特許第6925516号(P6925516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6925516往復直線運動と回転運動との変換装置及びシリンダ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6925516
(24)【登録日】2021年8月5日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】往復直線運動と回転運動との変換装置及びシリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/04 20060101AFI20210812BHJP
   F02B 75/24 20060101ALI20210812BHJP
   F02B 75/32 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   F16H19/04 E
   F16H19/04 G
   F02B75/24
   F02B75/32 Z
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-514314(P2020-514314)
(86)(22)【出願日】2018年5月8日
(65)【公表番号】特表2020-523543(P2020-523543A)
(43)【公表日】2020年8月6日
(86)【国際出願番号】CN2018086042
(87)【国際公開番号】WO2018210163
(87)【国際公開日】20181122
【審査請求日】2020年1月6日
(31)【優先権主張番号】201710353223.X
(32)【優先日】2017年5月18日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519409730
【氏名又は名称】ヂォン アンチン
【氏名又は名称原語表記】ZHENG, Anqing
(73)【特許権者】
【識別番号】519409741
【氏名又は名称】ヂョウ チャオ
【氏名又は名称原語表記】ZHOU Chao
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン アンチン
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/25141(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公告第468652(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/04
F02B 75/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸(1)と、直線運動ガイド機構(2)と、扇形歯車(3)と、前記直線運動ガイド機構(2)に沿って直線運動できるラックフレーム(4)とを含み、前記扇形歯車(3)が前記主軸(1)に固定連結され、前記ラックフレーム(4)の内壁にラックが設けられ、前記ラックは前記扇形歯車(3)の両側に設けられた第1ラック(41)及び第2ラック(42)を含む往復直線運動と回転運動との変換装置であって、
前記往復直線運動と回転運動との変換装置は、更に前記主軸(1)に固定連結された反転機構(5)を含み、前記反転機構(5)にガイド曲面(51)及びガイド部材(52)が配置され、前記ラックフレーム(4)には反転ブロック(43)が配置され、前記反転ブロック(43)に第1曲面(431)及び第2曲面(432)が配置され、
前記往復直線運動と回転運動との変換装置が伝動状態にあるとき、前記扇形歯車(3)は前記ラックと噛み合い、前記往復直線運動と回転運動との変換装置が遷移状態にあるとき、前記扇形歯車(3)が前記ラックと噛み合うと同時に、前記反転ブロック(43)の前記第一曲面(431)が前記ガイド部材(52)の外表面に制約された状態にあり、前記反転ブロック(43)の前記第2曲面(432)が前記ガイド曲面(51)によって制約された状態にあり、前記往復直線運動と回転運動との変換装置が反転状態にあるとき、前記扇形歯車(3)は前記ラックから離脱し、且つ前記反転ブロック(43)の前記第1曲面(431)は前記ガイド部材(52)の前記外表面に制約された状態にあり、前記反転ブロック(43)の前記第2曲面(432)は前記ガイド曲面(51)に制約された状態にあり、
前記ガイド部材(52)は、前記反転機構(5)に固定連結されたガイド軸(512)と、前記ガイド軸(512)に嵌設されたローラ(511)とを含むことを特徴とする往復直線運動と回転運動との変換装置。
【請求項2】
前記ローラ(511)と前記ガイド軸(512)との間に転がり軸受が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の往復直線運動と回転運動との変換装置。
【請求項3】
前記ラックは外歯型ラックであり、前記扇形歯車(3)の軸線は前記主軸(1)の軸線からずれていることを特徴とする請求項1に記載の往復直線運動と回転運動との変換装置。
【請求項4】
前記直線運動ガイド機構(2)はガイドレールであり、前記ガイドレールと前記ラックフレーム(4)との間にローラが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の往復直線運動と回転運動との変換装置。
【請求項5】
前記反転ブロック(43)は、前記ラックフレーム(4)の左右両端の外側面に、前記ラックフレーム(4)の水平横方向の中心軸に対して対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の往復直線運動と回転運動との変換装置。
【請求項6】
前記反転機構(5)は一つであり、前記反転ブロック(43)は片側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の往復直線運動と回転運動との変換装置。
【請求項7】
前記第1曲面(431)は遷移曲面(4311)及び反転曲面(4312)で構成され、前記反転曲面(4312)は円弧状曲面であり、且つ反転過程において、前記反転曲面(4312)の円心は前記主軸(1)の中心線上にあることを特徴とする請求項1に記載の往復直線運動と回転運動との変換装置。
【請求項8】
往復直線運動と回転運動との変換装置を用いたシリンダ装置であって、
請求項1に記載の往復直線運動と回転運動との変換装置、接続ロッド(6)、ピストン(7)及びシリンダボディ(8)を含み、
前記シリンダボディ(8)は前記ピストン(7)に嵌設され、前記接続ロッド(6)の一端は前記ピストン(7)に接続され、他端は前記ラックフレーム(4)に接続され、前記シリンダボディ(8)の一端にはシリンダヘッド(9)が配置され、前記往復直線運動と回転運動との変換装置にエンドキャップ(10)が配置され、前記シリンダボディ(8)の他端は前記エンドキャップ(10)に接続されているシリンダ装置。
【請求項9】
前記接続ロッド(6)、前記ピストン(7)、前記シリンダヘッド(9)、前記エンドキャップ(10)及び前記シリンダボディ(8)はペアとして前記ラックフレーム(4)の両側に配置されていることを特徴とする請求項8に記載のシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復直線運動と回転運動との変換装置及びシリンダ装置に関し、特に機械式伝動分野に応用される往復直線運動と回転運動との変換装置及びシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、往復直線運動と回転運動とを相互に変換する機構は多種多様の形式を有している。なかでも最も広く用いられているのは空気圧縮機とエンジンにおけるクランクトレインであるが、クランクトレインの伝動効率は低い。ピストンエンジンを例にとると、クランクトレインを採用するエンジンの燃料利用率は約30%であり、且つ顕著な向上が長期にわたって困難であった。
【0003】
ピストンエンジンの効率を向上させるために、当業者はピストンエンジンの伝動装置を絶えず改良し、最適化している。例えば公開番号CN105114179Aの特許文献は軸式連結ロッド伝動システム及び対向ピストンエンジンを開示している。この伝動システムは主軸と少なくとも一つの直線往復運動ユニットとを含み、直線往復運動ユニットは少なくとも一つの直線往復動体を含み、直線往復動体は対応する軸式連結ロッドの一端に固定連結され、他端は対応するプッシュプルフレームに接続され、プッシュプルフレーム内にスライドブロックが配置される。このスライドブロックの両側外壁はプッシュプルフレームの両横方向の内側壁とスライド嵌合を形成し、スライドブロックの内輪はそのピッチ円が楕円形状を呈する内歯を有し、内歯は主軸に対応して配置される歯車と循環するように噛み合い、主軸と反転ブロックとの間に反転機構が配置される。この装置は直線往復運動を回転運動に変換できるが、動作過程において、スライドブロックが上下に移動するため、システムの負荷及び機械摩擦を増加させ、且つシステムに上下揺動を発生させる。このため効率が悪く、騒音が大きく、且つ動作が不安定で、機構が停止しやすく、信頼性が低い。
【0004】
また、例えば中国特許第CN1399063Aに開示される扇形歯車エンジンは扇形歯車機構を利用してピストン往復運動から扇形歯車の回転への変換を実現し、扇形歯車によって、ラックの正方向の噛み合いを実現すると同時に、負方向が噛み合わない機能を実現する。しかしながら、当該技術的解決手段によっては、扇形歯車がラックと離脱した後、ピストンロッドと一体に接続されたラックが制約を失い、ピストンによって駆動して依然として移動し続け、扇形歯車が該ラックと再び正確に噛み合うことができず、伝動が連続的にスムーズに行われることができない。
【0005】
このように従来の技術において、伝動効率を著しく向上させ、エネルギー損失を減少させ、且つスムーズな連続運転が可能な往復直線運動と回転運動との変換装置は実現されていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明が解決しようとする技術問題は、伝動効率を顕著に向上させ、エネルギー消費量を減少させ、且つ安定した連続運転を実現できる往復直線運動と回転運動との転換装置を提供することである。
【0007】
前記技術問題を解決するために、本発明による往復直線運動と回転運動との転換装置は、主軸と、直線運動ガイド機構と、扇形歯車と、直線運動ガイド機構に沿って直線運動を行うラックフレームとを含み、前記扇形歯車は主軸に固定連結され、前記ラックフレームの内壁にラックが配置され、前記ラックは扇形歯車の両側にそれぞれ配置された第1ラック及び第2ラックを含み、前記往復直線運動と回転運動との変換装置は更に主軸に固定連結される反転機構を含み、前記反転機構にガイド曲面及びガイド部材が配置され、前記ラックフレームには反転ブロックが配置され、前記反転ブロックに第1曲面及び第2曲面が配置されている。往復直線運動と回転運動との転換装置が伝動状態にあるとき、扇形歯車はラックと噛み合う。往復直線運動と回転運動との転換装置が遷移状態にあるとき、扇形歯車とラックが噛み合うと同時に、反転ブロックの第1曲面はガイド部材の外表面に制約される状態にあり、反転ブロックの第2曲面がガイド曲面に制約される状態にある。往復直線運動と回転運動との変換装置が反転状態にあるときに、扇形歯車がラックから離脱し、且つ反転ブロックの第1曲面がガイド部材の外表面に制約された状態にあり、反転ブロックの第2曲面がガイド曲面に制約される状態にある。
【0008】
更に、前記ガイド部材は、反転機構に固定連結されたガイド軸と、ガイド軸に嵌設されたローラとを含む。
【0009】
更に、前記ローラとガイド軸との間に転がり軸受が配置されている。
【0010】
更に、前記ラックは外歯型ラックであり、前記扇形歯車の軸線は主軸の軸線からずれている。
【0011】
更に、前記直線運動ガイド機構はガイドレールであり、前記ガイドレールとラックフレームとの間にローラが配置されている。
【0012】
更に、前記反転ブロックは、ラックフレームの左右両端の外側面に、前記ラックフレームの水平横方向の中心軸に対して対称に配置されている。
【0013】
更に、前記反転機構は一つであり、前記反転ブロックは片側に配置されている。
【0014】
更に、前記第一曲面は遷移曲面と反転曲面から構成され、前記反転曲面は円弧形曲面であり、且つ反転過程において、反転曲面の円心は主軸の中心線上にある。
【0015】
本発明が解決しようとするもう一つの技術問題は、伝動効率を著しく向上させ、エネルギー消費量を減少させ、且つ安定した連続運転を実現できるシリンダ装置を提供することである。
【0016】
前記技術問題を解決するために、本発明が採用するシリンダ装置は、往復直線運動と回転運動との変換装置と、接続ロッドと、ピストンと、シリンダボディとを含み、前記シリンダボディはピストンに嵌設され、前記接続ロッドの一端はピストンに接続され、他端はラックフレームに接続され、前記シリンダボディの一端にシリンダヘッドが配置され、前記往復直線運動と回転運動との変換装置にエンドキャップが配置され、前記シリンダボディの他端がエンドキャップに接続されている。
【0017】
更に、前記接続ロッドと、ピストンと、シリンダヘッドと、エンドキャップとシリンダボディとは、ペアを組んで同じラックフレームの両側に配置されている。
【0018】
本発明の有益な効果は以下の通りである。本願の往復直線運動と回転運動との変換装置を用いて、主軸と同期して回転する反転機構と、ラックフレームに設けられた反転ブロックとによって、ラックフレームが遷移段階及び反転段階において、反転機構によって正確に制約され、設定された軌道に従って移動し、扇形歯車は、一方のラックから徐々に離脱して完全に離脱するまで、そして、他方のラックに徐々に噛み合って完全に噛み合うまでの過程が連続的且つ円滑に遷移することを保証する。さらに、扇形歯車を再びラックと正確に噛み合わせることができ、往復直線運動全体を回転運動に変換する過程が連続的で、正確に行われ、且つ装置の動作過程において、衝撃が小さく、反転が安定しており、機械の損耗が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本装置の伝動段階における正面図である。
図2】本装置の伝動段階における断面図である。
図3】本装置の伝動段階における上面図である。
図4】本装置の遷移段階における正面図である。
図5】本装置の遷移段階における断面図である。
図6】本装置の遷移段階における上面図である。
図7】本装置の置換段階における正面図である。
図8】本装置の置換段階における断面図である。
図9】本装置の置換段階における上面図である。
図10】本装置を対向二重シリンダ4ストロークピストンエンジンに適用した概略構成図である。
図11】本装置を対向二重シリンダ2ストロークピストンエンジンに適用した概略構成図である。
図12】反転機構が対称に配置された概略構成図である。
図13】反転ブロックの概略構成図である。
図14】本装置を対向シリンダ対向ピストン2のストロークエンジン構造に適用した上面図である。
【符号の説明】
【0020】
図中の部品、部位及び番号:主軸1、直線運動ガイド機構2、扇形歯車3、ラックフレーム4、第1ラック41、第2ラック42、反転ブロック43、第1曲面431、遷移曲面4311、反転曲面4312、第2曲面432、反転機構5、ガイド曲面51、ローラ511、ガイド軸512、ガイド部材52、接続ロッド6、ピストン7、シリンダボディ8、シリンダヘッド9、エンドキャップ10である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面と併せて本発明について詳細に説明する。
【0022】
前記技術問題を解決するために、本発明が採用する往復直線運動と回転運動との変換装置は、主軸1、直線運動ガイド機構2、扇形歯車3、及び、直線運動ガイド機構2に沿って直線運動を行うラックフレーム4を含み、扇形歯車3は主軸1に固定連結され、ラックフレーム4の内壁にラックが配置され、前記ラックは扇形歯車3の両側にそれぞれ配置された第1ラック41及び第2ラック42を含み、前記往復直線運動と回転運動との変換装置は、更に主軸1に固定連結された反転機構5を含み、反転機構5にガイド曲面51及びガイド部材52が配置され、ラックフレーム4に反転ブロック43が配置され、反転ブロック43に第1曲面431及び第2曲面432が配置されている。前記部材の運動関係は以下のとおりである。往復直線運動と回転運動との変換装置が伝動状態にあるとき、扇形歯車3はラックと噛み合う。往復直線運動と回転運動との転換装置が遷移状態にあるとき、扇形歯車3とラックとが噛み合うと同時に、反転ブロック43の第1曲面431はガイド部材52の外表面に制約される状態にあり、反転ブロック43の第2曲面432がガイド曲面51に制約される状態にある。往復直線運動と回転運動との変換装置が反転状態にあるときに、扇形歯車3がラックから離脱し、且つ反転ブロック43の第1曲面431がガイド部材52の外表面に制約された状態にあり、反転ブロック43の第2曲面432がガイド曲面に制約される状態にある。本発明の往復直線運動及び回転運動との変換装置は、ラックフレーム4の往復直線運動と主軸1の連続回転運動との相互変換を実現することができる。その動作過程は三つの段階に分けられる。
【0023】
図1図2及び図3に示すように、伝動段階で扇形歯車3とラックとが噛み合い、ラック及びラックフレーム4と共に直線運動を行い、扇形歯車3と主軸1とが同時に回転する。ラックは扇形歯車3との噛み合いによって、ラックフレームの往復直線運動と主軸1の回転運動との相互変換を実現する。
【0024】
図4図5及び図6に示すように、遷移段階で扇形歯車3とラックの末端が噛み合い、同時に反転機構5は主軸1の駆動下でガイド部材52及びガイド曲面51がラックフレーム4の反転ブロック43を制約する位置に回転しながら移動する。このとき、反転ブロック43はガイド部材52及びガイド曲面51の間で自由に移動できない。
【0025】
図7図8及び図9に示すように、反転段階で扇形歯車3とラックとが完全に離脱するが、ガイド部材52とガイド曲面51とは依然として反転ブロック43に対して制約が発生する位置である。このときに、反転ブロック43はガイド部材52とガイド曲面51との間で自由に平行移動することができない。
【0026】
遷移段階及び反転段階において、ガイド部材52及びガイド曲面51はラックフレーム4の反転ブロック43に対して制約を生じる。即ち、反転ブロック43は、ガイド部材52とガイド曲面51との間に形成される領域の範囲内でのみ移動することができる。
【0027】
上述の反転段階が終わった後、装置は再び遷移段階に入り、扇形歯車3は他方のラックの末端と噛み合う。そして、装置が動くにつれて、扇形歯車3がラックと完全に噛み合い、本装置はまた伝動段階に入り始める。そして、前の3つの段階が繰り返されて、本装置を連続的に動かすことができる。
【0028】
反転段階において、ラックと扇形歯車3が完全に離脱するため、扇形歯車3に制約されない場合、ラックフレーム4は継続的に移動する傾向があり、ラックフレーム4が移動し続けると扇形歯車3とラックは次の段階で正確に噛み合うことができず、装置を連続的に動かすことができなくなる。本願の反転機構5は主軸1と同期して回転し、扇形歯車3が反転段階へ回転すると、反転機構5も反転位置へ回転しながら移動する。このとき、反転ブロック43の第一曲面431がガイド部材52の外表面に接触することによってガイド部材52の外表面が反転ブロック43の片側を制約すると同時に、反転ブロック43の第2曲面432がガイド曲面51に接触することによって、ガイド曲面51が反転ブロック43の他方を制約する。ガイド部材52とガイド曲面51との共通の制約により、ラックフレーム4に固定連結されたガイドブロックはラックフレーム4の移動を制限した後に静止状態を保持し、扇形歯車3がラックと再び噛み合って遷移段階に入るまでに回転しながら移動する。
【0029】
遷移段階において、ラックと扇形歯車3とは部分的に噛み合うだけであり、単一の歯が受ける荷重が大きい。本願では、主軸1と同期して反転機構5を回転させることにより、扇形歯車3を遷移段階まで回転させながら移動させ、且つ反転ブロック43の第一曲面431をガイド部材52の外表面に接触させるとともに、反転ブロック43の第2曲面432をガイド曲面51に接触させる。このとき、反転機構5の曲面は反転ブロック43に対してガイドとして機能する。反転機構5と反転ブロック43とが互いに作用し制約しあうことで、反転ブロック43が所定の軌道に沿って水平直線移動する。また遷移段階において、もともと扇形歯車3及びラックに加えられた力はさらに反転機構5のガイド部材52の外表面及び反転ブロック43の曲面に分配され、これによって本装置が遷移する過程で動作が安定し、係止や停滞の発生を回避することができる。本願の直線運動のガイド機構2は、ガイドとしての役割を果たし、それによって、ラックフレーム4は直線運動ガイド機構2の制限下で確実に正確な直線運動をすることができる。
【0030】
ガイド部材52は、反転機構5に固定連結されたガイド軸512及びガイド軸512に嵌設されたローラ511を含んでいる。ガイド部材52のローラ511は、反転機構5に対して自由に回転可能であり、反転ブロック43がガイド部材52に接触しているときに、転がり摩擦としての摩擦力を低下させることができる。
【0031】
ローラ511とガイド軸512との間に、転がり軸受が配置されている。転がり軸受を用いることによって、摩擦力を最大限に低減させることができる。
【0032】
ラックは外歯型ラックであり、扇形歯車3の軸線は主軸1の軸線からずれており、それによって扇形歯車とラックとの有効な噛み合いに適応している。ここで扇形歯車の軸線とは、扇形歯車に対応する歯車の軸線である。ラックフレーム4のラックとしては、直線型ラック又は外歯型ラックを用い、それに噛み合う扇形歯車3の軸線も、主軸1の軸線に対して同軸又は非同軸である。好ましくは外歯型ラックとオフアクシス扇形車歯3との係合を採用する。これにより直線型ラックと比較して、外歯型ラックは以下の利点を有する。遷移段階においてラックと噛み合う扇形歯車3の歯切りの程度を減少させることができ、扇形歯車3とラックの噛み合いがより良好になり、扇形歯車3とラックが受ける力、特に末の歯が受ける力改善に貢献し、扇形歯車3及びラックの耐摩耗性を向上させ、且つ遷移段階の安定した移行をより確実にし、遷移段階で発生する騒音を低減する。
【0033】
直線運動ガイド機構2はガイドレールであり、前記ガイドレールとラックフレーム4との間にローラが配置されている。ガイドレールでの制限構造がシンプルで、体積が小さく、位置決めが正確で、ローラを増設することによりラックフレーム歯枠4とガイドレールとの間の摩擦を減少させることができる。そのほか、位置決めローラ511など他の位置決め方式も採用できる。
【0034】
反転ブロック43はラックフレーム4の左右両端の外側面に、ラックフレーム4の水平横方向の中心軸に対して対称に配置されている。このような対称な配置とすることにより、構造の安定性が向上し、本装置の動作過程が一層安定する。
【0035】
図12に示すように、本願の反転機構は対称的な配置形式を採用することもできる。
【0036】
そのうちの一つの構造形式として、本装置における反転機構5は一つであってもよく、その反転ブロック43も対応して片側に配置される。
【0037】
第一曲面431は遷移曲面4311及び反転曲面4312で構成され、反転曲面4312は円弧状曲面であり、且つ反転過程において、反転曲面4312の円心は主軸1の中心線上にある。遷移過程において、反転ブロック43は遷移曲面4311に制約されることによって、移動中にラックフレームを遷移過程から反転過程に安定して変換させることができる。反転過程において、反転ブロック43は反転曲面4312に制約される。このとき反転曲面4312が円弧状曲面であるため、その円心は主軸1の中心線上にある。このようにラックフレーム4が反転過程において反転が完了するまで現在の位置を維持し、遷移段階に再び入る。前記方法を用いて、各プロセスの間の円滑な接続を可能とし、本装置を連続的で円滑的に稼動させることができる。
【0038】
図10に示すように、本発明が採用するシリンダ装置は、往復直線運動と回転運動との変換装置、接続ロッド6、ピストン7及びシリンダボディ8を含み、シリンダボディ8はピストン7に嵌設され、接続ロッド6の一端はピストン7に接続され、他端はラックフレーム4に接続され、シリンダボディ8の一端にはシリンダヘッド9が取り付けられ、前記往復直線運動と回転運動との変換装置にエンドキャップ10が設けられ、シリンダボディ8の他端にはエンドキャップ10が接続されている。本願のシリンダ装置は、往復直線運動と回転運動との変換装置に、ピストンとシリンダ等の主要部材を加えて構成されている。本願の往復直線運動と回転運動との変換装置は、伝動効率が高く、エネルギー消耗が低く、且つスムーズに連続運転を実現することを特徴とする。したがって、本願の往復直線運動と回転運動との変換装置を用いて従来技術のクランク軸接続ロッド6機構を置換して伝動することにより、シリンダ装置の効率が大幅に向上し、従来技術におけるピストン7とシリンダボディ8との摩耗を減少させることができる。具体例では、ピストン7とラックフレーム4との間に接続ロッド6を追加して、ピストン7の直線運動を接続ロッド6を介してラックフレーム4に伝達させ、その後、本装置によってラックフレーム4の往復直線運動を主軸1の連続回転運動に変換した後に出力する。また、本願のシリンダ装置を採用した後、従来技術に比べ、ピストン7の両側のキャビティはいずれも有効利用が可能であり、且つ本願の装置のラックフレーム4とピストン7の横方向への力はいずれもガイドレールが負担するため、従来技術のピストン7とシリンダボディ8側壁との摩耗が回避される。エンジン及び圧縮機のコア伝動方式は往復直線運動と回転運動との変換装置であるため、本願のシリンダ装置は、具体的なニーズに応じて、当業者が本シリンダ装置に基づいてエンジンを設計することができ、圧縮機として設計することもできる。
【0039】
本願のシリンダ装置を用いて、以下の形式を含む様々な形式のエンジン及び圧縮機を構成することができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
好ましい実施形態として、本願のシリンダ装置は更に接続ロッド6、ピストン7、シリンダヘッド9、エンドキャップ10及びシリンダボディ8をペアで同一のラックフレーム4の両側に配置してもよい。これによりダブルピストンのエンジン又は圧縮機として使用することができる。
【0041】
前記往復直線運動と回転運動との変換装置は複数の組み合わせであり、前記複数の往復直線運動と回転運動との変換装置は同じ動力軸を介して動力を出力する又は同じ動力軸を介して動力の入力を受信する。
【0042】
エンジン及び圧縮機のコア伝動方式は往復直線運動と回転運動との変換装置であるため、本願のシリンダ装置は、具体的なニーズに応じて、当業者が本シリンダ装置に基づいてエンジンを設計することができ、圧縮機として設計することもできる。
【0043】
更に、前記形式によって合理的に組み合わせることができる。
【0044】
本出願のいくつかの具体的な実施例は以下のとおりである。
【0045】
実施例1
図10に示すように、対向二重シリンダ4ストロークピストンエンジンは、往復直線運動と回転運動との変換装置と、接続ロッド6と、ピストン7と、シリンダボディ8とを含む。接続ロッド6の一端はピストン7に接続され、他端はラックフレーム4に接続され、シリンダボディ8の一端にシリンダヘッド9が配置されている。前記往復直線運動と回転運動との変換装置にエンドキャップ10が設けられ、シリンダボディ8の他端はエンドキャップ10に接続されている。ピストン7はシリンダボディ内に位置し、且つシリンダ内で往復運動することができ、ピストン7はシリンダを前後2つの可変キャビティに分離している。ピストン7の前表面に対応するキャビティは前キャビティと呼ばれる。図ではピストン7の往復運動及び空気分配システムによって、シリンダヘッド9の吸気口、排気口を制御することによって、前キャビティは、順次に圧縮行程と、動力行程と、排気行程と、吸気行程との4ストローク循環を行う。
【0046】
実施例2
図11に示すように、対向二重シリンダ2ストロークピストンエンジンは、往復直線運動と回転運動との変換装置と、接続ロッド6と、ピストン7と、シリンダボディ8とを含む。接続ロッド6の一端はピストン7に接続され、他端はラックフレーム4に接続され、シリンダボディ8の一端にシリンダヘッド9が配置されている。前記往復直線運動と回転運動との変換装置にエンドキャップ10が設けられ、シリンダボディ8の他端はエンドキャップ10に接続されている。ピストン7はシリンダ内に位置し、且つシリンダ内で往復運動することができ、ピストン7はシリンダを前後2つの可変キャビティに分離している。ピストン7の前表面に対応するキャビティは前キャビティと呼ばれ、ピストン7の後表面に対応するキャビティは後キャビティと称される。図ではピストン7の往復運動によって、ピストンのスカート部がシリンダボディ8の吸気口を制御し、空気分配システムがシリンダヘッド9の排気口を制御することによって、前キャビティが圧縮行程、仕事行程、掃気行程、2ストローク循環を行い、後キャビティが吸気行程、圧縮循環を行い、且つシリンダボディの通気道及びシリンダボディの吸気口を介して、前キャビティに掃気過程の圧縮空気を供給する。
【0047】
実施例3
実施例1から、一方のシリンダ、シリンダヘッド9、ピストン7及び接続ロッド6を除去することによって、本実施例の単シリンダ4ストロークピストンエンジンを構成することができる。
実施例4
実施例2から、一方のシリンダ、シリンダヘッド9、ピストン7及び接続ロッド6を除去することによって、本実施例の単シリンダ単ピストン2ストロークエンジンを構成することができる。
【0048】
実施例5
図14に示すように、3セットの往復直線運動と回転運動との変換装置を用い、同一のピストンシリンダ内に二つの接続ロッド6及び二つのピストン7が対向して配置され、対向シリンダ対向ピストン2ストロークエンジン、即ちOPOCエンジンが形成されている。
図1
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図14