特許第6923916号(P6923916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6923916
(24)【登録日】2021年8月3日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】データ保護装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/10 20060101AFI20210812BHJP
   E02D 29/12 20060101ALI20210812BHJP
   E02D 29/14 20060101ALI20210812BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   H02G9/10
   E02D29/12 Z
   E02D29/14 C
   H02G1/06
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-170027(P2017-170027)
(22)【出願日】2017年9月5日
(65)【公開番号】特開2019-47665(P2019-47665A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年8月17日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年3月31日に千葉商科大学経済研究所 中小企業研究・支援機構が発行する雑誌 中小企業支援研究,第4巻,第44−46ページで発表
(73)【特許権者】
【識別番号】501185235
【氏名又は名称】三和コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165135
【弁理士】
【氏名又は名称】百武 幸子
(72)【発明者】
【氏名】谷中 治
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0287881(US,A1)
【文献】 特開2013−150460(JP,A)
【文献】 特開2014−92830(JP,A)
【文献】 米国特許第06617973(US,B1)
【文献】 土橋 正人,茨城県商工会連合会経営基盤強化相談員としての活動(三和コンクリート工業株式会社の事業事例),中小企業支援研究,千葉商科大学経済研究所 中小企業研究・支援機構,2017年03月31日,第4巻,第44−46ページ,ISSN:2188−5052
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/10
E02D 29/12
E02D 29/14
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されるコンクリート製のデータ保護ボックスの内部空間に、少なくとも無停電電源装置及びネットワークに接続される記憶装置が収納されているデータ保護装置であって、
前記データ保護ボックスは、
底板と、該底板の各辺から立設される側壁からなる本体と、該本体の開口部を覆う上蓋と、から構成され、
前記本体の開口部の外周又は前記上蓋の外周には、前記本体の内部空間の気密性を確保するためのシール材が配設され、
前記上蓋と前記本体の開口部は、固定手段により固定され
前記データ保護ボックスの内部空間に、更に、樹脂製の気密性容器が備えられ、該容器の内部空間に前記無停電電源装置及びネットワークに接続される記憶装置が収納されていることを特徴とするデータ保護装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ保護装置であって、更に、前記底板の下部に比重調整用のブロックが備えられていることを特徴とするデータ保護装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のデータ保護装置であって、更に、前記上蓋の下部に不燃材及び又は断熱材が備えられていることを特徴とするデータ保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製のデータ保護ボックス及びこれを用いたデータ保護装置に関する。より詳しくは、地中に埋設し、災害時においてもデータを保護することができるデータ保護ボックス及びデータ保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大震災に伴う建物の倒壊、津波による被害、火災などの災害によって、会社内の重要なデータ(例えば、売掛・買掛データ)が格納された業務システムやネットワークシステムが破損し、データを損失してしまうという被害が増えている。そのため、業務システムやネットワークのバックアップ対策が必要となり、例えばデータセンターにデータを保管する方法がとられている。データセンターでは、空調管理や耐火設備、耐震設備が整えられており、データの管理やバックアップを安心して任せることができるため、多くの企業に利用されている。
【0003】
また、大地震やそれに伴う津波、火災などにより多くの建物が倒壊する中、建物の基礎コンクリートは倒壊せずに残っていたことが知られている。コンクリート製品は、高い耐震性、耐火性を有するため、様々な分野で使用されている。例えば、電気ケーブルや通信ケーブル等を地中配線する際に使用されるハンドホール、マンホール等の地中埋設箱は、通常、鉄筋コンクリート製である。さらに、その地中埋設箱を改良した技術が開発されている。例えば、特許文献1には、必要な強度を確保しつつ、軽量化を図ることができ、しかもノックアウト部の面積を拡張した地中埋設箱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−117248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
データセンターには耐火設備、耐震設備が整えられているが、予期せぬ大災害がデータセンターのある地域に起こった場合に、サーバーの破損、通信状況の悪化等でデータセンターの機能が停止してしまう可能性もある。また、データセンターの規模が大きくなれば、24時間365日運用するデータセンターの空調管理にも費用がかかり、環境にもよくない影響がある。
【0006】
そこで、適切な空調、耐震性を満たしながらも環境に配慮し、かつ費用を抑えることができるようなデータ管理の装置が必要とされている。その装置は、高い耐震性、耐火性を有するコンクリート製であることが望ましいが、従来のコンクリート製品には、データを保護するためのものはない。例えば特許文献1に示す製品は、電気ケーブルや通信ケーブル等を地中配線する際に使用されるものであり、バックアップ装置を入れてデータを保護するために使用することはできない。
【0007】
また、近年、年間を通して温度変化の小さい地中の熱的特性を活用したエネルギー(地中熱エネルギー)を利用したヒートポンプが開発され、エアコン等に使用されている。地中熱エネルギーを使用することで節電でき、二酸化炭素の排出量を抑制できるという利点がある。この利点を生かし、地中熱エネルギーを利用し、安定した温度の中で空調費用を抑えられるデータ管理の装置が更に望まれる。
【0008】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、地中熱エネルギーを利用し、災害時においてもデータを保護することができるコンクリート製のデータ保護ボックス及びデータ保護装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、地中に埋設されるコンクリート製のデータ保護ボックスの内部空間に、少なくとも無停電電源装置及びネットワークに接続される記憶装置が収納されているデータ保護装置であって、前記データ保護ボックスは、底板と、該底板の各辺から立設される側壁からなる本体と、該本体の開口部を覆う上蓋と、から構成され、
前記本体の開口部の外周又は前記上蓋の外周には、前記本体の内部空間の気密性を確保するためのシール材が配設され、前記上蓋と前記本体の開口部は、固定手段により固定され、前記データ保護ボックスの内部空間に、更に、樹脂製の気密性容器が備えられ、該容器の内部空間に前記無停電電源装置及びネットワークに接続される記憶装置が収納されていることを特徴とするデータ保護装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のデータ保護装置であって、更に、前記底板の下部に比重調整用のブロックが備えられていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のデータ保護装置であって、更に、前記上蓋の下部に不燃材及び又は断熱材が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンクリート製のデータ保護ボックス及びデータ保護装置によると、地中熱エネルギーを利用するため空調費用がかからず、また、高い耐震性を有するコンクリート製であるため、災害時においてもデータを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例に係るデータ保護ボックスの正面図である。
図2図1に示すデータ保護ボックスのA−A矢視図である。
図3図1に示すデータ保護ボックスの領域Xの拡大断面図である。
図4】冬季におけるデータ保護ボックスの内部温度と外気温度を表すグラフである。
図5】夏季におけるデータ保護ボックスの内部温度と外気温度を表すグラフである。
図6図1に示すデータ保護ボックスを用いたデータ保護装置の説明図である。
図7図6に示すデータ保護装置の使用態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下実施例と記す)を、図面に基づいて説明する。なお、
以下の図において、共通する部分には同一の符号を付しており、同一符号の部分に対して
重複した説明を省略する。本発明のデータ保護ボックスの構成について、図1〜5を参照して説明し、このデータ保護ボックスを用いたデータ保護装置について図6及び図7を参照して説明する。
【0013】
[データ保護ボックス]
図1は、本実施例のデータ保護ボックス1の正面図、図2は、データ保護ボックスのA−A矢視図(本体10の開口部の平面図)、図3は、領域Xの拡大断面図である。データ保護ボックス1はコンクリート製であり、地中に埋設されて使用され、少なくとも無停電電源装置及びネットワークに接続される記憶装置が収納されるボックスである。データ保護ボックス1は、底板13と、底板13の各辺から立設される側壁12からなる本体10と、本体10の開口部を覆う上蓋11から構成される。
【0014】
データ保護ボックス1は、コンクリート材(砂利、砂、セメント)と鉄筋から形成される。製造工程としては、通常のコンクリート製品と同様に、ボックスの型枠に鉄筋を入れ、コンクリート材を流し込み、撹拌してボイラー蒸気養成(固化)した後、型枠より脱型する。
【0015】
データ保護ボックス1は上記の工程に加え、振動評価(強度計算)と寸法検査をした後に完成する。具体的には、データ保護ボックス1の上に震度計を載置し、データ保護ボックス1を振動設備に載せて振動(X−Y軸方向)を5mm〜150mmの振動幅で20〜300回/分のサイクルで加え、3次元レーザー距離装置により、傾き具合を測定し、振動に対する動的な評価を行う。このような振動評価に基づいて設計することにより、耐震性を有したデータ保護ボックス1を製造することができる。また、液状化実験により、液状化現象を再現し、データ保護ボックス1の重量と、浮遊及び転倒の関係を表すデータを取得し、そのデータに基づいてデータ保護ボックス1を製造した。
【0016】
データ保護ボックス1の寸法としては、振動評価に基づいて設計されていれば、特に限定されるものではないが、例えば、底板13の寸法を940(mm)×960(mm)、上蓋11を含む高さを2278(mm)とすることができる。また、上蓋11の厚み(高さ)を150mmとすることができる。また、上蓋11と本体10の重量は、例えば、それぞれ324kg、2022kgとすることができる。
【0017】
図2に示すように、本体10の開口部の外周には、本体10の内部空間の気密性を確保するためのシール材19が配設される。本実施例では本体10の開口部(上蓋との合わせ面)に、弾力性と耐熱性のあるゴム製のシール材19が配設されている。上蓋11にシール材19が配設されていてもよい。
【0018】
シール材19としては、内部空間の気密性を確保できれば、その材質、形状等は特に限定されないが、弾力性と耐熱性のあるゴム製であることにより、上蓋11と本体10の開口部が適度に圧縮されて密着し、雨水等の侵入を効果的に防ぐことができる。本実施例では、耐熱性に優れたシリコンゴムからなり、開口部の形状に合ったOリング状のシール材19を使用する。
【0019】
また、上蓋11と本体10の開口部は、固定手段により固定される。固定手段は、上蓋11と本体10を強固に固定できれば、いかなるものでもよいが、例えば六角ボルト16が使用される。図3の拡大断面図に示すように、六角ボルト16は、上蓋11の上面の孔17からねじ込まれ、本体10の開口部の孔18にねじ込んで固定される。図1、2に示すように、上蓋11の孔17と、本体10の孔18はそれぞれ4箇所、配設されている。本実施例では、本体10の開口部のシール材19にも六角ボルト16を通す孔が配設されている。このように、上蓋11と本体10は、六角ボルト16を使用して強固に固定される。また、シール材19を介して固定することにより、内部空間の気密性を確保することができる。
【0020】
前述のように、データ保護ボックス1は、少なくとも無停電電源装置及びネットワークに接続される記憶装置が収納されるボックスであるため、側壁12には、電線及びケーブル線を通す挿入孔15が配設されている。挿入孔15には、データ保護ボックス1の内部空間の気密性を確保するため、シール材が配設されている。挿入孔15は、図1に示すように1箇所、配設してもよいし、電線用とケーブル線用に2箇所、配設してもよい。
【0021】
また、図1に示すようにデータ保護ボックス1は、底板13の下部に、さらに比重調整用のブロック14を備える構成としてもよい。液状化しやすい土地においては、ある震度以上の地震により液状化現象が発生するため、地中内のデータ保護ボックス1が浮遊し、転倒することが考えられる。浮遊や転倒を防止するため、データ保護ボックス1の重量と、浮遊及び転倒の関係を表すデータを基にして、データ保護ボックス1の下部に、比重調整用のブロック14を加える。比重調整用のブロック14の重量は、例えば1000kgである。それにより、液状化現象が発生した場合においてもデータ保護ボックス1が浮遊し、転倒することを防ぐことができる。なお、液状化現象が発生しないような土地においては、比重調整用のブロック14を備えなくてもよい。
【0022】
以上のように構成したデータ保護ボックス1は、地中に埋設されて使用される。地中に埋設することにより、年間を通して温度変化の小さい地中の熱的特性を活用したエネルギー(地中熱エネルギー)を利用することができる。特に、地表からの深さ10mくらいの所の地温は、15℃前後になることが知られているが、地表から深さ2〜3mにおいても5〜30℃程度の温度になることが本発明の温度測定により判明した。以下、温度測定について説明する。
【0023】
温度測定には、例えば、温度センサー部が付いたデジタル温度計を使用する。地下2mに埋設したデータ保護ボックス1内に温度センサーを設置し、このデータ保護ボックス1上の地上1mの所にも温度センサーを設置して、それぞれの温度を1時間毎に記録する。この測定を、1年を通して行ったところデータ保護ボックス1内の最高気温は31.9℃、最低気温は5.6℃だった。また、地上1mの外気温の最高気温は39.6℃、最低気温はー9.1℃だった。例えば、夏季と冬季のデータ保護ボックス1内の温度と外気温度
は、それぞれ図4図5に示す通りであった。
【0024】
図4は、冬季におけるデータ保護ボックスの内部温度と外気温度を表すグラフである。このグラフでは、2013年2月24日の午前0時から25日午前0時までの温度を1時間毎に示している。グラフから外気温度は−6℃付近から+6℃付近まで大きく変動があるにもかかわらず、地下のデータ保護ボックスの内部温度は8℃前後であり、ほとんど変動がないことがわかる。図5は、夏季におけるデータ保護ボックスの内部温度と外気温度を表すグラフである。2013年8月10日の午前0時から11日午前0時までの温度を1時間毎に示している。グラフから外気温度は25℃付近から39℃付近まで大きく変動があるにもかかわらず、地下のデータ保護ボックスの内部温度は30℃前後とほとんど変動がないことがわかる。この測定から、データ保護ボックス1を地表から深さ2〜3m程度に埋設することにより、ボックス内の温度を5〜30℃程度にできることが判明した。これは、後述するボックス内に設置する記憶装置の動作環境に適した温度(0〜40℃)の範囲内である。
【0025】
[データ保護装置]
次に上述のデータ保護ボックス1を使用したデータ保護装置について図6図7を参照して説明する。図6は、図1に示すデータ保護ボックス1を用いたデータ保護装置の説明図である。図7は、図6に示すデータ保護装置の使用態様を示す説明図であり、特に災害時においてもデータ保護装置が使用されている様子を示している。データ保護装置20には、少なくとも無停電電源装置(Uninterruptible Power Systems、以下UPSと記す)25と、ネットワークに接続される記憶装置(Network Attached Storage、以下NASと記す)26が収納されている。
【0026】
UPS25は、震災等による予期せぬ停電や電源異常が発生した際に、電源を供給する機器に対して、一定時間電力を供給し続けることで機器やデータを保護する装置である。本実施例では、NAS26に対して停電等が発生した際に、一定時間電力を供給し続ける。それにより、停電後、UPS25から電力の供給が続いている間に、NAS26の使用を終了させるといった対策を講じることができる。
【0027】
NAS26は、ネットワーク(LAN)上に接続することができるハードディスク(記憶装置)である。そのため、複数のパソコンから同時に接続することができ、ネットワークを経由してパソコンの他、スマートフォンやタブレットのデータも簡単に共有することができる。また、ルーターや無線LANアクセスポイントを使用すれば、無線で接続することができるため、設置場所を問わず、地中に設置することも可能となる。本実施例では、図6に示すように無線LANアクセスポイント28をNAS26の上に設置して使用する。
【0028】
本実施例においても、屋外における一般的な無線LAN変換ケーブルの接続と同様に、無線LANアクセスポイント28から変換ケーブルと、同軸ケーブルを介して、無線LANアンテナ32に接続させる。無線LANアンテナ32は、データ保護装置20の付近に設置できれば設置場所は特に限定されないが、本実施例では、データ保護装置20の上蓋11の上に設置する。なお、無線LANアンテナ32は、指向性アンテナを使用することが好ましく、それにより、通信の受信強度を高めるとともに,他の不要な電波による妨害等を軽減することができる。
【0029】
以上のようにして、NAS26を、無線LANアクセスポイント28と、変換ケーブル、同軸ケーブルを介して無線LANアンテナ32に接続させることで、遠隔的に絶えずデータを送信し、データのバックアップを容易に行うことができる。また、NAS26は、UPS25と接続されており災害で停電等が発生した際においても、一定時間電力の供給を受けられるため、データ喪失を防ぐことができる。なお、NAS26やUPS25、無線LANアクセスポイント28の電線31やケーブル線30は、の側壁12に配設されている挿入孔15を通して外部電源や無線LANアンテナ32に接続される。
【0030】
また、図6に示すように、NAS26やUPS25を設置する空間の気密性を更に高めるため、データ保護装置20内に樹脂製の気密性容器29を備え、その中にNAS26やUPS25を設置することができる。この気密性容器29は必須の構成ではなく、データ保護装置20の気密性が充分に保たれていれば備えなくてもよい。更に、NAS26やUPS25は、大震災で激しく揺れる際にも倒れにくいように、防振ゴム及び耐震マット27上に設置することが好ましい。
【0031】
前述のようにデータ保護装置20内の温度は地中でほぼ一定(5〜30℃程度)に保つことができるが、雨や雪の影響でデータ保護装置20内の湿度が変化し、結露やカビが発生し得る。そのため、データ保護装置20の湿度を適度に保つように、除湿剤をNAS26やUPS25の上部に取り付けることが好ましい。なお、NAS26の動作環境に適した温度は一般に、0〜40℃、湿度は10〜85%であるため、この範囲内に温度と湿度を保つ必要がある。本実施例では、気密性容器29の蓋の上部と下部に除湿剤23、24をそれぞれ取り付ける。気密性容器29を備えない場合には、蓋11の下部や内部空間の側壁12に取り付けることができる。除湿剤23、24を設置することにより、ボックス内の結露防止、防錆、防カビ等の効果がある。
【0032】
また、地震等による火災によってデータ保護装置20内のNAS26やUPS25が
燃焼して故障しないように、上蓋11の下部に不燃材21又は、断熱材22、若しくはその両方を備えることができる。本実施例では、不燃材21と断熱材22の両方を備える構成とし、図6に示すようにアングル(取り付け具)を使用して上蓋11の下部に固定している。不燃材21は、例えば、加熱開始後20分間燃焼しない「ケイカル板」を使用することができる。断熱材22は、例えば、加熱開始後5分間燃焼しない「難燃剤入り断熱材」を使用することができる。
【0033】
以上、説明したように、NAS26やUPS25を設置し、その他の関連部品を備えることで、図6に示すデータ保護装置20が完成する。完成したデータ保護装置20は、図7に示すように、地中2〜3mに埋設される。なお、データ保護装置20を地中に埋設するための穴は、例えば穴堀建柱車(ポールセッター)を使用して掘ることが可能である。
また、前述のように液状化しやすい土地においては、液状化による地中内のデータ保護装置20の転倒を防ぐため、比重調整用のブロック14を備えたデータ保護装置20を使用する。
【0034】
データ保護装置20内のNAS26やUPS25等の電源は、電線31介して外部電源、例えば事務所40の電源に接続される。データ保護装置20の使用態様としては、例えば図7に示すように、事務所40内のパソコンやタブレットから重要なデータ(売掛、買掛データ等)を絶えず、データ保護装置20内のNAS26に遠隔的に送ることができ、バックアップをとることができる。また、大震災等による停電が発生した場合においても、UPS25からNAS26に一定時間、電力が供給されるため、データを保護するための対策をとることができる。
【0035】
以上、説明してきた様に、本発明のデータ保護ボックス1とデータ保護装置20は、地中熱エネルギーを利用するため、空調費用がかからず、データセンターと比較すると、コストを大幅に削減することができる。また、高い耐震性、防火性を有し、液状化浮遊防止対策が講じられたコンクリート製のデータ保護装置であるため、災害時においても物理的な破損を防ぎ、データを保護することができる。更に停電時においてもデータ保護装置内のNASはUPSにより一定時間電源を維持でき、データを保護することができる。
【0036】
なお、上述した実施例のデータ保護ボックスとデータ保護装置は一例であり、その構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…データ保護ボックス、10…本体、11…上蓋、12…側壁、13…底板、14…比重調整用のブロック、15…挿入孔、16…六角ボルト、17…上蓋の孔、18…本体の孔、19…シール材、20…データ保護装置、21…不燃材、22…断熱材、23,24…除湿剤、25…UPS、26…NAS、27…防振ゴム及び耐震マット、28…無線LANアクセスポイント、29…気密性容器、30…ケーブル線、31…電線、32…無線LANアンテナ、40…事務所。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7