特許第6924617号(P6924617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6924617
(24)【登録日】2021年8月4日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20210812BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20210812BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20210812BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20210812BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   G09G3/36
   G09G3/34 J
   G09G3/20 612U
   G09G3/20 642E
   G09G3/20 641P
   G02F1/13357
   G02F1/133 535
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-105858(P2017-105858)
(22)【出願日】2017年5月29日
(65)【公開番号】特開2018-200431(P2018-200431A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 睦
【審査官】 西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−237540(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/163107(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101494025(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 − 3/38
G02F 1/133
G02F 1/13357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示パネルと、
前記表示パネルに向かってバックライトを発光するためにA行B列(A、Bは正の整数、および1行1列を除く)に配置された(A×B)個のLEDとを備え、
前記A行B列のLEDの発光状態を表すD行列が、1行列の列データをA個含むA行A列のR行列とA行1列の行データをB個含むA行B列のC行列との積により表され、
前記C行列に含まれるA行1列の行データを供給するために、A行1列のLEDに沿って延伸する列信号線と、
前記1行列の列データと前記列信号線を通して供給された前記A行1列の行データとに基づいて前記LEDの発光状態を表す発光状態データを復号するために、前記列信号線に沿って配置される復号器と、
前記復号器により復号された発光状態データに基づいて前記LEDを駆動するドライバとをさらに備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記復号器が、各LEDに対応して1個設けられる請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記列信号線が、前記データを多重化して前記復号器に供給するためのB本の列信号線であり、
前記R行列に含まれるA個の1行列の列データを多重化して前記復号器に供給するためのA本の行信号線さらに備える請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記復号器が、隣接する複数列に配置された複数個のLEDに対応して1個設けられる請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記復号器が、(2m−1)行目及び(2m)行目であって(2k−1)列目及び(2k)列目に配置された4個のLEDに対応して1個設けられる(A、Bは偶数であり、m、kは正の整数)請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記列信号線が、(B/2)本の列信号線であり、
前記R行列に含まれるA個の1行列の列データを多重化して前記復号器に供給するための(A/2)本の行信号線さらに備える請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記列信号線が、B本の列信号線であり、
前記R行列に含まれるA個の1行列の列データを多重化して前記復号器に供給するためのA本の行信号線さらに備え、
(2m−1)行目の行信号線と(2m)行目の行信号線と(2k−1)列目の列信号線と(2k列目)の列信号線との4本の信号線が各復号器に接続される請求項5に記載の表示装置。
【請求項8】
前記D行列が、前記表示パネルにより表示される画像のN番目のフレーム(Nは自然数)に対応するD(N)行列と、(N+1)番目のフレームに対応するD(N+1)行列とを含み、
前記復号器に供給される1行列の列データとA行1列の行データとが、前記N番目のフレームに対応するD(N)行列と、前記(N+1)番目のフレームに対応するD(N+1)行列とに基づいて定められる請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記R行列がM系列符号であり、
前記表示パネルに表示される画像がランダム画像に近く、前記表示パネルに表示される画像を表す画像信号が前記M系列符号と相関の高い信号である時に、前記画像に含まれる画素を表すデータをすべて同じ値のデータとして扱う請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記R行列がアダマール行列であり、
多重化による前記発光状態データの飽和を避けるために前記発光状態データのゲインを変更するためのゲイン情報が、前記表示パネルに表示される画像を表す画像信号に応じて前記復号器に供給される請求項3、6及び7の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記列信号線が、B本の列信号線であり、
前記復号器が、前記列信号線により供給された行データと、前記復号器に設けられたメモリに記憶されている列データとに基づいて前記発光状態データを復号する請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表示する表示パネルを複数の表示領域に分割し、この複数の表示領域のそれぞれに対応するLED(発光ダイオード、Light Emitting Diode)のバックライトのための発光状態を独立して制御するローカルディミング機能を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を表示する表示パネルを複数の表示領域に分割し、この複数の表示領域のそれぞれに対応するLEDのバックライトのための発光状態を独立して制御するローカルディミング機能を備えた表示装置が従来技術として知られている(特許文献1)。
【0003】
この複数の表示領域に対応するLEDの発光状態を独立して制御するためには、各LEDに対して、独立したLEDドライバと、独立した制御信号のための信号線とが必要になる。表示領域の分割数を増やすほど、分解能の高いバックライト制御が可能となる。
【0004】
しかしながら、表示領域の分割数を増やすほど、独立した制御信号のための信号線の本数が増大するという問題が生じる。この信号線の本数を低減させる手法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/144178号パンフレット(2012年10月26日公開)
【特許文献2】国際公開第2014/017384号パンフレット(2014年01月30日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような特許文献2に記載の技術では、切換信号で選択されておらず、電源に接続されていないサブ期間は点灯できないという課題が残る。
【0007】
本発明の一態様は、表示パネルのバックライトのためのLEDの発光状態を、分割された複数の表示領域ごとに独立に制御するローカルディミングを少ない本数の信号線で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る表示装置は、画像を表示する表示パネルと、前記表示パネルに向かってバックライトを発光するためにA行B列(A、Bは正の整数、および1行1列を除く)に配置された(A×B)個のLEDとを備え、前記A行B列のLEDの発光状態を表すD行列が、1行列の列データをA個含むA行A列のR行列とA行1列の行データをB個含むA行B列のC行列との積により表され、前記C行列に含まれるA行1列の行データを供給するために、A行1列のLEDに沿って延伸する列信号線と、前記1行列の列データと前記列信号線を通して供給された前記A行1列の行データとに基づいて前記LEDの発光状態を表す発光状態データを復号するために、前記列信号線に沿って配置される復号器と、前記復号器により復号された発光状態データに基づいて前記LEDを駆動するドライバとをさらに備えることを特徴とする。
【0009】
なお、A行B列(A、Bは正の整数、および1行1列を除く)に配置された各々のLEDは、必ずしも単体(1個)で構成される必要はない。特許文献1の図1のように直列接続されたLED群や並列接続されたLED群、または、直列および並列の組み合わせで接続されたLED群を単体(1個)のLEDとして取り扱い、本明細書に記載の技術を適用することも可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、表示パネルのバックライトのためのLEDの発光状態を、分割された複数の表示領域ごとに独立に制御するローカルディミングを少ない本数の信号線で実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は実施形態1に係る表示装置の構成を模式的に示すブロック図であり、(b)は上記表示装置に設けられたLEDバックライトモジュールの構成を示すブロック図である。
図2】上記表示装置に設けられたLEDの発光状態に関連するD行列、R行列、C行列の関係を説明するための図である。
図3】(a)は上記表示装置に設けられたLEDの発光状態を表すD行列の一例を示す図であり、(b)は上記D行列に関連するR行列の一例を示す図であり、(c)は上記D行列に関連するC行列の一例を示す図である。
図4】(a)は比較例に係る表示装置の構成を模式的に示すブロック図であり、(b)は上記表示装置に設けられたLEDバックライトモジュールの構成を示すブロック図である。
図5】(a)は他の比較例に係る表示装置の構成を模式的に示すブロック図であり、(b)は上記表示装置に設けられたLEDバックライトモジュールの構成を示すブロック図である。
図6】(a)は実施形態2に係る表示装置の構成を模式的に示すブロック図であり、(b)は上記表示装置に設けられたLEDバックライトモジュールの構成を示すブロック図である。
図7】(a)は実施形態3に係る表示装置の構成を模式的に示すブロック図であり、(b)は上記表示装置に設けられたLEDバックライトモジュールの構成を示すブロック図である。
図8】(a)はアクティブマトリックス駆動方式の等価回路を使用したLCDの動作イメージを説明するための図であり、(b)はR行列が単位行列である場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0013】
〔実施形態1〕
(表示装置10の構成)
図1(a)は実施形態1に係る表示装置10の構成を模式的に示すブロック図であり、(b)は表示装置10に設けられたLEDバックライトモジュール2の構成を示すブロック図である。表示装置10は、画像を表示する表示パネル1と、表示パネル1に向かってバックライトを発光するためにA行B列(A、Bは正の整数、および1行1列を除く)に配置された(A×B)個のLEDバックライトモジュール2とを備える。図1ではA=B=7の例が示されている。各LEDバックライトモジュール2は、点灯率データ受信器3(復号器)とLEDドライバ4(ドライバ)とLED5とを有する。
【0014】
図2は表示装置10に設けられたLED5の発光状態に関連するD行列11、R行列12、C行列13の関係を説明するための図である。
【0015】
7行7列のLED5の点灯率(発光状態)を表すD行列11は、1行7列の列データ8を7個含むR行列12と7行1列の行データ9を7個含むC行列13との積により表される。
【0016】
ここで、逆行列が存在するR行列12を選択すれば、C行列13は以下の式で求まる。D行列11を「D」、R行列12を「R」、C行列13を「C」とすれば、
D=RC
−1D=R−1RC
−1D=C
上記の式でR行列12及びC行列13が求まり、任意のD行列11を表現することができる。
【0017】
表示装置10は、C行列13に含まれる7個の7行1列の行データ9を多重化して点灯率データ受信器3に供給するための7本の列信号線7と、R行列12に含まれる7個の1行7列の列データ8を多重化して点灯率データ受信器3に供給するための7本の行信号線6とをさらに備える。
【0018】
点灯率データ受信器3は、加算器(積分器)、データ保持回路、及びリセット回路を含む。行信号線6を通して供給された1行7列の列データ8と、列信号線7を通して供給された7行1列の行データ9とに基づいて点灯率データ受信器3は下記の行列演算を行い、対応するLED5の点灯率を表す点灯率データ(発光状態データ)を復号する。
【0019】
【数1】
【0020】
LEDドライバ4は、点灯率データ受信器3により復号された点灯率データに基づいて対応するLED5を駆動する。
【0021】
表示装置10は、駆動回路14を備える。駆動回路14は、C行列13に基づいて7本の列信号線7を並列に駆動する。そして、駆動回路14は、R行列12に基づいて7本の行信号線6を並列に駆動する。
【0022】
これにより、7×7=49個のLED5の点灯率データが7+7=14本の信号線により転送可能となる。
【0023】
図3(a)は表示装置10に設けられたLED5の発光状態を表すD行列11の一例を示す図であり、(b)はD行列11に関連するR行列12の一例を示す図であり、(c)はD行列11に関連するC行列13の一例を示す図である。
【0024】
図3(a)には、15行×15列=225個のLED5の点灯率を表すD行列11の例が示されている。各点灯率は0以上1以下の数値によって表されている。なお、小数第三位を四捨五入した数字を記載している。
【0025】
図3(b)には、図3(a)のD行列11に対応するR行列12、及び、上記R行列12の逆行列12Aの例が示されている。R行列12の15行×15列=225個の各要素は、「0」又は「1」の数値により表される。
【0026】
図3(c)には、図3(a)のD行列11及び図3(b)のR行列12に対応する15行×15列のC行列13の例が示されている。なお、小数第三位を四捨五入した数字を記載している。C行列13は、上記した式のR−1D=Cにより、R行列12及びD行列11及びに基づいて計算して求めることができる。
【0027】
(比較例)
図4(a)は比較例に係る表示装置90の構成を模式的に示すブロック図であり、(b)は表示装置90に設けられたLEDバックライトモジュール92の構成を示すブロック図である。前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0028】
表示装置90は、表示パネルに向かってバックライトを発光するために7行7列に配置された(7×7=49)個のLEDバックライトモジュール92を備える。各LEDバックライトモジュール92は、LEDドライバ4とLED5とを有する。
【0029】
そして、各LEDバックライトモジュール92のLEDドライバ4に列信号線97が接続される。そして、各LEDバックライトモジュール92のLED5に対応する点灯率データが、列信号線97を通って各LEDバックライトモジュール92のLEDドライバ4に供給される。LEDドライバ4は、列信号線97を通って供給された点灯率データに基づいて、対応するLED5を駆動する。
【0030】
このように、比較例によれば、7×7=49個のLED5の点灯率データを転送するために7×7=49本の信号線が必要になる。これに対して、本実施形態によれば、点灯率データの転送に必要な信号線の本数が7+7=14本に低減する。
【0031】
(他の比較例)
図5(a)は他の比較例に係る表示装置91の構成を模式的に示すブロック図であり、(b)は表示装置91に設けられたLEDバックライトモジュール93の構成を示すブロック図である。前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0032】
表示装置91は、表示パネルに向かってバックライトを発光するために7行7列に配置された(7×7=49)個のLEDバックライトモジュール93を備える。各LEDバックライトモジュール93は、LED5を有する。
【0033】
そして、各LEDバックライトモジュール93のLED5に列信号線97の一端が接続される。各列信号線97の他端にはLEDドライバ4が接続される。
【0034】
そして、各LEDバックライトモジュール93のLED5を駆動するためのドライブ信号が各LEDドライバ4から列信号線97を通って各LEDバックライトモジュール93のLED5に供給される。
【0035】
このように、他の比較例によれば、7×7=49個のLED5を駆動するためのドライブ信号を転送するために7×7=49本の信号線が必要になる。これに対して、本実施形態によれば、点灯率データの転送に必要な信号線の本数が7+7=14本に低減する。
【0036】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0037】
(表示装置10Aの構成)
図6(a)は実施形態2に係る表示装置10Aの構成を模式的に示すブロック図であり、(b)は表示装置10Aに設けられたLEDバックライトモジュール2の構成を示すブロック図である。
【0038】
実施形態2に係る表示装置10Aには、行信号線6が設けられない。そして、R行列12の列データ8は、予め定められており、各点灯率データ受信器3に設けられたメモリに記憶されている。
【0039】
その他の構成は実施形態1と同様である。
【0040】
点灯率データ受信器3は、予め定められた列データ8と、列信号線7を通して供給された7行1列の行データ9とに基づいて下記の行列演算を行い、対応するLED5の点灯率を表す点灯率データ(発光状態データ)を復号する。
【0041】
【数1】
【0042】
表示装置10Aは、駆動回路14Aを備える。駆動回路14Aは、C行列13に基づいて7本の列信号線7を並列に駆動する。
【0043】
これにより、7×7=49個のLED5の点灯率データが7本の信号線により転送可能となる。
【0044】
〔実施形態3〕
(表示装置10Bの構成)
図7(a)は実施形態3に係る表示装置10Bの構成を模式的に示すブロック図であり、(b)は表示装置10Bに設けられたLEDバックライトモジュール2Bの構成を示すブロック図である。前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0045】
表示装置10Bは、画像を表示する表示パネル1と、表示パネル1に向かってバックライトを発光するために7行7列に配置された(4×4=16)個のLEDバックライトモジュール2Bとを備える。
【0046】
各LEDバックライトモジュール2Bは、2行2列に配置された4個のLED5と、この4個のLED5を駆動するために2行2列に配置された4個のLEDドライバ4と、この4個のLED5の点灯率データを行データ9と列データ8とに基づいて復号する点灯率データ受信器3とを有する。
【0047】
表示装置10Bは、C行列13に含まれる7個の7行1列の行データ9を多重化して点灯率データ受信器3に供給するための4本の列信号線7Bと、R行列12に含まれる7個の1行7列の列データ8を多重化して点灯率データ受信器3に供給するための4本の行信号線6Bとをさらに備える。
【0048】
4本の列信号線7Bのうちの左から3本は、バス信号線を構成し、一列の点灯率データ受信器3に対して2本供給される。例えば、左端の列信号線7Bのうちの1本に行データ9の「C11、C21、…、C71」が時系列的に供給され、左端の列信号線7Bのうちの他の1本に行データ9の「C12、C22、…、C712」が時系列的に供給される。
【0049】
4本の行信号線6Bのうちの上から3本も、バス信号線を構成し、一行の点灯率データ受信器3に対して2本供給される。例えば、上端の行信号線6Bのうちの1本に列データ8の「R11、R12、…、R17」が時系列的に供給され、上端の行信号線6Bのうちの他の1本に列データ8の「R21、R22、…、R27」が時系列的に供給される。
【0050】
例えば、1行目の1列目に配置された点灯率データ受信器3は、行データ9及び列データ8に基づいて下記の行列演算を行う。
【0051】
【数2】
【0052】
他の点灯率データ受信器3も同様の処理が行われ、全てのLED5に対応するD行列11のデータD11〜D77が計算される。
【0053】
このように、点灯率データ受信器3が、隣接する複数列に配置された複数個のLED5に対応して1個設けられる。そして、点灯率データ受信器3は、(2m−1)行目及び(2m)行目であって(2k−1)列目及び(2k)列目に配置された4個のLED5に対応して1個設けられる(A、Bは偶数であり、m、kは正の整数)。
【0054】
これにより、7×7=49個のLED5の点灯率データが7+7=14本の信号線により転送可能となる。
【0055】
なお、図7に示す例では、行信号線6Bの一部と列信号線7Bの一部とがバス信号線を構成しているが、本発明はこれに限定されない。バス信号線を構成せずに1本の信号線として構成し、時系列データとして点灯率データ受信器3に供給してもよい。例えば、R行列12の上端から2つの列データ8(「R11、R12、…、R17」、「R21、R22、…、R27」)を、1本の行信号線6Bで「R11、R21、R12、R22、…、R17、R27」の順番に時系列的に供給してもよいし、「R11、R12、…、R17、R21、R22、…、R27」の順番に時系列的に供給してもよい。
【0056】
(信号多重化転送のメリット)
D行列11は、表示パネル1により表示される画像のN番目のフレーム(Nは自然数)に対応するD(N)行列と、(N+1)番目のフレームに対応するD(N+1)行列とを含む。そして、点灯率データ受信器3に供給される1行列の列データ8とA行1列の行データ9とは、前記N番目のフレームに対応するD(N)行列と、前記(N+1)番目のフレームに対応するD(N+1)行列とに基づいて定められることが好ましい。
【0057】
ローカルディミングの厳密な動作を実現するためには、表示パネル1により表示される画像のN番目のフレームに含まれる1番目からM番目のM個のデータから(MはR行列12の列数(=C行列13の行数)、図2の例では、M=7)D(N)行列を演算し、次の(N+1)番目のフレームに含まれる1番目からM番目のM個のデータで計算されるD(N+1)行列が反映されるまで、D(N)行列に基づくデータを保持する必要がある。
【0058】
点灯率データ受信器3にデータを転送する転送時間については、データを多重化せずに逐次的に各信号線毎にデータを転送する場合には、
転送時間=1データ転送時間×信号線数
となる。
【0059】
一方、実施形態1〜3のようにデータを多重化して転送する場合には、
転送時間=1データ転送時間 × vector数(信号線数))
となり、逐次的に転送するときの転送時間と多重化して転送するときの転送時間とは同じである。
【0060】
実施形態1〜3のように多重化して転送すると、逐次的に転送する場合と比べて各点灯率データ受信器3へのデータ転送回数が多くなるので、システムの発生するランダムノイズや量子化雑音などのノイズに対するノイズ耐性が良好になると考えられる。
【0061】
同じ分解能をもつ駆動回路で駆動する場合の逐次駆動と多重化駆動とを比較すると、多重化により、m個のvectorから復号する時の量子化雑音は、逐次駆動と比較すると、
1/sqrt(m)倍(S=m倍、N=sqrt(m)倍)
に低減する。
【0062】
但し、多重化による点灯率データの飽和を避けるために、ゲインを下げる必要性が出てくる場合がある。
【0063】
下記に256階調の分解能があるドライバで駆動した場合の、逐次駆動と多重化駆動(m=32)の比較表を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
多重化による点灯率データの飽和を避けるためにゲインを×1/8以下にする必要がある場合は、SNR(Signal-to-Noise Ratio、SN比)が劣化すると考えられる。
【0066】
多重化による点灯率データの飽和を避けるためには、M系列符号などのランダム性の高い符号を駆動符号に使うことが望ましい。
【0067】
M系列符号と相関の高いデータは、そもそもランダム画像に近いデータのはずである。このため、R行列12がM系列符号であり、表示パネル1に表示される画像を表す画像信号がM系列符号と相関の高い信号である時に、前記画像に含まれる画素を表すデータをすべて同じ値のデータとして扱う構成が考えられる。
【0068】
アダマール行列(Hadamard行列)を駆動符号に使う場合は、空間的に特徴のあるデータの場合に、点灯率データが飽和しやすいと考えられる。
【0069】
そこで、R行列12がアダマール行列である場合、多重化による点灯率データの飽和を避けるために点灯率データのゲインを変更するためのゲイン情報が、表示パネル1に表示される画像を表す画像信号に応じて点灯率データ受信器3に供給されるように構成することが好ましい。これにより、ゲインを動的に変更しながら、SNRが優位な信号伝達が可能になると考えられる。
【0070】
図8(a)はアクティブマトリックス駆動方式の等価回路を使用したLCDの動作イメージを説明するための図であり、(b)はR行列12が単位行列15である場合を示す図である。
【0071】
行データ9を多重化せずに各列信号線7毎に逐次的に点灯率データ受信器3に転送するときは、R行列12に図8(b)に示すような単位行列15を使用することになる。
【0072】
R行列12に単位行列15を使用するということは、D行列11=C行列13となる。時刻T1において、C行列13のC11、C12、…、C17が列信号線7に入力されると、D行列11のD11、D12、…、D17の値が定まる。D11はC11だけで決まり、D12はC12だけで決まり、…、D17はC17だけで定まる。
【0073】
同様に時刻T2において、C行列13のC21、C22、…、C27が列信号線7に入力されると、D行列11のD21、D22、…、D27の値が定まる。時刻T3からT7についても同様である。
【0074】
図8(a)では、上から2番目の行信号線6のみが、1(ON)状態になっており、他の行信号線6は0(OFF)状態になっている時刻T2のタイミングの状態を示している。
【0075】
これに対して、R行列12の複数の列データ8を多重化して転送する場合は、複数の行信号線6(水平ライン(Gate line))がONになる。
【0076】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る表示装置10・10A・10Bは、画像を表示する表示パネル1と、前記表示パネル1に向かってバックライトを発光するためにA行B列(A、Bは正の整数、および1行1列を除く)に配置された(A×B)個のLED5とを備え、前記A行B列のLED5の発光状態を表すD行列が、1行列の列データ8をA個含むA行A列のR行列12とA行1列の行データ9をB個含むA行B列のC行列13との積により表され、前記C行列に含まれるA行1列の行データを供給するために、A行1列のLED5に沿って延伸する列信号線7と、前記1行列の列データ8と前記列信号線7を通して供給された前記A行1列の行データ9とに基づいて前記LED5の発光状態を表す発光状態データを復号するために、前記列信号線7に沿って配置される復号器(点灯率データ受信器3)と、前記復号器(点灯率データ受信器3)により復号された発光状態データに基づいて前記LED5を駆動するドライバ(LEDドライバ4)とをさらに備える。
【0077】
上記の構成によれば、前記LEDの発光状態を表す発光状態データが、1行列の列データとA行1列の行データとに基づいて復号される。このため、表示パネルのバックライトのためのLEDの発光状態を、分割された複数の表示領域ごとに独立に制御するローカルディミングを少ない本数の信号線で実現することができる。
【0078】
本発明の態様2に係る表示装置10・10Aは、上記態様1において、前記復号器(点灯率データ受信器3)が、各LED5に対応して1個設けられてもよい。
【0079】
上記の構成によれば、より単純な構成で、ローカルディミングを少ない本数の信号線で実現することができる。
【0080】
本発明の態様3に係る表示装置10は、上記態様2において、前記列信号線7が、行データを多重化して前記復号器(点灯率データ受信器3)に供給するためのB本の列信号線7であり、前記R行列12に含まれるA個の1行列の列データ8を多重化して前記復号器(点灯率データ受信器3)に供給するためのA本の行信号線6をさらに備えてもよい。
【0081】
上記の構成によれば、表示パネルのバックライトのための(A×B)個のLEDの発光状態を、分割された複数の表示領域ごとに独立に制御するローカルディミングを(A+B)本の信号線で実現することができる。
【0082】
本発明の態様4に係る表示装置10Bは、上記態様1において、前記復号器(点灯率データ受信器3)が、隣接する複数列に配置された複数個のLED5に対応して1個設けられてもよい。
【0083】
上記の構成によれば、ローカルディミングをさらに少ない本数の信号線で実現することができる。
【0084】
本発明の態様5に係る表示装置10Bは、上記態様4において、前記復号器(点灯率データ受信器3)が、(2m−1)行目及び(2m)行目であって(2k−1)列目及び(2k)列目に配置された4個のLEDに対応して1個設けられてもよい(A、Bは偶数であり、m、kは正の整数)。
【0085】
上記の構成によれば、ローカルディミングをさらに少ない本数の信号線で実現することができる。
【0086】
本発明の態様6に係る表示装置10Bは、上記態様5において、前記列信号線7が、(B/2)本の列信号線7であり、前記R行列12に含まれるA個の1行列の列データ8を多重化して前記復号器(点灯率データ受信器3)に供給するための(A/2)本の行信号線6をさらに備えてもよい。
【0087】
上記の構成によれば、(A×B)個のLEDの発光状態を、(A+B)/2本の信号線で実現することができる。
【0088】
本発明の態様7に係る表示装置10Bは、上記態様5において、前記列信号線7が、B本の列信号線7であり、前記R行列12に含まれるA個の1行列の列データ8を多重化して前記復号器(点灯率データ受信器3)に供給するためのA本の行信号線6をさらに備え、(2m−1)行目の行信号線6と(2m)行目の行信号線6と(2k−1)列目の列信号線7と(2k列目)の列信号線7との4本の信号線が各復号器(点灯率データ受信器3)に接続されてもよい。
【0089】
上記の構成によれば、(A×B)個のLEDの発光状態を、(A+B)本の信号線で実現することができる。
【0090】
本発明の態様8に係る表示装置10・10A・10Bは、上記態様1において、前記D行列11が、前記表示パネル1により表示される画像のN番目のフレーム(Nは自然数)に対応するD(N)行列と、(N+1)番目のフレームに対応するD(N+1)行列とを含み、前記復号器(点灯率データ受信器3)に供給される1行A列の列データ8とA行1列の行データ9とが、前記N番目のフレームに対応するD(N)行列と、前記(N+1)番目のフレームに対応するD(N+1)行列とに基づいて定められてもよい。
【0091】
上記の構成によれば、表示パネルにより表示される画像のフレームに応じてバックライトを制御することができる。
【0092】
本発明の態様9に係る表示装置10・10A・10Bは、上記態様1において、前記R行列12がM系列符号であり、前記表示パネル1に表示される画像がランダム画像に近く、前記表示パネル1に表示される画像を表す画像信号が前記M系列符号と相関の高い信号である時に、前記画像に含まれる画素を表すデータをすべて同じ値のデータとして扱ってもよい。
【0093】
上記の構成によれば、M系列符号と相関の高い信号は、そもそもランダム画像に近いデータに対応するはずなので、データをすべて同じ値のデータとして扱うことにより構成を簡素化することができる。
【0094】
本発明の態様10に係る表示装置10・10A・10Bは、上記態様3、6、及び7の何れか一態様において、前記R行列12がアダマール行列であり、多重化による前記発光状態データの飽和を避けるために前記発光状態データのゲインを変更するためのゲイン情報が、前記表示パネル1に表示される画像を表す画像信号に応じて前記復号器(点灯率データ受信器3)に供給されてもよい。
【0095】
上記の構成によれば、ゲインを動的に変更しながら、SN比が優位な信号伝達が可能になる。
【0096】
本発明の態様11に係る表示装置10Aは、上記態様1において、前記列信号線7が、B本の列信号線7であり、前記復号器(点灯率データ受信器3)が、前記列信号線7により供給された行データ9と、前記復号器(点灯率データ受信器3)に設けられたメモリに記憶されている列データ8とに基づいて前記発光状態データを復号してもよい。
【0097】
上記の構成によれば、(A×B)個のLEDの発光状態を、B本の信号線で実現することができる。
【0098】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 表示パネル
2 LEDバックライトモジュール
3 点灯率データ受信器(復号器)
4 LEDドライバ(ドライバ)
5 LED
6 行信号線
7 列信号線
8 列データ
9 行データ
10 表示装置
11 D行列
12 R行列
13 C行列
14 駆動回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8