(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共振ユニットのそれぞれが、前記共振周波数のうちの個々の共振周波数によって一意的に識別されるように構成されている、請求項2ないし4のいずれかに記載の超伝導チップ。
前記無線周波数信号を用いた読み出しが、前記一連の前記共振周波数を前記超伝導チップの前記識別として出力するように構成されている、請求項7に記載の超伝導チップ。
前記共振ユニットのそれぞれにおける前記ジョセフソン接合が同一に設計されており、前記一連の前記共振周波数が物理的複製困難関数を構築する、請求項2ないし11のいずれかに記載の超伝導チップ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で示されている図面は、例証的なものである。本明細書に記載された図面または動作に対しては、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更があり得る。たとえば、作用が、異なる順序で遂行されることがあり得、または、作用が、追加される、消去されるもしくは修正されることがあり得る。また、「結合された」という用語およびその変形は、2つの要素の間の通信経路を有することの記載であり、それら2つの要素の間に介入する要素/接続が存在しない2つの要素間の直接的な接続があることを意味しない。これらの変形例は、すべて、明細書の一部であると考えられる。
【0014】
添付の図面と、開示されている実施形態に関する以下の詳細な説明とにおいては、図面で図解されている様々な要素には、2桁または3桁の参照番号が提供されている。若干の例外を除き、それぞれの参照番号の最も左の桁は、その要素が最初に図解された図面に対応する。
【0015】
簡潔を期すという目的のために、半導体デバイスおよび集積回路(IC)の製造に関する従来型の技術については、本明細書において、詳細に説明される場合とそうでない場合とがあり得る。さらに、本明細書に記載の様々なタスクおよびプロセスは、本明細書には詳細な記載のない追加的なステップもしくは機能を有する、より包括的な手順またはプロセスに一体化されることがあり得る。特に、半導体デバイスおよび半導体ベースのICの製造における様々なステップは広く知られているので、簡潔性のために、本明細書では、多くの従来型のステップは、単に簡潔に言及されるか、または、広く知られたプロセスの詳細を提供することなく、全体として割愛されることになる。
【0016】
次に、本発明の態様とより特定の関係を有する技術の概観に注目すると、多くのチップが、サーバ・ファームにおいて用いられる。サーバ・ファームまたはサーバ・クラスタとは、コンピュータ・サーバの集合体であり、通常、単独のマシンの能力を遙かに超えるサーバ機能を供給するように、組織によって維持される。サーバ・ファームは、しばしば、数千台のコンピュータによって構成される。超伝導量子計算ハードウェアの製造がスケール・アップするにつれて、超伝導量子計算ネットワーク(たとえば、それぞれの量子コンピュータが少なくとも1つの超伝導チップを有するサーバ・ファームなど、多数の量子コンピュータ)において動作中のチップを識別するための手段に対する必要性が生じている。パッケージングがなされた少数のチップの場合には、計算リソースをトラッキングするために、在庫管理が行われることがあり得る。ネットワークの場合には、チップ自体を識別できることが有用であり望ましい。理想的には、これは、機能的ハードウェアと同じ環境で、同じタイプの測定ツールを用いて、行われる必要がある。相補型金属酸化膜半導体(CMOS)の場合には、これは、通常、eFUSEなどの不揮発性ランダム・アクセス・メモリ(NVRAM)の追加によって、達成される。eFUSEでは、現場に配置される前の登録フェーズの間に、ビットがプログラムされ、予備ビットを用いる単一誤り訂正二重誤り検出(SECDED)ハミング符号など、何らかの誤り訂正が要求され得る。NVRAMは、通常、ワンタイム・プログラマブル・リード・オンリ・メモリ(OTPROM)から作られ、(スタティック・ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)またはダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)とは異なり)電源がオフになった後でも、情報を失わない。このアプローチは、模倣品に対しては安全でないのが通常であり、その理由は、コードが、直接に、または、チップのレイヤ解析(de-layering)を経由して、読み出され、チップ上の領域を維持する同じタイプのデバイスまたは別のタイプのデバイスを用いて、複数のコピーが作られ得るからである。
【0017】
次に、本発明の態様の概観に注目すると、本発明の1つまたは複数の実施形態は、量子ビット・ネットワークの安全な識別を提供することによって、従来技術の上述した短所を克服する。さらに詳しくは、本発明の上述した態様は、安全な認証システムを提供することによって、従来技術の短所を克服するのだが、この安全な認証システムは、(製造の間に)超伝導量子ビット・チップと容易に統合が可能であり、典型的な超伝導量子ビット・チップに対するのと同じ機器および技術を用いた読み出しが可能で、模造品に対しても安全である。超伝導量子チップで用いられる超伝導トンネル接合(ジョセフソン接合とも称される)が、ジョセフソン・インダクタンスを示し、それらのチップを、それらの臨界電流よりも小さな電流で動作されるときに、超伝導回路の内部における従来型のインダクタと機能的に同等にするのである。ジョセフソン接合が製造される間の変動(すなわち欠陥)が、実施形態による超伝導量子ビット・チップのランダムな識別を提供するのに、用いられる。変動(すなわち欠陥)が、ジョセフソン接合が製造される間に、予測不可能に、ランダムに、そして制御不可能に生じ、それにより、超伝導量子チップの一意的でランダムな識別を提供するのである。超伝導量子チップのための量子アナログが、ちょうど典型的な超伝導量子ビットのように、マイクロ波回路を用いて読み出されることが可能な識別を提供する。この識別は、模造の費用を法外に高価なものにするため、安全である。
【0018】
次に、本発明の態様のさらに詳細な説明に移るが、
図1は、読み出しが本発明の実施形態に従って集合的に行われる超伝導チップの安全な識別を提供するように構成された識別システム100の概略を示している。
図2は、読み出しが本発明の実施形態に従って個別的にアドレス指定可能な超伝導チップの安全な識別を提供するように構成された識別システム100の概略を示している。
【0019】
安全な識別システム100は、超伝導チップ102を含む。超伝導チップ102は、量子計算に用いられる他のタイプの回路と共に、共振ユニット・アレイ104を含む。たとえば、他の回路は、当業者によって理解されるように、超伝導量子計算に用いられる超伝導量子ビット回路130を含み得る。超伝導量子ビット回路130を経由して量子計算を行うには、様々な方法が存在し、典型的な超伝導量子ビット回路130は、超伝導量子ビット、読み出し共振器、結合共振器、結合コンデンサ、結合インダクタ、および量子計算に用いられる他の超伝導回路素子を含むことになる。これらの必要な要素のすべての組合せは、当業者に理解されるものであり、その詳細は、本明細書では論じられない。超伝導チップ102は、超伝導温度で動作する。超伝導チップ102は、希釈冷凍機などの低温装置(図示せず)によって、冷却され得る。
【0020】
共振ユニット・アレイ104は、共振ユニット150_1〜150_Nを含む。それぞれの共振ユニット150_1〜150_Nは、コンデンサまたはインダクタあるいはその両方と共に、ジョセフソン接合を含む。ジョセフソン接合は、分散的非線形素子の一例である。個々の共振ユニット150の様々な構成が、
図5、
図6、
図7、
図8、
図9、
図10、
図11、および
図12に図解されている。それぞれの共振ユニット150_1〜150_Nは、超伝導量子ビット回路130を含む典型的な回路における共振周波数のために用いられるものと類似の機器および技術を用いて読み出されることが可能な一意的な共振周波数(resonant frequencyまたはresonance frequency)を有する共振器である。たとえば、共振ユニット150_1〜150_Nは、個々の共振周波数f1〜fNを有する。典型的な超伝導量子ビット回路130は、(エンタングルメントなどの)量子計算または量子演算あるいはその両方のために作られ、用いられる。
【0021】
それぞれの共振ユニット150_1〜150_Nの共振周波数は、測定機器106を用いて読み出され得るが、この測定機器106は、典型的な超伝導量子ビット回路130を読み出すのに用いられるのと同じ機器である。測定機器106は、伝送線120を経由して、チップ102上の共振ユニット・アレイ104の共振ユニット150_1〜150_Nに、動作可能に接続されている。
図1とは異なり、
図2は、共振ユニット150_1〜150_Nのそれぞれが、伝送線120_1〜120_Nを経由して個別的にアドレス指定可能である例を示している。伝送線120_1〜120_Nは、信号(たとえば、マイクロ波信号)を送信および受信するためのフィードラインである。伝送線120は、同軸線または導波管であり得る。伝送線は、伝送媒体の1つのタイプである。別の例示的な伝送媒体として、三次元マイクロ波キャビティがあり、これは、共振ユニット・アレイ104の読み出しのために用いられ得る。伝送媒体と共振ユニット150_1〜150_Nとは、典型的な超伝導量子ビット回路130と量子計算に用いられる他の超伝導回路素子とを有する同じチップ102を共有する。したがって、どのような実装形態も、超伝導量子ビット回路130から共振ユニット・アレイ104への量子情報の漏洩を防止しなければならない。ある実装形態では、共振ユニット・アレイ104は、2つのタイプの回路104および130の間でのどのような容量結合も誘導結合も回避するために、チップ102上の距離と、チップ102の中に一体化され接地されたシールディングとによって、超伝導量子ビット回路130から厳格に分離される。この場合、共振ユニット150_1〜150_Nは、任意の値の共振周波数f1〜fNを有し得る。別の実装形態では、容量結合または誘導結合が、2つのタイプの回路104および130の間に存在し得る。この場合には、共振ユニット150_1〜150_Nは、それらの共振周波数f1〜fNが、量子計算に用いられる超伝導量子ビット回路130の周波数と重複しないように、作成されなければならない。共振周波数f1〜fNが超伝導量子ビット回路130の周波数と重複し得る別の実装形態は、閉じていると共振ユニット150_1〜150_Nのそれぞれをグランドに接続するスイッチを追加することである。このスイッチは、超伝導量子ビット回路130の超伝導動作の間、閉じている。開かれると、共振ユニット150_1〜150_Nは、グランドに接続しておらず、超伝導量子ビット回路130は、量子計算を行わない。
【0022】
測定機器106は、プローブ信号132を含み得る。プローブ信号132は、たとえばマイクロ波信号などの所望の無線周波数の無線周波数信号(パルスであり得る)を生成するように構成された信号生成器(たとえば、測定機器106に一体化されている)によって生じられ得る。共振ユニット150_1〜150_Nの識別を読み出すため、プローブ信号132は、所望の/事前に定義された周波数のマイクロ波信号を含んでおり、共振ユニット・アレイ104の共振ユニット150_1〜150_Nに送信するように構成されている。
図1は、プローブ信号132が、(所望の無線周波数のスイープである)無線周波数信号を、共振ユニット150_1〜150_Nに集合的に(伝送線120を経由して)送信することを示している。換言すると、測定機器106は、(事前に定義された周波数のすべてをカバーする)無線周波数信号を、同じ伝送媒体(たとえば、伝送線120またはマイクロ波空洞)を用いて、共振ユニット150_1〜150_Nのそれぞれに一度に送信するように構成されている。
図2は、(所望の周波数全体のスイープを構成する)プローブ信号132が、(伝送線120_1〜120_Nを経由して)個別的に、共振ユニット150_1〜150_Nに送信されることを示している。
図2では、共振ユニット150_1〜150_Nは、無線周波数信号がこれらの伝送線120_1〜120_Nの間でスイッチングされるように、孤立されている状態にあり得るが、それぞれが、個々の伝送線を経由してアクセスされる。ある実装形態では、(所望の周波数のすべてを含む)無線周波数信号が、同時にまたはほぼ同時に、それぞれの個々の伝送線120_1〜120_Nの上を、それぞれの共振ユニット150_1〜150_Nまで、送信され得る。測定機器106は、プローブ信号132を経由して、共振ユニット150_1〜150_Nを個々の伝送線120_1〜120_Nを経由して個別的にアドレス指定するために事前に定義された周波数を有する無線周波数信号を生成するように構成されており、また、共振ユニット150_1〜150_Nは個々の伝送線120_1から120_Nを有しているのだから、共振周波数は、共振ユニット150_1〜150_Nが個別的に読み出される限り、それぞれの共振ユニット150_1〜150_Nに対して同一であり得る。
【0023】
いずれの場合(
図1および
図2)も、無線周波数信号は、共振ユニット150_1〜150_Nに個別的に向けられる、または、共振ユニット150_1〜150_Nの全体のアレイに(集合的に)向けられる、あるいはその両方である。前もって、測定機器106(オペレータによって操作可能である)は、(共振ユニット・アレイ104に送信される)無線周波数信号の周波数範囲(または周波数帯域)が共振ユニット150_1〜150_Nのための予想される共振周波数と一致/合致するように意図されるように、共振ユニット150_1〜150_Nのための予想される/事前に定義される共振周波数を、知っている。1つの共振ユニット150から次の共振ユニット150へのジョセフソン接合は、それらの製造時に、制御不可能な変動を組み込んでいるため、共振ユニット150_1〜150_Nのための共振周波数f1〜fNの厳密な値は、前もって知られていることはなく、ある範囲内にあると予想される。たとえば、ジョセフソン接合は、同じように設計され同じように製造されたときであっても、それらのジョセフソン接合のそれぞれの臨界電流において、およそ数パーセントの変動を有し得る。いくつかの場合には、臨界電流におけるこの変動は、約2%から約5%であり得る(5GHzの共振器では、これは、約125MHzの最大変動に対応する)。
【0024】
伝送線120_1〜120_Nは無線周波数信号を導く(および、共振ユニット150_1〜150_Nからの戻ってくる応答を同様に受け取る)ためのチャネルとして示されているが、このチャネルは、当業者によって理解されるように、3次元のマイクロ波空洞であり得る。また、それぞれの伝送線120は、読み出しが伝送されているときには、2つの伝送線を表し得る。
【0025】
説明の目的のために共振ユニット150_1を考察するが、以下の議論は、類推により、共振ユニット150_2〜150_Nのそれぞれに適用されるということを理解されたい。無線周波数信号の周波数(すなわち、チャレンジ)が共振ユニット150_1の共振周波数に等しい場合には、これは、共振ユニット150_1から伝送線120(または伝送線120_1)を通過して反射または送信される無線周波数エネルギーの位相または振幅において明らかとなる。たとえば、共振ユニット150_1が共振周波数f1を有すると仮定すると、応答/帰還の無線周波数のエネルギー/信号は、周波数f1における振幅のピークと、周波数f1に中心を有する180度の位相シフトとを有する。共振ユニット・アレイ104の完全な識別(指紋)を読み出すためには、プローブ信号132は、すべての共振ユニット150_1〜150_Nに存在し得る共振周波数の範囲(たとえば、3ギガヘルツ(GHz)から10GHzまで)に及ぶ無線周波数信号の周波数を掃引しなければならず、プローブ信号は、掃引された無線周波数信号を共振ユニット150_1〜150_Nのすべてに導かなければならない。したがって、すべての共振ユニット150_1〜150_Nが、それらのそれぞれの共振周波数f1〜fNにおける振幅のピークとそれぞれの共振周波数f1〜fNに中心を有する180度の位相シフトとを有する無線周波数エネルギー/信号を、戻すことになる。指紋は、共振ユニット150_1〜150_Nからの応答として受け取られている周波数空間におけるスペクトル線の完全なパターンから構成される。周波数スペクトルにおけるピークが説明の目的のために用いられているが、測定はピークの測定に限定されないことに留意されたい。いくつかの実装形態では、ピークのそれぞれが、識別が下落(dip)の測定に基づくように、測定および他のシステム・パラメータに応じた下落であり得る。
【0026】
先に共振ユニット150_1〜150_Nに送信された無線周波数信号への応答として、測定機器106は、チップ102の安全な識別として、一連の共振周波数f1〜fNを受信し得る。この一連の共振周波数f1〜fNは、メモリ112に記憶されるかまたは別個に記憶されるかあるいはその両方であり得る。共振ユニット・アレイ104の共振ユニット150_1〜150_Nからの応答(帰還信号)を受け取った後で、測定機器106は、共振ユニット150_1〜150_Nから受け取った応答に対する周波数空間における周波数のスペクトル(ピーク)を決定/識別するために、スペクトル解析を行うように構成される。ある実装形態では、測定機器106は、共振ユニット150_1〜150_Nのそれぞれに対する共振周波数f1〜fNを周波数f1〜fNにおけるピークとして識別するように構成される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、チップ102は、共振ユニット150_1〜150_Nが機能していることをテストするため、製造の後で、極低温に冷却され、その共振周波数が測定される。このスペクトルは、基準として記憶される。チップ102は、次に、量子計算演算に用いられる(すなわち、冷却の間に)。チップの識別が要求されるときには、スペクトルが測定され、基準スペクトルと比較される。
【0028】
一連の共振周波数f1〜fNが、測定機器106からコンピュータ・システム108へ、通信媒体122を経由して、伝送され得る。通信媒体122は、有線(イーサネット(R)・ケーブル、USBケーブル、光ファイバ・ケーブル、同軸ケーブル、ツイステッド・ペア・ケーブルなど)またはワイヤレス・ネットワーク接続であり得る。コンピュータ・システム108は、1つまたは複数のプロセッサを有する。同様に、測定機器106は、1つまたは複数のプロセッサを有し得る。コンピュータ・システム108は、測定機器106から受け取られた一連の共振周波数f1〜fNを、チップ識別データベース110において同様のチップ102のために先に記憶されていた様々なチップ識別番号と比較するように構成されている。コンピュータ・システム108は、受け取られた一連の共振周波数f1〜fNが、先に記憶されていた一連の共振周波数と統計的マージンの範囲内で一致するかどうかを判断するように構成されている。統計的マージンは、測定された共振周波数f1〜fNのそれぞれを考慮に入れた事前に定義された量であり得る。ある実例では、統計的マージンは、1%であり得る。これは、測定機器106から受け取られた一連の共振周波数f1〜fNとチップ識別データベース110における識別番号との間に1%の差があっても、依然として一致として認識されることを意味する。チップ102は、複数個のチップを表すことがあり得る。チップ識別データベース110は、複数のチップ102に対するチップ識別番号を含むことがあり得る。それぞれのチップ102は、当業者によって理解されるように、量子計算を行うため、超伝導量子コンピュータのネットワークにおいて用いられることがあり得る。すべてのチップ102に対するそれぞれのチップ識別番号は、読み出され、チップ識別データベース110に先に記憶される。それぞれのチップ102は、チップ102の製造業者によって、読み出され記憶されていることがあり得る。また、それぞれのチップ102は、それらのチップを超伝導量子コンピュータのネットワークにおいて用いてきたチップ102のオペレータ(エンド・ユーザ)によって読み出され記憶されていることがあり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、コンピュータ・システム108が、
図3および
図4に図解されているように、測定機器106と一体化されていることがあり得る。
図3は、共振ユニット・アレイ104の共振ユニット150_1〜150_Nが本発明の実施形態により伝送線120を通じて集合的にアドレス指定される識別システム100の概略を示している。換言すると、無線周波数信号(チャレンジ)が、測定機器106から、同じ伝送線上を、共振ユニット150_1〜150_Nのすべてに送られ得、応答は、同じ伝送線上を戻され、受け取られる。
図4は、共振ユニット・アレイ104の共振ユニット150_1〜150_Nが本発明の実施形態により伝送線120_1〜120_Nを通じて個別的にアドレス指定される識別システム100の概略を示している。
図3および
図4では、測定機器106は、受け取られた一連の共振周波数f1〜fNをコンピュータ・システム108に送信する必要がない。実際、測定機器の機能を有するコンピュータ・システム108(または、その逆)は、受け取られた一連の共振周波数f1〜fNを、チップ識別データベース110に記憶されているチップ識別番号と直ちに比較し、そのチップ102をチップXYZとして識別することができる。
【0030】
次に、共振ユニット150_1〜150_Nに関するさらなる詳細に注目するが、それぞれの共振ユニットは、それ自体のジョセフソン接合を有する。共振ユニット150_1〜150_Nは、典型的な超伝導量子ビットに類似するのであるが、それほどまでには厳重でない要件を有する。典型的な超伝導量子ビットは、長いコヒーレンス時間T1およびT2を有するように、そして、その状態情報を得るために読み出され得るように、製造されなければならない。典型的な超伝導量子ビットでは、量子ビット状態は、ハイ|1>、ロー|0>、またはハイおよびローの両方の重ね合わせであり得る。さらに、量子計算に用いられる典型的な超伝導量子ビット(超伝導量子ビット回路130など)は、直接読み出されることが不可能である。その代わりに、読み出し共振器が、典型的な超伝導量子ビットの量子情報(すなわち、状態)が読み出し共振器を読み出すことから逆に受け取られるマイクロ波信号に基づいて推測され得るように、読み出されることが要求される。典型的な超伝導量子ビットは、それぞれの典型的な超伝導量子ビットをその読み出し共振器から分離するために、結合コンデンサを必要とする。また、典型的な超伝導量子ビットは、典型的な超伝導量子ビットを相互に分離するために、結合コンデンサを必要とする。しかし、共振ユニット150_1〜150_Nは、状態情報を維持することを必要とせず、したがって、長い時間T1およびT2を維持するための要件によって制限されない。また、共振ユニット150_1〜150_Nは、共振ユニット150_1〜150_Nをそれらのそれぞれの共振周波数f1〜fNでそれぞれ共振させることによって、直接に読み出され得る。さらには、共振ユニット150_1〜150_Nは、相互に分離される、または、結合コンデンサによって読み出し共振器から分離される必要がない。結果的に、共振ユニット150_1〜150_Nは、状態情報が必要とされないために状態情報を失うという問題なく、そして、相互の間で干渉の問題もなく、密接にパッケージングされることが可能である。
【0031】
典型的な超伝導量子ビットと同じように、共振ユニット150_1〜150_Nは、ジョセフソン接合を用いる。ジョセフソン接合は、たとえば薄い絶縁バリアによって結合された2つの超伝導体によって形成される。ジョセフソン接合は、超伝導電極の間の、Al
2O
3などの絶縁トンネル・バリアによって、製造され得る。そのようなジョセフソン接合のためには、バリアを流れ得る最大の超電流は、臨界電流I
Cである。ジョセフソン接合の製造は、トンネル・バリアにおける制御不可能で予測不可能な変動を含み、このために、どの2つ以上の同一に製造されたジョセフソン接合は同一でない臨界電流を有することになる。したがって、これらのジョセフソン接合のジョセフソン・インダクタンスは、それらのジョセフソン接合が同じ設計を有し同じに製造されたとしても、異なる。ジョセフソン・インダクタンスのこの変動(すなわち、差)は、どの他の同一に設計され製造されたチップもチップ102と厳密に同じ一意的な一連の共振周波数f1〜fNを有することがないように、チップ102のために一意的な一連の共振周波数f1〜fN(共振ユニット150_1〜150_Nの)を提供するのに用いられる。
【0032】
図5、
図6、
図7、
図8、
図9、
図10、
図11、および
図12は、本発明の実施形態による様々な共振ユニットの概略的な構成を示す。共振ユニット150_1〜150_Nは、
図5〜
図12における例のいずれとしても、実装され得る。
図5〜
図12では、それぞれの例示的な共振ユニット150は、ジョセフソン接合(JJ)、インダクタL、およびコンデンサCを含む。インダクタLとコンデンサCは、インダクタンスおよびキャパシタンスの特定の量をそれぞれ示すように設計された回路素子を含み得るか、または、そうでない場合には、当業者によって理解されるように、たとえばオンチップの伝送線の場合のために、回路の金属パターンおよび配線の内部に存在するインダクタンスおよびキャパシタンスの量を有し得る。ジョセフソン接合と共に、共振ユニット150は、チップ102上にコンデンサと他のインダクタとを組み合わせることによって、形成され得る。共振のライン幅は、フィードラインまたは他の読み出し回路へのその結合によって決定され、周波数領域においてそれぞれの共振を明確に区別するのに十分に小さく、作られなければならない。
【0033】
ジョセフソン接合は、インダクタとして作用し、したがって、全体のインダクタンスに寄与する。周波数のアドレス指定可能性(すなわち、共振ユニット150_1〜150_Nのための異なる周波数)は、ある共振ユニット150と別の共振ユニットとについて、インダクタンスの量を変更またはキャパシタンスの量を変更あるいはその両方によって、強制され得る。たとえば、多かれ少なかれ、直列のインダクタンスまたは並列のインダクタンスあるいはその両方が、ある共振ユニット150と次の共振ユニット150との間で、調節(すなわち、増加または減少)され得る。さらに、多かれ少なかれ、直列のキャパシタンスまたは並列のキャパシタンスあるいはその両方が、ある共振ユニット150と次の共振ユニット150との間で、調節され得る。それぞれの共振ユニット150において、より大きなまたはより小さなジョセフソン・インダクタンスが、調節(すなわち、増加または減少)され得る。それぞれの共振ユニット150の共振周波数は、固有なプロセス変動可能性(intrinsic process variability)の影響を受け、2つの同一のチップ102について、非常に高い確率で、異なり得る。本明細書で記載されているように、共振ユニット150_1〜150_Nからのこの変動可能性は、ジョセフソン接合における文字通りの欠陥のためであり、それにより、それぞれのチップ102が一意的となる。インダクタLのインダクタンスとコンデンサCのキャパシタンスとが同じままであり、(
図5〜
図12における任意の構成のような)構成が、それぞれの共振ユニット150_1〜150_Nについて同じであっても、ジョセフソン接合は、依然として、同じになるように設計され製造されるときでも、異なる構造を有することになる。この異なる構成は、ジョセフソン接合のトンネル・バリアの製造におけるものであり、それによって、一意的で安全な識別番号が提供される。
【0034】
図5の構成を一例として、
図13および
図14は、本発明の実施形態による例示的な共振ユニット・アレイ104を図解している。
図13は、共振ユニット150_1〜150_Nが集合的にアドレス指定される共振ユニット・アレイ104の概略を示している。
図13では、無線周波数信号が、共振ユニット・アレイ104のうちの1つの伝送線120に入力される。共振ユニット・アレイ104は、反射方向に(in reflection)動作する場合には、ただ1つの伝送線120を有し得る。共振ユニット・アレイ104は、伝送方向に(in transmission)動作する場合には、第2の伝送線120を有し得、それが、破線を用いて示されている。破線は、測定機器106に戻すように応答を伝送する。
【0035】
図14は、共振ユニット150_1〜150_Nが個別的にアドレス指定される共振ユニット・アレイ104の概略を示している。
図14では、無線周波数信号が、共振ユニット・アレイ104の伝送線120_1〜120_Nのそれぞれに入力される。共振ユニット・アレイ104は、反射方向に動作する場合には、ただ1組の伝送線120_1〜120_Nを有し得る。共振ユニット・アレイ104は、伝送方向に動作する場合には、第2の組の伝送線120_1〜120_Nを有し得、それが、破線を用いて示されている。破線は、測定機器106に戻すように応答を伝送する。
【0036】
図13および
図14は、共振ユニット150_1〜150_Nが、ジョセフソン接合602_1〜602_N、コンデンサ(C)604_1〜604_N、およびインダクタ(L)606_1〜606_Nを含むことを示している。
図13および
図14において、共振ユニットの構成の選択は単なる一例であるが、それぞれが少なくとも1つのジョセフソン接合を含まなければならない。共振ユニット150の選択(および共振ユニット150の個数)は、単なる一例である。
図13では、伝送線120が、結合コンデンサ(CC)608_1〜608_Nによって共振ユニット150_1〜150_Nに容量的に結合されることがあり得る。いくつかの実装形態では、結合インダクタが、結合コンデンサの代わりに用いられることがあり得る。他の実装形態では、結合コンデンサ(CC)608_1〜608_Nが削除されることがあり得る。
図13および
図14では、コンデンサ604_1〜604_Nのキャパシタンスは、C1=C2=C3...=CNとなるように、この例では同一であり、インダクタ606_1〜606_Nのインダクタンスは、L1>L2>L3...>LNとなるように同じではなく、これにより、f1<f2<f3...fNである共振周波数f1、f2、f3、...fNが生じる。ジョセフソン接合は、公称としては同一であるが、(製造の間の不可避な)固有のプロセス変動を有しており、これにより、それぞれの共振周波数が、2つのチップが同じものとして設計され同一に製造される場合であっても、あるチップ102と別のチップ102との間では若干異なることになる。本明細書において記載されているように、本発明の実施形態により、それぞれがそれ自体の一意的なチップ識別を有するように設計された複数のチップ102が存在する。したがって、チップ102の識別は、f1<f2<f3...fNであるシーケンスf1、f2、f3、...fNとして、記録され得る。たとえば128個の共振ユニット150(すなわち、N=128)など、十分に大きな個数の共振ユニット150が実装される場合には、共振のいくつかが反復的な測定の間で揺らぎが生じる(たとえば、数MHz)または時間経過に伴って揺らぎが生じるあるいはその両方である場合であっても、共振の間の分離(すなわち、f1からf2までなど周波数の間の分離)が個々のものに対する変動の典型的なウィンドウよりも大きい限り、それぞれのチップ102は、そのシーケンスによって一意的に識別されることが可能である。本発明の例示的な実施形態では、共振の間の分離(すなわち、f1、f2、f3、...fNの間の分離)は、約100MHzであり得るのに対し、他方では、極低温まで冷却されたまま維持される共振器の典型的な揺らぎは、約50kHz未満であり、2つの異なる時点で極低温まで冷却される共振器の典型的な揺らぎは、約5MHz未満である。チップ102はPUF構成であるから、(チップ102の識別としての)このシーケンスは、チップ102の中に決してプログラムされない。この方法は、このタイプのチップ102を偽造することを、より困難にするのであるが、その理由は、同じジョセフソン接合レイアウトを用いてそのシーケンスを厳密にコピーすることがほぼ不可能である(または、多くのリソースを要求する)からである。ジョセフソン・インダクタンスを、より多くの面積を犠牲にするが、通常のインダクタで代替することが可能ではあるが、これは、チップの検査の際に容易に発見可能である。これは、ジョセフソン接合はそのサイズと比較すると大量のインダクタンスを有しており、すべてのジョセフソン接合を通常のインダクタで代替しようとすると、その結果、チップ102と比べて巨大なチップとなってしまうからである。周波数とインダクタンスとは逆数関係にある、ということに留意されたい。より詳しくは、周波数は、インダクタンスに対し、平方根の逆数という関係を有する。
【0037】
図1〜
図14に示されている共振ユニット・アレイ104は例示のためのものであることを理解されたい。1つまたは複数の実施形態が、ジョセフソン接合602_1〜602_Nを含む複数の共振ユニット150_1〜150_Nを有する回路(すなわち、チップ102)またはシステム100あるいはその両方を含み得、そこで、共振ユニット150_1〜150_Nは、一連のアナログ共振周波数署名を読み出すために読み出し機構(測定機器106など)に結合されていることにより、チップ102の一意的でランダムな識別を提供するということに留意されたい。この回路は、ハンガ型の伝送線またはマイクロ波空洞であり得る。いくつかの実装形態では、個別的にアドレス指定される共振ユニットは、(
図2、
図4、
図14に示されているように)個々のパターニングされた読み出しを用いて作成され得る。チップ102上に個別的にアドレス指定される共振ユニットを有するのは、より多くの面積を消費するが、これにより、ジョセフソン接合が(インダクタLおよびコンデンサCと共に)共振ユニット・アレイ104において相互に同一に(すなわち、同一の周波数帯域を用いて)作られることが可能になり、その理由は、ジョセフソン接合は、それらの個々の共振ユニット150_1〜150_Nにおけるそれらのそれぞれの位置によってアドレス指定されるからである。
【0038】
他の実装形態では、共振ユニット・アレイ104において、(それぞれの共振ユニット150_1〜150_Nにおける)ジョセフソン接合が、ある共振ユニットと次の共振ユニットとの間で若干異なるように作られることがあり得る。たとえば、(それぞれの共振ユニット150_1〜150_Nにおける)ジョセフソン接合602_1〜602_Nは、予測可能なアナログ周波数範囲によってそれぞれのビットを識別するために、異なるサイズで作られる、異なる臨界電流I
Cで作られる、異なる容量負荷で(すなわち、コンデンサC1604_1〜CN604_Nに対する値が異なるように)作られる、または、異なる誘導負荷で(すなわち、インダクタL1606_1〜LN606_Nに対する値が異なるように)作られる、あるいは、その組合せとして作られる、ことがあり得る。すなわち、f1<f2<f3<...fN、またはその逆であり得る。それぞれのビットは、測定された共振周波数f1が共振ユニット150_1に対するビットであり、測定された共振周波数f2が共振ユニット150_2に対するビットであり、さらには、測定された共振周波数fNが共振ユニット150_Nに対するビットであるような、共振ユニット150_1〜150_Nの共振周波数である。チップ102は、複数のチップを表すことがあり得る。チップ102は、128ビットを有し得、それによって128個の共振ユニット150を有し、したがって、測定される128の共振周波数が存在する。ある実装形態において、共振ユニット・アレイ104は、128個の共振ユニット150が集合的にアドレス指定され測定されるときには、チップ102上のより少ない空間を用い得、その理由は、反射方向の読み出しには1つの伝送線120が必要とされるか、または、伝送方向の読み出しには2つの伝送線120が必要とされるからである。それほど多くの共振ユニット150(たとえば、128ビット、64ビット、32ビットなど)が密接にパッケージングされていることは、既に記載したようにコヒーレンスが動作には影響しないため、チップ102にとって問題ではない。
【0039】
模造品に対する安全性は、(プログラミングの代わりに)チップを識別するために、(ジョセフソン接合の製造における)ランダムなプロセスの変動可能性を通じて実現され、それにより、チップ102が、物理的複製困難関数という概念に含まれることになる。物理的複製困難関数は、揺らぎに対する補正を行うために十分なビットを要求するのであるが、32ビット(すなわち、32個の共振ユニット150)、64ビット、128ビットなどを用いることが、共振ユニット150_1〜150_Nの一連の共振周波数f1〜fNの読み出しにおいて揺らぎに対する補正を行うためのビットを提供する。それぞれのビットは、読み出し方法(反射に対する伝送、3次元のマイクロ波空洞の使用など)と加えられた負荷とを考慮に入れた後では、別のチップ102上の同じビットのものとは所与の信頼性をもって区別されるアナログ周波数を有する。すなわち、同じ個数の共振ユニット150_1〜150_Nを有し、ジョセフソン接合602_1〜602_Nに対する同じ値/サイズと、コンデンサC1604_1〜CN604_Nに対する同じ値と、インダクタL1606_1〜LN606_Nに対する同じ値とを用いて、同じように製造されたチップ102が2つ(またはそれより多く)存在することがあり得る。これらの2つ(または、それより多く)のチップ102は同一であるように設計されているが、あるチップ102と次のチップ102との間には、共振ユニット150_1〜150_Nのジョセフソン接合602_1〜602_Nにおいて、違い(すなわち、変動可能性)が存在する。この変動可能性が、その識別を形成するそれぞれのチップ102の上の一連のアナログ周波数の一意性を説明するのである。そのような識別の一意性は、時間経過後または反復的な読み出し後におけるそれぞれの周波数(すなわち、それぞれの共振周波数f1〜fN)の揺らぎの説明の後であっても、パターンが一意的である限りチップ102が認識される統計的パターン認識に依存する。
【0040】
時間経過と共にまたは反復的な読み出しの後で、チップ102を読み出す際の揺らぎを例証するために、
図15は、本発明の実施形態によるチップ102の認証の一例を示している。
図15は、この図面を曖昧にすることのないように、単に、システム100の簡略化された図を示している。
図15は、
図1〜
図14で論じられたすべての要素を含んでいる、ということを理解されたい。
図15では、チップ102の安全な識別が読み出された、ということが仮定されている。いったん識別が読み出されると、測定された識別は、チップ識別データベース110を参照してチェックされ得る。共振ユニット150の個数、プロセスの変動可能性(周波数の標準偏差)および動作の間の揺らぎ(反復可能性)が与えられた場合、チップ割り当ての確実性は、この種のチップ識別の間の衝突(ビットが同一の周波数を有すること)の確率に左右される。以下では、少数の例示的なシナリオが、提供される。第1のシナリオでは、同じチップ102の識別のシーケンシャルな読み出しの反復可能性に応じて、いくつかのビットが、そのアナログ周波数に、時には0.1%を超える揺らぎを生じさせ得るが、これは、いくつかの実装形態では、5MHzである。これらの実装形態では、ビット数が128の場合には、ビット数のいずれかの95%程度の認証閾値が、すなわち(全体で128ビットのうちの)122ビットが、データベース110に記憶されている既存の識別と一致する限り、認証は、99.9%正確(製造された1,000個のチップのうちの999個について正確)であり得る。99.9%という精度は、一例として提供されているのであって、プロセスの変動可能性や動作間での揺らぎなど、システムの実際の物理的特性に左右される。第2のシナリオでは、たとえば50MHzから75MHzへの上昇など、プロセスの変動可能性の結果として周波数の標準偏差が上昇する場合には、100MHzの差となるように設計された2つの異なるビットの周波数の間に重複が生じる確率は、上昇する。このシナリオの場合には、データベース110に記憶されている同じ識別とパターンが95%程度まで一致する少なくとも2つの異なるチップ102が存在し得、認証の正味の精度は、99.9%から、たとえば90%に低下することになる。この同じ第2のシナリオでは、99.9%の精度は、ビットの97%程度の認証閾値すなわち124ビットがデータベース110に記憶されている既存の識別と一致して、2つの異なるチップ102が結果的に明確に一致する識別を生じる場合にだけ、回復され得る。
【0041】
チップ102が、データベース110における異なるチップ102として(不正確に)認証される場合には、これは、フォールス・ポジティブ(false positive)認証と称される。さらなる第3のシナリオでは、各ビットの周波数の動作の間の揺らぎが0.1%から1%に上昇する、または、いくつかの実装形態では5MHzから50MHzに上昇する場合には、それぞれの読み出しビットの周波数がデータベース110に記憶されているものと一致する確率は、低下する。この第3のシナリオの場合、反復的な読み出しの際に、データベース110に記憶されているいずれかの識別と95%未満のパターン一致を表示する、先にデータベース110に登録されているチップ102が存在し得、認証の正味の精度は、99.9%から、たとえば95%に低下することになる。この同じ第3のシナリオにおいて、99.9%の精度は、認証閾値が下げられ、その結果として、データベース110に記憶されている既存の識別と一致するために、ビットの93%すなわち(全体の128ビットのうちの)119ビット程度が必要とされ得る場合に限って、回復され得、このチップ102は、その場合には、結果的に、データベース110における既存の識別との一致を生じる。チップ102が認証されない場合には、そのチップが先にデータベース110に登録されていたとしても、これは、フォールス・ネガティブ(false negative)認証と称される。
【0042】
認証閾値が、フォールス・ネガティブな認証を回避するのに必要なほど低く、フォールス・ポジティブな認証を回避するのに必要なほど高い場合に、正確な認証のための(バランスとしての)ウィンドウが存在する、ということを理解されたい。いくつかの実装形態では、フォールス・ネガティブな認証は、95%の認証閾値を用いることで回避することが可能であり、フォールス・ポジティブな認証は、90%の認証閾値を用いることで回避することが可能であり、(1,000個のチップのうちの999個が正しく識別される)99.9%という認証精度を提供するためには、93%の中間的な任意の認証閾値を、選ぶことが可能である。精度は、さらに、どれだけ多くのチップが製造されるのか(すなわち、1,000個なのか10,000個なのか)、そして、どれだけ多くのビット数が記憶されているのか(チップ上の空間をより多く要するという対価を伴うが、ビット数が多ければ多いほど、それだけますます、それぞれのチップの識別の一意性が高まる)に、左右され得る。128ビットは、最大で、2
128個のチップ(これは、3の後に38個のゼロが続く個数を超えるチップの個数である)を識別することが可能である。さらに、フォールス・ネガティブな識別は、測定ノイズの場合にそれぞれの周波数を正確に測定する確率を改善するために複数回の反復的な測定を行うことによって、減少させることが可能である。
【0043】
図15に戻ると、読み出しは信頼性マージン(confidence margin)の範囲内で統計的に一意的であるから、識別は、ID1(すなわち、チップXYZ)として認識される。信頼性マージンは、1%の差または99%の信頼性インターバルであり得る。チップ102から読み出された識別は、測定された一連の識別4.23
3GHz、4.31
3GHz、4.43
5...GHzを有し、コンピュータ・データベース110は、記憶された識別ID1(すなわちXYZ)を4.23
4GHz、4.31
2GHz、4.43
7...GHzとして有しているが、コンピュータ・システム108は、測定された一連の識別(4.23
3GHz、4.31
3GHz、4.43
5GHz)と記憶されているチップの一連の識別ID1(すなわちXYZ)(4.23
4GHz、4.31
2GHz、4.43
7...GHz)とは統計的に同一であると認識するように構成されている。下線の引かれた桁は異なっているが、コンピュータ・システム108は、読み出しが統計的に同一であるから、チップ102を、識別ID1を有するチップ(すなわち、チップXYZ)として認識するように構成されている。
【0044】
時間経過と共にまたは反復的な読み出しの後で、チップ102を読み出す際の揺らぎをさらに例証するために、
図19は、本発明の実施形態によるチップ102の認証の一例を示している。
図19は、この図面を曖昧にすることのないように、単に、システム100の簡略化された図を示している。
図19は、
図1〜
図14で論じられたすべての要素を含んでいる、ということを理解されたい。
図19では、チップ102の安全な識別が読み出された、ということが仮定されている。いったん識別が読み出されると、測定された識別は、チップ識別データベース110を参照してチェックされ得る。この例は、128ビットが読み出されたということを表し、これは、測定された一連の識別として、周波数f1、f2、...、f128が存在することを意味する。読み出されたのは128ビットであるが、この例は、説明の目的で、ビット1(すなわち、周波数f1)として任意に選択された単一のビットに着目する。この場合に、データベース110における先に記憶されていたチップの識別ID1のビット2〜128に対する周波数f2〜f128(記憶されているシーケンス)は、測定されたシーケンスにおける読み出されたチップ102の周波数f2〜f128と一致し得る。しかし、測定されたシーケンスのビット1に対する周波数f1は、先に記憶されていたシーケンスのビット1に対する周波数f1と一致しない。データベース110におけるチップの識別ID1(チップID1)に対しては、ビット1に対して記憶されている周波数f1は、4.56
7GHzである。しかし、同じビット1の読み出された周波数f1は、4.56
9GHzである。コンピュータ・システム108は、5MHz未満(<)のマージン(この実装形態では、周波数の+/−0.1%)であるために、ビット1の認識を(一致として)確認するように構成されている。比較の後で、測定された周波数f1=4.56
9GHz(ビット1)と先に記憶されていた周波数f1=4.56
7GHz(記憶されていたビット1)との差が(事前に定義された)5MHzのマージンの範囲内であり、したがって、コンピュータ・システム108は、チップ102の測定された一連の識別(f1=4.569、f2、f3、...、f128GHz)とチップ識別ID1の先に記憶されていた一連の識別(f1=4.567、f2、f3、...、f128GHz)とが一致すると判断する。
【0045】
図20は、本発明の実施形態によるチップ102の認証の一例を示している。
図20のシナリオは、同じビット1の読み出された周波数f1が4.575GHzであること以外は、
図19と同一である。コンピュータ・システム108は、測定された周波数f1=4.5
75GHz(ビット1)と先に記憶されていた周波数f1=4.5
67GHz(記憶されていたビット1)との間の差が5MHzのマージン(この実装形態における周波数の+/−0.1%)よりも大きい(>)ために、読み出されたビット1を測定されたビット1と一致するとは認識しないように構成されている。コンピュータ・システム108は、測定されたビット1と先に記憶されていたチップの識別1に対する記憶されていたビット1との間に一致が存在しないと判断する。
【0046】
時間経過と共にまたは反復的な読み出しの後で、チップ102を読み出す際の揺らぎをさらに例証するため、
図21は、本発明の実施形態によるチップ102の認証の一例を示している。
図22は、本発明の実施形態によるチップ102の認証の一例を示している。これらの例では、データベース110は、チップID42のビット1、2、3、4、...、128に対し、4.567GHz、4.654GHz、4.759GHz、4.847GHz、...、f128として、先に記憶されていた周波数を有する。
【0047】
図21では、チップ102の同じビット1、2、3、4、...、128の読み出された周波数が、4.575GHz、4.655GHz、4.756GHz、4.850GHz、...、f128として、(測定機器106を経由して)測定される。コンピュータ・システム108は、ビット1以外のすべてが<5MHzというマージン(+/−0.1%)を満たしており、認証閾値が125ビットに設定されているので、このチップ102を、データベースにおけるチップ識別42として認証するように構成されている。
【0048】
図22では、チップ102の同じビット1、2、3、4、...、128の読み出された周波数が、4.575GHz、4.665GHz、4.745GHz、4.835GHz、...、f128として、(測定機器106を経由して)測定される。コンピュータ・システム108は、4ビットが<5MHzというマージン(+/−0.1%)を満たしておらず、認証閾値が125ビットに設定されている(しかし、124ビットだけが認識されている)ので、このチップ102を、チップ識別ID42として認証しないように構成されている。このチップ102は、しかし、データベース110の内部のすべてのチップIDがサーチされた後で、異なるチップとして、認証され得る。
【0049】
図22における考察として、これは、ID42を有するチップが認証されなかったと述べることによるフォールス・ネガティブの一例であり得るが、その理由は、それは先に登録されていたものの、そのビット1〜4は記憶されていた値からの揺らぎが大きすぎ、認証閾値がより低い124ビットに設定されていたならば、正しく認証されていただろうからである。ある実装形態では、閾値を、測定されたチップ102がチップ識別ID42として正しく識別されるように、124ビットに設定することが可能である。
【0050】
さらなる考察として、フォールス・ポジティブの一例は、下記の通りである。記憶されたID99を有するチップは、ビット1〜4以外は、記憶されているID42と共通の124ビットを有するが、この場合に、ID99のビット1は、ID42のビット1と近接するが、5MHzよりも大きく離れている。ID99のビット1の読み出された周波数の値の揺らぎのために、その周波数は、5MHz未満の範囲(+/−1%)まで、ID42のビット1に近づく。ID99を有するチップは、すると、ID42を有するチップのために記憶されているIDと共通の125ビットを有することになり、認証閾値に合格する。そうすると、ID99を有するチップは、ID42として間違って認証される可能性があるが、認証閾値がより高く126ビットに設定されている場合であれば、正しく認証され得る。そのような場合には、認証閾値は、コンピュータ・システム108によって、(チップID42とチップID99に関して)より高く126ビットに設定されることがあり得る。
【0051】
図16は、本発明の実施形態によりチップを形成する方法のフローチャート900を示している。ブロック902では、ジョセフソン接合602をそれぞれが含む共振ユニット150_1〜150_Nが形成され、これらの共振ユニットは、その差がジョセフソン接合602における変動に基づく共振周波数f1〜fNを有する。ブロック904では、伝送媒体(たとえば、伝送線120またはマイクロ波空洞あるいはその両方)が、共振ユニット150_1〜150_Nに結合され、伝送媒体は、一連の共振周波数f1〜fNを、チップ102の識別として出力するように構成されている。
【0052】
共振ユニット150_1〜150_Nのそれぞれは、共振周波数のうちの個々の共振周波数を有する(たとえば、共振ユニット150_1は、共振周波数f1を有する)。ジョセフソン接合602における変動は、これらに限定されないが、リソグラフィの際のライン・エッジの粗さ、面積の一様性、トンネル・バリアの厚さの一様性、超伝導金属のグレイン・サイズ、超伝導金属の厚さの一様性、または、ジョセフソン接合におけるランダムな変化、あるいはこれらの組合せを含む、制御不可能な製造におけるランダムネスの結果である。共振ユニット150_1〜150_Nのそれぞれは、共振周波数のうちの個々の共振周波数によって一意的に識別されるように構成されている(たとえば、共振ユニット150_2は、その共振周波数f2によって識別される)。共振ユニット150_1〜150_Nは、超伝導量子ビットである。
【0053】
共振ユニット150_1〜150_Nは、無線周波数信号を受け取ることによって、(測定機器106を経由して)読み出されるように構成されている。無線周波数を用いた読み出しは、一連の共振周波数f1〜fNを、チップ102の識別として出力するように構成されている。伝送媒体は、1つまたは複数の伝送線120とマイクロ波空洞(たとえば、3次元マイクロ波空洞)とから選択される。
【0054】
共振ユニット150_1〜150_Nは、容量素子(たとえば、コンデンサC604)と誘導素子(たとえば、インダクタL606)とを含む。共振ユニット150_1〜150_Nは、共振周波数を順序付けるように、異なるように設計されることがあり得る。たとえば、共振ユニット150_1〜150_Nは、共振ユニット150_1のf1が共振ユニット150_2のf2よりも低く、共振ユニット150_2のf2が共振ユニット150_3のf3よりも低く、共振ユニット150_3のf3が共振ユニット150_4のf4よりも低く、などのように、設計されることがあり得る。
【0055】
共振ユニット150_1〜150_Nのそれぞれにおけるジョセフソン接合602は、同一に設計されており、一連の共振周波数は、物理的複製困難関数(PUF)を構築する。
【0056】
図17は、本発明の実施形態によってチップ102を識別する方法のフローチャート1000を示している。ブロック1002では、コンピュータ・システム108(または測定機器106あるいはその両方)が、一連の共振周波数を、チップ102の識別として受け取るように構成されており、共振周波数における差は、チップ102上のジョセフソン接合602における変動に基づく。ブロック1004では、コンピュータ・システム108(または測定機器106あるいはその両方)が、チップ102から出力された一連の共振周波数f1〜fNを、事前に定義されたマージンの範囲内で、チップ102の(チップ識別データベース110に)記憶されている識別一致するものとして識別するように構成されている。
【0057】
図18は、本発明の実施形態によってチップ102の識別を生じさせる方法のフローチャート1100を示している。ブロック1102では、コンピュータ・システム108(または測定機器106あるいはその両方)が、チップ102に、その共振ユニット150_1〜150_Nから一連の共振周波数を提供させるように構成されており、共振周波数における差は、共振ユニットにおける分散的非線形素子における変動に基づく。コンピュータ・システム108は、測定機器106に、ネットワークにおける任意の他の超伝導チップと共に、チップ102から、一連の共振周波数を読み出させることができる。ジョセフソン接合は、1つの分散的非線形素子である。
【0058】
ブロック1104では、コンピュータ・システム108が、(チップ識別データベース110において)先に記憶されていた一連の共振周波数が、事前に定義されたマージンの範囲内で、チップ102から測定されたばかりの一連の共振周波数と一致すると判断するように構成されている。コンピュータ・システム108は、チップ102から測定されたばかりの一連の共振周波数と先に記憶されていたすべての一連の共振周波数/識別とを比較するように構成されているが、データベース110(および、チップ102に接続されたネットワーク)には、それら自身の(異なる)一連の共振周波数を有する数百または数千の他のチップ102が存在し得る。
【0059】
ブロック1106では、コンピュータ・システム108は、事前に定義されたマージンの範囲内での一致に応答して、異なる一連の共振周波数を有する(たとえば、データベース110における)異なるチップ102からの一連の共振周波数f1〜fNを有するチップ102を識別するように構成されている。
【0060】
一致に応答して、測定機器106(またはコンピュータ・システム108あるいはその両方)は、異なる識別を有する(データベース110における)異なるチップからの現在の識別を有するチップ102を認証するように構成されている。
【0061】
超伝導チップ120がどのように用いられ得るかに関しては、多くのシナリオが存在し、他のチップ102の中での特定のチップ102の認証は、様々なプロセスを含み得る。第1に、チップの製造の後で、多くの場合には製造業者のサイトで行われるのであるが、チップの識別が、(オペレータまたは自動化されたプロセスによって)極低温で読み出され、チップ識別データベース110に記憶される。このプロセスは、典型的には、登録として知られている。チップ102がユーザの施設において現場で用いられた後で、チップの識別が読み出され、製造業者に通信によって戻される。次に、製造業者が、通信されてきたチップの識別を求めて、チップ識別データベース110においてサーチを行い、認証を提供するために、この識別と既存の登録されている識別との間で、統計的な一致を行う。認証を要求するときには、ユーザは、製造業者のチップ識別データベース110の中にそれが存在することを確認することによって、チップ102が真正であって偽造ではないかどうかを確認することを試み得る。認証を要求するときには、ユーザは、製造業者による調停を用いて、第三者のサーバとの安全な通信を開始しようと試みることがあり得るが、製造業者は、ユーザのチップの識別を信頼できるものとして認証し、そのチップ識別データベース110においてチップの識別をサーチしてそれを認証する際に、第三者のサーバにアクセスする許可を、ユーザに与えることができる。認証を要求する際には、ユーザは、既存のチップ102のネットワークの全体に作業負荷をいかに配分するかを決定し、利用可能な量子プロセッサを見つけることが可能である。安全な認証を用いて超伝導量子ビット・チップ102を利用するには多くの方法が存在する、ということを理解されたい。
【0062】
回路102、104、130の回路素子は、超伝導材料で作られ得る。それぞれの共振器および伝送/フィード/プローブ信号線は、超伝導材料で作られ得る。(約10〜100ミリケルビン(mK)または約4Kなどの低温における)超伝導材料の例は、ニオブ、アルミニウム、タンタルなどを含む。たとえば、ジョセフソン接合は、超伝導材料で作られるが、そのトンネル接合は、2つの超伝導電極を分離する酸化物などの薄いトンネル・バリアまたは弱結合(weak link)で作られ得る。コンデンサは、ギャップまたは誘電材料によって分離された超伝導材料で作られ得る。様々な素子を接続する伝送線(すなわち、ワイヤ)は、超伝送材料で作られる。
【0063】
本明細書では、本発明の様々な実施形態が、関係する図面を参照して説明される。本発明の範囲から逸脱することなく、代替的な実施形態を考案することも可能である。以下の説明および図面では、要素の間での様々な接続と位置関係(たとえば、上方、下方、隣接など)とが明記されているが、向きが変更された場合であっても、記載された機能が維持されるときには、本明細書に記載された位置関係の多くが向きとは独立である、ということを、当業者であれば、認識するであろう。これらの接続もしくは位置関係またはその両方は、そうではないと特定されない場合には、直接的または間接的であり得るのであって、本発明は、この点に関して制限的であることは意図されていない。したがって、エンティティの結合は、直接的結合または間接的結合のどちらも指し得るのであって、エンティティ間の位置関係は、直接的関係または間接的関係のどちらでもあり得る。間接的な位置関係の一例として、本明細書において、層「B」の上に層「A」を形成することを言及する場合に、層「A」と層「B」との関連する特性と機能とが中間層によって実質的に変更されない限りは、層「A」と層「B」との間に1つまたは複数の中間層(たとえば、層「C」)が存在する状況も含む。
【0064】
以下の定義と略語とが、特許請求の範囲と明細書との解釈に用いられる。本明細書で用いられる「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「包含する(contains)」もしくは「包含している(containing)」という用語、またはそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含関係に及ぶことが意図されている。たとえば、要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されることはなく、明示的にリスト化されていない他の要素、または、そのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、もしくは装置に内在する他の要素を含むことがあり得る。
【0065】
さらに、本明細書では、「例示的」という用語は、「例、実例または例証として機能する」ことを意味するように用いられる。「例示的」であるとして本明細書に記載のあるどの実施形態または設計は、他の実施形態または設計との比較で、必ずしも、好適であるまたは優れていると解釈されるべきではない。「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」という用語は、1よりも大きなまたは1と等しい任意の整数すなわち1、2、3、4などを含むものと理解される。「複数の」という用語は、2よりも大きいまたは2に等しい任意の整数すなわち2、3、4、5などを含むものと理解される。「接続」という用語は、間接的「接続」および直接的「接続」を含むことがあり得る。
【0066】
本明細書における「一実施形態」、「ある実施形態」、「例示的な実施形態」などの参照は、説明されている実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得るということを示すのであるが、どの実施形態も、特定の特徴、構造、または特性を含むことがあり得、または、含まない場合もあり得る。さらに、そのような表現が、必ずしも、同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性がある実施形態との関係で説明されるときには、明示的に述べられているかどうかとは関係なく、他の実施形態との関係におけるそのような特徴、構造、または特性にも影響するということは、当業者の有する知識の範囲内であるということが前提とされている。
【0067】
本明細書における説明のためであるが、「上側」、「下側」、「右側」、「左側」、「垂直方向」、「水平方向」、「頂部」、「底部」という用語、およびこれらの派生語は、図面において方向付けられているように、説明されている構造および方法に関するものとする。「上に横たわっている」、「頂上にある」、「上にある」、「上に配置されている」または「頂上に配置されている」という用語は、第1の構造などの第1の要素が、第2の構造などの第2の要素の上に存在することを意味しており、その場合、界面構造などの介在要素が、第1の要素と第2の要素との間に存在し得る。「直接的接触」という用語は、第1の構造などの第1の要素と第2の構造などの第2の要素とが、これら2つの要素の界面において、いかなる中間導電性、絶縁性または半導体層が存在することなく、接続されていることを意味する。
【0068】
たとえば「第2の要素に対して選択的な第1の要素」などにおける「に対して選択的」という句は、第1の要素がエッチングされ得ること、そして、第2の要素がエッチ停止(etch stop)として作用し得ることを意味する。
【0069】
「約(about)」、「実質的に(substantially)」、「近似的に(approximately)」という用語およびそれらの変形は、本出願がなされた時点で利用可能な機器に基づき、特定の量の測定に付随する誤差の程度を含むことが意図されている。たとえば、「約」は、与えられた値の±8%または5%または2%の範囲を含み得る。
【0070】
本明細書において既に記載されたように、簡潔にするという目的のために、半導体デバイスおよび集積回路(IC)の製造に関係する従来型の技術については、本明細書では、説明される場合があり得、または、説明されない場合があり得る。しかし、背景として、本発明の1つまたは複数の実施形態を実現する際に用いられ得る半導体デバイスの製造プロセスに関するより一般的な説明が、次に、提供される。本発明の1つまたは複数の実施形態を実現するのに用いられる特定の製造上の操作が、個々に知られていることはあり得るが、本発明の操作または結果的に生じる構造あるいはその両方に関して説明されている組合せは、独自のものである。このように、本発明による半導体デバイスの製造と関連して説明されている操作の独自の組合せは、半導体(たとえば、シリコン)基板の上で実行される個別的には知られている多様な物理的および化学的プロセスを用いるのであるが、そのいくつかについて、以下の段落において、説明する。
【0071】
一般に、ICの中にパッケージングされるマイクロチップを形成するのに用いられる様々なプロセスは、4つの一般的なカテゴリ、すなわち、膜の堆積、除去/エッチング、半導体ドーピングおよびパターニング/リソグラフィに含まれる。堆積(deposition)とは、材料をウエハの上に、成長させ、コーティングし、またはそれ以外の態様で移動させる任意のプロセスである。利用可能な技術としては、数ある中で、物理的蒸着(PVD)、化学的気相成長(CVD)、電気化学的堆積(ECD)、分子線エピタキシ(MBE)、および、より最近では、原子層堆積(ALD)を含む。除去/エッチングとは、材料をウエハから除去する任意のプロセスである。例としては、エッチ・プロセス(ウェットまたはドライのいずれか)、および化学的機械的平坦化(CMP)、その他を含む。導体(たとえば、ポリシリコン、アルミニウム、銅など)と絶縁体(たとえば、様々な形態の二酸化シリコン、窒化シリコンなど)との膜が、トランジスタとそれらの構成要素とを接続するために、および、それらを分離させるために、用いられる。これらの様々な構成要素の構造を作成することによって、現代のマイクロエレクトロニクス・デバイスの複雑な回路を形成するために、数百万のトランジスタを構築し、相互にワイヤ接続することが可能になる。半導体リソグラフィとは、半導体基板の上に三次元的なレリーフ・イメージまたはパターンを形成し、その後で、そのパターンを基板に移動させることである。半導体リソグラフィでは、パターンは、フォトレジストと称される光感知性のポリマによって形成される。トランジスタと回路の数百万個のトランジスタを接続する多くの配線とを構成する複雑な構造を構築するため、リソグラフィとエッチ・パターン転移ステップとが、複数回、反復される。ウエハ上に印刷されつつあるそれぞれのパターンは、先に形成されたパターンとの位置合わせがなされ、導体、絶縁体および選択的にドーピングがなされた領域が、最終的なデバイスを形成するために、ゆっくりと構築される。本明細書で説明されたオンチップの超伝導回路は、半導体製造技術を、半導体基板の上に超伝導金属膜において必要とされるパターンの形成に適応させることによって、作成される。
【0072】
図面におけるフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態による製造または動作方法あるいはその両方の可能な実装形態を例証している。その方法の様々な機能/動作は、フローチャートでは、ブロックによって、表されている。いくつかの別の実装形態では、ブロックに記載されている機能は、図面に記載されている順序とは異なる順序で生じ得る。たとえば、連続する2つのブロックが、実際には、実質的に同時に実行されることがあり得、または、それらのブロックが、時には、関係する機能に応じて、逆の順序で実行されることもあり得る。
【0073】
本発明の様々な実施形態の説明が、例証の目的のために提示されてきたが、網羅的であること、または、開示されている実施形態に限定されることは、意図されていない。説明されている実施形態の範囲から逸脱することなく、多くの変更および変形が、当業者には明らかであろう。本明細書で用いられている用語は、市場で見出される技術よりも優れた実施形態の原理、実践的な応用、もしくは技術的改善を最良に説明するために、または、当業者である他の者が、本明細書に説明されている実施形態を理解することを可能にするために、選択されたものである。