(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、真空ポンプやコンプレッサ等の気体(ガス)用機械に使用される軸シールに対し
て、高速(高摺動性)、耐ダスト性などの厳しい使用環境への適用が要求されている。
しかし、
図6に示すような従来の軸シール9は、ダストシール96を、自由状態で大気側
Xに向って縦断面視J字状に弯曲させてダストリップ部96aを形成すると共に、ダストリ
ップ部96aの内周端縁96dの内径寸法d9を回転軸Kの外径寸法Dよりも小さく設定して
いるため、
図7に示すように、運転時(回転軸Kの回転時)に、ダストリップ部96aの内
周端縁96dと回転軸Kの外周面Kaとの間で高温の摺動発熱が発生し、ダストリップ部96
aの物性が変化(低下)して摩耗が促進されるといった問題や、回転軸Kに焼けKzが発
生して摩耗がさらに促進されるといった問題があった。
また、
図8に示すように、ダストシール96の弾性的復元力によって、外周面Kaに押し
付けられるため、摩耗が早くなると共に焼けが酷くなり、安定したシール性能が発揮でき
ず、耐久性も低下する(寿命が短くなる)といった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、長期に渡り安定したシール性能を発揮しつつ優れた耐久性が得られ
る軸シールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る軸シールは、回転軸に摺接するシールエレメントと、大気側からのダスト
の侵入を防止するためのダストシールと、を備えた軸シールに於て、上記ダストシールは
、上記回転軸の軸心に直交する平面形状で、かつ、縦断面の肉厚が均一のストレート状で
あり、組み付け完成状態で、上記ダストシールの外周面をアウターケースの円筒壁部の内
周面に当接状態として、上記ダストシールはラジアル方向に位置決めされ、上記ダストシ
ールは円形の孔を有し、該円形の孔の自由状態における内径寸法は、上記回転軸の外径寸
法よりも極微小寸法をもって小さく設定され、上記回転軸の回転が開始されて起こる初期
摩耗によって、自由状態における上記ダストシールの上記孔の内径寸法は上記回転軸の外
径寸法と同一となって、
装着運転状態において、上記孔の内周面と上記回転軸の外周面との間隙が零でありかつ摺接面圧力が零と
なってダストシールの内周面が回転軸の外周面を弾発的に押圧しないように構成されているものである。
また、上記ダストシールの肉厚寸法を、上記シールエレメントのリップ部の肉厚寸法の
0.3倍以上1.3倍以下に設定したものである。
また、上記シールエレメント及び上記ダストシールは、PTFEから成るものである。
また、上記ダストシールの上記内周面を、平滑円周面としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ダストシールと回転軸の間の摺動発熱を低減し、ダストシールの寿命
を改善(延命化)して、シール性能と耐久性を大幅に向上できる。構造が簡素で、かつ、
製造も容易でありながら、ダストシールの摩耗を防止し、回転時の過剰な発熱を防ぎ、長
期間に渡って、安定して優れたシール性(耐ダスト性)を発揮できる。特に、工事現場等
の屋外や工場といったダストの多い雰囲気で使用される大型機械用軸シールとして、ダス
トに対するシール性能が向上され、高速回転にも十分に適用可能で、耐久性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係る軸シールは、
図1及び
図2に示すように、金属製のアウターケース1と、
金属製のインナーケース2と、ゴム等の弾性材のガスケット3と、樹脂製のシールエレメ
ント6と、を備え、さらに、シールエレメント6よりも大気側Xに、大気側Xからのダス
トの侵入を防止する樹脂製のダストシール7を備えている。(なお、ダストシール7は一
般にダストリップと呼ばれる場合もある。)
【0010】
アウターケース1は、円筒壁部11と、円筒壁部11の一端部(大気側Xの端部)からラジ
アル内方向に延伸状の内鍔部12と、円筒壁部11の他端部(密封室側Yの端部)に設けられ
組立工程においてラジアル内方向へ折曲げられる小内鍔状のカシメ折曲げ片13と、を有し
ている。なお、アウターケース1は、円筒壁部11にラジアル方向に貫通する小孔を有して
いない。
【0011】
インナーケース2は、縦断面L字状として、アウターケース1の円筒壁部11に内嵌状に
装着されると共にアウターケース1のカシメ折曲げ片13にてアウターケース1の内鍔部12
側へ押圧される円筒状壁部21と、アウターケース1の内鍔部12と共働きしてガスケット3
とシールエレメント6とダストシール7とを挟圧保持する内鍔部22と、を有している。な
お、インナーケース2は、I字状や角形ブロック状であっても良い。
【0012】
ガスケット3は、円環平板形状であって、図例においては、インナーケース2の内鍔部
22とシールエレメント6との挟圧面間に介在させているが、シールエレメント6とダスト
シール7との挟圧面間や、ダストシール7とアウターケース1の内鍔部12との挟圧面間に
介在させても良い(図示省略)。
【0013】
シールエレメント6は、肉厚が均一状であり、
図1の自由状態(ハウジングHと回転軸
Kの間に取着していない未装着状態)では、縦断面形状がJ字状であり、アウターケース
1の軸心Lに直交する直交平面壁部61と、回転軸Kの外周面Kaに摺接可能なリップ部62
と、両者を連続状に結ぶ弯曲壁部63と、から成る。
図2に示すように、ハウジングH及び回転軸Kの間に装着され回転軸Kが回転している
装着運転状態では、シールエレメント6の縦断面形状はL字状であり、シールリップ部62
は円筒形状となって回転軸Kの外周面Ka(以下、軸外周面Kaと呼ぶ場合もある)に摺
接する。
【0014】
ダストシール7は、チリやホコリ等のダストが、大気側Xからシールエレメント6の背
面側(大気側X)に侵入を防止するためのものであって、このダストシール7は、自由状
態及び装着状態のいずれにあっても、軸心直交面状の円環平板形状であり、縦断面で肉厚
が略均一のストレート状(一文字状)である。
【0015】
そして、ダストシール7は、円形の孔17を有し、また、アウターケース1の内鍔部12と
インナーケース2の内鍔部22との間に挟圧保持される正面視円環状の軸心直交平面壁部71
と、軸心直交平面壁部71のラジアル内方端部からラジアル内方向へ延伸状に設けられた正
面視円環状かつ縦断面視ストレート状のダストリップ部72と、を連続状に(一体に)有し
ていると言うこともできる。
図2に示すように、ダストリップ部72は装着運転状態におい
ても回転軸Kに対して直交面状に保持される。
【0016】
ダストシール7とシールエレメント6は同材質であって、PTFE(ポリテトラフルオ
ロエチレン)から成る。
また、ダストシール7は、ワンピース(1片)から成り、材質の異なる複数ピースを接
着等によって一体化させた場合に比べて、製造が容易でありながら寸法精度に優れる。
【0017】
ダストシール7は、その外周面7aを、アウターケース1の円筒壁部11の内面部に(直
接に)当接させて、ラジアル方向に位置決めされている。
ダストシール7の孔17の内周面7bは、平滑円周面に形成している。言い換えると、内
周凹溝や螺旋溝等のラビリンス溝を省略している。
【0018】
そして、
図1及び
図3に示すように、未使用(自由)状態に於て、ダストシール7の円
形の孔17の内径寸法d7を、回転軸Kの外径寸法Dと、同一寸法に設定するか、あるいは
、
図4に示すように、自由状態で、ダストシール7の内径寸法d7を、回転軸Kの外径寸
法Dよりも極微小寸法をもって小さく設定する。
後者の場合には、ハウジングH及び回転軸Kの間に装着されると共に回転軸Kが回転を
開始していない装着運転前状態では、ダストシール7が僅かにラジアル外方へ弾性変形し
て、内周面7bを軸外周面Kaに軽く圧接させる。
【0019】
そして、
図5に示すように、回転軸Kの回転が開始されると、初期摩耗(なじみ)によ
り、内周面7bと軸外周面Kaの間隙が零となるように構成している。
言い換えると、ダストシール7の内径寸法d7は、回転軸Kの回転が開始されて起こる
初期摩耗によって、回転軸Kの外径寸法Dと同一寸法となるように設けている。即ち、上
述の極微小寸法は初期摩耗によって摩耗可能な寸法である。
【0020】
また、装着運転状態において、ダストシール7は、初期摩耗が終了した後は、内周面7
bが軸外周面Kaを弾発的に押圧せず、(内周面7bと軸外周面Kaが接していても、)
初期摩耗以上の摩耗が発生せず、摺動発熱を低減して(物性が変化する程の高温の摺動発
熱を発生させず)、シール性能が保持されると共に十分な耐久性が得られる。
【0021】
他方、前者の場合には、
図3に示すように、自由状態において、ダストシール7の内径
寸法d7を、回転軸Kの外径寸法Dと同一寸法となるように設定したので、自由状態、装
着運転前状態、装着運転状態の何れの状態においても、ダストシール7の孔17の内周面7
bと軸外周面Kaの間隙が零となる。
【0022】
以上のように、ダストシール7の孔17の内径寸法d7が、自由状態で、
図4のように回
転軸Kの外径寸法Dよりも極微小寸法だけ小さい場合、あるいは、
図3のように上記外径
寸法Dと同一の場合のいずれにあっても、装着状態では、回転軸Kの外径寸法Dと同一の
内径寸法d7を保ち、しかも、形状はストレート状断面―――円環平板形状―――を保ち
、回転軸Kの回転時(装着運転時)には、内周面7bと軸外周面Kaとの間隙が零となる
。
図6〜
図8に示した従来例にあっては、折れ曲がったダストリップ部96aは矢印M方向
に弾発的に復元しようとする弾発付勢力が、内周端縁96dの摩耗進行にかかわりなく作用
するのに対し、本発明では、当初から(
図3の場合)、あるいは、初期摩耗が終れば(図
4、
図5の場合)、その後は、摺接面圧力が零となり、摩耗がほとんど進行せず、寿命が
延びるのである。
【0023】
さらに、
図1に示すように、自由状態で、ダストシール7(ダストリップ部72)の肉厚
寸法T7を、シールエレメント6のリップ部62の肉厚寸法T6の0.3倍以上1.3倍以
下に設定している。好ましくは、0.5倍以上1.1倍以下に設定する。下限値未満であ
るとダストの侵入を十分に防止できない虞れがあり、上限値を越えると軸シール全体の厚
み寸法が大きくなって材料が無駄となる。
【0024】
なお、ダストシール7とシールエレメント6の間の空間S(
図2参照)にグリース(潤
滑剤)を保持させるも良い。
ダストシール7が、長期間に渡って摩耗等により変形しないため、グリースが長期間に
渡って適切に保持される。
【0025】
以上のように本発明の軸シールは、回転軸Kに摺接するシールエレメント6と、大気側
Xからのダストの侵入を防止するためのダストシール7と、を備えた軸シールに於て、ダ
ストシール7は、回転軸Kの外径寸法Dと同一の内径寸法d7の円形の孔17を有する円環
平板形状を保ち、孔17の内周面7bと回転軸Kの外周面Kaとの間隙が零となるように設
定されているので、ダストシール7と回転軸Kの間の摺動発熱を低減し、回転軸Kの局部
的な焼けKz(
図8参照)を防止して、ダストシール7の寿命を改善(延命化)し、シー
ル性能と耐久性を大幅に向上できる。構造が簡素で、かつ、製造も容易でありながら、ダ
ストシール7の摩耗を防止し、回転時の過剰な発熱を防ぎ、長期間に渡って安定して優れ
たシール性(耐ダスト性)を発揮できる。特に、工事現場等の屋外や工場といったダスト
の多い雰囲気で使用される大型機械用軸シールとして、ダストに対するシール性能が向上
され、高速回転にも十分に適用可能で、耐久性にも優れる。
【0026】
また、ダストシール7の肉厚寸法T7を、シールエレメント6のリップ部62の肉厚寸法
T6の0.3倍以上1.3倍以下に設定したので、軸シール全体を薄く形成可能としなが
らも、十分な耐ダスト性能(ダスト侵入防止性能)を発揮できる。容易に製造及び組立を
行うことができる。
【0027】
また、シールエレメント6及びダストシール7は、PTFEから成るので、摺動発熱を
低減できると共に耐久性を向上できる。シールエレメント6の製造工程や材料調達をその
ままダストシール7に共用できて、製造コストを低減できる。
【0028】
また、ダストシール7の外周面7aをアウターケース1の円筒壁部11に当接させて、ダ
ストシール7のラジアル方向の位置決めをしたので、ダストシール7をラジアル方向に高
精度に位置決めでき、孔17の内周面7bの軸外周面Kaに対する間隙を精度良く零として
、品質及び性能を安定させることができる。
【0029】
また、ダストシール7の内周面7bを、平滑円周面としたので、製作が容易でありなが
らも、ダストの侵入を確実に防止できる。