特許第6924130号(P6924130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6924130
(24)【登録日】2021年8月3日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】レンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20210812BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20210812BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20210812BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20210812BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   G02B7/02 D
   G03B17/02
   G03B15/00 V
   G02B1/18
   H04N5/225 430
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-233070(P2017-233070)
(22)【出願日】2017年12月5日
(65)【公開番号】特開2019-101281(P2019-101281A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根岸 孝行
【審査官】 三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−018106(JP,A)
【文献】 特開2017−090742(JP,A)
【文献】 特開2009−265473(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/104903(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 1/18
G03B 15/00
G03B 17/02
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水滴が介在する光路上に配置されたレンズであって、
前記光路に交差するレンズ面に形成された撥水コート及び親水コートを有し、
前記撥水コートは、前記レンズ面の周縁部及び前記周縁部から前記レンズ面の中央部の外側に向かって延びる複数の線状領域に形成され、
前記親水コートは、前記複数の線状領域の間の領域及び前記レンズ面の前記中央部に形成されることを特徴とするレンズ。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズにおいて、
前記線状領域は、前記レンズ面の前記中央部を中心に等角度間隔で前記レンズ面に形成されることを特徴とするレンズ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のレンズにおいて、
前記線状領域の本数は偶数本であることを特徴とするレンズ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のレンズにおいて、
前記周縁部に形成された前記撥水コートの厚みは、0.5mm〜2.0mmであることを特徴とするレンズ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のレンズと、
前記レンズ面を介して像を受光する撮像面を有する撮像素子と、
前記レンズ及び前記撮像素子が取り付けられた筐体と、を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載カメラを車両の外部に設置したシステムでは、天候、泥、及び粉塵等によって車載カメラのレンズ面に様々な汚れが付着することがある。レンズ面に付着した汚れは、フレア、白点、白濁、ケラレ、ピンボケ、歪み異常等、レンズ面に付着した水滴に起因する光学的特性の劣化を招くことになり、種々の対策が提案されている。
【0003】
例えば、磁性体と永久磁石をコイルによる磁力を調整することで駆動させ、レンズに付着した水滴をワイパアームで払拭するようにした付着物払拭装置が提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、この付着物払拭装置では、ワイパアームが水滴自体に含まれる汚れを引き伸ばしたり、汚れの拭き残しを引き起こしたりする懸念がある。
【0004】
一方で、ワイパアームのような機構的要素を用いずに、レンズの表面に親水コーティング及び撥水コーティングを施すことで、レンズの表面に付着した水滴を除去するようにした水滴除去方法も提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−125104号公報
【特許文献2】特開2015−18106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示された水滴除去方法では、レンズをカメラ装置本体に組み込む向きの方向性が一意に決まっている。すなわち、カメラ装置本体に組み込む場合、一意の位置関係でのみ固定されることになる。つまり、所望の光学的特性を発揮し得るレンズの姿勢は、一通りのみに限定される。したがって、レンズを左右反対に組み込んだり、上下反対に組み込んだりすることが物理的にできない。その結果、レンズをカメラ装置本体に組み込む際に目視による厳密な位置決めが必要になる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、レンズをカメラ装置本体に取り付ける際に目視で位置決めする煩わしさを回避しつつ、レンズ面に付着した水滴に起因する光学的特性の劣化を抑制することのできるレンズ及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るレンズは、水滴が介在する光路上に配置されたレンズであって、前記光路に交差するレンズ面に形成された撥水コート及び親水コートを有し、前記撥水コートは、前記レンズ面の周縁部及び前記周縁部から前記レンズ面の中央部の外側に向かって延びる複数の線状領域に形成され、前記親水コートは、前記複数の線状領域の間の領域及び前記レンズ面の前記中央部に形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る撮像装置は、本発明に係るレンズと、前記レンズ面を介して像を受光する撮像面を有する撮像素子と、前記レンズ及び前記撮像素子が取り付けられた筐体と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された本発明に係るレンズ及び撮像装置によれば、レンズをカメラ装置本体に取り付ける際に目視で位置決めする煩わしさを回避しつつ、レンズ面に付着した水滴に起因する光学的特性の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置を模式的に示した斜視図である。
図2】レンズ面に形成された親水コート及び撥水コートを示す説明図である。
図3】レンズに付着した水滴の流れを説明する図である(その1)。
図4】レンズに付着した水滴の流れを説明する図である(その2)。
図5】変形例に係るレンズについて説明する図である(その1)。
図6】変形例に係るレンズについて説明する図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るレンズ及び撮像装置の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
(撮像装置の説明)
図1は、本発明の実施形態に係るレンズが光学系に組み込まれた撮像装置を模式的に示した斜視図である。
【0014】
撮像装置10は、例えば、車載用リアビジョンカメラや車載用サイドビューカメラ等の屋外で使用される車載用カメラ装置である。車載用カメラ装置を搭載したシステムでは、撮像装置10で撮像した画像を使用した画像認識技術により、道路の車線や障害物を認識する機能が搭載されている。
【0015】
撮像装置10は、例えば、車両(不図示)の前部において、レンズ12の中心を通る光軸Pが水平方向よりも下方を向いて取り付けられている。その結果、撮像装置10は、例えば、車両の前方にある道路の車線等の表示、車両、歩行者、障害物等、路面上の対象物の画像を撮像する。
【0016】
撮像装置10は、カメラ装置本体11(筐体)と、カメラ装置本体11の前面に取り付けられたレンズ12とを備える。
【0017】
(レンズの構成)
以下、レンズ12の構成について説明する。
【0018】
レンズ12は、例えば、水滴DW(図3)が介在する光路上に配置された凸レンズであって、図2に示すように、光路に交差するレンズ面13が球面形状を有している。
【0019】
レンズ12には、レンズ面13に付着した水滴DWを効率良く除去するための工夫が施されている。すなわち、レンズ12は、レンズ面13に形成された、撥水コート12r及び親水コート12hを有する。
【0020】
撥水コート12rは、レンズ面13の周縁部13r及び線状領域14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14hに形成される。なお、以下では、線状領域14a〜14hを特に区別しないときは、単に線状領域14ともいう。周縁部13rに形成された撥水コート12rの厚みは、例えば0.9mmである。なお、周縁部13rに形成された撥水コート12rの厚みは、0.5mm〜2.0mmとすることが好ましい。撥水コート12rの成分としては、例えばシリコン樹脂やフッ素樹脂等が用いられる。
【0021】
親水コート12hは、線状領域14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14hの間の領域15a,15b,15c,15d,15e,15f,15g,15h及びレンズ面13の中央部13cに形成される。なお、以下では、領域15a〜15hを特に区別しないときは、単に領域15ともいう。親水コート12hの成分としては、例えば、アルコキシシラン、ポリエチレンリコール、光触媒(TiO)、又はオルガノシロキサン等が用いられる。
【0022】
線状領域14a〜14hは、周縁部13rからレンズ面13の中央部13cの外側に向かって延びる領域である。線状領域14a〜14hは、レンズ面13の中央部13cを中心に等角度おきであって、且つレンズ面13の周方向に等間隔を隔てて並んでいる。
【0023】
(レンズの製造方法)
次に、レンズの製造方法について説明する。製造方法の一例としては、レンズ面13の全面に親水コート12hを形成する工程、周縁部13r及び線状領域14a〜14hに撥水コート12rを形成する工程、を順に行えば良い。なお、コーティングの方法としては、真空蒸着を用いてもよいし、ゾルゲル法、スピンコート又はインクジェット等により塗布してもよい。
【0024】
このように構成された実施形態に係るレンズ及び撮像装置によれば、線状領域14a〜14hの本数が偶数本(8本)であるので、線状領域14a,14e同士、線状領域14b,14f同士、線状領域14c,14g同士、線状領域14d,14h同士を点対称な位置に割り当てることができる。これにより、レンズ12をカメラ装置本体11に取り付ける向きの方向性をより一層無くすることができる。したがって、レンズ12をカメラ装置本体11に対して左右反対に組み込んだり、上下反対に組み込んだりすることが物理的に可能となる。その結果、レンズ12をカメラ装置本体11に組み込む際の目視による厳密な位置決めを無くすことができる。
【0025】
また、撥水コート12rは、レンズ面13の周縁部13rの他、線状領域14a〜14hに形成される。すなわち、撥水コート12rはレンズ面13の一部に形成されているだけであって、全面に形成されているわけではない。つまり、撥水コート12rが形成される領域が小さいため、水滴DW自体の吸着力に起因してレンズ面13と水滴DWとの付着状態が保たれる現象は起こりにくい。加えて、撥水コート12rに水滴DWが若干残ったとしても、水滴DWに起因する光学的特性の劣化が必要以上に進むことは無い。
【0026】
また、光軸が通過する中央部13cには親水コート12hが施されている。すなわち、中央部13cには撥水コート12rが施されていない。このため、カメラ画像として重要な役割を果たす中心付近の画像が水滴DWによる悪影響を受けることは無い。具体的には、中央部13cに形成された水滴DWが光の散乱を引き起こすことを防止又は抑制できる。したがって、中央部13cを通して結像された中心付近の画像が不鮮明になることを防止又は抑制できる。その結果、撮像装置10は、レンズ12を通じて、中心付近が鮮明な画像を撮像することができる。
【0027】
また、親水コート12hが形成されている領域15a〜15hに隣接する線状領域14a〜14hに撥水コート12rが形成されるので、親水コート12hに付着している水膜WFを撥水コート12rの表面張力でいち早く粒状の形に変えることができる(図3)。水膜WFから粒状に姿を変えた水滴DWは、その水滴DWの自重又は車両の振動でレンズ面13の下側に向けて転がり落ちる(図3)。
【0028】
その転がり落ちた水滴DWはレンズ面13の下部にある親水コート12hに偏ることで、再び、水膜WF(図4)となってレンズ面13に付着することも起こり得る。この場合も、水膜WF(図4)をその自重又は車両の振動でレンズ面13の下側に向けて落とすことができる。なぜなら、レンズ面13の周縁部13rに形成された撥水コート12rに水膜WF(図4)が触れた時点で即、水膜WFが粒状の形に姿を変えるからである。
【0029】
水膜WF(図4)から粒状に姿を変えた水滴DWは、レンズ面13と接触する部分が少なくなる。これにより、水滴DWとレンズ面13との摩擦力が低減される。したがって、レンズ面13の平坦でない凹凸状の部分だったり傾斜した部分だったりを利用して、粒状の水滴DWをレンズ面13の下側に転がり落とすことができる。
【0030】
すなわち、親水コート12hに水膜WFとなって付着した水滴DWが撥水コート12rに引き渡されることで、撥水コート12rの表面張力でもっていち早く粒状にその姿を変え、レンズ12の外側へと排除されていく。このような水滴DWの排除は、親水コート12h及び撥水コート12rの連係によって、より一層促進される。その結果、水滴DWに起因する光学的特性の劣化を抑制可能な程度に効率良く水滴DWをレンズ12の外側へと排除できる。
【0031】
さらに、レンズ面13に撥水コート12r及び親水コート12hを形成するだけで水滴DWの除去ができるため、圧縮空気発生ユニット等の水滴除去専用の装置を別途設置する必要がない。よって、車両に搭載される撮像装置10におけるレンズ12の表面に付着した水滴DWの除去を省スペース及び低コストで実現できる。
【0032】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述したが、実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであるため、本発明は実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0033】
上記実施形態では、本発明を凸レンズに適用する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、本発明を凹レンズ、非球面レンズ等のレンズに適用しても良い。
【0034】
上記実施形態では、線状領域14の本数を8本とする例を示した。しかし、これに限られない。例えば、線状領域14の本数を16本としてもよい(図5)。この変形例においても、図5に示すように、線状領域14a,14i同士、線状領域14b,14j同士、線状領域14c,14k同士、線状領域14d,14l同士、線状領域14e,14m同士、線状領域14f,14n同士、線状領域14g,14o同士、線状領域14h,14p同士を点対称な位置に割り当てることができる。
【0035】
要するに、線状領域14の本数は、図5に示すように、線状領域14同士を点対称な位置に割り当てることのできる偶数本であれば良い。図5に示す変形例では、線状領域14の本数を8本から16本へと2倍に増やせるので、線状領域14に形成された撥水コート12rの表面張力で水膜WFから粒状にその姿を変える水滴DWの量も2倍以上にすることができる。その結果、レンズ面13に付着した水滴DWの排除をより一層促進することができる。
【0036】
上記実施形態では、周縁部13rに形成された撥水コート12rの厚みを0.9mmとする例を示した。しかし、これに限られない。例えば、撥水コート12rの厚みを0.9mmよりも大きな2.0mmにしても良い(図6)。この変形例においては、周縁部13rに形成された撥水コート12rの厚みが増えた分だけ、水膜WFが接触する面積を増やすことができる。したがって、撥水コート12rの表面張力で水膜WFから粒状にその姿を変える水滴DWの量も増やすことができる。その結果、レンズ面13に付着した水滴DWの排除をより一層促進することができる。
【0037】
上記実施形態では、以上のような特徴を備えたレンズ12が光学系に組み込まれた撮像装置10を車載用カメラ装置に適用する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、撮像装置10は、車載用カメラ装置に限らず、気温の変化が大きい屋外に設置されること多い監視用カメラや防犯カメラ等に適用しても良い。
【符号の説明】
【0038】
10・・・撮像装置
11・・・カメラ装置本体(筐体)
12・・・レンズ
12h・・・親水コート
12r・・・撥水コート
13・・・レンズ面
13c・・・中央部
13r・・・周縁部
14、14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14h・・・線状領域
15、15a,15b,15c,15d,15e,15f,15g,15h・・・領域
DW・・・水滴
WF・・・水膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6