1:1で混合し、NOD/SCIDマウス(Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co., Ltd.)の右脇腹に皮下接種した。試験期間中週2回、腫瘍と体重を測定した。腫瘍エンドポイントを満たした時またはマウスが>20%の体重減少を示した時、マウスを安楽死させた。接種10日後、実験に適格なマウスを1群あたり8匹の動物で無作為化した。マウスにおける腫瘍体積は、各群において以下の式:(幅)
2×長さ/2を用いてキャリパーにより測定され、マウスの各群の最大腫瘍体積は110 mm
3であった。
【0273】
まず第一に、出願人らは、腫瘍を阻害する本発明の抗体ADI-26624およびADI-26630の有効性を研究した。
上述の方法により得られたマウスを無作為化し、異なる処置を施した:連続2週間に渡り隔日に1回の投与頻度で、1 mg/kgまたは5 mg/kgのPBS、対照IgG抗体(IgG4)、ベンチマーク(Hu5F9)、並びに本発明の抗体ADI-26624およびADI-26630の腹腔内注射。詳細な分類と投与方法は第3表に示される。
【0274】
【表9】
【0275】
実験の終了時に、次の式を使って腫瘍増殖阻害率を算出した:
【0276】
【数1】
【0277】
式中、Tvol
PBS処置後は、ブランク対照PBS群における実験の終了後の腫瘍体積であり、Tvol
抗体処置後は、抗体群(IgG、Hu5F9および本発明抗体)における実験の終了後の腫瘍体積であり、そしてTvol
PBS処置前は、ブランク対照PBS群における初期腫瘍体積である。
【0278】
実験結果については、下記の
図8、9および第4表を参照のこと。CHO細胞において発現させた本願のIgG4型の抗CD47モノクローナル抗体ADI-26624とADI-26630は、対照IgG(equitech-Bio)および対照抗体Hu5F9と比較して、腫瘍の増殖を有意に阻害することが分かる。
【0279】
1 mg/kgのArms ADI-26630、5 mg/kgのADI-26630、1 mg/kgのADI-26624、および5 mg/kgのADI-26624における腫瘍増殖阻害率はそれぞれ、100%、104%、79%、94%である。腫瘍は5 mg/kgのArm ADI-26630では5/8匹のマウス、1 mg/kgのArm ADI-26630では2/8匹のマウスで腫瘍が完全に消失し、ここで両方のArmで腫瘍が完全に消失した動物の数が、同じ投与量の対照抗体Hu5F9 Arm(5 mg/kgのArmで2匹、1 mg/kgのArmで1匹)よりも高い(表4)。この研究における全Armでのマウスは、接種後32日目に有意な体重変化を全く示さなかった。
従って、本発明の抗体は腫瘍に対する非常に良好な治療効果を示し、これは対照抗体Hu5F9の治療効果よりも優れていることが分かる。
【0280】
【表10】
【0281】
次に、本発明者らは腫瘍に対する抗体ADI-29340およびADI-29341の阻害効果を検出することに進んだ。
上記方法により得られたマウスを無作為化し、異なる処置を施した。すなわち、0.5 mg/kgまたは5 mg/kgのPBS、対照IgG抗体(IgG4)並びに本発明の抗体ADI-26630、ADI-29340およびADI-29341の腹腔内注射を連続2週間に渡り2日に1回行った。詳細な分類と投与方法は下の第5表に示される。
【0282】
【表11】
【0283】
実験の終了時に、前記式を用いて腫瘍増殖阻害率を算出した。CHO細胞中で発現させた本願のIgG4型の抗CD47モノクローナル抗体ADI-26630、ADI-29340およびADI-29341が、腫瘍増殖を有意に阻害できることが認められた(第6表、
図10および
図11)。
【0284】
0.5 mg/kgのArms ADI-26630、5 mg/kgのADI-26630、0.5 mg/kgのADI-29340、5 mg/kgのADI-29340、0.5 mg/kgのADI-29341および5 mg/kgのADI-29341における腫瘍増殖阻害率はそれぞれ、99%、110%、103%、109%、104%および109%である。腫瘍は0.5 mg/kgのArm ADI-29340では5/8匹のマウス、0.5 mg/kgのArm ADI-29341では4/8匹のマウス、そして5 mg/kgのArms ADI-26630およびADI-29340では8/8匹のマウスで腫瘍が完全に消失した(第6表)。本研究における全Armでのマウスが、接種後30日目に有意な体重変化を全く示さなかった。
【0285】
従って、本発明の抗体は腫瘍に対する非常に良好な治療効果を示すことがわかる。
【0286】
【表12】
【0287】
実施例7.RBC凝集を促進する本発明の抗CD47抗体の活性の検出
大部分の抗CD47抗体は、RBC凝集を促進する副作用を有し、それによりそれらの抗体の治療用途を制限することが従来知られている。従って、本発明者らは更に、本明細書に開示される抗体のRBC凝集を検討した。
【0288】
試験手順は次の通りである:
新鮮なヒト血液を採取し、PBSで3回洗浄し、10%ヒトRBC懸濁液を調製した。ヒトRBCを96ウェルの丸底プレート中で試験抗体(最大濃度60μg/mL、3倍希釈系列、合計11種の濃度)と共に37℃で2〜6時間インキュベートした。反応終了後、写真撮影し、結果を判断した。結果の判定基準は、赤血球がウェルの底に沈み網目状に広がり、霞のように見える場合にRBC凝集反応が起こったと判定し(
図12のHu5F9の結果を参照のこと)そしてRBCがウェルの底に断続的な赤い斑点として沈降するような場合にはRBC凝集反応が起こらないと判定するものである(
図12の対照を参照のこと)。
【0289】
上記アッセイにおいて記載した通りに実施した試験では、血球凝集反応の結果を
図12に示した。
図12から、ADI-26630、ADI-29340およびADI-29341のRBC凝集活性は非常に弱く、そしてRBC凝集を促進するそれら抗体の活性は対照のHu5F9のものより有意に低く、対照のAB6.12のものと同等であることが分かる。本願明細書に開示される抗体は、血液細胞の凝集を有意に減少させ、結果として臨床治療パラダイムの副作用を有意に減らし、様々な癌腫の治療において広範囲に渡って利用できることが理解できる。