(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6924192
(24)【登録日】2021年8月3日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】半受動トランスポンダ
(51)【国際特許分類】
G01S 15/74 20060101AFI20210812BHJP
【FI】
G01S15/74
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-532763(P2018-532763)
(86)(22)【出願日】2017年1月11日
(65)【公表番号】特表2019-503478(P2019-503478A)
(43)【公表日】2019年2月7日
(86)【国際出願番号】EP2017050466
(87)【国際公開番号】WO2017121752
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2019年12月19日
(31)【優先権主張番号】20160076
(32)【優先日】2016年1月14日
(33)【優先権主張国】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】514285575
【氏名又は名称】シンテフ ティティオー アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】ベルグ,トゥーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンセン,トゥーニ,フランケ
(72)【発明者】
【氏名】トランデム,オッドゥ
【審査官】
東 治企
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0138920(US,A1)
【文献】
特開2007−266974(JP,A)
【文献】
特開平03−041414(JP,A)
【文献】
米国特許第04361911(US,A)
【文献】
特表平05−505682(JP,A)
【文献】
特開2006−011948(JP,A)
【文献】
特開2001−126598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/00−1/82
G01S 7/00−7/64
G01S 13/00−17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半受動音響トランスポンダであって、水中の受信パルス音響信号を反射するとき、前記トランスポンダに関連する識別情報を提供し、前記トランスポンダは、変換器と電源とに接続された電子回路を備え、前記電子回路は、前記変換器で終端された電気ネットワークと、前記変換器の反射係数を変調するために前記変換器の終端を変更するように構成されたスイッチング装置とを備え、前記トランスポンダは、さらに前記スイッチング装置の動作を制御するID数列データを保持するメモリ装置を備え、前記電子回路は、前記ID数列データを前記ID数列データの持続時間が前記受信音響信号のパルスの持続時間よりも短い反射信号に変調するように、前記スイッチング装置の周波数と持続時間をスイッチングするための前記スイッチング装置を動作させることを特徴とする、半受動音響トランスポンダ。
【請求項2】
前記変換器は、全方向である、請求項1に記載のトランスポンダ。
【請求項3】
前記変換器は、1つ又はいくつかの指向性変換器のアセンブリから成る、請求項1又は2に記載のトランスポンダ。
【請求項4】
少なくとも1つのセンサを更に備える、請求項1乃至3のいずれかに記載のトランスポンダ。
【請求項5】
水中での受信パルス音響信号を反射するときに、1つ以上の半受動音響トランスポンダに関連する位置および識別情報を提供する方法であって、各トランスポンダは、変換器と電源とに接続された電子回路を備え、前記電子回路は、前記変換器で終端された電気ネットワークと、前記変換器の反射係数を変調するために前記変換器の終端を変更するように構成されたスイッチング装置とを備え、
送信機から前記トランスポンダへ音響パルス信号を送信し、
前記電子回路へID数列データを供給することによって前記スイッチング装置の動作を制御して、前記ID数列データの持続時間が前記受信音響信号のパルスの持続時間よりも短くなるように前記スイッチング装置の周波数と持続時間を調整し、
前記1つ以上のトランスポンダから反射した音響信号を受信して、反射した唯一に識別可能な音響信号に基づいて、各トランスポンダの位置および識別を決定する、方法。
【請求項6】
前記音響トランスポンダに、全方位変換器を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記音響トランスポンダに、1つ又はいくつかの指向性変換器のアセンブリを備える、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
水中での受信パルス音響信号を反射するときに、1つ以上の半受動音響トランスポンダに関連する位置および識別情報を提供するシステムであって、前記システムは、該システム内に備えられる前記トランスポンダへ信号を送信する送信機と、前記トランスポンダから信号を受信する受信機と持つ外部装置を備え、各トランスポンダは、変換器と電源とに接続された電子回路を備え、前記電子回路は、前記変換器で終端される電気ネットワークと、前記変換器の反射係数を変調するために前記変換器の終端を変更するように構成されたスイッチング装置とを備え、
前記送信機は、音響パルス信号を前記トランスポンダへ送信するための手段を備え、
各トランスポンダは、前記スイッチング装置を制御するID数列データを保持するメモリ装置を備え、前記電子回路は、前記ID数列データを前記ID数列データの持続時間が前記受信音響信号のパルスの持続時間よりも短い反射信号に変調するように、前記スイッチング装置の周波数と持続時間をスイッチングするための前記スイッチング装置を動作させる、
前記受信機は、各音響トランスポンダから反射された信号を解釈するための手段を備え、それによって、各トランスポンダの位置および識別情報を提供する、システム。
【請求項9】
前記変換器は、全方向である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記変換器は、1つ又はいくつかの指向性変換器のアセンブリから成る、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1つのセンサを更に備える、請求項8乃至10のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響の技術分野に関し、特に、唯一の識別情報を提供するために適合された半受動トランスポンダとして動作する音響反射器に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスポンダは、尋問受信信号に応答して識別可能な信号を放出又は反射する装置である。水中音響応用のために、2つの主要なタイプのトランスポンダがある、すなわち、能動トランスポンダおよび受動トランスポンダである。
【0003】
能動トランスポンダは、探知されるためおよび監視されるための信号を放出する。それは、自動装置であってよく、受信した信号を強めおよび/または変調し、それらを戻しまたは他の場所へ中継する。それをするために、能動トランスポンダは、それ自身の送信機と電源とを含む。能動トランスポンダは、設定された間隔でその身元をピング”ping”してもよく、受信機はその信号を聞くだろう。もしそれが頻繁にピングするなら、それは直に検出されるだろう。しかしながら、頻繁なピングは、より電力を消費する。
【0004】
遠くへ達するために、水中音響応用において使用される大部分のトランスポンダは、能動システムである。それらは、もしセンサが含まれるなら、データばかりでなく唯一の識別情報を送信してもよい。水中で動作するトランスポンダは、典型的には、距離を測定するため、位置追跡、航行、または外部センサからのデータの送信のために使用される。この種のトランスポンダは、典型的には、変換器と、1つ以上のセンサと、プロセンサおよび制御装置のようなある知能装置とを備える。知能装置は、到来信号をデコードし、どのような情報を送信すべきかを推定する。この情報は、変換器によって音響信号に変換される。これら信号のエネルギーは、バッテリにおいて使用可能なエネルギーに依存し、バッテリは取り替えられ、または定期的に充電される。バッテリの動作時間に依存して、そのようなシステムは、もし、バッテリが交換されないかまたは再充電されなければ、仕事を中止するだろう。従って、これらトランスポンダは、エネルギー解決策のため、失った項目の識別情報のためにふさわしくない。
【0005】
能動トランスポンダの利点は、それが典型的には受動トランスポンダよりも長い範囲を持つことである。欠点は、それが大きく、高価であり、比較的短い電力寿命を持つことである。これは、ある特定の目的のためにはより好都合であるが、他の目的のためにはよくない。
【0006】
受動トランスポンダは、システムに、それ自身の送信機や電源をもつことなく、識別するのを可能にする。したがって、水中の応用のための純粋な反射システムは、普通は、トランスポンダと呼ばれないが、反射器と呼ばれる。
【0007】
特許文献1は、ある程度の識別情報を持つ受動音響システムを記載している。規定された半径の球体は、到来信号を前方および後方で反射する。この球体は、異なった材料パラメータを持つ2つの材料で作られている。一方の材料は、薄い表面層を形成し、他方は、球体の残りを形成する。音波がある方向からこの球体にヒットすると、音はその前方へ反射されるが、その球体内で屈折される。第3の部分が、表面波に変換され、その球体の周りを伝わる。全ての波が、その球体の後方で加算され、球体/水の連結部で反射される。振幅および第1の反射と相対的なタイムラグは、材料パラメータ、表面層の厚さ、球体の寸法、および周波数によって決定される。2つの反射は、一種の識別情報を規定する。トランスポンダは、完全に受動であって、したがって、電源を必要としない。しかしながら、この解法は、幾つかのトランスポンダの唯一の識別情報に対して適当ではなく、トランスポンダの反射シグネチャーが必要となる応用は変化する。
【0008】
受動トランスポンダの利点は、それらが安価で、小型であり、それらが電源を必要としないことである。受動トランスポンダの欠点は、それらが比較的制限された範囲を持つことである。
【0009】
唯一に識別され、位置され、およびサービスなしで長い時間監視される、小さくて比較的安いトランスポンダのニーズがある。これは、エネルギーの再充電/再詰め替えがないことを暗に意味している。幾つかのそのようなトランスポンダが、反射された音響信号の異なるシグネチャーを提供するために、広い
種々の物体に、関連づけられ得る。
【0010】
これは、幾つかの水中応用に対して良好な解法を提供するだろう。1つの応用は、地球全体の環境問題であるとして知られている、失われた釣り用具一式の識別を含んでよい。他の応用は、トロール網戸またはデンマーク網の音響位置を提供することであり、第3の応用は、水文化ネット(aqua culture nets)のような、水中システムを監視することである。逃亡を防止するために、特に、強い風や流れに曝されたとき、そのようなネットの形状を連続的に監視できるようにするのが重要である。例えば、もしネットの形状が所与の基準以外になるなら、アラームがトリガされ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1846917号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
唯一の識別情報を提供するように適した既存システムは、ほとんど、動作および送信のために比較的高パワーを必要とする送信機を持つ能動トランスポンドに基づいている。これは、知られている問題であって、もし再充電やバッテリを充電するための短い時間の後に見つかなければ、トランスポンダを死に至らしめる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、水中応用のための音響トランスポンダであって、それは、それ自身、そのトランスポンダで受信および反射された信号に変調された唯一のID列によって識別する。これは、反射係数における動的変化によって実施される。小さいバッテリが、ID列を生成する電子回路にエネルギーを供給し、すなわち、それは半受動である。トランスポンダは、音響信号の反射に基づいており、到来信号、反射係数、および唯一のコードの組み合わせが、反射信号を規定する。たんに非常に小さい電力が、動作のために必要であり、多くの年数に亘って電源となる。
【0014】
本発明は、水中応用での使用に適した能動トランスポンダよりも安価な解決策を提供するだろう。それは更に、エネルギーに関して幾年もの間保守が不要であり、失われた釣り道具一式を識別および検索や、アラーム目的のためのネット籠の監視や、およびトロール網およびデンマーク網のように使用における釣り道具一式の位置決め装置によく適している。
【0015】
本発明は更に、追跡用タグ付き物体が目につかないほど小さいような応用にもよく適している。識別されるために、受信機は、トランスポンダからの反射信号における特定のシグネチャーを突きとめなければならない。従って、トランスポンダからの反響音は、海における他の物体から反響音と容易に混合されてよい。
【0016】
本発明は、以後に述べられ、主請求項において特徴付けられる。
【0017】
特に、本発明は、半受動音響トランスポンダによって規定され、それが音響信号を反射するとき、そのトランスポンダに関連する情報を提供する半受動音響トランスポンダであって、上記トランスポンダは、変換器と電源との接続された電子回路を備える。それは、電子回路が、トランスポンダの反射係数を変調するように構成されたことを特徴としている。
【0018】
本発明はまた、音響信号を反射するとき、半受動音響トランスポンダに関連づけられた情報を提供する方法を規定しており、上記トランスポンダは、変換器と電源とに接続された電子回路を備えている。この方法は、電子回路の手段によって、変換器の反射係数を変調することを特徴としている。
【0019】
本発明は更に、1つ以上の半受動音響トランスポンダに関連づけられた情報を提供するシステムを備え、システムは、トランスポンダへ信号を送信するための送信機と、トランスポンダから信号を受信するための受信機とを備え、各トランスポンダは、変換器と電源とに接続された電子回路を備える。このシステムは、電池回路が変換器の反射係数を変調するように構成され、上記受信機が各音響トランスポンダから反射された信号を解釈するための手段を備える、ことを特徴とする。
【0020】
半受動トランスポンダ、方法およびそのようなトランスポンダを備えたシステムの更なる特徴や実施形態は、請求の範囲に規定されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による半受動トランスポンダを示す図である。
【
図2】変換器の音響インピーダンスを、それが使用される媒体にマッチングする前方層およびバッキング層を持つ標準変換器の設計を示す図である。
【
図3】電子側および音響側を持つ2つのポートモデルとして表された変換器の回路図である。
【
図4】短絡した電子ポートを持つ変換器の機械側を表す回路図である。
【
図6】FETトランジスタによるスイッチ実現の一例を示す図である。
【
図7】変換器の電子側を短絡、開放、および負荷を加えたときの反射係数のシミュレーションに基づく、周波数の関数としての反射係数のプロット図である。
【
図8】トランスポンダへの所与の数列を示し、到来信号、数列、および変調、反射信号を示す図である。
【
図9a】1つの反射係数間隔を変調するときの搬送波のサイドバンドにおけるエネルギー量を示す図である。
【
図9b】他の反射係数間隔を変調するときの搬送波のサイドバンドにおけるエネルギー量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は半受動トランスポンダとして記載されえる。それは特殊な特性を持つ音響反射器であって、特殊な特性は物体の位置と識別のために開発されている。トランスポンダは、異なるユニット、すなわち、変換器、電子回路のアセンブリと、そのアセンブリに電力を供給するための電源とを備えている。それは更にセンサを備えてもよい。
【0023】
トランスポンダは、外部装置に依存して、トランスポンダ上の変換器の帯域幅とマッチングする帯域幅Bを持つ持続時間T
dの信号を送信できる。提供されたトランスポンダ・システムは受動システムであって、外部装置からの送信された信号は、変換器の面とヒットしたとき、変調および反射される。変調信号は、ビット長T
chipを持つ、Nビットの数列であってよい。それゆえ、トランスポンダは、識別され、概略で探し出されえる。
【0024】
外部装置から送信された専用信号を使用することによって、本発明による半受動トランスポンダを装備した物体の位置を推定することができる。トランスポンダからの反響を、他の反射物体からの反響を分離することができる。変換器の反射率を変調させた数列の使用は、わずかな信号対雑音状況下で、トランスポンダを識別することができる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、1つのセンサ(又は多くのセンサ)が、また半受動トランスポンダに含まれている。センサデータは、反射信号に変調される。
【0026】
トランスポンダが、その意味において、それ自身送信機を含まず、到来信号を反射するだけの、受動であるので、高エネルギーのバッテリを必要としない。これは、長い動作寿命を持つ安価なトランスポンダを与える。この変換器は、海の中での広い数の方向をカバーする幾つかの方向性変換器、1つの全方向変換器、または、異なる目的のために構成された幾つかの変換器から成ってよい。この選択は、特殊なシステム設定の部分であるだろう。
【0027】
以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明による音響トランスポンダを図示する。音響トランスポンダは、それが信号を送信する送信機を備えていないので、半受動トランスポンダとして特徴づけられてよい。
【0029】
半受動トランスポンダは、周知のRFIDタグのように動作するが、音響波と、RF波およびRFアンテナの代わりに、ピエゾセラミック変換器とを使用する。トランスポンダは、浮かんでいるか、また水中の物体に取り付けられ、それよって、異なる変換器の見る方向をある程度に制御できる。
【0030】
その最も簡潔な構成において、トランスポンダは、変換器と、電子回路と、電源とを備える。一実施形態において、電子回路は、メモリ/論理装置、変換器に接続され、負荷を表すネットワークと、スイッチとを備える。電子回路は、変換器の反射係数を変調するように構成される。
【0031】
変換器の反射係数は、電子回路に構成されたスイッチの手段によって、2以上の値の間で変えられる。最も簡単な場合である、2つの値を使用するとき、この値は、0と1に接近されるべきである。
【0032】
一実施形態において、半受動トランスポンダの電子回路は、スイッチング装置を制御するための数列データを保持するためのメモリ装置を備える。数列データは、スイッチの動作を規定し、順番に電子回路は変換器の反射係数を変調する。スイッチの動作は
、周波数および持続時間
のスイッチングによって規定される。
【0033】
変換器の設計は、応用で変化するだろう。最も簡単な場合、変換器は、ピエゾ電気板と幾つかのマッチング層とから成る。これは、一例として使用される。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、前面層(複数の場合もある)を持つピエゾ板と、バッキング層とから成る。前面層は、ピエゾ板を保護し、それが使用される媒体へのインピーダンス変換器として働く(
図2参照)。前面層は、典型的には、λ/4の厚さの1つ以上の板であって、それは、帯域幅を広げ、リンギングを削減する。ピエゾ板の後ろのエネルギー損失を最小にするために、通常、低い特性インピーダンスを持つ材料が、バッキングとして使用される。
【0035】
所与の周波数で、ピエゾ板は厚さ共振を持ち、電気エネルギーから音響エネルギーへの変換は高く効率がよくなる。これは、板厚Lが波長λの半分、L=λ/2のときに起こり、共振を規定する。変換器の設計は、モードに関してむしろ自由である。
【0036】
図3は、2ポート、電気および音響負荷、およびソースを持つ電気等価回路として表された変換器を示す。
【0037】
2ポートの音響側は、変換器の水側を表す。負荷インピーダンスは、水[Z
L]である。圧力P
iの音響パルスは、変換器をヒットし、ピエゾセラミック材料内で電気パルスに変換する。Uは、表面上の速度である。ネットワーク[Z
eL]は、2ポートの電気側を終端する。通常、このネットワークは、この遷移での反射を最小にするために、変換器の出力インピーダンスを受信機の入力イン―ダンスにマッチングするように設計される。この実施形態において、ネットワークは、変換の前面位相から分かる、反射係数を制御するために使用される。ネットワークは、異なる構成において、電気抵抗器(複数の場合もある)、複数のインダクタ、および複数のキャパシタの組み合わせである。終端を表すインピーダンスは、強く周波数に依存する。正しい構成は、反射係数(R)のシミュレーションによって見つけられる。
【0038】
2ポートは、次の行列によって記述される。
【数1】
ここで、H
ttは、音響側から電気側への伝達関数である。このパラメータは、計算されるか、または、間接的に計算される。
Yeは、音響入力ポート上の零圧力を持つ電気ポート上のアドミタンスである。このパラメータは、直接的に計算されるか、または、計算される。
YM=1/ZMは、入力ポート上の機械アドミタンスである。このパラメータは、計算されるか、または、電気ポートが短絡されたときに間接的に測定される。
【数2】
【0039】
図4は、電気ポートが短絡されたときの2ポートモデルを示す。
【0040】
反射係数は、トランスポンダの仕事条件のための主要なパラメータである。反射係数は、次のように規定される。
【数3】
ここで、p
iは到来圧力パルスであり、p
rは反射パルスであり、p
tは変換器表面での伝送パルスである。Uは、同じパルスの速度である。
【0041】
代入と、Uとpとの双方の境界条件とを使用して、
図2に示された2ポート用の反射係数は、一般に、次のように表されえる。
【数4】
【0042】
電気側で3つの異なる状態がある。すなわち、開放状態、短絡状態、および負荷が加えられた状態である。
【0043】
端子をショートカットするとき、一般的な表現における第3項は零になり、反射係数は次式となる。
【数5】
【0044】
電気側を開放すると、反射係数は次式となる。
【数6】
【0045】
それから一般的な場合は、特殊な場合R
sおよびR
oによって次式で表される。
【数7】
【0046】
次式のとき、反射が零R=0を得る。
【数8】
【0047】
受動構成要素で実現可能なZ
eLに対して、(R
s・Z
i/R
o)の実部は、0より小さい。これは、この条件を満足するネットワーク構成におけるキャパシタ、抵抗器およびインダクタを使用して解決される。
【0048】
2レベルシステムにおけるネットワークを注意深く設計するなら、ネットワーク、すなわち、負荷をスイッチングしている間、反射係数を閉から0へと閉から1へとの間で変化することができる。短絡と負荷との間のスイッチングと、開放と負荷との間のスイッチングのいずれかであり、それらは、
図5aおよび5bに図示されている。
【0049】
この説明において、2レベルシステムは、本発明の簡単な説明のための一例として使用される。多数レベルシステムにおいて、反射係数は、2つの異なるレベルより多い間で変化されてよい。
【0050】
図6は、FETトランジスタを使用する2レベルシステムにおけるスイッチの実現の一例を示す。このタイプのトランジスタは、ゲートへの電圧に従って、開きまたは閉じるだろう。電圧は、メモリに格納された、1と0との数列であるが、入力ゲートとリンクされる。この数列は、有限であるが、連続的にループする。
【0051】
図7は周波数の関数としての反射係数のシミュレーションを示し、変換器の電気側を3つの状態、すなわち、1)ネットワークに負荷が入れられている状態、2)短絡状態、および3)出力を開放した状態を示す。
【0052】
記述した例に従う2レベルシステムにおいて、シミュレーションしたシステムは、2レベルシグナリング、すなわち、1か0に設計される。最適な設計は、反射係数を0と1(最大の差)に近づけることである。この例は、68mmのピエゾセラミック層と25mmのマッチングエポキシ樹脂層とから成る、ピエゾセラミック変換器を、厚さモードに30kHzで共振させたものに基づいている。負荷/ネットワークを持つ変換器の反射係数は連続線で示され、点線は、短絡負荷と開放負荷を表す。このネットワークは、直列接続の抵抗器とインダクタである。30kHzで、負荷と、開放/短絡との間の差が大きい。設計する上で、サイドバンドの伝送のために十分な帯域幅にすることに注意する。
【0053】
反射係数の変化は、ネットワーク、すなわち、負荷を周波数f
chipでスイッチングすることによって、変換器表面で入力信号の反射を制御するために使用される。これは、長さT
dで周波数f
oの到来信号を変調している間、と同時に、N*T
chipのスイッチング数列によって与えられる、シグネチャーを持つ反射信号を生成する。
【0054】
図8は、外部装置から送信パルスが、持続期間T
dの23周期長の正弦波である一例を示す。搬送波周波数はf
o(T
d=23・T
o)である。変換器での繰り返し数列は、5ビット、すなわち、01011である。各ビットの長さはT
chipであり、T
chipはT
oの三倍である(T
chip=3・T
o)。変調され反射された信号は、01011の包絡線を持ち、エネルギー「移動」の幾つかはサイドバンドを持つ。サイドバンドにおけるエネルギー量は、反射係数R
maxとR
minの比に依存するだろう。
【0055】
図9aと
図9bは、異なる反射係数間隔を変調するときの搬送波のサイドバンドにおけるエネルギー量を示す。
図9aは、反射係数Rを0.05と0.95との間で変化させたときの反射係数のFFTを示し、
図9bは、Rを0.25と0.75との間で変化させたときの反射係数のFFTを示す。みて分かるように、振幅は、
図9aにおける搬送波で4dB下がっており、
図9bにおける搬送波で8dB下がっている。
【0056】
異なる変調数列または送信機信号は、トランスポンダからの反射信号の望まれるスペクトル形状と相関特性を達成するために使用されえる。これら特性は、帯域幅、SNR、検出範囲、距離測定精度、および受信機処理要求との間の望まれる折衷案を与えるために優先順位がつけられえる。
【0057】
一例として、送信機から長い正弦波信号は、低いSNR比において検出を可能とし、それゆえ、長い検出範囲を可能とする。他方、範囲分解能は劣るだろう。送信機における純粋な正弦波の代わりに数列を使用することによって、長い範囲が維持されるだろうが、分解能は広い帯域幅のために増加するだろう。しかし、より高い処理を要求し、送信機/受信機システムをより高等にしなければならない。
【0058】
送信信号を受信するために、半受動トランスポンダにおいて使用される変換器は、任意の望まれる方向からの信号を受信できるべきである。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、変換器は全方向である。他の実施形態によれば、変換器は、それらが望まれる方向をカバーするように組み立てられた、与えられた指向性を持つ幾つかの変換器のアセンブリから成る。ある浮いているシステムが、また、変換器を正しい半分平面に維持するために使用されてもよい。多数指向性変換器は重量が増加するだろうが、範囲を増加する。例えば、各々が90度の角度をカバーする、4つの変換器のアセンブリは、やく14dBの指向性指標を与え、それは、検出範囲を、全方位ソースに比較して、(周波数に依存して)2の係数まで増加するだろう。
【0060】
本発明はさらに、音響信号を反射するときに、音響トランスポンダに関連する情報を提供する方法から成る。トランスポンダは、電源に接続された電子回路と、電子回路に接続された変換器とを備える。この方法は、電子回路の手段によって、変換器の反射係数を変調することを特徴としている。
【0061】
電子回路は、変換器の電気側に終端された電気ネットワークを備える。電気ネットワークの終端は、スイッチングされ、それによって、変換器の終端を変更し、従って、反射係数を変更する。
【0062】
スイッチング装置は、反射係数を、変換器側で2以上の値に変化することによって変調させるために使用されてよい。スイッチング装置は、データの数列をそのスイッチング装置に供給することによって制御され得、それは、ネットワーク、すなわち、負荷の終端を変換器で変化させる。反射係数が変調される、トランスポンダの唯一の識別情報を与えるために、データの数列は、外部装置からの送信パルスの持続時間よりも短い持続時間を持たなければならない。
【0063】
一例において、外部装置は、特殊なパルス持続時間を持つ信号を送信する。これら信号は、要求信号またはピング信号と呼ばれてよい。それから、外部装置はその信号の反響を聞くだろう。反射係数の異なる変調を持つ半受動トランスポンダからの反響は、異なるシグネチャーを持つだろう。受信した信号は、異なるトランスポンダの識別情報と位置を決定するために解釈されえる。
【0064】
幾つかの半受動トランスポンダが、各トランスポンダに関連する情報を提供するためのシステムに使用されてよい。このシステムは、全てのトランスポンダへ信号を送信するための送信機と、全てのトランスポンダから信号を受信するための受信機とを備える。各トランスポンダは、電源に接続された電子回路と、電子回路に接続された変換器とを備え、電子回路は、変換器の反射係数を変調するように構成され、上記受信機は音響トランスポンダからの反射された信号を解釈するための手段を備える。
【0065】
幾つかの音響トランスポンダを備えたシステムが、トランスポンダの相対的な位置決めの監視のために使用されてよい。各トランスポンダは、監視したで維持される環境に接続されてよい。異なるトランスポンダ間を識別するために、各音響トランスポンダは、スイッチング装置を制御する異なる数列データを保持するメモリ装置を備え、それによって、唯一の変調反射係数と識別情報とを提供する。受信機は、異なる受信信号を解釈できるだろう。
【0066】
本発明は、水中応用に使用に適した能動トランスポンダよりも安い解決策を提供するだろう。それは、数年間にわたって保守が不要であり、したがって、釣り産業および沖合産業において使用される装置を含む、海での装置の識別や位置探索のためにより適している。