特許第6924468号(P6924468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6924468フェルール、光ファイバ付きフェルール、及びフェルールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6924468
(24)【登録日】2021年8月4日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】フェルール、光ファイバ付きフェルール、及びフェルールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/38 20060101AFI20210812BHJP
   G02B 6/40 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   G02B6/38
   G02B6/40
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-228919(P2016-228919)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-84747(P2018-84747A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】アダマンド並木精密宝石株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬典
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宮本 康次
【審査官】 山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/100493(WO,A1)
【文献】 特開2006−308736(JP,A)
【文献】 特開2000−105326(JP,A)
【文献】 特開2013−033200(JP,A)
【文献】 国際公開第88/008144(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36−6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の内径で一端に形成される挿通部を有する貫通孔が形成され、
挿通部に連続して第1のテーパ部が形成され、
第1のテーパ部に連続して第1のR部が形成され、
第1のR部に連続して第2のテーパ部が形成され、
第2のテーパ部の他端側で挿通部の形成側と反対側に、更に第2のR部が形成され、
第2のR部に連続して第3のテーパ部が形成され
挿通部が2つ以上の複数であり、第1のテーパ部のテーパ角度が4°であり、
第2のテーパ部のテーパ角度が30°であり、
第3のテーパ部が40°であり、
第1のR部の曲率半径が3mmであり、
第2のR部の曲率半径が1mmであり、
挿通部の長さが1mm以下であり、
外径が1.1mm又は1.8mmであり、
全長が3mmであるフェルール。
【請求項2】
請求項1に記載のフェルールの前記挿通部に、光ファイバが接着剤で固定されている光ファイバ付きフェルール。
【請求項3】
前記フェルールがジルコニアセラミックス製で、前記挿通部で前記光ファイバがエポキシ熱硬化接着剤で固定されている請求項2に記載の光ファイバ付きフェルール。
【請求項4】
前記フェルールがガラス製で、前記挿通部で前記光ファイバがUV接着剤で固定されている請求項2に記載の光ファイバ付きフェルール。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の前記フェルールを射出成形で形成するフェルールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルール、光ファイバ付きフェルール、及びフェルールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ファイバ線路のコネクタ接続や、光半導体モジュールにおける光半導体素子と光ファイバとの間の光信号の送受信を実現する為に、光ファイバの先端にフェルールを取り付けると共に、このフェルールを収納したハウジングを取り付けて組み立てた光コネクタが利用されている。又、光ファイバの先端に取り付けたフェルールを、光半導体素子を備えたケーシングに装着して、光半導体モジュールを組み立てる事が行われている。
【0003】
フェルールは、ジルコニアセラミックス等のセラミックス製のキャピラリ状部材であり、更にリング或いはスリーブを外挿固定した物が用いられている。光ファイバは、フェルールを貫通する1つ或いは複数の貫通孔に挿入され、接着剤で固定されている。
【0004】
フェルールとしては、例えば特許文献1又は特許文献2が開示されている。特許文献1のフェルールは、テープ状多芯光ファイバ心線の先端に取り付けられて光コネクタを形成する光コネクタ用フェルールである。光ファイバを挿入する為の複数のファイバ配列孔がフェルールに形成されており、そのファイバ配列孔からファイバ導入孔にかけて、内部が拡げられている第一テーパ孔が形成されている。更に、第二テーパ孔と第三テーパ孔が形成されている。
【0005】
一方、特許文献2には、光ファイバ挿入時の挿入エラーや、光ファイバの折損を防止する光コネクタが開示されている。特許文献2の光コネクタを構成するフェルールには、光ファイバを挿入する貫通孔が形成されており、この貫通孔にも特許文献1と同様にテーパが形成されている。
【0006】
しかし本出願人が特許文献1及び2のフェルールを作製し、ストリップした光ファイバを挿入させて検証したところ、どちらも挿入時に光ファイバに傷を付けてしまうと共に、断線を生じる事が判明した。
【0007】
これらの原因を検証したところ、特許文献1及び2どちらのフェルールも貫通孔の挿通部とテーパ部とが連続する箇所が鈍角状に角部(エッジ)に形成されており、鈍角状とは云えこの角部に光ファイバの先端や側面が接触する事で、光ファイバに傷が付いたり断線が生じる事が分かった。なお挿通部とは、貫通孔に於いて一定の内径で形成される部分であり、特許文献1の図3内のファイバ配列孔13や、特許文献2の図1内のファイバ穴32が挙げられる。
【0008】
そこで、挿入時の光ファイバにおける傷の発生や断線を防止する為、特許文献3が開示されている。特許文献3のフェルールでは、フェルールの一端面を形成するV径(即ちテーパ部)と貫通孔の挿通部との境目を無くして連続した曲面形状としている。以上のように角部を解消する事で、フェルールに光ファイバを挿入した時に光ファイバの傷付きや折れを解消する、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−56174号公報
【特許文献2】特開2001−66466号公報
【特許文献3】特開平07−198991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3のフェルールでは、テーパ部が貫通孔の一端側のみに設けられている為、貫通孔の挿通部が殆どフェルールの全長に亘って形成されている。従って、特許文献3のフェルールを実際に製造しようとすると、前記挿通部が長くなる(具体的には1mm超)フェルール構成に成らざるを得なくなる。
【0011】
更に貫通孔の挿通部の直径は、フェルールに形成される貫通孔がストリップされた光ファイバを一直線状に保持する必要性から、ストリップされた光ファイバの外径とほぼ変わらない寸法で微細に形成される。従って、挿通部の直径と光ファイバの外径との微細な隙間に接着剤が充填されて硬化する事になる。
【0012】
以上から、特許文献3のフェルールにいわゆるパンダファイバを接着剤で固定すると、接着剤の硬化に伴い貫通孔内部で接着剤によるパンダファイバ外周への締め付け力が過剰に発生する事を、本出願人は検証により導出した。前記パンダファイバとは、石英系光ファイバのコアの両側に、互いに平行となるように応力付与材が挿入されている光ファイバであり、例えば特開2008-053879図2の偏波面保存光ファイバ5が挙げられる。
【0013】
又、挿通部の直径と光ファイバの外径との隙間はもともと微細な上、更に特許文献3のフェルールでは前記挿通部が長くなり過ぎる事に伴い、光ファイバが貫通孔に挿入された状態で、光ファイバの外周に均一に接着剤を充填する事は極めて困難となり、接着剤が不均一に光ファイバの外周に充填される現象が頻出する事も、検証により判明した。接着剤が不均一にパンダファイバの外周に充填されると、パンダファイバの外周に亘って前記締め付け力が不均一となる。従って、パンダファイバに応力方向の変化による特性歪みが生じて、偏波面保存特性の劣化を招いてしまう事も分かった。
【0014】
更に、挿通部内部で接着剤が行き渡らない箇所が生じる可能性も有り、その箇所で挿通部内径と光ファイバ外周で擦れが発生して、光ファイバの断線が発生する危険性も招いてしまう。
【0015】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、光ファイバの傷付きや断線を解消すると共に、貫通孔内部での接着剤による光ファイバへの過剰且つ不均一な締め付け力の発生防止が可能なフェルールと光ファイバ付きフェルール、及びそのフェルールの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題は、以下の本発明により解決される。即ち本発明のフェルールは、一定の内径で一端に形成される挿通部を有する貫通孔が形成され、挿通部に連続して第1のテーパ部が形成され、第1のテーパ部に連続して第1のR部が形成され、第1のR部に連続して第2のテーパ部が形成され、第2のテーパ部の他端側で挿通部の形成側と反対側に、更に第2のR部が形成され、第2のR部に連続して第3のテーパ部が形成され、挿通部が2つ以上の複数であり、第1のテーパ部のテーパ角度が4°であり、第2のテーパ部のテーパ角度が30°であり、第3のテーパ部が40°であり、第1のR部の曲率半径が3mmであり、第2のR部の曲率半径が1mmであり、挿通部の長さが1mm以下であり、外径が1.1mm又は1.8mmであり、全長が3mmである事を特徴とする。
【0019】
また本発明の光ファイバ付きフェルールは、前記何れかに記載のフェルールの挿通部に、光ファイバが接着剤で固定されている事を特徴とする。
【0020】
また本発明のフェルールの製造方法は、前記何れかに記載のフェルールを射出成形で形成する事を特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るフェルール及び光ファイバ付きフェルールに依れば、光ファイバの傷付きや断線が解消可能になると共に、挿通部の長さを1mm以下に設定する事で、貫通孔内部での接着剤による光ファイバへの過剰且つ不均一な締め付け力の発生が防止出来る。
【0022】
また本発明に係るフェルールの製造方法に依れば、前記各効果を有するフェルールを射出成形で作製する事が可能となり、量産性良く本発明に係るフェルールを作製する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)本発明に係るフェルールの一例を示す正面図である。(b)図1(a)のフェルールの右側面図である。(c)図1(a)のフェルールの背面図である。
図2図1に係るフェルールをA−A断面で切断した、フェルール各部を説明する為の側断面図である。
図3図1に係るフェルールをA−A断面で切断した、挿通部の長さとテーパ部のテーパ角度とR部の曲率半径を説明する為の側断面図である。
図4図2のフェルールの貫通孔における各挿通部に、光ファイバを挿入する状態を示す説明図である。
図5図2のフェルールの貫通孔における各挿通部に、光ファイバを挿入した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本実施の形態の第一の特徴は、貫通孔が形成されたフェルールにおいて、一定の内径で一端に形成される挿通部を有する貫通孔が形成され、挿通部に連続して第1のテーパ部が形成され、第1のテーパ部に連続して第1のR部が形成され、第1のR部に連続して第2のテーパ部が形成され、第2のテーパ部の他端側で挿通部の形成側と反対側に、更に第2のR部が形成され、第2のR部に連続して第3のテーパ部が形成され、挿通部が2つ以上の複数であり、第1のテーパ部のテーパ角度が4°であり、第2のテーパ部のテーパ角度が30°であり、第3のテーパ部が40°であり、第1のR部の曲率半径が3mmであり、第2のR部の曲率半径が1mmであり、挿通部の長さが1mm以下であり、外径が1.1mm又は1.8mmであり、全長が3mmであるフェルールとした事である。
【0027】
構成に依れば、貫通孔にテーパ部及びR部を形成する事で、フェルールの内径方向に突出する角部(エッジ)が解消され、光ファイバとの接触が防止される。従って光ファイバを挿入した時に、フェルールに対する光ファイバの接触や引っ掛かりに伴う光ファイバの傷付きや断線が解消可能となる。
【0028】
更に、第1のテーパ部のテーパ角度が4°に設定される事により接着剤の流動性が良くなり、挿通部内に接着剤が充填され易くなり、挿通部内で光ファイバの外周に接着剤を均一に且つ容易に被覆する事が出来る。従って、接着剤の硬化に伴う貫通孔内部、特に挿通部での接着剤による光ファイバ外周への不均一な締め付け力の発生を防止する事が可能となる。よって、光ファイバ外周での過剰且つ不均一な締め付け力発生が防止される為、特にパンダファイバを挿入及び固定した時に、パンダファイバへの応力方向の変化による特性歪みの発生が防止され、偏波面保存特性の劣化を抑制する事が出来る。
【0029】
更に、挿通部の長さを1mm以下に設定する事で挿通部が長くなり過ぎる事が防止される為、挿通部内での接着剤による光ファイバへの過剰な締め付け力の発生が防止出来る(特に直径が0.125mmの光ファイバに対して)。
【0030】
更に、挿通部の長さを1mm以下に設定する事で、挿通部内部で接着剤が行き渡らない箇所が生じる可能性が解消される。従って、挿通部内径と光ファイバ外周での擦れ発生が防止され、光ファイバの断線が発生する危険性も解消される。
【0031】
なお本発明に於いて挿通部とは、フェルールの一端側から開口して形成され、一定の内径を有する孔部分を指すものとする。
【0032】
なお、フェルールに挿通部が2つ以上の複数形成されている場合は、第1のR部で互いの貫通孔が1つの大きな貫通孔へと一体形成される。よって1つの大きな貫通孔がフェルールの他端側に形成される事となり、複数の光ファイバでも貫通孔に挿入し易くなる。
【0034】
更に第2のテーパ部のテーパ角度が30°の構成に依れば、光ファイバが貫通孔に挿入された時に第2のテーパ部を光ファイバ被覆部の受け止め部とする事が出来る。更に、光ファイバを貫通孔に挿入した時に、フェルールに対する光ファイバの接触や引っ掛かりに伴う光ファイバの傷付きや断線がより確実に解消可能となる。
【0036】
更に第3のテーパ部が40°の構成に依れば、フェルールの外径に対して最大限のテーパ角度で第三のテーパ部を形成する事が可能となる。従って、光ファイバを貫通孔に挿入した時に、フェルールに対する光ファイバの接触や引っ掛かりに伴う光ファイバの傷付きや断線がより確実に解消可能となる。
【0039】
更に第1のR部の曲率半径が3mmであり、第2のR部の曲率半径が1mmの構成に依れば、限られた外径を有するフェルールに対して、貫通孔の挿通部が複数設けられたとしても、最大限大きな曲率半径で第1又は第2のR部を形成する事が可能となる。従って、大きな曲率半径でそれぞれのR部が形成されるので、滑らかな面で貫通孔を形成する事が出来る。よって、光ファイバを貫通孔に挿入した時に、フェルールに対する光ファイバの接触や引っ掛かりに伴う光ファイバの傷付きや断線がより確実に解消可能となる。
【0040】
また第の特徴は、前記何れかに記載のフェルールの挿通部に、光ファイバが接着剤で固定されている光ファイバ付きフェルールとした事である。
【0041】
この構成に依れば、前記各効果を有するフェルールで光ファイバ付きフェルールを形成する事が可能となる。
【0042】
また第の特徴は、フェルールがジルコニアセラミックス製で、挿通部で光ファイバがエポキシ熱硬化接着剤で固定されている光ファイバ付きフェルールとした事である。
【0043】
この構成に依れば、本発明に係る光ファイバ付きフェルールを容易に作製する事が可能となる。
【0044】
また第の特徴は、フェルールがガラス製で、挿通部で光ファイバがUV接着剤で固定されている光ファイバ付きフェルールとした事である。
【0045】
この構成に依れば、UV接着剤を用いる事により、光ファイバを挿入後にフェルールの外部からUV光を照射して光ファイバを固定する事が可能となる。その際、フェルール外周から均一にUV光を照射する事により、接着剤の硬化に伴う貫通孔内部、特に挿通部での接着剤による光ファイバ外周への不均一な締め付け力の発生を防止する事が出来る。よって、光ファイバ外周での過剰且つ不均一な締め付け力発生が防止される為、特にパンダファイバを挿入及び固定した時に、パンダファイバへの応力方向の変化による特性歪みの発生が防止され、偏波面保存特性の劣化を抑制する事が可能となる。
【0046】
また第の特徴は、前記何れかに記載のフェルールを射出成形で形成するフェルールの製造方法と云う事である。
【0047】
この製造方法に依れば、前記各効果を有するフェルールを射出成形で作製する事が可能となり、量産性良く本発明に係るフェルールを作製する事が出来る。
【0048】
以下、図1図5を適宜参照して、本発明の実施形態に係るフェルール、光ファイバ付きフェルール、及びフェルールの製造方法を説明する。図1図3に示す本実施形態に係るフェルール1は、貫通孔2が形成されたフェルールである。このフェルール1において、貫通孔2は2つの挿通部2aを有しており、フェルール1の一端1a側の端面には、一端面の中心から対称な位置に、光ファイバを挿入して保持、固定させる2つの貫通孔の挿通部2aが形成されている。この一端1a側と反対側であるフェルール1の他端1b側の端面には、1つの貫通孔2が形成されている。
【0049】
更に、挿通部2aに連続して第1のテーパ部2bが形成されており、他端1b側へと連続する様に第1のテーパ部2bに連続して第1のR部2cが更に形成されている。
【0050】
なお挿通部2aとは、フェルール1の一端1a側から開口して形成されている、一定の内径を有する孔部分を指すものとする。その各挿通部2aにそれぞれ光ファイバ4a(図4及び図5参照)が挿入され、図示しない接着剤で固定されて保持される。
【0051】
光ファイバ4aとしては、ストリップされた状態での直径が0.125mmで、シングルモード、マルチモード、又はいわゆるパンダファイバと云われる偏波面保存光ファイバなど、いずれの光ファイバ種類も適用可能である。
【0052】
第1のR部2cは、任意の曲率半径を有する曲面状に形成されており、第1のテーパ部2bと併せて、ストリップされた光ファイバ4aが挿通部2aへ挿入される際の案内面(ガイド)となる。
【0053】
フェルール1に挿通部2aが2つ以上の複数形成されている場合は、図2又は図3に示すように、一端1a側から他端1b側に向かって第1のR部2cの箇所で分割部3が途切れて、互いの貫通孔が1つの大きな貫通孔2へと一体形成される。よって1つの大きな貫通孔2がフェルールの他端1b側に形成される事となり、複数の光ファイバでも貫通孔2に挿入し易くなる。
【0054】
各挿通部2a及び各第1のテーパ部2bは、互いの図示しない中心軸が平行に形成されており、それぞれの挿通部2a、第1のテーパ部2b、及び第1のR部2cの殆どは、分割部3を介して互いに分かれて形成されている。
【0055】
更に、他端1b側へと連続する様に、第1のR部2cに連続して第2のテーパ部2dが形成されている。その第2のテーパ部2dの他端1b側であり、挿通部2aの形成側と反対側に、更に第2のR部2fが形成される。フェルール1の形態では更に挿通部2aの形成側と反対側である前記第2のテーパ部2dの他端側に連続して平行部2eが設けられており、平行部2eの他端側には連続して第2のR部2fが形成されている。更に、第2のR部2fの他端側に連続して第3のテーパ部2gが形成されている。
【0056】
各2a〜2g間には稜線が形成され、2つの挿通部2aと同心円状に他端1bに向かって拡大形成されている2つの貫通孔が連続形成される事によって、1つの貫通孔2が他端1bの面上に形成されている。
【0057】
これらの構成に依れば、貫通孔2にテーパ部(2b、2d、2g)及びR部(2c、2f)を形成する事で、フェルール1の内径方向に突出する角部(エッジ)が解消され、光ファイバ4aとの接触が防止される。従って光ファイバ4aを挿入した時に、フェルール1に対する光ファイバ4aの接触や引っ掛かりに伴う光ファイバ4aの傷付きや断線が解消可能となる。
【0058】
なお挿通部2aが1つだけ形成された、いわゆる単芯のフェルールでは、第1のテーパ部2bに連続して第1のR部2cを形成したとしても、挿通部2aを除いて他端1b側に向かって貫通孔2を拡大形成するという点では、挿通部2aに単にテーパ部を付けただけの構造と変わらない。従って、本出願の効果が得られにくいので、挿通部2aは2つ以上の複数設ける事が好ましい。
【0059】
図3に示すように、第1のテーパ部2bのテーパ角度θ2bは4°が好ましい。その理由として、テーパ角度θ2bが4°に設定される事により、接着剤の流動性が良くなり、挿通部2a内に接着剤が充填され易くなるためである。従って、挿通部2a内で光ファイバ4aの外周に、接着剤を均一に且つ容易に被覆する事が出来る。
【0060】
テーパ角度θ2bが5°では、光ファイバ4a挿入時に挿通部2aに充填される接着剤の接着層が過大となり、光ファイバの直径(特に0.125mmの光ファイバ)に対して接着層が厚くなり過ぎる為、接着剤硬化後に光ファイバ4aに対する外周からの締め付け力が大きくなる事を、本出願人は検証により見出した。従って、いわゆるパンダファイバと云われる偏波面保存光ファイバを固定した場合は、応力方向の変化による特性歪みが発生し、偏波面保存特性が劣化してしまう。
【0061】
一方、テーパ角度θ2bが3°では、テーパ角度が小さくなり過ぎてしまい、挿通部2aに光ファイバ4aを挿入する際に、光ファイバ4aの外周に均一に接着剤層を形成する事が困難となる事が、本出願人の検証により判明した。従って、挿通部2aへの接着剤の流動性確保が出来なくなってしまう。以上から、第1のテーパ部2bを挿通部2aに連続して設ければ、どのようなテーパ角度でも良いという訳では無い事が、検証により初めて判明した。
【0062】
従って、テーパ角度θ2bを4°に設定する事により、接着剤の硬化に伴う貫通孔2内部、特に挿通部2aでの接着剤による光ファイバ4a外周への不均一な締め付け力の発生を防止する事が可能となる。よって、光ファイバ4a外周での過剰且つ不均一な締め付け力発生が防止される為、特にパンダファイバを挿入及び固定した時に、パンダファイバへの応力方向の変化による特性歪みの発生が防止され、偏波面保存特性の劣化を抑制する事が出来る。
【0063】
更に図3に示すように、挿通部2aの長さL2aは1mm以下に設定される事が好ましい。その理由として、挿通部2aの長さL2aを1mm以下に設定する事で挿通部2aが長くなり過ぎる事が防止される為、挿通部2a内での接着剤による光ファイバ4aへの過剰な締め付け力の発生が防止出来る為である(特に直径が0.125mmの光ファイバに対して)。
【0064】
更に、挿通部2aの長さL2aを1mm以下に設定する事で、挿通部2a内部で図示しない接着剤が、行き渡らない箇所が生じる可能性が解消される。従って、挿通部2a内径と光ファイバ4a外周での擦れ発生が防止され、光ファイバ4aの断線が発生する危険性も解消される。
【0065】
挿通部2aの長さL2aが1mmを超えると挿通部2aが長くなり過ぎてしまい、特に直径0.125mmのストリップされた光ファイバを接着剤で固定すると、挿通部2a内で接着剤により光ファイバへ過剰な締め付け力が発生してしまう事を、本出願人は検証により見出した。従って、フェルールに単純に挿通部を設ければ良いと云う事では無く、まして挿通部は長いほど良いと云う訳でも無い事が判明した。
【0066】
一方、挿通部2aの長さL2aが0mm(挿通部2aが形成されない形態)では、光ファイバ4aの長さ方向に亘る保持が不安定になり、光ファイバ4a端部からの光の出射角のずれが過大となるため、好ましくない。従って、本発明のフェルール及び光ファイバ付きフェルールでは、挿通部2aは1mm以下の長さL2aで必須とする。
【0067】
以上からストリップされた直径0.125mmの光ファイバ4aを接着剤で固定する際の挿通部2aの長さL2aは、1mm以下が最適である事が検証により判明した。
【0068】
なお、一端1aから第2のテーパ部2dまでのベア長の長さが2.0mm以下の場合、光ファイバ4a固定時の引っ張り強度が1.0kgfを保持出来ない。
【0069】
更に、第2のテーパ部2dのテーパ角度θ2dは30°に設定する事が好ましい。フェルール1に第2のテーパ部2dを設ける事により、光ファイバ4aが貫通孔2に挿入された時に図5に示すように第2のテーパ部2dを光ファイバ被覆部4bの受け止め部とする事が出来る。
【0070】
更に、第2のテーパ部2dを設ける事で光ファイバ4aを貫通孔2に挿入した時に、フェルール1に対する光ファイバ4aの接触や引っ掛かりに伴う光ファイバ4aの傷付きや断線がより確実に解消可能となる。
【0071】
更に第3のテーパ部2gのテーパ角度θ2gは40°に設定する事が好ましい。以上の構成に依れば、貫通孔2に3箇所で且つ3段階のテーパ角度(4°、30°、40°)でテーパ部2b、2d、2gを設ける事で、フェルール1の外径に対して最大限のテーパ角度40°で第三のテーパ部2gを形成する事が可能となる。従って、光ファイバ4aを貫通孔2に挿入した時に、フェルール1に対する光ファイバ4aの接触や引っ掛かりに伴う光ファイバ4aの傷付きや断線がより確実に解消可能となる。
【0072】
テーパ角度θ2dとθ2gはフェルール1に対する光ファイバ4aの接触や引っ掛かりに伴う光ファイバ4aの傷付きや断線を起こす事無く、ストリップされた各光ファイバ4aを各挿通部2aへと挿入可能にするガイドとしての役目を果たす。従って、テーパ角度θ2dとθ2gは、図示しない別部品のフェルールホルダ等にフェルール1を圧入させる際に、強度不足でフェルール1に割れを起こさない程度で最大限の開口角度に設定される事が望ましい。
【0073】
本実施形態のフェルール1の外径は、1.1mm又は1.8mmである。またフェルール1の全長は3mmである。このフェルール1の外径と全長に対して、L2aを1mm以下と設定した際に最大限に設定可能な各テーパ角度θ2bとθ2dは、30°及び40°であった。従って、各寸法との兼ね合いから、テーパ角度θ2bとθ2dを最大限に設定しているので光ファイバ4aとフェルール1との接触や引っ掛かりがより確実に防止され、光ファイバ挿入作業の労苦を低減する事が可能となる。
【0074】
なお、本実施形態のフェルール1では挿通部2aの内径は0.1255mm、更に挿通部2aを複数設ける場合の挿通部2aどうしの間隔(ピッチ)は0.25mmとする。また、第2のテーパ部2dと第2のR部2fを連結する、平行部2eの直径は0.4mm程度に設定すれば良い。
【0075】
更に、第1のR部2cの曲率半径R3は3mmに設定されると共に、第2のR部2fの曲率半径R1は1mmに設定される事が好ましい。これらの構成に依れば、限られた外径を有するフェルール1に対して、貫通孔2の挿通部2aが複数設けられたとしても、最大限大きな曲率半径で第1又は第2のR部2c、2fを形成する事が可能となる。従って、大きな曲率半径でそれぞれのR部2c、2fが形成されるので、滑らかな面で貫通孔2を形成する事が出来る。よって、光ファイバ4aを貫通孔2に挿入した時に、フェルール1に対する光ファイバ4aの接触や引っ掛かりに伴う光ファイバ4aの傷付きや断線がより確実に解消可能となる。
【0076】
光ファイバ4aが挿入されたフェルール1(光ファイバ付きフェルール)を製造するには、予め図示しない接着剤を各挿通部2aに充填し、次に光ファイバの被腹部4bからストリップされた光ファイバ4aの先端部を、フェルール1の他端1b側の第3のテーパ部2gから貫通孔2へと挿入し、図4及び図5に示すように各光ファイバ4aを各挿通部2aに挿入して、接着剤を硬化接着させれば良い。各光ファイバ4aが各挿通部2aに挿入される際に、挿入に伴って光ファイバ4aの外周に接着剤がコーティングされる。
【0077】
なお、図5に示すように各光ファイバ4aを各挿通部2aに挿入する際は、各光ファイバ4aの先端部をフェルール一端1aから約30mm程突き出して接着し、固定後にその突き出し箇所を断線すれば良い。
【0078】
以上により、本実施形態の光ファイバ付きフェルールに依れば、上記各効果を有するフェルール1で光ファイバ付きフェルールを形成する事が可能となる。
【0079】
また、フェルール1に光ファイバ4aを挿入する前に、予めフェルール1を図示しない別部品のフェルールホルダ等に圧入固定させても良い。フェルールホルダとしては、SUS(例えばSUS304)やステンレス、又は真鍮等の金属から成る物を使用すれば良く、少なくともフェルール1の外径を圧入可能な内径を有する物とする。
【0080】
フェルール1はセラミックス、又はSUSやステンレス等の金属、プラスチック、ガラス等の材料から作製可能である。一方、一回で成形できるとの観点からフェルール1は射出成形による作製が好ましい。従ってフェルール1の材料は、射出成形に適用可能な材料が好ましく、高ヤング率且つ低線膨張係数による寸法安定性の観点からジルコニアセラミックスが好適である。
【0081】
射出成形時は、貫通孔2の内径形状に成形された図示しない金型ピンを用いれば良い。特に前記テーパ角度θ2dを30°に設定していると共に、前記テーパ角度θ2gを40°に設定する事により、金型ピンの作製が容易になる。
【0082】
フェルール1がジルコニアセラミックス製の場合、本実施形態では挿通部2aで光ファイバ4aがエポキシ熱硬化接着剤で熱硬化により接着固定される事が好ましい。この構成に依れば、本発明に係る光ファイバ付きフェルールを容易に作製する事が可能となる。
【0083】
また、フェルール1をガラス製とする場合、本実施形態では挿通部2aでの光ファイバ4aはUV接着剤で接着固定される事が好ましい。UV接着剤を用いる事により、光ファイバ4aを挿入後にフェルール1の外部からUV光を照射して光ファイバ4aを固定する事が出来る。その際、フェルール1の外周から均一にUV光を照射する事により、接着剤の硬化に伴う貫通孔2内部、特に挿通部2aでの接着剤による光ファイバ4a外周への不均一な締め付け力の発生を防止する事が可能となる。
【0084】
よって、光ファイバ4a外周での過剰且つ不均一な締め付け力発生が防止される為、特にパンダファイバを挿入及び固定した時に、パンダファイバへの応力方向の変化による特性歪みの発生が防止され、偏波面保存特性の劣化を抑制する事が出来る。
【0085】
平行部2eを設けず、第2のR部2fを一端1a側に延設すると、フェルール1外径方向に向かって円弧形状が形成された形態(逆テーパ)で、第2のテーパ部2dと第2のR部2fが連続形成される場合が考えられる。このようなフェルール構成では、貫通孔2内径の整形用の金型ピンがフェルールの射出成形後に逆テーパにより抜けにくくなり、無理に引き抜こうとすると第2のテーパ部2dと第2のR部2fとの連続形成箇所を破損する事態が考えられる。従って、第2のテーパ部2dと第2のR部2fの間に平行部2eを設ける事で、射出成形後に金型ピンを無理無く引き抜く事が可能となり、前記破損防止の観点からより好ましい。
【0086】
なお、本実施形態のフェルール1及びそのフェルールを使用した光ファイバ付きフェルールでは、平行部2eを設けた形態を説明したが、本発明は本実施形態に限定されない。例えば平行部2eを設けずに第2のR部2fを一端1a側に延設し、第2のテーパ部2dと第2のR部2fが連続形成される様に変更しても良い。但し、第2のテーパ部2dと第2のR部2fの連続形成箇所で第2のR部2fの円弧形状が、フェルール1中心方向に向かうように設計する事が、金型ピンの引き抜き時の破損防止の観点から好ましい。
【0087】
本発明のフェルールは、ICR(Integrated Coherent Receiver)用アレイ等に用いる。
【符号の説明】
【0088】
1 フェルール
1a フェルールの一端
1b フェルールの他端
2 貫通孔
2a 挿通部
L2a 挿通部の長さ
2b 第1のテーパ部
θ2b 第1のテーパ部のテーパ角度
2c 第1のR部
R3 第1のR部の曲率半径
2d 第2のテーパ部
θ2d 第2のテーパ部のテーパ角度
2e 平行部
2f 第2のR部
R1 第2のR部の曲率半径
2g 第3のテーパ部
θ2g 第3のテーパ部のテーパ角度
3 分割部
4a 光ファイバ
4b 光ファイバの被覆部
図1
図2
図3
図4
図5