(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高さ方向に向かって設けられた第一の開口部と、前記第一の開口部と異なる方向に向かって設けられた第二の開口部を有し、前記第一の開口部と前記第二の開口部の開口部分が部分的に重なり、前記第一の開口部の壁に第一の切欠き部を有する基体部材と、
前記基体部材の前記第一の開口部にはめ合わされ、前記基体部材よりも高さ方向に突出した状態で前記基体部材に固定され、前記基体部材の前記第一の切欠き部側に第二の切欠き部を有するセラミックにより形成されたコレット端子部材と、
前記第一の切欠き部と前記第二の切欠き部が、前記基体部材に前記コレット端子部材をはめ合わせて隣接する位置に配置されて固定用開口部をなし、前記固定用開口部に挿し込まれたピンと、を有し、
前記第一の切欠き部が優弧であり、前記第二の切欠き部が劣弧であり、前記第一の切欠き部の弧端と、前記第二の切欠き部の弧端とを合わせた前記固定用開口部が円筒状の開口部となり、前記ピンが円柱状のピンである半導体チップのピックアップ装置に取り付けて用いられるコレット。
高さ方向に設けられた第一の開口部を有する基体用部材の前記第一の開口部に、前記基体用部材よりも高さ方向に突出した状態で前記基体用部材に固定されるコレット端子用部材をはめ合わせて配置する位置決め工程と、
前記位置決め工程で配置された高さで、前記第一の開口部と異なる方向に向かって前記基体用部材と前記コレット端子用部材とが接する部分を含む位置に固定用開口部を加工する開口工程と、
前記開口工程で加工された固定用開口部にピンを挿し込み前記固定用開口部が加工されたコレット端子部材と、前記固定用開口部が加工された基体部材とを固定する固定工程と、を有する半導体チップのピックアップ装置に取り付けて用いられるコレットの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3でも一部開示されているようにコレットの先端部材として、セラミックが用いられている。セラミックは、半導体チップと接触しても、半導体チップに疵をつけにくく、摩耗等も生じにくい材質でコレットの先端部材に適している。これらのセラミックを先端部材として用いる場合、セラミック部材を、金属部材等に取り付けて、ピックアップ装置のワーク(アーム)などに結合されている。セラミック部材は、複雑な形状に加工しにくく、ワーク等へ取り付けるための加工が行いにくいため取り付け用の構造として金属部材と併用されている。
【0007】
このセラミック部材と金属部材等との接合は、セラミックと金属とが異種材料であることから接合しにくいという問題があった。このため、セラミック部材と金属部材とに対応する簡素な結合構造を設けて、その間をロウ付けするような実質ロウ付けによる接合が行われている。しかし、これらの異種材料を接合でき、半導体製造工程で用いることができるロウ付け手段には制限があり、また、ロウ付けの製造条件を最適化することは難しい場合がある。また、ロウ付けの接着力が弱いと使用中にセラミック部材が脱落するおそれがあったり、ロウ付けに用いる材質が劣化や欠損等して、半導体製造ラインを汚染する恐れもあった。
【0008】
係る状況下、本願は、セラミック部材と金属部材とを安定して結合させたコレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0010】
<1> 高さ方向に向かって設けられた第一の開口部と、前記第一の開口部と異なる方向に向かって設けられた第二の開口部を有し、前記第一の開口部と前記第二の開口部の開口部分が部分的に重なり、前記第一の開口部の壁に第一の切欠き部を有する基体部材と、
前記基体部材の前記第一の開口部にはめ合わされ、前記基体部材よりも高さ方向に突出した状態で前記基体部材に固定され、前記基体部材の前記第一の切欠き部側に第二の切欠き部を有するセラミックにより形成されたコレット端子部材と、
前記第一の切欠き部と前記第二の切欠き部が、前記基体部材に前記コレット端子部材をはめ合わせて隣接する位置に配置されて固定用開口部をなし、前記固定用開口部に挿し込まれたピンと、を有する半導体チップのピックアップ装置に取り付けて用いられるコレット。
【0011】
<2> 前記第一の切欠き部が優弧であり、前記第二の切欠き部が劣弧であり、前記第一の切欠き部の弧端と、前記第二の切欠き部の弧端とを合わせた前記固定用開口部が円筒状の開口部となり、前記ピンが円柱状のピンである前記のコレット。
【0012】
<3> 前記基体部材の材質が、ステンレスであり、前記コレット端子部材の材質が、ジルコニアであり、前記前記ピンが、スプリングピンである前記のコレット。
【0013】
<4> 前記固定用開口部が、前記基体部材の前記第一の開口部の向きと直交する方向であり、前記基体部材の水平面内の長さが狭い方向に向かって貫通したものである前記のコレット。
【0014】
<5> 高さ方向に設けられた第一の開口部を有する基体用部材の前記第一の開口部に、前記基体用部材よりも高さ方向に突出した状態で前記基体用部材に固定されるコレット端子用部材をはめ合わせて配置する位置決め工程と、
前記位置決め工程で配置された高さで、前記第一の開口部と異なる方向に向かって前記基体用部材と前記コレット端子用部材とが接する部分を含む位置に固定用開口部を加工する開口工程と、
前記開口工程で加工された固定用開口部にピンを挿し込み前記
固定用開口部が加工されたコレット端子部材と、前記
固定用開口部が加工された基体部材とを固定する固定工程と、を有する半導体チップのピックアップ装置に取り付けて用いられるコレットの製造方法。
【0015】
<6> 前記位置決め工程に用いられる前記基体用部材が、前記固定用開口部よりも小さい開口部を有する前記のコレットの製造方法。
【0016】
<7> 前記固定工程により固定された前記コレット端子部材のチップ吸着部を加工する吸着部加工工程を有する前記のコレットの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、セラミック部材と金属部材とが安定して結合したコレットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0020】
[本発明のコレット]
本発明のコレットは、高さ方向に向かって設けられた第一の開口部と、前記第一の開口部と異なる方向に向かって設けられた第二の開口部を有し、前記第一の開口部と前記第二の開口部の開口部分が部分的に重なり、前記第一の開口部の壁に第一の切欠き部を有する基体部材と、前記基体部材の前記第一の開口部にはめ合わされ、前記基体部材よりも高さ方向に突出した状態で前記基体部材に固定され、前記基体部材の前記第一の切欠き部側に第二の切欠き部を有するセラミックにより形成されたコレット端子部材と、前記第一の切欠き部と前記第二の切欠き部が、前記基体部材に前記コレット端子部材をはめ合わせて隣接する位置に配置されて固定用開口部をなし、前記固定用開口部に挿し込まれたピンと、を有する。このコレットは、半導体チップのピックアップ装置に取り付けて用いられる。
本発明のコレットは、セラミック部材と金属部材とが安定して結合しており、ピックアップ装置に好適に用いることができる。また、ロウ付けを行わずに安定した結合ができる。
【0021】
[本発明のコレットの製造方法]
本発明のコレットの製造方法は、高さ方向に設けられた第一の開口部を有する基体用部材の前記第一の開口部に、前記基体用部材よりも高さ方向に突出した状態で前記基体用部材に固定されるコレット端子用部材をはめ合わせて配置する位置決め工程と、前記位置決め工程で配置された高さで、前記第一の開口部と異なる方向に向かって前記基体用部材と前記コレット端子用部材とが接する部分を含む位置に固定用開口部を加工する開口工程と、前記開口工程で加工された固定用開口部にピンを挿し込み前記コレット端子部材と、前記基体部材とを固定する固定工程と、を有する。このコレットは、半導体チップのピックアップ装置に取り付けて用いられる。
【0022】
なお、本願において本発明のコレットは、この構造とすることができる任意の方法で製造してもよいが、代表的には本発明のコレットの製造方法により製造することもでき、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
【0023】
本発明者は、セラミック製のコレット端子部材と、SUS製の基体部材を中心にこれらを結合したコレット端子部材の検討を行うにあたって、これらが異種部材であることから従来採用されているロウ付けを行うには特殊な減圧処理を行う必要があるなど、ロウ付け特有の課題が生じることに着目した。また、セラミック部材を取り換えるときも、ロウ付けを清浄に剥離することは難しく、金属部材と組み合わせた状態で一式を取り換える必要があった。
本発明者は、セラミック製のコレット端子部材と、SUS製等の基体部材を結合するにあたって、SUS製の基体用部材に高さ方向に貫通する開口部を設け、そこにコレット端子用部材を入れ子状にはめ込み、互いの部材に貫通部分がかかるように側面から貫通孔を設けて、この貫通孔にピンを挿し込んで留めることで、ロウ付けを行うことなく、セラミック製のコレット端子部材をSUS製の基体部材に安定して固定することができることを見出した。これにより製造されるコレットは、ロウ付け等行うことなく、少ない部材を用いた構造による固定のため、各部材や組立後の清浄等もおこないやすく、使用時に異物等が生じる恐れも低い。
【0024】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態に係るコレットを説明するための概要図である。
図1(a)は、コレット11を平面視した図である。
図1(b)は、コレット11を正面視した図である。なお、コレット11は、
図7(b)に示すように使用時は、コレット端子部材31の吸着部311が下方向となり、搬送ライン上を流れるチップ71に近接してチップ71を吸着して保持する。一方で、使用する前のコレット11を製造したり保管するにあたっては、コレット端子部材31の吸着部311の部分が、基体部材21よりも突出した状態のため、この吸着部311側を上向きとして取り扱う場合があることから、ここでは吸着部311側を正面に見る方向を平面視と呼び説明する。
【0025】
[コレット11]
コレット11は、基体部材21と、コレット端子部材31を有する。また、基体部材21の開口部212(
図2参照)に基体部材21をはめ込んだ状態で、固定用開口部213にピン41が挿し込まれ、開口部214にピン42が挿し込まれている。このピン41、42を挿し込むことで、基体部材21とコレット端子部材31は固定されている。基体部材21の開口部212の壁により、コレット端子部材31は、水平面内方向(X方向、Y方向)への移動が制限されている。また、ピン41、42によりコレット端子部材31は高さ方向(Z方向)の移動が制限されている。なお、本願において、コレットは、基体部材とコレット端子部材とを固定して、半導体のピックアップ装置のワーク(アーム)等に取り付けるための構成単位となるものをいう。
【0026】
[基体部材21]
図2は、基体部材21を説明するための概要図である。
図2(a)は、基体部材21を平面視した概要図である。
図2(b)は、基体部材21を正面視した概要図である。
図2(c)は、基体部材21のA−A断面の概要図である。基体部材21は、基部211を有する。
【0027】
基部211は、半導体チップのピックアップ装置に取り付けるための形状を有する。また、コレット端子部材31を結合するための構造を有する。この形状はピックアップ装置の種類等に応じて適宜調整される。コレット11は、後述するワーク51に取り付けて使用するためのものであり、開口部215、216などを、適宜ワーク51(
図6参照)にねじなどで取り付けて固定する。
【0028】
基部211は、その中央側に、コレット端子部材31を結合するための構造を有する部分である。基部211は、高さ方向に高さ方向(Z方向)に貫通した開口部212を有する。開口部212は、平面視したとき、方形の開口部である。この開口部212にはコレット端子部材31を挿し込むことができる。
【0029】
基部211は、開口部212と異なる方向に向かって設けられた固定用開口部213、214を有する。開口部212とは異なる方向の固定用開口部から、ピン41、42などを挿入して、コレット端子部材31が開口部212から脱落することを防止する。固定用開口部213、214は、開口部212と直交する水平面内に設けられており、奥行き方向(Y方向)に貫通した開口部である。
【0030】
固定用開口部213は、開口部212と部分的に重なり、
図2において開口部212の右側に設けられる。固定用開口部214は、開口部212と部分的に重なり、
図2において開口部212の左側に設けられる。
【0031】
固定用開口部213の孔と、固定用開口部214の孔は、開口部212の開口部分と部分的に重なる。このため、開口部212の
図2における右側の壁2121には、切欠き部2133(第一の切欠き部)がある。また、開口部212の
図2における左側の壁2122には、切欠き部2143(第一の切欠き部)がある。
【0032】
図2(c)の断面図に示すように、基体部材21は、開口部212の右側の壁2121の右側に、弧端2131〜2132までの優弧状の切欠き部2133を有する。また、基体部材21は、開口部212の左側の壁2122の左側に、弧端2141〜2142までの優弧状の切欠き部2143を有する。
【0033】
さらに、基部211の
図2における右側には、開口部215を有する。基部211の左側には、開口部216を有する。これらの開口部は、ピックアップ装置に取り付けるためにねじで挿し込むときなどに用いられる開口部である。なお、これらの開口部はコレット11を製造するにあたって、基体部材21(基体用部材20)とコレット端子部材31(コレット端子用部材30)などの位置決めや把持のために用いることもできる。
【0034】
基体部材21は、金属部材などにより成形することができる。金属部材は、その強度や耐久性等の観点から、ピックアップ装置等の機器を構成する材質として使用しやすく、また、このような複数の開口部や、ワーク51に取り付けるための形状等にも成形加工しやすい部材である。金属部材の中でも、使用時に錆等が生じにくいようにステンレス鋼材を用いることが好ましい。
【0035】
[コレット端子部材31]
図3はコレット端子部材31を説明するための概要図である。
図3(a)は、コレット端子部材31を正面視した概要図である。
図3(b)は、コレット端子部材31を平面視した概要図である。コレット端子部材31は、基体部材21の開口部212にはめ込まれる。このため、コレット端子部材31の平面視(
図3(b))したときの外形は、基体部材21の開口部212の開口部分の形状と略同一である。
【0036】
コレット端子部材31は、吸着部311を有する。吸着部311は、コレット11を使用するとき、半導体チップ(ダイ)に接して、半導体チップの搬送時に半導体チップに吸着する部分である。吸着部311には吸引孔3121が設けられており、ピックアップ装置に取り付けて使用するとき、減圧吸引して、半導体チップを取り上げる。吸着部311は、平面でもよいし、凹状としてチップの端部に選択的に接触するものとしてもよい。
【0037】
吸引孔3121が、吸着部311から高さ方向に向かって設けられている。吸引孔3121は、コレット端子部材31の高さ方向の中央付近で拡径されている。コレット端子部材31をワーク51(
図6、7)に取り付けて使用するとき、拡径された吸引孔3121を吸引ライン53(
図6、7)と結合することで、吸着部311側から吸引するものとなり、半導体チップを吸引する。吸引孔3121は、チップを吸引するときの減圧ラインとなる部分であり、その形状は任意のものとしてもよい。円筒状の開口部とすると、穿孔による加工でこれらの形状を設けることができ、セラミック部材でも加工しやすいため、製造効率の観点から、吸引孔3121は円筒状の開口部とすることが好ましい。
【0038】
なお、本実施形態では、吸引孔3121は1つの吸引孔として、使用時にチップ中央付近に配置されるものを説明したが、本発明のコレットは、吸引孔を複数設けたものも含む。例えば、チップの対角線上に吸引孔を有したり、チップの四隅の角に吸引孔を有するものとしてもよい。また、このような複数の吸引孔を有するものとする場合、ワーク51と取り付ける方(
図1〜5の底面側)は、1つの開口部として吸着部311に向かって枝分かれするような吸引ラインとして開口してもよい。
【0039】
切欠き部3133は、コレット端子部材31の
図3における右側の側面に設けられた、弧端3131から弧端3132までの劣弧の切欠きである。切欠き部3143は、コレット端子部材31の
図3における左側の側面に設けられた、弧端3141から弧端3142までの劣弧の切欠きである。
【0040】
コレット端子部材31は、材質としてセラミックを用いて成形される。セラミックを用いることで、半導体チップに疵がつきにくく、長期使用しても破損や摩耗が生じにくい。コレット端子部材の材質は、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナなどのセラミックの焼結体を適宜用いることができる。これらの中でも、ジルコニアが特に好ましい。
【0041】
コレット端子部材31の形状は、直方体状の小片を基に開口部3121は、穿孔により加工できる。また、切欠き部3133、3143も、穿孔により設けることができる。このため、コレット端子部材31の形状は、一般的に細かい形状の成形加工が難しいセラミック部材を用いても高い収率で成形しやすい形状である。
【0042】
図4は、基体部材21と、コレット端子部材31の固定を説明するための図である。この図は、
図1(a)に示すB−B線の矢視方向におけるコレット11のB−B断面の概要図である。
【0043】
コレット11は、基体部材21の第一の開口部となる開口部212(
図2参照)からコレット端子部材31を挿し込んではめ合わされたものを用いる。コレット端子部材31を基体部材21にはめ合わせた状態で、コレット端子部材31は、吸着部311側が、基体部材21の基部211の天面よりも高さ方向に突出した状態で配置される。
【0044】
この突出した状態は、例えば、基体部材21の底面と、コレット端子部材31の吸引部311側を上方とし拡径された吸引孔3121側を下方としたその底面とを同じ高さとなるように台上に配置して、基体部材21よりも高さが高いコレット端子部材31を用いることで達成することができる。このほかにも、基体部材21の開口部212内に高さ調節台を配置して、コレット端子部材31をその高さ調節台の上に置き、高さ調節台の高さによってコレット端子部材31が突出するものとしてもよい。
【0045】
コレット端子部材31は、基体部材21にはめ合わせたとき、基体部材21の切欠き部2133、2143に対応する位置に第二の切欠き部となる切欠き部3133、3144を有する。
【0046】
コレット端子部材31の
図4における右側で、切欠き部2133と切欠き部3133は、基体部材21にコレット端子部材31をはめ合わせて隣接する位置に配置されたとき、奥行き方向(Y方向)に貫通した円筒状となる固定用開口部213をなす。また、コレット端子部材31の
図4における左側で、切欠き部2143と切欠き部3143は、基体部材21にコレット端子部材31をはめ合わせて隣接する位置に配置されたとき、奥行き方向(Y方向)に貫通した円筒状となる固定用開口部214をなす。
【0047】
基体部材21の切欠き部2133、2143は、円周を二点によって二つの弧に分けたときの半円より大きいほうとなる優弧状である。コレット端子部材31の切欠き部3133、3143は、円周を二点によって二つの弧に分けたときの半円より小さいほうとなる劣弧状である。この優弧と劣弧のそれぞれの弧端を合わせることで、正面視したときコレット端子部材31が配置されている開口部212内の断面部分の形状は、切欠きをつなぐと円となる。
【0048】
固定用開口部213では、弧端2131と弧端3131を隣接させ、弧端2132と弧端3132を隣接させることで円となる。また、固定用開口部214では、弧端2141と弧端3141を隣接させ、弧端2142と弧端3142を隣接させることで、正面視したとき開口部212内のコレット端子部材31が配置されている断面部分の形状は、円となる。
【0049】
なお、本発明の固定用開口部213、214は、優弧と劣弧を組み合わせたものに限られず、双方の切欠き部(213と313、214と314)を半円としたものも含む。優弧と劣弧の組み合わせとした場合、固定用開口部に挿し込むピン41、42が、優弧の切欠き部2133、2143の方に強く固定されるためより安定したものとなる。また、本実施形態のように劣弧の切欠き部3133、3143をコレット端子部材31側に設けることでセラミック部材の加工量を低減し、部材等の製造歩留まりが高くなり、使用中の破損を抑制することができる。
【0050】
この固定用開口部213、214には、円柱状のピン41、42を挿し込むことで、基体部材21の開口部212に配置されたコレット端子部材31の高さ方向の移動が制限されて固定される。この固定用開口部213、214は、基体部材21の開口部212の向きとは異なる向きであれば、コレット端子部材31の移動を抑えて固定できるが、成形加工性や固定状態の安定性に優れることから、開口部212の向きと直交する方向であり、基体部材21の水平面内の長さが狭い方向となる奥行き方向(Y方向)に向かって貫通したものとすることが好ましい。
【0051】
なお、本実施形態では切欠き部を合わせた固定用開口部213、214の形状は円を例に説明したが、本発明のコレットの固定用開口部は、円以外の、四角形などの多角形や楕円など他の形状としたものも含む。他の形状を採用する場合も、その形状に合わせたピンを挿し込むことで固定することができる。また、本実施形態では固定用開口部213、214を貫通孔としているが、固定用開口部213、214は、貫通させたものではない溝穴等としてもよい。
【0052】
[ピン41、42]
ピン41、42は、基体部材21とコレット端子部材31とを固定するために固定用開口部213、214に挿し込む。このコレット11は、ピン41、42を挿し込んだままとして、基体部材21とコレット端子部材31とを固定して使用することができる。このピンは、固定用開口部213、214の形状に合わせたものとすることができる。第一の実施形態では、円筒状となるように固定用開口部213、214を設けるため、その開口形状にはめ合わせる構造として円柱状のピンを用いることが好ましい。例えば、ダウウェルピンやスプリングピンを用いることができる。特に、スプリングピンが好ましく、スプリングピンは、内部が中空で軽く、かつ、配置された場で外側に広がる力が生じるため、固定用開口部213、214内でずれにくく、基体部材21とコレット端子部材31との固定もより強固なものとなる。
【0053】
コレット11は、基体部材21とコレット端子部材31の形状を加工したものに、ピン41、42を用いて固定することができる。このため、ロウなどの接着材による接着処理を行うことなく、成形加工ができる。また、組み立てる前に各部材の状態や組立後の全体としても洗浄しやすく、高い清浄度を維持することができる。
【0054】
[コレット11の製造]
コレット11の製造方法は、それぞれの部材形状を適宜形成して組み合わせることができる任意のものとしてよい。それぞれの形状が予め形成されている部材を用いる場合について、
図1を例に説明する。
図1に示すコレット11を製造するにあたっては、高さ方向に設けられた開口部212(
図2参照)を有する基体部材21の開口部212に、基体部材21よりも高さ方向に突出した状態で基体部材21に固定されるコレット端子部材31をはめ合わせて配置し、コレット端子部材31の右側で切欠き部2133と切欠き部3133を対応させて、ピン41を挿し込む。同様に、コレット端子部材31の左側で切欠き部2143と切欠き部3143を対応させて、ピン42を挿し込む。これにより、コレット11を得ることができる。
【0055】
[コレット11の製造]
図5は、本発明のコレットの代表的な製造方法の一つである、本発明のコレットの製造方法の工程の一部を説明するための正面視の概要図である。
基体用部材20は、基体部材21を成形するための部材である。基体用部材20は、固定用開口部213、214(
図2参照)に代えて、基部210に開口部2130、2140を有する以外は基体部材21と共通する。開口部2130、2140を拡径する加工を行うことで、基体用部材20は基体部材21とすることができる。
コレット端子用部材30は、コレット端子部材31を成形するための部材である。コレット端子用部材30は、切欠き部3133、3134(
図3参照)が設けられておらずその側面が平坦となっている点を除き、コレット端子部材31と共通する。側面に切欠き部3133、3134を設けることで、コレット端子用部材30は、コレット端子部材31とすることができる。
【0056】
[位置決め工程]
基体用部材20とコレット端子用部材30を用いて、製造するにあたっては、まず、基体用部材20の開口部212に、コレット端子用部材30をはめ合わせて配置する位置決め工程を行う。このとき、基体用部材20よりもコレット端子用部材30が高さ方向に突出するように配置する。
【0057】
[開口工程]
次に、位置決め工程で配置された高さで、開口部212と異なる方向に向かって基体用部材20とコレット端子用部材30とが接する部分を含む位置に、固定用開口部213、214を加工する開口工程を行う。
【0058】
図5に示す基体用部材20は、予め成形された開口部2130、2140を有し、いずれも開口部212の壁に重ならずに、基部211を奥行き方向に貫通する孔として開口されている。この開口部2130、2140を加工用の下穴として、基体用部材20を所定の高さで配置した後、開口部2130、2140を拡径するように穿孔することで、
図1等のコレット11における固定用開口部213、214に相当する開口部とすることができる。下穴が設けてあることで、固定用開口部213、214の穿孔成形がより容易になる。また、固定用開口部213、214を設ける位置の特定も行いやすい。
【0059】
なお、これらの下穴となる開口部がないものを基体用部材として用いる場合、その固定用開口部213、214とする位置を適宜設定して開口してもよい。この開口を行った後、基体部材21(
図2参照)とコレット端子部材31(
図3参照)とを取り外して、洗浄することで、開口工程による切りくず等による汚染の恐れもより低いものとすることもできる。
【0060】
[固定工程]
開口工程で加工された固定用開口部213、214に、
図1等に示すコレット11のように、ピン41、42を挿し込みコレット端子部材31と、基体部材21とを固定する固定工程を行う。これにより、コレット端子部材31と、基体部材21とを固定するための切欠き部がより適切に対応して、互いの弧状の切欠き部が合致して、円となる形状とする加工を行いやすい。
【0061】
[吸着部加工工程]
さらに、コレットの製造方法は、固定工程により固定されたコレット端子部材のチップ吸着部を加工する吸着部加工工程を有するものとしてもよい。コレット端子部材のチップ吸着部は、極めて正確な高さ設定が求められる場合があるが、予めコレット端子部材31を加工してもその高さに誤差が生じる恐れがある。このような吸着部加工工程を有するものとすれば、基体部材21との位置が確実に固定された状態での加工を行うことができ、取り付け時の状態と整合する形状としやすい。さらに、基体部材21がコレット端子部材31を固定しているため、基体部材21の開口部215、216などを用いて基体部材21を固定することでコレット端子部材31も固定しやすい位置に把持して加工を行うこともできる。
【0062】
図6はコレット11をピックアップ装置で使用するにあたっての、ピックアップ装置への取り付け工程を説明するための正面視の概要図である。
図7は、コレット11をピックアップ装置で使用するときの使用状態を説明するための概要図である。
図7(a)は、ワーク51にコレット11を取り付けた状態において、底面視した図である。
図7(b)は、ワーク51にコレット11を取り付けた状態において、正面視の概要図である。
【0063】
コレット11は半導体のピックアップ装置のワーク51に取り付けて使用することができる。コレット11をワーク51に取り付けるにあたっては、開口部215を通して雄ねじ61によりワーク51の雌ねじ部521に取り付ける。同様に、開口部216を通して雄ねじ62により雌ねじ部522に取り付ける。
【0064】
ワーク51は、吸引ライン53が設けられており、この吸引ライン53をコレット11の拡径された吸引孔3121に合わせて取り付けることで、ピックアップ装置の吸引動作を行えば、吸引ライン53を介して、吸着部311の吸引孔3121が真空チャックする吸い込み状態となる。この吸い込み状態を利用して、搬送ラインを流れるチップ71を吸着して移送する。同様に、チップ72〜76についても、順次、移送することができる。