特許第6924725号(P6924725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6924725
(24)【登録日】2021年8月4日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/20 20060101AFI20210812BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210812BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20210812BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   B60C9/20 A
   B60C1/00 C
   B60C9/20 K
   B60C9/22 G
   B60C9/18 K
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-116393(P2018-116393)
(22)【出願日】2018年6月19日
(65)【公開番号】特開2019-217897(P2019-217897A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2020年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】片山 昌宏
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−154307(JP,A)
【文献】 特開2006−213248(JP,A)
【文献】 特開2007−308101(JP,A)
【文献】 特開平6−55906(JP,A)
【文献】 特開平4−355121(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/074197(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/102048(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
B60C 9/18−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のタイヤ骨格部材の外周に、複数の補強コードが配列されて熱可塑性樹脂によって樹脂被覆された樹脂被覆コードがタイヤ周方向に螺旋状に巻かれて形成され、前記タイヤ骨格部材の外周に接合されたベルトを備え、
前記ベルトは、タイヤ軸方向断面における前記補強コードの配列方向がタイヤ軸方向に対して傾斜されて前記樹脂被覆コードが螺旋状に巻かれ、各々が傾斜されてタイヤ軸方向に隣接する前記樹脂被覆コード同士が互いの接触部分において溶着された、タイヤ。
【請求項2】
前記樹脂被覆コードのタイヤ軸方向の断面において、前記樹脂被覆コードの前記タイヤ骨格部材側の面の前記補強コードの配列方向に対する傾斜の角度が、前記補強コードの配列方向のタイヤ軸方向に対する角度の補角となる角度とされている請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂被覆コードが螺旋状に巻かれたベルトを有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のタイヤでは、補強コードを樹脂被覆した補強コード部材をタイヤ骨格部材の外周に螺旋状に巻き付けた構成が開示されている。このタイヤでは、タイヤ骨格部材の外周に螺旋状に巻いた補強コード部材をタイヤ骨格部材の外周に接合すると共に、タイヤ軸方向に隣接する補強コード部材同士を接合したベルトを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−210487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来技術では、補強コード部材が断面矩形であるため、タイヤ軸方向に互いに接する補強コード部材同士の接合度の点で、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、樹脂被覆コードが螺旋状に巻かれて構成されたベルトを有するタイヤにおいて、耐久性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のタイヤは、環状のタイヤ骨格部材の外周に、複数の補強コードが配列されて樹脂被覆された樹脂被覆コードがタイヤ周方向に螺旋状に巻かれて形成され、前記タイヤ骨格部材の外周に接合されたベルトを備え、前記ベルトは、タイヤ軸方向断面における前記補強コードの配列方向がタイヤ軸方向に対して傾斜されて前記樹脂被覆コードが螺旋状に巻かれ、各々が傾斜されてタイヤ軸方向に隣接する前記樹脂被覆コード同士が互いの接触部分において接合されている。
【0007】
第1の態様のタイヤでは、環状のタイヤ骨格部材の外周にベルトが接合されている。ベルトは、複数の補強コードが配列されて樹脂被覆された樹脂被覆コードがタイヤ周方向に螺旋状に巻かれて形成されており、樹脂被覆コードは、タイヤ軸方向断面における補強コードの配列方向がタイヤ軸方向に対して傾斜されている。
【0008】
ここで、樹脂被覆コードでは、複数の補強コードが配列されると、タイヤ軸方向の断面形状が、補強コードの配列方向に長くなる。この樹脂被覆コードを補強コードの配列方向をタイヤ軸方向に対して傾斜させることで、タイヤ軸方向に隣接する樹脂被覆コード同士の接触面積を広げることができる。これにより、ベルトにおけるタイヤ軸方向に隣接する樹被覆コード同士の接合度を向上できるので、タイヤの耐久性を向上できる。
【0009】
第2の態様のタイヤは、第1の態様のタイヤにおいて、前記樹脂被覆コードのタイヤ軸方向の断面において、前記樹脂被覆コードの前記タイヤ骨格部材側の面の前記補強コードの配列方向に対する傾斜の鈍角側の角度が、前記補強コードの配列方向のタイヤ軸方向に対する鋭角側の角度の補角となる角度とされている。
【0010】
第2の態様のタイヤでは、樹脂被覆コードのタイヤ軸方向の断面において、樹脂被覆コードのタイヤ骨格部材側の面の補強コードの配列方向に対する鈍角側の傾斜の角度を、補強コードの配列方向のタイヤ軸方向に対する鋭角側の角度の補角としている。
【0011】
これにより、樹脂被覆コードをタイヤ骨格部材の外周に螺旋状に巻いた際に、樹脂被覆コードのタイヤ骨格部材側の面を、タイヤ骨格部材に沿わすことができて、樹脂被覆コードの巻き付けが容易となる。また、樹脂被覆コードとタイヤ骨格部材との接合度を向上できるので、樹脂被覆コードを螺旋状に巻き付けたベルトによってタイヤの耐久性を効果的に向上できる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明の態様によれば、樹脂被覆コードが螺旋状に巻かれて構成されたベルトにおいて、タイヤ軸方向に隣接する樹脂被覆コード同士の接合性を向上できて接合度を向上できるので、タイヤの耐久性を向上できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るタイヤの主要部を示すタイヤ赤道面の片側の概略断面図である。
図2】第1実施形態に係るベルトの主要部を示す長手方向視の概略図である。
図3】タイヤに設けられたベルトの主要部を示すタイヤ軸方向に沿った断面図である。
図4】樹脂被覆コードの巻付け工程における主要部の概略図である。
図5】ベルトにおける傾斜角に対する溶着比の変化を示す線図である。
図6】第2実施形態に係るベルトの主要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態では、本発明に係る空気入りタイヤとしてのタイヤ10を例に説明する。図1には、本実施形態に係るタイヤ10の主要部が、タイヤ赤道面CLの片側の概略断面図にて示されている。図面では、タイヤ径方向が矢印Rにて示され、タイヤ軸方向(タイヤ幅方向ともいう)が矢印Wにて示され、タイヤ赤道面が符号CLにて示されている。
【0015】
本実施形態において、タイヤ軸方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向を意味し、タイヤ幅方向の意味を含む。本実施形態では、タイヤ軸方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側を「タイヤ軸方向外側」、タイヤ軸方向においてタイヤ赤道面CLに近づく側を「タイヤ軸方向内側」という。また、本実施形態において、タイヤ径方向とは、タイヤ軸方向と交差する方向であり、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側を「タイヤ径方向外側」、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸に近づく側を「タイヤ径方向内側」という。さらに、本実施形態において、タイヤ周方向は、タイヤ回転軸を中心とした回転方向を意味する。
【0016】
なお、各部の寸法測定方法は、JATMA(日本自動車タイヤ協会)が発行する2018年度版YEAR BOOKに記載の方法による。使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は、各々に規格に従う。
【0017】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係るタイヤ10は、例えば乗用車に用いられる所謂ラジアルタイヤである。図1に示すように、タイヤ10は、一例として、円環状のビードコア12が埋設された一対のビード部14、ビード部14のタイヤ径方向外側に連なるサイド部16、及びタイヤ幅方向(タイヤ軸方向)の両側のサイド部16を連結するクラウン部18を有している。
【0018】
ビードコア12は、ビードコード(図示省略)で構成されている。このビードコードは、スチールコード等の金属コード、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード又は硬質樹脂などで構成されている。なお、ビード部14の剛性を十分に確保できれば、ビード部14は、ビードコア12が省略されてもよい。
【0019】
サイド部16は、タイヤ10の側部を形成し、ビード部14からクラウン部18に向かってタイヤ軸方向外側に凸となるように緩やかに湾曲されている。タイヤ10には、タイヤ径方向外側にトレッド20が配設されており、クラウン部18は、トレッド20の支持部とされている。
【0020】
一対のビード部14間には、ビードコア12に巻き掛けられたカーカスプライ22が跨っている。カーカスプライ22は、タイヤ骨格部材の一例であり、例えばタイヤ周方向に並べられたコード(図示せず)をゴム被覆して構成されている。なお、タイヤ骨格部材はカーカスプライ22に限られず、樹脂材料により構成されるものであってもよい。樹脂製のタイヤ骨格部材には、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を適宜埋設配置してもよい。
【0021】
タイヤ10は、補強部材としての環状のベルト30を有している。図2には、第1実施形態に係るベルト30の主要部が長手方向視の概略構成図にて示され、図3には、図1よりも拡大されたタイヤ10の主要部がタイヤ軸方向に沿う断面図にて示されている。
【0022】
図1及び図3に示すように、ベルト30は、カーカスプライ22の外周に配置されており、ベルト30は、クラウン部18においてカーカスプライ22の外周に接合されている。また、ベルト30のタイヤ径方向外側には、図示しないクッションゴムを介してトレッド20が接合されている。
【0023】
図2に示すように、ベルト30には、樹脂被覆コード32が用いられている。樹脂被覆コード32は、被覆樹脂34によって補強コード36が樹脂被覆されて形成されており、補強コード36は、被覆樹脂34内に収容されている。補強コード36には、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)が用いられている。樹脂被覆コード32には、複数本の補強コード36が配列されている。また、補強コード36の外周には、接着用樹脂層36Aが設けられており、補強コード36は、接着用樹脂層36Aによって被覆樹脂34に接合されて、被覆樹脂34に対してずれが生じるのが抑制されている。
【0024】
樹脂被覆コード32の被覆樹脂34には、一例として樹脂材料としての熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)が用いられている。被覆樹脂34に用いられる樹脂材料は、熱可塑性エラストマーに限られず、樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びその他の汎用樹脂のほか、エンジニアリングプラスチック(スーパーエンジニアリングプラスチックを含む)等を用いることができる。
【0025】
熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)とは、温度上昇と伴に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く高度のある状態になる高分子化合物をいう。第1実施形態では、このうち、温度上昇と伴に材料が軟化、流動し、冷却することで比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有する高分子化合物を熱可塑性エラストマーとし、温度上昇と伴に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になるが、ゴム状弾性を有しない高分子化合物をエラストマーでない熱可塑性樹脂として、区別する。
【0026】
熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、及び、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)、ならびに、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂、及び、ポリエステル系熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0027】
また、上記の熱可塑性材料としては、例えば、ISO75−2又はASTM D648に規定されている荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が、78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸び(JIS K7113)が50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°Cであるものを用いることができる。
【0028】
補強コード36を被覆する被覆樹脂34の引張弾性率(JIS K7113:1995に規定される)は、100MPa以上が好ましい。また、被覆樹脂34の引張弾性率の上限は、1000MPa以下とすることが好ましい。なお、補強コード36を被覆する被覆樹脂34の引張弾性率は、200〜700MPaとすることが好ましい。
【0029】
熱硬化性樹脂とは、温度上昇と共に三次元的網目構造を形成し、硬化する高分子化合物をいい、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。なお、樹脂材料には、既述の熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)及び熱硬化性樹脂のほか、(メタ)アクリル系樹脂、EVA樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等の汎用樹脂を用いてもよい。
【0030】
第1実施形態では、一例として樹脂被覆コード32に2本の補強コード36が用いられている。樹脂被覆コード32は、タイヤ径方向の断面形状が補強コード36の配列方向(図2において一点鎖線にて示す)に長い略矩形(略長方形)状とされている。ベルト30を構成する樹脂被覆コード32では、厚さ寸法(補強コード36の配列方向と交差する方向の厚さ寸法)が、補強コード36の直径寸法よりも大きいことが好ましい。言い換えれば、補強コード36が完全に被覆樹脂34に埋設されることが好ましい。樹脂被覆コード32の厚さ寸法は、タイヤ10が乗用車用の場合、具体的には、0.700mm以上とすることが好ましい。
【0031】
また、第1実施形態において樹脂被覆コード32は、配列方向に沿う側面32A、32Bの長さである幅aが、配列方向の両側の側面32C、32Dの長さである厚さbよりも長く(大きく)されている(a>b)。樹脂被覆コード32は、例えば、幅aが5.0mmとされ、厚さbが2.0mmとされている。
【0032】
なお、樹脂被覆コード32における補強コード36の間隔は、所望の強度が得られる間隔とされている。また、樹脂被覆コード32では、被覆樹脂34によって所望の強度が得られる被覆厚で補強コード36が被覆されており、樹脂被覆コード32の幅a及び長さbは、樹脂被覆コード32が所望の強度が得られるように設定されている。
【0033】
補強コード36の配列方向は、樹脂被覆コード32のタイヤ軸方向に沿う断面において2本の補強コード36の中心を結ぶ線に平行な方向とされている。なお、3本以上の補強コード36が用いられる場合、補強コード36は、各々の中心が略同一直線上となるように配列され、配列方向は、各補強コード36の中心を結ぶ線に略平行な方向となる。
【0034】
ベルト30は、長尺の樹脂被覆コード32が螺旋状に巻かれることで円環状に形成されており、ベルト30では、タイヤ軸方向に隣接する樹脂被覆コード32同士が互いに接する部分(接触部分)である接合部38において溶着されている。
【0035】
ここで、樹脂被覆コード32は、補強コード36の配列方向がタイヤ軸方向一側に対して鋭角となる角度αだけ傾斜されており、樹脂被覆コード32は、補強コードの配列方向がタイヤ径方向に対し、タイヤ軸方向の一側に傾斜角(角度)αで傾斜されている。樹脂被覆コード32は、補強コード36の配列方向がタイヤ軸方向の一側に対して傾斜角α(0°<α<90°)で傾けられた状態で、カーカスプライ22の外周に巻き付けられている。言い換えれば、樹脂被覆コード32は、補強コード36の配列方向に沿う側面32A、32Bの一方(例えば側面32A)が、タイヤ径方向内側に向けられ、かつ該側面32Aがタイヤ軸方向に対して傾斜角αだけ傾斜されてタイヤ軸方向外側に向けられている。
【0036】
このため、ベルト30では、タイヤ軸方向に並ぶ複数の樹脂被覆コード32が、タイヤ軸方向の断面において補強コード36の配列方向が互いに略平行にされ、斜めに重ねられている。ベルト30では、タイヤ軸方向断面において複数の樹脂被覆コード32が傾斜されて積層されている。ベルト30では、積層された樹脂被覆コード32の各々における側面32Aと側面32Cとの角部(タイヤ径方向内側の角部)32Eの位置が、タイヤ軸方向と平行な略直線状とされることが好ましい。
【0037】
螺旋状に巻かれた樹脂被覆コード32において、タイヤ軸方向に隣接する一方の樹脂被覆コード32の側面32Bと他方の樹脂被覆コード32の側面32Aとの重なり部分が接合部38とされている。タイヤ軸方向断面における接合部38の長さcは、樹脂被覆コード32の幅a、厚さb及びタイヤ軸方向に対する樹脂被覆コード32の傾斜角αによって定まる。第1実施の形態において、樹脂被覆コード32の傾斜角αは、タイヤ軸方向断面における接合部38の長さcが、樹脂被覆コード32の厚さbよりも大きくなるように設定されている(c>b、但し、c=a−(b/tanα))。
【0038】
ベルト30は、クラウン部18においてカーカスプライ22の外周に接合されている。カーカスプライ22に接合されるベルト30は、樹脂被覆コード32の被覆樹脂34が溶融されると共に、カーカスプライ22側に向けて押圧されながら螺旋状に巻かれる。このため、図3に示すように、タイヤ10において、ベルト30は、樹脂被覆コード32の側面32Cと該樹脂被覆コード32に接する樹脂被覆コード32の側面32Aとの間における空間部分、及び樹脂被覆コード32の側面32Dと該樹脂被覆コード32に接する樹脂被覆コード32の側面32Bとの間における空間部分が、溶融した被覆樹脂34によって埋められる。これにより、タイヤ10において、ベルト30は、カーカスプライ22側の面、及びトレッド20側の面の各々が略平坦な状態とされる。
【0039】
〔作用〕
タイヤ10では、クラウン部18においてカーカスプライ22の外周にベルト30が接合されており、ベルト30は、カーカスプライ22の外周に螺旋状に巻き付けられた樹脂被覆コード32が溶融されてカーカスプライ22に接合されている。
【0040】
第1実施形態において、樹脂被覆コード32は、2本の補強コード36が配列されており、樹脂被覆コード32は、補強コード36の配列方向となる断面長手方向がタイヤ軸方向に対して傾斜されている。ベルト30では、タイヤ軸方向に隣接する樹脂被覆コード32同士が接合部38において溶着されている。
【0041】
このため、樹脂被覆コード32では、隣接する樹脂被覆コード32が溶着される接合部38の長さcが、樹脂被覆コード32の厚さbよりも大きくなっており(c>b)、樹脂被覆コード32は、接合部38における接触面積が広くされている。これにより、ベルト30では、樹脂被覆コード32の長手方向(補強コード36の配列方向)をタイヤ軸方向とした場合に比して接合度が向上されている。
【0042】
しかも、ベルト30では、2本の補強コード36が配置された樹脂被覆コード32を用い、樹脂被覆コード32が補強コード36の配列方向をタイヤ軸方向に対して傾斜させて巻かれている。このため、ベルト30では、補強コード36の配列方向をタイヤ軸方向とした場合に比して、タイヤ軸方向における樹脂被覆コード32の数、すなわち補強コード36の数が多くなっている。これに加え、ベルト30では、2本の補強コード36が配列された樹脂被覆コード32が補強コード36の配列方向がタイヤ軸方向に対して傾斜されて巻かれており、ベルト30には、タイヤ径方向の内側と外側との2段にされて補強コード36が配列されている。
【0043】
これにより、ベルト30では、面内(タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に沿った環状面内)せん断剛性が高くなり、タイヤ10によって走行する車両の操縦安定性を向上できる。
【0044】
このように、タイヤ10では、補強コード36の配列方向がタイヤ軸方向に対して傾斜されて樹脂被覆コード32が巻かれて形成されたベルト30がカーカスプライ22の外周に配置されて接合度が向上されている。これにより、ベルト30の耐久性が向上されて、タイヤ10の耐久性が向上されている。
【0045】
〔ベルトの製造〕
次に、円環状のベルト30の製造を説明する。図4には、第1実施形態に係るベルト30の製造工程における主要部が概略構成図にて示されている。
【0046】
図4に示すように、ベルト30の製造には、一例として円環状(ドラム状)のコア40が用いられる。コア40は、外周が樹脂被覆コード32の巻付け面40Aとされており、コア40の外周(巻付け面40A)は、例えば、金属によって構成されている。コア40の外周は、軸方向に沿う断面が直線状であってもよく、軸方向に沿う断面が曲線状であってもよく、断面直線状の部分と断面曲線状の部分とが組み合わせられて構成されていてもよい。
【0047】
コア40の外周は、周方向に沿って複数に分割可能とされ、分割された外周部分の各々が径方向内側に退避移動可能にされている。これにより、コア40の外周に形成した環状のベルト30のコア40から取り外しが可能となる。
【0048】
コア40の外周への樹脂被覆コード32の巻き付けにおいては、コア40を回転可能に支持する支持装置(図示省略)が用いられる。また、樹脂被覆コード32の巻き付けには、コア40の外周近傍に樹脂被覆コード32を供給するコード供給装置50、樹脂被覆コード32を加熱する加熱装置60、押付け器としての押付けローラ70、及び冷却器としての冷却ローラ72等が用いられる。
【0049】
コード供給装置50は、樹脂被覆コード32が巻き取られているリール52、及び筒状の内部を樹脂被覆コード32が通過可能なガイド部材54を含んで構成されており、ガイド部材54には、コア40の外周に向けられた口部56が形成されている。コード供給装置50では、リール52から引き出された樹脂被覆コード32がガイド部材54の筒状の内部を通過することで樹脂被覆コード32を案内し、樹脂被覆コード32に所定のテンションを付与しつつ口部56からコア40の外周に向けて樹脂被覆コード32を送り出す。
【0050】
ベルト30の製造では、支持装置によってコア40が回転されながらコード供給装置50によって樹脂被覆コード32がコア40の外周に供給されることで、樹脂被覆コード32がコア40の外周に巻き付けられる。この際、コア40とコード供給装置50の口部56(ガイド部材54)とがタイヤ軸方向に相対移動されることで、コア40の外周に樹脂被覆コード32が螺旋状に巻き付けられる。なお、コア40とガイド部材54の口部56との相対移動においては、例えば、コア40がタイヤ軸方向に移動される。
【0051】
加熱装置60は、例えば電熱線(図示省略)で空気を加熱しつつファン(図示省略)によって加熱した空気の気流を発生することで熱風を生成し、生成した熱風を吹出し口62から吹き出す。加熱装置60の吹出し口62は、コア40に巻き付けられた樹脂被覆コード32とコア40に供給される樹脂被覆コード32のコア40側の面との間に対向されており、加熱装置60は、吹出し口62から樹脂被覆コード32に熱風を吹き当てて被覆樹脂34を溶融させる。
【0052】
なお、加熱装置60は、電熱線及びファンを用いた構成に限らず、熱可塑性樹脂を加熱溶融できる構成であればよく、例えば、溶融させる箇所(被覆樹脂34)に熱鏝を接触させて、接触部分を加熱溶融させてもよい。また、加熱装置60は、輻射熱を用いて溶融させる箇所を加熱溶融させてもよく、溶融させる箇所に赤外線を照射して加熱溶融させてもよい。
【0053】
押付けローラ70は、コア40に巻き付けられる樹脂被覆コード32、及び既にコア40に巻き付けられている樹脂被覆コード32をコア40の外周に向け、押付け力Fで押し付ける。また、冷却ローラ72は、押付けローラ70よりもコア40の回転方向下流側に配置されており、冷却ローラ72は、コア40に巻き付けられた樹脂被覆コード32を、押付けローラ70に続いてコア40の外周に向けて押し付ける。冷却ローラ72は、ローラ内部を液体(例えば、水などの冷媒)の冷熱源が流通するようになっており、冷却ローラ72では、ローラ表面が樹脂被覆コード32に接触することで冷熱源の液体と樹脂被覆コード32との間で熱交換が行なわれる。
【0054】
なお、押付けローラ70及び冷却ローラ72は、回転自在となっており、樹脂被覆コード32を押圧している状態では、コア40の回転方向(矢印A方向)に対して従動回転(矢印B方向回転)される。また、押付けローラ70及び冷却ローラ72のローラ表面には、溶融状態の樹脂材料(被覆樹脂34)の付着を防ぐ加工が施されている。また、押付けローラ70の外周部は、弾性変形可能であることが好ましく、押付けローラ70及び冷却ローラ72は、樹脂被覆コード32に対する押付け力Fを調整できることが好ましい。
【0055】
これにより、冷却ローラ72は、押付けローラ70によって押し付けられてコア40に巻き付けられた樹脂被覆コード32を冷却する。なお、溶融状態の樹脂材料(樹脂被覆コード32の被覆樹脂34)を自然冷却させる場合には、冷却ローラ72が省略されてもよい。
【0056】
ベルト30は、樹脂被覆コード32が傾斜角αで傾斜されてコア40の外周に螺旋状に巻き付けられる。押付けローラ70及び冷却ローラ72は、新たにコア40の外周に巻き付けられた樹脂被覆コード32、及び既にコア40に巻き付けられている樹脂被覆コード32のうちで新たに巻き付けられた樹脂被覆コード32に接する樹脂被覆コード32に跨って押圧する。すなわち、押付けローラ70及び冷却ローラ72は、コア40に巻き付けられる樹脂被覆コード32と該樹脂被覆コード32に接する樹脂被覆コード32との2本の樹脂被覆コード32の角部分(側面32Bと側面32Dとの角部分)に跨るように配置されて、2本の樹脂被覆コード32の角部分を押圧することで、2本の樹脂被覆コード32をコア40側に押し付ける。この際、押付けローラ70の外周部が弾性変形することで、樹脂被覆コード32のコア40とは反対側の部分が略平坦になるように樹脂被覆コード32を押圧できる。
【0057】
ここで、ベルト30の製造には、一例として、ガイド部材としてのリードコード42が用いられる。リードコード42には、1本又は複数本の補強コード36が設けられており、リードコード42は、補強コード36が被覆樹脂34によって被覆されている。
【0058】
リードコード42は、長手方向の一端側におけるタイヤ軸方向の断面形状が略三角形状とされ、コア40とは反対側(上底)の面の幅寸法が長手方向の一端側から他端側に向かうにしたがって広くされて、タイヤ軸方向に沿う断面形状の殆どが略台形状とされている。また、リードコード42は、長さがコア40の外周略1周分の長さ(ベルト30の1周分の長さ又はこれより僅かに短い長さ)とされ、タイヤ軸方向内側の支持面42Aがタイヤ軸方向に対して傾斜角αだけ傾斜されている。
【0059】
また、リードコード42は、長手方向の他端側の端部が先端側の三角形状と傾斜角αで傾斜された樹脂被覆コード32の断面の一部(樹脂被覆コード32の断面において中心に対して角部32Eとは反対側の角部側を除いた部分、図示省略)とを合わせた形状とされている。
【0060】
ベルト30の製造では、先ず、コア40の外周において軸線方向の端部にリードコード42を巻き付ける。ベルト30においてリードコード42の位置は、タイヤ10のカーカスプライ22におけるベルト30のタイヤ軸方向の一端側の位置となっている。なお、第1実施形態では、一例としてリードコード42を用いるが、樹脂被覆コード32の先端部をリードコード42と同様の形状に加工されていてもよい。
【0061】
コア40の外周に樹脂被覆コード32を巻き付ける際には、支持装置に取り付けたコア40を矢印A方向に回転させると共に、コード供給装置50においてリール52から引き出した樹脂被覆コード32を口部56からコア40の外周に向けて送り出す。このとき、樹脂被覆コード32の先端をリードコード42の後端に押し当てると共に、樹脂被覆コード32の先端部の側面32Aをリードコード42の支持面42Aに重ねる。これにより、樹脂被覆コード32は、側面32Aがコア40の回転軸に対して傾斜角αで傾斜されてコア40の外周に螺旋状に巻き付けられる。
【0062】
これと共に、加熱装置60の吹出し口62から熱風を吹き出して、コア40に巻き付けられている樹脂被覆コード32の側面32B(最初は、リードコード42の支持面42A)及び新たにコア40に巻き付ける樹脂被覆コード32の側面32Aを加熱し、各々の被覆樹脂34を溶融させながら、新たにコア40に巻き付ける樹脂被覆コード32及び該樹脂被覆コード32に隣接する(既にコア40に巻き付けられている)樹脂被覆コード32を押付けローラ70によって押圧する。この際、コード供給装置50が樹脂被覆コード32にテンションを付与することで、コード供給装置50からコア40の外周に供給された樹脂被覆コード32がコア40の軸方向にずれるのが抑制される。
【0063】
これにより、樹脂被覆コード32は、補強コード36の配列方向がコア40の外周(コア40の軸方向)に対して傾斜角αで傾斜された状態でコア40の外周に螺旋状に巻き付けられる。また、コア40に巻き付けられた樹脂被覆コード32の間では、加熱装置60の吹出し口62から吹出される熱風によって被覆樹脂34が溶融されて、樹脂被覆コード32同士が接合部38において溶着される。
【0064】
また、樹脂被覆コード32は、溶融された被覆樹脂34が、押付けローラ70が接触する部分及びコア40側の部分において押付けローラ70から押付け力Fを受ける。このため、コア40の外周に巻き付けられた樹脂被覆コード32は、コア40の外周側の角部分(角部32E)及びコア40の外周とは反対側の角部分の被覆樹脂34が溶融され、コア40の外周との隙間及び押付けローラ70との隙間が溶融された被覆樹脂34によって埋められる。これにより、ベルト30は、コア40の外周側の面及びコア40の外周とは反対側の面の各々が略平坦に形成される。
【0065】
また、樹脂被覆コード32は、冷却ローラ72によって押圧されることで、冷却されて硬化される。これにより、コア40の外周において樹脂被覆コード32が螺旋状に巻き付けられたベルト30が製造される。また、製造されたベルト30は、コア40から取り外されて、例えば、加硫工程などにおいてカーカスプライ22の外周に加圧溶着されることで、タイヤ10が製造される。
【0066】
製造されたベルト30では、補強コード36の配列方向がタイヤ軸方向に対して一定の傾斜角αで傾斜された樹脂被覆コード32がタイヤ軸方向に重ねられると共に、互いに隣接する樹脂被覆コード32が接合部38において互いに溶着されている。
【0067】
なお、ベルト30の製造においては、コード供給装置50においてリール52にブレーキをかけたり、樹脂被覆コード32の案内経路中にテンション調整用のローラ(図示省略)を設けたりして、コア40に供給する樹脂被覆コード32のテンション調整を行なってもよい。これにより、コア40に巻き付ける樹脂被覆コード32に蛇行等が生じるのを抑制できて、樹脂被覆コード32が等ピッチで螺旋状に巻かれた高品質のベルト30を製造できる。
【0068】
また、ベルト30の製造では、コア40を用いたが、コア40に変えてカーカスプライ22を用い、カーカスプライ22の外周に樹脂被覆コード32を螺旋状に巻き付けてベルト30が製造されてもよい。この場合、カーカスプライ22を支持装置に取り付けて、カーカスプライ22を回転させながら樹脂被覆コード32をカーカスプライ22の外周に螺旋状に巻き付ける。これにより、カーカスプライ22の外周に樹脂被覆コード32を接合しながらベルト30を製造することができる。
【0069】
ここで、接合部38における樹脂被覆コード32同士の接合性は、接合部38における被覆樹脂34同士の溶着力に影響する。溶着力は、接合部38における樹脂被覆コード32同士の接触面積と、接合部38における接触面(側面32A、32B)に垂直に作用する押付け力F’(図2参照)に影響する(例えば、溶着力=接触面積×押付け力)。
【0070】
ベルト30では、樹脂被覆コード32が傾斜角αで傾斜されることで、接合部38における樹脂被覆コード32の幅方向に沿う長さcが厚さbよりも長くされ、側面32C、32Dにおいて溶着する場合に比して、接触面積が広げられて、溶着力が向上されている。
【0071】
ベルト30の製造において、押付け力F(図2参照)で樹脂被覆コード32をコア40側に向けて押し付けた場合、接合部38における接触面(側面32A、32B)に垂直に作用する押付け力F’は、F’=cosαとなる。また、樹脂被覆コード32同士の接触面積は、接合部38における長さcによって定まる。ここから、樹脂被覆コード32同士の溶着力は、以下のように表される。
溶着力=(a−(b/tanα)・F・cosα
したがって、溶着力は、押付け力Fに比例し、押付け力Fが大きくなるにしたがって、溶着力を向上できて、樹脂被覆コード32の接合性を向上できる。
【0072】
ベルト30を製造する際の押付け力Fに対して、接合部38における溶着力の割合(比)を、溶着比Rwとすると、溶着比Rwは、Rw=(a−(b/tanα))・cosαとして得られる。この溶着比Rwが大きくなることで、樹脂被覆コード32の間の溶着力を効果的に向上できる。
【0073】
表1には、傾斜角αに対する溶着比Rwの変化が示されており、図5には、表1に基づいた傾斜角αに対する溶着比Rwの変化が線図にて示されている。表1では、一例として、幅a=5mm、厚さb=2mmの樹脂被覆コード32を適用している。
【0074】
【表1】
【0075】
表1及び図5に示すように、傾斜角αが30°〜70°(30°≦α≦70°)の範囲では、溶着比Rwが1.3以上となるので、接合部38では、押付け力Fに応じて効果的に溶着力が向上されて、樹脂被覆コード32同士の接合性が向上される。
【0076】
また、樹脂被覆コード32を接合部38において重ねる際に、長さcを樹脂被覆コード32の厚さbより大きくすることで、樹脂被覆コード32同士の接触面積を大きくできる。例えば、幅a=5mm、厚さb=2mmの樹脂被覆コード32において接合部38の長さcをc>bとするためには、α>33.7°(但し、tan−1(α)>(b/(a−b)))となる。ここから、上記例では、傾斜角αを33.7°以上、70°以下とすることで、ベルト30における樹脂被覆コード32の接合性を効果的に向上できて、高い接合度を得ることができる。
【0077】
したがって、ベルト30では、接合部38の長さcを樹脂被覆コード32の厚さbよりも大きく(長く)なるように傾斜角αを設定することで、樹脂被覆コード32の接合性を向上できる。これに加え、ベルト30では、傾斜角αを30°以上、70°以下とすることで、樹脂被覆コード32の間の溶着力を効果的に向上できて、樹脂被覆コード32同士の接合性を効果的に向上でき、タイヤ10の耐久性を効果的に向上できる。
【0078】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態を説明する。
図6には、第2実施形態に係るベルト80の主要部がタイヤ軸方向に対応する方向に沿った断面図にて示されている。第2実施形態においてベルト80は、第1実施形態のベルト30に替えてタイヤ10に用いられて、タイヤ10のカーカスプライ22の外周に配置される。
【0079】
図6に示すように、ベルト80には、第1実施形態の樹脂被覆コード32に替えて樹脂被覆コード82が用いられており、ベルト80は、樹脂被覆コード82が螺旋状に巻かれて形成される。
【0080】
樹脂被覆コード82には、複数の補強コード36が配列されており、第2実施形態では、一例として2本の補強コード36が用いられ、補強コード36が被覆樹脂34によって被覆されている。樹脂被覆コード82では、タイヤ軸方向に対応する方向の断面形状において、少なくとも補強コード36の配列方向に沿う一対の側面82A、82Bが略平行とされ、かつ側面82A、82Bの長さが、他の側面82C、82Dの長さよりも長い長尺矩形状とされている。
【0081】
樹脂被覆コード82は、螺旋状に巻かれる際、補強コード36の配列方向がタイヤ軸方向に対して鋭角の傾斜角αだけ傾斜される。具体的には、樹脂被覆コード82は、補強コード36の配列方向に沿う側面82A、82Bの一方(例えば側面82A)が、タイヤ径方向内側に向けられ、かつ該側面82Aがタイヤ軸方向に対して傾斜角αだけ傾斜されてタイヤ軸方向外側に向けられている。
【0082】
ここで、樹脂被覆コード82は、一方の側面82Aと該側面82Aに接する側面82Cとの間の鈍角側の角度βが傾斜角α(鋭角側の角度α)の補角(α+β=180°)となるように形成されている。なお、第2実施形態では、樹脂被覆コード82の断面形状を平行四辺形として、側面82Bと側面82Dの間の鈍角側の角度を角度βとなっているが、この側面82Bと側面82Dとの間の角度は、角度βとは異なってもよい。また、樹脂被覆コード82は、側面82Aと側面82Bの長さが異なってもよい。
【0083】
このように構成された樹脂被覆コード82が用いられるベルト80では、樹脂被覆コード82が側面82Aをタイヤ軸方向に対して傾斜角αだけ傾けられて螺旋状に巻かれる。このため、ベルト80では、樹脂被覆コード82の側面82Cが略直線状に連続し、樹脂被覆コード82の側面82Bが隣接する樹脂被覆コード82の側面82Aに接する。
【0084】
これにより、ベルト80では、樹脂被覆コード82の側面82C、82Dの各々が略直線状(略平坦)となるので、樹脂被覆コード82を、補強コード36の配列方向がタイヤ軸方向に傾斜されて螺旋状に巻き付ける作業が容易となる。また、ベルト80は、タイヤ径方向内側が略平坦になるので、接合性を向上できて接合度を向上できるので、カーカスプライ22への接合を容易にできる。
【0085】
また、ベルト80では、樹脂被覆コード82の側面82Bの略全面に隣接する樹脂被覆コード82の側面82Aが重なって接合部84となる。このため、ベルト80では、隣接する樹脂被覆コード82の接合面積(接合部84の面積)を広くできて、接合性を向上できるので、樹脂被覆コード82の接合度を向上できる。また、樹脂被覆コード82は、傾斜角αで傾斜されているので、傾斜角αを30°以上70°以下とすることで、樹脂被覆コード82同士の溶着力を効果的に向上できて、樹脂被覆コード82同士の接合性を効果的に向上できる。これにより、樹脂被覆コード82を用いたベルト30の耐久性を向上できて、ベルト30が設けられるタイヤ10の耐久性を向上できる。
【符号の説明】
【0086】
10…タイヤ、12…ビードコア、14…ビード部、16…サイド部、18…クラウン部、20…トレッド、22…カーカスプライ、30、80…ベルト、32、82…樹脂被覆コード、34…被覆樹脂、36…補強コード、38、84…接合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6