【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1について
図1〜
図7に基づいて説明する。
図1に示すように、杭撤去装置1は、移動手段である重機2に吊り下げられた状態で使用される。重機2は、自走及び旋回可能なクローラ21と、このクローラ21に回動自在に支持された重機本体22と、この重機本体22の前部から前側上方に延びるブーム23と、ブーム23に支持されたリーダ(ガイドセル)24等により構成されている。
鉛直姿勢のリーダ24には、ワイヤ操作で上下移動可能な昇降部材25が設けられている。杭撤去装置1は、ブラケット26を介して昇降部材25に取り付けられる。
【0019】
杭撤去装置1は、回転駆動可能な駆動装置3(駆動手段)と、既設の杭P(
図7参照)よりも大きい内径を有する円筒状のアースオーガ4と、このアースオーガ4の下端側部分において内径方向にチャック可能な複数(例えば、3つ)のチャック部材5を主な構成要素としている。
【0020】
まず、駆動装置3について説明する。
駆動装置3は、鉛直姿勢に配置されたアースオーガ4を軸心回りに回転駆動するように構成されている。
図1,
図2に示すように、駆動装置3は、リング台31の上部に鋼板を用いて組立てた吊り下げ用台32を立設して装置本体を形成し、台32の上端をピンを用いてブラケット26に連結している。
【0021】
リング台31の内周には、ボールベアリングを介してサークルギヤ33が回転可能に配設されている。リング台31の中心部には、サークルギヤ33を同軸上で回転可能に支持する取付軸34が取り付けられている。センタギヤ35は、取付軸34の外周で且つサークルギヤ33と同じ高さ位置に固定されている。取付軸34には、その軸心に沿って流体通路孔が貫通され、上端部分にスイベルジョイント36が設けられている。
【0022】
図2,
図3に示すように、サークルギヤ33とセンタギヤ35の間に2つの油圧モータ37が並設されている。これら油圧モータ37の出力軸の下端側部分には、サークルギヤ33とセンタギヤ35に夫々噛み合うモータギヤ38が固定されている。
サークルギヤ33の下端には、アースオーガ4を固定可能な複数の結合金具39が設置されている。油圧モータ37は、削孔時、サークルギヤ33を介してアースオーガ4を右回転させ、また、引抜時、サークルギヤ33を介してアースオーガ4を左回転させている。
【0023】
次に、アースオーガ4について説明する。
図1に示すように、アースオーガ4は、中間ケーシング41と、この中間ケーシング41の下端部に連結された削孔ケーシング42と、この削孔ケーシング42の外周面に取り付けられたスクリュー体43と、削孔ケーシング42の下端側部分に形成された円環状の収容室44等を有している。
【0024】
中間ケーシング41は、円筒状に形成されている。この中間ケーシング41は、上端部が複数の結合金具39に複数のボルトを介して固定され、下端部が削孔ケーシング42の上端部に複数のコッタ継手45を介して連結されている。全長が異なる複数種類の中間ケーシング41が予め準備されており、引抜対象である既設杭Pの深度が深いとき、長手方向の全長が長い中間ケーシング41を選択し、既設杭Pの深度が浅いとき、全長が短い中間ケーシング41を選択して使用する。
【0025】
図1,
図4に示すように、削孔ケーシング42は、中間ケーシング41に対して同心上に連結され、中間ケーシング41と同じ内径を有して円筒状に形成されている。
削孔ケーシング42は、複数の開口部42aと、1対の作動油経路42bとを備えている。複数の開口部42aは、削孔ケーシング42の側部に上下方向に並ぶように形成されている。本実施形態では、複数の開口部42aが、平面視にて、軸心に対して点対称配置になるように上下方向に2列設けられている。削孔時、削孔ケーシング42の下端開口42sから内部に侵入した土砂は、複数の開口部42aから削孔ケーシング42の外部に順次排出される。
【0026】
1対の作動油経路42bは、スイベルジョイント36から後述するチャック部材5に作動油を供給するための油圧ホース46を収容して配索する経路である。これらの作動油経路42bは、平面視にて、軸心に対して点対称配置になるように上下方向に2本設けられている。
図5,
図6に示すように、1対の作動油経路42bは、削孔ケーシング42の外周面に、横断面三角形状になるよう夫々形成されている。
【0027】
次に、収容室44について説明する。
収容室44は、複数のチャック部材5を空間内部に収容するように構成されている。
図4〜
図6に示すように、収容室44は、削孔ケーシング42の下端側部分に外径方向へ膨出するように円環状に形成されている。収容室44は、円環状の上壁部44aと、下方程小径化する下壁部44bと、上壁部44aと下壁部44bの外周部を連結する側壁部44cとを備えている。
【0028】
削孔ケーシング42の直径をD1、収容室44の最大直径(側壁部44cの直径)をD2、スクリュー体43の直径をD3としたとき、次式が成立するように側壁部44cの直径D2が設定されている。
D1<D2<D3 …(1)
これにより、削孔作業の効率を維持しつつ削孔ケーシング42の内部に収容室44を形成するスペースを確保することができる。
【0029】
また、直径D2は、次式が成立するように設定されている。
D2<2×D1 …(2)
直径D2が2×D1以上の場合、掘進抵抗が大きくなり過ぎ、削孔効率が低下するためである。
【0030】
次に、複数のチャック部材5について説明する。
3つのチャック部材5は、収容室44の内部で軸心回りに等間隔になるよう配設されている。これらチャック部材5は、既設杭Pを把持可能に形成され、削孔ケーシング42の下端側部分において内径方向に既設杭Pをチャック可能に夫々構成されている。
図4〜
図6に示すように、各チャック部材5は、板状のチャック体51と、シリンダ52と、チャック体51に連結されると共にシリンダ52によって駆動されるロッド53等を夫々備えている。
【0031】
略繭状のチャック体51は、その基端部寄り部分に回動点51pが形成されている。
このチャック体51は、回動点51pにて収容室44に支持され、この回動点51p回りに水平方向に向けて回動可能に構成されている。
シリンダ52は、その基端部が収容室44に対して回動可能に支持されている。このシリンダ52は、油圧ホース46の下端側部分に接続され、この油圧ホース46を介して作動油が給排される。
【0032】
ロッド53は、シリンダ52に作動油が供給されたとき、伸長され、シリンダ52から作動油が排出されたとき、短縮されるように構成されている。
図5に示すように、チャック解除動作(開作動)時、ロッド53が短縮し、チャック体51は、回動点51pを中心として時計回りに回動する。このとき、3つのチャック体51は、削孔ケーシング42(下端開口42s)よりも外側且つ側壁部44cよりも内側の格納領域に配置される。
【0033】
図6に示すように、チャック動作(閉作動)時、ロッド53が伸長し、チャック体51は、回動点51pを中心として反時計回りに回動する。このとき、3つのチャック体51は、基端部が回動点51pよりも外側(外径側)に移動するため、先端部が回動点51pよりも内側(内径側)に移動する。これに伴い、チャック体51の先端側部分が、削孔ケーシング42(下端開口42s)よりも内側に突入する。以上により、作動油の供給によって、3つのチャック体51が協働して既設杭Pを把持、或いは既設杭Pをチャック体51の上に載置させることができ、また、既設杭Pを途中部で分断することもできる。
【0034】
次に、
図7(a)〜
図7(d)に基づき、既設杭Pの撤去手順について説明する。
図7(a)に示すように、削孔作業時、既設杭Pとアースオーガ4を同軸上に配置して、駆動装置3がアースオーガ4を右回転駆動する。これにより、アースオーガ4は、地中に回転圧入される。このとき、チャック体51は、収容室44の内部、所謂ケーシング42よりも外側且つ側壁部44cよりも内側の格納領域に配置されている(
図5参照)。
回転圧入に伴いアースオーガ4内部に侵入する土砂は、複数の開口部42aからアースオーガ4の外部に順次排出される。
【0035】
図7(b)に示すように、アースオーガ4が既設杭Pの深度まで掘進した削孔作業完了時、既設杭Pはアースオーガ4に完全に囲繞されている。既設杭Pをアースオーガ4内部に収容するため、シリンダ52に作動油を供給してチャック動作を行う。
これにより、下端開口42sをチャック体51を用いて塞ぎ、既設杭Pをチャック体51上に載置する(
図6参照)。
【0036】
図7(c)に示すように、引抜作業時、既設杭Pをチャック体51上に載置した状態で駆動装置3がアースオーガ4を左回転駆動する。アースオーガ4は、左回転に伴って上昇移動する。
図7(d)に示すように、アースオーガ4の先端が地上に現れた時点で既設杭Pの引抜作業が完了する。
【0037】
次に、本発明の実施形態による杭撤去装置1の作用効果について説明する。
この杭撤去装置1によれば、アースオーガ4は、円筒状の削孔ケーシング42と、削孔ケーシング42の外周面に螺旋状に取り付けられたスクリュー体43とを有するため、泥濘化溶剤等を必要とすることなく、掘進速度を速くすることができ、削孔作業の効率化を図ることができる。削孔ケーシング42の下端側部分に外径方向に膨出するように形成された円環状の収容室44であって、水平方向に開閉作動する複数のチャック部材5を収容可能な収容室44を有するため、チャック部材5を削孔時から引抜時に亙って削孔ケーシング42内部に収容することができ、チャック部材5が地盤に直接晒されることを回避することができる。
【0038】
収容室44は、上壁部44aと、下方程小径化する下壁部44bと、上壁部44aと下壁部44bの外周部を連結する側壁部44cとを有するため、圧入抵抗を小さくしてアースオーガ4の掘進速度を一層速くすることができ、削孔作業の効率化を図ることができる。
【0039】
削孔ケーシング42の直径をD1、収容室44の最大直径をD2、スクリュー体43の直径をD3としたとき、D1<D2<D3 の関係が成立している。
これによれば、削孔作業の効率を維持しつつ削孔ケーシング42内部に収容室44を形成するスペースを確保することができる。
【0040】
複数のチャック部材5は、チャック動作したとき削孔ケーシング42の軸心側へ突入し、チャック解除動作したとき削孔ケーシング42と収容室54bこの側壁部44Cとの間の空間に配置されている。これによれば、削孔時、チャック解除動作したチャック部材5と削孔ケーシング42の下端開口42sから侵入した土砂との直接的な干渉を回避することができる。
【0041】
削孔ケーシング42の側部に上下方向に並ぶ複数の開口部42aが形成されたため、削孔時、削孔ケーシング42の下端開口42aから侵入した土砂を削孔ケーシング42の内部から排出することができ、削孔作業の効率低下を回避することができる。
【0042】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、中間ケーシング41と削孔ケーシング42から構成されたアースオーガ4の例を説明したが、必ずしも、アースオーガ4は中間ケーシング41を備えていなくても良い。この場合、アースオーガ4(削孔ケーシング42)の全長(長手方向長さ)が、既設杭Pの全長よりも大きくなるように設定される。
【0043】
2〕前記実施形態においては、3つのチャック部材5を備えた杭撤去装置1の例を説明したが、必ずしも、チャック部材5が3つである必要はなく、2つであっても良く、また、4つ以上であっても良い。また、1対の作動油経路42bの例を説明したが、作動油経路42bの数は、油圧ホース46の数に合わせて設定可能である。
【0044】
3〕前記実施形態においては、油圧モータ37を2つ備えた駆動装置3の例を説明したが、少なくとも、アースオーガ4を回転駆動できれば良く、1つ又は3つ以上の油圧モータであっても良い。また、アースオーガ4を回転駆動可能な電動モータを備えても良い。
【0045】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。