特許第6923797号(P6923797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6923797
(24)【登録日】2021年8月3日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/10 20060101AFI20210812BHJP
   B29C 51/02 20060101ALI20210812BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   B29C51/10
   B29C51/02
   B29C51/12
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-177469(P2017-177469)
(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公開番号】特開2019-51649(P2019-51649A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 芳裕
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 優
(72)【発明者】
【氏名】南川 佑太
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−15732(JP,A)
【文献】 特開2004−262119(JP,A)
【文献】 特開2011−88447(JP,A)
【文献】 特開2013−67148(JP,A)
【文献】 実開平7−2225(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00−51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形工程と、圧入工程を備える、構造体の製造方法であって、
前記成形工程では、発泡樹脂パリソンを成形して、パネル部を有する発泡成形体を形成し、
前記パネル部は、互いに対向する裏面及びおもて面を備え、且つ前記裏面に凹部を備え、
前記圧入工程では、前記凹部に補強部材が圧入され、
前記パネル部は、左パネル部及び右パネル部を備え、
前記左パネル部及び右パネル部は、ヒンジ部で互いに回動可能に連結され、
前記ヒンジ部は、前記発泡樹脂パリソンを第1及び第2金型で圧縮することによって形成され、
前記成形工程では、前記左パネル部、前記ヒンジ部、及び前記右パネル部にまたがる表皮材が前記おもて面側に前記発泡成形体と一体成形される、構造体の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程は、配置工程と、膨張工程を備え、
前記発泡樹脂パリソンは、1枚の発泡樹脂シートであり、
前記配置工程では、前記発泡樹脂シートを第1及び第2金型間に配置し、
前記膨張工程では、前記発泡樹脂シートの厚さよりも大きい隙間が第1及び第2金型の間に設けられるように第1及び第2金型を近づけた状態で第1及び第2金型の両方によって前記発泡樹脂シートを減圧吸引することによって、前記発泡樹脂シートを前記隙間の厚さにまで膨張させる、請求項1に記載の構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキボードなどのボード状の構造体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2枚の溶融樹脂シートの間に補強部材をインサート成形することによって剛性が高い樹脂製パネルを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−176905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、樹脂シートの成形時に補強部材をインサートする場合、インサート精度が悪いと型締めの際に金型で補強部材を挟んでしまう虞がある。このため、ばらつきを考慮して、製品寸法よりも若干短い補強部材が使用されるが、剛性向上のためには、製品端末に近い位置まで補強部材が入っていることが理想的である。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、補強部材の挿入が容易な構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、パネル部を有する発泡成形体を有する構造体であって、前記パネル部は、互いに対向する裏面及びおもて面を備え、前記裏面に凹部が設けられ、前記凹部に補強部材が圧入されている、構造体が提供される。
【0007】
本発明では、パネル部に凹部を有する発泡成形体を予め形成し、その凹部に補強部材を圧入することによって、補強部材をパネル部に配置している。このような構成によれば、補強部材を成形時にインサートする必要がないので、インサート成形に起因する問題を避けることができる。また、インサート精度を考慮する必要がないので、発泡成形体の端末に近い位置まで補強部材を設けることが容易である。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記補強部材は、細長い形状であり、前記裏面の面外方向から前記凹部に圧入される。
好ましくは、前記パネル部は、左パネル部及び右パネル部を備え、前記左パネル部及び右パネル部は、ヒンジ部で互いに回動可能に連結されている。
好ましくは、前記左パネル部及び右パネル部は、それぞれ、互いに対向する裏面及びおもて面を備え、前記左パネル部の裏面には、左凹部が設けられ、前記右パネル部の裏面には、右凹部が設けられ、前記左パネル部及び右パネル部が前記ヒンジ部で折り畳まれた状態で前記補強部材の一部が前記左凹部に圧入され、前記補強部材の他の一部が前記右凹部に圧入されている。
好ましくは、前記左パネル部、前記ヒンジ部、及び前記右パネル部にまたがる表皮材が前記おもて面側に設けられている。
好ましくは、前記パネル部は、中央層と、その両側に設けられた表面層を備え、前記表面層は、前記パネル部の肉厚に対して前記パネル部の表面から厚さ10%までの層であり、前記中央層は、前記パネル部の肉厚に対して前記パネル部の表面から厚さ25〜50%の層であり、前記中央層の平均気泡径は、前記表面層の平均気泡径よりも大きい。
好ましくは、(前記中央層の平均気泡径)/(前記表面層の平均気泡径)の比は、1.2〜10である。
【0009】
本発明の別の観点によれば、成形工程と、圧入工程を備える、構造体の製造方法であって、前記成形工程では、発泡樹脂パリソンを成形して、パネル部を有する発泡成形体を形成し、前記パネル部は、互いに対向する裏面及びおもて面を備え、且つ前記裏面に凹部を備え、前記圧入工程では、前記凹部に補強部材が圧入される、構造体の製造方法が提供される。
【0010】
好ましくは、前記成形工程は、配置工程と、膨張工程を備え、前記発泡樹脂パリソンは、1枚の発泡樹脂シートであり、前記配置工程では、前記発泡樹脂シートを第1及び第2金型間に配置し、前記膨張工程では、前記発泡樹脂シートの厚さよりも大きい隙間が第1及び第2金型の間に設けられるように第1及び第2金型を近づけた状態で第1及び第2金型の両方によって前記発泡樹脂シートを減圧吸引することによって、前記発泡樹脂シートを前記隙間の厚さにまで膨張させる、構造体の製造方法。
好ましくは、前記補強部材は、細長い形状であり、前記裏面の面外方向から前記凹部に圧入される。
好ましくは、前記パネル部は、左パネル部及び右パネル部を備え、前記左パネル部及び右パネル部は、ヒンジ部で互いに回動可能に連結され、前記ヒンジ部は、前記発泡樹脂パリソンを前記金型で圧縮することによって形成される。
好ましくは、前記成形工程では、前記左パネル部、前記ヒンジ部、及び前記右パネル部にまたがる表皮材が前記おもて面側に前記発泡成形体と一体成形される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の構造体10を構成する発泡成形体24、表皮材3及び補強部材4を示す斜視図であり、補強部材4が発泡成形体24に挿入されていない状態を示す。
図2図1中の発泡成形体24及び表皮材3の、点A−A−Aを通る面の断面図である。
図3】本発明の一実施形態の構造体10を示す斜視図であり、補強部材4が発泡成形体24に圧入された状態を示す。
図4】本発明の一実施形態の構造体10を示す斜視図であり、発泡成形体24及び表皮材3がヒンジ部5で折り畳まれている状態を示す。
図5】本発明の一実施形態の構造体の製造方法で利用可能な発泡成形機1の一例を示す。
図6図5の第1及び第2金型21,22及び発泡樹脂シート23の近傍の拡大断面図である。
図7図6の状態から、第1金型21によって発泡樹脂シート23を減圧吸引して、発泡樹脂シート23を第1金型21のキャビティ21bに沿った形状に賦形した状態を示す、図6に対応する断面図である。
図8図7の状態から金型21,22を互いに近接させた状態を示す、図6に対応する断面図である。
図9図8の状態から、第2金型22によって発泡樹脂シート23を減圧吸引して発泡樹脂シート23を金型21,22の間の隙間Gの厚さにまで膨張させた状態を示す、図6に対応する断面図である。
図10】金型21,22からバリ23bのついた発泡成形体24を取り出した状態を示す、図6に対応する断面図である。
図11】本発明の参考例で得られた発泡成形体24の断面写真を示す。
図12】仮平均気泡径の算出方法を説明するための気泡の形態の一例を示す。
図13】本発明の変形例の構造体10を示す斜視図であり、補強部材4が発泡成形体24に圧入された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0013】
1.構造体
図1図4を用いて、本発明の一実施形態の構造体10について説明する。構造体10は、発泡成形体24と、補強部材4を備える。発泡成形体24は、ボード状の左パネル部6及び右パネル部7(特許請求の範囲の「パネル部」)を備える。左パネル部6及び右パネル部7は、ヒンジ部5で互いに回動可能に連結されている。
【0014】
発泡成形体24は、発泡樹脂で形成された成形体である。発泡成形体24の発泡倍率は、特に限定されないが、例えば1.5〜6倍であり、具体的には例えば、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0015】
左パネル部6は、互いに対向する裏面6rとおもて面6fを備える。右パネル部7は、互いに対向する裏面7rとおもて面7fを備える。裏面6r,7rには、それぞれ左凹部6a及び右凹部7aが設けられている。図3図4に示すように、左パネル部6及び右パネル部7がヒンジ部5で折り畳まれた状態で、補強部材4が凹部6a,7aに圧入されることによって、補強部材4が発泡成形体24に固定される。
【0016】
補強部材4は、発泡成形体24よりも剛性が高い部材であり、例えば、金属製(アルミ等)や硬質プラスチックで形成される。補強部材4は、裏面6r,7rの面外方向から圧入可能になっている。補強部材4をこのような方向から圧入するので、補強部材4は、直線状である必要がなく、湾曲形状、枝分かれ形状、板状形状など、任意の形状にすることができる。この場合、凹部6a,7aは、補強部材4を圧入可能な形状とする。従って、補強部材4は、例えば、湾曲している側面24aに沿った形状にすることができる。補強部材4は、好ましくは、細長い形状であり、その長手方向に沿って断面形状が一定であり、幅に対する長さの比が10以上である。補強部材4は、裏面側に露出している。
【0017】
補強部材4は、発泡成形体24を変形させながら凹部6a,7aに圧入される。発泡成形体24は、非発泡成形体に比べて変形されやすいので、補強部材4の圧入が容易である。また、発泡成形体24は、非発泡成形体に比べて柔軟性が高いので、補強部材4が凹部6a,7a内がガタつくことなく保持される。
【0018】
左パネル部6と右パネル部7をヒンジ部5で折り畳んだだけだと、ヒンジ部5の復元力によって左パネル部6と右パネル部7が開いた状態になってしまう。しかし、本実施形態では、補強部材4の一部が左凹部6aに圧入され、補強部材4の他の一部が右凹部7aに圧入されているので、左パネル部6と右パネル部7が折り畳まれた状態が補強部材4によって維持される。また、左パネル部6に設けられた凸部24cと、右パネル部7に設けられた凹部24dを嵌合させることによって、左パネル部6と右パネル部7の開きが抑制されている。本実施形態では、凸部24cと凹部24dは、略同一の幅であるが、図13に示す変形例のように、凸部24cの幅を凹部24dの幅よりも大きくしてもよい。この場合、凸部24cを凹部24dに圧入することによって凸部24cを凹部24dに強く嵌合させることができる。
【0019】
凹部6a,7aは、発泡成形体24の端末24bに近い位置にまで延びているために、発泡成形体の端末24bに近い位置まで補強部材4が設けられている。言い換えると、凹部6a,7aは、発泡成形体24の略全長に渡って設けられており、補強部材4は、凹部6a,7aの略全長に渡って設けられる。発泡成形体24の成形時に補強部材4をインサートする場合、補強部材4をこのように配置することは困難であったが、本実施形態では、発泡成形体24の成形後に補強部材4を圧入するので、このように配置することが可能になっており、発泡成形体24の強度が高められている。また、補強部材4が端末24bから露出していないので、意匠性が優れている。発泡成形体の端末24bと、補強部材4の端面の間の距離は、0.2〜2mmが好ましく、0.5〜1.5mmがさらに好ましい。
【0020】
発泡成形体24のおもて面側には、左パネル部6、ヒンジ部5、及び右パネル部7にまたがる表皮材3が設けられている。図3図4に示すように、左パネル部6と右パネル部7をヒンジ部5で折り畳むと、裏面6r,7rが当接して外からは見えなくなり、構造体10の上面及び下面の両面が表皮材3で覆われる。このように、本実施形態によれば、発泡成形体24の片面にのみ表皮材3を設けているにも関わらず、左パネル部6と右パネル部7をヒンジ部5で折り畳むことによって、両面に表皮材3が設けられた構造体10を得ることができる。表皮材3は、不織布のような通気性を有する部材で構成されることが好ましく、発泡成形体24の成形時に発泡成形体24と一体成形することが好ましい。
【0021】
2.発泡成形機1の構成
図5図6を用いて、本発明の一実施形態の構造体の製造方法の実施に利用可能な発泡成形機1について説明する。発泡成形機1は、樹脂供給装置2と、Tダイ18と、金型21,22を備える。樹脂供給装置2は、ホッパー12と、押出機13と、インジェクタ16と、アキュームレータ17を備える。押出機13とアキュームレータ17は、連結管25を介して連結される。アキュームレータ17とTダイ18は、連結管27を介して連結される。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0022】
<ホッパー12,押出機13>
ホッパー12は、原料樹脂11を押出機13のシリンダ13a内に投入するために用いられる。原料樹脂11の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。原料樹脂11は、ホッパー12からシリンダ13a内に投入された後、シリンダ13a内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ13a内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ13aの先端に向けて搬送される。スクリューは、シリンダ13a内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら搬送する。スクリューの基端にはギア装置が設けられており、ギア装置によってスクリューが回転駆動される。シリンダ13a内に配置されるスクリューの数は、1本でもよく、2本以上であってもよい。
【0023】
<インジェクタ16>
シリンダ13aには、シリンダ13a内に発泡剤を注入するためのインジェクタ16が設けられる。インジェクタ16から注入される発泡剤は、物理発泡剤、化学発泡剤、及びその混合物が挙げられるが、物理発泡剤が好ましい。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。化学発泡剤としては、酸(例:クエン酸又はその塩)と塩基(例:重曹)との化学反応により炭酸ガスを発生させるものが挙げられる。化学発泡剤は、インジェクタ16から注入する代わりに、ホッパー12から投入してもよい。
【0024】
<アキュームレータ17、Tダイ18>
原料樹脂と発泡剤が溶融混練されてなる発泡樹脂は、シリンダ13aの樹脂押出口から押し出され、連結管25を通じてアキュームレータ17内に注入される。アキュームレータ17は、シリンダ17aとその内部で摺動可能なピストン17bを備えており、シリンダ17a内に発泡樹脂が貯留可能になっている。そして、シリンダ17a内に発泡樹脂が所定量貯留された後にピストン17bを移動させることによって、連結管27を通じて発泡樹脂をTダイ18内に設けられたスリットから押し出して垂下させて発泡樹脂シート23を形成する。
【0025】
<第1及び第2金型21,22>
発泡樹脂シート23は、第1及び第2金型21,22間に導かれる。第1金型21には、多数の減圧吸引孔が設けられており、発泡樹脂シート23を減圧吸引して第1金型21の内面21aに沿った形状に賦形することが可能になっている。第1金型21のキャビティ21bを取り囲むようにピンチオフ部21dが設けられている。第2金型22には、多数の減圧吸引孔が設けられており、発泡樹脂シート23を減圧吸引して第2金型22の内面22aに沿った形状に賦形することが可能になっている。内面22aには、凸部22b,22c,22eと凹部22dが設けられている。
【0026】
3.構造体の製造方法
ここで、図5図10を用いて、本発明の一実施形態の構造体の製造方法について説明する。本実施形態の方法は、成形工程と、圧入工程を備える。成形工程は、配置工程と、膨張工程を備え、仕上げ工程を備えてもよい。以下、詳細に説明する。
【0027】
3.1 成形工程
(1)配置工程
この工程では、図5及び図6に示すように、溶融状態の発泡樹脂をTダイ18のスリットから押し出して垂下させて形成した1枚の発泡樹脂シート23を金型21,22間に配置する。また、金型21には、不織布のような通気性を有する部材で構成された表皮材シート28が装着される。
【0028】
本実施形態では、Tダイ18から押し出された発泡樹脂シート23をそのまま使用するダイレクト真空成形が行われるので、発泡樹脂シート23は、成形前に室温にまで冷却されて固化されることがなく、固化された発泡樹脂シート23が成形前に加熱されることもない。また、本実施形態の発泡樹脂シート23は、スリットから押し出された直後は全体がほぼ均一の温度であり、垂下されている間に大気によって表面から徐々に冷却されるものである。そして、発泡樹脂シート23の厚さ方向の中央に向かうほど大気による冷却の影響を受けにくくなるので、本実施形態の発泡樹脂シート23は、厚さ方向の中央に向かうほど温度が上昇して粘度が低くなるという性質を有する。発泡樹脂シート23の肉厚は、特に限定されないが、例えば、0.5〜5mmであり、好ましくは、1〜3mmである。この肉厚は、具体的には例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
(2) 膨張工程
この工程では、図7図9に示すように、発泡樹脂シート23の厚さよりも大きい隙間Gが金型21,22の間に設けられるように金型21,22を近づけた状態で金型21,22の両方によって発泡樹脂シート23を減圧吸引することによって、発泡樹脂シート23を隙間Gの厚さにまで膨張させる。
【0030】
本実施形態では、金型21にピンチオフ部21dが設けられており、ピンチオフ部21dが金型22が当接するまで金型21,22を近接させると、金型21,22とピンチオフ部21dで囲まれる空間が密閉空間Sとなる。発泡樹脂シート23のうち密閉空間S内にある部位23aが発泡成形体24となる。表皮材シート28のうち密閉空間S内にある部位28aが表皮材3となる。一方、発泡樹脂シート23及び表皮材シート28のうち密閉空間S外にある部位はバリ23b、28bとなる。また、この際、金型22の凸部22cが発泡樹脂シート23に押し付けられることによって、発泡樹脂シート23が圧縮されて、ヒンジ部5が形成される。
【0031】
隙間Gの厚さは、特に限定されないが、発泡樹脂シート23の厚さの1.1〜3.0倍であることが好ましい。(隙間Gの厚さ)/(発泡樹脂シート23の厚さ)は、具体的には例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0032】
金型21,22による減圧吸引は、第1金型21による減圧吸引を先に開始してもよく、第2金型22による減圧吸引を先に開始してもよく、金型21,22による減圧吸引を同時に開始してもよい。また、第1金型21による減圧吸引を先に停止してもよく、第2金型22による減圧吸引を先に停止してもよく、金型21,22による減圧吸引を同時に停止してもよい。金型21,22による減圧吸引は、金型21,22を近接させる前に開始してもよく、近接させた後に開始してもよい。
【0033】
金型21,22の両方によって発泡樹脂シート23を減圧吸引すると、発泡樹脂シート23の発泡が促進されて発泡樹脂シート23が膨張する。発泡樹脂シート23は厚さ方向の中央付近での粘度が最も低い(流動性が最も高い)ので、厚さ方向の中央付近での発泡が特に促進されて発泡樹脂シート23が膨張する。その結果、厚さ方向の中央付近の層(中央層)での平均気泡径が大きく、表面近傍の表面層の平均気泡径が小さいという構成のパネル部6,7を有する発泡成形体24が得られる。このようなパネル部6,7は、平均気泡径が大きい中央層が、平均気泡径が小さい表面層で挟まれたサンドイッチ構造となっているために、軽量且つ高剛性である。
【0034】
本実施形態の方法によって得られるパネル部6,7は、図11の断面写真に示すように、パネル部6,7に肉厚に対して、パネル部6,7の表面から厚さ10%までの層を表面層とし、パネル部6,7の表面から厚さ25〜50%の層を中央層とすると、中央層の平均気泡径が表面層の平均気泡径よりも大きくなる。(中央層の平均気泡径)/(表面層の平均気泡径)の比は、特に限定されないが、例えば、1.2〜10である。この比は、具体的には例えば、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0035】
パネル部6,7の厚さ方向全体の平均気泡径は、例えば、100〜2000μmである。この平均気泡径は、具体的には例えば、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。表面層の平均気泡径は、例えば、80〜500μmである。この平均気泡径は、具体的には例えば、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。中央層の平均気泡径は、例えば、100〜2000μmである。この平均気泡径は、具体的には例えば、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0036】
平均気泡径は、以下の方法で測定する。
・まず、パネル部6,7について図11に示すように拡大倍率50倍で断面写真を撮影する。
・次に、断面写真中で厚さ方向に延びる5本の基準線R1〜R5を引く。基準線の間の間隔は500μmとする。
・各基準線について、測定対象の層(表面層、中央層、又は厚さ方向全体)において、基準線が通過する気泡の数をカウントする。
・各気泡について厚さ方向の最大長さ(厚さ方向の長さが最長となる部位での長さ)を測定する。
・式1に従って、各基準線について仮平均気泡径を算出する。さらに、各基準線について算出した仮平均気泡径を算術平均することによって、平均気泡径を算出する。
(式1)仮平均気泡径=カウントした全ての気泡についての最大長さの合計/カウントした気泡数
【0037】
例えば、図12の例では、中央層において基準線Rが通過する気泡の数が6個であり、各気泡についての厚さ方向の最大長さは、L1〜L6である。このため、この例では、中央層の仮平均気泡径は、(L1+L2++L3+L4+L5+L6)/6によって算出される。
【0038】
膨張工程は、好ましくは、第1吸引工程と、金型近接工程と、第2吸引工程をこの順で実行することによって行う。第1吸引工程では、図7に示すように、第1金型21により発泡樹脂シート23を減圧吸引して発泡樹脂シート23を第1金型21のキャビティ21bに沿った形状に賦形する。この際、発泡樹脂シート23と共に表皮材シート28も賦形される。
【0039】
金型近接工程では、図8に示すように、隙間Gが金型21,22の間に設けられるように金型21,22を近接させる。第2吸引工程では、図9に示すように、金型21,22により発泡樹脂シート23を減圧吸引することによって発泡樹脂シート23を隙間Gの厚さにまで膨張させる。この際、金型22の凸部22b,22eに相当する部位に、凹部6a,7a、24dが形成され、凹部22dに相当する部位に凸部24cが形成される。
【0040】
金型21,22を近接させた後に金型21,22による減圧吸引を開始すると、発泡樹脂シート23が賦形される前に発泡樹脂シート23が金型22の凸部22cに当接してしまう。通常は、金型21,22の温度は発泡樹脂シート23の温度よりも低いので、発泡樹脂シート23が金型22の凸部22cに当接すると発泡樹脂シート23が冷却されてその粘度が上昇し、金型21,22の内面21a,22aへの追従性が悪化する。一方、第1吸引工程と、金型近接工程と、第2吸引工程をこの順で実行することによって膨張工程を行う場合、発泡樹脂シート23が第1金型21の内面21aに沿った形状に賦形される前に発泡樹脂シート23が金型21,22に接触することが最小限に抑えられるので、発泡樹脂シート23の粘度が上昇することが抑制され、発泡樹脂シート23を金型21,22の内面21a,22aに高精度に追従させることができる。
【0041】
(3) 仕上げ工程
膨張工程の後、金型21,22を開いて、図10に示すように、バリ23b,28bのついた発泡成形体24を取り出し、バリ23b,28bを切除して、図1図4に示す発泡成形体24が得られる。発泡成形体24には、表皮材3が一体成形されている。
【0042】
3.2 圧入工程
この工程では、図1図4に示すように、補強部材4を凹部6a,7aに圧入する。一例では、補強部材4を凹部6aに圧入し、その後、左パネル部6と右パネル部7をヒンジ部5で折り畳みながら、補強部材4を凹部7aに圧入することによって、図4に示すように、両面に表皮材3が設けられた構造体10が得られる。
【0043】
4.その他の実施形態
・表皮材3は、省略可能である。
・ヒンジ部5は省略可能である。
・パネル部の凹部は、1つであってもよい。
・補強部材4は、発泡成形体24の端末24bから露出していなくてもよい。
・発泡成形体24は、発泡樹脂シート23を膨張させずに成形したものであってもよい。
・発泡樹脂シート23は、特許請求の範囲の「発泡樹脂パリソン」の一例であり、発泡樹脂パリソンは、筒状であってもよい。この場合、筒を潰してシート状にしたものを成形してもよい。
【0044】
5.参考例
図5に示す発泡成形機1を用いて、発泡成形体を作製した。押出機13のシリンダ13aの内径は50mmであり、L/D=34であった。原料樹脂には、ポリプロピレン系樹脂A(ポレアリス社(Borealis AG)製、商品名「Daploy WB140」)と、ポリプロピレン系樹脂B(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP・BC4BSW」)を質量比60:40で混合し、樹脂100質量部に対して、核剤として20wt%の炭酸水素ナトリウム系発泡剤を含むLDPEベースマスターバッチ(大日精化工業株式会社製、商品名「ファインセルマスターP0217K」)を1.0重量部、および着色剤として40wt%のカーボンブラックを含むLLDPEベースマスターバッチ1.0重量部を添加したものを用いた。発泡樹脂シート23の温度が190〜200℃になるように各部位の温度制御を行った。スクリューの回転数は、60rpmとし、押出量は、20kg/hrとした。発泡剤は、Nガスを用い、インジェクタ16を介して注入した。注入量は、0.4[wt.%](N注入量/樹脂押出量)とした。発泡樹脂シート23は、厚さが2mmになるようにTダイ18の制御を行った。
【0045】
以上の条件で形成された発泡樹脂シート23を金型21,22の間に配置した。次に、金型21によって発泡樹脂シート23の減圧吸引を行って発泡樹脂シート23を金型21の内面に沿った形状に賦形した。次に、金型21,22の間の隙間Gが3mmになるように金型21,22の距離を近づけた状態で、金型21,22による発泡樹脂シート23の減圧吸引を行って発泡樹脂シート23の厚さが隙間Gの厚さになるように発泡樹脂シート23を膨張させてパネル部を有する発泡成形体24を得た。金型21,22による減圧吸引は、−0.1MPaで行った。
【0046】
発泡成形体24は、一般的な発泡成形体に比べて軽量且つ高剛性であった。発泡成形体24のパネル部の断面写真を図11に示す。発泡成形体24のパネル部の表面層及び中央層の平均気泡径を測定したところ、それぞれ、132.3μm及び184.2μmであり、(中央層の平均気泡径)/(表面層の平均気泡径)の比は、1.39であった。
【符号の説明】
【0047】
1 :発泡成形機
2 :樹脂供給装置
3 :表皮材
4 :補強部材
5 :ヒンジ部
6 :左パネル部
6a :左凹部
6f :おもて面
6r :裏面
7 :右パネル部
7a :右凹部
7f :おもて面
7r :裏面
10 :構造体
11 :原料樹脂
12 :ホッパー
13 :押出機
13a :シリンダ
16 :インジェクタ
17 :アキュームレータ
17a :シリンダ
17b :ピストン
18 :Tダイ
21 :第1金型
21a :内面
21b :キャビティ
21d :ピンチオフ部
22 :第2金型
22a :内面
22b :凸部
22c :凸部
22d :凹部
22e :凸部
23 :発泡樹脂シート
23a :部位
23b :バリ
24 :発泡成形体
24a :側面
24b :端末
24c :凸部
24d :凹部
25 :連結管
27 :連結管
28 :表皮材シート
28a :部位
28b :バリ
G :隙間
S :密閉空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13