特許第6925073号(P6925073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6925073-グミキャンディ 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6925073
(24)【登録日】2021年8月5日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】グミキャンディ
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20210812BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20210812BHJP
【FI】
   A23G3/34 101
   A23L29/20
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-204368(P2020-204368)
(22)【出願日】2020年12月9日
(65)【公開番号】特開2021-104012(P2021-104012A)
(43)【公開日】2021年7月26日
【審査請求日】2020年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2019-236419(P2019-236419)
(32)【優先日】2019年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592113809
【氏名又は名称】カバヤ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】剱物 亜友実
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔平
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−108044(JP,A)
【文献】 特開2018−108043(JP,A)
【文献】 特開2017−158526(JP,A)
【文献】 特開2010−130935(JP,A)
【文献】 特開2009−039096(JP,A)
【文献】 特開2008−206512(JP,A)
【文献】 特開平11−089524(JP,A)
【文献】 特開平10−210939(JP,A)
【文献】 特開2010−273595(JP,A)
【文献】 特開2010−148475(JP,A)
【文献】 特開2010−124788(JP,A)
【文献】 特開2010−166827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 3/00
A23L 29/20
A23L 21/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾力感を呈する第1グミ部分と、
前記第1グミ部分とは異なるグミ部分であって、エアレーション処理が施されると共に、前記第1グミ部分を包む第2グミ部分と、
を含み、
少なくとも第2グミ部分は、粉末由来のマルトース及び他の糖質成分を含み、
前記マルトースの含有量は、第2グミ部分の重量に対して、4重量%から20重量%である
グミキャンディ。
【請求項2】
前記マルトースは、前記他の糖質成分の結晶化を抑える、
請求項1に記載のグミキャンディ。
【請求項3】
前記第2グミ部分が、前記他の糖質成分としてトレハロースを含
前記トレハロースの含有量が、第2グミ部分の重量に対して、7重量%から30重量%である
請求項1又は2に記載のグミキャンディ。
【請求項4】
更に、前記他の糖質成分として砂糖を含み、
砂糖の含有量が、20重量%から50重量%である、
請求項1からのいずれか一項に記載のグミキャンディ。
(ただし、マルトースと他の糖質成分との合計は、100重量%を超えない。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グミキャンディに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゼラチンに加え、砂糖や水飴などの糖質成分を含むグミキャンディが提供されている(例えば、特許文献1)。また、このような糖質成分を含むグミキャンディにおいて、エアレーション処理が施された砂糖等に由来し、ふんわりとした柔らかい食感を呈するグミキャンディが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−360174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般のグミキャンディにおいて、数ヶ月から1年程度に渡る比較的長い賞味期限が設定されている。しかしながら、グミキャンディが長期間喫食されずに保存された場合、グミキャンディが硬化する傾向にある。特に、エアレーション処理が施されたふんわりとした柔らかい食感を呈するグミキャンディにおいて、含有される糖質成分が、時間経過に伴い結晶化する。その結果、このような形態のグミキャンディは、時間経過に伴い当初より硬化するため、製造から長期間経過した後において所望の食感が維持されているか否か懸念が生じる。
【0005】
前述の課題に鑑み、本発明は、長期間保存された場合であっても、含有される糖質成分の結晶化を防ぎ、所望の食感を維持可能なグミキャンディの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの課題を解決するため、本発明に係るグミキャンディは、以下の特徴を有する。
(1)本発明のグミキャンディは、弾力感を呈する第1グミ部分と、前記第1グミ部分とは異なるグミ部分であって、エアレーション処理が施されると共に、前記第1グミ部分を包む第2グミ部分と、を含み、少なくとも第2グミ部分は、粉末由来のマルトース及び他の糖質成分を含み、前記マルトースの含有量は、第2グミ部分の重量に対して、4重量%から20重量%である
(2)前記(1)のグミキャンディにおいて、マルトースは、前記他の糖質成分の結晶化を抑える。
(3)前記(1)又は(2)のグミキャンディは、前記第2グミ部分が、前記他の糖質成分としてトレハロースを含み、前記トレハロースの含有量が、第2グミ部分の重量に対して、7重量%から30重量%である
(4)前記(1)から(3)のいずれかに記載のグミキャンディは、更に、前記他の糖質成分として砂糖を含み、砂糖の含有量が、20重量%から50重量%である(ただし、マルトースと他の糖質成分との合計は、100重量%を超えない。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、含有されるマルトースによって他の糖質成分の結晶化が抑制される結果、喫食されずに長期間保存された場合でも、所望の食感を維持可能なグミキャンディを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るグミキャンディの垂直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[グミキャンディ]
以下、本発明の一実施形態に係るグミキャンディ1を説明する。まず、図1(グミキャンディ1の垂直断面図)を参照する。図1に示されるように、グミキャンディ1は、いわゆるプルプルとした弾力感を呈する第1グミ部分10と、エアレーション処理により発泡化され、フワフワ(ふんわり)した柔らかい食感を呈する第2グミ部分20とを含む。なお、第2グミ部分20のように、エアレーション処理が施されたものを以下「発泡体」や「発泡部」などと言う場合がある。
【0010】
特に限定されるものではないが、第1グミ部分10は、ゲル化剤、水飴、砂糖、果汁等を含む。ここで、ゲル化剤の例として、牛ゼラチン、豚ゼラチン、魚ゼラチン、ペクチン、アラビアガム、アルギン酸塩、カラギーナン、寒天、澱粉、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、プルラン、ジェランガム等が挙げられる。更に、水飴、砂糖以外の糖質を含んでもよく、酸味料、着色料、香料等の他の添加剤を含んでもよい。
【0011】
また、第2グミ部分20は、糖質を含む。糖質の例として、ブドウ糖、果糖、キシロース等の単糖類;砂糖(上白糖、グラニュー糖、粉糖等)、乳糖、異性化乳糖、マルトース、トレハロース、オリゴ糖、デキストリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水飴等の二糖類以上の多糖類;キシリトール、マルチトール、還元パラチノース(パラチニット)、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、還元乳糖、還元水飴等の糖アルコール等が挙げられる。更に、第2グミ部分20は、ゼラチン等のゲル化剤、澱粉、加工澱粉等の澱粉系成分、酸味料、果汁、着色料、香料、ミネラル(カルシウム、マグネシウム等)等の各種添加物を含んでもよい。
【0012】
ただし、第2グミ部分20は、少なくとも、砂糖に加えて、マルトース、トレハロースを含むことが好ましい。マルトースを含むことで、砂糖など第2グミ部分20に含まれる他の糖質の結晶化を防ぐことができる。また、マルトースに加えてトレハロースを含むことで、砂糖など第2グミ部分20に含まれる他の糖質の結晶化をより効果的に防ぐことができる。これにより、グミキャンディ1が喫食されずに長期間保存されても、時間経過に伴う他の糖質の結晶化に起因する第2グミ部分20の硬化を防止できる。その結果、グミキャンディ1における所望の食感を長期間維持することができる。
【0013】
第2グミ部分20の砂糖の含有量は、特に限定されるものではないが、第2グミ部分20の重量に対して、20重量%から60重量%であることが好ましい。また、第2グミ部分20の砂糖の含有量は、20重量%から50重量%であることがより好ましい。更に、第2グミ部分20の砂糖の含有量は、第2グミ部分20の重量に対して、35重量%から50重量%であることがより好ましく、35重量%から45重量%であることが更に好ましい。なお、後述するように、グミキャンディ1が、第1グミ部分10を含まず、第2グミ部分20によって構成される場合、砂糖の前記重量%は、グミキャンディ1に対する重量%に対応する。
【0014】
砂糖の含有量が20重量%を下回ると、グミキャンディ1の甘味が十分呈されない可能性がある他、フワフワ(ふんわり)した柔らかい食感に至らない点で好ましくない。これに対して、砂糖の含有量が60重量%を上回ると、グミキャンディ1が過度に甘くなることに加え、マルトースやトレハロースなどの他の成分の割合が相対的に低下し、時間経過に伴う砂糖の結晶化を十分抑制できない可能性がある点で好ましくない。また、グミキャンディ1の保形性が低下し得る点でも好ましくない。
【0015】
更に、第2グミ部分20のマルトースの含有量は、特に限定されるものではないが、第2グミ部分20の重量に対して、1重量%から48重量%(特に、2重量%から48重量%)であることがより好ましい。また、第2グミ部分20のマルトースの含有量は、第2グミ部分20の重量に対して、1重量%から30重量%(特に、2重量%から30重量%)であることがより好ましい。更に、第2グミ部分20のマルトースの含有量は、第2グミ部分20の重量に対して、1重量%から25重量%(特に、2重量%から25重量%)であることがより好ましい。更に、第2グミ部分20のマルトースの含有量は、第2グミ部分20の重量に対して、1重量%から20重量%(特に、2重量%から20重量%)であることがより好ましい。更に、第2グミ部分20のマルトースの含有量は、第2グミ部分20の重量に対して、4重量%から10重量%であることがより好ましい。なお、後述するように、グミキャンディ1が、第1グミ部分10を含まず、第2グミ部分20によって構成される場合、マルトースの前記重量%は、グミキャンディ1に対する重量%に対応する。
【0016】
マルトースの含有量が1重量%(好ましくは、2重量%)を下回ると、時間経過に伴う砂糖などの糖質の結晶化を十分抑制できない可能性がある点で好ましくない。これに対して、マルトースの含有量が48重量%を上回ると、砂糖などの甘味性糖質の割合が相対的に低下するため、グミキャンディ1に所望の甘味を付与できないなどの点で好ましくない。また、マルトースの含有量が増加するに従い、グミキャンディ1の保形性が低下する、あるいは隣り合う他のグミキャンディ1との引っ付きが起こる可能性が高まる点でも好ましくない。
【0017】
更に、第2グミ部分20のトレハロースの含有量は、特に限定されるものではないが、第2グミ部分20の重量に対して、3重量%から50重量%(特に、5重量%から50重量%)であることが好ましい。また、第2グミ部分20のトレハロースの含有量は、第2グミ部分20の重量に対して、3重量%から30重量%(特に、5重量%から30重量%)であることがより好ましい。更に、第2グミ部分20のトレハロースの含有量は、第2グミ部分20の重量に対して、3重量%から20重量%(特に、5重量%から20重量%)であることがより好ましい。更に、第2グミ部分20のトレハロースの含有量は、第2グミ部分20の重量に対して、7重量%から10重量%であることが更に好ましい。なお、後述するように、グミキャンディ1が、第1グミ部分10を含まず、第2グミ部分20によって構成される場合、トレハロースの前記重量%は、グミキャンディ1に対する重量%に対応する。
【0018】
トレハロースの含有量が3重量%(好ましくは、5重量%)を下回ると、トレハロースに起因する糖質の結晶化抑制機能が十分働かない可能性があると共に、グミキャンディ1において、トレハロースに基づく所望の食味・食感が呈されない可能性がある点で好ましくない。これに対して、トレハロースの含有量が48重量%を上回ると、砂糖、マルトースなどの他の成分の割合が相対的に低下するため、想定される各成分の諸特性(食味、食感、糖質の結晶化抑制等)が十分奏されない可能性がある点で好ましくない。
【0019】
なお、本実施形態に係るグミキャンディ1は、プルプルとした弾力感を呈する第1グミ部分10と、ふんわりとした柔らかい食感を呈する第2グミ部分20とによる2層構造を備えるが、マルトースなどの成分によって他の糖質成分の結晶化が抑制可能なものであれば、本発明に係るグミキャンディの形態はこれに限られない。また、グミキャンディの食感も前記のものに限られない。
【0020】
本発明に係るグミキャンディの他の形態として、グミキャンディ全体が、前記第2グミ部分20によって構成される例が挙げられる。すなわち、グミキャンディ全体が、エアレーション処理により発泡化された部分によって構成される例が挙げられる(ただし、上記例において、第2グミ部分20に相当する部分以外に多少の追加部分が含まれてもよい。)。この場合、第2グミ部分の重量に対するものとして記載される前記砂糖、マルトース、トレハロースの含有量の好適範囲は、グミキャンディ1全体に対する含有量の好適範囲に置き換えられる。
【0021】
[グミキャンディの製造方法]
次に、本実施形態に係るグミキャンディ1の製造方法を説明する。まず、第1グミ部分10の製造方法について説明する。初めに、加熱撹拌された水にゲル化剤(例えば、ゼラチン、ペクチン、アラビアガム、アルギン酸塩等)を添加してゲル化剤溶液を作製する。ゲル化剤溶液の温度や撹拌時間などの条件は、添加された成分を十分溶解できるものであれば適宜調整可能である。
【0022】
続いて、作製されたゲル化剤溶液、各種糖質(例えば、ソルビトール、水飴、砂糖等)、加水の各原料を計量する。計量を終えた後、各原料を所定の混合機に投入し混合する。このとき、得られた混合液を100℃から120℃まで加温することにより、第1グミ部分10の元となる第1グミ原料が得られる。続いて、得られた第1グミ原料に、酸味料、果汁、着色料、香料、水を添加し、これらを混合する。これにより、第1グミ部分10が得られる。
【0023】
次に、第2グミ部分20の製造方法について説明する。初めに、加熱撹拌された水にマルトース、トレハロース、澱粉系成分、水飴等を添加して第1溶液を作製する。第1溶液の温度や撹拌時間などの条件は、添加された成分を十分溶解できるものであれば適宜調整可能である。
【0024】
第1溶液の作製に前後し、あるいは第1溶液の作製に並行して、加熱撹拌された水にゼラチン等のゲル化剤等を添加して第2溶液を作製する。第2溶液の温度や撹拌時間などの条件に関しても、添加された成分を十分溶解できるものであれば適宜調整可能である。
【0025】
続いて、作製された第1溶液、第2溶液、各種糖質(例えば、ソルビトール、水飴、砂糖等)、水の各原料を計量する。計量を終えた後、各原料を所定の混合機に投入し混合する。このとき、得られた混合液を100℃から120℃まで加温することにより、第2グミ部分20の元となる第2グミ原料が得られる。
【0026】
続いて、得られた第2グミ原料に、酸味料、果汁、着色料、香料、水を添加する。その後、これらの成分が添加された第2グミ原料に、公知の発泡機を用いてエアレーション処理を施す。エアレーション処理は、グミ原料の冷却を伴うものであってもよい。また、冷却をせずグミ原料を所定温度に保ちながら、エアレーション処理を行ってもよい。このエアレーション処理によって、空気を含むフワフワとした柔らかい食感の第2グミ部分20が得られる。
【0027】
第1グミ部分10及び第2グミ部分20を作製した後、コーンスターチをベースとした成形型に双方のグミ部分を充填し、その状態のグミ部分を数10時間静置して自然乾燥する。自然乾燥後、これを成形型から取り出す。更に、取り出されたグミ原料の表面にオイルを付着させるオイル掛けを行い、グミキャンディ1が得られる。最後に、所定の包装機を用い、プラスチック製の袋やパウチなどの包装体によってグミキャンディ1を包装する。
【実施例】
【0028】
以上説明したグミキャンディにおいて、具体的な実施の例を以下に示す。ただし、本発明は、下記の実施例により限定及び制限されるものではない。
【0029】
<マルトースの有無によるグミキャンディの硬度比較(1)>
下表1に示される成分配合の実施例1と比較例1とを作製し、テクスチャーアナライザ(島津製作所社製)によって各試料の硬度を測定した。実施例1と比較例1との主な違いは、実施例1はマルトースを含むのに対し、比較例1はマルトースを含まない点である。なお、実施例1及び比較例1は、製造から2ケ月を経過した試料である。ただし、一般に水飴にもマルトースが含まれるところ、実施例1において添加されたマルトースは、水飴に含まれるマルトースとは別のマルトース粉末に由来する(以下、別途添加された粉末由来のマルトースを「マルトース(粉末由来)」と言う場合がある)。また、グミキャンディ1が、第1グミ部分10を含まず、第2グミ部分20によって構成される場合、グミキャンディ1の各成分の配合量(重量%)は、表1の左側の数値に対応する。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例1及び比較例1に関する硬度測定結果を下表2に示す。ここで、各試料に関する硬度測定方法は、次の通りである。すなわち、試料を硬度計にセットした後、セットされた試料を圧縮して、その変位が5mmになったときの圧縮荷重(試験力:単位N)を測定する。得られた試験力が、各試料の硬度に対応する。なお、実際の硬度は、試験力を試料圧縮面(試験面)の表面積で割ることにより得られる。本実験において、実施例1及び比較例1に関する試験面の表面積は、共に同じとした。
【0032】
なお、実施例1に関して、同じ試料における製造後2ケ月の試験力、製造直後の試験力、これらの試験力の変化量を表2に示すと共に、比較例1に関して、同じ試料における製造後2ケ月の試験力、製造直後の試験力、これらの試験力の変化量を併せて表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示されるように、比較例1における製造後2ケ月の試験力と製造直後の試験力との差(変化量)は、実施例1におけるそれより大きく増加した。すなわち、比較例1は、実施例1より早いスピードで硬化した。換言すれば、実施例1において、比較例1に比べてグミキャンディの硬化が抑制された。
【0035】
前記実験結果より、実施例1の場合、長期間保存されても糖質の結晶化が抑制され、試料が硬化しにくい一方、比較例1の場合、糖質の結晶化が進み、試料の硬化が早まったことが示唆される。前記の通り、実施例1と比較例1との主な違いは、マルトース(粉末由来)を含むか否かである。前記実験結果を考慮すれば、糖質の結晶化抑制にマルトースが大きく寄与していることが推察される。
【0036】
<マルトースの有無によるグミキャンディの硬度比較(2)>
前述のように、実施例1に含まれる水飴にも、マルトースが含まれる(水飴を100重量部とする場合、マルトースは、そのうち54重量部含まれる)。続く実験において、糖質の結晶化抑制効果が、水飴に含まれるマルトースではなく、単独で添加されたマルトース(粉末由来)に起因することを確認した。
【0037】
より詳しくは、実施例1のマルトース(粉末由来)の重量分を、その重量分を含む水飴量に換算し、換算された量の水飴を加えた。この試料を比較例2とした(例えば、表1に示される実施例1の場合、第2グミ部分20の全重量を100gとした場合、5.0gのマルトース(粉末由来)が含まれている。このマルトース重量分を含む水飴量は、5.0g÷0.54=9.3gと換算される。換算された9.3gの水飴を加え、比較例2の全水飴量を23.1gとした(13.8g+9.3g)。一方、比較例2におけるマルトース(粉末由来)を0gとする)。比較例2において、その他の成分を更に加えることは、行われていない。
【0038】
実施例1(ただし、前述の実施例1に対応する試料に対し、成分及び配合量を同じくする別の試料)及び比較例2に関する硬度測定結果を下表3に示す。ここで、各試料に関する硬度測定方法は、前記と同様である。すなわち、表3に示される各数値は、実施例1に関する製造後2ケ月の試験力、製造直後の試験力、これらの試験力の変化量、並びに比較例2に関する製造後2ケ月の試験力、製造直後の試験力、これらの試験力の変化量に対応する。
【0039】
【表3】
【0040】
表3に示されるように、比較例2における製造後2ケ月の試験力と製造直後の試験力との差(変化量)は、実施例1におけるそれより増加した。前記実験結果によれば、グミキャンディ1の結晶化抑制効果は、単独で添加されるマルトース(粉末由来)に起因することが示唆された。
【0041】
<砂糖の含有量を変化させた場合の評価>
次に、実施例1(第2グミ部分20の全重量に対してグラニュー糖(砂糖)43重量%を含む)の他に、下表4に示す試料に関して、製造後2か月のグミキャンディ1における保形性、隣り合う他のグミキャンディとの引っ付き、結晶化度合い、及び食感を評価した。評価結果を表4に示す。なお、表4の実施例2から実施例8におけるグラニュー糖(砂糖)の含有量は、第2グミ部分20の全重量に対する重量%に対応する。ただし、グミキャンディ1が、第1グミ部分10を含まず、第2グミ部分20によって構成される場合、各実施例における下記グラニュー糖(砂糖)の含有量は、グミキャンディ1の全重量に対する重量%に対応する。各項目における評価基準は、下記の通りである。すなわち、問題ない場合「〇」、少し劣るが気にならない程度の場合「△」、著しく劣る場合「×」と評価される。
【0042】
【表4】
【0043】
表4に示されるように、グラニュー糖10重量%から50重量%の試料(実施例1から実施例6)において、「×」の評価が多くて1つであり、良好な試料であることが確認された。特に、グラニュー糖30重量%から43重量%の試料(実施例1から実施例5)において、「×」の評価が1つもなく、更に良好な試料であることが確認された。
【0044】
次に、実施例1から実施例6の各試料に関し、製造直後及び製造後2カ月の硬度測定を行った。結果を下表5に示す。各試料に関する硬度測定方法は、前記と同様である。
【0045】
【表5】
【0046】
表5に示されるように、実施例1から実施例6のいずれにおいても、製造後2か月と製造直後の硬度差が3N未満であった。特に、実施例2を除き、製造後2か月と製造直後の硬度差が2N以下であった。前述の比較例1及び2の場合、製造後2か月と製造直後の硬度差が3Nを超えていた。そのため、実施例1から実施例6のいずれに関しても、グミキャンディ1の結晶化が、長期間に渡り抑制されていることが示された。
【0047】
<マルトース(粉末由来)の含有量を変化させた場合の評価>
次に、実施例1(第2グミ部分20の全重量に対してマルトース5.0重量%を含む)の他に、下表6に示す試料に関して、製造後2か月のグミキャンディ1における保形性、隣り合う他のグミキャンディとの引っ付き、結晶化度合い、及び食感を評価した。評価結果を表6に示す。なお、表6の実施例9から実施例16におけるマルトース(粉末由来)の含有量は、第2グミ部分20の全重量に対する重量%に対応する。ただし、グミキャンディ1が、第1グミ部分10を含まず、第2グミ部分20によって構成される場合、各実施例における下記マルトース(粉末由来)の含有量は、グミキャンディ1の全重量に対する重量%に対応する。各項目における評価基準は、下記の通りである。すなわち、問題ない場合「〇」、少し劣るが気にならない程度の場合「△」、著しく劣る場合「×」と評価される。
【0048】
【表6】
【0049】
表6に示されるように、マルトース(粉末由来)1重量%から30重量%の試料(実施例1及び実施例9から実施例13)において、「×」の評価が多くて1つであり、良好な試料であることが確認された。特に、マルトース(粉末由来)5重量%から20重量%の試料において、「×」の評価が1つもなく、更に良好な試料であることが確認された。
【0050】
次に、実施例1及び実施例9から実施例13の各試料に関し、製造直後及び製造後2カ月の硬度測定を行った。結果を下表7に示す。各試料に関する硬度測定方法は、前記と同様である。
【0051】
【表7】
【0052】
表7に示されるように、実施例1及び実施例9から実施例13のいずれにおいても、製造後2か月と製造直後の硬度差が2N以下であった。前述の比較例1及び2の場合、製造後2か月と製造直後の硬度差が3Nを超えていた。そのため、実施例1及び実施例9から実施例13のいずれに関しても、グミキャンディ1の結晶化が、長期間に渡り抑制されていることが示された。
【0053】
<トレハロースの含有量を変化させた場合の評価>
次に、実施例1(第2グミ部分20の全重量に対してトレハロース9.1重量%を含む)の他に、下表8に示す試料に関して、製造後2か月のグミキャンディ1における保形性、隣り合う他のグミキャンディとの引っ付き、結晶化度合い、及び食感を評価した。評価結果を表8に示す。なお、表8の実施例17から実施例24におけるトレハロースの含有量は、第2グミ部分20の全重量に対する重量%に対応する。ただし、グミキャンディ1が、第1グミ部分10を含まず、第2グミ部分20によって構成される場合、各実施例におけるトレハロースの含有量は、グミキャンディ1の全重量に対する重量%に対応する。各項目における評価基準は、下記の通りである。すなわち、問題ない場合「〇」、少し劣るが気にならない程度の場合「△」、著しく劣る場合「×」と評価される。
【0054】
【表8】
【0055】
表8に示されるように、トレハロース3重量%から30重量%の試料(実施例1及び実施例17から実施例21)において、「×」の評価が多くて1つであり、良好な試料であることが確認された。特に、トレハロース9.1重量%から30重量%の試料において、「×」の評価が1つもなく、更に良好な試料であることが確認された。なお、実施例22の試料においても、「×」の評価が1つであるが、製造後1か月の時点で表面全体が結晶化した。
【0056】
次に、実施例1及び実施例17から実施例21の各試料に関し、製造直後及び製造後2カ月の硬度測定を行った。結果を下表9に示す。各試料に関する硬度測定方法は、前記と同様である。
【0057】
【表9】
【0058】
表9に示されるように、実施例1及び実施例17から実施例21のいずれにおいても、製造後2か月と製造直後の硬度差が2N以下であった。前述の比較例1及び2の場合、製造後2か月と製造直後の硬度差が3Nを超えていた。そのため、実施例1及び実施例17から実施例21のいずれに関しても、グミキャンディ1の結晶化が、長期間に渡り抑制されていることが示された。
【0059】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明した。ただし、前述の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定する趣旨で記載されたものではない。本発明には、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るものを含み得る。また、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…グミキャンディ
10…第1グミ部分
20…第2グミ部分
図1