(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記使用済排水に対し濃縮処理により前記再生成分を濃縮した濃縮排水を用いて、前記弱酸性陽イオン交換樹脂の再生を行う請求項1から請求項3の何れか一項に記載の排水処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超純水製造システムが有する超純水製造装置は、例えば、
・原水中の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理部
・前処理水中のTOC成分やイオン成分を除去して一次純水を製造する一次純水製造部
・一次純水中の極微量の不純物を除去して超純水を製造する二次純水製造部
から主に構成されている。
【0006】
そして、超純水製造装置は、多くの場合は一次純水製造部において、逆浸透装置やナノ膜濾過装置等の脱塩処理装置を含んでいる。これらの脱塩処理装置の濃縮液は、例えばコスト削減や水資源の有効利用、排水処理工程の小規模化の観点から再利用されることが好ましい。
【0007】
しかし、この濃縮液を超純水製造工程に戻す場合には、例えば特許文献1に記載されているようなカチオン除去、特許文献2に記載されているような軟化処理や有機物除去など、先述の生成物の発生原因となりうる不純物の除去は高度に行われている必要がある。
【0008】
超純水製造装置の上流に設置された脱塩処理装置の濃縮水は、一般的に塩や有機物などの不純物濃度が高く、スケールの原因となる成分も析出限界濃度に近い濃度で含まれている。
【0009】
この濃縮水から高度に不純物を除去する場合、被処理水を、不純物が除去された処理済水と、更に不純物が濃縮された濃縮水と、に分ける装置、例えば逆浸透装置や電気脱イオン装置(EDI)が使用されることがある。このような逆浸透装置や電気脱イオン装置を使用した場合は、スケール発生を抑制するためには、装置の回収率(被処理水の量に対する処理済水の量の割合)を大きくとれない。
【0010】
また、後述するスケールインヒビターとも称される分散剤を被処理水に添加することも行われている。このスケールインヒビターは、不純物の結晶成長を抑制することで、析出限界濃度を向上させるための分散剤である。しかし、スケールインヒビターを被処理水に添加しても析出限界濃度を格段に向上させることは難しいため、先述の回収率の向上には限界がある。
【0011】
一方で、後述する理由により、超純水製造システムについて、酸やアルカリなどの化学薬品を用いないノンケミカルタイプ化も求められている。
【0012】
このように超純水製造システムについてノンケミカルタイプ化を図る観点からは、化学薬品、特に危険性の高い酸やアルカリを用いる必要がある処理装置や運転条件は、超純水製造システムに採用できない。例えば、再生に酸やアルカリの添加が必要となるイオン交換樹脂は、一般的に使用することができない。また、スケールインヒビターとも称される分散剤も、化学薬品であるため添加されないことが好ましい。
【0013】
以上の結果として、超純水製造システムの上流に設置された脱塩処理装置の濃縮水のうち、超純水製造工程に戻せるものは、あってもごく一部にとどまっている。こうした濃縮水の再利用率を高めることが、課題の一つである。
【0014】
一方で、超純水が用いられている設備、例えば半導体や液晶パネル、ディスプレイの製造工場では、大量の酸排水が発生する。酸排水の例としては、酸を使用した洗浄排水、エッチング排水、レジスト除去排水、CMP排水が挙げられる。
【0015】
これらの酸排水の一部は再利用されているが、その再利用率の向上も課題の一つとなっている。
【0016】
また、酸排水を外部に排出する場合は、それを中和する必要があり、そのためには必要に応じてアルカリを添加する必要がある。しかし、コスト面や、超純水製造工程と同様のノンケミカルタイプ化の需要の高まりから、その添加量の削減も課題の一つとなっている。
【0017】
このように、超純水を製造する工程で生じる排水に対し、より適切な処理を行うことが求められている。
【0018】
本願では、超純水を製造する工程で生じる排水に対し適切な処理を行うことが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第一態様の排水処理方法では、超純水製造工程における脱塩処理で生じた脱塩後排水の硬度成分を、弱酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換成分で置き換え、前記弱酸性陽イオン交換樹脂に吸着された前記硬度成分を、前記超純水製造工程で製造された超純水を使用した後の使用済排水に含まれる再生成分で置換して前記弱酸性陽イオン交換樹脂を再生する。
【0020】
この排水処理方法では、超純水製造工程における脱塩処理で生じた脱塩後排水の硬度成分を、弱酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換成分で置き換える。これにより、脱塩後排水中の硬度成分が少なくなる。
【0021】
弱酸性陽イオン交換樹脂には硬度成分が吸着されるが、この硬度成分を、超純水製造工程で製造された超純水を使用した後の使用済排水に含まれる再生成分で置換する。これにより、弱酸性陽イオン交換樹脂を再生する。このように、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生に、超純水製造工程で製造された超純水を使用した後の使用済排水を再生剤として用いるので、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生のために、酸を添加する必要がなくなる。また、使用済排水の処理に必要な中和用アルカリの添加量が、再生時の中和反応で消費された再生成分の分、少なくなる。
【0022】
第二態様では、第一態様において、前記硬度成分が、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの少なくとも一方を含む。
【0023】
したがって、脱塩後排水から、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを、弱酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換成分で置き換えることで、除去することが可能である。
【0024】
第三態様では、第一又は第二態様において、前記再生成分が、水素イオンを含む。
【0025】
使用済排水に含まれる水素イオンを有効に用いて、弱酸性陽イオン交換樹脂を再生できる。
【0026】
第四態様では、第一から第三のいずれか一つの態様において、前記使用済排水に対し濃縮処理により前記再生成分を濃縮した濃縮排水を用いて、前記弱酸性陽イオン交換樹脂の再生を行う。
【0027】
使用済排水を濃縮した濃縮排水を用いるので、弱酸性陽イオン交換樹脂を効率的に再生できると共に、再生に用いた後の排水の量を少なくできる。
【0028】
第五態様では、第四態様において、前記濃縮処理を使用済排水に対し複数回行って前記再生成分を濃縮する。
【0029】
濃縮処理を複数回行うことで、1回のみ行う場合と比較して、濃縮排水の再生成分の濃度を高めることができ、弱酸性陽イオン交換樹脂をより効果的に再生できると共に、再生に用いた後の排水の量をより少なくできる。
【0030】
第六態様では、第一から第五のいずれか一つの態様において、前記硬度成分が前記イオン交換成分で置き換えられた処理済水に対し気体成分を除去する脱気処理を行う。
【0031】
処理済水から気体成分を除去することで、この処理済水の再利用が容易になる。
【0032】
第七態様では、第一から第六のいずれか一つの態様において、前記硬度成分が前記イオン交換成分で置き換えられた処理済水に対し塩を除去する塩除去処理を行う。
【0033】
処理済水に対し塩除去処理を行って塩を除去することで、この処理済水の再利用が容易になると共に、再利用されない排水の量を少なくできる。
【0034】
第八態様では、第一から第七のいずれか一つの態様において、前記脱塩処理を、逆浸透膜に被処理水を浸透させることにより行う。
【0035】
逆浸透膜を用いることで、脱塩処理を確実に行って、被処理水を脱塩できる。
【0036】
第九態様の超純水製造方法では、原水に対し少なくとも脱塩処理を含む超純水製造工程により超純水を製造し、前記脱塩処理で生じた脱塩後排水の硬度成分を、弱酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換成分で置き換え、前記弱酸性陽イオン交換樹脂に吸着された前記硬度成分を、前記超純水製造工程で製造された超純水を使用した後の使用済排水に含まれる再生成分で置き換えて前記弱酸性陽イオン交換樹脂を再生し、前記使用済排水のうち前記弱酸性陽イオン交換樹脂の再生に用いなかった前記使用済排水を前記超純水製造工程に戻す。
【0037】
この超純水製造方法では、原水に対し超純水製造工程を行うことで、超純水を製造する。超純水製造工程は、少なくとも脱塩処理を含んでいるので、超純水製造工程では、脱塩後排水として、硬度成分を含む排水が生成される。
【0038】
脱塩後排水の硬度成分を、弱酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換成分で置き換える。これにより、脱塩後排水中の硬度成分が少なくなる。
【0039】
弱酸性陽イオン交換樹脂には硬度成分が吸着されるが、この硬度成分を、超純水製造工程で製造された超純水を使用した後の使用済排水に含まれる再生成分で置換する。これにより、弱酸性陽イオン交換樹脂を再生する。このように、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生に、超純水製造工程で製造された超純水を使用した後の使用済排水を再生剤として用いるので、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生のために、酸を添加する必要がなくなる。また、使用済排水の処理に必要な中和用アルカリの添加量が、再生時の中和反応で消費された再生成分の分、少なくなる。
【0040】
使用済排水のうち弱酸性陽イオン交換樹脂の再生に用いなかった使用済排水を超純水製造工程に戻すので、使用済排水を無駄にすることなく、有効に再利用して、超純水を製造できる。
【0041】
第十態様の排水処理装置では、超純水製造工程における脱塩処理で生じた脱塩後排水の硬度成分を、弱酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換成分で置き換える弱酸性陽イオン交換装置と、前記弱酸性陽イオン交換樹脂に吸着された前記硬度成分を、前記超純水製造工程で製造された超純水を使用した後の使用済排水に含まれる再生成分で置換して前記弱酸性陽イオン交換樹脂を再生するための再生水を供給する再生水供給装置と、を有する。
【0042】
この排水処理装置の弱酸性陽イオン交換装置では、超純水製造工程における脱塩処理で生じた脱塩後排水の硬度成分を、弱酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換成分で置き換える。これにより、脱塩後排水中の硬度成分が少なくなる。
【0043】
再生水供給装置では、弱酸性陽イオン交換樹脂に吸着された硬度成分を、超純水製造工程で製造された超純水を使用した後の使用済排水に含まれる再生成分で置換して弱酸性陽イオン交換樹脂を再生するための再生水を供給する。弱酸性陽イオン交換樹脂に吸着された硬度成分を再生水の再生成分で置換し、弱酸性陽イオン交換樹脂を再生する。このように、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生に、超純水製造工程で製造された超純水を使用した後の使用済排水を再生剤として用いるので、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生のために、酸を添加する必要がなくなる。また、使用済排水の処理に必要な中和用アルカリの添加量が、再生時の中和反応で消費された再生成分の分、少なくなる。
【発明の効果】
【0044】
本願では、超純水を製造する工程で生じる排水に対し適切な処理を行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照して第一実施形態の排水処理装置12と、この排水処理装置12を備えた超純水製造システム16について説明する。なお、この超純水製造システム16は、超純水を製造する過程において、化学薬品を用いない、いわゆるノンケミカルタイプの超純水製造システムである。超純水製造システム16は化学薬品を用いないため、化学薬品の使用に伴う不具合、たとえば化学薬品の残存による超純水システムへの影響や、超純水の品質変動等がないことや、化学薬品取り扱いにかかわる危険性の回避、排水処理への負荷削減さらに環境への負荷を下げる、等の効果を有する。
【0047】
この超純水製造システム16は、超純水を製造するための超純水製造装置14と、この超純水製造装置14で生じた排水を処理するための排水処理装置12と、使用済の超純水(酸排水)を回収してあらためて超純水製造に用いるための排水回収装置42と、を含む。
【0048】
超純水製造装置14は、原水タンク18、前処理部72、一次純水製造部74、二次純水製造部76及びユースポイント34を有している。前処理部72は、砂濾過装置20、活性炭装置22を有している。一次純水製造部74は、第一膜濾過装置24、第二膜濾過装置26、脱気装置28、脱イオン装置30を有している。二次純水製造部76は、ポリッシャー32を有している。
【0049】
原水タンク18には、この超純水製造装置14に供給される原水が収容される。原水としては、工業用水、水道水、地下水、河川水等を挙げることができる。この原水は、砂濾過装置20に供給される。
【0050】
砂濾過装置20は、供給された原水を、濾材としての濾過砂に通過させることで、原水から、微細な異物を除去する装置である。砂濾過装置20に加えて、たとえば凝集沈殿装置を用いて、異物を沈殿させて原水から除去してもよい。砂濾過装置20を通過した水は、被処理水として活性炭装置22に供給される。
【0051】
活性炭装置22は、容器内に粒子状の活性炭が充填された構成である。この活性炭には、多数の細孔が形成されており、供給された被処理水をこの活性炭に通過させることで、砂濾過装置20では除去できなかった異物、例えば後続装置の劣化原因になる塩素等を活性炭の細孔に捕捉し、被処理水から除去あるいは分解する。活性炭装置22によって異物が除去された被処理水は、第一膜濾過装置24に供給される。活性炭装置22によって除去された異物を多く含む水は、濾過装置36で濾過された後、排水利用設備38に送られる。
【0052】
濾過装置36としては、例えば精密濾過膜(Microfiltration Membrane:MF膜)装置や、砂濾過装置を好適に使用できる。
【0053】
第一膜濾過装置24は、一例として、逆浸透膜に被処理水を通過させることで、被処理水に対し脱塩処理を行う逆浸透装置である。この脱塩処理により、被処理水から硬度成分、すなわちカルシウムイオン(Ca
2+)、マグネシウムイオン(Mg
2+)、重炭酸イオン等が除去される。実際には、被処理水が、硬度成分が高濃度に濃縮された水(以下、「脱塩後排水」という)と、硬度成分が低濃度に希薄された水と、に分けられる。硬度成分が低濃度に希薄された水は、被処理水として、第二膜濾過装置26に供給される。これに対し、脱塩後排水は、後述するように、排水処理装置12に供給される。
【0054】
このように被処理水に対し脱塩処理を行う第一膜濾過装置24としては、例えばナノ膜濾過装置を使用してもよい。ただし、塩除去率や、他に被処理水に含まれている不純物の除去率を高くする観点からは、上記した逆浸透膜を用いた装置であることが好ましい。
【0055】
第二膜濾過装置26では、一例として、第一膜濾過装置24と同様に、逆浸透膜に被処理水を通過させることで、被処理水に対し再度の脱塩処理を行う。再度の脱塩処理により、被処理水から、硬度成分がさらに除去される。硬度成分がさらに低濃度に希薄された水は、被処理水として、脱気装置28に供給される。これに対し、第二膜濾過装置26における脱塩後排水は、第一膜濾過装置24による脱塩後排水と異なり、硬度成分は低いので、原水タンク18に戻され、あらためて超純水の製造に用いられる。
【0056】
脱気装置28は、たとえば、水分を透過させず気体は透過させる気体分離膜を用いた膜脱気装置である。この脱気装置28により、被処理水中の気体、特に炭酸ガスを除去できる。脱気装置28で処理された被処理水は、炭酸ガスの濃度が低い状態となり、被処理水として脱イオン装置30に供給される。
【0057】
脱イオン装置30は、被処理液に含まれる有機酸などの不純物イオンを除去する装置である。
【0058】
脱イオン装置30としては、たとえば、電気脱イオン装置(Electro Deionization:EDI)や混床式イオン交換樹脂装置(MB)を好適に使用できる。イオン交換樹脂の再生のために薬品を添加する必要がないという観点からは、電気脱イオン装置が好ましい。
【0059】
電気脱イオン装置は、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜で形成された空隙にイオン交換樹脂を充填して、脱塩室、濃縮室を形成し、直流電流を印加して被処理液中のイオンを除去するよう構成されている。電気脱イオン装置において、例えば、被処理水は脱塩室及び濃縮室に並行して供給され、脱塩室の陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の混合体が被処理液中の不純物イオンを吸着する。吸着された不純物イオンは直流電流の作用により濃縮室に移行される。濃縮室の濃縮水は、例えば原水タンク18に戻される。
【0060】
混床式イオン交換樹脂装置は、たとえば、円筒形の密閉容器に陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂が混合された混床式イオン交換樹脂が充填された構造である。脱イオン装置30によって不純物イオンを除去された水は、被処理水として、ポリッシャー32に供給される。
【0061】
一次純水製造部74は上記した構成に限定されない。例えば他に、被処理水中の有機物を酸化分解する目的で紫外線酸化装置を有していてもよい。また、被処理水中の気体として特に炭酸ガスを除去する上記構成の脱気装置28に代えて、あるいは併用して、被処理水中の気体として特に溶存酸素を除去できる構成の脱気装置を有していてもよい。例えば、被処理水の流れの上流側から順に、炭酸ガスを除去する脱気装置、紫外線照射装置、溶存酸素を除去する脱気装置、を有していてもよい。
【0062】
ポリッシャー32では、被処理水に対する最終的な処理、すなわち一次純水中の極微量の不純物の除去を行い、超純水を得る。ポリッシャー32は、例えば非再生型の混床式イオン交換樹脂装置である。
【0063】
なお、二次純水製造部76では、ポリッシャー32の前後に、熱交換器を設け、被処理水に対する熱交換(加熱又は冷却)による温度調整を行うようにしてもよい。熱交換器としては、例えば、プレート型の熱交換器を挙げることができるが、具体的構造は特に限定されない。
【0064】
また、二次純水製造部76では、ポリッシャー32の前後において、殺菌手段等により微生物の混入対策を行う等、必要に応じて各種の処理装置を設けて、所望の純度を有する超純水を得るようにすることもできる。こうした処理装置の例としては、紫外線酸化装置、過酸化水素除去装置、脱気装置、限外濾過膜装置(UF)が挙げられる。
【0065】
過酸化水素除去装置は、水中の過酸化水素を分解除去するための装置である。例えば、過酸化水素除去装置は、パラジウム(Pd)担持樹脂によって過酸化水素を分解除去するパラジウム担持樹脂装置や、塩基性陰イオン交換樹脂に亜硫酸基及び/又は亜硫酸水素基を有する還元性樹脂を充填した還元性樹脂装置などである。
【0066】
ポリッシャー32(超純水製造装置14)によって得られた超純水は、使用場所であるユースポイント34へ送出される。ユースポイント34からは、超純水を使用した後の水を使用済排水として排出する。この使用済排水は、水素イオン(H
+)を含む酸排水である。
【0067】
ユースポイント34としては、例えば半導体や液晶パネル、ディスプレイの製造工場が挙げられる。また、使用済排水としては、例えば酸を用いた洗浄排水やエッチング排水、レジスト除去排水、CMP排水が挙げられる。
【0068】
排水回収装置42は、使用済排水タンク44、活性炭装置46及び膜濾過装置48を有している。ユースポイント34から排出された使用済排水は、使用済排水タンク44に収容される。そして、たとえば、使用済排水タンク44が満杯状態になると、溢れた使用済排水が、活性炭装置46に送られる。
【0069】
活性炭装置46では、使用済排水に含まれる異物を、活性炭の細孔に捕捉することで除去する。活性炭装置46によって異物が除去された使用済排水は、膜濾過装置48に送られる。
【0070】
膜濾過装置48では、一例として、逆浸透膜に使用済排水を通過させることで、被処理水から、塩化物イオン(Cl
−)、硝酸イオン(NO
3−)、硫酸イオン(SO
42−)、フッ素イオン(F
−)及びリン酸イオン(PO
42−)等の酸成分が除去される。酸成分が低濃度とされた使用済排水は、原水タンク18に戻され、あらためて超純水の製造に用いられる。膜濾過装置48において酸成分が濃縮されて高濃度とされた使用済排水は、水素イオン濃度が高濃度となっており、排水処理装置12に送られる。
【0071】
排水処理装置12は、高硬度水タンク54、弱酸性陽イオン交換装置56、脱気装置58、塩除去装置60、濃縮用タンク62及び膜濾過装置64を有している。
【0072】
排水処理装置12の高硬度水タンク54には、第一膜濾過装置24で生じた脱塩後排水が収容される。この脱塩後排水は、高硬度水タンク54から、弱酸性陽イオン交換装置56に送られる。
【0073】
弱酸性陽イオン交換装置56は、弱酸性陽イオン交換樹脂を有している。この弱酸性陽イオン交換樹脂は、イオン交換成分として水素イオン(H
+)を有しており、粒子状あるいは繊維状とされて、容器に封入されている。弱酸性陽イオン交換樹脂に脱塩後排水が触れつつ弱酸性陽イオン交換装置56を通過すると、脱塩後排水の硬度成分であるカルシウムイオン及びマグネシウムイオンが、弱酸性陽イオン交換樹脂の水素イオンと置き換えられる。硬度成分が少なくなった脱塩後排水は、処理済水として、脱気装置58に送られる。
【0074】
脱気装置58は、処理済水から、炭酸ガス等の溶存ガスの除去を行う。脱気装置58としては、たとえば真空脱気装置、常圧脱気装置又は膜脱気装置を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0075】
コストを低くする観点からは、常圧脱気装置又は膜脱気装置が好ましく、常圧脱気装置が更に好ましい。また、管理を容易にする観点からは、膜脱気装置が好ましい。
【0076】
弱酸性陽イオン交換装置56の処理済水は、脱塩後排水に含まれていた重炭酸イオンとイオン交換成分として有されていた水素イオンの中和反応により生成された炭酸ガスが含まれた、酸性の液となっている。この処理済水に対して脱気処理を行うことで、酸を添加する必要なく、効率よく炭酸ガスを除去することができる。
【0077】
脱気装置58によって溶存ガスが除去された処理済水は、塩除去装置60に送られる。
【0078】
塩除去装置60では、処理済水から、残存している塩類の除去を行う。塩除去装置60としては、たとえば、電気透析膜で塩を除去する電気透析装置や、逆浸透膜により塩を除去する膜濾過装置を挙げることができる。塩除去装置60によって塩類が除去された処理済水は、排水利用設備38に送られて利用される。排水利用設備38としては、たとえば、スクラバー設備、クーリングタワー設備、及びトイレ浄化設備等の中水設備を挙げることができる。
【0079】
塩除去装置60によって塩類が除去された処理済水は、超純水製造システム16に供給される原水と比較すると、不純物濃度が高い排水である。排水利用設備38は、このように不純物濃度が高い排水であっても利用できる設備である。
【0080】
弱酸性陽イオン交換装置56は、硬度成分以外の除去率が低いため、第一膜濾過装置24で生じた脱塩後排水を超純水製造工程に戻す目的では一般に使用されない。しかし、上記の排水利用設備38で利用できる排水を製造する目的には好適に使用できる。
【0081】
弱酸性イオン交換装置56と排水利用設備38の間の装置構成や運転条件は、排水利用設備38の要求水質等を考慮して適宜決定することができる。例えば、弱酸性陽イオン交換装置56の処理済水に残存している塩を除去する必要がなければ、塩除去装置60は省略してもよい。排水利用設備38が上記のようなスクラバー設備、クーリングタワー設備、及びトイレ浄化設備等の中水設備であれば、低コストかつ/又は管理が容易な装置構成や運転条件も適用できて好ましい。
【0082】
排水処理装置12の濃縮用タンク62には、膜濾過装置48において、水素イオン濃度が高濃度とされた使用済排水が収容される。濃縮用タンク62に収容された使用済排水は、膜濾過装置64に送られる。膜濾過装置64では、膜濾過装置48と同様に、逆浸透膜に使用済排水を通過させる。これにより、使用済排水において、すなわち水素イオン濃度がさらに高くなった成分が抽出され、濃縮用タンク62に戻される。すなわち、濃縮用タンク62と膜濾過装置64との間で使用済排水を循環させることで、使用済排水の水素イオン濃度を高めることができる。膜濾過装置64において、水素イオン濃度を濃縮した後の使用済排水は、使用済排水タンク44に戻される。
【0083】
このように、濃縮用タンク62と膜濾過装置64との間で循環されて水素イオン濃度が高められた使用済排水は、弱酸性陽イオン交換装置56に送られる。
【0084】
弱酸性陽イオン交換装置56では、弱酸性陽イオン交換樹脂の水素イオンが、脱塩後排水の硬度成分と置き換えられているので、弱酸性陽イオン交換樹脂には硬度成分が吸着されている。これに対し、使用済排水に含まれる水素イオンは、弱酸性陽イオン交換樹脂の硬度成分と置換することで、弱酸性陽イオン交換樹脂を再生する再生成分として機能する。すなわち、弱酸性陽イオン交換装置56に、濃縮用タンク62から使用済排水を送ることで、この使用済排水を再生剤として再利用し、弱酸性陽イオン交換装置56の弱酸性陽イオン交換樹脂を再生することができる。特に、濃縮用タンク62では、使用済排水の水素イオン濃度が高められているので、弱酸性陽イオン交換装置56の弱酸性陽イオン交換樹脂を効率的に再生できる。
【0085】
弱酸性陽イオン交換装置56において、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生に使用された後の使用済排水は、残存している酸を必要に応じてアルカリで中和した後、排水処理装置12の外部に排出される。また、塩除去装置60から排水利用設備38に送られなかった処理済水も、排水処理装置12の外部に排出される。実質的に、弱酸性陽イオン交換装置56からの排水、及び塩除去装置60からの排水が、超純水製造システム16からの排水となる。
【0086】
超純水を使用した後の使用済排水に含まれる再生成分を用いて、弱酸性陽イオン交換樹脂を再生する方法は、本実施形態の方法に限定されない。
【0087】
例えば、使用後排水が、ナトリウム濃度の高い使用後排水である場合には、イオン交換成分がナトリウムイオンであるNa型に弱酸性陽イオン交換樹脂を再生させてもよい。このような排水の例としては、苛性ソーダを添加して混床式イオン交換樹脂や陰イオン交換樹脂の再生処理を行った後の、再生排水が挙げられる。
【0088】
ただし、再生が容易であり、再生処理に薬品の添加が不必要という観点からは、再生成分に水素イオンを用い、イオン交換成分が水素イオンであるH型に弱酸性陽イオン交換樹脂を再生させることが好ましい。
【0089】
使用済排水の濃縮を、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生を効果的に行える濃度まで容易に行う観点からは、ユースポイント34から排出される使用済排水において、例えば再生成分の濃度は40ppm as CaCO
3以上が好ましく、100ppm as CaCO
3以上がより好ましい。また、この使用済排水のpHは4以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0090】
一方、排水回収装置42によって不純物を除去した使用済排水を超純水製造工程に戻す観点からは、ユースポイント34から排出される使用済排水において、例えば再生成分の濃度は300ppm as CaCO
3以下が好ましく、250ppm as CaCO
3以下がより好ましい。また、この使用済排水のpHは2以上が好ましい。
【0091】
弱酸性陽イオン交換樹脂の再生を効果的に行う観点からは、弱酸性陽イオン交換装置56に送られる使用済排水において、例えば再生成分の濃度は1重量% as CaCO
3以上であることが好ましく、3重量% as CaCO
3以上であることがより好ましい。また、この使用済み排水のpHは2以下が好ましく、1以下がさらに好ましい。
【0092】
一方、再生に伴う体積変化が急激に起こることで樹脂が破損するリスクや、装置の使用部材が腐食するリスク等を抑える観点からは、弱酸性陽イオン交換装置56に送られる使用済排水において、例えば再生成分の濃度は、8重量% as CaCO
3以下であることが好ましく、5重量% as CaCO
3以下であることがより好ましい。また、この使用済排水のpHは0以上が好ましい。
【0093】
次に、本実施形態の超純水製造システム16の作用、排水処理方法及び超純水製造方法を、
図2に示す第一比較例の超純水製造システム82、及び
図3に示す第二比較例の超純水製造システム92と比較しつつ説明する。なお、
図2及び
図3において、
図1と同様の要素については、同一符号を付している。また、
図1〜
図3には、それぞれの超純水製造システムにおいて、各部分を流れる水の量が、円内の数字で示されている。各数字の単位は、m
3/hである。ここで示す水の量は、説明の便宜のための一例である。
【0094】
また、表1には、本実施形態、第一比較例及び第二比較例の超純水製造システムにおける、主要な部分での水の量が記載されている。
【0096】
第一実施形態、第一比較例及び第二比較例のそれぞれの超純水製造システムにおいて、ユースポイント34で使用される超純水の量は200m
3/hとし、ユースポイント34から排出される酸排水の量は、ユースポイント34で使用された超純水の50%の100m
3/hとし、排水利用設備38で利用される排水の量は、ユースポイント34で使用された超純水の量の25%の50m
3/hとしている。
【0097】
図2に示す第一比較例の超純水製造システム82は、第一実施形態の超純水製造システム16における排水処理装置12が設けられていない。そして、第一膜濾過装置24で生じた脱塩後排水が、超純水製造システム82の外部に排出される。また、排水回収装置42の膜濾過装置48からも、使用済排水の一部が超純水製造システム82の外部に排出される。
【0098】
図3に示す第二比較例の超純水製造システム92では、活性炭装置22と第一膜濾過装置24との間で、分散剤を投入する構成である。分散剤は、スケールインヒビターとも称され、被処理水中の硬度成分を溶媒中に分散させて、不純物の結晶成長を抑制する作用を有する。そして、第一膜濾過装置24から排出された脱塩後排水が、膜濾過装置94によって濾過されて原水タンク18に戻されると共に、一部は超純水製造システム92の外部に排出される。
【0099】
図1に示すように、本実施形態の超純水製造システム16では、原水タンク18へ送られる原水(154.5m
3/h)の一部(9m
3/h)が排水利用設備38に送られるが、残り(145.5m
3/h)は原水タンク18に送られる。原水タンク18には、後述するように、第二膜濾過装置26から戻る被処理水(10m
3/h)、脱イオン装置30から戻る被処理水(10m
3/h)、及び膜濾過装置48から戻る使用済排水(99.5m
3/h)も収容されている。そして、原水タンク18に収容された原水が、砂濾過装置20及び活性炭装置22へ順次送られる(265m
3/h)。
【0100】
砂濾過装置20及び活性炭装置22で、原水中の異物が除去された水は、被処理水として第一膜濾過装置24に送られ(260m
3/h)、さらに被処理水からカルシウムイオン、マグネシウムイオン、重炭酸イオン等が除去され(脱塩され)て、第二膜濾過装置26に送られる(220m
3/h)。第一膜濾過装置24で生じた脱塩後排水(カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの濃度が高い水)は、排水処理装置12の高硬度水タンク54に送られる(40m
3/h)。
【0101】
第二膜濾過装置26では、被処理水から、さらにカルシウムイオン、マグネシウムイオン、重炭酸イオン等が除去され、脱気装置28に送られる(210m
3/h)。第二膜濾過装置26から脱気装置28に送られなかった被処理水は、原水タンク18に戻される(10m
3/h)。
【0102】
脱気装置28では、被処理水中の気体、特に炭酸ガスが除去され、炭酸ガス除去後の被処理水は、被処理水として脱イオン装置30に送られる(210m
3/h)。脱イオン装置30では、被処理液から不純物イオンが除去され、被処理液はポリッシャー32に送られる(200m
3/h)と共に、ポリッシャー32に送られなかった被処理水は、原水タンク18に戻される(10m
3/h)。ポリッシャー32では、被処理水に対する最終的な処理を行い、得た超純水がユースポイント34に送られる(200m
3/h)。ユースポイント34で超純水が使用され、使用した後の水は使用済排水として排出される。使用済排水は、排水回収装置42の使用済排水タンク44に収容される。使用済排水タンク44には、後述するように、膜濾過装置64からも使用済排水が戻される(10.5m
3/h)
【0103】
排水回収装置42では、使用済排水タンク44の使用済排水が、活性炭装置46に送られ(110.5m
3/h)、活性炭装置46において、使用済排水に含まれる異物が除去される。さらに、使用済排水は膜濾過装置48に送られて、水素イオン成分が低濃度の使用済排水と、水素イオン濃度が高濃度の使用済排水とが生成される。水素イオン成分が低濃度の使用済排水は原水タンク18に戻され、水素イオン濃度が高濃度の使用済排水は、排水処理装置12の濃縮用タンク62に送られる。
【0104】
排水処理装置12の高硬度水タンク54には、超純水製造装置14の第一膜濾過装置24で生じた脱塩後排水が収容されている。この脱塩後排水は、弱酸性陽イオン交換装置56に送られる。そして、脱塩後排水の硬度成分であるカルシウムイオン及びマグネシウムイオンが、弱酸性陽イオン交換樹脂の水素イオンに置き換えられる。脱塩後排水の硬度成分は少なくなり、処理済水として脱気装置58に送られる。脱気装置58では、処理済水から、炭酸ガス等の溶存ガスが除去され、その後、処理済水は塩除去装置60に送られて、さらに塩類が除去される。そして、処理済水は、排水利用設備38に送られて(36m
3/h)利用されるが、排水利用設備38に送られなかった処理済水は、排水処理装置12の外部に排出される(4m
3/h)。
【0105】
弱酸性陽イオン交換装置56では、上記したように、弱酸性陽イオン交換樹脂の水素イオンが、高硬度水のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンに置換されるが、弱酸性陽イオン交換装置56には、濃縮用タンク62から、水素イオン濃度が高められた使用済排水が送られる(0.5m
3/h)。この使用済排水の水素イオンが、弱酸性陽イオン交換樹脂のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンと置換されることで、弱酸性陽イオン交換樹脂が再生される。弱酸性陽イオン交換装置56において、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生に使用された後の使用済排水は、残存している酸が必要に応じてアルカリで中和され、排水処理装置12の外部に排出される(0.5m
3/h)。弱酸性陽イオン交換樹脂の再生時には、この再生における中和反応により、使用済排水に残存している酸の量が少なくなる。
【0106】
このように、本実施形態では、超純水製造装置14における超純水製造工程で生じる脱塩後排水の硬度成分を、弱酸性陽イオン交換装置56において除去している。そして、弱酸性陽イオン交換装置56の弱酸性陽イオン交換樹脂の再生には、ユースポイント34において使用された後の使用済排水を有効に用いているので、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生のために酸を添加する必要はない。しかも、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生に使用された後の使用済排水の中和に必要なアルカリの添加量が、再生時の中和反応で消費された再生成分の分、少なくなる。超純水製造システム16からの排水は、弱酸性陽イオン交換装置56からの排水、及び塩除去装置60からの排水だけなので、排水処理装置12を有さない構成の超純水製造システム16と比較して、システム全体での排水の量を少なくすることが可能である。
【0107】
表1に示すように、本実施形態の超純水製造システム16では、ユースポイント34で使用される200m
3/hの超純水、および排水利用設備38で利用される50m
3/hの排水を得るために、154.5m
3/hの原水を用いている。そして、超純水製造システム16からの排水の合計は、4.5m
3/hである。
【0108】
これに対し、
図2に示す第一比較例の超純水製造システム82では、原水200m
3/hのうち、45m
3/hは排水利用設備38に送られ、原水タンク18には155m
3/hが送られる。原水タンク18には、第二膜濾過装置26から10m
3/h、脱イオン装置30から10m
3/hの被処理水が戻り、膜濾過装置48から、90m
3/hの使用済排水が戻る。原水タンク18からは砂濾過装置20へ265m
3/hの原水が送られ、活性炭装置22に送られると共に、その一部である5m
3/hは、濾過装置36を経て、排水利用設備38に送られる。
【0109】
第一膜濾過装置24では、送られた260m
3/hの被処理水を脱塩し、脱塩後の220m
3/hの被処理水は第二膜濾過装置26に送られると共に、40m
3/hの被処理水が超純水製造装置14の外部に排出される。
【0110】
第二膜濾過装置26からは、210m
3/hの被処理水が脱気装置28及び脱イオン装置30へと送られ、脱イオン装置30からは、200m
3/hの被処理液がポリッシャー32に送られると共に、10m
3/hの被処理液が原水タンク18に戻される。
【0111】
ユースポイント34で使用された超純水のうち100m
3/hが回収されて使用済排水タンク44、活性炭装置46及び膜濾過装置48へ送られる。膜濾過装置48で濾過された90m
3/hの使用済排水が原水タンク18に戻され、10m
3/hの使用済排水が、超純水製造装置14の外部に排出される。
【0112】
表1に示すように、第一比較例の超純水製造システム82では、ユースポイント34で使用される200m
3/hの超純水、および排水利用設備38で利用される50m
3/hの排水を得るために、200m
3/hの原水を用いている。そして、超純水製造システム82からの排水の合計は、50m
3/hである。
【0113】
図3に示す第二比較例の超純水製造システム92では、活性炭装置22と第一膜濾過装置24との間で、被処理水に分散剤を投入している。このため、第一膜濾過装置24からの40m
3/hの排水を膜濾過装置94(逆浸透装置)によって濾過することで、20m
3/hの被処理水は原水タンク18に戻すことが可能であり、第一膜濾過装置24からの実質的な排水は20m
3/hになっている。
【0114】
表1に示すように、第二比較例の超純水製造システム92では、ユースポイント34で使用される200m
3/hの超純水、および排水利用設備38で利用される50m
3/hの排水を得るために、180m
3/hの原水を用いている。そして、超純水製造システム92からの排水の合計は、30m
3/hである。
【0115】
このように、本実施形態の超純水製造システム16では、第一比較例の超純水製造システム82及び第二実施形態の超純水製造システム92のいずれと比較しても、排水の量が低減されていることが分かる。
【0116】
そして、低減された排水が排水利用設備38等に利用される分、原水の使用量が削減されている。
【0117】
すなわち、本実施形態の超純水製造システム16では、200m
3/hの超純水、および排水利用設備38で利用される50m
3/hの排水を得るために必要な原水の量が、第一比較例の超純水製造システム82に対して約23%削減され、第二比較例の超純水製造システム92に対して約14%削減されている。
【0118】
しかも、本実施形態の超純水製造システム16では、第一膜濾過装置24で生じた排水である脱塩後排水の硬度成分を、弱酸性陽イオン交換装置56で除去し、この除去処理後の弱酸性陽イオン交換装置56を、ユースポイント34で生じた使用済排水を用いて再生している。
【0119】
その際に、使用済排水に含まれていた水素イオンが消費されるので、本実施形態の超純水製造システム16では、外部に排出された使用済排水(0.5m
3/h)について、中和のために必要となったアルカリの添加量を、第一比較例の超純水システム82および第二比較例の超純水システム92に対して半減させることができる。
【0120】
また、本実施形態の超純水製造システム16では、200m
3/hの超純水を得るにあたって生じる排水の量が、第一比較例の超純水製造システム82に対して91%削減され、第二比較例の超純水製造システム92に対して85%削減されている。
【0121】
しかも、本実施形態の超純水製造システム16に用いられる排水処理装置12では、濃縮用タンク62と膜濾過装置64とで使用済排水を循環させることで、使用済排水の水素イオン濃度を高めている。使用済排水に対する濃縮処理を複数回行って水素イオンが濃縮された使用済排水を用いるので、弱酸性陽イオン交換装置56の弱酸性陽イオン交換樹脂を、効率的に再生できる。
【0122】
本実施形態において、脱塩後排水から硬度成分を除去するためだけであれば、弱酸性陽イオン交換樹脂ではなく強酸性陽イオン交換樹脂を用いることも可能である。しかしながら、強酸性陽イオン交換樹脂を用いると、脱塩後排水から硬度成分以外の成分も除去してしまうことに加え、一般的に単位樹脂量あたりの不純物イオン除去量も弱酸性陽イオン交換樹脂より少なくなる(例えば1/2〜1/4)ため、必要な樹脂量が多くなる。また、強酸性陽イオン交換樹脂の再生が難しく、酸などの化学薬品の添加が必須となるため、ノンケミカルタイプの設備では一般的に使用できない。これに対し、弱酸性陽イオン交換樹脂を用いることで、脱塩後排水から、除去対象である硬度成分を選択的に効率よく除去できると共に、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生が容易である。
【0123】
弱酸性陽イオン交換樹脂を再生するための再生剤としても、上記の水素イオンが濃縮された使用済排水に限定されないが、使用済排水に含まれる水素イオンを効果的に用いることで、超純水製造システム16における排水量の削減に寄与する効果が高い構成となる。
【0124】
特に、使用済排水において、濃縮処理を複数回行っているので、水素イオン濃度が高くなった使用後排水を用いて、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生を効率的に行うことが可能である。
【0125】
本実施形態では、脱塩処理として、第一膜濾過装置24による硬度成分の除去を行っている。脱塩処理には、硬度成分であるカルシウムイオンやマグネシウムイオン以外の塩類の除去を伴っていてもよい。硬度成分は、多量に含まれていると、後工程(被処理液の流れの下流側)において、スケールが析出する原因となることがある。このようなスケールの原因となる成分を除去することで、スケールの発生を抑制できる。
【解決手段】超純水製造工程における脱塩処理で生じた脱塩後排水の硬度成分を、弱酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換成分で置き換え、弱酸性陽イオン交換樹脂に吸着された硬度成分を、超純水製造工程で製造された超純水を使用した後の使用済排水に含まれる再生成分で置換して、弱酸性陽イオン交換樹脂を再生する。