(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6924283
(24)【登録日】2021年8月3日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】アンテナ装置及びこのアンテナ装置を含むデバイス
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/10 20060101AFI20210812BHJP
H01Q 5/335 20150101ALI20210812BHJP
H01Q 21/30 20060101ALI20210812BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
H01Q13/10
H01Q5/335
H01Q21/30
H01Q1/24 Z
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-567397(P2019-567397)
(86)(22)【出願日】2018年2月27日
(65)【公表番号】特表2020-508627(P2020-508627A)
(43)【公表日】2020年3月19日
(86)【国際出願番号】EP2018054758
(87)【国際公開番号】WO2018154132
(87)【国際公開日】20180830
【審査請求日】2019年8月27日
(31)【優先権主張番号】17158217.4
(32)【優先日】2017年2月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519312072
【氏名又は名称】プロアント アクチボラゲット
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ルーツフォーシュ トマス
【審査官】
赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0106652(KR,A)
【文献】
特表2009−525010(JP,A)
【文献】
特表2016−509424(JP,A)
【文献】
国際公開第00/069021(WO,A1)
【文献】
特開2004−336328(JP,A)
【文献】
中国実用新案第205985359(CN,U)
【文献】
国際公開第2012/160947(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0062815(US,A1)
【文献】
特開2012−085262(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0029068(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0210675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/10
H01Q 1/24
H01Q 5/335
H01Q 21/30
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ装置(1)であって、
使用にあたり接地面(3)として作用する金属処理された領域(3)を有するプリント基板(2)と、
接地面(3)の縁部における凹部(4)であって、互いに対向する第1の辺(13)及び第2の辺(14)、前記第1の辺(13)及び第2の辺(14)に接続されて、二つの点(6,7)で終端して前記凹部(4)の開口(8)を形成する前記凹部(4)の周縁(5)を形成する底辺(25)を有する前記凹部(4)と、
あいだに一塊の直列キャパシタ(12)を含む二つのポート(10,11)を有する第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク(9)であって、前記凹部(4)を橋渡し、前記前記凹部(4)の第1の辺(13)上で前記接地面(3)と電気的に接続された一方のポート(11)と、前記凹部(4)の第2の辺(14)において無線信号給電点(15)を与える他方のポート(10)とを有する第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク(9)と、
あいだに一塊の直列キャパシタ(19)を含む二つのポート(17,18)を有する第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク(16)であって、前記第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク(9)とは別に前記凹部(4)を橋渡し、一方のポート(17)は前記凹部の第1の辺(13)上で前記接地面(3)と電気的に接続され、他のポート(18)は前記凹部(4)の第2の辺(14)上で前記接地面(3)と電気的に接続された、第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク(16)と、
を備え、
前記アンテナ装置(1)は、無線波の送信及び/又は受信のための無線回路が前記無線信号給電点(15)に接続され共振周波数で無線波を受信し又は送信するときに、共振周波数でアンテナとして共振するよう構成され、
前記開口(8)から、前記接地面(3)の金属を横切ることなく開口(8)から最も遠くにある前記凹部(4)の前記周縁(5)上の点までの物理的な長さとして定義される、前記凹部(4)の電気的な長さは、アンテナ装置(1)の共振周波数の波長の10分の1(1/10)又はそれ以下であり、
前記第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク(9)と前記第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク(16)のあいだの物理的な距離は、前記アンテナ装置(1)の共振周波数の波長の1/12よりも小さく、前記凹部(4)の形状は三角形で、前記凹部(4)の開口(8)が三角形の一つの頂点にあたるアンテナ装置。
【請求項2】
前記凹部(4)は、前記底辺が前記凹部(4)の高さと同じか又はこれよりも長い形状を有し、ここで前記凹部の高さは前記底辺と前記開口(8)のあいだの最も短い経路の長さとして定義される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク(16)は、前記第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク(9)よりも、前記凹部(4)の開口(8)のより近くに配置されている、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
無線波の送信及び/又は受信のための無線回路が前記無線信号給電点(15)に接続され、さらに別の共振周波数で無線波を受信し又は送信するときに、さらに前記別の共振周波数でアンテナとして共振するよう構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク(16)のリアクタンスは、アンテナ装置の動作周波数において、100Ωより高い、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記無線信号給電点(15)に接続され無線波の送信及び/又は受信のための無線回路(20)を含み、前記無線回路(20)は少なくとも一つの共振周波数を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク(9)の直列キャパシタンスは0.1pFから0.8pFまでの範囲、好ましくは0.2pFから0.5pFまでの範囲であり、前記第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク(16)の直列キャパシタンスは0.05pFから0.6pFまでの範囲、好ましくは0.07pFから0.4pFまでの範囲であり、前記アンテナ装置(1)は2GHzから6GHzまでの範囲で動作するのに適合する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
約2.4GHzの共振周波数において、
前記第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク(9)の直列キャパシタンスは約0.3pFであり、
前記第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク(16)の直列キャパシタンスは約0.2pFであり、
前記凹部の高さは3.5mmであり、
底辺(25)の幅は8mmであり、
前記凹部の高さは、底辺と開口(8)のあいだの最も短い経路の長さとして定義される、請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
約2.4GHzの共振周波数及びさらに約5GHzの別の共振周波数において、
前記第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク(9)の直列キャパシタンスは0.2pFから0.4pFまでの範囲であり、
前記第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク(16)の直列キャパシタンスは約0.07pFであり、
前記凹部の高さは5.5mmであり、
底辺(25)の幅は10mmであり、
前記凹部の高さは、底辺(25)と開口(8)のあいだの最も短い経路の長さとして定義される、請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記プリント基板の方向に沿って前記プリント基板の中へと向かう前記凹部(4)の物理的な深さは、同じ方向の前記プリント基板(2)の深さの25%又はそれ以下である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク(9)の電線の少なくとも一部は蛇行している、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のアンテナ装置(1)を含むデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ装置に関連し、さらにこのアンテナ装置を含むデバイスに関連する。
【背景技術】
【0002】
長い年月をかけて、非常に多くの異なるアンテナ及びアンテナ装置が提案されてきた。一般に、このようなアンテナを改善する上で興味を持たれる特性のいくつかには、大きさ(寸法)、効率、コストが含まれる。
【0003】
EP2704252(A2)には、スロットを有する接地面(ground plane)があるアンテナ装置が記載されている。さらに、これはスロットの一方の側のグランドとスロットの他方の側の信号源とのあいだに接続されたスロットをわたって延びる給電要素(feeding element)を含む。またこの給電要素はキャパシタを含む。このキャパシタのあるキャパシタンス値、スロットの寸法及びスロット上での給電位置によって、デュアルバンド対応のアンテナが可能となる。
【0004】
US6424300B1には、プリント基板上のノッチアンテナが記載されおり、これは二つの側部及びこの二つの側部の各々とRF回路に電気的に接続されたRF信号フィードを有している。RF信号フィードは、ノッチの側部の各々と直接物理的に接触している。このアンテナは、選択された周波数帯の範囲内でアンテナとして共振するよう構成されている。一つの実施形態では、アンテナは異なる周波数帯で共振する二つのノッチを含んでいる。
【0005】
US2012/0280890には、容量給電タイプのアンテナが開示されており、これは複数の放射電極を含み、それぞれがグランド電極と接続された部分を有する。このアンテナはさらに、給電回路に接続された単一の給電用電極を含む。給電電極は放射電極の各々と対向し、これにより給電電極と放射電極の各々とのあいだに容量(capacitance)を生じさせる。複数の放射電極及び給電電極は、各放射電極が単一の給電電極によって、容量が生じる容量給電部分において容量的に給電されるように設けられる。
【0006】
前述のUS6424300B1は、それぞれのバンドに一つずつ二つのノッチをプリント基板に設けることによって、異なる二つのバンドでの動作を可能とする。しかしながら、プリント基板上の空間が限られる応用に対しては、第2のノッチに対して必要とされる余分の空間を収容するのは実現可能でないかもしれない。
【0007】
EP2704252(A2)は、ある前提条件によっては、シングルバンド及びデュアルバンドの動作を可能とする。しかしながら、このアンテナは長さが45〜47mmととても大きい。このためこのアンテナは、多くの用途での使用から排除されうる。
図1は、EP2704252(A2)における無線回路100を有するアンテナを概略的に示している。この文献によれば、接地面の寸法は約108mm×60mmである。スロットの長さは約45mmであり、幅は約0.6mmである。この構成で、そしてキャパシタが約0.5pFから1.5pFまでのキャパシタンスでは、アンテナ構造のアンテナ効率は、824MHzから960MHzまでの第1のバンドにおいて49.7%よりも大きく、1710MHzから2170MHzまでの第2のバンドにおいて35.3%よりも大きい。960MHzでの波長は約31cmであり、2170MHzでの波長は約14cmである。すなわち、このアンテナ構造は大体波長の7分の1(1/7)から3分の1(1/3)のあいだである。
【0008】
しかしながら、EP2704252(A2)のアンテナ構造は、より小さなアンテナには十分に適合しない。例えば、
図2において、
図1のアンテナをより小さいスロットで、かつ給電要素110をアンテナの上部へ移動させて再現している。
図2におけるスロットの寸法は深さ6mm、幅2mmで、アンテナは2.4GHzにインピーダンスマッチングされている。2.4GHzでは波長は約12.5cmである。よって、
図2のアンテナは約1/20波長の寸法を有する。
図2におけるアンテナの反射減衰量(return loss)を示した
図3から分かるように、性能は劣っている。多くの設計において、回路基板上のアンテナ装置は、他の部品のためのスペースを与えるために可能な限り小さくすることが必要不可欠である。
【0009】
US2012/0280890は、「チップアンテナ」の分類におけるアンテナの例であり、放射部品である「チップ」は少なくともアンテナ構造の部分を含んでいる。このようなチップは、自動化マシンでの簡単な取り付けにつながる。しかしながら、チップアンテナはコストが高い部品であり、有する性能も限られる。さらに、集積化のために取り付けられるPCBに対する特定のレイアウトが必要となる。小さい部品に対する今日の大勢として、最善の性能とバンド幅を得るために、アンテナを各々の製品に最適化することが重要である。このことは、取り付けられるPCBの特定のレイアウトが必要であることから、チップアンテナでは可能ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、先行技術における問題に対する解決及び軽減を提案することである。すなわち、主たる目的は、寸法を小さくでき、シングルバンド及びデュアルバンドの両方での動作を可能にし、同時に経済的な解決を与える、改善されたアンテナ装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、この問題は、請求項1の特徴を有するアンテナ装置によって解決される。
【0012】
この解決策は、本発明の凹部をわたってつなぐ追加のキャパシタンスを設けることによって上記の問題を軽減する。
【0013】
本発明のアンテナ装置は、良好なアンテナ特性を示しながら、従来技術における多くのものと比較して、空間についての必要性を実質的に節約することを可能にする。特に、アンテナ装置が基板の縁部に切り込まれる深さを小さく保つことができ、これにより本発明のアンテナ装置の回路基板の保存された空間を他の部品及び回路に使用することができる。
【0014】
凹部にわたってキャパシタを追加することは、高いバンドが短絡されると考えられ、したがってデュアルバンドアンテナはこの構成では可能ではない。しかしながら、キャパシタテンスの値が格別に低い場合は、この構成でデュアルモードアンテナが可能であり、これは驚くべきことである。また、同じ構成でキャパシタンス値を変えることで、シングルバンド構成も可能である。
【0015】
さらに、本発明のアンテナ装置は、デュアルバンドモードにおいて同調がより容易である。電気的にリアクタンス性のネットワーク同士のあいだの中空部分、及び、底辺に最も近い電気的にリアクタンス性のネットワークと底辺とのあいだの中空部分は、それぞれが一般的に複数のバンドのうちの一つにおいてだけ共鳴に寄与する。すなわち、第1の中空部分はほとんどが第1のバンドにおける共鳴に寄与し、第2の中空部分はほとんどが第2のバンドにおける共鳴に寄与する。これは、各バンドの特性を容易に調整できるので有益である。一つの中空部分だけの共鳴を調整するときは一つのバンドがほとんどの影響を受け、他方のバンドはほとんど影響を受けないままであり、その逆の場合も同じである。
【0016】
本発明はさらに、上記アンテナ装置の利点を有するアンテナ装置を備えたデバイスにも関連する。
【0017】
さらに有利な実施形態が、特許請求の範囲において開示される。
【0018】
コメントとして、逆Fアンテナ(Inverted F-antenna)、すなわちIFAと呼ばれる公知のアンテナ構造は、本発明と多少類似しているかもしれない。また、このIFAに対して、IFAの共振周波数を下げるのに用いられるキャパシタを含む頂部負荷キャパシタ(top load capacitor)と呼ばれる技術が存在する。この頂部負荷キャパシタは、アンテナの「ノッチ(notch)」を横切るようにノッチの開口の近くに配置され、本発明の一塊の直列キャパシタを含む第2の電気的にリアクタンス性のネットワークに類似しているように見えるかもしれない。しかしながら、これらは互いに大きく異なる。要は、IFAの頂部負荷キャパシタはアンテナの共振周波数の波長の約1/4の物理的寸法を有するアンテナ装置とともに使用されるのに対し、本発明の第2の電気的にリアクタンス性のネットワークのキャパシタは、波長の1/10又はそれ以下に対応するアンテナ装置とともに使用される。実際に、これらは大きく異なる特性をもたらす。
【0019】
IFAの頂部負荷キャパシタの一般的な使用では、アンテナの共振周波数を下げるためにこれらを高い電界を有するアンテナの部分に置く。これは、頂部負荷キャパシタが通常アンテナの給電部分から約1/4波長のところに置かれることを意味する。頂部負荷キャパシタが給電部分の近くに置かれると、その周波数制御特性が失われる。一方、本発明の第2の電気的にリアクタンス性のネットワークのキャパシタは、第1の電気的にリアクタンス性のネットワークからアンテナ装置の共振周波数の波長の1/12よりも小さい距離離れたところに置かれる。
【0020】
IFAに対しは、通常スロットのRF給電部分において、RF給電からグランドへの分路キャパシタ(shunt capacitor)を用いて容量性のマッチングが達成される。給電部分を操作して低い共振周波数を達成するためには、通常直列のインダクタンスが使用される。
【0021】
IFAはまた、良好な動作のためには接地面の中央からできるだけ遠くの位置に置く必要のある電気アンテナ構造の一種である。これはまた、接地面の深さと比較してかなり大きい深さを有する必要があり、典型的には接地面の深さの少なくもと50%の深さを有し、通常は先行文献EP2704252(A2)から明らかなように75%以上の深さを有する。このように、これは接地面を半分二つに切り、高い電界位置、すなわち接地面の側面で電界を生成する。
【0022】
本発明の小さい凹部すなわちノッチに対しては、それはノッチの寸法及び形状とともに主たる周波数制御部品である直列キャパシタを有する給電部分/直列のリアクタンス性のネットワーク9である。低いリアクタンス性の値(高いキャパシタの値)は、共振周波数を下げる。しかしながら、ノッチの寸法が小さいことにより、本発明のアンテナ装置は非常に低い放射抵抗、通常は50オームマッチングよりよりずっと小さい放射抵抗を有する。アンテナを50オームにマッチングさせるには、マッチングネットワークに対する自明の配置位置は、RF信号の給電部分である。小さいノッチに対しては、これには50オームのマッチングを達成するために分路キャパシタを追加することを含む。US6424300(B1)によれば、その値は1574MHzにおいて約8pFであり、これはグランドに対してたった12オームのインピーダンスとなる。これは、第2の高い周波数帯が必要とされるときに、デュアルバンド動作において望ましくないローパスフィルタをもたらす。
【0023】
これに対し、本発明によれば、ノッチにおける別々のキャパシタンス(給電部分/直列のリアクタンス性ネットワーク9とともに)が、ローパスフィルタリングの問題を驚くほど克服する。必要とされるキャパシタンスの値は非常に小さいが、小型ノッチアンテナに対して予想外に良好なインピーダンスマッチングをもたらす。また2.4GHzにおいて約0.2pFというこの非常に小さい値によって、デュアルバンド2.4GHz及び5GHzでの動作に対して周波数を遮断(filter-out)しない。このように小さいキャパシタンス値によって、2.4GHzにおいて約300オーム、5GHzにおいて約150オームというインピーダンスとなる。より大きなアンテナに対しては、このような小さい部品の値が有する影響は非常に限られたものである。ノッチの小さな寸法によって、小さいリアクタンス性の値に対して大きな効果を有すると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
ここから、本発明を例示する実施形態について、添付図面によって説明する。ここで、
【
図2】
図1に示した従来技術の小型化を試みたアンテナ装置を示す。
【
図5】
図4のデュアルバンドでの反射減衰量を示す。
【
図7】本発明の他の幾何学的配置のさらに小型化した実施形態を示す。
【
図9】リアクタンス性ネットワークの他の置き換えを示す。
【
図11】デュアルバンド動作の本発明の実施形態を示す。
【
図14】本発明による変形された幾何学的配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図4は、本発明による好例のアンテナ装置1を示す。アンテナ装置1は、使用において接地面となる金属処理された領域3を有するプリント回路基板2を含む。接地面3の縁部に、凹部4が形成されている。凹部4には第1の辺13及び第2の辺14が含まれ、これらは互いに対向している。凹部4にはさらに、第1の辺13及び第2の辺14に接続される底辺25が含まれ、第1の辺13及び第2の辺14は二つの点6、7で終端して凹部4の周縁5を形成する。
【0026】
アンテナ装置1はさらに、あいだに一塊の直列キャパシタ部品12を有する2つのボート10、11を有する電気的にリアクタンス性の第1のネットワーク9を含み、ここで、第1のリアクタンス性ネットワーク9は凹部4を橋渡しするとともに、凹部4の第1の辺13上で接地面3に電気的に接続される一方のポート11と、凹部4の第2の辺14において無線信号の給電ポイント15を与える他方のポート10を有する。本発明の第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク9は一般に、接地面に接続されたポート11を除いて、接地面3から電気的に分離されている。ただし、本発明のアンテナ装置の特性を有意に変えないリアクタンス性の値を有する何らかの部品によってグランドへの仮想的に電気的な接続を有することは可能である。
【0027】
さらに、アンテナ装置1は、あいだに一塊の直列キャパシタ部品19を有する2つのボート17、18を有する電気的にリアクタンス性の第2のネットワーク16を含む。この第2のリアクタンス性のネットワーク16は、第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク9とは別に凹部4を橋渡し、その一つのポート17は凹部4の第1の辺13上で接地面3に電気的に接続され、第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク16の他方のポート18は、凹部4の第2の辺14上で接地面3に電気的に接続されている。
【0028】
アンテナ装置1は、無線波の送信及び/又は受信のための無線回路が給電ポイント15に接続され、共振周波数で無線波を受信又は送信しているときに、アンテナとして共振周波数で共振するよう構成されている。
【0029】
開口8から、接地面3の金属を横切ることなく開口8から最も遠くにある凹部4の周縁5上の点までの物理的な長さとして定義される、凹部4の電気的な長さは、アンテナ装置1の共振周波数の波長の10分の1(1/10)又はそれ以下である。
【0030】
さらに、第1及び第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク9、16のあいだの物理的な距離は、アンテナ装置1の共振周波数の波長の12分の1(1/12)よりも小さい。一例として、この物理的な距離を
図4に見ることができ、ここでキャパシタ12を有するネットワーク9及びキャパシタ19を有するネットワーク16は共に図の水平方向に延びている。これらのあいだの物理的な距離は、単純にネットワーク9上のどこかから始まりネットワーク16上のどこかで終わる可能な最も短い線の長さである。(すなわち
図4では、ネットワーク9から始まりネットワーク9に垂直にネットワーク16に当たるまで延びる線である。)このアンテナ装置の特質は、これ頂点負荷を有するIFAアンテナから差別化する一つの点であり、ネットワーク9と給電16とのあいだの距離はIFAにおける可能な距離よりもずっと小さい。もちろんこれによって、与えられた周波数におけるアンテナ装置の設計を、IFAと比較してずっと小さくすることを可能にする。
【0031】
検討のために、
図4の実施形態は、高さ6mm、幅2mmを有するよう構成されている。さらにキャパシタ12は0.5pFに、キャパシタ19は0.2pFに設定された。この実施形態の性能の結果を、反射減衰量を例示する
図5において検討することができる。これからわかるように、共振は2.4GHzにおいて、そして6GHz付近で起こっている。散乱は大きいが、いくつかの応用においては十分であるかもしれない。
【0032】
さらなる検討のために、
図4の実施形態は、前段落のように高さ6mm、幅2mmを有するよう構成されているが、キャパシタ12は0.3pFに、キャパシタ19は0.6pFに設定された。この実施形態の性能の結果を、反射減衰量を例示する
図6において検討することができる。この図から分かるように、シングルバンドのアンテナは、凹部4はたった6mmの高さを有するが、2.4GHzにおいて非常に良い共振が達成されている。
【0033】
本発明のアンテナ装置1のさらなる実施形態では、凹部4は、底辺25が凹部4の高さと同じかそれより長い形状を有することができる。凹部の高さは、下底辺25と開口8とのあいだで最も短い経路の長さと定義される。このように構成された凹部4の比率では、高さが幅よりも長い凹部4と比較して、共振周波数の付近のバンド幅を広げることが可能であることが注目された。
【0034】
本発明のこれまでの任意の実施形態のアンテナ装置1の凹部4の形状のさらなる変形例は、凹部4の形状が三角形であって凹部4の開口8が三角形の一つの頂点にあたる三角形である。これを
図7で検討することができる。三角形とすると凹部4の高さはさらに低くなり、アンテナ装置の内部は非常に狭くなる。
図7のアンテナ装置の性能を、
図7の実施形態の反射減衰量を示した
図8に例示する。この実施形態では、
図7のアンテナ装置1の寸法は高さ3.5mm、底辺25の幅8mmで、共振周波数は2.4GHzだった。
図8からわかるように、
図4に示した前述の実施形態の高さ6mmに比べてかなり低い3.5mmであるが、共振周波数付近のバンド幅は実質的に同じである。
図6と
図8を比較してわかるように、
図4の設計の最適インピーダンスマッチングは
図7の設計のものよりわずかに良好である。しかしながら、
図7の設計は、
図4のアンテナ装置よりも高さを大幅に低くすることが可能でありながら、バンド幅とインピーダンスマッチングは概して
図4のそれらと同等である。
【0035】
図9は、電気的にリアクタンス性のネットワーク16の位置を変えたときに何が起こるかを例示するために、
図7の実施形態の変形例を示している。具体的には、
図9では、ネットワーク16を凹部4の底辺25に近づくよう移動させてある。
図7では、ネットワーク16は、ネットワーク9により近く凹部4のほぼ中央に位置している。
図9に示した実施形態の性能を、
図10に見ることができる。
図9のアンテナ装置の仕様は、ネットワーク16の位置が異なることを除いて
図7のものと同じである。
図10から分かるように、ネットワーク16の位置を変えることによって、
図7でのネットワークの配置と比較して、
図9のアンテナ装置の反射係数はわずかに悪い一方で、バンド幅は幾分良好になっている。したがって、幾分良好なバンド幅が必要な場合は、ネットワーク16をこのように移動させることができる。
【0036】
第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク16の配置を考慮すると、多くの余地があることが分かった。本発明のアンテナ装置1の第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク16は、例えば
図11に示すように、第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク9よりも開口部8の近くに配置することができる。したがって、従来技術のいくつかのアンテナ給電点における分路キャパシタと比較して、本発明のアンテナ装置の例えば共振周波数又はインピーダンスマッチングを微調整するときに、第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク16の柔軟な配置によってより多くの選択肢が可能となる。
【0037】
すでに述べたように、無線波を送信及び/又は受信する無線回路20が給電点15に接続され、さらなる共振周波数で無線波を受信し又は送信しているときに、本発明のこれまでに説明した任意の実施形態のアンテナ装置1は、さらなる共振周波数を有するアンテナとして共振するよう構成することができる。シングルハンドと比較して、本発明のアンテナ装置をデュアルバンドで動作させるには、ノッチの面積をわずかに大きくすること、例えば深さをより深くし及び幅をより広くすることが必要とされる。
【0038】
デュアルモードで作動する本発明のアンテナ装置の特に有利な構成は、アンテナ装置をデュアルバンド動作用に構成し(例えば凹部の面積を微調整することによって)、そして本発明の第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク16を、第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク9よりも凹部4の開口8により近く配置した場合であることが分かった。
図11における本発明のアンテナ装置のデュアルバンド構成の性能を、
図12で検討することができる。
図12は、
図11のアンテナ装置の凹部を高さ5.5mm、底辺25の幅を10mmという構成にしたときの反射減衰量を例示する。これから、この構成はデュアルバンド動作で有益であることが分かる。
【0039】
このようなデュアルバンドアンテナを設計する際に、2.4GHz帯においてはネットワーク9が最も共振周波数に影響し、5GHz帯においてはネットワーク16はが最も共振周波数に影響する。ネットワーク16は、2.4GHz帯のインピーダンスマッチングにも影響する。
図11の凹部4の二つのネットワークの間にある中空部分の領域、及び、ネットワーク9と底辺25の間の中空部分の領域も、共振周波数に影響する。ネットワーク9を下方に移動すると、デュアルバンド構成の下の方の周波数(この場合は2.4GHz)は高くなる。上の方の共振周波数(この場合は5GHz)は低下する。しかしながら、給電ネットワーク9の位置は大きく移動はできず、デュアルバンド構成が有利な特性を有する許容領域の範囲内に維持されなければならない。この許容領域は、凹部4/ノッチの具体的な形状に応じて、実験的に確立されなければならない。
【0040】
第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク16を有する本発明のアンテナ装置1を、インピーダンスマッチングのために給電部に分路キャパシタを用いるいくつかの従来技術と差別化する一つのことは、第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク16のリアクタンスを非常に高くできることである。本発明のすべての実施形態に対して、アンテナ装置1の作動周波数において測定したインピーダンスを100Ωよりも高くすることが可能である。これは、従来技術における給電点における分路キャパシタとは異なって、アンテナ装置の潜在的に上側のバンドを短絡させることなく本発明のアンテナ装置のインピーダンスマッチングを促進する。したがって、本発明のこの設計はまた、潜在的な上側のバンド/デュアルバンド設計を可能とする。
【0041】
本発明のアンテナ装置は、種々の方法で提供することができる。例えば、主基板に任意の無線回路を含ませることができ、あるいは独立した基板として提供することもできる。いずれの場合も、使用に際しては本発明のアンテナ装置1は、給電点15に接続された無線波の送信及び/又は受信のための無線回路20を含むことができる。このような無線回路20は、受信及び/又は送信がなされる少なくとも一つの共振周波数を有する。
【0042】
本発明のキャパシタンスに対する適切な値の例として、本発明のアンテナ装置1は第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク9の直列キャパシタンスは、0.1pFから0.8pFの間、好ましくは0.2pFから0.5pFのあいだの値を有することができる。第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク16の直列キャパシタンスは、0.05pFから0.6pFの間、好ましくは0.07pFから0.4pFのあいだの値とすることができる。これらのキャパシタンスの値及びこの文書の他の部分で説明されている凹部の適切な寸法によって、アンテナ装置1は、2GHzから6GHzのあいだの範囲で動作するのに適している。
【0043】
本発明のシングルバンドアンテナの具体的な実施形態のための具体的な値に言及することは価値がある。本発明のこのアンテナ装置1の第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク9の直列キャパシタンスは約0.3pF、第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク16の直列キャパシタンスは約0.2pFである。凹部の高さは3.5mmであり、底辺25の幅は8mmである。これにより共振周波数は2.4GHzとなる。凹部の高さは底辺と開口8とのあいだで最も短い経路の長さとして定義される。この実施形態は、前述の
図7に示されたものに実質的に対応する。
【0044】
デュアルバンド特性を有する本発明のアンテナ装置1の例として、第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク9の直列キャパシタンスは、0.2pFから0.4pFの範囲とすることができる。さらに、第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク16の直列キャパシタンスは、約0.07pFとすることができる。凹部の高さは5.5mm、底辺25の幅は10mmである。これにより共振周波数は約2.4GHzとさらに約5GHzである。前と同様に、凹部の高さは底辺25と開口8とのあいだで最も短い経路の長さとして定義される。この実施形態は、前述の
図11に示されたものに実質的に対応する。
【0045】
最も一般的に本発明のアンテナ装置を設計するために、この文書において説明されるある実施形態を出発点として用いることができ、それから例えば所望の周波数へと値が調整される。よって、特別のオリジナル設計が、ある共鳴周波数に対して7.8mmの高さを有しており、新たな設計の所望の周波数がオリジナル設計の半分だった場合、新たな設計の高さは、オリジナルの設計の2倍とすることができる。また、オリジナルの設計におけるキャパシタンスを、新たな設計では2倍とすることができる。この新たな設計は、新たな設計の第1近似として提供することができ、これをさらに微調整して所望の特性を達成することができる。
【0046】
従来技術における通常のアンテナのインピーダンスマッチングに関しては、通常のマッチングは、発生器の供給を設定し、その設定の特性をチェックし、そしてキャパシタンス性シャント等の部品を発生器へ接続してこれを所望のシステムインピーダンスとマッチングさせる。
【0047】
しかしながら、本発明におけるマッチングは、第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク16が直接給電点に接続されていないので、これとは異なる特別な方法で行われる。調整される変数には、例えば、凹部の寸法、凹部の幾何学的形状、第1及び第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク9、16のキャパシタンス、これらのネットワークの凹部における配置、そしてネットワーク9、16のあいだの相互の物理的距離が含まれる。この特別な方法は、本発明の驚くべき品質をさらに明らかなものにする。というのは、当業者はアンテナ設計をチューニングするときには従来からのインピーダンスマッチング作業を行うのが通常であり、本発明の設計を偶発的に見いだしたりはしないからである。
【0048】
これまでに述べた任意の実施形態のアンテナ装置1は、典型的にはいくつかの種類の装置において用いられる。例えば、自動車、携帯電話、タブレット、センサー、その他の無線接続が必要とされる装置、そしてアンテナの寸法を小さくしなければならない装置において用いられる。
【0049】
デュアルバンド動作における本発明の一つの利点は、本発明のアンテナ装置の電気的にリアクタンス性のネットワークのあいだの中空部分、例えば
図13に見られるような中空部分は、それぞれが実質的に単独で自身の周波数帯の特性に寄与する。例えば
図13において、アンテナ装置の5GHzのH場(H-field)は三角形のアンテナ装置の上側の中空部分から発生しており、2.4GHzのH場はほとんど下側の中空部分から発生していることが分かる。これは、バンドの一つの特性を変えるためには、中空部分の一つだけを変えなければならないことを意味する。逆に、周波数帯の一つの特性に影響を与えるために一つの中空部分を変えることは、他の周波数帯には影響を与えない。したがって、本発明のアンテナ装置をデュアルバンド構成に調整することはこの意味できわめて簡潔である。
【0050】
本発明のアンテナ装置の他の変形例も同様に可能である。例えば、
図14及び
図15は、凹部の幾何学形的状が長方形や三角形である必要はなく、他の幾何学的形状でもよいことを例示している。任意の幾何学的形状に対し、ネットワーク9、16のキャパシタンスの寸法は、アンテナ装置の所望の特性を達成するために調整されなければならない。
【0051】
本発明のアンテナ装置の他の変形例は、前述の二つに加えて第3の電気的にリアクタンス性のネットワークを含むことができる。この第3の電気的にリアクタンス性のネットワークは二つの部分を有し、これらのあいだに一塊の直列キャパシタ部品を含む。以前説明した第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク16と同様の方法で、第3の電気的にリアクタンス性のネットワークは第1及び第2の電気的にリアクタンス性のネットワークとは別に本発明の凹部を橋渡しすることができる。第3のネットワークの一つのポート22は、凹部の第1の側面上で接地面に電気的に接続され、第2のネットワークの他のポートは凹部の第2の側面上で接地面に電気的に接続される。こうして、本発明のアンテナ装置のさらに精細なチューニングが可能となる。
【0052】
本発明のアンテナ装置は磁気アンテナであることに注目すべきである。すなわち、このアンテナは高い磁界のある場所を「好み」、接地面/プリント基板の角部から離れた場所にあるときに最もよく動作する。好ましい位置は、接地面の最も長い側面の中央部である。
【0053】
本発明のアンテナ装置は、磁気タイプのアンテナなので、動作するためにプリント基板(PCB)に深く切れ込まれた凹部を必要としない。
【0054】
本発明のアンテナ装置に対して、プリント基板の方向に沿ったプリント基板の中への凹部4の物理的な深さは、良好な性能を保ちながらプリント基板の同じ方向に対して25%又はそれ以下とすることができる。PCBの内側の領域は他の回路及び部品にとって非常に貴重であることから、これは魅力的な特徴である。
【0055】
本発明は、他の通信規格及びここで述べた2.4GHz及び510GHz以外の周波数に適用可能である。本発明はGPS、GLONASS、その他の測位システムにも使用可能である。本発明はセルラー通信に使用可能である。本発明はISMバンドでのアンテナや他のシングルバンド又はデュアルバンドのシステムに使用可能である。
【0056】
図11のアンテナに戻ると、さらに別の理由によって興味深い。アンテナにおいて非常に重要な特性は、放射効率である。すなわち、アンテナの、測定された実世界の性能(例えばアンテナ実験室で測定された)である。
図16は、
図11のアンテナに対してこの性能、すなわち放射効率を示しており、このようなアンテナに対して驚くほど高いことが分かる。
【0057】
上述のように、
図11のアンテナは、5.5mmの高さ及び幅10mmの底辺25の凹部を有する。この寸法及び駆動周波数では、アンテナは小型アンテナと定義される。「小型アンテナの根本的な制約(Fundamental limitations of small antennas)」(Wheeler, H)(Proc.IRE, vol.35, no.12, pp.1479-1484, 1947)において、「小型アンテナ(small antenna)」は、λ/(2×π)よりも小さいものとして定義されている。この寸法又はそれ以下では、アンテナの性能は著しく影響を受ける。
【0058】
通常、電気的に小さいアンテナの効率は、普通サイズのアンテナと比較して非常に低い。高い効率を得るためには、より大きな物体、通常は銅の層を有する電子的なボードの上に置かなければならない。そして、電気的に小さい「アンテナ」は、電磁放射を発する電子ボードからの大きな寄与を得て、むしろ励起エレメントとして動作する。小型アンテナを適切に動作させるために、所望の周波数における共振特性と、良好な放射効率とともに必要とされる十分なバンド幅を有する必要がある。電気的に小さいアンテナを設計する際に、このことは大きな挑戦である。
【0059】
電気的に小さいアンテナは、容量性及び誘導性の素子、リアクタンス性のエレメントを有する共振回路として見ることができる。このアンテナ構造は、リアクタンス性のエレメントが正確なインピーダンス及びバンド幅を有する共振を生成するように実現する必要がある。塊とされた素子を、所望の性質を与える銅の層における構造と組み合わせるのが一般的である。アンテナの寸法を縮小すると、応用にとって十分なバンド幅及び放射効率を持たせることは難しい。
【0060】
図17は、本発明のさらに別の実施形態を例示する。第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク9の電線の少なくとも一部は蛇行した形状である。
図17では、ネットワーク9の全長さにわたって蛇行していることが見て取れる。
【0061】
図17に例として示した本発明のこの蛇行する特徴は、改善されたバンド幅という形で利点をもたらす。
図17の実施形態の反射減衰量を示す
図18において、
図11における蛇行した線のない対応するデバイス(対応する反射減衰量は
図12)のバンド幅と比較して、改善された約5〜6GHzのバンド幅を見ることができる。また、
図19から分かるように、この蛇行した線の実施形態に対応する放射効率は非常に高い。
【符号の説明】
【0062】
1:アンテナ装置
2:プリント基板
3:接地面
4:凹部
5:凹部の周縁
6:周縁の点
7:周縁野天
8:開口
9:第1の電気的にリアクタンス性のネットワーク
10:第1のリアクタンス性のネットワークのポート
11:第1のリアクタンス性のネットワークのポート
12:一塊のキャパシタ
13:凹部の第1の辺
14:凹部の第2の辺
15:無線周波数給電点
16:第2の電気的にリアクタンス性のネットワーク
17:第2の電気的にリアクタンス性のネットワークのポート
18:第2の電気的にリアクタンス性のネットワークのポート
19:一塊のキャパシタ
20:無線回路
21:第3の電気的にリアクタンス性のネットワーク
22:第2のリアクタンス性のネットワークのポート
23:第2のリアクタンス性のネットワークのポート
24:一塊のキャパシタ
25:凹部の底辺
100:無線回路
110:電気的にリアクタンス性のネットワーク