特許第6925577号(P6925577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6925577
(24)【登録日】2021年8月6日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/048 20060101AFI20210812BHJP
   H01G 9/012 20060101ALI20210812BHJP
   H01G 9/052 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   H01G9/048 A
   H01G9/048 H
   H01G9/048 Z
   H01G9/012 301
   H01G9/012 303
   H01G9/012 305
   H01G9/052 505
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-4209(P2019-4209)
(22)【出願日】2019年1月15日
(62)【分割の表示】特願2016-69888(P2016-69888)の分割
【原出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2019-75582(P2019-75582A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2019年1月15日
【審判番号】不服2020-13285(P2020-13285/J1)
【審判請求日】2020年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033385
【氏名又は名称】日本蓄電器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【弁理士】
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】信田 知希
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和雅
(72)【発明者】
【氏名】横倉 修
【合議体】
【審判長】 山田 正文
【審判官】 井上 信一
【審判官】 須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−84342(JP,U)
【文献】 特開平4−367212(JP,A)
【文献】 特開2010−171601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/048
H01G 9/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する1対の端面および前記端面に隣り合う底面を有する直方体形状の本体と、
前記本体の前記1対の端面に配置された1対の陽極端子と、
前記本体の前記底面にある陰極端子と、
を備え、
前記本体は、
樹脂を含む封止材と、
前記封止材に覆われたコンデンサ素子と、
を備え、
前記コンデンサ素子は、
弁作用金属からなる円柱状の貫通導体と、
前記貫通導体の周面上にある誘電体層と、
前記誘電体層上にありかつ前記陰極端子と電気的に接続されている陰極側機能層と、
を備え、
前記貫通導体は、当該貫通導体の軸線方向に延びる芯部と、前記芯部の周面を覆いかつ多数の細孔を有する多孔部と、からなり、
前記誘電体層は、前記多孔部の前記細孔の内周面に沿って形成され、
前記貫通導体の前記周面のうち前記陰極端子に接続される部分以外は前記封止材で封止されており、前記芯部の両端面は、当該貫通導体の前記軸線方向に対して垂直な方向に延びる状態で前記封止材から露出しており、前記本体の前記1対の端面の各々上において、前記1対の陽極端子にそれぞれ覆われかつ接触しており
前記陰極端子は、前記陰極側機能層の周面の一部と接する平板状の金属板からなる、
固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記陰極側機能層は、前記多孔部の前記細孔の少なくとも一部を充填している導電性高分子層を備える、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記陰極側機能層と前記陽極端子との間に配置される電気絶縁部材をさらに備える、請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記電気絶縁部材は、前記芯部に接している、請求項3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記電気絶縁部材が前記芯部に接している部分では、前記電気絶縁部材が前記多孔部にある前記細孔を充填している、請求項4に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
前記電気絶縁部材が前記芯部に接している部分では、前記多孔部が存在しない、請求項4に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
前記陽極端子は、めっき膜を含む、請求項1ないし6のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
前記陽極端子は、導電性樹脂膜を含む、請求項1ないし7のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
前記多孔部は、線状の前記貫通導体の周面に形成されたエッチング処理部からなる、請求項1ないし8のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
前記本体は、複数個の前記コンデンサ素子を含み、複数個の前記コンデンサ素子は、前記陽極端子および前記陰極端子を介して並列接続されている、請求項1ないし9のいずれかに記載の固体電解コンデンサ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固体電解コンデンサに関するもので、特に、弁作用金属からなる貫通導体を通して電力供給を行なう3端子タイプの固体電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体電解コンデンサは、デカップリング回路や電源回路において一般的なコンデンサとして用いられるばかりでなく、高周波ノイズを除去するノイズフィルタとしても有利に用いられる。
【0003】
この発明にとって興味ある従来技術として、たとえば国際公開第2005/015588号(特許文献1)に記載されたものがある。特に、特許文献1の図10および図11に記載される固体電解コンデンサが注目される。この固体電解コンデンサについて、添付の図8を参照しながら説明する。
【0004】
図8に示すように、固体電解コンデンサ1は、金属粒子または導電性セラミック粒子からなる弁作用を有する多孔質焼結体2と、多孔質焼結体2を貫通するように設けられ、その両端部が多孔質焼結体2から突出している陽極ワイヤ3と、を備えている。陽極ワイヤ3のうち、多孔質焼結体2から突出する各端部は、断面ほぼC字状に折り曲げられた金属板からなる陽極端子4および5にそれぞれ電気的に接続される。
【0005】
他方、多孔質焼結体2の上下面には、それぞれ、陰極となる導電性樹脂6および7が配置され、さらに、導電性樹脂6および7を介して、金属板からなる陰極プレート8および9が接着される。上方の陰極プレート8と下方の陰極プレート9とは、図示しないが、多孔質焼結体2の側面に沿って配置された導電部材によって互いに電気的に接続されている。多孔質焼結体2の下方に配置された陰極プレート9には、陰極端子10が接続される。陰極端子10は、断面U字状に折り曲げられた金属板から構成される。
【0006】
また、多孔質焼結体2は、封止樹脂11によって覆われる。ここで、上述した陽極端子4および5ならびに陰極端子10の各一部は、外部の実装基板との電気的接続を可能にするため、封止樹脂11から露出するようにされる。
【0007】
このような固体電解コンデンサ1は、ノイズを除去しながら、一方の陽極端子4または5から他方の陽極端子5または4へと電力供給を行なうように用いられる。このとき、固体電解コンデンサ1によれば、ここに入力される電流の大部分は陽極ワイヤ3を通るので、当該固体電解コンデンサ1内での電気的損失を小さくすることができる。また、多孔質焼結体2内を流れる電流が小さいので、多孔質焼結体2内での発熱を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2005/015588号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の固体電解コンデンサ1には、以下のような解決されるべき課題がある。
【0010】
図9は、固体電解コンデンサ1が与える等価回路図である。
【0011】
図9とともに図8を参照して、容量C1は、陽極ワイヤ3と陰極プレート8および9との間に形成される容量であり、抵抗R3およびインダクタンスL4は、それぞれ、陰極プレート8および9から陰極端子10の実装部に至る導電経路において存在する抵抗および寄生インダクタンスである。インダクタンスL1は、主として陽極ワイヤ3によって生じる寄生インダクタンスである。抵抗R1およびインダクタンスL2は、それぞれ、陽極ワイヤ3の一方端から陽極端子4の実装部に至る導電経路において存在する抵抗および寄生インダクタンスである。抵抗R2およびインダクタンスL3は、それぞれ、陽極ワイヤ3の他方端から陽極端子5の実装部に至る導電経路において存在する抵抗および寄生インダクタンスである。
【0012】
このような等価回路図で表わされる固体電解コンデンサ1では、まず、寄生インダクタンスL2およびL3が大きくなってしまう。なぜなら、陽極ワイヤ3の一方端部から陽極端子4の実装部へと延びる導電経路ならびに陽極ワイヤ3の他方端部から陽極端子5の実装部へと延びる導電経路が比較的長く、かつ陽極端子4および5が直線状に延びるのではなく、いくつかの折り曲げ部を有しているためである。
【0013】
上述のように、寄生インダクタンスL2およびL3が大きくなると、固体電解コンデンサ1の高周波数帯でのノイズ除去性能が低下する。
【0014】
また、抵抗R1およびR2が比較的大きくなる。なぜなら、上述したように、陽極ワイヤ3の一方端から陽極端子4の実装部に至る導電経路ならびに陽極ワイヤ3の他方端から陽極端子5の実装部に至る導電経路が比較的長いことに加えて、陽極ワイヤ3の一方端と陽極端子4との接続部ならびに陽極ワイヤ3の他方端と陽極端子5との接続部が、円柱状の陽極ワイヤ3の周面部と陽極端子4および5の各々の平面部とによる線接触に基づいているためである。
【0015】
上述のように、抵抗R1およびR2が大きいと、固体電解コンデンサ1に流し得る電流を小さくしてしまう。
【0016】
また、固体電解コンデンサ1において、陽極端子4および5といった容量形成に寄与しない部材の、全体積に占める割合が比較的高く、体積効率が低い。そのため、小型かつ大容量化が困難である。
【0017】
そこで、この発明の目的は、上述した課題を解決し得る固体電解コンデンサを提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した技術的課題を解決するため、この発明に係る固体電解コンデンサは、互いに対向する1対の端面および端面に隣り合う底面を有する直方体形状の本体と、本体の1対の端面に配置された1対の陽極端子と、本体の底面にある陰極端子と、を備える。
【0019】
上記本体は、樹脂を含む封止材と、封止材に覆われたコンデンサ素子と、を備える。
【0020】
コンデンサ素子は、弁作用金属からなる円柱状の貫通導体と、貫通導体の周面上にある誘電体層と、誘電体層上にありかつ陰極端子と電気的に接続されている陰極側機能層と、を備える。
【0021】
貫通導体は、当該貫通導体の軸線方向に延びる芯部と、芯部の周面を覆いかつ多数の細孔を有する多孔部と、からなる。前述した誘電体層は、多孔部の細孔の内周面に沿って形成される。
【0022】
そして、貫通導体の周面のうち陰極端子に接続される部分以外は封止材で封止されており、芯部の両端面は、当該貫通導体の軸線方向に対して垂直な方向に延びる状態で封止材から露出しており、本体の1対の端面の各々上において、1対の陽極端子にそれぞれ覆われかつ接触していることを第1の特徴としている。
【0023】
このように、本体の1対の端面に1対の陽極端子を配置し、貫通導体の芯部の両端面を、本体の1対の端面の各々上において、1対の陽極端子でそれぞれ覆いかつ1対の陽極端子にそれぞれ接触させているので、陽極端子側の導電経路長を短くすることができる。
【0024】
この発明において、上記陰極側機能層は、固体電解質として、多孔部の細孔の少なくとも一部を充填している導電性高分子層を備えることが好ましい。この構成によれば、陰極側機能層としての導電性高分子層と誘電体層とを広い面積で接触させることができる。
【0025】
また、この発明において、陰極側機能層と陽極端子との間に配置される電気絶縁部材をさらに備えることが好ましい。これによって、陰極側機能層と陽極端子との間での電気的絶縁状態を高い信頼性をもって確保することができる。
【0026】
上述の電気絶縁部材は、芯部に接していることがより好ましい。この構成によれば、陽極端子を形成するため、たとえば湿式めっきが適用される場合、めっき液が多孔部に浸透しかつ残留するといった不都合を生じにくくすることができる。なお、上述した構成において、電気絶縁部材が芯部に接している部分では、電気絶縁部材が多孔部にある細孔を充填している状態にある場合と、多孔部が存在しない場合とがある。
【0027】
貫通導体は、前述のように、芯部の周面が多孔部で覆われている形態を有する円柱状である。円柱状とは、楕円柱状や扁平柱状、角柱の稜線部分がアール面取りされた形状を含む。貫通導体が円柱状であると、その周面には、角が存在しない。そのため、導電性高分子層のような陰極側機能層の形成性を優れたものとすることができ、よって、陰極側機能層を介して配置される陽極側の要素と陰極側の要素との不所望な接触を生じにくくすることができる。
【0028】
周面に角が存在すると、たとえば、その角の一部が覆えず貫通導体が露出してコンデンサの不良を発生させやすくなる、また、覆えている場合でも、その形成厚みは角部で薄くなり平坦部は厚くなり、均一性に乏しくなりやすいため、コンデンサ素子が厚くなり、結果、コンデンサの低背化が困難になる。つまり、陰極側機能層の形成性が優れるとは、陰極側機能層を構成する各要素の厚みが均一性に優れることを意味する。したがって、貫通導体はその周面に角を有さないことが好ましい。ここで角とは、鋭角ないし鈍角のように丸みを帯びていない部分をいう。
【0029】
また、樹脂を含む封止材を成形する際、貫通導体に加わる外部ストレスは、貫通導体が円柱状であるため、有利に分散される。したがって、封止材の成形時において、貫通導体が損傷するといった事態を有利に避けることができる。
【0030】
また、貫通導体が円柱状であると、封止材の充填性に優れている。したがって、封止材によるパッケージ効果が高いため、水分や空気の遮断性が高く、耐湿性や耐熱性に優れた固体電解コンデンサを得ることができる。
【0031】
また、貫通導体が円柱状であると、その円周面全域を容量出現部として利用することができるので、たとえばアルミニウム箔のような金属箔の場合に比べて、容量出現部の面積を約1.5倍に広げることができる。
【0032】
陽極端子は、好ましくは、めっき膜もしくは導電性樹脂膜、またはこれら両方を含む。
【0033】
多孔部は、好ましくは、線状の貫通導体の周面に形成されたエッチング処理部からなる。すなわち、貫通導体は、芯部が残るように、金属線の表面をエッチングすることによって得られる。この構成によれば、芯部と多孔部との導通を確保しながら、陽極としての芯部の断面積比率を任意かつ容易に調節することができる。断面積における芯部と多孔部との合計に対する芯部の比率(つまり、断面積比率)を調節することによって、容量の大小、陽極端子との接触度合いを調節することができる。たとえば、この比率が大きければ、陽極端子との芯部の接触面が大きくなる。すなわち、電気的接続部分での抵抗が低く、たとえば大電流を流すことに対して有利に作用する。また、芯部とめっき膜の密着面積についても、これをより確保できるため、たとえば長期の耐久性に有利に作用する。これらは一例の説明に過ぎないが、さまざまな要求に応じて、芯部の断面積比率を任意に調節して用いることが好ましい。
【0034】
一方、特許文献1に記載のような多孔質焼結体の場合には、焼結部とワイヤとの導通を確保するために、粒子/粒子間および粒子/ワイヤ間のネッキング技術が不可欠であり、製造プロセスが複雑になる。
【0035】
この発明に係る固体電解コンデンサにおいて、より低いESR(等価直列抵抗)およびより大きい容量を望むなら、本体は、複数個のコンデンサ素子を含むことが好ましい。この場合、複数個のコンデンサ素子は、陽極端子および陰極端子を介して並列接続される。
【0036】
この発明は、陰極端子陰極側機能層の周面の一部と接する平板状の金属板からなることを第2の特徴としている。金属板は、プリント基板や樹脂板に比べて、放熱性に優れている。また、プリント基板に比べて、コンデンサ素子と実装側端子とを配線するためのスルーホール導体やビア導体を形成する必要がなく、金属板はその表面すべてにおいて導電経路を与えるものであるため、導電経路長を短くすることができる。また、金属板は薄くても、強度の点でも優れていて、固体電解コンデンサの低背化にとって有利である。また、プリント基板に比べて、金属板は安価であり、固体電解コンデンサの低コスト化にとって有利である。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、本体の1対の端面に1対の陽極端子を配置し、貫通導体における芯部の両端面を、1対の陽極端子でそれぞれ覆いかつ1対の陽極端子にそれぞれ接触させているので、陽極端子側の導電経路長を短くすることができる。したがって、陽極端子側の導電経路において生じる寄生インダクタンスを小さくすることができ、固体電解コンデンサの高周波数帯でのノイズ除去性能を高めることができる。
【0038】
また、上述のように、この発明によれば、貫通導体の芯部の両端面を、1対の陽極端子でそれぞれ覆いかつ1対の陽極端子にそれぞれ接触させているので、この接触が比較的広い面同士の面接触となり得る。したがって、貫通導体の芯部と陽極端子との電気的接続部分での抵抗を低く抑えることができる。そのため、固体電解コンデンサに大電流を流すことができる。
【0039】
また、この発明によれば、容量形成に寄与しない陽極端子は、本体の端面に配置され、この陽極端子に貫通導体の芯部の端面が直接接触する構成となっているので、容量形成に寄与しない部材の、全体積に占める割合が比較的低く、体積効率が高い。そのため、小型かつ大容量化に適している。また、容量に起因する周波数帯におけるノイズ除去性能を高めることができる。したがって、この発明によれば、寄生インダクタンスに起因する高周波数帯および容量に起因する周波数帯を含む広い周波数帯域で、ノイズ除去性能を高めることができる。
【0040】
また、この発明によれば、特許文献1に記載されかつ図8に示した固体電解コンデンサ1における、多孔質焼結体2および陽極ワイヤ3の2点の部品の機能を、芯部と多孔部とを有する貫通導体という1点の部品によって担わせることができるので、部品点数の削減およびそれによる低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】この発明の第1の実施形態による固体電解コンデンサ21の外観を示す斜視図である。
図2図1の線II−IIに沿う断面図である。
図3図1に示した固体電解コンデンサ21の底面図である。
図4図2の線IV−IVに沿う断面図である。
図5図2の部分Vを拡大して模式的に示す断面図である。
図6】この発明の第2の実施形態を説明するためのもので、図2の部分VIを拡大して模式的に示す断面図である。
図7】この発明の第3の実施形態による固体電解コンデンサ21aを示す正面図中央横断面図である。
図8】特許文献1に記載された固体電解コンデンサ1を示す平面図中央横断面図である。
図9図8に示した固体電解コンデンサ1の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1ないし図5を参照して、この発明の第1の実施形態による固体電解コンデンサ21について説明する。
【0043】
固体電解コンデンサ21は、互いに対向する1対の端面22および23、ならびに端面22および23に隣り合う底面24を有する直方体形状の本体25と、本体25の1対の端面22および23に配置された1対の陽極端子26および27と、本体25の底面24にある陰極端子28と、を備える。
【0044】
上記本体25は、樹脂を含む封止材29と、封止材29に覆われたコンデンサ素子30と、を備える。
【0045】
コンデンサ素子30は、弁作用金属からなる線状の貫通導体31を備える。貫通導体31を構成する弁作用金属として、たとえば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、またはこれらの少なくとも1種を含む合金が用いられる。貫通導体31は、この実施形態では、円柱状である。安価で入手が容易な点で、好ましくは、貫通導体31として、アルミニウムワイヤが用いられる。
【0046】
貫通導体31は、当該貫通導体31の軸線方向に延びる芯部32と、芯部32の周面を覆いかつ多数の細孔を有する多孔部33と、からなる。多孔部33は、たとえば、アルミニウムワイヤからなる貫通導体31の周面にエッチング処理を施し、それによって周面が粗面化されることにより形成される。多孔部33には、図5に模式的に示すように、外方に向く開口を有する多数の細孔34が形成されている。なお、図2および図4では、多孔部33は、太い点線で挟まれた、網掛けを施した領域をもって示されている。
【0047】
また、コンデンサ素子30は、図5に示すように、貫通導体31上にある誘電体層35を備える。誘電体層35は、たとえば、多孔部33が形成された貫通導体31の表面を酸化することによって形成される。図5において、誘電体層35は太線で示されている。誘電体層35は、多孔部33の細孔34の内周面に沿って形成されている。
【0048】
コンデンサ素子30は、さらに、誘電体層35上にある陰極側機能層36を備えている。陰極側機能層36は、固体電解質としての導電性高分子層37、その上のカーボン層38およびその上の銀層39を備える。導電性高分子層37は、図5に示されるように、多孔部33の細孔34の少なくとも一部を充填するように設けられる。これによって、導電性高分子層37と誘電体層35とを広い面積で接触させることができる。なお、陰極側機能層36のうちカーボン層38と銀層39とは、コンデンサ素子30の陰極層として機能する。つまり、陰極側機能層36は、導電性高分子層37と、導電性高分子層37上の陰極層とを含む。陰極層は、導電性を有する層であればよい。本実施形態では、陰極層はカーボン層38と銀層39の複数層としているが、陰極層は、銀層39だけで構成されていてもよい。
【0049】
陰極側機能層36、より特定的には、銀層39は、たとえば導電性接着剤40(図4参照)を介して陰極端子28と電気的に接続される。陰極端子28は、金属板から構成され、陰極側機能層36の周面の一部と接している
【0050】
貫通導体31の周面のうち陰極端子28に接続される部分以外は封止材29で封止されている。芯部32の両端面は、当該貫通導体31の軸線方向に対して垂直な方向に延びる状態で封止材29から露出しており、本体25の1対の端面22および23の各々上において、1対の陽極端子26および27にそれぞれ覆われかつ接触している。陽極端子26および27は、図2に示すように、貫通導体31の芯部32の端面上に形成された、たとえばニッケル、亜鉛、銅、錫、金、銀、パラジウムまたは鉛などの金属、あるいはこれら金属の少なくとも1種を含有する合金を含むめっき膜、もしくはたとえば銀、銅、ニッケル、錫およびパラジウムの少なくとも1種を導電成分として含む導電性樹脂膜から構成される。あるいは、陽極端子26および27は、めっき膜と導電性樹脂膜とを含む多層構造とされてもよい。たとえば、陽極端子26および27は、2層のめっき層とこれらめっき層の間にある導電性樹脂層とを備えていてもよい。
【0051】
なお、陽極端子26および27に対して、たとえば金属片や金属リード材などを接触させて、レーザ溶接、抵抗溶接、超音波溶接などで接続することは、機械的ダメージや接触ばらつきなどに起因する不良発生の一要因となるため、好ましい形態ではない。
【0052】
陰極側機能層36と陽極端子26および27との間に、電気絶縁性樹脂からなる電気絶縁部材43が配置される。これによって、陰極側機能層36と陽極端子26および27との間での電気的絶縁状態を確実に実現することができる。この実施形態では、貫通導体31の両端部において、多孔部33が除去され、芯部32がむき出しの状態とされた上で、芯部32に接するように、電気絶縁部材43が設けられる。すなわち、電気絶縁部材43内には、多孔部33が存在していない。
【0053】
なお、この発明の第2の実施形態として、図6に示すように、電気絶縁部材43が芯部32に接している部分では、電気絶縁部材43が多孔部33にある細孔34を充填するように設けられてもよい。すなわち、電気絶縁部材43内に、多孔部33が存在している。
【0054】
上述した2つの場合のいずれであっても、電気絶縁部材43は、芯部32に接している。この構成によれば、陽極端子26および27を形成するため、たとえば湿式めっきが適用される場合、めっき液が多孔部33に浸透しかつ残留するといった不都合を生じにくくすることができる。
【0055】
封止材29は、樹脂を含む。封止材29は樹脂に加えて、アルミナやシリカ等のフィラーや、磁性材料を含んでいてもよい。封止材29が上記フィラーを含むことによって、封止材29の機械的強度や加工性を調節することができる。また、所望の線膨張係数を有するフィラーを選択することによって、熱収縮性を調節することができる。封止材29が磁性材料を含むと、コンデンサのインピーダンスを意図的に高めることができる。たとえば、インピーダンスの低いコンデンサを複数並列実装して用いる場合に反共振が発生する可能性がある。このとき、封止材が磁性材料を含むと、反共振を抑制することができる。磁性材料としては、たとえば、鉄の粉、鉄を含む合金の粉、あるいは、フェライトの粉などの磁性粉が用いられる。磁性材料は、異なる粒径の、あるいは、異なる組成の2種以上の粉の混合物であってもよい。このように、要求機能に応じて、所望のフィラーや磁性材料を選択して用いることが好ましい。
【0056】
以上説明した固体電解コンデンサ21によれば、本体25の1対の端面22および23に1対の陽極端子26および27を配置し、貫通導体31における芯部32の両端面を、1対の陽極端子26および27でそれぞれ覆いかつ1対の陽極端子26および27にそれぞれ接触させているので、陽極端子26および27側の導電経路長を短くすることができる。したがって、図9の等価回路において、陽極端子4および5側の導電経路において生じる寄生インダクタンスL2およびL3に相当する寄生インダクタンスを小さくすることができ、固体電解コンデンサ21の高周波数帯(ωL)でのノイズ除去性能を高めることができる。
【0057】
そして、容量形成に寄与しない陽極端子26および27は、本体25の端面22および23に配置され、この陽極端子26および27に貫通導体31の芯部32の端面が直接接触する構成となっているので、容量形成に寄与しない部材の、全体積に占める割合が比較的低く、体積効率が高い。そのため、小型かつ大容量化に適している。したがって、容量に起因する周波数帯(1/ωC)においても高いノイズ除去性能を発揮することができる。
【0058】
したがって、以上説明した固体電解コンデンサ21によれば、インダクタンスに起因する高周波数帯および容量に起因する周波数帯を含む広い周波数帯域で、高いノイズ除去性能を発揮することができる。
【0059】
また、貫通導体31の芯部32の両端面を、1対の陽極端子26および27にそれぞれ比較的広い面同士で面接触させているので、貫通導体31の芯部32と陽極端子26および27との電気的接続部分での抵抗、すなわち、図9に示した抵抗R1およびR2に相当する抵抗を低く抑えることができる。そのため、固体電解コンデンサ21に大電流を流すことができる。
【0060】
また、陰極端子28は、図8に示した陰極端子10の場合とは異なり、金属板の折り曲げによるものではないので、陰極端子28側の導電経路において発生する図9に示した寄生インダクタンスL4に相当する寄生インダクタンスを小さくすることができる。
【0061】
上述した固体電解コンデンサ21は、たとえば、以下のようにして製造される。
【0062】
貫通導体31として、エッチング処理が施されることによって多孔部33が形成され、さらに、陽極酸化によって形成された誘電体層35を備えた、たとえば直径0.8mm、長さ2.0mmの円柱状のアルミニウム線を用意する。ここで、一例として、当該貫通導体31に形成されている誘電体層35の耐電圧を測定するため、常温下、アジピン酸アンモニウム水溶液中で定電流0.35mA/cmを180秒通電したところ、60Vの耐電圧が認められた。この貫通導体31において、多孔部33の厚みは、たとえば0.05mmである。
【0063】
この貫通導体31の断面直径は0.8mm、芯部32の直径は0.7mmであり、残りが多孔部33である。したがって、芯部32が多孔部33に対して占める直径比は、0.7/0.1=7.0である。
【0064】
次に、上記アルミニウム線からなる貫通導体31の両端部のまわりに電気絶縁性の樹脂を塗布して乾燥して、たとえば0.05mmの厚みの電気絶縁部材43を形成する。この電気絶縁部材43は、多孔部33にある細孔34を充填する状態となっている。なお、電気絶縁性の樹脂を塗布する前に、多孔部33を除去しておいてもよい。
【0065】
次に、貫通導体31の周面上の、電気絶縁部材43が配置された部分以外の部分に、固体電解質としての導電性高分子層37を形成した後、陰極としてカーボン層38、銀層39を形成する。導電性高分子層37は、高分子の前駆体である単量体と、ドーパントおよび酸化剤とからなる反応溶液を交互に塗布し重合反応させる化学酸化重合や、反応溶液内で電気化学的な重合反応を行なう電解重合や、予め導電性が発現している導電性高分子が任意の溶媒中に溶解ないし分散している溶液を塗布して行なう方法などによって形成することができる。
【0066】
一例として、陰極側機能層36の形成のため、固体電解質としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が分散した導電性高分子溶液を多孔部33に浸透させながら塗布し乾燥して導電性高分子層37を形成し、次いでカーボンペーストを塗布して乾燥した後、銀ペーストを塗布して乾燥して、カーボン層38および銀層39を順次形成した。ここで、導電性高分子層37の、多孔部33上での厚みはたとえば0.01mm、ならびにカーボン層38および銀層39の各厚みもたとえば0.01mmであった。
【0067】
このようにして得られたコンデンサ素子30を、LCRメーターを用いて、120Hzの容量を測定した結果、1.0μFであった。次いで、当該素子30に25Vの電圧を1分間印加して漏れ電流を測定した結果、2.1nAであった。漏れ電流は極めて小さく良好であった(CV換算すると、約0.0001CVに相当)。
【0068】
上述した工程において、貫通導体31が円柱状であるので、導電性高分子層37、カーボン層38および銀層39の形成性が良好である。また、貫通導体31が円柱状であると、その円周面全域を容量出現部として利用することができる。
【0069】
次に、貫通導体31上の陰極側機能層36を、たとえば厚み0.1mm、幅1.2mmの陰極端子28となる金属板に導電性接着剤40で接着し、次いで、陰極端子28の外側に向く面および貫通導体31の両端面が露出するように樹脂を成形して封止材29を形成する。貫通導体31の両端面の露出は、研磨加工によるよりもダイシング加工による方が好ましい。より一様な露出面を得ることができ、陽極端子26および27の形成において良好な接触を得ることができるためである。
【0070】
この封止材29の成形時において、貫通導体31が円柱状であるので、貫通導体31に加わる外部ストレスは有利に分散され、貫通導体31が損傷するといった事態を有利に避けることができる。損傷によって、たとえば漏れ電流が増加するなどの不具合が発生する。また、貫通導体31が円柱状であるので、封止材29の充填性に優れており、たとえばコンデンサ素子30と封止材29との間に隙間が発生しがたく、封止材29による高いパッケージ効果を得ることができる。
【0071】
次に、封止材29から露出する貫通導体31の両端面に接続されるように、陽極端子26および27を形成する。陽極端子26および27の形成のため、たとえば、めっき膜が形成され、次いで導電性樹脂膜がたとえば0.01mmの厚みをもって形成される。あるいは、陽極端子26および27の形成のため、めっき膜のみが形成されることも、導電性樹脂膜のみが形成されることもある。
【0072】
以上のようにして、外形寸法がたとえば2.02mm(長手方向寸法)×1.22mm(幅方向寸法)×1.22mm(高さ方向寸法)の固体電解コンデンサ21が完成される。一例として、このようにして得られた固体電解コンデンサ21を、LCRメーターを用いて、120Hzの容量を測定した結果、1.0μFであった。次いで、当該コンデンサに25Vの電圧を1分間印加して漏れ電流を測定した結果、2.0nAであった。漏れ電流の増加は認められず良好であった。
【0073】
次に、図7を参照して、この発明の第3の実施形態による固体電解コンデンサ21aについて説明する。図7は正面図中央横断面図であるが、図7において、図2に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0074】
図7に示した固体電解コンデンサ21aは、その本体25において、複数個の、たとえば2個のコンデンサ素子30を含むことを特徴としている。2個のコンデンサ素子30は、横に並べられた状態で、封止材29によって覆われている。
【0075】
陽極端子26および27は、2個のコンデンサ素子30の各々における貫通導体31の芯部32を互いに電気的に接続するように、本体25の端面22および23に形成される。
【0076】
他方、陰極端子28は、図7では点線で示されているが、2個のコンデンサ素子30の各々における陰極側機能層36に含まれる銀層39を互いに電気的に接続するように、本体25の底面に沿って設けられる。
【0077】
このようにして、2個のコンデンサ素子30は、陽極端子26および27ならびに陰極端子28を介して並列接続される。これによって、固体電解コンデンサ21aによれば、前述の固体電解コンデンサ21に比べて、より低いESRおよびより大きい容量を実現することができる。
【0078】
以上、この発明を図示した実施形態に関連して説明したが、これらの実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【符号の説明】
【0079】
21,21a 固体電解コンデンサ
22,23 端面
24 底面
25 本体
26,27 陽極端子
28 陰極端子
29 封止材
30 コンデンサ素子
31 貫通導体
32 芯部
33 多孔部
34 細孔
35 誘電体層
36 陰極側機能層
37 導電性高分子層
38 カーボン層
39 銀層
43 電気絶縁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9