(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、上記従来のゴム組成物と補強材とを接着させたとしても、運搬過程、保管過程、製造過程等による当該補強材の環境劣化に起因して、その接着性が低下してしまうという問題があることが分かった。特に、複数の上記従来のゴム組成物からなる層及び1層又は複数の補強材の層を積層して層状ベルトを作製し、そのエンドレス部を剥離した場合には、剥離強度が十分でない上、補強材上に残るゴム組成物の量が少ないことも分かった。そのため、補強材同士の接合が十分に強固なものとならず、コンベアベルトに高い耐久性をもたらすことができない虞があり、かかるゴム組成物に改善の余地があった。
一方で、上述したエンドレス加工をはじめとする、ゴム組成物からなる層と補強材の層とを剥離する作業の際には、ある程度容易に剥離可能であることも重要であり、上記従来のゴム組成物には、高い剥離作業性も求められている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、補強材、特には環境劣化した補強材との接着性に優れる上、これらとの高い剥離作業性をもたらすことができるゴム組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、ゴム製品の耐久性を向上させることができる、上述したゴム組成物を用いた積層体、及び、高い耐久性を有する、上述した積層体を用いたコンベアベルトを提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ジエン系ゴムを含むゴム成分に、特定の成分を特定量だけ配合することにより、補強材、特には環境劣化した補強材との接着性に優れる上、これらとの高い剥離作業性をもたらすことができるゴム組成物が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、湿式シリカと、カーボンブラックと、炭酸カルシウムとを配合してなるゴム組成物であって、
前記湿式シリカの配合量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して3質量部以上であり、
前記炭酸カルシウムの配合量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して10質量部以上120質量部以下であることを特徴とする。かかるゴム組成物は、補強材、特には環境劣化した補強材との接着性に優れる上、これらとの高い剥離作業性をもたらすことができる。
【0011】
本発明のゴム組成物においては、前記炭酸カルシウムの平均一次粒子径が、0.8μm以上13μm以下であることが好ましい。これにより、未加硫のゴム組成物の粘度の増加を抑制して、安定した膜厚安定性をもたらすことができるとともに、加硫後のゴム組成物のモジュラス及び引裂き強さの低下を抑制して、安定した補強効果を得ることができる。
【0012】
本発明のゴム組成物においては、前記湿式シリカの配合量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して4質量部以上9質量部以下であることが好ましい。前記湿式シリカの配合量が前記範囲内であることにより、補強材、特に大気への暴露により劣化した補強材との接着性を十分に高くすることができるとともに、未加硫のゴム組成物の粘度の増加を抑制して、かかるゴム組成物を用いたゴム製品の生産性の低下を抑制することができる。
【0013】
本発明のゴム組成物においては、前記ゴム成分が、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムを含むことが好ましい。これにより、補強材との接着性がより向上したゴム組成物とすることができる。
【0014】
本発明のゴム組成物においては、前記天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムの総配合量に対する前記天然ゴムの配合量の割合が、20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。これにより、得られるゴム組成物を用いたゴム部材又はゴム製品の機械的強度、耐摩耗性、膜厚安定性、耐老化性及び耐屈曲亀裂性を向上させることができる。
【0015】
本発明のゴム組成物においては、前記湿式シリカの窒素吸着によるBET比表面積が、80m
2/g以上であることが好ましく、200m
2/g超であることが更に好ましい。前記湿式シリカの窒素吸着によるBET比表面積が前記範囲内であることにより、ゴム組成物の極性が高くなり、ゴム組成物と補強材との接着性をより向上させることができる。
【0016】
本発明のゴム組成物においては、前記カーボンブラックの窒素吸着によるBET比表面積が、8m
2/g以上100m
2/g以下であることが好ましい。前記カーボンブラックの窒素吸着によるBET比表面積が前記範囲内であることにより、ゴム組成物と、補強材、特には環境劣化した補強材との間の剥離強度を向上させることができる一方で、剥離作業性の悪化を十分に抑制しつつ、製造時における耐飛散性、圧延性などの生産性を十分なものとすることができる。
【0017】
また、本発明のゴム組成物は、ゴム部材と補強材との間、又は、補強材同士の間に介在させ、これらを接着するために用いられることが好ましい。これにより、ゴム部材と補強材とを、及び/又は、補強材同士を、強固に接着させることができる。
なお、本発明において「ゴム部材」とは、ゴム製品の製造に用いられ、少なくともゴム成分を含む任意の部材を指す。
【0018】
本発明の積層体は、本発明のゴム組成物からなる層と補強材層とが、積層及び接着されていることを特徴とする。かかる積層体は、ゴム組成物からなる層と補強材層とが強固に接着されており、ゴム製品の耐久性を向上させることができる。
【0019】
そして、本発明のコンベアベルトは、本発明の積層体を含むことを特徴とする。かかるコンベアベルトは、ゴム組成物からなる層と補強材層とが強固に接着されているため、高い耐久性を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、補強材、特には環境劣化した補強材との接着性に優れる上、これらとの高い剥離作業性をもたらすことができるゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、ゴム製品の耐久性を向上させることができる、上述したゴム組成物を用いた積層体、及び、高い耐久性を有する、上述した積層体を用いたコンベアベルトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<ゴム組成物>
以下に、本発明を、その一実施形態に基づき詳細に例示説明する。
本発明のゴム組成物は、少なくとも、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、湿式シリカと、カーボンブラックと、炭酸カルシウムと、更に必要に応じてその他の成分とを配合してなる。
【0023】
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分としてジエン系ゴムを用いることを要する。ジエン系ゴムは、加硫により高弾性や高い耐熱性等の性能を呈し得る。前記ジエン系ゴムとしては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然ゴム(NR);ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系合成ゴム;等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
特に、本発明のゴム組成物は、補強材との接着性をより向上させる観点から、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムを含むことが好ましい。
【0024】
本発明のゴム組成物のゴム成分におけるジエン系ゴムの割合としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができるが、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。ゴム成分におけるジエン系ゴムの割合が80質量%以上であることにより、得られるゴム組成物と補強材との接着性が高くなり、当該ゴム組成物からなる層と補強材層との積層体を用いたゴム製品の耐久性を向上させることができる。
【0025】
なお、ジエン系ゴムとして天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムを併用する場合、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムの総配合量に対する天然ゴムの配合量の割合は、20質量%以上が好ましく、60質量%以下が好ましい。上記天然ゴムの配合量の割合が20質量%以上であることにより、得られるゴム組成物を用いたゴム部材又はゴム製品の機械的強度を向上させることができ、一方、60質量%以下であることにより、得られるゴム組成物を用いたゴム部材又はゴム製品の耐摩耗性及び膜厚安定性を向上させることができる。同様の観点から、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムの総配合量に対する天然ゴムの配合量の割合は、30質量%以上がより好ましく、また、50質量%以下がより好ましい。
また、ジエン系ゴムとして天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムを併用する場合、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムの総配合量に対するスチレン−ブタジエンゴムの配合量の割合は、40質量%以上が好ましく、また、80質量%以下が好ましい。上記スチレン−ブタジエンゴムの配合量の割合が40質量%以上であることにより、得られるゴム組成物を用いたゴム部材又はゴム製品の耐老化性を向上させることができ、一方、80質量%以下であることにより、得られるゴム組成物を用いたゴム部材又はゴム製品の耐屈曲亀裂性を向上させることができる。同様の観点から、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムの総配合量に対するスチレン−ブタジエンゴムの配合量の割合は、50質量%以上がより好ましく、また、70質量%質量%以下がより好ましい。
【0026】
なお、本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムの他、ゴム成分として非ジエン系ゴム(ジエン系ゴム以外のゴム成分)を含んでいてもよく、特に制限されることなくゴム製品に一般に用いられる非ジエン系ゴムを用いることができる。
また、本発明のゴム組成物には、ジエン系ゴム及び任意に非ジエン系ゴムを含む再生ゴムを用いることもできる。本発明のゴム組成物に再生ゴムを用いる場合、その配合量としては、得られるゴム組成物を用いたゴム製品の品質を十分に確保する観点から、再生ゴム中のポリマー成分が、配合するポリマー総量に対して20質量%以下であることが好ましい。
【0027】
(湿式シリカ)
本発明のゴム組成物は、湿式シリカを用いることを要する。湿式シリカは、例えば、珪酸ソーダを原料とし、その水溶液を中和してシリカを析出させ、ろ過・乾燥して得ることができる。湿式シリカは、沈降法シリカとゲル法シリカに類別されるが、いずれの湿式シリカも用いることができる。湿式シリカをゴム組成物に用いることにより、かかるゴム組成物と、有機繊維などの補強材、特には環境劣化した補強材との接着性を向上させることができる。この理由は明らかではないが、湿式シリカ特有の高い極性が、接着性の向上に寄与しているものと考えられる。湿式シリカは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明のゴム組成物に用いる湿式シリカの窒素吸着によるBET比表面積(N
2SA)としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができるが、80m
2/g以上が好ましい。湿式シリカの窒素吸着によるBET比表面積が80m
2/g以上であることにより、ゴム組成物の極性が高くなって、ゴム組成物と補強材との接着性をより向上させることができるとともに、このゴム組成物からなる層と環境劣化した補強材層とを剥離する際の剥離作業性の悪下を抑制することができる。同様の観点から、湿式シリカの窒素吸着によるBET比表面積は、120m
2/g以上がより好ましく、200m
2/g超が更に好ましい。
なお、湿式シリカの窒素吸着によるBET比表面積は、例えば、ISO5794−1に準拠して測定することができる。
【0029】
本発明のゴム組成物に用いる湿式シリカの平均一次粒子径としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm以上が好ましい。湿式シリカの平均一次粒子径が10nm以上であることにより、混練時における飛散などによる生産性の低下を抑制することができる。
なお、湿式シリカの平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡像、及び/又はBET比表面積を用いた算出などにより求めることができる。BET比表面積を用いた算出の方法としては、例えば、経済産業省発行「ナノマテリアル情報提供シート:非晶質コロイダルシリカ(平成23年3月時点)参考資料6.」に記載された方法などの、従来公知の方法が挙げられる。
【0030】
そして、本発明のゴム組成物における湿式シリカの配合量としては、ジエン系ゴム100質量部に対して3質量部以上である限り、特に制限はされないが、4質量部以上であることが好ましく、また、10質量部未満であることが好ましい。ゴム組成物における湿式シリカの配合量がジエン系ゴム100質量部に対して3質量部未満であると、湿式シリカを配合することによる補強材、特に大気への暴露により劣化した補強材との接着性の向上効果が十分でないおそれがある。一方、ゴム組成物における湿式シリカの配合量がジエン系ゴム100質量部に対して4質量部以上であることにより、補強材、特に大気への暴露により劣化した補強材との接着性が十分に高いゴム組成物を得ることができる。また、ゴム組成物における湿式シリカの配合量がジエン系ゴム100質量部に対して10質量部未満であることにより、未加硫のゴム組成物の粘度の増加を抑制して、かかるゴム組成物を用いたゴム製品の生産性の低下を抑制することができる。同様の観点から、ゴム組成物における湿式シリカの配合量は、4質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが更に好ましく、7質量部以上であることが一層好ましく、また、9質量部以下であることがより好ましい。
【0031】
(カーボンブラック)
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを用いることを要する。カーボンブラックは、補強性充填剤として、ゴム組成物のモジュラスや耐摩耗性を高めるとともに、このゴム組成物と、補強材、特には環境劣化した補強材との接着性を適度に向上させる機能を有し得る。カーボンブラックは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明のゴム組成物に用いるカーボンブラックの窒素吸着によるBET比表面積(N
2SA)としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができるが、8m
2/g以上が好ましく、また、100m
2/g以下が好ましい。カーボンブラックの窒素吸着によるBET比表面積が8m
2/g以上であることにより、ゴム組成物と、補強材、特には環境劣化した補強材との間の剥離強度を向上させて、十分な補強性を確保することができる。また、カーボンブラックの窒素吸着によるBET比表面積が100m
2/g以下であることにより、このゴム組成物からなる層と補強材層とを剥離する際の剥離作業性の悪下を十分に抑制するとともに、製造時における耐飛散性、圧延性などの生産性を十分なものとしつつ、混練におけるゴム組成物内での高い分散性を確保することができる。同様の観点から、カーボンブラックの窒素吸着によるBET比表面積は、25m
2/g以上がより好ましく、また、90m
2/g以下がより好ましい。
なお、カーボンブラックの窒素吸着によるBET比表面積は、例えば、従来公知の方法により測定することができる。
【0033】
そして、本発明のゴム組成物におけるカーボンブラックの配合量としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができるが、ジエン系ゴム100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、100質量部以下であることが好ましい。ゴム組成物におけるカーボンブラックの配合量がジエン系ゴム100質量部に対して10質量部以上であることにより、このゴム組成物と、補強材、特には環境劣化した補強材との間の剥離強度の悪化を抑制することができる。また、カーボンブラックの配合量がジエン系ゴム100質量部に対して100質量部以下であることにより、例えばコンベアベルトのエンドレス加工時における、このゴム組成物からなる層と補強材層とを剥離する際の作業性の向上させることができる。同様の観点から、ゴム組成物におけるカーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して30質量部以上であることがより好ましく、また、50質量部以下であることがより好ましい。
【0034】
また、本発明のゴム組成物においては、上述した湿式シリカ及びカーボンブラックの配合量の合計が、ジエン系ゴム100質量部に対して30質量部以上であることが好ましく、また、80質量部以下であることが好ましい。湿式シリカ及びカーボンブラックの配合量の合計がジエン系ゴム100質量部に対して30質量部以上であることにより、補強材、特に大気への暴露により劣化した補強材との間の剥離強度に優れた、当該補強材との接着性が十分に高いゴム組成物を得ることができる。また、湿式シリカ及びカーボンブラックの配合量の合計がジエン系ゴム100質量部に対して80質量部以下であることにより、未加硫のゴム組成物の粘度の増加を抑制して、かかるゴム組成物を用いたゴム製品の生産性の低下を抑制することができるとともに、例えばコンベアベルトのエンドレス加工時における、このゴム組成物と補強材とを剥離する際の作業性の悪化を抑制することができる。同様の観点から、湿式シリカ及びカーボンブラックの配合量の合計は、ジエン系ゴム100質量部に対して40質量部以上であることがより好ましく、また、55質量部以下であることがより好ましい。
【0035】
(炭酸カルシウム)
本発明のゴム組成物は、炭酸カルシウムを用いることを要する。炭酸カルシウムは、ゴム組成物の耐破壊性を低減し、それによって、当該ゴム組成物と、有機繊維などの補強材や、他のゴム部材との接着性を向上させる機能に加え、当該ゴム組成物と補強材との剥離作業性を向上させる機能をも有し得る。炭酸カルシウムは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明のゴム組成物に用いる炭酸カルシウムの平均一次粒子径としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm以上が好ましい。炭酸カルシウムの平均一次粒子径が0.5μm以上であることにより、ゴム組成物と、補強材、特には環境劣化した補強材との間の接着性を十分に向上させることができる。
また、炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、0.8μm以上がより好ましく、また、13μm以下がより好ましい。炭酸カルシウムの平均一次粒子径が0.8μm以上であることにより、未加硫のゴム組成物の粘度の増加を抑制して、安定した膜厚安定性をもたらすことができ、また、13μm以下であることにより、加硫後のゴム組成物のモジュラス及び引裂き強さの低下を抑制して、安定した補強効果を得ることができる。同様の観点から、炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、1.0μm以上が更に好ましく、2.0μm以上が一層好ましく、また、12.0μm以下が更に好ましい。
なお、炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡観察などにより測定することができる。
【0037】
なお、本発明のゴム組成物に用いる炭酸カルシウムとしては、ゴム組成物中での分散性を良好なものとするため、必要に応じて、有機物材料を用いて表面処理を施した炭酸カルシウムであってもよい。
【0038】
そして、本発明のゴム組成物における炭酸カルシウムの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して10質量部以上120質量部以下であることを要する。ゴム組成物における炭酸カルシウムの配合量がジエン系ゴム100質量部に対して10質量部未満であると、ゴム組成物のコストが高くなる虞や、未加硫のゴム組成物の粘度が低すぎることでバンバリーやロール等への密着による作業性の悪化が発生する虞や、ゴム組成物の凝集破壊力が高くなり過ぎて、ゴム組成物と補強材とを剥離する際の作業性が悪化してしまう虞がある。また、炭酸カルシウムの配合量がジエン系ゴム100質量部に対して120質量部超であると、ゴム組成物の凝集破壊力が下がり過ぎてしまい、ゴム組成物と補強材との間における剥離強度が不十分となってしまう虞や、ロールを使用した圧延において、未加硫のゴム組成物がロールから浮いてしまい、十分なせん断発熱が与えられない等に因り生産性が悪化する虞や、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー等を使用した混練において、ゴム組成物中の分散性を十分に高くできない虞がある。同様の観点から、ゴム組成物における炭酸カルシウムの配合量は、20質量部以上であることが好ましく、また、100質量部以下であることが好ましい。
【0039】
(その他の成分)
本発明のゴム組成物には、上述のゴム成分、湿式シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム以外にも、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤、酸化亜鉛などの加硫促進助剤、軟化剤、老化防止剤、スコーチ防止材、加工助剤、潤滑剤、乾式シリカ等の上述の湿式シリカ以外のシリカ、カーボンブラック及び炭酸カルシウム以外の充填剤、充填剤改質剤、粘着付与剤、着色剤などを、目的に応じて適宜用いることができる。
【0040】
なお、本発明のゴム組成物に加硫剤として硫黄を用いる場合、その配合量としては、必要最小限の量で効果的に加硫する観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して1.5質量部以上3質量部以下であることが好ましい。
【0041】
(ゴム組成物の調製)
本発明のゴム組成物は、例えば、上述した成分を、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー等を用いて混練することにより調製することができる。
このようにして調製されたゴム組成物は、以下のような特徴を有する。即ち、かかるゴム組成物と、補強材、特には環境劣化した補強材とを接着させ、その後に剥離した場合に、高い剥離強度が得られる。また、かかるゴム組成物と、補強材、特には環境劣化した補強材とを接着させ、その後に剥離した場合に、補強材上に残るゴム組成物の量がより多い。そして、本発明のゴム組成物は、これらの特徴を有することから、有機繊維などの補強材、特には環境劣化した補強材との接着性に優れているといえ、例えば、自動車用タイヤ、コンベアベルト、ホース等のゴム製品の製造に好適に用いることができる。具体的には、ゴム製品の製造の際、このゴム組成物を、補強材同士の間に介在させたり、ゴム部材と補強材との間に介在させたりし、これらの部材を強固に接着するのに用いることができる。言い換えれば、本発明のゴム組成物は、接着用ゴム組成物として用いることができる。このゴム組成物は、例えば、層状にして、補強材層と積層することにより、コンベアベルトに用いることができる。そして、かかるコンベアベルトのエンドレス加工時において、上記のゴム組成物により接着した補強材同士を、又はゴム部材と補強材とを剥離した後に、エンドレス接着用ゴムなどを用いてこれらを再接着する際にも、強固に接着することができる。
【0042】
<積層体>
本発明の積層体は、少なくとも本発明のゴム組成物からなる層(以下、「本ゴム組成物層」と称する場合がある。)と補強材層とを、積層し、接着させてなることを特徴とする。言い換えれば、本発明の積層体は、本ゴム組成物層と補強材層とが、積層及び接着されていることを特徴とする。なお、本発明の積層体は、複数の本ゴム組成物層と、1層又は複数の補強材層とを、それぞれ交互に積層し、接着させてなる積層体を包含するものとし、また、補強材層の両面に本ゴム組成物層を積層し、接着させたものを更に2つ以上積層してなる積層体をも包含するものとする。また、本発明の積層体は、本発明のゴム組成物からなる層に加え、本発明のゴム組成物からなる層以外のゴム層を含んでいてもよい。
【0043】
(本ゴム組成物層)
本ゴム組成物層としては、上述した本発明のゴム組成物を、圧延ロールや、押出成形機等の装置によりシート状にしたものを用いることができる。
本ゴム組成物層の厚さとしては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができるが、成型中におけるゴム切れの抑制や、薄膜化の観点から、0.2mm以上2mm以下であることが好ましい。なお、複数の本ゴム組成物層を用いる場合、各本ゴム組成物層の厚さは、同一でも異なっていてもよい。
【0044】
(補強材層)
補強材層は、自動車用タイヤ、コンベアベルト、ホース等のゴム製品の補強性を向上させる機能を有し得る。ここで、補強材層としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、本ゴム組成物層の接着の対象となる補強材層としては、特に、有機繊維からなる層(以下、「有機繊維層」と称する場合がある。)が好ましく、また、有機繊維の帆布の層がより好ましい。なお、本明細書において「帆布」とは、繊維と繊維とを織ってなる織物を指す。
【0045】
有機繊維の材質としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナイロン等の脂肪族ポリアミド、ケブラー等の芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリメチルメタクリレート等のポリエステル、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリスチレン、及びこれらの共重合体等からなる繊維などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、補強材層として有機繊維の帆布を用いる場合、当該帆布の縦糸と横糸とで材質が異なっていてもよい。
【0046】
なお、補強材層は、未処理の有機繊維層であってもよいが、その表面の少なくとも一部、例えばその表面の全体に、レゾルシノール、ホルムアルデヒド、レゾルシノール及びホルムアルデヒドの縮合体、並びにラテックスを含む膜(以下、「RFL膜」と称することがある。)を備えるものであることが、本ゴム組成物層と補強材層との接着性向上の観点から好ましい。
【0047】
RFL膜は、例えば、本ゴム組成物層との積層に先立って、有機繊維の少なくとも一部、例えばその全体を、レゾルシノール、ホルムアルデヒド、レゾルシノール及びホルムアルデヒドの一部縮合体、並びにラテックスを含む液(以下、「RFL分散液」と称することがある)に浸漬させ且つ熱処理することで、得ることができる。また、レゾルシノール及びホルムアルデヒドの一部縮合体は、レゾール化反応により得ることができる。RFL分散液に含まれるラテックスとしては、例えば、本ゴム組成物層と補強材層との接着性向上の観点から、ビニルピリジンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(SBRラテックス)、天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体系ラテックス、ブチルゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロプレンラテックス等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、RFL分散液の調製の際は、必要に応じて酸・アルカリ等の反応触媒を併用してもよい。
なお、RFL分散液における、レゾルシノールと、ホルムアルデヒドと、レゾルシノール及びホルムアルデヒドの一部縮合体と、ラテックスとの質量比は、特に限定されない。
【0048】
具体的に、RFL膜は、帆布などの有機繊維の一部又は全部を、上記RFL分散液に浸漬し、必要に応じて、ロール間を通す、或いはバキューム吸引するなどで余剰な付着液を除去し、次いで、1段階又は多段階の熱処理を施すことで、得ることができる。
ここで、熱処理における最終処理温度は、反応促進、および実使用時の熱収縮低減の為180℃以上が好ましく、特に200℃以上であることが好ましい。
【0049】
(本ゴム組成物層以外のゴム層)
また、本発明の積層体は、所望のゴム製品の要求に応じ、少なくとも一方の最外層に、本ゴム組成物層以外のゴム層を備えていてもよい。例えば、本発明の積層体をコンベアベルトに用いる場合、当該積層体は、最外層に、カバーゴムとして機能し得るゴム層を備えていてもよい。ここで、カバーゴムとして機能し得るゴム層としては、特に制限はされず、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等、又はこれらの混合物からなるポリマー成分に対して、必要に応じて硫黄などの加硫剤、加硫促進剤、酸化亜鉛などの加硫促進助剤、軟化剤、老化防止剤、スコーチ防止材、加工助剤、潤滑剤、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、充填剤改質剤、粘着付与剤、着色剤などを、目的に応じて適宜混練したものを用いることができる。なお、カバーゴムとしては、上面カバーゴム及び下面カバーゴムが挙げられ、それぞれ同種のゴム部材を用いても良いし、異種のゴム部材を用いても良い。
また、本発明の積層体が最外層に本ゴム組成物層以外のゴム層を備える場合、かかるゴム層は、その内側で本ゴム組成物層と隣接していることが好ましい。
【0050】
(積層体の調製)
本ゴム組成物層と補強材層と、任意で本ゴム組成物層以外のゴム層とを積層する方法としては、特に限定はされず、常法に従って積層することができる。
ここで、本ゴム組成物層と補強材層とを用い、従来から知られているカレンダー工程を使用して積層する場合、まずゴム組成物層−補強材層−ゴム組成物層からなる積層体Aを作製することができ、この積層体Aのままでも使用できるが、コンベアベルト等のゴム製品の必要特性に応じ、積層体Aを2個以上重ねた積層体Bとして使用することもできる(即ち、積層体Aを2個重ねた場合には、[ゴム組成物層−補強材層−ゴム組成物層−ゴム組成物層−補強材層−ゴム組成物層]の積層体Bが得られる)。そして、例えばコンベアベルトの製造においては、積層体A又は積層体Bの最外面に対し、上述したカバーゴムとして機能し得るゴム層を常法に従って積層することにより、本発明の積層体を調製することができる。なお、コンベアベルトの製造の際に用いられる上記積層体Bとしては、積層体Aを2〜8個重ねたものが挙げられる。
また、積層した本ゴム組成物層と補強材層、及び任意で本ゴム組成物層と本ゴム組成物層以外のゴム層を接着する方法としては、特に限定はされないが、例えば、積層した本ゴム組成物層、補強材層及び任意で本ゴム組成物層以外のゴム層を、所定のモールド内に配置し、加硫することにより接着する方法(いわゆる加硫接着)が挙げられる。
加硫の温度としては、特に限定はされず、目的に応じて適宜選択することができるが、本ゴム組成物層と補強材層とを十分に接着させつつ、過加硫を抑制する観点から、130〜170℃であることが好ましい。また、加硫時間としては、特に限定はされないが、本ゴム組成物層と補強材層とを十分に接着させるべく、積層体の中心部付近にも十分に熱が伝達され、加硫されるように適宜設定することが好ましい。
【0051】
このようにして調製された積層体は、本ゴム組成物層と補強材層、及び任意で本ゴム組成物層と本ゴム組成物層以外のゴム層が強固に接着されているので、ゴム製品の一部材として用いられた場合にゴム製品の耐久性を向上させることができ、高い耐久性が要求される自動車用タイヤ、コンベアベルト、ホース等のゴム製品の部材として、好適に用いることができる。
【0052】
<コンベアベルト>
本発明のコンベアベルトは、上述した本発明の積層体を含むことを特徴とする。本発明のコンベアベルトは、本発明の積層体を用いる以外、特に制限はされない。
本発明のコンベアベルトは、上述の通り、本ゴム組成物層と補強材層、及び任意で本ゴム組成物層と本ゴム組成物層以外のゴム層が強固に接着されているため、高い耐久性を有する。また、本発明のコンベアベルトは、同様の理由で、高い補強性をも有する。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0054】
<ゴム組成物の調製>
バンバリーミキサーを用い、表1〜3に示す配合(単位:質量部)に、常法に従って選択された量の加工助剤、潤滑剤、硫黄、加硫促進剤、及び酸化亜鉛を加えて、未加硫のゴム組成物を調製した。
調製した未加硫のゴム組成物を用いて、以下の手順により、膜厚安定性の評価を行った。
【0055】
(膜厚安定性の評価)
6インチ径の圧延ロールを用いて作製した厚さ0.7mmのシート状の未加硫ゴム組成物(後述するゴム組成物層に相当)を25〜30cm幅、40〜100cm長さとしたものを、サンプルとした。このシート状のサンプルの中央部を中心点として1辺20cmの正方形を描き、この正方形の各頂点、各辺の中点及び中心点の計9点について、デジタルシックネスゲージ(テフロック社製「SMD−550S2−LW」)を用いて、厚さを測定した。そして、上記計9点における厚さの最大値と最小値の差を算出し、以下の基準で評価した。
厚さの最大値と最小値の差が0.04mm未満・・・◎
厚さの最大値と最小値の差が0.04mm以上0.07mm未満・・・○
厚さの最大値と最小値の差が0.07mm以上・・・×
【0056】
<補強材層の調製>
ポリエチレンテレフタレート製の縦糸(撚数:16T/10cm、打込み数:83本/5cm)と、ナイロン製の横糸(撚数:12T/10cm、打込み数:32本/5cm)とからなる帆布を準備した。一方で、レゾルシノール、ホルマリン、水、アルカリ系反応触媒を順次混合・撹拌し、レゾルシノールとホルムアルデヒドの縮合反応を一部進行させた後、SBRラテックス、ビニルピリジンラテックス、水を混合・撹拌して、RFL分散液を調製した。そして、上述の帆布の全体を、得られたRFL分散液中に浸漬させた。浸漬後の帆布に対し、最終処理温度が210℃〜240℃の範囲となるように乾燥及び熱処理を行い、表面にRFL膜を備える「未劣化の補強材層」を得た。なお、未劣化の補強材層中のRFL膜の形成にあたっては、RFL膜におけるSBRラテックス及びビニルピリジンラテックスの合計で表されるラテックス濃度が83重量%になるように、RFL分散液を調整した。
更に、上述と同様の未劣化の補強材層を用意し、これを40℃、オゾン濃度50pphmのオゾン槽中で60分間放置し、「劣化後の補強材層」を得た。
【0057】
<積層体サンプルの調製>
まず、積層体サンプル用とは別に、上述の未加硫のゴム組成物を、8±1gの重量で塊状に切り出し、キュラストメータ(JSR株式会社製、「CURELASTOMETER7」)により、JIS K6300−2及びISO6502に準拠して、当該未加硫のゴム組成物の155℃における90%加硫時間(t
c(90))を求めた。
次に、上述の未加硫のゴム組成物を用い、6インチ径の圧延ロールで、厚さ0.7mmのゴム組成物層を作製した。次いで、このゴム組成物層と上述の補強材層とを用い、[ゴム組成物層A−未劣化の補強材層−ゴム組成物層B−未劣化の補強材層−ゴム組成物層C−未劣化の補強材層−ゴム組成物層D]の7層構造の未加硫の積層体サンプルを調製した。この未加硫の積層体サンプルを、所定のモールド内で、148℃で、上述のようにして求めたt
c(90)の1.5倍の時間だけ加硫し、室温下で一晩放置して、加硫済み積層体サンプルIを得た。
また、上述と同様のやり方で、[ゴム組成物層A−劣化後の補強材層−ゴム組成物層B−劣化後の補強材層−ゴム組成物層C−劣化後の補強材層−ゴム組成物層D]の7層構造の未加硫の積層体サンプルを調製し、上述と同様のやり方で、加硫済み積層体サンプルIIを得た。
なお、上記のゴム組成物層A〜Dは、同種のゴム組成物から調製したものである。
これらの積層体サンプルI,IIを用い、以下の手順により、ゴム組成物層と補強材層との接着性を評価した。
【0058】
(ゴム組成物層と補強材層との剥離試験)
上述の積層体サンプルを25mm幅で縦糸方向に切断した後、ゴム組成物層Bの部分にナイフで10〜20mmの切り込みを入れ、株式会社ティー・エス・イー製の「オートコム万能試験機AC−10kN」を用い、切り込み部から剥離する試験を行った。ここで、剥離角度は90°、剥離速度は50mm/分とし、この試験時における剥離強度(N/25mm)を測定した。そして、積層体サンプルI及びIIに関して、以下の通り、接着性及び剥離作業性の評価を行った。これらの結果を表1〜3に示す。
−接着性の評価−
100N/25mmより大きい・・・◎
100〜80N/25mm・・・○
80N/25mmより小さい・・・×
−剥離作業性の評価−
300N/25mm以下・・・◎
300N/25mmより大きい・・・×
【0059】
更に、この試験後における、補強材層上に残るゴム量(ゴム付き量)を、以下に示す方法で評価した。即ち、剥離後のゴム組成物層Bに隣接する2つの補強材層のうち、目視にてゴム付き量が少ないと判断された補強材層を選択し、そのゴム付き面のサンプル写真を撮影した。次いで、撮影したサンプル写真を用い、画像処理ソフトによりゴム分と補強材層分への2値化処理および面積計算を行い、60%より大きい面積でゴムが残っている場合を◎、60〜40%の面積でゴムが残っている場合を○、40%より小さい面積でゴムが残っている場合を×とした。これらの結果を表1〜3に示す。
【0060】
参考のため、実施例1の積層体サンプルIを用いた試験における剥離面の模式図を
図1(a)に示し、実施例1の積層体サンプルIIを用いた試験における剥離面の模式図を
図1(b)に示す。同様に、比較例2の積層体サンプルIを用いた試験における剥離面の模式図を
図2(a)に示し、比較例2の積層体サンプルIIを用いた試験における剥離面の模式図を
図2(b)に示す。また同様に、比較例6の積層体サンプルIを用いた試験における剥離面の模式図を
図3(a)に示し、比較例6の積層体サンプルIIを用いた試験における剥離面の模式図を
図3(b)に示す。ここで、剥離面の色が濃いほど、より多くのゴム組成物が残留しており、ゴム組成物層−補強材層間での界面剥離が発生しておらず接着性が良好であることを示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
*1 再生ゴム・・・イソプレンゴム50質量%、カーボンブラック25質量%、その他(ゴム成分、カーボンブラック、湿式シリカ、炭酸カルシウム、乾式シリカ以外)25質量%
*2 炭酸カルシウム1・・・日東粉化工業株式会社製「NS#100」、平均一次粒子径:2.1μm
*3 炭酸カルシウム2・・・日東粉化工業株式会社製「NN#200」、平均一次粒子径:14.8μm
*4 炭酸カルシウム3・・・白石カルシウム株式会社製「ソフトン3200」、平均一次粒子径:0.7μm
*5 炭酸カルシウム4・・・日東粉化工業株式会社製「NN#500」、平均一次粒子径:4.4μm
*6 カーボンブラック1・・・東海カーボン株式会社製「シーストV」
*7 カーボンブラック2・・・キャボットジャパン株式会社製「ショウブラックN330」
*8 カーボンブラック3・・・東海カーボン株式会社製「シースト6」
*9 湿式シリカ1・・・東ソー・シリカ株式会社製「Nipsil AQ」、窒素吸着によるBET比表面積:205m
2/g、平均一次粒子径:16nm
*10 湿式シリカ2・・・東ソー・シリカ株式会社製「Nipsil SS−50F」、窒素吸着によるBET比表面積:82m
2/g
*11 湿式シリカ3・・・東ソー・シリカ株式会社製「Nipsil SS−70」、窒素吸着によるBET比表面積:42m
2/g
*12 湿式シリカ4・・・エボニックデグサ社製「ウルトラシルVN3」、窒素吸着によるBET比表面積:175m
2/g
*13 湿式シリカ5・・・東ソー・シリカ株式会社製「Nipsil NA」、窒素吸着によるBET比表面積:135m
2/g
*14 乾式シリカ1・・・日本アエロジル株式会社性「AEROSIL 130」、窒素吸着によるBET比表面積:130m
2/g
【0065】
表1〜3より、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、湿式シリカと、カーボンブラックと、炭酸カルシウムとを配合してなり、湿式シリカの配合量が、ジエン系ゴム100質量部に対して3質量部以上であり、炭酸カルシウムの配合量が、ジエン系ゴム100質量部に対して10質量部以上120質量部以下である本発明のゴム組成物は、当該ゴム組成物からなる層と未劣化の補強材層との剥離試験、並びに、当該ゴム組成物からなる層と環境劣化した補強材層との剥離試験において、剥離強度80N/25mm以上をもたらす上、補強材層上に残るゴム量も多かった。従って、本発明のゴム組成物は、未劣化の補強材との接着性及び環境劣化した補強材との接着性に優れることが分かる。このことは、
図1(a)及び
図1(b)の両方において剥離面の色が濃いことからも、明らかである(一方、
図2(b)及び
図3(b)においては、剥離面の色が薄い)。また、表1〜3より、上述の本発明のゴム組成物は、上述の剥離試験において、剥離強度が300N/25mm以下であることから、未劣化の補強材及び環境劣化した補強材との剥離作業性が高いことも分かる。