(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のポリイミド溶液を、基材表面に塗布後、350℃以下の温度で乾燥することにより多孔質ポリイミド被膜を形成する工程を含む多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
【背景技術】
【0002】
多孔質PIフィルムは、その優れた耐熱性と高い気孔率を利用して、電子材料、光学材料、リチウム二次電池用セパレータ、フィルタ、分離膜、電線被覆等の産業用材料、医療材料の素材等の分野で利用されている。この多孔質PIフィルムを製造する方法として、特許文献1〜3には、PI(その前駆体を含む)に対する良溶媒および貧溶媒を含有するPI溶液を、基材上に塗布、乾燥することによって、多孔質PIフィルムを得る方法(以下、この方法を「乾式多孔化プロセス」と略記することがある)が提案されている。
【0003】
乾式多孔化プロセスは、多孔質PIフィルムを製造する際に、基材上に形成された塗膜を、貧溶媒を含む凝固液に浸漬し、多孔質化を図る湿式多孔化プロセスとは異なり、多孔質化のための凝固浴を用いる必要がない。そのため、乾式多孔化プロセスは、多孔質PIフィルム製造の際、凝固浴から廃液が発生しないので、環境適合性の良好な優れた方法である。しかしながら、乾式多孔プロセスにより得られた多孔質PIフィルムは、平均気孔径が2000nm以上である場合が多く、これを2000nm未満とすることは困難であった。
平均気孔径が1000nm未満の多孔質PIフィルムを得る方法として、特許文献4には、PIフィルム中に熱分解温度が350℃以下の熱分解性有機化合物をポロゲン(気孔形成剤)として用いて気孔を形成させて多孔質PIフィルムを製造する方法が提案されている。このような特許文献4に記載の方法では、ポロゲンをPIフィルム中に配合してPIフィルムを得た後、前記熱分解性有機化合物を350℃以上の温度で長時間熱処理し、前記熱分解性有機化合物を熱分解し消失させ除去することにより、気孔を形成させる。また、特許文献5には、ポリエチレングリコールモノメタクリレート等の分散性化合物をポロゲンとして用いて気孔を形成させて多孔質PIフィルムを製造する方法が提案されている。このような特許文献5に記載の方法では、ポロゲンをPIフィルム中に配合してPIフィルムを得た後、ポロゲンを超臨界二酸化炭素で抽出除去することにより、気孔を形成させる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、多孔質ポリイミド(PI)フィルム形成用PI溶液、多孔質PIフィルムの製造方法および多孔質Pフィルムに関するものである。ここで、PIは、主鎖にイミド結合を有する耐熱性高分子またはその前駆体であり、通常、モノマ成分であるジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを重縮合することにより得られる。 これらのPIには、通常のPI(可溶性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、非熱可塑性ポリイミド等)以外に、PI変性体であるポリアミドイミド、ポリエステルイミド、PI前駆体等が含まれ、PI前駆体が好ましく用いられる。
【0011】
PI前駆体とは、100℃以上の温度で加熱することにより、イミド結合を生成するものであり、本発明においては、ポリアミック酸(以下「PAA」と略記することがある)が好ましく用いられる。 PAAは、溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるものである。 なお、PAAは、部分的にイミド化されていてもよい。
【0012】
PAAには、主鎖中にアルキレン成分を含ませることができる。このようにすることにより、脱水イミド化して得られるPIの主鎖中に、アルキレン成分を含ませることができる。
【0013】
アルキレン成分を含むPAAは、例えば、アルキレン成分を有するテトラカルボン酸二無水物(以下、「TA−1」と略記することがある)および/またはアルキレン成分を有するジアミン(以下、「DA−1」と略記することがある)と、アルキレン成分を有しないテトラカルボン酸二無水物(以下、「TA−2」と略記することがある)およびアルキレン成分を有しないジアミン(以下、「DA−2」と略記することがある)とを共重合させることにより得られる共重合PAAである。 このようなアルキレン成分をPI主鎖中に導入することにより、乾式多孔化プロセスで、平均気孔径が2000nm以下の微細な気孔を有する多孔質PIフィルムとすることができる。
【0014】
PAA溶液には、溶質であるPAAを溶解する良溶媒と、溶質には貧溶媒となる溶媒とを混合した混合溶媒が含有されている。ここで、良溶媒とは、25℃において、PAAに対する溶解度が1質量%以上の溶媒をいい、貧溶媒とは、25℃において、PAAに対する溶解度が1質量%未満の溶媒をいう。貧溶媒は、良溶媒よりも高沸点であることが好ましい。また、その沸点差は、5℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。
【0015】
良溶媒としては、アミド系溶媒、尿素系溶媒が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アミド系溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。また、尿素系溶媒の具体例としては、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、ジメチルエチレン尿素、ジメチルプロピレン尿素等が挙げられる。これらの中で、NMPおよびDMAcが好ましい。
【0016】
貧溶媒としては、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、エーテル系溶媒が好ましい。エーテル系溶媒としては、例えば、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ペンタグライム、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、トリグライムおよびテトラグライムが好ましい。
【0017】
混合溶媒中における貧溶媒の配合量としては、混合溶媒中の貧溶媒比率を30質量%以上、95質量%以下とすることが好ましく、50質量%以上、90質量%以下とすることがより好ましい。このようにすることにより、乾式多孔化プロセスにおける乾燥工程において、効率よく相分離が起こり、高い気孔率と小さい平均気孔径を有するPIフィルムを得ることができる。混合溶媒中の貧溶媒比率が少なすぎると、多孔質PIフィルムの気孔率が低下する。
【0018】
前記共重合PAA溶液としては、例えば、モノマであるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを略等モルで配合し、それらを前記混合溶媒中、重合反応させて得られる溶液を用いる。このとき、テトラカルボン酸二無水物としてのTA−1またはジアミンとしてのDA−1の少なくとも一方が使用されるので、アルキレン成分を主鎖中に含む共重合PAA(ポリアミック酸)が得られ、その結果として、アルキレン成分を主鎖中に含むPIが得られる。
【0019】
具体的には、前記共重合PAA溶液としては、TA−1および/またはDA−1と、TA−2およびDA−2とを、テトラカルボン酸二無水物の合計とジアミンの合計が略等モルになるよう配合し、それを前記混合溶媒中、10〜70℃の温度で重合反応させて得られる溶液を用いることができる。ここで、TA−1の使用量としては、より高い気孔率およびより小さい平均気孔径とするための観点から、0.5〜20モル%とすることが好ましく、1〜10モル%とすることがより好ましい。DA−1を使用する場合、DA−1の使用量としては、同様の観点から、0.5〜20モル%とすることが好ましく、1〜10モル%とすることがより好ましい。前記モル%は、以下の式に従って算出された値をいう。
TA−1の使用量(モル%)=(TA−1のモル数/(TA−1のモル数+TA−2のモル数))×100
DA−1の使用量(モル%)=(DA−1のモル数/(DA−1のモル数+DA−2のモル数))×100
【0020】
ここで、TA−1の具体例としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、HPMDAが好ましい。
【0021】
TA−2の具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸無水物、および3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、PMDAおよびBPDAが好ましい。
【0022】
DA−1の具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、ダイマジアミン(DDA)等の脂肪族ジアミンが挙げられる。 これら脂肪族ジアミン類は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、DDAが好ましい。DDAは、コグニスジャパン社製、商品名「バーサミン551」、「バーサミン552」、クローダ社製、商品名「プリアミン1074」、「プリアミン1075」等の市販品が用いられる。
【0023】
DA−2の具体例としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4′−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノ−2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3′−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルメタン3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、α,ω−ビスアミノポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビス(10−アミノデカメチレン)テトラメチルジシロキサン、ビス(3−アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリメチルフェニルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリ(ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン)コポリマー等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、DADE、BAPPが好ましい。
【0024】
共重合PAA溶液は、良溶媒中で重合反応して溶液を得た後、これに貧溶媒を加える方法、および貧溶媒中で重合反応して懸濁液を得た後、これに良溶媒を加える方法で、得ることもできる。
【0025】
共重合PAA溶液には、必要に応じて、各種界面活性剤および/またはシランカップリング剤のような公知の添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。また、必要に応じて、共重合PAA溶液に、PI以外の他の高分子を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0026】
共重合PAA溶液を、基材の表面に塗布し、乾燥することにより、多孔質PIフィルムを形成させることができる。その後、基材から多孔質PIフィルムを剥離して多孔質PIフィルム単体とすることができる。また、基材上に形成された多孔質PIフィルムは、基材から剥離することなく、基材と積層一体化して使用することもできる。
【0027】
前記乾燥工程には、塗膜に含まれる溶媒を揮発させることにより相分離を誘起させて多孔質PAA被膜を形成させる工程1と前記多孔質PAA被膜を熱イミド化して多孔質PI被膜とする工程2とが含まれる。工程1の温度としては、100〜200℃程度が好ましく、工程2の温度としては、350℃未満の温度、例えば300℃で行うことが好ましい。工程2での温度を350℃以上とすると、PIに導入されたアルキレン成分の一部が熱分解する虞がある。
【0028】
前記基材としては、例えば、金属箔、金属線、ガラス板、プラスチックフィルム、各種織物、各種不織布等が挙げられ、前記金属としては、金、銀、銅、白金、アルミニウム等を用いることができる。これらは、多孔質であっても非多孔質であってもよい。この基材への塗液の塗布方法としては、ディップコータ、バーコータ、スピンコータ、ダイコータ、スプレーコータ等を用い、連続式またはバッチ式で塗布することができる。
【0029】
本発明の多孔質PIフィルムの気孔率は、20体積%以上、95体積%以下であり、50体積%以上、90体積%以下が好ましく、55体積%以上、85体積%以下であることがより好ましい。気孔率をこのような範囲とすることにより、多孔質フィルムとしての良好な機械的特性と、優れた透過性、誘電特性等の多孔質フィルムとしての優れた特性とが同時に確保される。
【0030】
気孔率は以下の式を用いて算出された値を用いることができる。
気孔率(体積%)=100−100×(W/D)/(S×T)
式中のSは多孔質PIフィルムの面積、Tはその厚み、Wはその質量、Dは対応する非多孔質PIフィルムの密度を示す。
【0031】
本発明の多孔質PIフィルムの平均気孔径は、10nm以上、2000nm以下であり、20nm以上、1000nm以下がより好ましく、20nm以上、800nm以下がさらに好ましい。平均気孔径をこのような範囲とすることにより、多孔質フィルムとしての良好な機械的特性と、優れた透過性、誘電特性等の多孔質フィルムとしての優れた特性とが同時に確保される。
【0032】
平均気孔径は、多孔質PIフィルム断面のSEM(走査型電子顕微鏡)像を倍率1000〜20000倍で取得し、画像処理ソフトで解析をすることにより確認することができる。
【0033】
本発明の多孔質PIフィルムの気孔は、連続気孔であっても、独立気孔であってもよい。
【0034】
本発明の多孔質PIフィルムの表面は、開口していても、していなくてもよい。
開口している場合の開口率は、10%以上、90%以下であることが好ましく、20%以上、80%以下であることがより好ましい。また、開口している気孔の平均開口径は、10nm以上、2000nm以下であることが好ましい。
このようにすることにより、開口した多孔質フィルムとしての良好な機械的特性と、良好な表面平滑性とを同時に確保することができる。
【0035】
開口率および平均開口径は、多孔質PIフィルム表面のSEM像を倍率1000〜20000倍で取得し、画像処理ソフトで解析をすることにより確認することができる。
【0036】
前記気孔率および平均気孔径は、共重合PAA溶液中の溶媒(良溶媒および貧溶媒)の種類および/または配合量を選ぶことにより、調整することができる。
【0037】
連続気孔を有する本発明の多孔質PIフィルムは、その表面(片面または両面)に、活性層を形成させることができる。このようにすることにより、本発明の多孔質PIフィルムを逆浸透膜またはガス分離膜とすることができる。ここで活性層とは、分離機能を有する有機高分子および/または無機化合物からなる非多孔質の薄膜からなる層であり、このような層を設けることにより、本発明の多孔質PIフィルムを、逆浸透膜またはガス分離膜として用いることができる。活性層の厚みとしては、通常、0.01〜500nm程度であり、このような極薄膜とすることにより、良好な分離性能と透過性能を同時に確保することができる。本発明の多孔質PIフィルムの平均気孔径が10〜2000nmと、極めて小さいので、前記極薄膜を均一に形成させることができる。
【0038】
本発明の多孔質PIフィルムを逆浸透膜として使用する際は、例えば、前記した多孔質PI被膜の表面(片面または両面)にアラミド等からなる活性層を形成させればよい。これらの活性層を形成させるには、例えば、特公平7−90152号公報および特許第3181134号公報に開示された公知の方法を用いることができる。
【0039】
また、本発明の多孔質PIフィルムを、ガス分離膜、例えば水素ガス分離膜として使用する際は、例えば、パラジウム、パラジウム/銀合金、パラジウム/銅合金等の極薄膜からなる活性層を、前記した多孔質PI被膜の表面(片面または両面)に形成させればよい。これらの活性層を形成させるには、例えば、Journal of Membrane Science Volume 94, Issue 1, 19 September 1994, Pages 299-311および米国特許4857080号に開示された公知の方法を用いることができる。
【0040】
本発明の多孔質PIフィルムの厚みは通常1〜1000μm程度であり、10〜500μm程度が好ましい。
【0041】
以上、述べたように、本発明の製法においては、ポロゲンを使用しないので、実質的にポロゲンが残留しない本発明の多孔質PIフィルムを得ることができる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明は実施例により限定されるものではない。
【0043】
〔実施例1〕
ガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、DADE(DA−2):0.92モル、DDA(DA−1):0.08モル(クローダ社製、商品名「プリアミン1075」 分子量550)、DMAcおよびテトラグライムからなる混合溶媒(DMAc/テトラグライムの混合比率は質量比で25/75とした)を投入して攪拌し、ジアミン成分を溶解した。この溶液をジャケットで30℃以下に冷却しながら、PMDA(TA−2):1.02モルを徐々に加えた後、40℃で5時間重合反応させ、アルキレン成分を導入した共重合PAA溶液を得た。この溶液の固形分濃度は20質量%であった。前記共重合PAA溶液を、アルミニウム箔(厚み:150μm)上に、ドクターブレードを用いて塗布し、130℃で20分乾燥し共重合PAAからなる塗膜を得た。続いて、窒素気流中、120分かけて300℃まで昇温し、300℃で60分追加乾燥して共重合PAAをイミド化し、アルミ箔上に積層された厚み約30μmの多孔質PIフィルム(P−1)を得た。P−1の気孔率、平均気孔径を表1に示す。また、P−1表面の電気抵抗値を測定したところ、電気抵抗値は、処理前と殆ど変化しておらず、良好な耐熱性が確認された。
【0044】
〔実施例2〕
DMAc/テトラグライムの混合比率を質量比で15/85とした混合溶媒を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、共重合PAA溶液を作成し、実施例1と同様にしてアルミ箔上に積層された厚み約25μmの多孔質PIフィルム(P−2)を得た。P−2の気孔率、平均気孔径を表1に示す。
【0045】
〔実施例3〕
TA−2として、BPDA1.03モルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、共重合PAA溶液を作成し、実施例1と同様にしてアルミ箔上に積層された厚み約30μmの多孔質PIフィルム(P−3)を得た。多孔質PIフィルム(P−3)の気孔率、平均気孔径を表1に示す。
【0046】
〔実施例4〕
ジアミンとしてDADE(DA−2)1モル、テトラカルボン酸二無水物として、PMDA(TA−2)0.85モル、HPMDA0.15モルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、共重合PAA溶液を作成し、実施例1と同様にしてアルミ箔上に積層された厚み約30μmの多孔質PIフィルム(P−4)を得た。多孔質PIフィルム(P−4)の気孔率、平均気孔径を表1に示す。
【0047】
〔実施例5〕
ジアミンとして、DADE(DA−2):0.9モル、DDA(DA−1):0.1モル(クローダ社製、商品名「プリアミン1075」 分子量550)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、共重合PAA溶液を作成し、実施例1と同様にしてアルミ箔上に積層された厚み約30μmの多孔質PIフィルム(P−5)を得た。多孔質PIフィルム(P−5)の気孔率、平均気孔径を表1に示す。多孔質PIフィルム(P−5)の気孔率、平均気孔径を表1に示す。
【0048】
〔比較例1〕
DADE0.92モルおよびDDA0.08モルに代えて、DADE(DA−2):1モルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、PAA溶液を作成し、実施例1と同様にしてアルミ箔上に積層された厚み30μmの多孔質PIフィルム(R−1)を得た。R−1の気孔率、平均気孔径を表1に示す。
【0049】
〔比較例2〕
DMAcおよびテトラグライムからなる混合溶媒に代えてDMAcのみからなる単独溶媒を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、PAA溶液を作成し、実施例1と同様にしてアルミ箔上に積層された厚み30μmの多孔質PIフィルム(R−2)を得ようとしたが、気孔を有するPIフィルムを得ることはできなかった。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例で示したように、本発明のPI溶液から得られる多孔質PIフィルムP−1〜P−5は、気孔率が45体積%以上、平均気孔径が2000nm以下の微細な気孔が均一に形成されていることが判る。これに対し、比較例の多孔質PIフィルムR−1は、平均気孔径が2000nm以下の微細な気孔は形成されていないことが判る。