(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6925260
(24)【登録日】2021年8月5日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】単一切断フルートを有する外科用バー
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3211 20060101AFI20210812BHJP
【FI】
A61B17/3211
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-508047(P2017-508047)
(86)(22)【出願日】2015年8月13日
(65)【公表番号】特表2017-523871(P2017-523871A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】US2015045044
(87)【国際公開番号】WO2016025705
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2018年8月6日
【審判番号】不服2019-15388(P2019-15388/J1)
【審判請求日】2019年11月18日
(31)【優先権主張番号】62/037,231
(32)【優先日】2014年8月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514318275
【氏名又は名称】ストライカー・ユーロピアン・ホールディングス・I,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ,シニード・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】オサリヴァン,デニス
【合議体】
【審判長】
内藤 真徳
【審判官】
莊司 英史
【審判官】
木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−501597(JP,A)
【文献】
米国特許第4943236(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0048602(US,A1)
【文献】
特表2000−515395(JP,A)
【文献】
実開昭60−78213(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する近位端および遠位端を有する細長シャフトであって、前記シャフトを近位−遠位方向に貫通する長軸と、外科用ハンドピースが前記シャフトを回転させるための前記ハンドピースへの前記シャフトの連結を容易にする、前記シャフトの前記近位端に隣接する幾何学的特徴部と、を有する、細長シャフトと、
前記シャフトの前記遠位端に取り付けられたヘッドであって、フルートの最遠位端である先端と、前記シャフトから前記先端に遠位側に延在する対向する第1および第2の側を有するすくい面とを有するように形作られた単一フルートを有する、ヘッドと、
を備える、医療/外科処置を行なうためのバーであって、
前記フルートは、前記すくい面の第1の側が切刃を画定し且つ前記切刃を画定する前記すくい面の一部は平面であるように、且つ前記すくい面の第2の側が凹縁を画定するように形作られており、前記フルートは、前記切刃および前記凹縁が前記先端から離れて近位に延在するにつれて前記切刃および前記凹縁の両方が前記先端から外方に湾曲することにより、少なくとも前記先端に隣接して前記切刃および前記凹縁の両方が凸状であるようにさらに形作られており、且つ前記シャフト長軸の延長線と直交する少なくとも1つの面において、前記切刃が前記シャフト長軸の前記延長線から第1の距離を隔てて位置し、前記凹縁が前記シャフト長軸の前記延長線から第2の距離を隔てて位置し、前記第2の距離は、前記第1の距離よりも小さくなるようにさらに形作られており、前記ヘッドは前記すくい面と対向するクリアランス面を有するようにさらに形成されており、前記クリアランス面の少なくとも一部は、前記すくい面の対向する部分と平行であることを特徴とする、バー。
【請求項2】
前記切刃と前記凹縁との間に延在する前記すくい面の少なくとも一区域は、平面であり、前記シャフトの前記長軸が貫通して延在している面内または前記シャフトを通る該長軸と平行の面内にある、請求項1に記載のバー。
【請求項3】
前記すくい面の大半は、前記フルートの前記切刃と前記凹縁との間で平面である、請求項2に記載のバー。
【請求項4】
前記ヘッドは、
逃げ面が前記すくい面から延在し、前記すくい面と前記逃げ面との交線が、前記フルートの切刃を画定し、
前記クリアランス面は、前記すくい面から離間した前記逃げ面の端から前記凹縁に向かって延在するように、さらに形成されている、請求項1に記載のバー。
【請求項5】
前記クリアランス面の大半は、前記すくい面と平行である、請求項1〜4のいずれか1つに記載のバー。
【請求項6】
凹面が前記凹縁から離れる方に延在しており、前記すくい面と前記凹面との交線が前記フルートの前記凹縁を画定しており、
前記クリアランス面は、前記すくい面から離間した前記凹面の端から前記逃げ面に向かって延在している、
請求項4に記載のバー。
【請求項7】
少なくとも1つのリブが前記バーヘッドの前記凹面から外方に延在しており、前記少なくとも1つのリブは、前記シャフト長軸の前記延長線から外方に、前記切刃が前記シャフト長軸の前記延長線から外方に延在する距離と等しいかまたはそれよりも短い距離にわたって、延在している、請求項6に記載のバー。
【請求項8】
前記クリアランス面は、前記すくい面と前記クリアランス面との交線が凹縁を形成するように,前記切刃から離間した前記すくい面の端に向かって延在している、請求項1または4に記載のバー。
【請求項9】
前記ヘッドは、前記すくい面および前記クリアランス面が前記シャフト長軸の前記延長線の両側に位置するように、前記シャフト上に配置されている、請求項1〜8のいずれか1つに記載のバー。
【請求項10】
前記ヘッドは、前記シャフトの前記シャフト長軸の延長線が前記すくい面に沿って延在するように、前記シャフトに対して配置されている、請求項1〜8のいずれか1つに記載のバー。
【請求項11】
前記ヘッドは、前記切刃および前記凹縁が前記シャフト長軸の前記延長線の両側に位置するように、さらに形成されている、請求項1〜10のいずれか1つに記載のバー。
【請求項12】
前記ヘッドの全長に沿って、前記切刃は、前記シャフトの前記長軸から前記凹縁よりもさらに離間している、請求項1〜11のいずれか1つに記載のバー。
【請求項13】
前記バーヘッドは、楕円状、丸状、ドングリ状、梨状、パドル状、または矢印状に形作られている、請求項1〜12のいずれか1つに記載のバー。
【請求項14】
前記ヘッドは、前記先端が前記シャフト長軸の前記延長線と直交する遠位端であるよう形作られている、請求項1〜13のいずれか1つに記載のバー。
【請求項15】
前記ヘッドは、前記切刃先端および凹縁が前記シャフトから離れて遠位に延在するにつれて、前記切刃および前記凹縁が前記先端に向かって内方に直線状に延在する、矢印状である、請求項1〜14のいずれか1つに記載のバー。
【請求項16】
前記ヘッドは、前記先端が前記シャフト長軸の前記延長線から離間するよう、前記シャフトに対して位置している、請求項15に記載のバー。
【請求項17】
前記ヘッドは、前記先端が前記シャフトの前記長軸の前記延長線上に位置するよう、前記シャフトに対して位置している、請求項1〜14のいずれか1つに記載のバー。
【請求項18】
前記ヘッドは、前記凹縁が前記先端から近位側に向かって延在するにつれて凸状を有するよう前記凹縁が外方に湾曲するように、さらに形成されている、請求項1〜14、および17のいずれか1つに記載のバー。
【請求項19】
前記幾何学的特徴部は、前記シャフトの前記外面に対して凹んでいる面である、請求項1〜18のいずれか1つに記載のバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、外科用バーに関する。さらに詳細には、本発明は、切断フルートを備えるヘッドを有するバーであって、切断フルートが該切断フルートから離れる方への切除された材料の流れを容易にするように設計されている、バーに関する。
【背景技術】
【0002】
切断アクセサリは、外科処置を行なうために典型的には電動式外科用ハンドピースに取外し可能に取り付けられる器具である。外科処置を行なうために用いられる1つの切断アクセサリは、バーである。バーは、一般的に、多数のフルート(溝)を有するように形作られた剛性材料、典型的には、金属から形成されたヘッドを備えている。フルートは、切刃を画定するように形成されている。切刃を備えるフルートは、骨または軟骨のような組織を切除するように、形作られている。シャフトは、ヘッドから近位側に延在している。シャフトの近位端は、多くの場合、電動式ハンドピースへのシャフトの係止を容易にする特徴部を有している。ハンドピースの作動によって、バーが回転することになる。外科処置中に、バーのヘッドは、組織の断片が除去されることになる外科部位に配置される。回転する切刃が、外科部位から組織を切除することになる。整形外科手術、神経脊髄外科手術、耳鼻咽喉外科手術のような手術処置、おとび他の外科処置において、組織の断片を選択的に除去するために、種々の形状および寸法のバーが用いられている。
【0003】
組織を除去する一般的な目的に対して、多くのバーは、良好に機能する。にもかかわらず、いくつかの処置において、バーは、組織を除去するための特に効率的な装置であると認められていない。例えば、場合によっては、バーを用いて、足首または手首のような小さい関節の周りの軟骨を除去することが困難なことがある。これは、軟骨が、他の種類の組織と比較して、多量の水を含んでいるからである。軟骨が組織から切除されたとき、該軟骨の水成分によって、該軟骨が切断装置に付着する。切断装置がバーのとき、軟骨は、フルートの表面に付着する傾向にある。また、組織が、互いに隣接するフルート間の空間内に堆積する。この切除された組織は、事実上フルートによって周りに押し出される破片塊になる。この破片塊の存在によって、組織をさらに切除する機能を果たす切断フルートの能力が低下する。さらに、破片塊は、未切除組織に対して必然的に押し付けられる。この静止物質に対する移動物質の接触によって、破片および未切除組織の摩擦熱が生じる。この加熱は、除去されることが意図されていない組織を損傷させる可能性がある。
【0004】
バーによる軟骨の切除が効率的でないことを考慮し、多くの施術者は、この種の処置を行なうとき、この組織を除去するためにバー以外の外科用器具を用いる傾向にある。これらの器具は、手動操作型器具、例えば、キュレット、骨鉗子、および骨刀であることが多い。これらの器具は、軟骨のような軟質組織を除去するのに有用である。しかし、これらの器具が手動操作されることを考慮すれば、これらの器具は、バーのような電動式工具を用いるよりも非効率的である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、新規の有用な外科用バーに向けられている、この効率的なバーは、組織を除去するために用いられる器具に付着する傾向のある組織を効率的に除去するのに特に適している。
【0006】
本発明のバーは、細長シャフトを備えている。長軸がシャフトを遠位−近位方向に貫通している。シャフトは、該シャフトを長軸を中心として回転させることができる電動式ハンドピースへの該シャフトの離脱可能な連結を容易にする特徴部を有している。シャフトの遠位端から、ヘッドが前方に延在している。ヘッドは、互いに対向する2つの面、具体的には、すくい面およびクリアランス面を有している。ヘッドは、該ヘッドを近位−遠位方向に貫通してすくい面とクリアランス面との間に位置する長軸を有している。
【0007】
すくい面は、該すくい面の互いに対向する側辺において、ヘッドに沿って長手方向に延在する2つの互いに対向する縁を少なくとも部分的に形成している。これらの面の1つは、切刃であり、対向する縁は、凹縁である。本発明のいくつかの態様では、バーは、すくい面によって画定される切刃がシャフトの長軸から凹縁が同一軸から離間する距離よりもさらに半径方向外方に離間するように、形成されている。
【0008】
本発明のいくつかの態様では、すくい面およびクリアランス面は、互いに離間している。本発明のこれらの態様では、ヘッドの一方の側辺において、逃げ面がすくい面とクリアランス面との間に延在している。ヘッドの他方の側辺において、凹面がクリアランス面とすくい面との間に延在している。すくい面と逃げ面との交線は、切刃を画定している。凹面とすくい面との交線は、凹縁を画定している。
【0009】
本発明の前述のいくつかの副次的な態様では、すくい面およびクリアランス面は、互いに平行である。
【0010】
本発明のいくつかの態様では、バーは、シャフトを通る長軸およびヘッドを通る長軸が同一直線上に位置しないように、さらに形成されている。本発明のこの態様のいくつかの副次的な態様では、ヘッドは、すくい面がシャフトの長軸が延在する面内に位置するように、シャフトに対してさらに配置されている。本発明のこの後者の態様のいくつかの副次的な態様では、フルートの切刃およびクリアランス縁は、シャフトの長軸に対して等距離となるように互いに離間している。
【0011】
本発明は請求項において詳細に指摘されている。本発明の上記のおよびさらなる特徴ならびに利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むことによって、良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明によって構成されたバーの斜視図である。
【
図2】すくい面が見えている、
図1のバーの平面図である。
【
図3】バーのクリアランス面が見えている、
図1のバーの斜視図である。
【
図4】逃げ面およびクリアランス面が見えている、
図1のバーの平面図である。
【
図5】バーヘッドの遠位端から近位側を見た、
図1のバーの平面図である。
【
図6A-6E】バーヘッドが組織に対して横方向に押圧されたときの組織に対して回転する本発明のバーの切刃の結果を示す一連の図である。
【
図7】バーが長手方向に前進して組織の表面から内方に延在する孔を形成するときの本発明のバーを示す部分断面図である。
【
図8】バーヘッドの遠位端から近位側を見た、本発明の第1の代替的バーの平面図である。
【
図9】バーヘッドの遠位端から近位側を見た、本発明の第2の代替的バーの平面図である。
【
図10】バーヘッドの遠位端から近位側を見た、本発明の第3の代替的バーの平面図である。
【
図11】バーヘッドの遠位端から近位側を見た、本発明の第4の代替的バーの平面図である。
【
図12】本発明の第5の代替的バーの平面図である。
【
図13A-13F】本発明のバーのヘッドに対して可能な代替的形状の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示されているように、本発明によって構成された外科用バー30は、細長の略円筒状シャフト32を備えている。シャフト32の遠位端から、ヘッド42が前方に延在している。(ここで、「遠位側」は、バー30が取り付けられているハンドピースを保持する施術者からヘッド42が適用される部位に向う側を意味すると理解されたい。「近位側」は、バーヘッド42が適用される部位から施術者に向かう側を意味すると理解されたい。)シャフト32は、
図2において破線34によって表されている長軸を有している。
【0014】
連結特徴部36が、シャフト32の近位端24に設けられている。連結特徴部36は、バー30が用いられる(図示されない)電動式外科用ハンドピースまたは工具の回転シャフトと一体の連結アセンブリに対するバー30の取外し可能な係合を容易にする幾何学的特徴部である。図示されている連結特徴部36は、外側円筒シャフトに対して凹んでいる表面である。これらの表面は、「多目的外科用工具システム」と題する米国特許第5,888,200号に記載されている。この文献は、参照することによって、ここに含まれるものとする。代替的な連結特徴部が、米国特許出願公開第2010/0063524A1号(国際出願公開第2010/0289001A2号)に開示されている。この文献の内容も、参照することによって、ここに明示的に含まれるものとする。連結特徴部のための他の代替的な幾何学的形状が、「外科用ハンドピースに選択的に連結されるように設計された、外科用ハンドピース用切断取付具」と題する米国特許第6,562,055号に示されている。この文献の内容は、参照することによって、ここに明示的に含まれるものとする。これらの連結特徴部の幾何学的形状は、例示的なものであり、制限的なものではないことを理解されたい。連結特徴部36の幾何学的形状は、本発明を制限することを意図していない。例えば、平滑な壁を有するシャフト32自体の一部が、ハンドピースの連結アセンブリの一部であるチャック顎部によってハンドピースに保持されるように、単純に寸法決めされていてもよい。
【0015】
シャフト32の遠位側前方において、バーヘッド42は、
図2〜
図5にそれぞれ示されている互いに平行に対向するすくい面44およびクリアランス面50を有している。ヘッド42の一方の側辺において、逃げ面48がすくい面44とクリアランス面50との間に延在している。すくい面44と逃げ面48との間の縁が、ヘッド42の切刃46である。本発明の多くの態様において、ヘッド42は、逃げ面が切刃46から離れる方に進むにつれてシャフト長軸34から延在する線に向かって内方に延出するように、すくい面44と逃げ面48との間の角度が定められるように、形成されている。
図5において、この軸34の延長線は、図面の手前側から奥側に延在しており、点62によって表されている。
【0016】
バーヘッド42は、逃げ面48の反対側において、凹面52がすくい面44とクリアランス面50との間に延在するように、さらに形成されている。すくい面44と凹面52が交差する縁は、凹縁54と呼ばれている。逃げ面の近位−遠位長手方向に延在する側辺は、一方の側辺における切刃46から対向する側辺における凹縁54に延在している。バーヘッド42は、切刃46および凹縁54がシャフト長軸34から延在する線を中心として対称的に配置されないように、さらに形成されている。代わって、バーヘッド42は、シャフト長軸34の延長線と直交する面内において、切刃46が軸34の延長線から凹縁54よりもさらに距離を隔てて離間するように、形作られている。
図1〜
図5に示されている本発明の態様では、バーヘッド42は、切刃46および凹縁52がシャフト長軸34の延長線の両側に位置するように、形成されている。
【0017】
ネック38は、シャフト32とヘッド42との間のバー30の移行区域である。ネック38は、遠位側前方に向かって内方に湾曲する(部番が付されていない)2つの対向面を有している。これらの面の1つは、すくい面44を画定するように内方に湾曲している。対向するネック面は、バーヘッドのクリアランス面50を画定するように内方に湾曲している。ネックは、凸状の(部番が付されていない)2つの対向側面を有している。各側面は、上記の対向面間に延在している。ネックがシャフト32から前方に進むにつれて、ネック側面は、シャフト32から外方に湾曲している。
【0018】
バーヘッド44は、逃げ面48、従って、切刃46がネック38から遠位側に進むにつれてシャフト長軸の延長線からいくらか外方に湾曲するように、形成されている。バーヘッドの近位−遠位長さに沿った略1/2の位置において、逃げ面48は、シャフト長軸34の延長線に向かって内方に湾曲し始めている。ヘッドの対向側辺において、凹面52が、ネック38から遠位側に延出するとき、最初、シャフト長軸34の延長線に向かって内方に湾曲する。凹面のこの湾曲の結果として凹縁54が内方に湾曲する箇所は、
図2において、凹縁の区域53と呼ばれている。ヘッドに沿った略1/6の長さの位置において、凹面52は、外方に湾曲している。次いで、凹面52は、クリアランス面が内方に湾曲するシャフトに沿った略同一の位置にいて、内方に湾曲している。バーヘッドの頂部に隣接する箇所において、クリアランス面および凹面の両方の曲率半径は、減少している。逃げ面48および凹面52は、バーヘッド42の遠位先端において交差している。面48,52が交差する位置は、バー30の最遠位端でもある。
【0019】
本発明のバー30は、従来のバーを使用するために準備するのと同じ方法によって使用の準備が整えられる。バー30は、該バーをシャフト32を貫通する長軸を中心として回転させることができる(図示されない)ハンドピースに連結される。この連結を容易にするために、ハンドピースと一体のチャックの連結部材がバーシャフト32の連結特徴部36に係合するようになっている。バーは、ハンドピースと一体のモータを回転させることによって、作動される。これによって、シャフト長軸を中心とするバーの回転が生じることになる。
図6A〜
図6Eにおいて、この回転は、
図6Aにおいて矢印58によって表されている反時計方向として示されている。
図6A〜
図6Eの処置において、バーヘッドは、バーシャフトの長軸の側に対して略横方向に前進するようになっている。
【0020】
バー30が用いられるとき、除去されるべき組織にヘッド42が押圧される。バーヘッドが組織に押圧されたとき、
図6Aに示されているように、組織を実際に押圧するのは、すくい面44および切刃46である。切刃46およびすくい面44は、該切刃およびすくい面が押圧される組織を剪断し、除去する。除去された組織は、破片68になり、該破片は、
図6Bに示されているように、すくい面の前方に位置し、該すくい面と共に回転することになる。バーヘッドの連続する回転によって、組織が連続的に除去され、必然的に破片の量が増大する。本発明では、すくい面44の平面性によって、切刃46を画定するすくい面44の一部から離れた比較的妨げられない破片経路が生じている。実際には、2つの流路が生じている。これらの流路のうち、第1の流路は、回転流路である。回転流路は、切除されている組織の外面に向かい、次いで、該外面から離れる方に向う流路である。この流路は、
図6Cにおいて矢印64によって表されている。第2の流路は、すくい面44の平面に沿って長手方向に向う流路である。
図6Cにおいて、これは、図面の奥側に向う流路、すなわち、バーシャフト32に向かう流路である。2つの破片流路の存在によって、切刃46に隣接する破片の堆積およびこのような堆積の望ましくない影響が低減されることになる。
【0021】
バー回転の次の過程において、切刃は、
図6Dおよび
図6Eにおいて連続的に示されているように、除去されている組織の表面から離れる方に回転する。同時に、凹縁54および凹面52が組織の表面に向かって回転する。しかし、
図6Eに示されているように、回転軸、すなわち、シャフト長軸に対する凹縁54および切刃46の相対的な位置によって、凹縁54は、組織に衝突しない。図面において、この間隙は、説明の目的のために拡大されている。代わって、最初に、凹面52、続いて、凹縁54が、組織の上方を回転する。従って、バーヘッドのこの部分が組織に向かって回転するとき、バーヘッド42のこの部分は、組織に衝突する凹縁の機械的衝撃、すなわち、機械的抵抗に晒されない。この衝撃がなくなることによって、この衝撃がバーヘッドの望ましくない前後振動を誘発する程度が同様に低下することになる。
【0022】
さらに、本発明のバーは、
図7に示されているように、場合によっては、空洞70のような孔を開けるために用いられてもよいことを理解されたい。この種の処置では、バーヘッドをシャフトの長軸に沿って長手方向に、少なくとも略遠位側に向かって前進させることになる。組織は、この空洞を完全に包囲することなく、具体的には、少なくとも180°を画定する円弧に沿って空洞を包囲するものであってもよい。この種の処置では、
図6A〜
図6Eに示されているような切除された破片を残余組織から排除することができる大きな側開口は、存在していなくてもよいし、または実質的にその大きさが小さくなっていてもよい。このような場合であっても、破片は、バーシャフトに向う長手方向流路に沿って本質的に妨げられずに流れることができる。
【0023】
本発明のバー30は、該バーの望ましくない振動を促進させる機械的衝撃にバーヘッド42を晒す可能性を最小限に抑えながら、従来バーに付着する傾向のある組織を除去するのに有用な工具である。
【0024】
本発明の切刃の周りの破片の減少は、これらの破片が切断効率を低下させる程度および組織の望ましくない加熱をより低減させると考えられる。切刃から離れる方への破片の迅速な排出は、(もし破片が存在していたなら)それらの破片が切刃の長さに沿って組織を円滑に剪断して除去する切刃の能力を低下させる程度を、減少させると考えられる。組織に対するバーの比較的真っ直ぐな線に沿って組織を除去する切刃の能力のこの増大によって、バーによって切除される孔のなめらかさが増大する。このなめらかさは、孔の直径の一貫性および切断の後に残る組織の表面の不規則さの最小化の両方を意味すると理解されたい。
【0025】
本発明のバーのさらなる特徴は、バーヘッド42の遠位端から近位側に進むにつれて、逃げ面48および凹面52の両方が外方に湾曲することにある。本発明のバーのこの特徴によって、バーをドリルとして用いることが可能である。換言すれば、このバーは、シャフト長軸の延長線に沿って組織の表面から内面に延在する孔または空洞を形成するのに用いることができる。すなわち、本発明のバー30を用いて、バーを側方に、具体的には、シャフト長軸から半径方向外方に押圧することによって、組織を除去することができると共に、シャフト長軸に沿って直線状に押圧することによって、組織を除去することもできる。
【0026】
上記の説明は、本発明のバーの1つの特定の態様に向けられている。本発明の代替的バーは、前述した特徴と異なる特徴を有していてもよい。
【0027】
例えば、本発明の記載されている態様では、バーヘッド42は、すくい面のすくい角が0°になるように形成されている。これは、バーヘッドが回転するとき、すくい面44とすくい縁が回転する円の接線との間の角度が90°であることを意味している。本発明の代替的態様では、バーヘッドは、すくい角が正または負のいずれかであるように形成されていてもよい。従って、本発明のこれらの態様では、すくい面44は、該該面44の全体に沿って完全に平面になっていなくてもよい。
【0028】
本発明の記載されている態様では、すくい面44およびクリアランス面50は、バーヘッド42の長さに沿って平行になっている。本発明のこの特徴は、バーヘッドに機械的強度をもたらすことになる。しかし、本発明の他の態様では、これらの面44,50は、必ずしも平行になっていなくてもよい。すなわち、本発明のいくつかの態様では、これらの面を横切る距離は、近位−遠位方向においてヘッドの遠位端の方に進むにつれて、減少していてもよい。本発明の他の態様では、これらの面の一方、典型的には、クリアランス面が、非平面形状を有していてもよい。典型的には、この面は、この面の平面部分が外方に突出する強化リブによって中断されることによって、非平面になっていてもよい。
【0029】
また、本発明の記載されている態様では、切刃のシャフト長軸からの距離に対する凹縁54の同一長軸からの距離の差は、バーヘッドの長さに沿って実質的に一定である。例えば、0.8cmから1cmの全長を有するバーヘッドの場合、この差は、典型的には、0.2mmから0.5mmの間にある。本発明の代替的な態様では、この差は、バーヘッド42の長さに沿って一定でなくてもよい。すなわち、本発明のいくつかの態様では、この差は、変動していてもよい。さらに具体的には、この差は、切刃46と長軸との間の距離と共に減少するようになっていてもよい。
【0030】
また、バーヘッドの代替的な形状が可能である。
図8は、凹面のない本発明のバーヘッド42aを示している。本発明のこの態様では、クリアランス面50aは、逃げ面48aから内方に進むにつれて、すくい面44aに向かって内方に傾斜している。逃げ面48aの反対側のヘッドの端において、すくい面44aおよびクリアランス面50aが交差し、凹縁54aを画定している。
【0031】
図9のバーヘッド42bは、逃げ面44bがシャフト32の長軸を大きく越えて延在しないように、形成されている。バーヘッドは、概して、シャフト32に対してこの位置まで延在するべきであることを理解されたい。これは、バーが回転したとき、バーの非対称負荷を最小限に抑えることが望ましいと考えられるからである。この非対称負荷を最小限に抑えることが望ましい1つの理由は、このような負荷がビビリを誘発することにある。ビビリは、バーの望ましくない前後振動である。これらの振動は、ある特定の回転周波数で生じる可能性がある。しかし、この設計上の制約は、必ずしも本発明の全ての態様に必要ではない。
【0032】
図9は、凹面52bが湾曲形状を有していることを示している。図示されていないが、すくい面も、同様に湾曲していてもよい
【0033】
図10は、本発明の全てのバーにおいて、すくい面44cが必ずしもシャフト長軸が延在する面内に位置する必要がないことを示している。
図10のバーヘッド42cは、すくい面44cに湾曲47が存在しないように、さらに形成されている。この湾曲は、凹縁54cに隣接するすくい面44cの区域に凹部を形成している。この凹部は、バーの使用中に生じる破片が流入する追加的な空洞として機能するものである。
【0034】
図11は、すくい面44dおよびクリアランス面50dの両方が湾曲輪郭を有していてもよいことを示している。本発明のこの態様では、バーヘッド42dは、すくい面が凹面となるような凹凸輪郭を有している。本発明の他の態様では、クリアランス面のみが凹面であってもよい。
【0035】
本発明の前述の態様では、バーヘッドは、中実である。本発明の代替的態様では、
図12に示されているように、バーヘッド42eに1つまたは複数の開口72が形成されている。1つの大きな開口72が、
図12に示されている。1つまたは複数の開口は、すくい面からクリアランス面に延在している。この1つまたは複数の開口は、バーの使用によって生じた破片が流入するさらなる空洞をもたらすことになる。本発明のいくつかの態様では、この1つまたは複数の空洞の表面積は、バーヘッド42の周辺内の全面積の50%とすることができる。
【0036】
同様に、このバーの用途は、比較的多量の水分を含む組織がバーに付着する場合に制限されるものではない。
【0037】
さらに、本発明の代替的態様では、ネックは、前述した形状と異なる形状を有していてもよい。本発明のいくつかの態様では、バーはネックを有していなくてもよい。本発明のこれらの態様では、ヘッドは、シャフトから直接延出するようになっている。
【0038】
図13A〜
図13Eは、本発明の全ての態様において、バーヘッドは、必ずしも
図2および
図12におけるバーと同様の楕円形状を有する必要がないことを示している。
図13Aは、丸ヘッド42fを有する本発明のバーを示している。本発明のこの態様では、バーヘッド42fは、略丸形状である。しかし、ヘッド42fは、ヘッドの最遠位端に小さい先端78を有するように、さらに形成されている。ヘッド42fを有するバーは、先端78がシャフト32の長軸の延長線62上に位置するように、さらに形成されている。ヘッド42fを有するバーは、切刃46fがシャフト延長線62から凹縁54fよりもさらに離間するように、さらに形成されている。
【0039】
図13Bは、ドングリ状ヘッド42gを有する本発明のバーを示している。ドングリヘッド42gは、先端80の近位側において縁がバーの遠位部分を囲むように近位側後方に湾曲しているヘッドである。ヘッド46gの遠位部分の近位側において、これらの縁は、直線状である。ドングリヘッドの図示されている態様では、これらの縁は、互いに平行である。ヘッド42gを有するバーは、先端80がシャフト延長線62上に位置するように、設計されている。バーは、切刃46gがシャフト延長線62から凹縁54gよりさらに離間するように、さらに形成されている。
【0040】
図13Cは、本発明の梨状ヘッド42hを有するバーを示している。従って、ヘッド42hは、凸状の遠位区域を有している。遠位区域の近位側において、ヘッド42hの互いに対向する縁46h,54hは、直線状であり、互いに向かって内方に傾斜している。本発明のこの態様では、ヘッド42hの(識別番号82が付されている)最遠位点は、シャフト延長線62からいくらか切刃46hの方に離間している。切刃46hは、シャフト延長線62から凹縁54hよりもさらに離間している。
【0041】
図13Dは、本発明のバーがパドル状ヘッド42iを有していてもよいことを示している。ヘッド42iは、本発明の
図2および
図11のバーの楕円状ヘッドと同様である。ヘッド42iは、バーの遠位端においてヘッドの遠位縁84がシャフト延長線62と直交している点において、異なっている。また、ヘッド42iは、切刃46iおよび凹縁54iが互いに平行であると共にシャフト延長線62に対しても平行であるように、さらに形作られている。切刃46iは、シャフト延長線62から凹縁54iよりもさらに離間している。
【0042】
矢印状になっている本発明のヘッド42jが、
図13Eに示されている。ヘッド13jは、先端86を有している。互いに対向する切刃46jおよび凹縁54jが、それぞれ、先端86から近位側に向かってかつ外方に向かって直線状に延在している。従って、ヘッド42jを有するバーは、先端86がシャフト延長線からいくらか切刃46jの方に離間するように、形作られている。本発明のこの態様では、縁46j、54jは、(先端86を通る)ヘッドの軸を中心として対称的であり、シャフト延長線62に対して平行になっている。従って、本発明のこの態様では、切刃46jは、シャフト延長線62から凹縁54jよりもさらに離間している。
【0043】
図13Fは、
図13Dのバーの代替的態様である。バーヘッド42kは、パドル状である。切刃46kは、シャフト延長線62から対向する凹縁54jよりもさらに離間している。バーヘッド42kは、凹面から外方に突出する互いに離間した複数のリブ90を有するように、さらに形成されている(凹面は、
図13Dにおいて見えていない)。各リブ90は、リブの遠位側および近位側の凹面区域から外方に延在している。バーヘッド42kは、リブ90が、対向する切刃46kがシャフト延長線62から外方に延在する距離と等しいかまたはそれよりも短い距離にわたって、同一延長線から外方に延在するように、形作られている。バーの回転中、リブ90は、凹面および凹縁を、バーヘッド42kのこれらの部分がバーヘッドが押圧される組織に衝突しないように、離れて保持することになる。凹面および凹縁54kが(リブ90が存在する箇所を除けば)組織から離間しているので、バーヘッドのこれらの部分と隣接する未切除組織との間に隙間空間が存在することになる。この空間は、新たに切除された組織が隣接する未切除組織から押し出されるときに通る空洞として機能する。
【0044】
さらに、バーヘッド42kが組織に対して押圧されるとき、切刃46kおよびリブ90は、異なる抵抗力を受ける。これらの力が等しくないので、バーヘッドがこれらの力を繰り返し受けることによって、これらの力の付与がバーヘッドの望ましくないバービビリを誘発する程度が低減されると考えられる。
【0045】
本発明のバーは、ヘッドが代替的な幾何学的形状を有するように、さらに形成されていてもよい。代替的な幾何学的形状は、前述のヘッド形状の1つまたは複数の特徴を備えるものであってもよい。例えば、本発明の矢印状ヘッドを有する代替的バーは、ヘッドの先端がシャフト延長線上にあるように、設計されていてもよい。本発明のこれらの態様では、ヘッドの互いに対向する切刃および凹縁は、先端を通る軸に対して対称でなくてもよい。代わって、切刃とヘッドの平面に沿ったシャフト延長線62の部分との間の鋭角が、凹縁とシャフト延長線との間の対向する鋭角よりも大きくなっていてもよい。
【0046】
凹縁をバーヘッドが押圧される組織から離れて保持する1つまたは複数のリブは、パドル状ヘッドを有するバー以外の本発明のバーに組み入れられてもよい。
【0047】
前述の寸法および形状は、本発明の理解を容易にするために示されている。従って、請求項に別段の定めがない限り、これらの寸法および形状は、本発明を制限すると解釈されるべきではない。例えば、バーヘッドのすくい面およびクリアランス面が互いに平行である本発明の態様では、これらの面は、バーヘッドの全体に沿って平行でなくてもよい。これらの面が、バーヘッドの長さの大半未満、具体的には、50.1%未満の長さに沿って平行であることも、本発明の範囲内にある。
【0048】
さらに、前述した態様の全ての特徴は、必ずしも本発明の全ての態様に存在していなくてもよい。例えば、本発明のバーは、すくい面を有する単一フルートであって、切刃から延在するすくい面の少なくとも一部が平面状である、単一フルートを有するように構成されていてもよい。本発明のこれらの態様では、切刃および凹面は、シャフトを通る長軸の延長線から等距離で離間していてもよい。本発明の多くの構成では、バーヘッドは、シャフト長軸の延長線がヘッドを貫通しないように、位置決めされると見なされている。従って、本発明のこれらの構成では、バーヘッドは、シャフト長軸の延長線がすくい面に沿って延在するか、またはバーヘッドの全体の延長線がすくい面から横方向に離間するように、配置されている。
【0049】
従って、添付の請求項の目的は、このような変更形態および修正形態の全てが本発明の真の精神および範囲内にあることを含むことにある。