特許第6925259号(P6925259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6925259-全光モード分割逆多重化 図000065
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6925259
(24)【登録日】2021年8月5日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】全光モード分割逆多重化
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2581 20130101AFI20210812BHJP
   H04J 14/04 20060101ALI20210812BHJP
   H04B 10/61 20130101ALI20210812BHJP
   G02F 2/00 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   H04B10/2581
   H04J14/04
   H04B10/61
   G02F2/00
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-505211(P2017-505211)
(86)(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公表番号】特表2017-528057(P2017-528057A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】US2015042562
(87)【国際公開番号】WO2016018966
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年7月30日
(31)【優先権主張番号】62/030,182
(32)【優先日】2014年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アルファノ,ロバート アール
(72)【発明者】
【氏名】ミリオーネ,ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】ノーラン,ダニエル アロイシウス
【審査官】 対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0161439(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/079281(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0126588(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/161825(WO,A1)
【文献】 ARIK S. O. et al.,MIMO signal processing for mode-division multiplexing,IEEE Signal Processing Magazine,米国,IEEE,2014年 3月,page 25-34
【文献】 ANTONELLI C. et al.,Modeling of linear and nonlinear coupling in multiple-mode fiber optic transmission with MIMO signal processing,Asilomar Conference on Signals, Systems and Computers,米国,IEEE,2012年11月,page 645-649
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
G02F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多モード光ファイバに沿って伝送された、N>1である、N個の結合されたコヒーレント光伝送モードをデコードする方法において、前記方法が、
データ伝送リンクの発信点において、N個のコヒーレント入力光信号[M]In=(M1,M2,M3,...)をエンコードし、重畳して、多モード光ファイバに沿って伝送する工程、前記データ伝送リンクの前記発信点はデータエンコーダ及びモードコンバイナを備える、
前記データ伝送リンクの受信点において、前記N個の伝搬光信号のそれぞれを出力光信号[M]outとして検出する工程、前記データ伝送リンクの前記受信点はコヒーレント検出ハードウエア及びデジタル信号プロセッサを備える、
前記出力光信号[M]outを前記コヒーレント検出ハードウエアのN本の光検出チャネルに分割する工程、
前記出力光信号[M]outの位相及び強度をベクトル場行列
として測定するために前記コヒーレント検出ハードウエアを利用する工程、
前記データ伝送リンクの前記受信点において前記N個の伝搬光信号に対応する出力行列の主状態固有ベクトルから前記出力光信号[M]outの出力主状態[PSout]1xnを決定するために前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、
前記出力主状態[PSout]1xn、前記出力光信号[M]outの前記ベクトル場行列
及びそれぞれの出力信号の時間遅延τを用いて、前記出力光信号[M]outから前記入力光信号[M]Inを抽出するために前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、及び
前記出力主状態[PSout]1xnの複素転置作用素を計算することによって前記出力光信号[M]outの前記出力主状態[PSout]1xnから前記入力光信号[M]Inの重畳入力状態[SIn]1Xnを決定するために前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法がさらに、
前記重畳入力状態[SIn]1Xn及び前記出力主状態[PSout]1xnからシステムの伝達行列[H]を計算するため、
ここで、
【数1】
である、
及び関係式:
【数2】
に基づいてM1,M2,M3,...を抽出するため、前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法がさらに、
前記出力光信号[M]outの前記出力主状態[PSout]1xnから前記入力光信号[M]Inの重畳入力状態[SIn]1Xnを決定するため、
[SIn]1Xnを、
【数3】
にしたがってデコンボリューション処理することによって前記入力光信号[M]Inを決定するため、及び
前記入力光信号[M]Inから M1,M2,M3,...を抽出するため、前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記デジタル信号プロセッサが、
前記測定されたベクトル場行列
及び前記決定された出力主状態[PSout]1xnから、
【数4】
にしたがって、[a]nxnを決定する、
重畳入力状態[SIn]1Xnを、
【数5】
にしたがって、前記入力光信号[M]In= (M1,M2,M3,...)のベクトル場fInに関係付ける、ここで、[γ]nxnの要素は、[a]nxn、前記出力光信号の時間依存型ベクトル場fj及び前記時間依存型ベクトル場fjに付随する伝搬定数βiから構成される、及び
前記ベクトル場fInからM1,M2,M3,...を決定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記デジタル信号プロセッサが、
【数6】
にしたがって、[γ]nxnの要素を決定する、ここで、a11,a12,...は[a]nxnの要素、β12,...は主状態時間遅延に付随する前記伝搬定数、f1,f2,...は前記出力光信号の時間依存型ベクトル場である、
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
光信号受信器であって、コヒーレント検出ハードウエア及び、多モード光ファイバに沿って伝送された、N>1である、N個の重畳コヒーレント光伝送モードをデコードするために前記コヒーレント検出ハードウエアと協働するようにプログラムされた、デジタル信号プロセッサを備える光信号受信器において、前記デコードが、
前記N個の伝搬光信号のそれぞれを出力光信号[M]outとして検出する工程、
前記出力光信号[M]outを前記コヒーレント検出ハードウエアのN本の光検出チャネルに分割する工程、
前記出力光信号[M]outの位相及び強度をベクトル場行列
として測定するために前記コヒーレント検出ハードウエアを利用する工程、
データ伝送リンクの受信点において前記N個の伝搬光信号に対応する出力行列の主状態固有ベクトルから前記出力光信号[M]outの出力主状態[PSout]1xnを決定するために前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、
前記出力主状態[PSout]1xn、前記出力光信号の前記ベクトル場行列
及びそれぞれの出力信号の時間遅延τを用いて、前記出力光信号[M]outから入力光信号[M]Inを抽出するために前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、
前記出力主状態[PSout]1xnの複素転置作用素を計算することによって前記出力光信号[M]outの前記出力主状態[PSout]1xnから前記入力光信号[M]Inの重畳入力状態[SIn]1Xnを決定するために前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、及び
前記出力光信号[M]outの前記出力主状態[PSout]1xnから前記入力光信号[M]Inの重畳入力状態[SIn]1Xnを決定する工程
を含むことを特徴とする光信号受信器。
【請求項7】
前記デコードがさらに、
前記重畳入力状態[SIn]1Xn及び前記出力主状態[PSout]1xnからシステムの伝達行列[H]を計算するため、
ここで、
【数7】
である、
及び関係式:
【数8】
に基づいて前記入力光信号[M]In=(M1,M2,M3,...)であるM1,M2,M3,...を抽出するためである、
前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、
を含むように前記デジタル信号プロセッサがプログラムされることを特徴とする請求項6に記載の光信号受信器。
【請求項8】
前記デコードがさらに、
前記出力光信号[M]Outの前記出力主状態[PSout]1xnから前記入力光信号[M]Inの重畳入力状態[SIn]1Xnを決定する工程、
[SIn]1Xnを、
【数9】
にしたがってデコンボリューション処理することによって前記入力光信号[M]Inを決定する工程、及び
前記入力光信号[M]In=(M1,M2,M3,...)からM1,M2,M3,...を抽出する工程、
を含むように前記デジタル信号プロセッサがプログラムされることを特徴とする請求項6に記載の光信号受信器。
【請求項9】
前記デコードがさらに、
前記測定されたベクトル場行列
及び前記決定された出力主状態[PSout]1xnから、
【数10】
にしたがって、[a]nxnを決定する、
前記重畳入力状態[SIn]1Xnを、
【数11】
にしたがって、前記入力光信号[M]In= (M1,M2,M3,...)のベクトル場fInに関係付ける工程、ここで、[γ]nxnの要素は、[a]nxn、前記出力光信号の時間依存型ベクトル場fj、及び前記時間依存型ベクトル場fjに付随する伝搬定数βiから構成される、及び
前記ベクトル場fInからM1,M2,M3,...を決定する工程、
を含むように前記デジタル信号プロセッサがプログラムされることを特徴とする請求項6に記載の光信号受信器。
【請求項10】
前記デジタル信号プロセッサが、
【数12】
にしたがって、[γ]nxnの要素を決定する、ここで、a11,a12,...は[a]nxnの要素、β12,...は前記出力光信号の前記時間依存型ベクトル場に付随する前記伝搬定数、f1,f2,...は前記出力光信号の時間依存型ベクトル場である、ことを特徴とする請求項9に記載の光信号受信器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は2014年7月29日に出願された米国仮特許出願第62/030182号の米国特許法第119条の下の優先権の恩典を主張する。本明細書は上記仮特許出願の明細書の内容に依拠し、上記仮特許出願の明細書の内容はその全体が参照として本明細書に含められる。
【技術分野】
【0002】
本開示は主に、光通信リンクのN個の出力モードが入力通信信号を抽出するためにデコンボリューション処理され得る、システム及び方法に関する。さらに詳しくは、同時に受信されたN個のモード信号から多重波長信号を、モードパワー情報ではなく、出力の主状態及び受信モード場を測定することで、デコードすることができる。
【背景技術】
【0003】
多モード光ファイバは光通信ネットワークにおける伝送容量を大きくするために導入された。これらの多チャネルファイバにおいては、単コアまたは複数の独立コアにおける多数の光モードの伝送を可能にし、ネットワーク容量への激増する要求を満たすに役立たせるため、波長分割多重化が利用される。しかし、この状況においては、特定のモードで搬送された信号を相互間で結合させるモード結合が厳しい技術的課題である。このモード結合によって生じる情報スクランブルに対処するため、様々な手法が導入されている。
【0004】
多モード光ファイバ通信チャネルにおける多入力多出力(MIMO)通信はスクランブルされた信号を選り分けるための強力な高速前方誤り補正及び電子的補正を含むコヒーレント伝送に依存している。特許文献1に述べられているように、主状態手法は、モード結合を制限するため、光を光システムのノーマルモードに発信しようとする。残念ながら、これらの状態の生成、結合及び分割を行うために必要なコンポーネントは比較的複雑であり、更新及び制御が難題になり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0161439A1号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態にしたがえば、多モード光ファイバに沿って伝送されたN個の重畳コヒーレント光伝送モードをデコードする方法が提供され、方法は、
(i)データ伝送リンクの発信点においてN個のコヒーレント入力光信号(M1,M2,M3,...)をエンコードし、結合して、多モード光ファイバに沿って伝送する工程、データ伝送リンクの発信点はデータエンコーダ及びモードコンバイナを備える、
(ii)データ伝送リンクの受信点において、N個の伝搬光信号のそれぞれを出力光信号として検出する工程、データ伝送リンクの受信点はコヒーレント検出ハードウエア及びデジタル信号プロセッサを備える、
(iii)出力光信号をコヒーレント検出ハードウエアのN本の光検出チャネルに分割する工程、
(iv)出力光信号の位相及び強度を出力モード,Mにともなうベクトル場行列
【0007】
として測定するためにコヒーレント検出ハードウエアを利用する工程、
(v)データ伝送リンクの受信点におけるN個の伝搬光信号に対応する出力行列の主状態固有ベクトルから出力光信号の出力主状態[PSout]1xnを決定するためにデジタル信号プロセッサを利用する工程、及び
(vi)出力主状態[PSout]1xn、出力光信号のベクトル場行列
【0008】
及びそれぞれの出力信号の時間遅延τを用いて出力光信号から入力光信号[M]Inを抽出するためにデジタル信号プロセッサを利用する工程、
を含む。
【0009】
本開示の別の実施形態にしたがえば、本明細書に開示及び予想される方法の実行のため、光信号受信器が備えられる。
【0010】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は添付図面とともに読まれたときに最善に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本開示の構想にしたがって実施することができるデータ伝送リンクの略図である、
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本開示の構想にしたがって実施することができるデータ伝送リンク100の略図である。データ伝送リンク100は、様々な複雑度を有する、データ伝送ネットワークまたは遠距離通信ネットワークの全てまたは一部として構成され得ると考えられる。一般に、図1において、それぞれのコヒーレント伝送モードM1, M2, M3, 等は、それぞれのコヒーレント伝送モードM1, M2, M3, 等の属性の個別の制御を可能にする、データエンコーダ20及び、適するファイバリンク45を介する多モード光ファイバ40に沿う伝搬のため、エンコードされた伝送モードM1, M2, M3, 等を多重化する、モードコンバイナ30を用いて、データでエンコードされ、リンク100の発信点10に入力される。データエンコーダ20は、N個の重畳コヒーレント伝送モードM1, M2, M3, 等の位相及び強度の個別の制御に関して図1に簡略に示されているが、データエンコーダ20は、さらにまたはあるいは、N個の重畳コヒーレント伝送モードM1, M2, M3, 等の偏波及び/またはその他の属性をエンコードするように構成され得ると考えられる。本開示のデータ伝送リンク100の発信点10は、例えば、コヒーレント光MIMO(多入力多出力)システムを含む、様々なエンコード方式を実施するために利用され得ると考えられる。
【0013】
伝搬信号は続いて、光信号受信器と称されることもある、(局部発振器LOを含む)コヒーレント検出ハードウエア60及びデジタル信号プロセッサ(DSP)70を備えるように簡略に示される、データ伝送リンク100の受信点50において受信されてデコードされる。アナログ−デジタルコンバータA/Dもデジタル信号処理を可能にするために備えられる。コヒーレント検出ハードウエア60の特定の構成は本開示の範囲をこえており、本主題に関する様々な従来のまたは未だ開発されていない教示のいずれからも拾い集めることができる。例えば、リ-ギャグノン(Ly-Gagnon)、等、「キャリア位相推定による光直交移相キーイング信号のコヒーレント検出(Coherent Detection of Optical Quadrature Phase-Shift Keying Signals with Carrier Phase Estimation)」、Journal of Lightwave Technology、2006年1月、第24巻、第1号、p.12〜21を参照されたい。DSP70はコヒーレント検出ハードウエア60と協働して本開示の信号処理アルゴリズムを実行するようにプログラムされる。この先、DSP70の特定の構成も本開示の範囲をこえている。ザン(Zhang)著、「光コヒーレント通信システムのためのデジタル信号処理(Digital Signal Processing for Optical Coherent Communication Systems)」、DTU Fotonik,2012年、は本開示を補足する、本主題に関する有用な教示を提示している。特にザンの第3章、「DSPアルゴリズムによるコヒーレント検出(Coherent Detection with DSP Algorithms)」が参考になる。
【0014】
特許文献1はデータ伝送リンクの受信点におけるN個の伝搬光信号に対応する出力行列の主状態固有ベクトルを生成するための適するハードウエア及び方法を教示している。特許文献1はN個の伝搬光信号の主状態の固有値及び固有ベクトルについて解くために用いることができる行列法も教示している。これらの主状態の固有値及び固有ベクトルは本明細書に説明される信号デコードを容易にするために用いることができる。
【0015】
さらに詳しくは、本開示は、モード結合がおこる、多モード光ファイバに沿って伝送されたN個の重畳コヒーレント光伝送モードをデコードするための方法及び付随するアーキテクチャを提示する。図1を参照すれば、データ伝送リンク100の発信点10において与えられた、N>1である、N個のコヒーレント入力光信号(M1, M2, M3,...)がエンコードされ、結合されて、多モード光ファイバ40に沿って伝送される。ここで、N個の伝搬光信号のそれぞれはデータ伝送リンク100の受信点50において、出力光信号を受信点50のコヒーレント検出ハードウエア60のN本の光検出チャネルに分割することによって、出力光信号として検出される。
【0016】
コヒーレント検出ハードウエア60は、それぞれのモード位置において行列
【0017】
によって指定されるベクトル場として、出力光信号の位相及び強度を測定するために用いられ、デジタル信号プロセッサ70が、データ伝送リンク100の受信点50におけるN個の伝搬光信号に対応する出力行列の主状態固有ベクトルから出力光信号の出力主状態[PSout]1xnを決定する。デジタル信号プロセッサは続いて、出力光信号から、出力主状態[PSout]1xn、出力光信号のベクトル場行列
【0018】
及びそれぞれの出力信号の時間遅延τを用いて、入力光信号[M]Inを抽出する。この抽出プロセスは、本明細書において、
第1に、出力偏波主状態(PSP)の複素転置作用素の計算に全般的に関し、
第2に、入力の主状態のデコンボリューション処理に全般的に関し、及び
第3に、[γ]nxnの使用にさらに詳しく関する、
3つの異なる視点から説明される。
【0019】
さらに詳しくは、デジタル信号プロセッサは、出力主状態[PSout]1xnの複素転置作用素を計算することで、出力光信号[M]Outの出力主状態[PSout]1xnから入力光信号[M]Inの重畳入力状態[SIn]1Xnを決定するために用いることができる。次いで、システムの一般化伝達行列[H]を、重畳入力状態[SIn]1Xn及び出力主状態[PSout]1xnから、
【0020】
【数1】
【0021】
にしたがって計算することができる。次いで、M1, M2, M3,...を、関係式:
【0022】
【数2】
【0023】
に少なくともある程度基づいて抽出することができる。ここで、入力光信号[M]Inは、下式:
【0024】
【数3】
【0025】
で表される。
【0026】
異なる視点から、本開示の方法及びアーキテクチャは、初めに出力光信号[M]outの出力主状態[PSout]1xnから入力光信号[M]Inの重畳入力状態[SIn]1Xnを決定するためのデジタル信号プロセッサ70の使用に関して説明することができる。続いて、
【0027】
【数4】
【0028】
に少なくともある程度したがって、[SIn]1Xnをデコンボリューション処理することによって入力光信号[M]Inが決定されて、[M]InからM1, M2, M3,...が抽出される。ここで、[M]In=(M1,M2,M3,...)であり、[D]は重畳入力状態と結合された入力光信号の間の関係を確立する行列である。
【0029】
別の視点から、本開示の方法及びアーキテクチャは測定されたベクトル場行列
【0030】
及び出力主状態[PSout]1xnからの、
【0031】
【数5】
【0032】
に少なくともある程度したがう、[a]nxnの初期決定に関して説明することができる。ここで、[a]nxnは、本明細書にその全体が参照として含められる、米国特許出願公開第2014/016,439A1号明細書に説明されるように、出力モードを出力主状態に関係付ける。重畳入力状態[SIn]1Xnは続いて、
【0033】
【数6】
【0034】
に少なくともある程度したがって、入力光信号(M1, M2, M3,...)のベクトル場fInに関係付けることができる。ここで、[γ]nxnの元は、[a]nxn、出力光信号の時間依存型ベクトル場fj、及び時間依存型ベクトル場fjに付随する伝搬定数βiから構成される。したがって、M1, M2, M3,...はベクトル場fInから少なくともある程度決定することができる。ここで、[M]In=(M1,M2,M3,...)である。この視点から、デジタイル信号プロセッサ70は、
【0035】
【数7】
【0036】
に少なくともある程度したがって、[γ]nxnの元を決定するようにプログラムすることができる。ここで、a11,a12,...は[a]nxnの元、jは虚数、β12,...は主状態時間遅延に付随する伝搬定数、すなわち主状態固有値方程式の固有値、zは光ファイバ40の長さで、f1,f2,...は出力光信号の時間依存型ベクトル場である。一実施形態において、デジタル信号プロセッサ70は、
【0037】
【数8】
【0038】
に少なくともある程度したがって、伝搬定数βiを決定するようにプログラムすることができると考えられる。ここで、k=2π/λであり、cは光の速度である。
【0039】
入力変調場を決定するため、式:
【0040】
【数9】
【0041】
を展開して、
【0042】
【数10】
【0043】
【数11】
【0044】
【数12】
【0045】
を与えることができる。ここで、
【0046】
は検出されるべき特定の偏波モードを表す。得られた行列は対角行列の対角成分が入力変調場であるように対角化することができる。
【0047】
この方法の結果として、米国特許出願公開第2014/016,439A1号明細書におけるように、このアルゴリズム及び測定された出力主状態を用いることによって、時間非依存型のモード多重化及び逆多重化コンポーネントを用いてN個の出力信号のデコンボリューション処理を行うことができ、よって米国特許出願公開第2014/016,439A1号明細書に説明されているような時間依存型の多重化及び逆多重化を提供する必要を無くすことができる。これらのコンポーネントは、本明細書に説明されるように、時間で変化するであろう、重畳主状態の多重化及び逆多重化に必要とされる。
【0048】
特定の特性を、または特定の態様で機能を、具現化するために、特定の方法で「プログラムされて」または「構成されて」いる本開示のコンポーネントの本明細書における記述は、目的用途の記述とは対照的に、構造の記述であることに注意されたい。さらに詳しくは、コンポーネントが「プログラム」または「構成」される態様への本明細書における言及はコンポーネントの既存の物理的状態を表し、したがって、そのコンポーネントの構造特性の限定的記述としてとられるべきである。
【0049】
本開示の主題をその特定の実施形態を参照して詳細に説明したが、本明細書に開示される様々な詳細が、本明細書に添付される図面のそれぞれに特定の要素が示されている場合であっても、本明細書に説明される様々な実施形態の本質的なコンポーネントである要素にこれらの詳細が関することを暗に意味しているととられるべきではないことに注意されたい。むしろ、本明細書に添付される特許請求の範囲は本開示及び本明細書に説明される様々な発明の対応する範囲の広がりの唯一の代表ととられるべきである。さらに、添付される特許請求の範囲に定められる本発明の範囲を逸脱することなく改変及び変形が可能であることは明らかであろう。さらに詳しくは、本明細書においては本開示のいくつかの態様が好ましいかまたは特に有利であるとされているが、本開示がそれらの態様に限定される必要はないと考えられる。
【0050】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0051】
実施形態1
多モード光ファイバに沿って伝送された、N>1である、N個の結合されたコヒーレント光伝送モードをデコードする方法において、前記方法が、
データ伝送リンクの発信点において、N個のコヒーレント入力光信号(M1,M2,M3,...)をエンコードし、重畳して、多モード光ファイバに沿って伝送する工程、前記データ伝送リンクの前記発信点はデータエンコーダ及びモードコンバイナを備える、
前記データ伝送リンクの受信点において、前記N個の伝搬光信号を出力光信号として検出する工程、前記データ伝送リンクの前記受信点はコヒーレント検出ハードウエア及びデジタル信号プロセッサを備える、
前記出力光信号を前記コヒーレント検出ハードウエアのN本の光検出チャネルに分割する工程、
前記出力光信号の位相及び強度をベクトル場行列
【0052】
として測定するために前記コヒーレント検出ハードウエアを利用する工程、
前記データ伝送リンクの前記受信点において前記N個の伝搬光信号に対応する出力行列の主状態固有ベクトルから前記出力光信号の出力主状態[PSout]1xnを決定するために前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、及び
前記出力光信号から、前記出力主状態[PSout]1xn、前記出力光信号の前記ベクトル場行列
【0053】
及び前記出力光信号のそれぞれの時間遅延τを用いて、前記入力光信号[M]Inを抽出するために前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、
を含む方法。
【0054】
実施形態2
前記方法がさらに、
前記出力主状態[PSout]1xnの複素転置作用素を計算することによって前記出力光信号[M]Outの前記出力主状態[PSout]1xnから前記入力光信号[M]Inの重畳入力状態[SIn]1Xnを決定するために前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、及び
前記重畳入力状態[SIn]1Xn及び前記出力主状態[PSout]1xnからシステムの伝達行列[H]を計算するため、
ここで、
【0055】
【数13】
【0056】
である、
及び関係式:
【0057】
【数14】
【0058】
に少なくともある程度基づいてM1,M2,M3,...を抽出するため、
ここで、
【0059】
【数15】
【0060】
である、
前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、
を含む、実施形態1に記載の方法。
【0061】
実施形態3
前記方法がさらに、
前記出力光信号[M]Outの前記出力主状態[PSout]1xnから前記入力光信号[M]Inの重畳入力状態[SIn]1Xnを決定するため、
[SIn]1Xnを、
【0062】
【数16】
【0063】
に少なくともある程度したがってデコンボリューション処理することによって前記入力光信号[M]Inを決定するため、及び
前記入力光信号[M]InからM1,M2,M3,...を抽出するため、ここで、[M]In=(M1,M2,M3,...)である、
前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、
を含む、実施形態1に記載の方法。
【0064】
実施形態4
前記デジタル信号プロセッサが、
前記測定されたベクトル場行列
【0065】
及び前記決定された出力主状態[PSout]1xnから、
【0066】
【数17】
【0067】
に少なくともある程度したがって、[a]nxnを決定する、
前記重畳入力状態[SIn]1Xnを、
【0068】
【数18】
【0069】
に少なくともある程度したがって、前記入力光信号(M1,M2,M3,...)のベクトル場fInに関係付ける、ここで、[γ]nxnの元は、[a]nxn、前記出力光信号の時間依存型ベクトル場fj及び前記時間依存型ベクトル場fjに付随する伝搬定数βiから構成される、及び
少なくともある程度は前記ベクトル場fInからM1,M2,M3,...を決定する、ここで、[M]In=(M1,M2,M3,...)である、
実施形態1に記載の方法。
【0070】
実施形態5
前記デジタル信号プロセッサが、
【0071】
【数19】
【0072】
に少なくともある程度したがって、[γ]nxnの元を決定する、ここで、a11,a12,...は[a]nxnの元、β12,...は前記主状態時間遅延に付随する前記伝搬定数、f1,f2,...は前記出力光信号の前記時間依存型ベクトル場である、
実施形態4に記載の方法。
【0073】
実施形態6
前記デジタル信号プロセッサが前記入力信号(M1,M2,M3,...)を、
【0074】
【数20】
【0075】
を、
【0076】
【数21】
【0077】
【数22】
【0078】
【数23】
【0079】
を与えるために展開する、ここで
【0080】
は検出されるべき特定の偏波モードを表す、及び
得られた行列を、対角行列の対角成分が前記入力光信号(M1,M2,M3,...)の入力変調場を表すように、対角化する、
ことによって決定する、実施形態5に記載の方法。
【0081】
実施形態7
前記デジタル信号プロセッサが前記伝搬定数βiを、
【0082】
【数24】
【0083】
に少なくともある程度したがって決定する、ここで、k=2π/λであり、cは光の速度である、実施形態4に記載の方法。
【0084】
実施形態8
光信号受信器であって、コヒーレント検出ハードウエア及び、多モード光ファイバに沿って伝送された、N>1である、N個の重畳コヒーレント光伝送モードをデコードするために前記コヒーレント検出ハードウエアと協働するようにプログラムされた、デジタル信号プロセッサを備える光信号受信器において、前記デコードが、
前記N個の伝搬光信号のそれぞれを出力光信号として検出する工程、
前記出力光信号を前記コヒーレント検出ハードウエアのN本の光検出チャネルに分割する工程、
前記出力光信号の位相及び強度をベクトル場行列
【0085】
として測定するために前記コヒーレント検出ハードウエアを利用する工程、
データ伝送リンクの受信点において前記N個の伝搬光信号に対応する出力行列の主状態固有ベクトルから前記出力光信号の出力主状態[PSout]1xnを決定するために前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、及び
前記出力光信号から、前記出力主状態[PSout]1xn、前記出力光信号の前記ベクトル場行列
【0086】
、及びそれぞれの出力信号の時間遅延τを用いて、入力光信号[M]Inを抽出するために前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、
を含む、光信号受信器。
【0087】
実施形態9
前記デコードがさらに、
前記出力主状態[PSout]1xnの複素転置作用素を計算することによって前記出力光信号[M]outの前記出力主状態[PSout]1xnから前記入力光信号[M]Inの重畳入力状態[SIn]1Xnを決定するために前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、及び
前記重畳入力状態[SIn]1Xn及び前記出力主状態[PSout]1xnからシステムの伝達行列[H]を計算するため、
ここで、
【0088】
【数25】
【0089】
である、
及び関係式:
【0090】
【数26】
【0091】
に少なくともある程度基づいてM1,M2,M3,...を抽出するため、
ここで、
【0092】
【数27】
【0093】
である、
前記デジタル信号プロセッサを利用する工程、
を含むように、前記デジタル信号プロセッサがプログラムされる、実施形態8に記載の光信号受信器。
【0094】
実施形態10
前記デコードがさらに、
前記出力光信号[M]outの前記出力主状態[PSout]1xnから前記入力光信号[M]Inの重畳入力状態[SIn]1Xnを決定する工程、
[SIn]1Xnを、
【0095】
【数28】
【0096】
に少なくともある程度したがってデコンボリューション処理することによって前記入力光信号[M]Inを決定する工程、及び
前記入力光信号[M]Inから M1,M2,M3,...を抽出する工程、ここで、[M]In=(M1,M2,M3,...)である、
を含むように、前記デジタル信号プロセッサがプログラムされる、実施形態8に記載の光信号受信器。
【0097】
実施形態11
前記デコードがさらに、
前記測定されたベクトル場行列
【0098】
及び前記決定された出力主状態[PSout]1xnから、
【0099】
【数29】
【0100】
に少なくともある程度したがって、[a]nxnを決定する工程、
前記重畳入力状態[SIn]1Xnを、
【0101】
【数30】
【0102】
に少なくともある程度したがって、前記入力光信号(M1,M2,M3,...)のベクトル場fInに関係付ける、ここで、[γ]nxnの元は、[a]nxn、前記出力光信号の時間依存型ベクトル場fj及び前記時間依存型ベクトル場fjに付随する伝搬定数βiから構成される、及び
少なくともある程度は前記ベクトル場fInからM1,M2,M3,...を決定する工程、ここで、[M]In=(M1,M2,M3,...)である、
を含むように、前記デジタル信号プロセッサがプログラムされる、実施形態8に記載の光信号受信器。
【0103】
実施形態12
前記デジタル信号プロセッサが、
【0104】
【数31】
【0105】
に少なくともある程度したがって、[γ]nxnの元を決定する、ここで、a11,a12,...は[a]nxnの元、β12,...は前記出力光信号の前記時間依存型ベクトル場に付随する前記伝搬定数、f1,f2,...は前記出力光信号の時間依存型ベクトル場である、実施形態11に記載の光信号受信器。
【0106】
実施形態13
前記デジタル信号プロセッサが前記伝搬定数βiを、
【0107】
【数32】
【0108】
に少なくともある程度したがって決定する、ここで、k=2π/λであり、cは光の速度である、実施形態11に記載の光信号受信器。
【0109】
実施形態14
光通信システムにおいて、モード多重化コンポーネント及び逆多重化コンポーネントを用いてN個の出力信号をデコンボリュート処理するために、実施形態1、2、3及び4のいずれかに記載されているような方法並びに米国特許出願公開第2014/016,439号明細書に説明されているような測定された出力主状態を用いる、光通信システム。
【符号の説明】
【0110】
10 リンクの発信点
20 データエンコーダ
30 モードコンバイナ
40 多モード光ファイバ
45 ファイバリンク
50 リンクの受信点
60 コヒーレント検出ハードウエア
70 デジタル信号プロセッサ(DSP)
100 データ伝送リンク
図1