(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6923904
(24)【登録日】2021年8月3日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】冷菓材容器
(51)【国際特許分類】
B65D 85/78 20060101AFI20210812BHJP
A23G 9/24 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
B65D85/78 100
A23G9/24
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-66801(P2017-66801)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-167863(P2018-167863A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】110001391
【氏名又は名称】特許業務法人レガート知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】穂積 剛生
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−024758(JP,A)
【文献】
実開昭63−161177(JP,U)
【文献】
特開2017−023068(JP,A)
【文献】
特表2012−510267(JP,A)
【文献】
特許第6142056(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D85/78
A23G 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷菓材を収容可能な容器本体と、前記容器本体に収容された冷菓材に凹部を成形するための成形型とを備えた冷菓材容器であって、
前記成形型は、上方が開口した下向きの凸部を備え、
前記凸部の開口周縁には、前記容器本体の上縁に掛け渡されるフランジが部分的に形成され、
前記フランジが形成されていない前記凸部の開口周縁には、前記凸部の周壁を内側に変形させるための操作片が設けられた、
冷菓材容器。
【請求項2】
操作片は、容器本体の上縁に掛け渡されるようにするとともに、
前記操作片及び容器本体の上縁に掛け渡されるフランジには、成形型凸部の前記容器本体内における配設位置を決めるための位置決め手段が形成された、
請求項1記載の冷菓材容器。
【請求項3】
操作片には、指掛け部が形成された、請求項1又は2記載の冷菓材容器。
【請求項4】
操作片が設けられた位置の下方の凸部周壁は、内向きの凹状に形成された、請求項1ないし3の何れか記載の冷菓材容器。
【請求項5】
フランジが形成されていない部分の下方の凸部周壁は、縦向きの蛇腹状に形成された、
請求項1ないし4の何れか記載の冷菓材容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かき氷やシャーベットなどの冷菓材に凹部を成形しながら包装するための容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、かき氷やシャーベットのような氷菓に凹部を成形し、この凹部にコーヒーやジュース、酒類などの飲料を注ぐことで、誰でも手軽にフローズン飲料を作ることができる容器が提供されている。例えば、特開平10−117692号公報には、カップ状容器に充填される氷菓の中心部に略円錐形状の凹部が成形されるよう、容器蓋の中心部底面に円錐形状の凸部を設けた氷菓容器が開示されている。
【0003】
しかしながら、このような従来の氷菓容器にあっては、氷菓に凹部を成形するための凸部を備えた容器蓋を容器本体から外す際、氷菓がこの凸部に密着した状態で凍結しているため、容器蓋を外しにくいという問題がある。
【特許文献1】特開平10−117692号公報
【0004】
かかる問題を解決するものとして、特開2016−26472号公報に記載された冷菓材の成形容器の発明が提案されている。この発明によれば、容器本体に収容された冷菓材の一部を成形することが可能な蓋体の外面に螺旋状の段差が形成されているので、冷菓材の表面に形成された螺旋状の段差に沿って蓋体を回転させることにより、蓋体を冷菓材からスムーズに引き抜くことができる。
【0005】
しかしながら、特開2016−26472号公報に記載された冷菓材の成形容器の蓋体にあっては、冷菓材の表面に形成された螺旋状の段差に沿って蓋体を回転させながら外さなければならず、外す際にコツが必要となる。また、冷菓は蓋体の外面に密着した状態で凍結しているため、蓋体を回転させただけでは冷菓が蓋体とくっついた状態で一緒に回転してしまい、蓋体と冷菓との密着状態を素早く解除することができない。蓋体と冷菓との密着状態を素早く解除するためには、冷菓を押さえながら蓋体を回転させなければならないところ、冷菓は容器本体内に収容されているため、これを押さえることができない。
【特許文献2】特開2016−26472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、成形型と冷菓材との密着状態を素早く解除して、成形型の取り外しを容易に行うことができる冷菓材容器を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の冷菓材容器は、冷菓材を収容可能な容器本体と、前記容器本体に収容された冷菓材に凹部を成形するための成形型とを備えた冷菓材容器であって、前記成形型は上方が開口した下向きの凸部を備え、前記凸部の開口周縁には前記容器本体の上縁に掛け渡されるフランジを部分的に形成するとともに、前記フランジが形成されていない前記凸部の開口周縁には前記凸部の周壁を内側に変形させるための操作片を設けて構成する。
前記容器本体は、かき氷やシャーベットなどの冷菓材を収容可能で弾性変形できる容器であればよく、合成樹脂製の筒状容器などを用いることが考えられる。
また、前記成形型は、前記容器本体内に収容された冷菓材に前記下向きの凸部を挿入して前記冷菓材に凹部を成形するためのものであり、低温時でも割れにくい合成樹脂などを用いて構成することが考えられる。そして、前記凸部は下向きの凸部として形成されていればよく、凸部の形状としては、円筒状、角柱状、逆円錐状など、種々の形状が考えられる。
【0008】
請求項2の発明は、前記操作片は前記容器本体の上縁に掛け渡されるようにするとともに、この操作片及び前記容器本体の上縁に掛け渡されるフランジに、前記成形型凸部の前記容器本体内における配設位置を決めるための位置決め手段を形成したことを特徴とする。
前記位置決め手段としては、例えば、前記フランジ及び操作片に、容器本体の上縁内側に当接可能な下向き凸部を形成したり、前記フランジ及び操作片の外縁側を容器本体の上縁に嵌合可能な断面略逆U字状に形成することが考えられる。
【0009】
請求項3の発明は、前記操作片に指掛け部を形成したことを特徴とする。前記指掛け部は、前記操作片を操作して前記凸部を内向きに変形させる際に、指を掛けることができるものであればよく、例えば、前記操作片に、指が入る程度の凹部を形成したり、指を引っ掛けることができる程度の凸部を形成したりすることが考えられる。
【0010】
請求項4の発明は、前記凸部周壁の前記操作片
が設けられた位置の下方を内向きの凹状に形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、前記凸部周壁の前記フランジが形成されていない部分
の下方を縦向きの蛇腹状に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、冷菓材を収容可能な容器本体と、前記容器本体に収容された冷菓材に凹部を成形するための成形型とを備えた冷菓材容器において、上方が開口した下向きの凸部を備えた成形型の前記凸部の開口周縁に前記容器本体の上縁に掛け渡されるフランジを部分的に形成したので、成形型凸部の開口周縁のフランジが形成されていない部分(非フランジ部)がフランジによって規制されることがなくなるため変形可能となる。そして、この非フランジ部に前記凸部の周壁を内側に変形させるための操作片を設けたので、この操作片を操作して成形型の凸部周壁を内側方向に変形させることで、冷菓材と密着した成形型を冷菓材から強制的に剥がすことにより、素早くかつ容易に成形型と冷菓材との密着状態を解除することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、前記操作片は前記容器本体の上縁に掛け渡されるようにするとともに、この操作片及び前記容器本体の上縁に掛け渡されるフランジには、成形型凸部の容器本体内における配設位置を決めるための位置決め手段を形成したので、氷菓材が収容された容器本体に成形型を嵌め込む際、この位置決め手段を用いることにより容器本体内の特定の位置に成形型凸部を配設することができる。これにより、氷菓材の特定の位置に凹部を成形することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、前記操作片には指掛け部を形成したので、この指掛け部に指を掛けて操作を行うことにより、成形型の凸部周壁を内側方向に変形させる際の操作性を向上させることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、前記操作片が設けられた位置
の下方の凸部周壁を内向きの凹状に形成したので、操作片を操作して成形型の凸部周壁を内側方向に変形させる際、成形型の凸部周壁が内側方向に変形しやすく、一層素早くかつ容易に成形型と冷菓材との密着状態を解除することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、前記フランジが形成されていない部分(非フランジ部)
の下方の凸部周壁を縦向きの蛇腹状に形成したので、操作片を操作して成形型の凸部周壁を内側方向に変形させる際、成形型の凸部周壁の内側方向への可動域を大きくすることができ、確実に成形型と冷菓材との密着状態を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図5】同じく使用方法を説明する図(冷菓材を容器本体内に収容して成形型を嵌め込んだ状態の断面図)
【
図6】同じく使用方法を説明する図(操作片を操作して成形型を冷菓材から剥離する様子を示す断面図)
【
図8】同じく使用方法を説明する図(冷菓材を容器本体内に収容して成形型を嵌め込んだ状態の断面図)
【
図9】同じく使用方法を説明する図(操作片を操作して成形型を冷菓材から剥離する様子を示す断面図)
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1ないし4は、この発明の冷菓材容器の概要を示す図である。
冷菓材容器1は、かき氷やシャーベットなどの冷菓材が収容される容器本体2と、この容器本体2内に収容された冷菓材に凹部を成形するための成形型3とからなる。
【0019】
容器本体2は、弾性変形できる樹脂、例えばPP樹脂を用いて肉薄の略円筒形状に形成された有底容器であり、内部にかき氷やシャーベットなどの冷菓材を収容することができる。また、肉薄に形成されているので、胴体部を把持して力を加えることにより、胴体部を容易に弾性変形させることができる。
【0020】
成形型3は、低温時でも割れにくい樹脂、例えばゴム成分を含むPS樹脂を用いて肉薄に形成されており、上方が開口した略逆円錐状の成形凸部31を備え、上方の開口部32周縁には、容器本体2の上縁に掛け渡されるフランジ33が、開口部32周縁の半周をやや超える程度に亘って形成されている。また、開口部32周縁のフランジ33が形成されていない部分(非フランジ部)34には、操作片35が容器本体2の上縁に掛け渡されるように設けられている。
【0021】
成形型3のフランジ33の裏側には、成形凸部31の容器本体2内における配設位置を決めるための位置決め手段としての位置決め凸部331が間隔を介して三つ形成されている。
また、操作片35の裏側には成形凸部31の容器本体2内における配設位置を決めるための位置決め手段としての位置決め凸部351が一つ形成され、表側には成形凸部31の周壁を内側に変形させる
際に指を掛けるための
指掛け部である指掛け凸部352が形成されている。
成形型3を容器本体2に嵌め込む際には、フランジ33に形成された位置決め凸部331と、操作片35に形成された位置決め凸部351とを、容器本体2の上縁内側に当接させるようにして装着することにより、容器本体2内における成形凸部31を所定の位置に配設することができる。
【0022】
そして、操作片35が設けられた位置
の下方の成形凸部31の周壁には内向きの凹部311が形成され、非フランジ部34
の下方の成形凸部31の周壁には縦向きの蛇腹部312が形成されている。
【0023】
図5及び
図6は、この冷菓材容器1の使用方法を説明するための図である。
図5は、容器本体2内に冷菓材Iを収容した後、成形型3を容器本体2に嵌め込んだ状態を示す図であり、
図6は、操作片35を操作して成形型3を冷菓材Iから剥離する様子を示す図である。
図5に示すように、容器本体2内において冷菓材Iは成形型3と密着した状態で凍結されている。
成形型3を容器本体2から取り外す場合、
図6に示すように、操作片35の
指掛け凸部352を指で内側方向(矢示方向)に押すと、成形凸部31の蛇腹部312が変形して内側方向に拡がるので、非フランジ部34
の下方の成形凸部31の周壁部分における冷菓材Iとの密着状態を強制的に解除することができる。そして、このように成形凸部31と冷菓材Iとの密着状態が部分的に解除されると、成形凸部31と冷菓材Iとの間に空気が入り込みやすくなるので、容易に成形型3を冷菓材Iから剥離することができる。
このとき、操作片35が設けられた位置
の下方の成形凸部31の周壁に内向きの凹部311が形成されているので、操作片35の
指掛け凸部352を押して成形凸部31の周壁を内側方向に変形させる際に、小さな力で変形させることができる。
【0024】
成形型3を取り外した後、凹部が成形された冷菓材Iを容器本体2ごともみほぐし、さらにコーヒーなどの飲料を注入してかき混ぜることにより、誰でも手軽にフローズン飲料を作ることができる。
【0025】
図7ないし
図9は、操作片35を一対に設けた場合の実施例(実施例2)を示す図である。
実施例1は、操作片35を一つ設けた場合の例を説明したものであるが、操作片35は、開口部32周縁の対向位置に一対のものとして設けることもできる。
すなわち、実施例2においては、成形型3の上方の開口部32周縁に、それぞれ開口部32を挟んで対向する一対のフランジ33,33と、一対の操作片35,35とが十字に交差するようにして設けられ、容器本体2の上縁に掛け渡されている。そして、一対のフランジ33,33の裏側にはそれぞれ位置決め凸部331,331が形成され、一対の操作片35,35の裏側にはそれぞれ位置決め凸部351,351が、表側には
指掛け凸部352,352が形成されている。
その他の構成は実施例1と同じである。
【0026】
この実施例においては、成形型3を容器本体2から取り外す場合、
図9に示すように、操作片35,35の
指掛け凸部352,352を指で内側方向(矢示方向)に押すと、成形凸部31の蛇腹部312が変形して内側方向に拡がるので、非フランジ部34
の下方の成形凸部31の周壁部分における冷菓材Iとの密着状態を強制的に解除することができるところ、例えば、片方の
指掛け凸部352に親指を当て、もう片方の
指掛け凸部352に中指を当てて、この親指と中指とで摘まむようにして内側方向(矢示方向)に力を加えると、片手で簡単に変形操作を行うことができるだけでなく、冷菓材Iからの成形型3の取り外しも片手で行うことができる。加えて、成形凸部31と冷菓材Iとの密着状態が2箇所で解除されることとなるので、成形凸部31と冷菓材Iとの間により一層空気が入り込みやすくなり、冷菓材Iからの成形型3の剥離も一層容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明は、かき氷やシャーベットなどの冷菓材に凹部を成形しながらこれを包装するための容器に関するものであり、産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0028】
1 冷菓材容器
2 容器本体
3 成形型
31 成形凸部
311 凹部
312 蛇腹部
32 開口部
33 フランジ
331 位置決め凸部
34 非フランジ部
35 操作片
351 位置決め凸部
352
指掛け凸部
I 冷菓材