(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本実施形態に係るボタン錠10について詳細に説明する。
【0010】
<外部構造>
最初に、
図1〜
図3を用いて、ボタン錠10の外部構造について説明する。
図1は、ボタン錠10の正面図であり、
図2は、ボタン錠10の左側面図であり、
図3は、ボタン錠10の背面図である。
【0011】
ボタン錠10は、箱状のケース12と、このケース12の前方開口部を覆うように取付けられる板状の化粧板14と、この化粧板14の上方に操作可能に配置される複数のボタン16と、施錠位置および解錠位置の一方から他方に回動可能な板状のカム20と、このカム20を回動させるためのツマミ22と、ケース12に対して進退可能なラッチ24と、を有して構成される。
【0012】
ここで、カム20は、いわゆる「デッドボルト(本締)」に相当する従来公知の部材であり、ラッチ24は、いわゆる「ラッチボルト(仮締)」に相当する従来公知の部材であり、いずれも本実施形態に係る構造や形状に限定されるものではない。このボタン錠10は、ロッカーやキャビネットなどの扉の戸先などに取り付けられて使用される。
【0013】
<内部構造>
次に、
図4を用いて、ボタン錠10の内部構造について説明する。
図4は、ボタン錠10を構成する主要部材を分解して示した分解斜視図である。
【0014】
箱状のケース12の内部空間には、カム20による解錠と施錠を切り替えるための施解錠機構40と、非常時に施解錠機構40によらずにカム20の解錠を行うためのシリンダ錠50と、ボタン錠10を自動で施錠するためのオートロック機構60と、ボタン16の暗証番号(数字合わせ)を変更するための暗証番号変更機構70と、暗証番号が揃った状態のボタン16をリセットする(初期位置に戻す)ための暗証番号リセット機構80等の部材が収容される。なお、シリンダ錠50は、本発明の特徴部分では無いため、その説明は省略する。
【0015】
<施解錠機構40>
次に、
図4と
図5を用いて、ボタン錠10の施解錠機構40について説明する。
図5(a),(b)は、ボタン錠10から施解錠機構40を構成する主要部品を抜き出して二方向から見た外観斜視図である。
【0016】
施解錠機構40は、ケース12に回転可能に配設される第1ロックカム41(
図4参照)と、この第1ロックカム41の前方に同軸的に嵌め込まれる第2ロックカム42と、この第2ロックカム42の外周部にスライド可能に嵌め込まれるカムプレート43と、このカムプレート43の回動を規制することが可能な判定板センスプレート44と、この判定板センスプレート44を前方に持ち上げることが可能な判定板45と、この判定板45に挿通される複数のギア46と、これら複数のギア46にスライド可能に取り付けられる複数のボタン16と、複数のギア46とボタン16がスライド可能に取り付けられる中間プレート76と、ボタン16を所定位置に保持することが可能なボタンロックプレート47と、を有して構成されている。
【0017】
<施解錠機構40/第1ロックカム41>
次に、施解錠機構40の第1ロックカム41について説明する。
図4に示すように、第1ロックカム41は、円柱形状の部材からなり、ケース12に取り付けられるピン48(
図4参照)に嵌め込まれてケース12に対して相対回転可能に配設される。第1ロックカム41の後方端部には、カム20を固定するためのネジ18(
図5(b)参照)が取り付けられるネジ止め部(図示省略)が形成されている。また、第1ロックカム41の前方端部には、第2ロックカム42が嵌め込まれる凹形状のロックカム嵌合部41a(
図4参照)が形成され、外周部には、後述するオートロック機構60のスライダ62と係合可能な扇形状のスライダ係合部41b(
図4参照)が外側に向けて突出形成されている。
【0018】
<施解錠機構40/第2ロックカム42>
次に、施解錠機構40の第2ロックカム42について説明する。第2ロックカム42は、第1ロックカム41のロックカム嵌合部41aに嵌め込まれて第1ロックカム42に固定される。第2ロックカム42の前方端部には、ツマミ22が着脱可能なツマミ取付部42a(
図4,
図5(d),同図(f)参照)が突出形成され、外周部には、カムプレート43がスライド可能に嵌め込まれるカムプレート嵌合部42b(
図4参照)が設けられている。
【0019】
<施解錠機構40/カムプレート43>
次に、施解錠機構40のカムプレート43について説明する。カムプレート43の中央には、矩形状の開口部43a(
図4参照)が形成されている。この開口部43aに第2ロックカム42のカムプレート嵌合部42bが嵌め込まれることで、
図5(a)等に示すように、カムプレート43は、第2ロックカム42に同軸的に嵌め込まれた状態で配置される。また、カムプレート43の外周部には、判定板センスプレート44と係合可能なセンスプレート係合部43b(
図4,
図5(a),同図(d)参照)が外側に向けて突出形成されている。
【0020】
また、カムプレート43の開口部43aと第2ロックカム42の下端との隙間には、コイルスプリング(図示省略)が縮設されており、カムプレート43は、このコイルスプリングによって、第2ロックカム42に対して下方に常時、付勢されている(
図5(a)等参照)。
【0021】
<施解錠機構40/判定板センスプレート44>
次に、施解錠機構40の判定板センスプレート44について説明する。
図4等に示すように、判定板センスプレート44は、板状の本体部44aと、この本体部44aの一端から水平方向に延びる腕部44bと、を備える。
図5(b),同図(e)等に示すように、本体部44aは、判定板45の下部に形成されたセンスプレート係止部45cに揺動可能に取り付けられ、腕部44bは、シリンダ錠50の外筒26(
図5(d)参照)の上方に位置するように配置される。
【0022】
<施解錠機構40/判定板45>
次に、施解錠機構40の判定板45について説明する。
図4等に示すように、判定板45は、板状の部材からなり、ギア46が挿通されるほぼ円形状の判定溝45aを、ギア46の個数分(本例では、11個)備える。判定溝45aの内壁には、判定溝45aの中心に向かって突出形成された三角形状の外歯45b(
図4,5(a)等参照)が形成されている。また、判定板45の下端には、判定板センスプレート44を揺動可能に支持するためのセンスプレート係止部45c(
図4,5(b)等参照)が形成されている。
【0023】
<施解錠機構40/判定板センスプレート44と判定板45の関係>
次に、判定板センスプレート44と判定板45の関係について説明する。
図5(c),同図(d)は、判定板45がスライドして上方に位置しているときの各部材の状態を示した部分拡大図であり、
図5(e),同図(f)は、判定板45がスライドして下方に位置しているときの各部材の状態を示した部分拡大図である。
【0024】
判定板45がギア46によって上方にスライドされると、判定板45に支持された判定板センスプレート44も上方向にスライドするとともに、判定板センスプレート44の腕部44bが外筒26の側面に沿って後方に移動することで、
図5(c),同図(d)に示すように、判定板センスプレート44が垂直方向に起立した状態となる。これにより、カムプレート43の正面視反時計回りの回動が判定板センスプレート44によって阻止されるため、カムプレート43と第2ロックカム42は、判定板センスプレート44によって回動が規制される回動規制状態となる。
【0025】
一方、判定板45がギア46によって下方にスライドされると、判定板45に支持された判定板センスプレート44も下方向にスライドするとともに、判定板センスプレート44の腕部44bが外筒26の側面に沿って前方に移動することで、
図5(e),同図(f)に示すように、判定板センスプレート44の下方が、判定板45の下端を支点として前方に持ち上がった状態となる。これにより、カムプレート43の正面視反時計回りの回動が判定板センスプレート44によって阻止されなくなるため、カムプレート43と第2ロックカム42は、判定板センスプレート44によって回動が規制されない回動可能状態となる。
【0026】
<施解錠機構40/ギア46>
次に、施解錠機構40のギア46について説明する。
図6(a)は、ギア46を三方向から見た外観斜視図である。ギア46は、円筒形状の部材からなり、その外周には、判定板45の外歯45bと相補的形状を有する凹形状の内歯46aと、後述する暗証番号変更機構70のギアスライダ74と噛み合う複数の外歯46bが形成されている。また、ギア46の一端側には、ボタン16の支持軸16bが挿入可能な挿入孔46cが形成されている。
【0027】
<施解錠機構40/ボタン16>
次に、施解錠機構40のボタン16について説明する。
図6(b)は、ボタン16を二方向から見た外観斜視図である。ボタン16は、表面に数字や英字等が施される操作部16aと、この操作部16aの背面中央を基端として突出形成された棒状の支持軸16bと、ボタンロックプレート47と係合可能な突出片16cと、を備える。ボタン16は、支持軸16bに取り付けられるコイルスプリング17(
図5(b)参照)によって、ギア46から離反する方向に付勢された状態でギア46に係合・固定される。
【0028】
支持軸16bには、2つのギア係合部16b1、16b2が径方向外側に向かって突出形成されており、本例では、操作部16aに近い方のギア係合部16b1が、暗証番号設定用のギア係合部であり、操作部16aから遠い方のギア係合部16b2が、暗証番号非設定用のギア係合部である。なお、暗証番号設定用のギア係合部と暗証番号非設定用のギア係合部の軸方向における位置関係は、本例に限定されるものではない。
【0029】
<施解錠機構40/ボタン16とギア46の関係>
次に、ボタン16とギア46の関係について説明する。
図6(c)は、暗証番号として設定された状態(暗証番号設定状態)のボタン16とギア46の関係を示した外観斜視図と側断面図であり、
図6(d)は、暗証番号として設定されていない状態(暗証番号非設定状態)のボタン16とギア46の関係を示した外観斜視図と側断面図である。
【0030】
図6(c)に示す暗証番号設定状態のボタン16は、暗証番号設定用のギア係合部16b1を介してギア46に係合・固定されており、
図6(d)に示す暗証番号非設定状態のボタン16に比べて、ボタン16の操作部16aの背面とギア46の内歯46aとの距離L1が短くなっている。この暗証番号設定状態のボタン16は、初期位置から所定量だけ押し込まれた場合(暗証番号の一つとして押下操作された場合)に、ギア46の内歯46aが、判定板45の外歯45bと噛み合った状態となるように構成される。
【0031】
一方、
図6(d)に示す暗証番号非設定状態のボタン16は、暗証番号非設定用のギア係合部16b2を介してギア46に係合・固定されており、
図6(c)に示す暗証番号設定状態のボタン16に比べて、ボタン16の操作部16aの背面とギア46の内歯46aとの距離L2が長くなっている。この暗証番号非設定状態のボタン16は、初期位置のままで、ギア46の内歯46aが、判定板45の外歯45bと噛み合った状態となるように構成される。
【0032】
なお、ボタン錠10は、後述する暗証番号変更機構70によって、暗証番号設定状態のボタン16と暗証番号非設定状態のボタン16を相互に変更することが可能である。
【0033】
<施解錠機構40/中間プレート76>
次に、施解錠機構40の中間プレート76について説明する。
図7(a)は、中間プレート76を二方向から見た外観斜視図であり、
図7(b)は、ボタン16とギア46が配設された状態の中間プレート76の側断面図である。中間プレート76は、ボタン16の支持軸16bが貫通可能な貫通孔76aと、ギア46が嵌め込まれるギア嵌合部76bと、をボタン16やギア46の個数分(本例では、11個)備える。ボタン16とギア46は、中間プレート76に対して水平方向(ボタン16やギア46の軸心方向)にスライド可能である。
【0034】
<施解錠機構40/ボタンロックプレート47>
次に、施解錠機構40のボタンロックプレート47について説明する。
図7(c)は、ボタンロックプレート47の外観斜視図であり、同図(d)は、ボタン16が配設された状態のボタンロックプレート47の側面図と背面図である。ボタンロックプレート47は、格子状の部材からなり、ボタン16を所定位置に係止させることが可能なボタン係止片47aをボタン16の個数分(本例では、11個)備える。また、ボタンロックプレート47の下方には、後述するリセットカム82と係合可能な三角形状のリセットカム係合部47cが下向きに突出形成されている。
【0035】
図7(d)等に示すように、ボタンロックプレート47は、ボタン16の背面側に上下方向にスライド可能に配設される。ボタンロックプレート47が下方にスライドしている場合には、ボタンロックプレート47のボタン係止片47aが、ボタン16の突出片16cの真後ろに位置するように構成される。この状態において、初期位置にあるボタン16が所定量だけ押し込まれると、ボタン16の突出片16cがボタンロックプレート47のボタン係止片47aを乗り越えて係止され、ボタン16は、ボタンロックプレート47によって係止された位置(押込み位置)で保持される。
【0036】
一方、ボタンロックプレート47が上方にスライドしている場合には、ボタンロックプレート47のボタン係止片47aが、ボタン16の突出片16cの真後ろに位置しないように構成される。この状態では、初期位置にあるボタン16が所定量だけ押し込まれた場合でも、ボタン16の突出片16cがボタンロックプレート47のボタン係止片47aに係止されることはない。一方、押込み位置にあったボタン16は、ボタン係止片47による係止が解除されるため、コイルスプリング17に付勢されて初期位置に復帰する。
【0037】
<施解錠機構40の基本動作>
次に、施解錠機構40の基本動作について説明する。ボタン錠10の使用者が、暗証番号設定状態の全てのボタン16の押下操作を行い、暗証番号に対応するボタン16がボタンロックプレート47によって押込み位置で係止されると、判定板45の全ての外歯45bが、対応するギア46の内歯46aに噛み合った状態となる。これにより、判定板45が自重で下方向(
図5(a)において符号Zで示す方向)にスライドして判定板センスプレート44の下方が前方に持ち上がった状態となり、カムプレート43と第2ロックカム42が回動可能状態となるため、ボタン錠10の使用者は、ツマミ22を用いてカム20による解錠操作を行うことが可能となる。
【0038】
すなわち、ツマミ22を用いてカム20を施錠位置(例えば、
図8(c)に示す位置)から解錠位置(例えば、
図8(a)に示す位置)まで回動すると、カム20の先端がロッカーやキャビネットなどの本体(ストライク)から退出することで、扉の開閉が可能な状態(解錠状態)となる。なお、詳細は後述するが、ボタン錠10が解錠状態になるとオートロック機構60によるオートロックがオンの状態(自動施錠待機状態)となる。
【0039】
一方、暗証番号設定状態の全てのボタン16の押下操作を行っていない場合(暗証番号に対応する数字が揃っていない場合)には、判定板45の外歯45bの少なくとも一つが、対応するギア46の内歯46aに噛み合っていない状態となる。これにより、判定板45が上方に持ち上げられて判定板センスプレート44が垂直方向に起立した状態となり、カムプレート43と第2ロックカム42が回動規制状態となるため、ボタン錠10の使用者は、ツマミ22を用いてカム20による解錠操作を行うことはできない。
【0040】
また、オートロック機構60が機能してカム20が解錠位置から施錠位置まで回動すると、カム20の先端が扉の戸先(ストライク)から突出してロッカーやキャビネットなどの本体と係合することで、扉を開くことができない状態(施錠状態)となる。
【0041】
<オートロック機構60>
次に、
図4,
図8,
図9等を用いて、ボタン錠10のオートロック機構60について説明する。なお、
図8(a)〜同図(c)は、ボタン錠10からオートロック機構60を構成する主要部品等を抜き出して示した外観斜視図であり、オートロックが機能してボタン錠10が解錠状態から施錠状態に変化する様子を時系列で示した図である。また、
図9(a),同図(b)は、ボタン錠10からオートロック機構60を構成する主要部品等を抜き出して示した平面図である。
【0042】
図4,
図8,
図9に示すように、オートロック機構60は、上下方向にスライド可能なスライダ62と、このスライダ62の移動(スライド)を規制することが可能なセンサープレート63と、このセンサープレート63を移動させることが可能な移動プレート65と、センサープレート63をラッチ24の方向に付勢する第1コイルスプリング66(
図10参照)と、スライダ62をセンサープレート63の方向に付勢する第2コイルスプリング(図示省略)と、を有して構成されている。
【0043】
<オートロック機構60/スライダ62>
次に、オートロック機構60のスライダ62について説明する。
図8に示すように、スライダ62は、ケース12に沿って垂直方向(
図8(a)において符号Xで示す方向)にスライド可能に配設され、第2コイルスプリング(図示省略)によってセンサープレート63が位置する方向(本例では、ボタン錠10の上方向。
図8(b)において符号X2で示す方向)に常時、付勢される。
【0044】
また、スライダ62には、第1ロックカム41のスライダ係合部41bと係合可能なロックカム係合部62aが形成されており、スライダ62は、第1ロックカム41と係合した状態で配設される。これにより、スライダ62が第2コイルスプリングの付勢力に逆らって下方向にスライドされると、第1ロックカム41が正面視反時計回りに回動することで、ツマミ22とカム20が、
図8(c)に示す施錠位置から
図8(a)に示す解錠位置まで回動する。一方、スライダ62が第2コイルスプリングの付勢力によって上方向にスライドされると、第1ロックカム41が正面視時計回りに回動することで、ツマミ22とカム20が、
図8(a)に示す解錠位置から
図8(c)に示す施錠位置まで回動する。
【0045】
<オートロック機構60/センサープレート63>
次に、オートロック機構60のセンサープレート63について説明する。
図9に示すように、センサープレート63は、移動プレート65を回転軸として、
図9(b)において符号Yで示す方向に回動可能に配設され、第1コイルスプリング66によってラッチ24の方向(本例では、ボタン錠10の奥方向)に付勢される。
【0046】
図9(a)に示すように、センサープレート63が第1コイルスプリング66の付勢力によって奥方向に回動されると、センサープレート63がスライド62を下方向に押圧するため、スライダ62が第2コイルスプリングの付勢力に逆らって下方向にスライドし、ツマミ22とカム20が、
図8(c)に示す施錠位置から
図8(a)に示す解錠位置まで回動する。
【0047】
一方、
図9(b)に示すように、センサープレート63が第1コイルスプリング66の付勢力に逆らって手前方向に回動されると、スライド62が上方向にスライド可能な空間が形成される。これにより、スライダ62が第2コイルスプリングの付勢力によって上方向にスライドし、ツマミ22とカム20が、
図8(a)に示す解錠位置から
図8(c)に示す施錠位置まで回動する。
【0048】
なお、ツマミ22とカム20が
図8(c)に示す施錠位置に位置している状態において、ツマミ22を手動で解錠位置まで回動した場合にも、スライダ62が第2コイルスプリングの付勢力に逆らって下方向にスライドするため、第1コイルスプリング66の付勢力によって、センサープレート63が奥方向にスライドされることになる。
【0049】
<オートロック機構60/移動プレート65>
次に、オートロック機構60の移動プレート65について説明する。
図10(a)は、移動プレート65がセンサープレート使用位置に位置している状態におけるボタン錠10の背面図と、同ボタン錠10の一部の部材を抜き出して示した平面図であり、
図10(b)は、移動プレート65がセンサープレート収容位置に位置している状態におけるボタン錠10の背面図と、同ボタン錠10の一部の部材を抜き出して示した平面図である。
【0050】
移動プレート65は、ケース12の裏面に露出されて外部からの操作が可能な起動ボタン部65aを備える。移動プレート65の起動ボタン部65aを、ドライバー等の工具で手前に引き出した上で、
図10(a)に示すセンサープレート使用位置から
図10(b)に示すセンサープレート収容位置まで移動させると、移動プレート65に取り付けられたセンサープレート63が、ケース12の内方に向かって移動し、ケース12から突出しない状態、すなわち、オートロック機構60によって扉の閉鎖を検出することができない状態となる。
【0051】
一方、移動プレート65の起動ボタン部65aを、ドライバー等の工具で手前に引き出した上で、
図10(b)に示すセンサープレート収容位置から
図10(a)に示すセンサープレート使用位置まで移動させると、センサープレート63が、ケース12の外側に向かって移動し、センサープレート63の先端部がケース12の外部に突出した状態、すなわち、オートロック機構60によって扉の閉鎖を検出することが可能な状態となる。
【0052】
このように、ボタン錠10では、移動プレート65の起動ボタン部65aを、操作を行う際にドライバー等の工具で手前に引き出す必要があるように構成しているため、誤操作等を未然に防止することができる。
【0053】
また、センサープレート63が
図10(b)に示すセンサープレート収容位置まで移動した状態(例えば、ボタン錠10の出荷時)では、起動ボタン65aがケース12の背面側に突出した状態となるため、設置後に、センサープレート63をセンサープレート使用位置まで移動させやすい。また、センサープレート63が
図10(a)に示すセンサープレート使用位置まで移動した状態(例えば、ボタン錠10の設置後)では、起動ボタン65aがケース12の背面と面一(フラット)になるため、誤操作等を未然に防止することができる。
【0054】
<オートロック機構60の基本動作>
次に、
図8と
図9を用いて、オートロック機構60の基本動作について説明する。上述の通り、ボタン錠10の使用者が、暗証番号設定状態の全てのボタン16の押下操作を行うと、ツマミ22を用いてカム20による解錠操作を行うことが可能となる。
【0055】
ツマミ22を用いてカム20を施錠位置(例えば、
図8(c)に示す位置)から解錠位置(例えば、
図8(a)に示す位置)まで回動すると、第1ロックカム41が正面視反時計回りに回動し、この第1ロックカム41に係合するスライダ62が第2コイルスプリングの付勢力に逆らって下方向にスライドする。スライダ62が下方向にスライドすると、第1コイルスプリング66の付勢力によって、センサープレート63が奥方向に回動される。これにより、ボタン錠10は、解錠状態になるとともに、オートロック機構60によるオートロックがオンの状態(自動施錠待機状態)となる。
【0056】
ボタン錠10のオートロックがオンの状態において、ロッカーやキャビネットなどの扉が閉められると、ラッチ24は、ロッカーやキャビネットなどの本体を乗り越えて本体に設けられたストライク(図示省略)に収容されるが、センサープレート63は、ロッカーやキャビネットなどの本体に衝突することで、第1コイルスプリング66の付勢力に逆らって手前方向に回動される。これにより、スライダ62が第2コイルスプリングの付勢力によって上方向(
図8(b)において符号X2で示す方向)にスライドし、ツマミ22とカム20が、解錠位置から施錠位置まで回動する。これにより、ボタン錠10が、施錠状態になるとともに、オートロック機構60によるオートロックがオフの状態(自動施錠非待機状態)となる。
【0057】
図11は、ボタン錠10が自動施錠待機状態から自動施錠非待機状態に移行する際のカムプレート43の動きを時系列で示した図である。
【0058】
ボタン錠10が、
図8(a)に示す自動施錠待機状態にある場合、カムプレート43は、
図11(a)に示すように、判定板センスプレート44の本体部44aに乗り上げた状態となっている。このとき、カムプレート43は、第2ロックカム42との間に縮設されたコイルスプリング(図示省略)の付勢力に逆らって、第2ロックカム42に対して下方にスライドした状態となる。
【0059】
続いて、ボタン錠10が、
図8(a)に示す自動施錠待機状態から
図8(c)に示す自動施錠非待機状態に移行すると、カム20、第1ロックカム41、第2ロックカム42、カムプレート43等が連動して正面視時計回りに回動するとともに、カムプレート43は、コイルスプリング(図示省略)の付勢力に逆らって、
図11(b)、(c)に示すように、第2ロックカム42に対して上方にスライドされる。
【0060】
カムプレート43がさらに回動し、判定板センスプレート44の本体部44aを乗り越えて、コイルスプリング(図示省略)の付勢力によって下方にスライドすると、
図11(d)に示すように、カムプレート43のセンスプレート係合部43bが、判定板センスプレート44の本体部44aの側面と係合し、ボタン錠10は施錠状態となる。
【0061】
本例に係るボタン錠10によれば、ボタン16の押下操作等をすることなく、扉を閉めるだけで、解錠状態のボタン錠10を施錠状態に移行させることができる。
【0062】
<暗証番号変更機構70>
次に、
図4と
図12を用いて、ボタン錠10の暗証番号変更機構70について説明する。
図12(a),(b)は、ボタン錠10から暗証番号変更機構70を構成する主要部品等を抜き出して示した斜視図である。
【0063】
図4や
図12に示すように、暗証番号変更機構70は、暗証番号変更機構70のモードを切り替えるためのモードセレクタ72と、このモードセレクタ72によって水平方向にスライド可能なギアスライダ74と、上述のボタン16、ギア46、中間プレート76等によって構成される。
【0064】
<暗証番号変更機構70/モードセレクタ72>
次に、暗証番号変更機構70のモードセレクタ72について説明する。
図12(a)に示すように、モードセレクタ72は、直線状の溝が形成された円筒形状の操作部72aと、外側に向けて突出形成されたギアスライダ係合部72bと、を有する。操作部72aは、
図3に示すように、ケース12に形成された貫通孔に回動可能に配設され、ケース12の外部に溝が露出された状態とされる。マイナスドライバー等の工具を溝に挿入して操作部72aを回動することで、モードセレクタ72を回動することが可能である。
【0065】
ギアスライダ係合部72bは、
図12(a)に示すように、ギアスライダ74のモードセレクタ係合部74aと係合するように配置される。これにより、モードセレクタ72を回動することで、ギアスライダ74を水平方向(
図12(a)において符号Sで示す方向)にスライドさせることが可能である。
【0066】
<暗証番号変更機構70/ギアスライダ74>
次に、暗証番号変更機構70のギアスライダ74について説明する。
図4や
図12(a)に示すように、ギアスライダ74は、格子状の部材からなり、モードセレクタ72と係合可能なモードセレクタ係合部74aと、ギア46と噛み合う複数のラック74bと、を有して構成されている。
【0067】
ラックギア74bは、複数の歯からなり、
図12(a)に示すように、ギア46の外歯46bと噛み合うように配置される。これにより、ギアスライダ74を水平方向にスライドすることで、ギア46を軸心周りに所定角度だけ回動させることが可能である。
【0068】
<暗証番号変更機構70の基本動作>
次に、
図13を用いて、暗証番号変更機構70の基本動作について説明する。
図13(a−1)〜同図(a−3)は、暗証番号変更機構70が暗証番号設定状態にある場合の各部材の状態を示した図であり、
図13(b−1)〜同図(b−3)は、暗証番号変更機構70が暗証番号変換状態にある場合の各部材の状態を示した図である。
【0069】
暗証番号変更機構70が
図13(a−1)に示す暗証番号設定状態にある場合に、マイナスドライバー等の工具を用いてモードセレクタ72の操作部72aを背面視時計回りに回動すると、ギアスライダ74が背面視水平方向右側(
図13(a−1)において符号X1で示す方向)にスライドする。ギアスライダ74がスライドすると、ギアスライダ74と噛み合うギア46が、背面視時計回り(
図13(a−1)において符号Rで示す方向)に所定角度だけ回動し、
図13(a−1)に示す暗証番号設定状態から
図13(b−1)に示す暗証番号変換状態に移行する。
【0070】
ギア46が
図13(b−2)に示す暗証番号変換状態にある場合に、ボタン16を初期位置から押込み位置まで押し込むことで、ボタン16の暗証番号設定用のギア係合部16b1が、ギア46と係合可能な位置(暗証番号設定位置)までスライドする。一方、ギア46が
図13(b−3)に示す暗証番号変換状態にある場合に、ボタン16を押し込むことなく初期位置のままにすることで、ボタン16の暗証番号非設定用のギア係合部16b2が、ギア46と係合な位置(暗証番号非設定位置)に保持される。
【0071】
ボタン16を初期位置(暗証番号非設定位置)または押込み位置(暗証番号設定位置)に位置させた状態で、ギアスライダ74を元の位置まで戻すと、ギア46が、背面視反時計回り(
図13(a−1)において符号Rで示す方向と反対方向)に所定角度だけ回動し、
図13(b−1)〜同図(b−3)に示す暗証番号変換状態から
図13(a−1)〜同図(a−3)に示す暗証番号設定状態に移行し、ボタン16が初期位置(暗証番号非設定位置)または押込み位置(暗証番号設定位置)においてギア46に係合・固定される。そして、初期位置(暗証番号非設定位置)においてギア46に係合・固定されたボタン16は、暗証番号非設定状態のボタンとなり、押込み位置(暗証番号設定位置)においてギア46に係合・固定されたボタン16は、暗証番号設定状態のボタンとなり、暗証番号の変換が完了する。
【0072】
<暗証番号リセット機構80>
次に、
図14を用いて、ボタン錠10の暗証番号リセット機構80について説明する。
図14は、暗証番号リセット機構80の動作を時系列で示した図であり、ボタン錠10を背面側から見た図である。
【0073】
暗証番号リセット機構80は、リング形状のリセットカム82と、このリセットカム82に所定方向のトーションを掛けるためのトーションスプリング84と、上述のボタンロックプレート47、ボタン16等によって構成される。リセットカム82は、ボタンロックプレート47のリセットカム係合部47cと係合可能な凸状のリセットスイッチ82aと、内方に向けて突出形成されたツマミ係合部82bと、を備え、ツマミ22に対して相対回転可能にツマミ22と同軸的に配設される。トーションスプリング84は、リセットカム82が背面視時計回りに所定角度(本例では、約96度)だけ回動された場合に、リセットカム82の回動方向にトーションを掛けるように設定される。
【0074】
図14(a)に示す施錠状態において、ツマミ22を解錠位置に向けて正面視反時計回り(背面視時計回り)に回動し始めると、ツマミ22が約31度回動したときに、
図14(b)に示すように、ツマミ22に設けられた凸部22aが、リセットカム82のツマミ係合部82bに係合し、ツマミ22が約93度まで回動するまでツマミ22とリセットカム82が連動して回動する。
【0075】
続いて、
図14(c)に示すように、ツマミ22が約93度まで回動すると、オートロック機構60が自動施錠非待機状態から自動施錠待機状態に移行するとともに、リセットカム82のリセットスイッチ82aがボタンロックプレート47のリセットカム係合部47cと係合することで、ボタンロックプレート47が上方にスライドされる。ボタンロックプレート47が上方にスライドすると、ボタンロックプレート47のボタン係止片47aが、ボタン16の突出片16cの真後ろに位置しないため、押込み位置にある全てのボタン16が、コイルスプリング17に付勢されて初期位置に復帰する(ボタン錠10がゼロリセットされる)。
【0076】
なお、ツマミ22がさらに約96度まで回動すると、トーションスプリング84によってリセットカム82の回動方向にトーションがかかることで、
図14(d)に示すように、リセットカム82のリセットスイッチ82aがボタンロックプレート47のリセットカム係合部47cを乗り越え、ボタンロックプレート47が下方にスライドされる。ボタンロックプレート47が下方にスライドすると、ボタンロックプレート47のボタン係止片47aが、ボタン16の突出片16cの真後ろに位置し、ボタンロックプレート47によってボタン16を押込み位置で保持することが可能な状態となる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係るボタン錠(例えば、ボタン錠10)は、施錠位置(例えば、
図8(c)に示す位置)および解錠位置(例えば、
図8(a)に示す位置)の一方から他方に移動可能なカム(例えば、
図4,
図8等に示すカム20)と、前記カムを前記施錠位置および前記解錠位置の一方から他方に移動させるツマミ(例えば、
図4,
図8等に示すツマミ22)と、前記ツマミを回動不能にする規制状態(例えば、
図5(d)に示す回動規制状態)、および前記ツマミを回動可能にする許容状態(例えば、
図5(f)に示す回動可能状態)の一方から他方に移行可能な施解錠機構(例えば、
図4に示す施解錠機構40)と、を有して構成されたボタン錠において、前記施解錠機構は、押下操作が可能な複数のボタン(例えば、
図4,
図13等に示すボタン16)と、暗証番号設定位置(例えば、
図13(a−3)に示す位置)および暗証番号非設定位置(例えば、
図13(a−2)に示す位置)の2つの位置を少なくとも含む複数の位置で前記ボタンと係合可能なギア(例えば、
図4,
図13等に示すギア46)と、を有し、前記規制状態において前記暗証番号設定位置で前記ギアと係合する前記ボタンの全てが押下操作された場合に、前記許容状態に移行するように構成されており、前記ボタンと前記ギアの係合位置を、前記暗証番号設定位置および前記暗証番号非設定位置の一方から他方に変更可能な暗証番号変更機構(例えば、
図4に示す暗証番号変更機構70)を備える、ことを特徴とするボタン錠である。
【0078】
本実施形態に係るボタン錠によれば、ボタンとギアの係合位置を変更するだけで暗証番号を変更することができるため、暗証番号の変更に関わる部品の点数を従来よりも削減することができるとともに、簡易かつ短時間で暗証番号を変更することができ、利用者の利便性を高めることができる。
【0079】
また、前記暗証番号変更機構は、前記ボタンを押下操作するか否かによって前記ボタンと前記ギアの係合位置を変更可能に構成されていてもよい。このような構成とすれば、暗証番号変更時の操作と通常の利用時の操作を共通にすることができ、暗証番号の変更方法を分かりやすくすることができる。
【0080】
また、扉の閉鎖を検出可能な扉検出部材(例えば、
図8に示すセンサープレート63)と、前記扉検出部材が扉の閉鎖を検出した場合に、前記カムを前記解錠位置から前記施錠位置に移動させるオートロック機構(例えば、
図8に示すオートロック機構60)を備えていてもよい。このような構成とすれば、ボタンの押下操作等をすることなく、扉を閉めるだけで、解錠状態のボタン錠を施錠状態に移行させることができる。
【0081】
また、前記扉検出部材を、扉の検出が可能な位置および扉の検出が不可能な位置の一方から他方に移動させる移動手段(例えば、移動プレート65)を備えてもよい。このような構成とすれば、ボタン錠の出荷時等は扉検出部材を扉の検出が不可能な位置まで移動させることで誤作動等を未然に防止することができ、利便性を高めることができる。
【0082】
また、前記ツマミによって前記カムを前記施錠位置から前記解錠位置に移動させた場合に、前記オートロック機構を作動可能な状態に移行させるとともに、全ての前記ボタンを押下操作前の初期位置に復帰させるように構成されていてもよい。このような構成とすれば、解錠時にオートロック機構を確実に作動させることができる上に、暗証番号の盗み見等を防止することができ、防犯性を高めることができる。
【0083】
なお、本発明に係るボタン錠は、上記実施形態に係るボタン錠10の構成に限定されるものではなく、例えば、ボタンの数や配置は特に限定されない。また、オートロック機構60を備えていなくてもよい。