特許第6924558号(P6924558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6924558機械強度が改善された、0.05〜30μmの範囲内のマクロ細孔性中位径を有する球状アルミナ粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6924558
(24)【登録日】2021年8月4日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】機械強度が改善された、0.05〜30μmの範囲内のマクロ細孔性中位径を有する球状アルミナ粒子
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/02 20060101AFI20210812BHJP
   B01J 21/04 20060101ALI20210812BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   C01F7/02 J
   B01J21/04 M
   B01J35/08 Z
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-92912(P2016-92912)
(22)【出願日】2016年5月6日
(65)【公開番号】特開2016-210678(P2016-210678A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】1554097
(32)【優先日】2015年5月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーヌ バザー−バチ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーヌ ダルマゾン
(72)【発明者】
【氏名】オレリー ダンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス ディール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン ル コー
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ ロペス
(72)【発明者】
【氏名】アンヌ リズ タレブ
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−500788(JP,A)
【文献】 Journal of Porous Materials,Vol.19, No.5,p.807-817
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00−17/38
B01J 21/04
B01J 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が150〜300m/gの範囲内であり、平均粒子径が1.2〜3mmの範囲内であり、標準偏差として表される粒子径の分散が0.1を超えず、水銀ポロシメトリによって測定される全細孔容積が0.50〜0.85mL/gの範囲内であり、粒子内のマクロ細孔性度が30%未満であり、比D90/D50として表されるマクロ細孔の径の分散が8を超えず、前記D50は、マクロ細孔容積を構成する細孔の全体から、この径未満のサイズを有する細孔の全てが、マクロ細孔の数の50%を構成する径であるとして定義される中位マクロ細孔径であり、前記D90は、マクロ細孔容積を構成する細孔の全体から、この径未満のサイズを有する細孔の全てが、この同じ処理によって決定されるマクロ細孔の数の90%を構成する径であるとして定義されるものであることを特徴とする球状アルミナ粒子。
【請求項2】
安定充填密度についての値が0.4〜0.8g/mLの範囲内である、請求項1に記載の球状アルミナ粒子。
【請求項3】
平均粒子圧潰強度値が少なくとも25Nである、請求項1または2に記載の球状アルミナ粒子。
【請求項4】
水銀ポロシメトリによって測定される全細孔容積は、0.60〜0.85mL/gの範囲内である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の球状アルミナ粒子。
【請求項5】
径の比D90/D50として表されるマクロ細孔の径の分散は、6を超えない、請求項1〜4のいずれか1つに記載の球状アルミナ粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の球状アルミナ粒子の製造方法であって、
以下の工程:
a) 水、酸および少なくとも1種のベーマイト粉体を含む懸濁液を調製する工程、
b) 0.05〜30μmの範囲内の粒子サイズを有する固体細孔形成剤を工程a)において得られた懸濁液に加える工程、
c) 工程b)において得られた懸濁液を混合して、前記混合物の粘度が、200〜700mPa・sの範囲内であるようにする工程、
d) 工程c)において得られた混合物を用いるドロップ凝固によって球状粒子に形付けする工程、
e) 工程d)において得られた粒子を乾燥させる工程、
f) 工程e)において得られた粒子を焼成する工程
を含む、方法。
【請求項7】
固体細孔形成剤は、デンプン、小麦粉、ラテックス、ポリスチレンまたはアクリル粒子、ポリサッカライド、カーボンブラック粒子およびおがくずから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
酸化物の全質量に対する細孔形成剤の質量の比として表される固体細孔形成剤の割合が0.2〜50重量%の範囲内である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の球状アルミナ粒子の製造方法であって、
以下の工程:
a) 水、酸および少なくとも1種のベーマイト粉体を含む懸濁液を調製する工程、
b’) 少なくとも1種の液体細孔形成剤、少なくとも1種の界面活性剤および場合による水を、または、少なくとも1種の液体細孔形成剤、少なくとも1種の界面活性剤および水を含むエマルジョンを、工程a)において得られた懸濁液に加える工程、
b”) 1000〜200000s−1の範囲内のせん断速度で機能する分散機を活用して工程b’)において得られた懸濁液を分散させる工程、
c) 工程b”)において分散させられた懸濁液を混合して、前記混合物の粘度が200〜700mPa・sの範囲内にあるようにする工程、
d) 工程c)において得られた混合物を用いるドロップ凝固によって球状粒子に形付けする工程、
e) 工程d)において得られた粒子を乾燥させる工程、
f) 工程e)において得られた粒子を焼成する工程
を含む、方法。
【請求項10】
液体細孔形成剤は、グリース、油および鉱物蝋、脂肪、炭化水素およびオイルカットから選択され、界面活性剤は、非イオン性またはイオン性の界面活性剤から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
液体細孔形成剤の質量対酸化物の全質量の比として表される液体細孔形成剤の割合が0.2〜50重量%の範囲内であり、界面活性剤の質量対細孔形成剤の質量の比に等しいとして規定される界面活性剤の割合が1〜25重量%の範囲内である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
0.05〜30μmの範囲内の粒子サイズを有する少なくとも1種の固体細孔形成剤も、工程b’)の懸濁液に加えられる、請求項9〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
工程a)の懸濁液は、50μm以下の体積測定中位径を有する粒子によって構成されるアルミナまたはアルミナ前駆体のチャージをさらに含む、請求項6〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の粒子によって形成された担体と、周期律表の第VIII族から選択された1種以上の貴金属とを含む触媒。
【請求項15】
第IA族、第IIA族、第IIIA族、第IVA族、第VA族およびフッ素、塩素、臭素およびヨウ素によって構成される群から選択される1種以上の元素をさらに含む、請求項14に記載の触媒。
【請求項16】
接触改質反応を行うための、請求項14または15に記載の触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒のための担体としての使用のための球状アルミナ粒子およびこのタイプの粒子の調製方法に関する。
【0002】
本発明はまた、このタイプの粒子を担体として含む触媒および接触炭化水素処理方法、特に、接触改質方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、「ドロップ凝固(drop coagulation)」として知られている(オイルドロップとしても知られている)方法によって得られる、接触改質における適用のための球状アルミナ粒子に関する。
【0004】
多孔質触媒担体としての使用のための球状アルミナ粒子は、当業者に周知である。
【0005】
例として、特許文献1には、オイルドロップ方法として知られている方法を用いてこのタイプの粒子を製造する方法が記載されている。
【0006】
この技術の原理は、アルミナ(ベーマイト)の水性ゾルを調製することとノズルを通じてアルミナゾルを微細液滴において、水に混和性でない上相と下方の水相とを含むカラムに滴下することとからなる。粒子がこのように形付けされるのは、それらが、水と混和性でない相を通り抜け、次いで、水相中で凝固するからである。一旦集められたところで、粒子は、洗浄され、乾燥させられ、焼成される。球状アルミナ粒子は、こうして得られる。
【0007】
このタイプの球状粒子の合成の間に制御されるべき特に重要なパラメータは、密度、細孔容積および細孔分布を含む。それらは、これらの粒子の最終的な使用に影響を及ぼすからである。粒子のサイズが可及的に均質であることも、流体のように触媒が流れることを確実にするために、特に移動床において行われる触媒適用において重要である。
【0008】
これらの粒子は、通常、メソ細孔性およびマクロ細孔性のテクスチャ(texture)を有している。メソ細孔性は、ベーマイト板状晶の組織化に由来する一方で、マクロ細孔性は、細孔形成剤を用いる犠牲的な方法で生じさせられる。これらの担体におけるメソ細孔の存在は、触媒反応がスムーズに進むことを確実にすることにおいて必須の要因である。マクロ細孔に関して、特許文献2から、粒子の密度を低減させるために、アルミナゾルに細孔形成剤を加えることが可能であることが知られている。粒子の形成の間に、これらの細孔形成剤(これらは続いて焼成工程の間に除去される)により、粒子中にマクロ細孔が作り上げられる。このマクロ細孔性は、細孔容積を増加させ、それ故に、粒子の密度を低減させるという効果を有する。
【0009】
しかしながら、このマクロ細孔性が制御されないならば、それは、担体の機械強度、特に、低密度担体の機械強度に悪影響を有するかもしれない。
【0010】
機械強度(特に、圧潰・摩耗強度)は、触媒作用においてアルミナ粒子を用いることを想定する場合に考慮されるべき極めて重大なパラメータである。事実上、例えば移動床において用いられる場合、アルミナの粒子は、衝撃と摩擦の現象に付され、これらは、設備またはフィルタを閉塞させるおそれがある微細粒子および/または破片の形成を引き起こし得、さらに、触媒反応器に充填された触媒の一部の喪失に寄与する。
【0011】
特許文献3には、オイルドロップ方法とは異なる調製方法によって調製されたマクロ細孔性の球状アルミナ粒子が記載されている。この方法では、W/Oエマルジョン(水/油エマルジョン、すなわち、油相中水相タイプのエマルジョン)が調製される。エマルジョンは、次いで、撹拌・加熱されて、油相中のアルミナゾルを粒子にゲル化させる。こうして形成された粒子は、次いで、分離され、成熟させられ、乾燥させられ、焼成される。
【0012】
アルミナ粒子のマクロ細孔は、サイズにおいて均一であり、1μm未満の範囲内に制御され得、球状粒子は、制御可能なサイズを有し、高い機械強度を有している。より特定的には、記載された球状アルミナ粒子の比表面積は、100〜350m/gの範囲内であり、全細孔容積は、0.5〜1.5mL/gの範囲内であり、中位マクロ細孔径は、0.05〜1μm(50〜1000nm)の範囲内であり、粒子径は、0.1〜5mmの範囲内であり、機械強度は、70〜150Nの範囲内である。これらの粒子は、触媒担体、吸着剤、クロマトグラフィー充填剤、電極または遮音・断熱材料として用いられ得るとして記載されている。しかしながら、当該文献は、接触改質触媒のための担体としての粒子の特定の使用を想定しておらず、当該文献は、粒子サイズにおける均質性の重要性も粒子内のマクロ細孔性度を制限することの重要性も記載していない。
【0013】
特許文献4には、触媒担体適用のためのオイルドロップ技術によって調製される球状アルミナ粒子であって、メソ細孔性およびマクロ細孔性のテクスチャを有し、機械強度を増強させるようにマクロ細孔容積が、メソ細孔容積と比べて低いものが開示されている。より特定的には、球状アルミナ粒子は、窒素吸着等温線から決定されるアクセス可能な容積(Vmesoと称され、これは、メソ細孔容積を表し、0.65〜0.85mL/gの範囲内である)と、7μm未満の径を有する細孔の容積(Vmeso+macroと称され、水銀ポロシメトリによって測定され、0.65〜0.85mL/gの範囲内である)を含み、前記粒子の平均径は、1.2〜3mmの範囲内であり、BET比表面積は、150〜300m/gの範囲内であり、安定充填密度(settled packing density:SPD)は、0.5〜0.6g/mLの範囲内である。球状アルミナ粒子の平均粒子圧潰強度(grain crushing strength)は、一般的には、少なくとも2.5daN(25N)である。しかしながら、マクロ細孔性のサイズ分散は、制御されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第2422499号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第1503495号明細書
【特許文献3】中国特許第10231134号明細書
【特許文献4】国際公開第2013/093221号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
(発明の概要)
本発明の目的は、メソ細孔性およびマクロ細孔性のテクスチャを有する均質なサイズを有する球状アルミナ粒子であって、マクロ細孔性は、小さいサイズ分散を有し、細孔容積は、主としてメソ細孔である、粒子を提案することにある。これらの粒子は、改善された機械強度を有している。
【0016】
実際に、マクロ細孔性を制御すること、特に、粒子内のマクロ細孔性度を制御することおよびマクロ細孔性のサイズ分散を制御することは、2つの対照的な特徴、すなわち、所望の密度、特に、低い密度と良好な機械強度を有するアルミナ粒子の製造のために重要である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
より特定的には、本発明は、球状アルミナ粒子であって、BET比表面積が150〜300m/gの範囲内であり、平均粒子径が1.2〜3mmの範囲内であり、標準偏差として表される粒子径分散が0.1を超えず、水銀ポロシメトリによって測定される全細孔容積が0.50〜0.85mL/gの範囲内であり、粒子内のマクロ細孔性度が30%未満であり、比D90/D50として表されるマクロ細孔の径の分散が8を超えないことを特徴とする粒子に関する。
【0018】
バリエーションにおいて、安定充填密度(SPD)の値は、0.4〜0.8g/mLの範囲内である。
【0019】
バリエーションにおいて、平均粒子圧潰強度値(GCS)は、少なくとも25Nである。
【0020】
バリエーションにおいて、水銀ポロシメトリによって測定される全細孔容積は、0.60〜0.85mL/gの範囲内である。
【0021】
バリエーションにおいて、径の比D90/D50として表される、マクロ細孔の径の分散は、6を超えない。
【0022】
本発明の球状アルミナ粒子において観察される特定の細孔分布は、主として、固体細孔形成剤または液体細孔形成剤のいずれかを用いるそれらの調製方法に起因する。
【0023】
それ故に、第1のバリエーションによると、本発明は、本発明による球状アルミナ粒子の調製方法であって、以下の工程:
a) 水、酸および少なくとも1種のベーマイト粉体を含む懸濁液を調製する工程、
b) 0.05〜30μmの範囲内の粒子サイズを有する固体細孔形成剤を、工程a)において得られた懸濁液に加える工程、
c) 工程b)において得られた懸濁液を混合して、前記混合物の粘度が200〜700mPa・sの範囲内であるようにする工程、
d) 工程c)において得られた混合物を用いたドロップ凝固によって球状粒子に形付けする工程、
e) 工程d)において得られた粒子を乾燥させる工程、
f) 工程e)において得られた粒子を焼成する工程
を含む、方法に関する。
【0024】
このバリエーションによると、固体細孔形成剤は、好ましくは、デンプン、小麦粉、ラテックス、ポリスチレンまたはアクリル粒子、ポリサッカライド、カーボンブラック粒子およびおがくずから選択される。
【0025】
このバリエーションによると、酸化物の全質量に対する細孔形成剤の質量の比として表される、固体細孔形成剤の割合は、好ましくは、0.2〜50重量%の範囲内である。
【0026】
第2のバリエーションによると、本発明は、本発明による球状アルミナ粒子の調製方法であって、以下の工程:
a) 水、酸および少なくとも1種のベーマイト粉体を含む懸濁液を調製する工程、
b’) 少なくとも1種の液体細孔形成剤、少なくとも1種の界面活性剤および場合による水を、または少なくとも1種の液体細孔形成剤、少なくとも1種の界面活性剤および水を含むエマルジョンを、工程a)において得られた懸濁液に加える工程、
b”) 1000〜200000s−1の範囲内のせん断速度で機能する分散機を活用して工程b’)において得られた懸濁液を分散させる工程、
c) 工程b”)において分散させられた懸濁液を混合して、前記混合物の粘度が、200〜700mPa・sの範囲内であるようにする工程、
d) 工程c)において得られた混合物を用いるドロップ凝固によって球状粒子に形付けする工程、
e) 工程d)において得られた粒子を乾燥させる工程、
f) 工程e)において得られた粒子を焼成する工程
を含む、方法に関する。
【0027】
このバリエーションによると、液体細孔形成剤は、好ましくは、グリース、油および鉱物蝋、脂肪、炭化水素およびオイルカットから選択され、界面活性剤は、非イオン性またはイオン性の界面活性剤から選択される。
【0028】
このバリエーションによると、液体細孔形成剤の質量対酸化物の全質量の割合は、0.2〜50重量%の範囲内であり、界面活性剤の割合(界面活性剤の質量対細孔形成剤の質量の比に等しいとして規定される)は、好ましくは1〜25重量%の範囲内である。
【0029】
このバリエーションによると、0.05〜30μmの範囲内の粒子サイズを有する少なくとも1種の固体細孔形成剤が、工程b’)の懸濁液に加えられてよい。
【0030】
2つのバリエーションにおいて、工程a)の懸濁液は、50μm以下の体積測定中位径を有する粒子によって構成されるアルミナまたはアルミナ前駆体のチャージをさらに含んでよい。
【0031】
本発明はまた、本発明による粒子またはそれらの調製方法によって調製された粒子によって形成された担体と、周期律表の第VIIIB族から選択される1種以上の貴金属とを含む触媒に関連する。
【0032】
バリエーションにおいて、触媒は、第IA族、第IIA族、第IIIA族、第IVA族、第VA族およびフッ素、塩素、臭素およびヨウ素によって構成される群から選択される1種以上の元素をさらに含んでよい。
【0033】
本発明はまた、接触改質反応を行うための本発明の触媒の使用に関連する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(詳細な説明)
(球状アルミナ粒子)
本発明は、球状アルミナ粒子であって、BET比表面積が150〜300m/gの範囲内であり、平均粒子径が1.2〜3mmの範囲内であり、標準偏差として表される粒子径分散が0.1を超えず、水銀ポロシメトリによって測定される全細孔容積が0.50〜0.85mL/gの範囲内であり、粒子内のマクロ細孔性度が30%未満であり、比D90/D50として表されるマクロ細孔の径の分散が8を超えないことを特徴とする粒子に関する。
【0035】
用語「マクロ細孔」は、50nm超の開口を有する細孔を意味する。
【0036】
用語「メソ細孔」は、2〜50nm(上限および下限を含む)の範囲内の開口を有する細孔を意味する。
【0037】
用語「ミクロ細孔」は、2nm未満の開口を有する細孔を意味する。
【0038】
本明細書の以降において、化学元素についての族は、CAS分類を用いて与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics, published by CRC press, editor in chief D.R. Lide, 81st edition, 2000-2001)。例として、CAS分類における第VIII族は、新IUPAC分類のカラム8、9および10からの金属に対応する。
【0039】
本発明の球状アルミナ粒子のBET比表面積は、150〜300m/gの範囲内、好ましくは150〜220m/gの範囲内である。用語「BET比表面積」は、定期刊行物「The Journal of the American Society”, 60, 309, (1938)」において記載されたBRUNAUER-EMMETT-TELLER法をベースとするASTM規格D 3663-78に応じた窒素吸着によって決定される比表面積を意味する。
【0040】
本発明の球状アルミナ粒子の平均粒子径は、1.2〜3mmの範囲内、好ましくは1.4〜2mmの範囲内、より好ましくは1.5〜1.9mmの範囲内である。
【0041】
本発明の球状アルミナ粒子の、水銀ポロシメトリによって測定される全細孔容積は、0.50〜0.85mL/gの範囲内、好ましくは0.60〜0.85mL/gの範囲内である。
【0042】
全細孔容積は、ASTM規格D4284-12による水銀圧入ポロシメトリによって、4000バール(400MPa)の最大圧で、484dyne/cmの表面張力および140°の接触角を用いて測定される。水銀が粒子間空隙を全て満たす値は、0.2MPa以上に固定され、水銀がサンプルの細孔に浸透することが仮定される。用語「全細孔容積」は、水銀圧入ポロシメトリによって測定される10μmに至るまでの径を有する、メソ細孔の容積とマクロ細孔の容積との合計を意味する。
【0043】
粒子内のマクロ細孔性度は、走査型電子顕微鏡画像の分析から決定され、細孔の全てが、0.05〜30μmの範囲内の径を有することが仮定される。走査型電子顕微鏡は、マクロ細孔の数およびサイズを定量するために用いられ、例えば、ZEISS Supra40(登録商標)顕微鏡が用いられる。観察は、これらのサンプルの研磨された断面について、反射電子(backscattered electron)を用いて行われる(化学的コントラスト)。マクロ細孔サイズの分布を決定するための画像分析は、画像加工処理ソフトウェアを用いて、5つの異なるビーズから取られた5画像から出発して行われ、解像度は、2048*1536ピクセルであった。定量方法は、50倍の倍率でとられた画像から0.2〜30μmの範囲内のマクロ細孔の数およびサイズを決定するために用いられ得る。マクロ細孔の決定のためのこの方法は、一般的に、「小マクロ細孔定量化」として知られている方法によって完了させられるか、または、「小マクロ細孔定量化」と置き換えられ、この小マクロ細孔定量化は、2500倍の倍率でとられた画像から、0.05〜0.5μmの範囲内のマクロ細孔の数およびサイズを決定するために用いられ得る。マクロ細孔の全表面積は、画像の表面積に規格化されて、pmacroで表記されるマクロ細孔性度が得られる。画像から明白なこのマクロ細孔性度は、粒子のマクロ細孔性の容積割合と同一であると考えられる。当業者は、粒子の全体の典型となるマクロ細孔性度を得るために十分に画像を分析することができるだろう。
【0044】
本発明の球状アルミナ粒子の粒子内マクロ細孔性度は、有利には、全細孔容積の30%未満、好ましくは25%未満、より特定的に好ましくは20%未満である。
【0045】
本発明の球状アルミナ粒子の中位マクロ細孔径は、走査型電子顕微鏡を用いて眺めて、0.05μm(50nm)〜30μm(30000nm)の範囲内である。第1のバリエーションにおいて、特に、固体細孔形成剤が球状アルミナ粒子の調製のために用いられた場合、中位マクロ細孔径は、0.05μm(50nm)〜30μm(30000nm)、好ましくは1μm(1000nm)〜5μm(5000nm)の範囲内である。
【0046】
第2のバリエーションにおいて、特に、液体細孔形成剤が球状アルミナ粒子を調製するために用いられた場合、中位マクロ細孔径は、好ましくは、0.05μm(50nm)〜2μm(2000nm)の範囲内である。
【0047】
中位マクロ細孔径(D50とも称する)は、マクロ細孔容積を構成する細孔の全体から、この径未満のサイズを有する細孔の全てがマクロ細孔の数の50%を構成する径として定義される。この径は、反射電子モードでの研磨断面の観察後に得られた走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)画像を加工処理することによって決定される。
【0048】
D90径は、マクロ細孔容積を構成する細孔の全体から、この径未満のサイズを有する細孔の全てが、この同じ処理によって決定されるマクロ細孔の数の90%を構成する径であるとして定義される。この径は、反射電子モードでの研磨断面の観察後に得られた走査型電子顕微鏡(SEM)画像を加工処理することによって決定される。
【0049】
本発明の一つの必須の特徴によると、比D90/D50によって表される、前記球状アルミナ粒子のマクロ細孔の径の分散は、8を超えず、好ましくは、6を超えず、一層より好ましくは4を超えない。特定の理論によって結び付けられることを望むことなく、球状アルミナ粒子に改善された機械強度を提供するのは、事実上、マクロ細孔のこの分散であり、このことが特に重要であるのは、それらが触媒反応における担体として用いられる場合である。
【0050】
有利には、球状アルミナ粒子の安定充填密度(settled packing density:SPD)値は、0.4〜0.8g/mLの範囲内、好ましくは0.5〜0.7g/mLの範囲内、特に好ましくは0.5〜0.6g/mLの範囲内である。SPDは、球状粒子を、容積がすでに決定されている標本に導入し、次いで、振動により、それらを容積が一定になるまで充填することによって測定される。安定化した物の見かけ密度は、導入された質量と充填後に占められた容積を比較することによって計算される。測定における不確実度は、一般的に、±0.01g/mL程度である。
【0051】
それ故に、本発明の球状アルミナ粒子は、それらが触媒担体として用いられた場合に、高密度担体(例えば、約0.6〜0.7g/mLの安定充填密度を有するもの)として知られるアルミナ担体についての要求並びに低密度担体(例えば、約0.5〜0.6g/mLの安定充填密度を有するもの)として知られるアルミナ担体についての要求を満たすように用いられ得る。
【0052】
好ましくは、前記粒子の安定充填密度(SPD)についての値は、0.5〜0.6g/mLの範囲内である。
【0053】
本発明の一つの目的は、触媒反応器における使用に満足な機械強度を有する球状アルミナ粒子を提案することにある。本発明の球状アルミナ粒子の平均粒子圧潰強度(grain crushing strength:GCS)値は、有利には少なくとも25N、好ましくは少なくとも30Nである。
【0054】
GCSについての値は、規格化試験(ASTM規格D4179-01)によって得られ、この規格化試験は、ミリメートル寸法の物体、例えば、本発明の場合ビーズを、破裂を発生させる圧縮力に付すことからなる。この試験は、材料の強度の間接的測定値を得るために用いられる。
【0055】
分析は、個々に取られた所定数の粒子にわたって、典型的には、50〜200個の範囲内、好ましくは100〜200個の範囲内である多数の粒子にわたって繰り返される。測定された横方向の圧潰時の破裂力の平均は、平均GCSを構成し、これは、球状粒子の場合には力の単位(N)で表される。
【0056】
(球状アルミナ粒子の調製方法)
本発明の球状アルミナ粒子において観察される特定の細孔分布は、主として、固体細孔形成剤または液体細孔形成剤のいずれかを用いるそれらの調製方法に起因する。
【0057】
(固体細孔形成剤を用いるバリエーション)
それ故に、第1のバリエーションによると、本発明は、本発明による球状アルミナ粒子の調製方法であって、以下の工程:
a) 水、酸および少なくとも1種のベーマイト粉体を含む懸濁液を調製する工程、
b) 0.05〜30μmの範囲内の粒子サイズを有する固体細孔形成剤を、工程a)において得られた懸濁液に加える工程、
c) 工程b)において得られた懸濁液を混合して、前記混合物の粘度が200〜700mPa・sの範囲内であるようにする工程、
d) 工程c)において得られた混合物を用いるドロップ凝固によって球状粒子に形付けする工程、
e) 工程d)において得られた粒子を乾燥させる工程、
f) 工程e)において得られた粒子を焼成する工程
を含む、方法に関する。
【0058】
上記調製方法の工程a)において、水、酸および少なくとも1種のベーマイト粉体を含む懸濁液が調製される。
【0059】
用語「ベーマイト粉体」は、式AlO(OH)を有し、粉体の形態にあり、アルミナゲルとしても知られているオキシ水酸化アルミニウムを意味する。ベーマイトは、種々のタイプで存在する。用いられるアルミナ前駆体は、一般式Al・nHOを満たす。特に、アルミナの水和物、例えば、ハイドラーギライト、ギブサイト、バイヤライト、ベーマイトまたは擬ベーマイトおよび無定形または本質的に無定形なアルミナゲルが用いられてよい。あらゆる組合せにおけるこれらの生成物の混合物が採用されてもよい。
【0060】
ベーマイト粉体の種類およびその固有の細孔容積に応じて、細孔形成剤の量は、適用の想定全細孔容積を達成するように調節される。
【0061】
所与のベーマイトについて、細孔形成剤の量を増量させると、細孔容積が増えかつ機械強度が低下することになる。所与のベーマイト/細孔形成剤の量について、本発明は、D90/D50比によって表される、マクロ細孔の分布を最適にして、その結果、改善された平均粒子圧潰強度(GCS)値がもたらされ、それ故に、改善された機械強度が得られることを提案する。
【0062】
工程a)の懸濁液は、酸水溶液に1種以上のタイプのベーマイト粉体を加えたものを、激しい撹拌を伴って混合することによって調製される。
【0063】
ベーマイト懸濁液の調製の間に、アルミナのチャージ(charge)を加えることが可能である。Alの重量%として表される、採用されるチャージの量は、懸濁液中のAlの全等価重量に対して30重量%以下である。このチャージは、遷移アルミナとして知られており、少なくとも1種のロー、カイ、エータ、ガンマ、カッパ、シータ、デルタおよびアルファ相を含むアルミナによって形成される群から選択されてよい。アルミナチャージは、形付けされたアルミナ体を粉砕・篩い分けすることによって得られたアルミナの粉体の形態または粒子の形態であってよい;粉砕の後、これらの粒子の平均径は50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。本明細書において用いられた場合の用語「中位径」は、容積による粒子の50%がより大きな径を有し、50%がより小さい径を有するような等価な球状の径を示す。
【0064】
懸濁液中に入れられる酸の量は、ベーマイト源またはチャージのものへの複数種の源(懸濁液中に存在する場合)の乾燥物に対する前記酸の質量の比が、0.5〜20重量%の範囲内、好ましくは1〜15重量%の範囲内であるようにされる。例として、酸水溶液は、HNOまたはHSO等の強鉱酸の溶液である。
【0065】
懸濁液中に入れられる水の割合は、乾燥物(Alの当量で表される、ベーマイト粉体プラスあらゆるチャージの質量に相当する)対混合物の水の全質量の比が10〜50重量%の範囲内、好ましくは15〜40重量%の範囲内であるように計算される。
【0066】
場合によっては、懸濁液は、第IA族、第IIA族、第IIIA族、第IVA族、第VA族から選択される1種以上の元素の塩を含んでよく、これらは、以下に記載される触媒におけるプロモータとして作用する。これらの元素は、それ故に、乾燥および焼成の後に最終球状粒子に組み入れられることになる。金属性塩(単数種または複数種)の割合は、焼成後の最終生成物中の第IA族、第IIA族、第IIIA族、第IVA族、第VA族からの元素の重量による量が、0.01〜2重量%の範囲内、好ましくは0.05〜1重量%の範囲内であるように計算される。
【0067】
上記調製方法の工程b)において、0.05〜30μmの範囲内の粒子サイズを有する固体細孔形成剤が工程a)において得られた懸濁液に加えられる。
【0068】
固体細孔形成剤は、単独でまたは溶媒中に分散させられて加えられてよい。
【0069】
溶媒中に分散させられてそれが加えられる場合、溶媒は、水または有機相であってよい(非混和性の有機相が、グリース、油および鉱物蝋、脂肪、炭化水素およびオイルカットから選択されてよい)。好ましくは、有機相は、直鎖パラフィンおよびイソパラフィンによって形成されかつ220〜350℃の範囲内の沸点を有する10〜14個の炭素原子を含有するパラフィン性留分である。好ましくは、溶媒は水である。
【0070】
固体細孔形成剤は、デンプン(米、トウモロコシ、小麦、トウモロコシ、エンドウマメ等)、改変型デンプン、粉(ジャガイモ類、サツマイモ、マニオク等)、ラテックス粒子、ポリスチレン、またはアクリル、例えば、市販の生成物(Duramax(登録商標)B1000、B1014、B1007(Rohm & Haasから)、Mowilith(登録商標)(Clariantから)等)、多糖類、例えば、ブドウ糖、デキストリン、アルギナート、あるいはカーボンブラック粒子、おがくずまたは他の粉類から選択される。好ましくは、固体細孔形成剤は、デンプン、改変型デンプンおよび粉類から選択される。
【0071】
固体細孔形成剤粒子のサイズは、0.05μm(50nm)〜30μm(30000nm)の範囲内、好ましくは1μm(1000nm)〜5μm(5000nm)の範囲内である。用語「サイズ」は、固体細孔形成剤の粒子の中位径を意味する。本発明によると、マクロ細孔の中位径は、細孔形成剤の選択によって、特に、固体細孔形成剤粒子のサイズの選択によって調節可能である。
【0072】
細孔形成剤の質量対酸化物(ベーマイトおよび任意のチャージ)の全質量の比として表される固体細孔形成剤の割合は、0.2〜50%の範囲内、好ましくは0.5〜40%の範囲内である。
【0073】
代替の実施形態において、せん断工程b”)が、固体細孔形成剤を用いる調製方法における工程b)と工程c)の間に行われ、該工程において、工程b)において得られた懸濁液は、1000〜200000s−1の範囲内のせん断速度で機能する分散機を活用して分散させられる。この工程は、工程b)において得られた懸濁液中の固体細孔形成剤の粒子の脱凝集作用を向上させるために用いられ得る。
【0074】
上記調製方法の工程c)によると、工程b)において得られた懸濁液は混合され、前記混合物の粘度は、200〜700mPa・sの範囲内、好ましくは250〜400mPa・sの範囲内とされる。それ故に、溶液は、オイルドロップヘッドのノズルを通じて滴下するのに適したレオロジー特性を有する。
【0075】
混合工程c)は、所望の粘度を生じさせることができるあらゆる混合デバイスを用いて行われてよく、例えば、3枚の傾斜刃(inclined blade)を有するタイプのロータを有するものである。この工程において適用されるせん断速度は、一般的には、50〜500s−1の範囲内である。
【0076】
用語「粘度」は、周囲温度で、例えば、100s−1のせん断速度を有する、平行プレート型またはコーンプレート型の粘度計を用いて測定される動粘度を意味する。
【0077】
上記調製方法の工程d)によると、球状アルミナ粒子は、オイルドロップ技術としても知られているドロップ凝固によって、工程c)において得られた混合物から出発して形付けされる。
【0078】
この方法は、工程c)において得られた混合物、例えば、混合物(アルミナ懸濁液+固体細孔形成剤)を、較正されたサイズのオリフィスを有するノズルによって構成されるオイルドロップヘッドに通して液滴を形成することからなる。オイルドロップヘッドは、上部有機相と塩基性水性相によって構成される下部相とを含有するカラムの頭部に置かれる。有機相は、水の密度よりわずかに低い密度をそれが有するように選択される。
【0079】
好ましくは、粒子に形付けするための工程d)は、以下の工程:
d1) ノズルを備えたオイルドロップヘッドに混合物を移す工程であって、該ノズルのオリフィスは、液滴を形成するように較正されている、工程;
d2) 重力下に混合物を、上部部分における有機相と、下部部分における塩基性水性相とを含有するカラムに滴下し、塩基性水性相の足部から球状粒子を採取する工程
を含む。
【0080】
液滴が有機相中を通過するときに球体が形成され、その一方で、ゲル化(または凝固)が水相中で起こる。
【0081】
塩基水性相中の粒子の界面の通過と凝固を促進するように水相に界面活性剤タイプの添加剤が加えられてよい。
【0082】
本発明の関連において、非混和性の有機相は、グリース、油および鉱物蝋、脂肪、炭化水素およびオイルカットから選択されてよい。好ましくは、有機相は、10〜14個の炭素原子を含有し、直鎖パラフィンおよびイソパラフィンによって形成され、220〜350℃の範囲内の沸点を有するパラフィン性留分である。
【0083】
塩基性水性相は、例えば、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム溶液、アミン溶液である。好ましくは、塩基性水性相は、アンモニア溶液である。
【0084】
尿素等の化合物が、工程a)の懸濁液に導入され、その後に、カラムの下部水性相において分解されてもよい。この化合物は、特許US4542113によると、粘度上昇の容易な調整を提供するために用いられ得る。
【0085】
球状粒子の形成工程の終わりに、粒子は、水性相から回収されかつ分離され、例えば、ふるいが用いられる。出願EP 0001023において推奨されるように、この方法で形成された粒子が1回以上の成熟工程を経ることも可能である。
【0086】
上記調製方法の工程e)において、工程d)において得られた粒子は、乾燥させられる。
【0087】
本発明の方法の球状粒子を乾燥させる工程e)は、40〜150℃の範囲内の温度で、乾燥空気中または湿潤空気中、一般的には0.5〜20時間にわたって行われる。乾燥の実施要綱は、場合によっては、1回以上の一定の温度段階を含んでよい。それは、場合によっては、乾燥の間に湿度を変動させることを必要としてよく、好ましくは乾燥空気の重量(kg)当たり水10〜1000g、より好ましくは乾燥空気の重量(kg)当たり水40〜1000gである。
【0088】
上記調製方法の工程f)において、工程e)において得られた粒子は、焼成される。
【0089】
球状粒子の焼成工程f)は、450〜900℃の範囲内、好ましくは550〜800℃の範囲内の温度で、0.5〜12時間にわたって、好ましくは1〜8時間の範囲内、より好ましくは1〜5時間の範囲内で行われる。この焼成工程は、1回以上の一定の温度段階を含んでよい。
【0090】
(液体細孔形成剤を用いるバリエーション)
第2のバリエーションによると、本発明はまた、本発明による球状アルミナ粒子の調製方法であって、以下の工程:
a) 水、酸および少なくとも1種のベーマイト粉体を含む懸濁液を調製する工程、
b’) 少なくとも1種の液体細孔形成剤、少なくとも1種の界面活性剤および場合による水を、または少なくとも1種の液体細孔形成剤、少なくとも1種の界面活性剤および水を含むエマルジョンを、工程a)において得られた懸濁液に加える工程、
b”) 1000〜200000s−1の範囲内のせん断速度で機能する分散機を活用して工程b’)において得られた懸濁液を分散させる工程、
c) 工程b”)において分散させられた懸濁液を混合して、前記混合物の粘度が200〜700mPa・sの範囲内であるようにする工程、
d) 工程c)において得られた混合物を用いたドロップ凝固によって球状粒子に形付けする工程、
e) 工程d)において得られた粒子を乾燥させる工程、
f) 工程e)において得られた粒子を焼成する工程
を含む、方法に関する。
【0091】
液体細孔形成剤を用いるこの調製方法の工程a)は、固体細孔形成剤を用いる調製方法について記載された工程a)と厳密に同一である。
【0092】
上記調製方法の工程b’)において、少なくとも1種の液体細孔形成剤、少なくとも1種の界面活性剤および場合による水、または少なくとも1種の液体細孔形成剤、少なくとも1種の界面活性剤および水を含むエマルジョンが、工程a)の懸濁液に加えられる。
【0093】
液体細孔形成剤は、少なくとも1種の液体細孔形成剤、少なくとも1種の界面活性剤および水を含むエマルジョンの形態で加えられてよい。エマルジョンが工程b’)において調製される場合、エマルジョンは、細孔形成剤、界面活性剤および水を混合することによって調製される。エマルジョン中の水の量は、混合物(ベーマイトの懸濁液およびエマルジョン)に相当する水の全量の5〜20重量%を示す。エマルジョンは、15〜60℃の範囲内、好ましくは20〜40℃の範囲内の温度で調製される。
【0094】
液体細孔形成剤、界面活性剤および場合による水を、ベーマイトを含有する水性懸濁液に直接的に、すなわち、初期エマルジョンを形成することなく加えることまたはそれらを同時にまたは連続的な工程において加えることも可能である。この場合、以下に記載される同じ割合の種々の成分が用いられる。
【0095】
液体細孔形成剤は、完全には水に混和性というわけではない生成物であり、燃焼によって除去され得、周囲温度において液体である。液体細孔形成剤は、グリース、油および鉱物蝋、脂肪、炭化水素およびオイルカットから選択されてよい。例として、液体細孔形成剤は、10〜14個の炭素原子を含有し、直鎖パラフィンおよびイソパラフィンによって形成され、220〜350℃の範囲内の沸点を有するパラフィン性留分である。
【0096】
細孔形成剤の質量対酸化物(ベーマイトおよび任意のチャージ)の全質量の比として表される、液体細孔形成剤の割合は、0.2〜50重量%の範囲内、好ましくは0.5〜45重量%の範囲内である。
【0097】
液体細孔形成剤に取って代わる水中に混和性でない相は、界面活性剤を活用して分散させられる。特に適切な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤またはイオン性界面活性剤であり、これらは、単独でまたは混合物として用いられる。あらゆる非イオン性の、アニオン性のまたはカチオン性の界面活性剤または乳化混合物が用いられてよく、HLBは、7〜16の範囲内であり、水中油エマルジョンを生じさせることができる:任意の市販の調合物が挙げられてよく、例えば、Galoryl(登録商標)EM10またはOparyl(登録商標)EM10であり、または、それは、化学族、例えば、エトキシ化されてもされてなくてもよいソルビタンのエステル(例えばCRODAからのTween(登録商標)80およびSpan(登録商標)80)、エチレンオキシド(ethylene oxide:EO)/プロピレンオキシド(propylene oxide:PO)ブロック共重合体(例えばCRODAからのSynperonic(登録商標)PEL121)、エトキシ化脂肪酸またはアルコール(例えばSEPPICからのSimulsol(登録商標)ox1309LまたはSolvayからのRhodasurf(登録商標)TR/6)、エトキシ化脂肪酸エステル(例えばCRODAからのAtlas(登録商標)G1086)、エトキシ化オクチルフェノール(例えばUnion CarbideからのTRITON(登録商標)X-100)から生じさせられてよく、これらは、単独でまたは混合物として用いられる。
【0098】
用語「HLB」は、「hydrophilic/lipophilic balance:親水性親油性バランス」を表す。非イオン性化合物により具体的に適合させられると、この表記は、表面活性剤の分子の親水性の性質と親油性の性質との間の関係を表現し、結果として、これらの化合物の可能な適用をそれらの組成に応じて予測することができる。HLB分類は、脂肪酸鎖と水に可溶な基との間の比によって確立され、0(完全に親油性)と20(完全に親水性)との間で変動する。界面活性剤のHLB値は、その化学構造が完全に定義される場合に計算されてよく、または、それは、実験的に決定されてよい。HLBは、デイビススケール(Davies scale)で分類され、これは、1と20との間で推移する。値1は、オレイン酸に対応する一方で、値20は、オレイン酸カリウムに対応する。結論として、オレイン酸を徐々に中和することによって、1〜20の範囲内のHLB値を有する全ての中間的混合物を得ることおよびそれらを未知のHLB値を有する他の界面活性剤と比較してそれらの特性を決定することが可能である。
【0099】
エマルジョン中に存在する界面活性剤の割合は、界面活性剤の質量対細孔形成剤の質量の比に等しいとして規定される。この比は、1〜25重量%の範囲内、好ましくは1〜15重量%の範囲内、非常に好ましくは3〜10重量%の範囲内である。
【0100】
上記調製方法の工程b”)において、工程b’)において得られた懸濁液は、1000〜200000s−1の範囲内のせん断速度で機能する分散機を用いて分散させられる。
【0101】
用語「せん断速度」は、せん断のスピードを意味する。工程b”)において得られた懸濁液に規定されたようなせん断速度の適用は、比D90/D50によって表されるマクロ細孔分布を最適にするために用いられ得、これにより、改善された平均粒子圧潰強度値(GCS)およびそれ故に改善された機械強度がもたらされる。この工程b”)の間に前記混合物に適用されるせん断速度により、液体細孔形成剤は、懸濁液に含まれるアルミナマトリクス中に分散させられ得る。実際に、この工程の間に、混合物中に含有される液体細孔形成剤は、前記混合物中に含有される前記アルミナマトリクス(ベーマイト)中に、実質的に均質なサイズの小液滴の形態で均質に分散させられ、焼成の後に、機械強度の改善の要因であるマクロ細孔性が発生する。
【0102】
工程b”)における分散は、当業者に知られている任意のバッチ式または連続式のダイナミックミキサを活用する任意の適切な手段を用いて行われてよい。回転式撹拌器によって構成されたデバイスが特に適しており、この回転撹拌器は、1以上のロータを含み、このロータは、シャフト上に固定され、このシャフトは、10〜10W/m程度、より特定的には10〜10W/m程度の単位容積当たりの力を放散する。せん断は、ロータの特徴、特にその幾何学的形状に依存する。このタイプのデバイスは、例えば、ロータ・ステータミキサ(rotor and stator mixer)(例えば、商標Ultramix(登録商標)の下でVMIRayneriによって販売されているもの)、コロイダルミル、高圧ホモジナイザ、あるいは、超音波デバイスである。
【0103】
用語「せん断」は、「せん断速度」または「速度勾配(velocity gradient)」を意味するとして理解されるべきであり、これらは、当業者にとって2つの同義表現である。撹拌タンクにおける「平均速度勾配」の観念は、例えば、Michel Roustan、Jean-Claude Pharamond、Alain Lineによる出版物「Techniques de l'ingenieur, traite Genie des Procedes - J3 800 , page 13」中の論文「Agitation Melange - concepts theoriques de base」[混合および撹拌−基礎的な理論概念]に定義される。この観念は、例えば、特許US 6 638 918において用いられており、この特許には、先行する参照と同様にそれが記載されている。それ故に、分散した媒体中の平均せん断(Γmean)は、以下の式で表され得る:
【0104】
【数1】
【0105】
式中、kは、比例定数であり、ミキサの刃のタイプおよびミキサタンクの外形に依存し、Nは、撹拌ローラのスピード(s−1)である。Γmeanは、s−1で表される。式:
【0106】
【数2】
【0107】
によって表される周速度は、せん断のこの観念と関連し、式中、Dは、メートルで表される撹拌ロータの径であり、Nは、s−1で表されるそれらの回転スピードである。
【0108】
本発明によると、用語「せん断下の混合」は、典型的には4ms−1超、好ましくは10ms−1超、一層より好ましくは10〜40ms−1の範囲内の周速度で撹拌することによって生じた分散を意味し、これは、分散した媒体にせん断速度を与え、これは、典型的には1000〜200000s−1の範囲内、好ましくは1300〜20000s−1の範囲内である。
【0109】
せん断の所望のレベルに応じて、当業者は、適切な幾何学的形状を有する撹拌システムを用いることおよび所望の回転の速度およびせん断のレベルに達するのに十分な回転スピードでそれを用いることができるだろう。撹拌システムの性質および反応器のサイズに応じて、回転速度は、例えば100〜30000rpmの範囲内であってよい。
【0110】
当業者は、容易に、この操作様式を推定することおよびそれを同一タイプの他のツールに置き換えることができるだろう。例として、当業者は、撹拌機のタイプおよび発生する電力に応じた平均液滴サイズをターゲットにするために、C.Dalmazzoneによる論文Generation mecanique des emulsions[Mechanical emulsion generation:機械的エマルジョン発生]、Oil & Gas Science Technology, 55, 2000, n°3, pp. 281-305に向かうことができるだろう。
【0111】
バッチ分散の場合、工程b”)における分散は、1〜60分の範囲内、好ましくは1〜30分の範囲内、より好ましくは1〜15分の範囲内、より特定的に好ましくは1〜5分の範囲内の期間にわたって行われる。
【0112】
工程b”)において分散が生じる際の温度は、20〜45℃の範囲内、好ましくは20〜40℃の範囲内である。しかしながら、界面活性剤が品質劣化するかもしれない場合にはシステムを加熱することを避けるように注意がなされるべきである。
【0113】
液体細孔形成剤を用いる本調製方法の混合工程c)、形付け工程d)、乾燥工程e)および焼成工程f)は、固体細孔形成剤を用いる調製方法について記載された工程c)、d)、e)およびf)と厳密に同一である。
【0114】
(固体細孔形成剤と液体細孔形成剤とを用いるバリエーション)
上記の調製方法の2つのバリエーションが、記載されたように単独で、または、技術的および実際的な制約に応じた他の混成の調製実施形態をもたらすように混合して行われてよい。
【0115】
一実施形態では、液体細孔形成剤を用いる調製方法において、0.05〜30μmの範囲内の粒子サイズを有する少なくとも1種の固体細孔形成剤が工程b’)の懸濁液に加えられる。この場合、本調製方法は、固体細孔形成剤および液体細孔形成剤の存在下に実施される。この調製方法は、それ故に、三峰性の細孔性(ベーマイトの板状晶の組織化に由来するメソ細孔性および2つのサイズのマクロ細孔性、一つは、液体細孔形成剤によって提供され、他方は、固体細孔形成剤によって提供される)を有してよい球状アルミナ粒子を得るために用いられ得る。
【0116】
(触媒担体としての球状アルミナ粒子の使用)
球状アルミナ粒子は、触媒反応のための触媒担体として、特に、ガソリンの接触改質において適用されるものである。
【0117】
接触改質方法は、原油の直留蒸留および/または他の精製方法、例えば、接触分解、熱分解等からのガソリンフラクションのオクタン価を大きく増大させるために用いられ得る。接触改質方法は、蒸留によって得られた重質ガソリンを品質向上させるために精製業者によって非常に広範に用いられている方法である。分子当たり約5〜12個の炭素原子を含有する、重質ガソリン供給原料の炭化水素(特に、パラフィンおよびナフテン)は、この方法の間に芳香族炭化水素および分枝パラフィンに変換される。この変換は、高温(平均で480〜520℃の範囲内)、低圧から中間圧(0.2〜2.5MPa)で、および触媒の存在下に得られる。接触改質により、リフォメートが生じ、これは、オイルカットのオクタン価を大きく改善するために用いられ得、それは、水素を生じさせる。リフォメートは、主に、C化合物(少なくとも5個の炭素原子を含有する)によって形成される。
【0118】
接触改質の間に処理される典型的な供給原料は、パラフィン性、ナフテン性および芳香族性の炭化水素を含み、これらは、分子当たり5〜12個の炭素原子を含有するものである。この供給原料は、特に、その密度およびその重量組成によって規定される。この供給原料は、本発明の触媒と、300〜700℃の範囲内、好ましくは350〜550℃の範囲内、より好ましくは380〜530℃の範囲内の温度で接触させられる。処理される供給原料の質量流量/触媒の単位質量は、0.1〜10kg/(kg・h)の間、好ましくは0.5〜6kg/(kg・h)の範囲内で変動してよい。操作圧力は、大気圧(0.1MPa)と4MPaとの間、好ましくは0.2〜3MPaの範囲内に固定されてよい。生じた水素の一部は、リサイクルされて、リサイクルされた水素対炭化水素供給原料のモル比:0.1〜10の範囲内、好ましくは1〜8の範囲内が得られる。
【0119】
改質触媒は、細孔性固体であり、一般的に、担体としての非常に高い純度のアルミナ、塩素、白金および少なくとも1種の追加金属を含み、追加金属は、第IA族、第IIA族、第VIB族、第VIIIB族、第IIIA族および第IVA族からの金属によって形成される群から選択される。これらは、二機能性触媒である。すなわち、それらは、2種の機能基である、金属性の機能基および酸機能基によって構成され、機能基のそれぞれは、触媒の活性において明確な役割を有している。金属性の機能基は、必然的に、ナフテンおよびパラフィンの脱水素およびコークス前駆体の水素化を保証する。酸機能基は、ナフテンおよびパラフィンの異性化およびパラフィンの環化を保証する。酸機能基は、担体自体、通常には、ハロゲン化した高純度アルミナによって提供される。金属性の機能基は、白金族からの貴金属および少なくとも1種の追加金属、連続的方法(移動床)の場合には主としてスズおよび半再生方法(固定床)の場合には主としてレニウムによって提供される。
【0120】
本発明はまた、周期律表の第VIIIB族から選択される少なくとも1種の貴金属、特に、白金を、本発明の球状アルミナ粒子によって形成された担体上に沈着させられて含む触媒に関する。本発明の触媒中の貴金属の量は、0.02〜2重量%の範囲内、好ましくは0.05〜1.5重量%の範囲内、より好ましくは0.1〜0.8重量%の範囲内である。
【0121】
本発明の触媒は、場合によっては、元素周期律分類の第IA族、第IIA族、第IIIA族、第IVA族、および第VA族から選択される少なくとも1種のプロモータを含んでもよい。これらのプロモータ元素は、触媒中に、酸化物として表される量;一般的には、触媒の重量で0.01〜2%の範囲内、好ましくは0.05〜1重量%の範囲内で存在する。
【0122】
本発明の触媒は、好ましくは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素によって構成される群から選択されるハロゲン化化合物を含んでもよい。ハロゲン化化合物の量は、焼成後の触媒の重量で、一般的に0.1〜8%の範囲内、好ましくは0.2〜5重量%の範囲内である。好ましくは、ハロゲン化化合物は塩素である。
【0123】
触媒は、例えば、FR2932101またはEP 2 441 516に記載されているような当業者に知られている調製方法を用いて調製される。
【0124】
一実施形態によると、前記粒子の形成の間に「プロモータ」と称される元素を組み入れることが可能である。この目的のために、元素周期律分類からの第IA族、第IIA族、第IIIA族、第IVA族、第VA族から選択される1種以上の元素の可溶な塩が、ベーマイト粉体の水性懸濁液に加えられる。別の実施形態によると、プロモータの全部または一部を、すでに成形された担体に、例えば、含浸によって組み入れることが可能である。
【0125】
接触改質において触媒を用いる前に、それは、水素中の処理を経て、当業者に知られている操作条件下に活性である金属相が得られる。
【0126】
例として、オイルカットを改質するための触媒としての使用のための触媒は、白金、スズ(場合によっては他の金属)および塩素を、本発明による球状アルミナ担体上に沈着させられて含んでよい。
【0127】
最後に、触媒は、炭化水素または他の有機化合物の水蒸気改質、分解、水素化分解、水素化、脱水素、または脱水環化において適用されるものであってもよい。このタイプの触媒は、連続的な移動床接触改質方法において特に適用されるものである。
【0128】
(実施例)
下記実施例1〜4の全てにおいて、オイルドロップ方法のために用いられる、ベーマイトおよび細孔形成剤の懸濁液の混合物を調製するための段階(分散工程b”))のみが異なっている。この配合段階の後、系は、オイルドロップ方法に適合したレオロジー特性を有する懸濁液(粘度:250mPa・s)が得られるまで3傾斜刃ロータによる600rpmでの撹拌を経る(混合工程c))。粘度は、コーンプレート型粘度計を活用してせん断速度100s−1で測定された。
【0129】
オイルドロップカラムは、28g/Lの濃度のアンモニア性溶液および細孔形成剤として用いられるものと同一のオイルカットによって構成される有機溶液を装填され、エマルジョンが調製された(上部層としての有機相)。懸濁液は、較正されたノズルを用いて滴下された。ビーズ状物が、カラムの底部から回収され、120℃で12時間にわたって通風オーブン中に置かれた。それらは、次いで、乾燥空気中650℃で3時間にわたって焼成された。
【0130】
これらの実施例の全てについて、テクスチャ特徴(textural characteristics)は同等であり、調製および材料の機械的特性に関するD90/D50比の最適化の影響力が立証された。それ故に、これらの実施例は、制限するものではなく、異なる細孔形成剤の量/テクスチャを有する他のシステムに推定され得るだろう。
【0131】
(実施例1(比較))
実施例1の担体は、Sasolによって販売されているPural SB3タイプのベーマイトを用いて調製された。
【0132】
20%の鉱物材料(Alの重量%として表される)を含有する懸濁液が、体積測定中位径50μmを有するγアルミナのチャージとPural SB3ベーマイト粉体とを、3.6重量%のHNO/Alを含有する酸性水溶液中で混合することによって調製された。
【0133】
固体部分であるAlは、88重量%のベーマイトおよび12%のγアルミナから構成されていた。この懸濁液は、さらに、細孔形成剤および界面活性剤を含有していた。細孔形成剤は、10〜12個の炭素原子を含有するパラフィンの混合物を含む有機相であり、沸点は、約290℃であり、密度は、0.75g/cmであった。界面活性剤は、Galoryl(登録商標)EM10であり、これは、市販の乳化剤であった。これらの化合物は、以下の割合で導入された:細孔形成剤/水の重量による割合=9.4%および界面活性剤/細孔形成剤の重量による割合=6%。
【0134】
この実施例において、化合物の全てを加えた後に、懸濁液は、直接的な混合を経て、混合物の粘度が250〜400mPa・sの範囲内であるようにされた。この粘度において、懸濁液は、ノズルを通じて滴下するのに適したレオロジー特性を有していた。この実施例(本発明に合致していなかった)において、分散工程b”)は、それ故に、行われなかった。乾燥および焼成の後に得られたビーズ状物の特徴は、表1に与えられる。
【0135】
(実施例2(本発明に合致する))
材料の組成は、実施例1におけるのと同一であった。この実施例では、工程b”)の乳化条件(継続期間、塗布されるスピード)が調節された。この実施例では、化合物の全てを加えた後に、懸濁液は、ロータ/スタータデバイス中を通され、このデバイスにおいて、せん断速度は、5分にわたって1400s−1であった。次に、懸濁液は、撹拌されて、混合物の粘度が250〜400mPa・sの範囲内であるようにされた。この粘度において、懸濁液は、ノズルを通じて滴下するのに適したレオロジー特性を有していた。乾燥および焼成の後に得られたビーズ状物の特徴が、表1に与えられる。
【0136】
同一のテクスチャ特性について、分散システム(工程c)なしで調製された実施例1のビーズ状物と比較した機械強度における改善が、比D90/D50における低減と結び付けられたことが留意されるべきである。
【0137】
(実施例3(本発明に合致する))
材料の組成は、実施例1におけるのと同一であった。この実施例では、工程b”)の乳化条件(継続期間、塗布されるスピード)が調節された。この実施例では、化合物の全てを加えた後に、懸濁液は、ロータ/スタータデバイス中を通され、このデバイスにおいて、せん断速度は、5分にわたって5000s−1であった。次に、懸濁液は、撹拌されて、混合物の粘度が250〜400mPa・sの範囲内であるようにされた。この粘度において、懸濁液は、ノズルを通じて滴下するのに適したレオロジー特性を有していた。乾燥および焼成の後に得られたビーズ状物の特徴は、表1に与えられる。
【0138】
分散システムにおいて実施例2と比べてせん断速度を増加させることは、比D90/D50が低減させられ得るだろうことを意味し、これは、機械強度について直接的な結論を有しており、それは、改善させられたことが留意されるべきである。
【0139】
(実施例4(本発明に合致する))
材料の組成は、実施例1におけるのと同一であった。この実施例では、工程b”)の乳化条件(継続期間、塗布されるスピード)が調節された。この実施例では、化合物の全てを加えた後に、懸濁液は、ロータ/スタータデバイス中を通され、このデバイスにおいて、せん断速度は、1分30秒にわたって5000s−1であった。次に、懸濁液は、撹拌されて、混合物の粘度が250〜400mPa・sの範囲内にあるようにされた。この粘度において、懸濁液は、ノズルを通じて滴下するのに適したレオロジー特性を有していた。乾燥および焼成の後に得られたビーズ状物の特徴は、表に与えられる。
【0140】
同一のせん断速度について、実施例3と比較した乳化期間を低減させたことより、比D90/D50が増加し、これは、わずかに品質劣化した機械強度について直接的な結論を有していたことが留意されるべきである。
【0141】
実施例5〜8には、固体細孔形成剤の存在下、場合によっては、液体細孔形成剤との混合物としての固体細孔形成剤の存在下での、本発明による、ビーズ状物とも称される粒子の調製が記載されている。
【0142】
(実施例5(本発明に合致する))
デンプン(Alに対して25重量%)を水中に懸濁させ、これを、実施例1のコロイド状態に分散したベーマイトの懸濁液に加えた。懸濁液は、撹拌されて、混合物の粘度が250〜400mPa・sの範囲内にされた。この粘度において、懸濁液は、ノズルを通じて滴下するのに適したレオロジー特性を有していた。乾燥および焼成の後に得られたビーズ状物の特徴が表1に与えられる。
【0143】
比D90/D50は、3程度のものであり、用いられるデンプンの供給源と直接的に関連し、改善されたGCSを得ることを可能にした。
【0144】
(実施例6(本発明に合致する))
この実施例では、マクロ細孔性が、トウモロコシデンプンにより50%に増加させられ、実施例1に記載されたようなエマルジョンにより50%に増加させられた。
【0145】
この実施例では、化合物の全てを加えた後に、懸濁液は、ロータ/スタータデバイス中を通され、このデバイスにおいて、せん断は、5分にわたって10000s−1であった。次に、懸濁液は、撹拌されて、混合物の粘度が250〜400mPa・sの範囲内であるようにされた。この粘度において、懸濁液は、ノズルを通じて滴下するのに適したレオロジー特性を有していた。乾燥および焼成の後に得られたビーズ状物の特徴は、表に与えられる。
【0146】
比D90/D50は、2.61であり、GCSは、改善された。
【0147】
(実施例7(本発明に合致する))
この実施例では、マクロ細孔性が、米デンプンにより50%に増加させられ、かつ、実施例1に記載されたようなエマルジョンにより50%に増加させられた。
【0148】
この実施例では、化合物の全てを加えた後に、懸濁液は、ロータ/スタータデバイス中を通され、このデバイスにおいて、せん断は、5分にわたって10000s−1であった。次に、懸濁液は、撹拌されて、混合物の粘度が250〜400mPa・sの範囲内にあるようにされた。この粘度において、懸濁液は、ノズルを通じて滴下するのに適したレオロジー特性を有していた。乾燥および焼成の後に得られたビーズ状物の特徴は、表に与えられる。
【0149】
比D90/D50は、3.55であり、GCSは改善された。
【0150】
(実施例8(本発明に合致する))
この実施例では、マクロ細孔性は、米デンプンにより25%に、実施例1において記載されたようなエマルジョンにより75%に増加させられた。
【0151】
懸濁液は、撹拌されて、混合物の粘度が250〜400mPa・sの範囲内であるようにされた。この粘度において、懸濁液は、ノズルを通じて滴下するのに適したレオロジー特性を有していた。乾燥および焼成の後に得られたビーズ状物の特徴は、表1に与えられる。
【0152】
比D90/D50は、2.90程度のものであり、用いられたデンプン源に直接的に関連しており、GCSは、改善された。
【0153】
【表1】