特許第6924373号(P6924373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6924373ポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物、その製造法及びその用途。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6924373
(24)【登録日】2021年8月4日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】ポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物、その製造法及びその用途。
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/23 20060101AFI20210812BHJP
   C07C 41/16 20060101ALI20210812BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20210812BHJP
   C08G 67/00 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   C07C43/23 ECSP
   C07C41/16
   C09K3/00 T
   C08G67/00
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-125049(P2017-125049)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-6721(P2019-6721A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000199795
【氏名又は名称】川崎化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152928
【弁理士】
【氏名又は名称】草部 光司
(72)【発明者】
【氏名】沼田 繁明
(72)【発明者】
【氏名】山田 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 修司
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−126612(JP,A)
【文献】 特表2013−512976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C08G
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物。
【化1】
(一般式(1)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
【請求項2】
一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−1,4−ナフチレン)化合物。
【化2】

(一般式(2)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
【請求項3】
一般式(3)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−2,6−ナフチレン)化合物。
【化3】

(一般式(3)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
【請求項4】
一般式(4)で表されるハロゲノアルコキシナフトール化合物を塩基存在下に縮重合反応させることによる、一般式(1)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物の製造方法。
【化4】
(一般式(4)において、mは2以上8以下の整数を表し、Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
【化5】

(一般式(1)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
【請求項5】
一般式(5)で表される4−ハロゲノアルコキシ−1−ナフトール化合物を塩基存在下に縮重合反応させることによる、一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−1,4−ナフチレン)化合物の製造方法。
【化6】

(一般式(5)において、mは2以上8以下の整数を表し、Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
【化7】

(一般式(2)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
【請求項6】
一般式(6)で表される2−ハロゲノアルコキシ−6−ナフトール化合物を塩基存在下に縮重合反応させることによる、一般式(3)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−2,6−ナフチレン)化合物の製造方法。
【化8】

(一般式(6)において、mは2以上8以下の整数を表し、Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
【化9】

(一般式(3)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
【請求項7】
一般式(1)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物からなる光重合増感剤。
【化10】
(一般式(1)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
【請求項8】
一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−1,4−ナフチレン)化合物からなる光重合増感剤。
【化11】

(一般式(2)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
【請求項9】
一般式(3)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−2,6−ナフチレン)化合物からなる光重合増感剤。
【化12】

(一般式(3)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物、その製造法及び光重合増感助剤としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等の光線により重合する光重合性組成物が広くさまざまな用途で使用されている。この光重合性組成物としては、ラジカル重合型とカチオン重合型とがある。ラジカル重合型としては、(メタ)アクリルロイル基を有する化合物、不飽和ポリエステル系化合物等の不飽和二重結合を有する化合物が知られており、カチオン重合型としては、エポキシ基を有する化合物、ビニルエーテル基を有する化合物等が知られている。そして、これらの化合物は、適当な光カチオン重合開始剤及び必要に応じ光カチオン重合増感剤と共に使用される。一般に、ラジカル重合型は、重合速度が速く、生成する塗膜硬度が高いという特徴を持つが、基材との密着性が弱いという欠点がある。また、酸素の影響を受けやすく、特に薄膜の生成においては窒素封入などの設備が必要となる。一方、カチオン重合型は、基材との密着性が高く、酸素による影響を受けにくいという特徴を有する。そのため、カチオン重合型の光カチオン重合性組成物を用いた飲料缶用の下地塗料やインクジェット用インキが市場に出るようになってきている。
【0003】
この光カチオン重合には、通常光カチオン重合開始剤が使用される。当該光カチオン重合開始剤としてはオニウム塩が知られており、特に芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩が用いられている。この光カチオン重合開始剤は、紫外線等の光を吸収して励起し、その励起種が分解して、酸を発生する化合物である。
【0004】
また、近年照射する光源の長波長化が検討されているが、芳香族ヨードニウム塩はその吸収波長が250nm近辺と低く、長波長の紫外線により十分励起することができないために長波長の光線で重合させるときは、340nm近辺まで吸収のある光重合増感剤を添加する必要がある。
【0005】
そのような340nm近辺まで吸収のある光重合増感剤として、ナフタレン系の光重合増感剤である1,4−ジアルコキシナフタレンの使用が提案されている(特許文献1〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−105292号公報
【特許文献2】特開2013−023549号公報
【特許文献3】特開2001−220512号公報
【特許文献4】特開2007-126612号公報
【特許文献5】国際公開WO2006/073021号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来から使用されているジアルコキシナフタレン化合物等のナフタレン系の光重合増感剤は、光重合性組成物の上にポリエチレンフィルム等を被せた場合、光重合増感剤がポリエチレンフィルムに移行し、ポリエチレンフィルムの表面に析出するマイグレーションの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、アルコキシナフタレン化合物の構造と反応性について鋭意検討した結果、ハロゲノアルコキシナフトール化合物を塩基存在下に縮重合反応させて得られるポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物が光重合増感剤として有効であるとともに、極めて低いマイグレーション性を有することを見出し本発明を完成させた。
【0009】
以下、発明の内容を詳述する。
【0010】
第一の発明は、一般式(1)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物に存する。
【0011】
【化1】
【0012】
一般式(1)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0013】
第二の発明は、一般式(1)において、酸素原子の置換位置がナフタレン環の1,4−位であることを特徴とする、一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−1,4−ナフチレン)化合物に存する。
【0014】
【化2】
【0015】
一般式(2)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0016】
第三の発明は、一般式(1)において、酸素原子の位置が2,6-位であることを特徴とする、一般式(3)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−2,6−ナフチレン)化合物に存する。
【0017】
【化3】
【0018】
一般式(3)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0019】
第四の発明は、一般式(4)で表されるハロゲノアルコキシナフトール化合物を塩基存在下に縮重合反応させることによる、一般式(1)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物の製造方法に存する。
【0020】
【化4】
【0021】
一般式(4)において、mは2以上8以下の整数を表し、Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0022】
【化5】
【0023】
一般式(1)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0024】
第五の発明は、一般式(5)で表される4−ハロゲノアルコキシ−1−ナフトール化合物を塩基存在下に縮重合反応させることによる、一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−1,4−ナフチレン)化合物の製造方法に存する。
【0025】
【化6】
【0026】
一般式(5)において、mは2以上8以下の整数を表し、Xは塩素原子又は臭素原子を表す。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0027】
【化7】
【0028】
一般式(2)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0029】
第六の発明は、一般式(6)で表される2−ハロゲノアルコキシ−6−ナフトール化合物を塩基存在下に縮重合反応させることによる、一般式(3)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−2,6−ナフチレン)化合物の製造方法に存する。
【0030】
【化8】
【0031】
一般式(6)において、mは2以上8以下の整数を表し、Xは塩素原子又は臭素原子を表す。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0032】
【化9】
【0033】
一般式(3)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0034】
第七の発明は、一般式(1)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物からなる光重合増感剤に存する。
【0035】
【化10】
【0036】
一般式(1)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0037】
第八の発明は、一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−1,4−ナフチレン)化合物からなる光重合増感剤に存する。
【0038】
【化11】
【0039】
一般式(2)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0040】
第九の発明は、一般式(3)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−2,6−ナフチレン)化合物からなる光重合増感剤に存する。
【0041】
【化12】
【0042】
一般式(3)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【発明の効果】
【0043】
本発明のポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物は新規な化合物であり、光重合増感剤としての効果を持ち、かつ光重合性組成物上に被せたフィルムに対して極めて高い耐マイグレーション性を有する工業的に有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
<化合物>
本発明のポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物は、一般式(1)に示す構造を有する縮重合物である。
【0045】
【化13】
【0046】
一般式(1)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0047】
一般式(1)において、酸素原子の置換位置がナフタレン環の1,4-位である場合は、一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−1,4−ナフチレン)化合物となる。
【0048】
【化14】
【0049】
一般式(2)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0050】
一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−1,4−ナフチレン)化合物は、繰り返し数であるnが2から20の化合物の混合物となる。nが2の化合物の具体例としては、次の化合物が挙げられる。すなわち、ビス(オキシエチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ビス(オキシトリメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ビス(オキシテトラメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ビス(オキシペンタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ビス(オキシヘキサメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ビス(オキシヘプタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ビス(オキシオクタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)等が挙げられ、nが3の化合物としては、トリス(オキシエチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、トリス(オキシトリメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、トリス(オキシテトラメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、トリス(オキシペンタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、トリス(オキシヘキサメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、トリス(オキシヘプタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、トリス(オキシオクタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)等が挙げられ、nが4の化合物としては、テトラキス(オキシエチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、テトラキス(オキシトリメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、テトラキス(オキシテトラメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、テトラキス(オキシペンタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、テトラキス(オキシヘキサメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、テトラキス(オキシヘプタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、テトラキス(オキシオクタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)等が挙げられ、nが5の化合物としては、ペンタキス(オキシエチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ペンタキス(オキシトリメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ペンタキス(オキシテトラメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ペンタキス(オキシペンタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ペンタキス(オキシヘキサメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ペンタキス(オキシヘプタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ペンタキス(オキシオクタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)等が挙げられる。さらにnが5以上の場合は総称として、ポリ(オキシエチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ポリ(オキシトリメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ポリ(オキシテトラメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ポリ(オキシペンタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ポリ(オキシヘキサメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ポリ(オキシヘプタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)、ポリ(オキシオクタメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)等が挙げられる。
【0051】
一般式(1)において、酸素原子の置換位置がナフタレン環の2,6-位である場合は、一般式(3)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−2,6−ナフチレン)化合物となる。
【0052】
【化15】
【0053】
一般式(3)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0054】
一般式(3)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−2,6−ナフチレン)化合物は、繰り返し数であるnが2から20の化合物の混合物となる。nが2の化合物の具体例としては、すなわち、ビス(オキシエチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ビス(オキシトリメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ビス(オキシテトラメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ビス(オキシペンタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ビス(オキシヘキサメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ビス(オキシヘプタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ビス(オキシオクタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)等が挙げられ、nが3の化合物としては、トリス(オキシエチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、トリス(オキシトリメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、トリス(オキシテトラメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、トリス(オキシペンタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、トリス(オキシヘキサメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、トリス(オキシヘプタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、トリス(オキシオクタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)等が挙げられ、nが4の化合物としては、テトラキス(オキシエチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、テトラキス(オキシトリメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、テトラキス(オキシテトラメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、テトラキス(オキシペンタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、テトラキス(オキシヘキサメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、テトラキス(オキシヘプタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、テトラキス(オキシオクタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)等が挙げられ、nが5の化合物としては、ペンタキス(オキシエチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ペンタキス(オキシトリメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ペンタキス(オキシテトラメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ペンタキス(オキシペンタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ペンタキス(オキシヘキサメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ペンタキス(オキシヘプタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ペンタキス(オキシオクタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)等が挙げられる。さらにnが5以上の場合は総称として、ポリ(オキシエチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ポリ(オキシトリメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ポリ(オキシテトラメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ポリ(オキシペンタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ポリ(オキシヘキサメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ポリ(オキシヘプタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)、ポリ(オキシオクタメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)等であるが挙げられる。
【0055】
<製造法>
一般式(1)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物は、一般式(4)で表されるハロゲノアルコキシナフトール化合物を塩基存在下に縮重合反応させることにより得ることが出来る。
【0056】
【化16】
【0057】
反応式(1)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0058】
反応式(1)において、酸素原子の置換位置がナフタレン環の1,4−位である場合は、反応式(2)となる。この反応式(2)に従って、一般式(5)で表される4−ハロゲノアルコキシ−1−ナフトール化合物を塩基存在下に縮重合反応させることにより、一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−1,4−ナフチレン)化合物を得ることが出来る。
【0059】
【化17】
【0060】
反応式(2)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0061】
反応式(2)において、原料となる一般式(5)で表される4−ハロゲノアルコキシ−1−ナフトール化合物の代表的な化合物としてはとしては、4−(2−クロロエトキシ)−1−ナフトール,4−(3−クロロプロポキシ)−1−ナフトール、4−(4−クロロブトキシ)−1−ナフトール、4−(5−クロロペンチルオキシ)−1−ナフトール、4−(6−クロロヘキシルオキシ)−1−ナフトール、4−(5−クロロヘプチルオキシ)−1−ナフトール、4−(8−クロロオクチルオキシ)−1−ナフトール、4−(2−ブロモエトキシ)−1−ナフトール,4−(3−ブロモプロポキシ)−1−ナフトール、4−(4−ブロモブトキシ)−1−ナフトール、4−(5−ブロモペンチルオキシ)−1−ナフトール、4−(6−ブロモヘキシルオキシ)−1−ナフトール、4−(5−ブロモヘプチルオキシ)−1−ナフトール、4−(8−ブロモクチルオキシ)−1−ナフトール等が挙げられる。
【0062】
次に、反応式(1)において、酸素原子の置換位置がナフタレン環の2,6−位である場合は、反応式(3)となる。この反応式(3)に従って、一般式(6)で表される2−ハロゲノアルコキシ−6−ナフトール化合物を塩基存在下に縮重合反応させることにより、一般式(3)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシ−2,6−ナフチレン)化合物を得ることが出来る。
【0063】
【化18】
【0064】
反応式(3)において、mは2以上8以下の整数を表し、nは繰り返し数で2〜20の範囲である。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。
【0065】
反応式(3)において、原料となる一般式(6)で表される2−ハロゲノアルコキシ−6−ナフトール化合物の代表的な化合物としては、2−(2−クロロエトキシ)−6−ナフトール、2−(3−クロロプロポキシ)−6−ナフトール、2−(4−クロロブトキシ)−6−ナフトール、2−(5−クロロペンチルオキシ)−6−ナフトール、2−(6−クロロヘキシルオキシ)−6−ナフトール、2−(5−クロロヘプチルオキシ)−6−ナフトール、2−(8−クロロオクチルオキシ)−6−ナフトール、2−(2−ブロモエトキシ)−6−ナフトール、2−(3−ブロモプロポキシ)−6−ナフトール、2−(4−ブロモブトキシ)−6−ナフトール、2−(5−ブロモペンチルオキシ)−6−ナフトール、2−(6−ブロモヘキシルオキシ)−6−ナフトール、2−(5−ブロモヘプチルオキシ)−6−ナフトール、2−(8−ブロモクチルオキシ)−6−ナフトール等が挙げられる。
【0066】
反応式(1)乃至反応式(3)に於いて、用いられる塩基としては、通常アルカリが使用される。アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。有機塩基の使用も可能である。有機塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
【0067】
反応温度としては通常30℃以上、150℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以上、100℃以下である。30℃未満では反応速度が遅すぎ、150℃を超えて加熱すると副反応が起き生成物の純度が低下し好ましくない。
【0068】
用いる溶媒は、塩基と反応しなければ特に種類を選ばないが、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物が用いられる。
【0069】
反応終了後、反応生成物が不溶性になった場合は、ろ過・乾燥し生成物を単離する。反応物が溶液状態のままであれば、反応液を水に投入する。沈殿が生じるので、ろ過・水洗い乾燥し、縮重合物を得た。反応条件によっては、末端の置換基Xの一部が加水分解されて水酸基となる場合がある。
【0070】
得られた縮重合物の分子量分布は、GPC(日本分光社製、2000シリーズ)によって測定した。
【0071】
(光重合増感剤)
本発明の一般式(1)乃至一般式(3)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物は光重合増感剤として光重合性組成物の光重合硬化速度を促進することが判明した。すなわち、本発明の般式(1)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物は、光重合性化合物が光重合開始剤により光重合を開始する際に、照射された光のエネルギーを光重合開始剤に伝える光重合増感剤として作用する。
【0072】
本発明の光重合増感剤は光重合開始剤と混合して、光重合開始剤組成物とすることもできる。すなわち、光重合開始剤組成物は、光重合増感剤として前記一般式(1)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物と、光重合開始剤を含有する組成物である。
【0073】
光重合開始剤としては、光カチオン重合増感剤及び/又は光ラジカル重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤の中でも、光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤の両方の機能を持つオニウム塩が好ましい。オニウム塩としては通常スルホニウム塩またはヨードニウム塩が用いられる。
【0074】
スルホニウム塩としては、S,S,S’,S’−テトラフェニル−S,S’−(4,4’−チオジフェニル)ジスルホニウムビスヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート等が挙げられ、例えば、サンアプロ社製のCPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、又はビー・エー・エス・エフ社製のイルガキュア270(イルガキュアはビー・エー・エス・エフ社の登録商標)等を使用することができる。
【0075】
一方、ヨードニウム塩としては、4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート等が挙げられ、例えば、ビー・エー・エス・エフ社製の商品「イルガキュア250」、ソルベイジャパン社製の商品PHOTOINITIATOR2074等を使用することができる。これらの光重合開始剤は単独で用いても2種以上併用しても構わない。
【0076】
本発明の光重合開始剤組成物において、一般式(1)で表される光重合増感剤の光重合開始剤組成物中における使用量は、特に限定されないが光重合開始剤に対して通常5〜100重量%の範囲、好ましくは10〜50重量%の範囲である。光重合増感剤の使用量が5重量%未満では光重合性化合物を光重合させるのに時間がかかりすぎてしまい、一方、100重量%を超えて使用しても添加に見合う効果は得られない。
【0077】
(光重合性組成物)
本発明の光重合性組成物は、一般式(1)乃至一般式(3)で表されるポリ(オキシアルキレンオキシナフチレン)化合物と光重合開始剤を含有する光重合開始剤組成物と、光重合性化合物とを含有する組成物である。
【0078】
光重合性化合物としては、光カチオン重合性化合物及び/又は光ラジカル重合性化合物を用いることができる。すなわち、光重合性組成物は、光重合開始剤組成物と光カチオン重合性化合物及び/又は光ラジカル重合性化合物とを含有する組成物である。
【0079】
(光カチオン重合性化合物)
光カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル等が挙げられる。エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ化合物;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製の商品「UV−9300」等のエポキシ変性シリコーン;ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−フタル酸ジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン等のグリシジルエーテル等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。その他の脂環式エポキシ化合物としては、例えばダイセル社製の商品セロキサイド2021Pを使用することができる。これらは二種以上を併用してもよい。また、これらのオリゴマーでもよい。
【0080】
(光ラジカル重合性化合物)
光ラジカル重合性化合物としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の二重結合を有する有機化合物を用いることができる。これらの光ラジカル重合性化合物のうち、フィルム形成能等の面から、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル(以下、両者をあわせて「(メタ)アクリル酸エステル」という)が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリ ル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチ ロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリ ブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレート等が挙げられる。これらの光ラジカル重合性化合物は、単一化合物でも二種以上の混合物であっても良い。また、これらのオリゴマーでもよい。
【0081】
(ハイブリッド組成物)
本発明の光重合開始剤組成物において、光重合開始剤としてオニウム塩を用いた場合は、オニウム塩が光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤の両方の機能を持ち、本発明の光重合増感剤である4−(クロロアルコキシ)ナフタレン化合物も光カチオン重合増感剤と光ラジカル重合増感剤の両方の機能を持つため、光重合性化合物として、光カチオン重合性化合物と光ラジカル重合性化合物の両方を含むハイブリッド組成物において、光重合開始剤組成物として用いることもできる。
【0082】
光カチオン重合性組成物、光ラジカル重合性組成物又はハイブリッド組成物中の光重合開始剤の配合割合は、光重合開始剤と光カチオン重合性化合物及び/又は光ラジカル重合性化合物との合計100重量部に対し、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部である。光重合開始剤の割合が0.01重量部未満の場合は光硬化が十分に進行ないことがあり、5重量部を超える場合は、硬化物の硬度が低下したり、光重合開始剤が硬化物から滲み出したりすることがある。
【0083】
本発明の光重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、希釈剤、着色剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
【0084】
(硬化方法)
本発明の光重合性組成物を光硬化させる場合、当該光重合性組成物をフィルム状に成形して光硬化させることもでき、塊状に成形して光硬化させることもできる。フィルム状に成形して光硬化させる場合は、液状の当該光重合性組成物を例えばポリエステルフィルムなどの基材にバーコーターなどを用いて膜厚5〜300ミクロンになるように塗布することができる。一方、スピンコーティング法やスクリーン印刷法により、さらに薄い膜厚あるいは厚い膜厚にして塗布することもできる。このようにして調製した膜に、250〜500nmの波長範囲を含む紫外線を1〜1000mW/cm程度の強さで光照射すればよい。用いる光源としてはメタルハライドランプ、キセノンランプ、紫外線LED、青色LED、白色LED、フュージョン社製のDバルブ、Vバルブ、365nmUV−LED、385nmUV−LED、395nmUV−LED、405nmUV−LED等が挙げられる。太陽光の使用も可能である。
【0085】
フィルム状で硬化させる場合、基材上に塗布された本発明の光重合性組成物上にカバーフィルムを被せて硬化することにより、重合阻害を及ぼす酸素や水分の影響等を排除することができる。
【0086】
カバーフィルムとしては、ポリオレフィンフィルム、特にポリエチレンフィルムなどが主として用いられる。本発明の光重合性組成物中に含まれる光重合増感剤は、カバーフィルムに対するマイグレーション性が極めて低いのが特徴である。
【0087】
(タック・フリー・テスト)
本発明の光重合性組成物の光硬化の判定は、タックフリーテスト(指触テスト)に基づいて行った。すなわち、光重合性組成物に光照射すると、硬化して表面のタック(べたつき)が取れるため、光照射を開始してからタック(べたつき)が取れるまでの時間を測定し、光硬化時間とした。
【0088】
(耐マイグレーション性の判定)
本発明の光カチオン重合性組成物及び/又は光ラジカル重合性組成物に含まれる光重合増感剤がフィルム等に移行(マイグレーション)するかどうかを判定する方法としては、光重合増感剤を含む光重合性組成物を薄いフィルム状物に塗布したものを作成し、その上にポリエチレンフィルムを被せて、光重合性組成物を挟んだフィルム積層物を作る。当該積層物を一定温度(26℃)で一定期間保管し、その後ポリエチレンフィルムを剥がし、光重合増感剤がポリエチレンフィルムに移行しているかを調べ、耐マイグレーション性を判定した。剥がしたポリエチレンフィルムは、アセトンで表面の組成物を洗った後乾燥し、当該ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、光重合増感剤に起因する吸収強度の増大を調べることにより耐マイグレーション性を測定した。なお、当該測定には、紫外・可視分光光度計(島津製作所製、型式:UV2200)を用いた。比較例の化合物である1,4−ジエトキシナフタレンと量的な比較するために、得られた吸光度を1,4−ジエトキシナフタレンの吸光度の値に換算した。換算に当たっては、紫外・可視分光光度計により本発明の化合物及び1,4−ジエトキシナフタレンの231nmにおける吸光度を測定し、その吸光度の値とモル濃度からそれぞれのモル吸光係数を計算し、その比を用いて換算した。
【実施例】
【0089】
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。特記しない限り、すべての部は重量部である。
【0090】
(1)赤外線(IR)分光光度計:Thermo社製、型式is50 FT−IR
(2)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式ECS−400
(3)分子量分布:GPC、日本分光社製、2000シリーズ
【0091】
(合成実施例1)4−{3−{1−[4−(3−クロロプロポキシ)ナフチル]オキシ]プロポキシ}−1−ナフトール(n=2のビス(オキシトリメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)の合成
温度計、攪拌機付きの50ml三口フラスコに4−(3−クロロプロポキシ)−1−ナフトール4.73g(20ミリモル)のジメチルアセトアミド20g溶液に臭化テトラブチルアンモニウム100mgを加え、水酸化ナトリウム800mg(20ミリモル)の水5g溶液を加え、60℃で5時間加熱した。得られた反応液を水中に投入したところ、薄いピンク色の沈殿が生じた。吸引ろ過した後、よく水洗い、乾燥して4−{3−{1−[4−(3−クロロプロポキシ)ナフチル]オキシ]プロポキシ}−1−ナフトールの薄ピンク色の粉末3.7g(8.5ミリモル)を得た。原料4−(3−クロロプロポキシ)−1−ナフトールに対する単離収率は85モル%であった。
【0092】
(1)融点:71−72℃
(2)IR(KBr,cm−1) :.3410,3075,2970,2930,2880,1592,1458,1374,1267,1233,1153,1084,1022,957,803,761,613,420.
(3)H−NMR(400MHz、CDCl):δ=2.31−2.40(m,2H),2.46−2.55(m,2H),3.84(t,J=8Hz,2H),4.24(t,J=8Hz,2H),4.31−4.40(m,4H),6.64−6.76(m,4H),7.42−7.52(m,4H),8.03−8.09(m,2H),8.10−8.16(m,2H).
【0093】
(合成実施例2)ポリ(オキシトリメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)の合成
温度計、攪拌機付きの50ml三口フラスコに3−ブロモプロポキシ−1−ナフトール5.62g(20ミリモル)のジメチルアセトアミド20g溶液にTBAB100mgを加え、水酸化ナトリウム800mg(20ミリモル)の水4g溶液を加え、60℃で1時間加熱した。1時間後多量の沈殿が生じた。得られたスラリーを水中に投入したところ、肌色の沈殿が多量生じた。吸引ろ過した後、よく水洗い、乾燥してポリ(オキシアルキレンオキシ−1,4−ナフチレン)の肌色の粉末3.8g(19ミリモル)を得た。 原料3−ブロモプロポキシ−1−ナフトールに対する単離収率は95モル%であった。
【0094】
(1)融点:55−60℃ ガラス化
(2)IR(KBr,cm−1) :3065,2965,2950,2890,1670,1630,1592,1457,1375,1268,1232,1153,1085,1023,945,804,760.
(3)H−NMR(400MHz、CDCl) :δ1.86−2.28(bm,2H),2.88−3.29(bm,2H),4.12−4.60(bm,2H),6.56−6.72(bm,2H),7.21−7.60(bm,2H),8.05−8.42(bm,2H).
(4)分子量 n=2〜54
【0095】
(合成実施例3)ポリ(オキシトリメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)の合成
温度計、攪拌機付きの50ml三口フラスコに2−(3−クロロプロポキシ)−6−ナフトール4.73g(20ミリモル)のジメチルアセトアミド20g溶液にTBAB 100mgを加え、水酸化ナトリウム800mg(20ミリモル)の水4g溶液を加え、60℃で1時間加熱した。1時間後多量の沈殿が生じた。得られたスラリーを水中に投入したところ、肌色の沈殿が多量生じた。吸引ろ過した後、よく水洗い、乾燥してポリ(オキシアルキレンオキシ−2,6−ナフチレン)の肌色の粉末3.6g(18ミリモル)を得た。 原料3−ブロモプロポキシ−1−ナフトールに対する単離収率は90モル%であった。
【0096】
(1)融点 : 55−60℃ ガラス化
(2)IR(KBr,cm−1) :3060.2960,2935,2875,1600,1507,1469,1391,1226,1162,1113,1052,1030,997,969,848,803,683,620,608,467.
(3)H−NMR(400MHz、CDCl) :δ2.18−2.33(bm,2H),3.70−3.74(bm,2H),4.09−4.24(bm,2H),6.98−7.18(bm,4H),7.50−7.70(bm,2H).
(4)分子量 n=2〜5
【0097】
(増感剤評価実施例1)
重合性化合物として、脂環式エポキシ化合物(ダイセル社製セロキサイド2021P)を100部、光重合開始剤として、芳香族ヨードニウム塩(ビー・エー・エス・エフ社製イルガキュア250)を5部、光重合増感剤として、合成実施例1と同様の方法で合成した4−{3−{1−[4−(3−クロロプロポキシ)ナフチル]オキシ]プロポキシ}−1−ナフトール1部を混合し、光重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ株式会社製ルミラー、膜厚100μm)の上にバーコーターを用いて膜厚が18μmになるように塗布した。次いで、表面からイワサキ社製UV−LEDを用いて光照射した。365nmにおける照射強度は30mW/cmであった。光照射開始からべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は40秒であった。
【0098】
(増感剤評価実施例2)
光重合増感剤として、4−{3−{1−[4−(3−クロロプロポキシ)ナフチル]オキシ]プロポキシ}−1−ナフトール に代えて合成実施例2と同様の方法で合成したポリ(オキシトリメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)を用いた以外は増感剤評価実施例1と同様にして試験した。光照射開始からべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は45秒であった。
【0099】
(増感剤評価実施例3)
光重合増感剤として、4−{3−{1−[4−(3−クロロプロポキシ)ナフチル]オキシ]プロポキシ}−1−ナフトールに代えて合成実施例3と同様の方法で合成したポリ(オキシトリメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)を用いた以外は増感剤評価実施例1と同様にして試験した。光照射開始からべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は25秒であった。
【0100】
(評価比較例1)
光重合増感剤を用いない事以外は増感剤評価実施例1と同様にして試験した。光照射開始から2000秒経過しても全くべたつき(タック)がなくならず、硬化しなかった。
【0101】
(評価比較例2)
光重合増感剤として、公知の光重合増感剤である1,4−ジエトキシナフタレンを用いた以外は増感剤評価実施例1と同様にして試験した。光照射開始からべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は42秒であった。
【0102】
(評価比較例3)
光重合増感剤として、公知の光重合増感剤である2,6−ジエトキシナフタレンを用いた以外は増感剤評価実施例1と同様にして試験した。光照射開始からべたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は22秒であった。
【0103】
増感剤評価実施例1乃至増感剤評価実施例3及び評価比較例1乃至評価比較例3を表1にまとめた。
【0104】
【表1】
【0105】
表1から明らかなように、本発明のポリ(オキシトリメチレンオキシナフチレン)化合物は、光重合増感剤としての優れた能力を有しており、従来より用いられている光重合増感剤であるジエトキシナフタレン類と比較して同等の光カチオン重合増感性能を有していることがわかる。
【0106】
(マイグレーション試験実施例1)
光重合系におけるマイグレーション性の試験
重合性化合物として、脂環式エポキシ(セロキサイド2021P)100部、光重合増感剤として、合成実施例1と同様の方法で合成した4−{3−{1−[4−(3−クロロプロポキシ)ナフチル]オキシ]プロポキシ}−1−ナフトール1部を混合し、光重合性組成物を調製した。次に、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、「ルミラー」は東レ株式会社の登録商標)上に、調製した光重合性組成物を膜厚が30ミクロンとなるようにバーコーターを使用して塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、三日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムを良く拭いた後、ポリエチレンフィルムのUVスペクトルを測定し、231nmの吸光度を測定した。得られた4−{3−{1−[4−(3−クロロプロポキシ)ナフチル]オキシ]プロポキシ}−1−ナフトールの吸光度を1,4−ジエトキシナフタレンに換算した。吸光度は、一日保管後0.001、三日保管後0.001であった。
【0107】
(マイグレーション試験実施例2)
光重合増感剤として4−{3−{1−[4−(3−クロロプロポキシ)ナフチル]オキシ]プロポキシ}−1−ナフトール1部を合成実施例2と同様にして合成したポリ(オキシトリメチレンオキシ−1,4−ナフチレン)1部としたこと以外はマイグレーション試験実施例1と同様にして、光重合組成物を調製し、塗布したのち、塗布物の上部にかぶせたポリエチレンフィルムの吸光度を測定した。吸光度は1日保管後0.003、3日保管後0.003であった。
【0108】
(マイグレーション試験実施例3)
光重合増感剤として4−{3−{1−[4−(3−クロロプロポキシ)ナフチル]オキシ]プロポキシ}−1−ナフトール1部を合成実施例2と同様にして合成したポリ(オキシトリメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)1部としたこと以外はマイグレーション試験実施例1と同様にして、光重合組成物を調製し、塗布したのち、塗布物の上部にかぶせたポリエチレンフィルムの吸光度を測定した。吸光度は1日保管後0.001、3日保管後0.001であった。
【0109】
(マイグレーション試験比較例1)
光重合増感剤として4−{3−{1−[4−(3−クロロプロポキシ)ナフチル]オキシ]プロポキシ}−1−ナフトール1部を1,4−ジエトキシナフタレン1部としたこと以外はマイグレーション試験実施例1と同様にして、光重合組成物を調製し、塗布したのち、塗布物の上部にかぶせたポリエチレンフィルムの吸光度を測定した。吸光度は1日保管後0.232、3日保管後0.210であった。
【0110】
(マイグレーション試験比較例2)
光重合増感剤として4−{3−{1−[4−(3−クロロプロポキシ)ナフチル]オキシ]プロポキシ}−1−ナフトール1部を2,6−ジエトキシナフタレン1部としたこと以外はマイグレーション試験実施例1と同様にして、光重合組成物を調製し、塗布したのち、塗布物の上部にかぶせたポリエチレンフィルムの吸光度を測定した。吸光度は1日保管後0.183、3日保管後0.181であった。
【0111】
【表2】
【0112】
表2の結果から、本発明のポリ(オキシトリメチレンオキシ−2,6−ナフチレン)化合物は従来より用いられている光重合増感剤であるジエトキシナフタレン類に比べて、はるかに低いマイグレーション性を示すことが分かる。