(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6925227
(24)【登録日】2021年8月5日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20210812BHJP
【FI】
B60C11/03 300B
B60C11/03 300E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-200582(P2017-200582)
(22)【出願日】2017年10月16日
(65)【公開番号】特開2019-73162(P2019-73162A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080540
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 篤史
(72)【発明者】
【氏名】武居 吾空
(72)【発明者】
【氏名】長本 尚子
【審査官】
増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/084666(WO,A1)
【文献】
特開2008−049791(JP,A)
【文献】
特開昭62−120203(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0238568(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド中央部に形成され、ジグザグ状を呈しながらタイヤ周方向に延びる中央細溝と、該中央細溝のタイヤ幅方向両外側にそれぞれ形成され、タイヤ周方向に延びるとともに、前記中央細溝より幅広である2本の中央周溝と、前記中央細溝と中央周溝とを連通し、タイヤ幅方向に延びるとともにタイヤ周方向に離れた複数本の横溝とを形成することで、中央細溝と中央周溝との間に二列のブロック陸部列をそれぞれ区画形成するとともに、各ブロック陸部列を前記横溝の側壁がタイヤ周方向側壁となる多数個の五角形または六角形のブロック陸部から構成したタイヤにおいて、前記2本の中央周溝よりタイヤ幅方向外側にそれぞれ設けられた外側陸部の中央周溝に露出するタイヤ幅方向内側側壁に前記ブロック陸部にそれぞれ対応し、タイヤ幅方向外側に向かって延びるとともに、該外側陸部の途中で終了する外側切欠きをタイヤ周方向に離して複数形成し、さらに、該外側切り欠きのタイヤ幅方向内側開口の少なくとも一部を、対応するブロック陸部のタイヤ幅方向距離が最大である最大位置Aと、前記ブロック陸部のタイヤ幅方向外側側壁における隣接した2個の頂点の中間点Bとの間に位置させ、
前記中央周溝をジグザグ状とすることで各ブロック陸部を六角形とする一方、該ブロック陸部のタイヤ幅方向外側側壁を1つの長側壁部と、該長側壁部より周方向長が短い1つの短側壁部とから構成するとともに、前記2個の頂点の一方を長側壁部と短側壁部との交点から、他方を長側壁部とブロック陸部のタイヤ周方向側壁との交点からそれぞれ構成し、
前記中間点Bが前記長側壁部に位置することを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記外側陸部のタイヤ幅方向内側側壁で前記外側切り欠きのタイヤ周方向両側に位置する部位は鈍角で交差している請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記外側切り欠きの長さは前記中央周溝の幅より小である請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記外側切り欠きの溝幅中央線は、ブロック陸部のタイヤ幅方向外側側壁に対し直角、または、直角に近似する角度で交差している請求項1〜3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トレッド中央部に多数個のブロック陸部からなるブロック陸部列を二列配置したタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタイヤとしては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−047140号公報
【0004】
このものは、トレッド部に、タイヤ周方向に延びる複数本の周方向溝と、隣接する2本の周方向溝を連通する複数本の横溝を配設することによって、多数個のブロック陸部からなる複数のブロック陸部列を区画形成したタイヤであって、該周方向溝を挟んで隣接する少なくとも2列のブロック陸部列において、それらを構成するブロック陸部がタイヤ周方向に互いにずらして配設されており、タイヤ幅方向に隣接しているブロック陸部間の溝部の延在方向がタイヤ幅方向及びタイヤ周方向に対し傾斜しており、タイヤ周方向に隣接するブロック陸部間距離よりも、タイヤ幅方向に隣接するブロック陸部間距離が短く、ブロック陸部のタイヤ幅方向断面長さが、ブロック陸部のタイヤ周方向両端部から該ブロック陸部の中央部にかけて少なくとも部分的に増大してなるものであり、耐摩耗性を維持しつつウエット路面におけるトラクション性能を向上させるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年、年に数度若干量の積雪があるような地域においては、降雪があってもスタッドレスタイヤに交換することなくノーマルタイヤで快適に走行できるような、即ち雪上性能が良好なノーマルタイヤが要望されていた。そこで、本発明者は積雪時におけるタイヤトレッドの挙動について鋭意研究を重ね、前記公報記載のようなタイヤにおいて、他のタイヤ性能の低下を招くことなく雪上性能を容易に向上させることができるメカニズムを知見した。
【0006】
この発明は、前述の知見に基づきなされたもので、雪上性能を容易に向上させることができるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、トレッド中央部に形成され、ジグザグ状を呈しながらタイヤ周方向に延びる中央細溝と、該中央細溝のタイヤ幅方向両外側にそれぞれ形成され、タイヤ周方向に延びるとともに、前記中央細溝より幅広である2本の中央周溝と、前記中央細溝と中央周溝とを連通し、タイヤ幅方向に延びるとともにタイヤ周方向に離れた複数本の横溝とを形成することで、中央細溝と中央周溝との間に二列のブロック陸部列をそれぞれ区画形成するとともに、各ブロック陸部列を前記横溝の側壁がタイヤ周方向側壁となる多数個の五角形または六角形のブロック陸部から構成したタイヤにおいて、前記2本の中央周溝よりタイヤ幅方向外側にそれぞれ設けられた外側陸部の中央周溝に露出するタイヤ幅方向内側側壁に前記ブロック陸部にそれぞれ対応し、タイヤ幅方向外側に向かって延びるとともに、該外側陸部の途中で終了する外側切欠きをタイヤ周方向に離して複数形成し、さらに、該外側切り欠きのタイヤ幅方向内側開口の少なくとも一部を、対応するブロック陸部のタイヤ幅方向距離が最大である最大位置Aと、前記ブロック陸部のタイヤ幅方向外側側壁における隣接した2個の頂点の中間点Bとの間に位置させたタイヤにより、達成することができる。
【発明の効果】
【0008】
積雪によって覆われている路面を前記タイヤにより走行すると、該タイヤの中央周溝には雪が押し込まれる。このとき、接地領域内において各ブロック陸部はタイヤ幅方向外側(外側陸部)を含む全方位に向かって膨出変形するため、前述の中央周溝に押し込まれた雪は該ブロック陸部の膨出変形により外側陸部に向かって押出される。ここで、各ブロック陸部のタイヤ幅方向外側への膨出変形量は、ブロック陸部のタイヤ幅方向外側部における頂点の影響を無視した場合には、該ブロック陸部のタイヤ幅方向距離(ブロック幅)が最大となる最大位置Aにおいて最大となるが、各ブロック陸部は前述のように五角形または六角形であり、横溝の側壁が該ブロック陸部のタイヤ周方向側壁を構成しているため、該ブロック陸部のタイヤ幅方向距離(ブロック幅)は前記最大位置Aからタイヤ周方向両端に向かうに従い連続的に減少する。一方、各ブロック陸部のタイヤ幅方向距離(ブロック幅)の影響を無視した場合の各ブロック陸部のタイヤ幅方向外側への膨出変形量は、ブロック陸部のタイヤ幅方向外側部における隣接した2個の頂点でほぼ零となる一方、前記頂点からタイヤ周方向に離れるに従い増大し、前記隣接した2個の頂点の中間点Bで最大となる。
【0009】
そして、各ブロック陸部のタイヤ幅方向外側への膨出変形量は前述した2種類の膨出変形量の合成量となるが、これら2種類の膨出変形量は前述のように最大位置A、中間点Bから離れるに従い徐々に減少するため、最大位置Aと中間点Bとの間における合成量がこれら最大位置A、中間点Bよりタイヤ周方向両側における合成量より大となる。このため、この発明においては、外側陸部のタイヤ幅方向内側側壁にタイヤ幅方向外側に向かって延びるとともに、該外側陸部の途中で終了する外側切欠きを複数形成するとともに、該外側切り欠きのタイヤ幅方向内側開口の少なくとも一部を前記最大位置Aと中間点Bとの間に位置させ、これにより、中央周溝に押し込まれた雪を該ブロック陸部の膨出変形により外側切り欠き内に確実に押し込んで雪の密度を増大させ、該外側切り欠き内に押し固められた雪の柱(雪柱)を形成するようにしたのである。そして、このような雪柱は外側切り欠きが接地領域から離脱する際(蹴り出し時)にせん断されるが、このときのせん断抵抗はタイヤに対して大きなグリップ力として作用し、タイヤの雪上性能を容易に向上させる。
【0010】
また、請求項2に記載のように構成すれば、外側切り欠きに雪を強力に押し込んで密度の高い雪柱を形成することができる。さらに、請求項3に記載のように構成すれば、外側切り欠きの周辺に押し付けられた雪が、パラボラ状を呈する外側陸部のタイヤ幅方向内側側壁により外側切り欠きに集められ、これにより、密度の高い雪柱を容易に形成することができる。また、請求項4に記載のように構成すれば、雪が外側切り欠き全体に確実に押し込まれ、雪柱全体の強度を容易に高めることができる。さらに、請求項5に記載のように構成すれば、ブロック陸部によって押出された雪が無駄なく外側切り欠き内に押し込まれ、強度の高い雪柱を確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の実施形態1を示すタイヤトレッドの平面図である。
【
図3】左側に頂点を有していないブロックの変形状態を説明する平面図である。
【
図4】左側に頂点を有する矩形ブロックの変形状態を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2において、11は乗用車、トラック・バス等に装着されるノーマルの空気入りタイヤであり、このタイヤ11は半径方向外端に路面に接地する加硫済みゴムからなるトレッド12を有する。前記トレッド12のタイヤ赤道Sを含むトレッド中央部には、前記タイヤ赤道Sに沿ってタイヤ周方向に途切れることなく連続して延びる中央細溝13が形成され、この中央細溝13は前記タイヤ赤道Sからの振幅量が同一のジグザグ状(三角波状)に屈曲している。また、この中央細溝13は接地領域内に侵入している接地時には負荷荷重により、該中央細溝13の両側に位置する後述のブロック陸部が倒れ込み変形をすることで、その側壁同士(中央細溝13のタイヤ軸方向内側側壁同士)が接触し、これにより、タイヤ幅方向に隣接するブロック陸部の倒れ込み変形力が有効に伝達される。ここで、ブロック陸部に前述のような倒れ込み変形を行わせるには、前記中央細溝13の溝幅を好ましくは 1.0〜 5.0mmの範囲内に、さらに好ましくは 1.5〜 3.5mmの範囲内とすればよい。
【0013】
前記中央細溝13のタイヤ幅方向両外側(両方のトレッド端D側)で前記タイヤ赤道Sから等距離離れた位置には、前記タイヤ赤道Sに沿ってタイヤ周方向に途切れることなく連続して延びる主溝としての中央周溝16、17がそれぞれ形成配置され、これらの2本の中央周溝16、17は前記中央細溝13と同一波長でジグザグ状(三角波状)に屈曲している。そして、これら中央周溝16、17の溝幅は耐摩耗性、雪上性能の低下を抑制する観点から、前記中央細溝13の溝幅より幅広としており、好ましくは 3.0〜10.0mmの範囲内と、さらに好ましくは 4.0〜 8.0mmの範囲内とするとともに、これら中央周溝16、17と中央細溝13とをタイヤ周方向に 1/3ピッチ程度ずらして配置している。前記中央細溝13と中央周溝16との間に画成されタイヤ周方向に延びる中央陸部18には、タイヤ幅方向に延びる複数本の横溝19が、また、前記中央細溝13と中央周溝17との間に画成されタイヤ周方向に延びる中央陸部20にはタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝21がそれぞれ形成され、これにより、中央細溝13と中央周溝16、17とは横溝19、21により互いに連通される。ここで、前述のタイヤ幅方向とは、タイヤ赤道Sに直角な方向を含み、該直角な方向に対し45度未満の角度で傾斜する方向を含む。
【0014】
そして、これら横溝19、21はタイヤ周方向に等距離離れて配置されるとともに、横溝19のタイヤ幅方向内端は中央細溝13の中央周溝16側に振れた最大振幅部に、また、横溝19のタイヤ幅方向外端は中央周溝16の中央細溝13側に振れた最大振幅部にそれぞれ開口し、一方、横溝21のタイヤ幅方向内端は中央細溝13の中央周溝17側に振れた最大振幅部に、また、横溝21のタイヤ幅方向外端は中央周溝17の中央細溝13側に振れた最大振幅部にそれぞれ開口している。このようにトレッド12に1本の中央細溝13と、該中央細溝13のタイヤ幅方向両外側に2本の中央周溝16、17を形成する一方、前記中央細溝13と中央周溝16、17との間の中央陸部18、20に、これら中央細溝13と中央周溝16、17とを連通した複数本の横溝19、21をそれぞれ形成すれば、これら中央細溝13、中央周溝16、17、横溝19、21によって中央陸部18、20にはタイヤ周方向に離れた多数のブロック陸部22、23がそれぞれ画成される。ここで、前記中央細溝13、中央周溝16、17がジグザグ状に屈曲するとともに、横溝19、21は共にタイヤ幅方向に対して同一角度で同一方向に傾斜しているため、前記ブロック陸部22、23は変形した六角形を呈するとともに、前記横溝19、21の側壁19a、21aがこれらブロック陸部22、23のタイヤ周方向側壁を構成することになる。
【0015】
前述した多数個の六角形を呈するブロック陸部22、23は全体として、中央細溝13と中央周溝16、17との間に区画形成された二列のブロック陸部列24、25を構成する。なお、この実施形態においては中央周溝16、17をジグザグ状とすることで多数の六角形を呈するブロック陸部22、23を画成したが、この発明においては、前記中央周溝をタイヤ赤道Sに沿って直線状に延びる溝から構成してもよく、この場合には前記ブロック陸部は五角形となり、ブロック陸部列はこれら多数個の五角形のブロック陸部から構成されることになる。各ブロック陸部22、23の中央細溝13に露出するタイヤ幅方向内側側壁22a、23aでそのタイヤ周方向中央部、ここでは内側側壁22a、23aが鈍角で交差する頂点付近には、耐偏摩耗性の低下を抑制しながら排水性を向上させるため、該ブロック陸部22、23のタイヤ幅方向外側側壁22b、23bに向かって直線状に延びる内側切り欠き28、29がそれぞれ形成されている。
【0016】
そして、これら内側切り欠き28、29は中央周溝16、17に到達することなく該ブロック陸部22、23の途中で終了することで、これらブロック陸部22、23における剛性の低下を抑制している。この結果、各ブロック陸部22、23のタイヤ幅方向距離L(タイヤ赤道Sに直交する直線に沿って測定した内側側壁22a、23aから外側側壁22b、23bまでの距離)は前記内側切り欠き28、29の位置では比較的小さな値となっている。なお、この発明においては、前記内側切り欠き28、29の形状は直線状ではなく、曲線状としたり、ジグザグ状としてもよい。また、前述した六角形を呈するブロック陸部22、23の外側側壁22b、23bを周方向長の長い長側壁部22c、23cと、該長側壁部22c、23cより周方向長が短い短側壁部22d、23dとから構成しているが、これら長側壁部22c、23cと短側壁部22d、23dとの交点は前記ブロック陸部22、23が有する6個の頂点のうちの1個の頂点Paとなる。
【0017】
前記中央周溝16、17よりタイヤ幅方向外側にはタイヤ周方向に連続して延びる外側周溝32、33がそれぞれ形成され、これら外側周溝32、33は同一波長でジグザグ状に屈曲している。この結果、前記2本の中央周溝16、17よりタイヤ幅方向外側、詳しくは前記中央周溝16と外側周溝32との間、および、前記中央周溝17と外側周溝33との間には、タイヤ周方向に延びる外側陸部としての第1外側陸部34および第1外側陸部36がそれぞれ設けられ、これらの第1外側陸部34、36にはタイヤ幅方向に延びる複数の横溝35、37がそれぞれ形成されている。この結果、中央周溝16と外側周溝32とは横溝35により、また、中央周溝17と外側周溝33とは横溝37により互いに連通される。そして、前記横溝35、37はタイヤ周方向に等距離、ここでは前記横溝19、21と同一ピッチだけ離れている。これにより、これら中央周溝16、17、外側周溝32、33、横溝35、37によって第1外側陸部34、36にタイヤ周方向に等距離離れた多数個の第1外側ブロック38、39がそれぞれ画成されるが、これら多数個の第1外側ブロック38、39は全体として、中央周溝16と外側周溝32との間、および、中央周溝17と外側周溝33との間にそれぞれ区画形成された二列の第1外側ブロック列40、41を構成する。
【0018】
また、前記外側周溝32、33とトレッド端D、Dとの間にはタイヤ周方向に延びる第2外側陸部44、45がそれぞれ画成され、これら第2外側陸部44、45にはタイヤ幅方向に延びる複数の横溝46、47がそれぞれ形成され、これらの横溝46、47のタイヤ幅方向内端は外側周溝32、33に連通する一方、これらのタイヤ幅方向外端はトレッド端D、Dに開口している。ここで、前記横溝46、47はタイヤ周方向に等距離、ここでは前記横溝19、21と同一ピッチだけ離れており、この結果、これら外側周溝32、33、横溝46、47により第2外側陸部44、45にタイヤ周方向に等距離離れた多数個の第2外側ブロック48、49がそれぞれ画成される。前述した多数個の第2外側ブロック48、49は全体として、外側周溝32とトレッド端Dとの間、および外側周溝33とトレッド端Dとの間にそれぞれ区画形成された二列の第2外側ブロック列50、51を構成する。
【0019】
ここで、前記外側陸部としての第1外側陸部34、36の中央周溝16、17に露出するタイヤ幅方向内側側壁、詳しくは、第1外側ブロック38、39の幅方向内側側壁38a、39aには、各ブロック陸部22、23に1対1でそれぞれ対応する外側切り欠き54、55がタイヤ周方向に等距離離れて複数形成され、これらの外側切り欠き54、55はタイヤ幅方向外側(トレッド端D)に向かって延びるとともに、外側周溝32、33に到達することなく、第1外側陸部34、36(第1外側ブロック38、39)の途中で終了している。なお、この実施形態においては、外側陸部を第1外側陸部34、36から構成したが、この発明においては、外側陸部は横溝が省略された周方向に連続して延びるリブであってもよく、また、外側周溝が省略されることで、中央周溝とトレッド端との間においてタイヤ周方向に延びる1本のリブであってもよい。
【0020】
そして、この実施形態においては、前述のようなタイヤ11において他のタイヤ性能の低下を招くことなく雪上性能を向上させるため、後述のような位置に外側切り欠き54、55を設けたのである。即ち、前述のように各ブロック陸部22、23は六角形または五角形であり、しかも、タイヤ幅方向に延びる横溝19、21の側壁19a、21aがブロック陸部22、23のタイヤ周方向両側壁を構成しているため、周方向中央部に向かうに従い幅方向距離Lが連続的に大となる。ここで、この実施形態では、各ブロック陸部22、23の内側側壁22a、23aでその周方向中央部には前述のように外側側壁22b、23bに向かって延び途中で終了する内側切り欠き28、29がそれぞれ形成されているため、該内側切り欠き28、29が形成されている部位ではブロック陸部22、23の幅方向距離Lが大幅に小さな値となっている。この結果、各ブロック陸部22、23においては、幅方向距離Lが最大である最大位置Aは前記内側切り欠き28、29上には存在せず、これら内側切り欠き28、29よりタイヤ周方向一側あるいはタイヤ周方向他側の少なくともいずれか一方に(1箇所または2箇所で)存在することになるが、ここでは、タイヤ周方向長が長いタイヤ周方向一側、即ち長側壁部22c、23cにある最大幅位置を最大位置Aとしている。この結果、前述したブロック陸部22、23の幅方向距離L(ブロック幅)は前記最大位置Aから該ブロック陸部22、23のタイヤ周方向両端に向かうに従い連続的に減少する。
【0021】
そして、タイヤ11の走行によりブロック陸部22、23が接地領域内に侵入すると、該ブロック陸部22、23は負荷荷重を受けてタイヤ半径方向に潰れるが、このとき、ゴムは非圧縮性であるため、ブロック陸部22、23の側壁がタイヤ幅方向外側(第1外側陸部34、36)を含む全方位に膨出変形する。ここで、ブロック陸部22、23の膨出変形は、後述のようにタイヤ幅方向外側に向かう変形が重要であるため、以下、タイヤ幅方向外側に向かう変形のみを説明する。まず、ブロック陸部22、23のタイヤ幅方向外側部における頂点の影響を無視した(頂点が存在しないと仮定した)場合、外側側壁22b、23bが第1外側ブロック38、39に向かってどのように膨出変形するかを検討する。この場合、
図3の模式図に示すように、幅方向距離が大であるほど膨出変形量が仮想線で示すように大となるため、各ブロック陸部22、23(外側側壁22b、23b)のタイヤ幅方向外側への膨出量は、該ブロック陸部22、23の幅方向距離L(ブロック幅)が最大となる最大位置Aにおいて最大となり、最大位置Aからタイヤ周方向両端に向かうに従い、即ち最大位置Aからタイヤ周方向に離れ幅方向距離Lが小さくなるに従い連続的に減少する。この結果、若干量の積雪によって覆われている路面をタイヤ11が走行することで、該タイヤ11の中央周溝16、17に押し込まれた雪は、前述した外側側壁22b、23bのタイヤ幅方向外側への膨出変形により第1外側陸部34、36に向かって押出されるが、この押出し量は前記最大位置Aで最大となり、最大位置Aから離れるに連続的に減少する。
【0022】
一方、各ブロック陸部22、23の幅方向距離L(ブロック幅)の影響を無視した(幅方向距離が一定と仮定した)場合、外側側壁22b、23bが第1外側ブロック38、39に向かってどのように膨出変形するかを検討する。この場合、
図4の模式図に示すように、前記外側側壁の頂点からの距離が大となるほど膨出変形量が仮想線で示すように増大するため、ブロック陸部22、23(外側側壁22b、23b)のタイヤ幅方向外側への膨出変形量は2個の頂点Paと頂点Pbとの双方から離れるに従い増大し、最も大きく離れた中間点Bで最大となる、換言すれば、ブロック陸部22、23のタイヤ幅方向外側部における隣接する2個の頂点Paと頂点Pbとでほぼ零となる一方、前記頂点Pa、頂点Pbからタイヤ周方向に離れるに従い増大し、前記隣接した2個の頂点Paと頂点Pbとの中間点Bで最大となる。
【0023】
ここで、この実施形態においては、前述のように内側切り欠き28、29よりタイヤ周方向一側に位置する最大幅位置を最大位置Aとして採用したので、頂点Pbは長側壁部22c、23cとブロック陸部22、23のタイヤ周方向一側側壁との交点となり、この結果、前記中間点Bは最大位置Aとタイヤ周方向側が同一側、即ち内側切り欠き28、29よりタイヤ周方向一側に位置することになる。なお、この発明においては、内側切り欠き28、29よりタイヤ周方向他側に位置する最大幅位置を最大位置Aとして採用することもできるが、この場合には、頂点Pbは短側壁部22d、23dと、ブロック陸部22、23のタイヤ周方向他側側壁との交点となる。このようなことから、若干量の積雪によって覆われている路面をタイヤ11が走行することで、該タイヤ11の中央周溝16、17に押し込まれた雪は、前述した外側側壁22b、23bのタイヤ幅方向外側への膨出変形により第1外側陸部34、36に向かって押出されるが、この押出し量は前記中間点Bで最大となり、該中間点Bから離れるに従い連続的に減少する。
【0024】
そして、各ブロック陸部22、23のタイヤ幅方向外側への膨出変形量は前述した2種類の膨出変形量の合成量となるが、これら2種類の膨出変形量は共に前述のように最大位置A、中間点Bから離れるに従い徐々に減少するため、最大位置Aと中間点Bとの間の領域Gにおける合成量は、該領域Gよりタイヤ周方向両側における領域Hの合成量より大となる。このようなことから、この実施形態においては、第1外側陸部34、36(第1外側ブロック38、39)に前述のような外側切り欠き54、55を複数形成し、さらに、前記外側切り欠き54、55のタイヤ幅方向内側開口54a、55aの少なくとも一部を、対応するブロック陸部22、23での最大位置Aと中間点Bとの間の領域Gに位置させたのである。
【0025】
これにより、中央周溝16、17に押し込まれた雪を前記ブロック陸部22、23の膨出変形により外側切り欠き54、55内に確実に押し込んで、外側切り欠き54、55内での雪の密度を増大させ、該外側切り欠き54、55内に押し固められた雪の柱(雪柱)を形成するようにしたのである。しかも、接地領域内にあるとき、第1外側陸部34、36(第1外側ブロック38、39)も半径方向に潰れるが、このとき、外側切り欠き54、55の対向する側壁が膨出変形して該外側切り欠き54、55内に侵入した雪をさらに押し固めるため、前記雪柱の強度が高くなる。そして、このような雪柱は外側切り欠き54、55が接地領域から離脱する際(蹴り出し時)にせん断されるが、このときのせん断抵抗(雪柱に付与したせん断力の反力)はタイヤ11に対して大きなグリップ力として作用し、タイヤ11の雪上性能を容易に向上させることができるのである。ここで、前述した外側切り欠き54、55のタイヤ幅方向内側開口54a、55aと前記領域Gとの重なり合い量を大とするほど、前述した雪上性能を向上させることができるので、他のタイヤ性能の低下を招かない範囲で、前記重なり合い量を大とすることが好ましい。ここで、前述のようなブロック陸部22、23(外側側壁22b、23b)のタイヤ幅方向外側(中央周溝16、17内)への膨出変形は、中央細溝13の側壁(ブロック陸部22、23の内側側壁22a、23a)同士が接地領域内において接触することで、各ブロック陸部22、23のタイヤ幅方向内側への膨出変形が制限されるため、大きな値となり、この結果、前述の中央周溝16、17に押し込まれた雪はブロック陸部22、23の膨出変形により第1外側陸部34、36に向かってさらに大きく押出され、前述の雪上性能が大幅に向上されるのである。
【0026】
また、各ブロック陸部22、23が六角形であるとき、前述のように2個の頂点Pの一方、ここでは頂点Paを、長側壁部22c、23cと短側壁部22d、23dとの交点から構成する一方、他方の頂点P、ここでは頂点Pbを長側壁部22c、23cとブロック陸部22、23のタイヤ周方向一側側壁との交点からそれぞれ構成すれば、頂点Paと頂点Pbとの間の距離が長くなって中間点Bにおける外側側壁22b、23bの膨出量が大となり、この結果、外側切り欠き54、55に雪を強力に押し込むことができ、密度の高い雪柱を形成することができる。なお、この実施形態においては、前述のように各ブロック陸部22、23の内側側壁22a、23aでその周方向中央部(ここでは頂点P上)に内側切り欠き28、29を形成したが、この発明においては、該内側切欠きは省略してもよい。このとき、ブロック陸部が六角形であると、最大位置Aは頂点上の1箇所または2箇所に存在することになるが、2箇所の場合はいずれかを最大位置Aとすればよい。そして、前述のように最大位置Aが2箇所存在する場合で、該最大位置Aがブロック陸部の内側側壁における頂点上に位置する場合には、領域Gと最大位置Aとをブロック陸部の外側側壁における頂点より周方向同一側(周方向一側または周方向他側)に位置させるようにする。また、ブロック陸部が五角形の場合は、最大位置Aは1箇所だけ、即ちブロック陸部の内側側壁の頂点上だけとなる。
【0027】
そして、この実施形態においては、前記第1外側陸部34、36(第1外側ブロック38、39)のタイヤ幅方向内側側壁38a、39aで前記外側切り欠き54、55のタイヤ周方向両側に位置する2つの部位を、90度より大きく 180度より小さい交差角J、即ち鈍角で交差させている。このようにすれば、前述した膨出変形により外側切り欠き54、55の周辺に押し付けられた雪を、パラボラ状を呈する第1外側陸部34、36(第1外側ブロック38、39)のタイヤ幅方向内側側壁38a、39aによって外側切り欠き54、55に集めることができ、これにより、密度の高い雪柱を容易に形成することができる。また、前記外側切り欠き54、55の長さMは前記中央周溝16、17の溝幅Nより小とすることが好ましい。その理由は、外側切り欠き54、55の長さが比較的小さな値となり、雪がこれら外側切り欠き54、55全体に確実に押し込まれ、雪柱全体の強度を容易に高めることができるからである。
【0028】
さらに、この実施形態では、前記外側切り欠き54、55の溝幅中央線Qは、対応するブロック陸部22、23の外側側壁22b、23b、ここでは長側壁部22c、23cに対し直角、または、直角に近似する角度で交差させている。このようにすれば、ブロック陸部22、23の膨出変形によって押出された雪が無駄なく外側切り欠き54、55内に押し込まれ、強度の高い雪柱を確実に形成することができる。また、強度の高い雪柱を形成するには、前記外側切り欠き54、55を、この実施形態のように一定幅で直線状に延在させることが好ましい。なお、前述した六角形には、軽微な変更を施したもの、例えば、中央周溝16、17における水の流れを円滑として排水性能を向上させるため、
図2に仮想線で示すように頂点Pa近傍のブロック陸部22、23をタイヤ赤道Sにほぼ沿って部分的に除去したものも、含まれる。この場合には、頂点Pcが隣接する頂点の一方となり、該頂点Pcと頂点Pbとの中間位置が中間点Bとなる。また、この実施形態においては、ノーマルタイヤに本願発明を適用したが、スタッドレスタイヤ、スノータイヤ等の冬用タイヤに本願発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明は、トレッド中央部に多数個のブロック陸部からなるブロック陸部列を配置したタイヤの産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0030】
11…タイヤ 12…トレッド
13…中央細溝 16、17…中央周溝
19、21…横溝 19a、21a…側壁
22、23…ブロック陸部 22a、23a…内側側壁
22b、23b…外側側壁 22c、23c…長側壁部
22d 、23d …短側壁部 24、25…ブロック陸部列
34、36…外側陸部 54、55…外側切り欠き
54a、55a…内側開口 Pa、Pb…頂点