特許第6925612号(P6925612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6925612
(24)【登録日】2021年8月6日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】気体置換ユニット
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20210812BHJP
   B01F 1/00 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   B01D19/00 F
   B01D19/00 B
   B01F1/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-103568(P2017-103568)
(22)【出願日】2017年5月25日
(65)【公開番号】特開2018-199092(P2018-199092A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】501302083
【氏名又は名称】株式会社大栄製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】小林 一吉
(72)【発明者】
【氏名】森田 英夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紀仁
【審査官】 青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−301305(JP,A)
【文献】 特開昭62−186984(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/023977(WO,A1)
【文献】 特開2009−061379(JP,A)
【文献】 特開2004−105817(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00645168(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00−19/04
B01F 1/00− 5/26
C02F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が貯留される領域に一端が接続される配管として形成される第1配管と、吸引口および吐出口を有すると共に、その吸引口に前記第1配管の他端が接続されるポンプと、そのポンプの吐出口に一端が接続される配管として形成される第2配管と、その第2配管の他端が接続されて前記原水が流入されると共に、前記原水に溶解される気体を置換して溶解水を生成するための気体置換装置と、その気体置換装置に接続されると共に、前記気体置換装置から送出される前記溶解水を消泡するための消泡装置と、その消泡装置に一端が接続される配管として形成されると共に、前記消泡装置から気体を回収して前記気体置換装置に返送するための第3配管と、を備える気体置換ユニットにおいて、
吸引口および吐出口を有すると共に、気体を圧縮するための圧縮機として形成されるコンプレッサと、
前記第2配管に接続されると共に、前記ポンプの脈動を緩衝する緩衝装置として形成されるエアチャンバーと、
一端が前記コンプレッサの吐出口に接続されると共に、他端が前記エアチャンバーに接続される第4配管と、を備え、
前記第3配管は、その他端が前記コンプレッサの吸引口に接続されることを特徴とする気体置換ユニット。
【請求項2】
前記消泡装置は、その内部の天井面の断面形状が鉛直方向上側に突出する凸形状に形成され、
前記第3配管は、その一端が前記天井面の突出先端部に接続されることを特徴とする請求項1記載の気体置換ユニット。
【請求項3】
前記消泡装置の内部の水位を検知する水位センサと、
前記第3配管に配設されると共に、その第3配管の連通状態を開閉する弁として形成される開閉弁と、
前記水位センサで所定の閾値よりも高い水位が検知された場合に、前記開閉弁を閉じることで前記第3配管を閉塞状態にする閉塞手段と、を備えることを特徴とする請求項記載の気体置換ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体置換ユニットに関し、特に、消泡装置から回収した気体を効率よく再利用することができる気体置換ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
原水(例えば、水や海水)に溶解される気体を置換(例えば、窒素から酸素に置換)することで溶解水を生成する気体置換装置と、その気体置換装置から送出される溶解水を消泡する(溶解水に含有される気泡を除去し、回収する)ための消泡装置とを備える気体置換ユニットが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、原水を蓄える原水タンクと、その原水タンクから原水が供給されると共に、その原水に溶解される気体を酸素に置換して溶解水(酸素が溶解された溶解水)を生成する酸素溶解装置と、その酸素溶解装置から送出される溶解水を消泡するためのサイクロン式消泡装置とを備え、サイクロン式消泡装置と原水タンクとがエアレーション配管によって接続される気体置換ユニットが開示される。
【0004】
この気体置換ユニットによれば、サイクロン式消泡装置から回収された酸素がエアレーション配管を介して原水タンクに返送される。その原水タンクに返送された酸素がエアレーションによって原水に溶解されるので、サイクロン式消泡装置で回収した酸素を再利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−188458号公報(例えば、段落0028、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、消泡装置から回収された気体がエアレーションによって原水に溶解され、その原水が気体置換装置に供給される。即ち、原水に溶解されない気体は、原水タンクに留まるか、若しくは、原水タンクから外部へ排出されるので、気体置換装置には返送されない。よって、消泡装置から回収した気体を効率よく再利用することができないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、消泡装置から回収した気体を効率よく再利用することができる気体置換ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
請求項1記載の気体置換ユニットによれば、吸引口および吐出口を有すると共に、気体を圧縮するための圧縮機として形成されるコンプレッサと、第2配管に接続されると共に、ポンプの脈動を緩衝する緩衝装置として形成されるエアチャンバーと、一端がコンプレッサの吐出口に接続されると共に、他端がエアチャンバーに接続される第4配管と、を備え、第3配管は、その他端がコンプレッサの吸引口に接続されるので、消泡装置から回収された気体が第3配管、コンプレッサ及び第4配管を介してエアチャンバーに供給される。即ち、消泡装置から回収された気体がコンプレッサによってエアチャンバー内に加圧された状態で充填されるので、かかる気体はエアチャンバー内の原水(第2配管を流れる原水)に徐々に溶解する。これにより、消泡装置から回収された気体が気体置換装置に返送されるので、消泡装置から回収した気体を効率よく再利用することができるという効果がある。また、消泡装置で収集された気体をエアチャンバーにおける圧縮気体として利用しつつ、エアチャンバー内の原水に溶解させて気体置換装置に供給することができるという効果がある。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
請求項記載の気体置換ユニットによれば、請求項1記載の気体置換ユニットの奏する効果に加え、消泡装置は、その内部の天井面の断面形状が鉛直方向上側に突出する凸形状に形成され、第3配管は、その一端が天井面の突出先端部に接続されるので、消泡装置の内部に貯留される溶解水が第3配管を介してコンプレッサに吸引されることを抑制できる。よって、気体置換装置によって生成された溶解水が再度気体置換装置に返送されることを抑制できるので、気体置換装置での溶解水の生成(原水に対する置換処理)を効率よく行うことができるという効果がある。
【0013】
請求項記載の気体置換ユニットによれば、請求項記載の気体置換ユニットの奏する効果に加え、消泡装置の内部の水位を検知する水位センサと、第3配管に配設されると共に、その第3配管の連通状態を開閉する弁として形成される開閉弁と、水位センサで所定の閾値よりも高い水位が検知された場合に、開閉弁を閉じることで第3配管を閉塞状態にする閉塞手段と、を備えるので、消泡装置の内部に貯留される溶解水が第3配管を介してコンプレッサに吸引されることをより確実に抑制できる。よって、気体置換装置によって生成された溶解水が再度気体置換装置に返送されることをより確実に抑制できるので、気体置換装置での溶解水の生成(原水に対する置換処理)をより効率よく行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の参考例における気体置換ユニットの正面図である。
図2】(a)は、消泡装置の断面図であり、(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における消泡装置の断面図である。
図3】気体置換ユニットの部分拡大断面図である。
図4】電磁弁制御処理を示すフローチャートである。
図5本発明の一実施の形態における気体置換ユニットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の参考例における気体置換ユニット1の全体構成について説明する。図1は、本発明の参考例における気体置換ユニット1の正面図である。なお、図1では、図面を簡素化するために、気体置換ユニット1が模式的に図示される。
【0016】
図1に示すように、気体置換ユニット1は、一端が被浄化水域(原水タンク)(図示せず)に接続されると共に、その被浄化水域から原水(汚濁水)を取水するための取水管10と、その取水管10の他端に接続されるポンプ20と、そのポンプ20に一端が接続される流入管30と、その流入管30の他端に接続されると共に、ポンプ20によって取水された原水から溶解水を生成するための気体置換装置40と、その気体置換装置40に接続されると共に、気体置換装置40から送出される溶解水を消泡するための消泡装置50と、その消泡装置50に一端が接続されると共に、他端が取水管10に接続される返送管60と、を備える。
【0017】
取水管10は、被浄化水域(原水タンク)とポンプ20とを接続するための配管である。ポンプ20は、原水を吸引するための吸引口21と、その原水を吐出するための吐出口22とを備え、圧力の作用によって液体(又は気体)を圧送するための揚水ポンプである。
【0018】
流入管30は、ポンプ20によって圧送される原水を気体置換装置40に流入させるための配管であり、その他端が気体置換装置40の上部(図1の上側)に接続される。
【0019】
気体置換装置40は、ステンレス鋼材や硬質合成樹脂(例えば、FRPなど)などの耐腐食性を有する材料で形成され、且つ、その内部の圧力を大気圧以上に加圧しても破損することのない耐圧性を有する容器体を内部に備える。
【0020】
気体置換装置40の上部(図1の上側)には、酸素供給源から容器体の内部へ酸素を供給するための酸素供給管41と、容器体の内部の気体を排気するための排気管42とが接続される。
【0021】
酸素供給管41及び排気管42には、電磁弁から構成される酸素供給弁41a及び排気弁42aがそれぞれ設けられ、これら酸素供給弁41a及び排気弁42aの開閉動作は、気体置換装置40に配設される制御装置43によって制御される。
【0022】
排気弁42aを閉じた状態で酸素供給弁41aの開度を調整することで容器体内へ酸素が供給され、酸素供給弁41aを閉じた状態で排気弁42aを開放することで、気体置換装置40による置換処理に伴って生じた気体(本参考例では、窒素)が外部へ排出される。
【0023】
気体置換装置40は、例えば、河川や湖沼などの被浄化水域から取水した原水に溶解される気体を置換(本参考例では、窒素から酸素に置換)して、得られた溶解水(酸素が溶解された酸素溶解水)を再び被浄化水域へ供給(流出、送水)するための装置である。この気体置換装置40の容器体内には、酸素が加圧(本参考例では、0.05MPa)された状態で充填され、容器体内に流入される原水が酸素に接触することで、原水に溶解される窒素が酸素に置換される。
【0024】
気体置換装置40によって処理された溶解水を被浄化水域へ供給した場合、該被浄化水域における溶存酸素(DO)量が増加し、該被浄化水域における微生物が活性化される。その結果、該被浄化水域における有機物の分解が促進されて、該被浄化水域の水質を向上させることができる。
【0025】
気体置換装置40の下部側面(図1の下側の側面)には、気体置換装置40(容器体)の内部と外部とを連通する送出管44の一端が接続される。この送出管44は、気体置換装置40と消泡装置50とを接続するための配管であり、その他端が消泡装置50の下部側面に接続される。
【0026】
消泡装置50は、気体置換装置40で生成された溶解水の気泡(酸素)を除去するための装置であり、その内部の圧力が大気圧と同一に(気体置換装置40の内部の圧力よりも低く)設定される。
【0027】
ここで、気体置換装置40では、酸素が加圧された状態で原水に溶解されることで溶解水が生成されるため、溶解水が大気圧の状態に戻されると、溶解水に溶解されていた酸素が気泡として放出される(例えば、30ppmの濃度であった酸素が20ppmに減少し、その差分の10ppmの酸素が気泡として放出される)ことがある。特に、気体置換装置40の処理能力(原水への酸素の溶解効率)が高い場合に、溶解水から気泡として放出される酸素の量が多くなる。この酸素の気泡が消泡装置50によって収集される。
【0028】
次いで、図2を参照して、消泡装置50の詳細構成について説明する。図2(a)は、消泡装置50の断面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における消泡装置50の断面図である。なお、図2(a)の矢印A〜Cは、消泡装置50内における溶解水の移動経路をそれぞれ表している。また、図2(b)では、制御装置55の図示を省略している。
【0029】
図2に示すように、消泡装置50は、横断面が円形の筒状の容器であり、その容器内の天井を形成する天井面51と、その天井面51と鉛直方向(図2(a)の上下方向)で所定間隔を隔てて配設される隔壁52と、その隔壁52を挟んで送出管44と対向配置され、消泡装置50の下部側面に接続される配管として形成される流出管53と、消泡装置50の内部の水位を検知するための水位センサ54と、その水位センサ54の水位に基づいて電磁弁61を制御するための制御装置55とを備える。
【0030】
消泡装置50の内部空間の高さ寸法(消泡装置50の内部の底面と天井面51の頂点との離間寸法)は、1100mmに設定され、天井面51と隔壁52の上端との離間寸法は、200mmに設定される。
【0031】
天井面51は、その断面が消泡装置50の鉛直方向上側に突出する湾曲形状に(即ち、半球状の天井面として)形成され、その頂点部分に返送管60が接続される。この返送管60は、天井面51側に収集された酸素の気泡を回収するための配管である。
【0032】
隔壁52は、消泡装置50の底面から天井面51側に延設される平板状の壁であり、この隔壁52によって、消泡装置50の内部領域における送出管44が配設される側の領域と、流出管53が配設される側の領域とが分断される。
【0033】
よって、送出管44から消泡装置50の内部に流入される溶解水は、消泡装置50の内部領域における送出管44側の領域を隔壁52に沿って上昇し(移動経路A)、その溶解水に混入される酸素の気泡も同様に(溶解水の流れに沿って)天井面51側に上昇する。
【0034】
天井面51に接続される返送管60の連通状態は、返送管60に配設される電磁弁61によって開放または閉塞され、この電磁弁61の開閉動作は、消泡装置50に配設される制御装置55によって制御される。返送管60の連通状態が開放されている場合に、返送管60によって消泡装置50の内部に収集された気泡が回収される。この場合、返送管60の一端が消泡装置50に接続されると共に、他端が取水管10(ポンプ20の吸引口21側)に接続されるので(図1参照)、消泡装置50で収集された酸素の気泡は、返送管60を介してポンプ20の吸引力によって吸引され、流入管30に吐出(圧送)される。
【0035】
即ち、消泡装置50から返送管60を介して回収される酸素の気泡は、ポンプ20によって気体置換装置40に直接返送されるので、消泡装置50から回収した酸素の全てを気体置換装置40に供給することができる。よって、消泡装置50から回収した酸素を効率よく再利用することができる。
【0036】
ここで、例えば、返送管60を流入管30に直接接続すると、ポンプ20によって圧送される原水が返送管60に流入し、消泡装置50側に逆流する。即ち、返送管60を流入管30に直接接続して酸素を供給するためには、酸素を加圧して返送管60から流入管30に供給する必要があるので、酸素を加圧するための装置(例えば、コンプレッサ)が別途必要となる。
【0037】
これに対して、本参考例の気体置換ユニット1によれば、返送管60が取水管10に接続されるので、消泡装置50から回収した酸素をポンプ20によって気体置換装置40に返送することができる。よって、例えば、返送管60を流入管30に接続する場合に比べ、酸素を加圧して流入管30に供給するための装置を省略できるので、気体置換ユニット1の製品コストを低減できる。
【0038】
ここで、図3を参照して、取水管10と返送管60との接続部分について説明する。図3は、取水管10と返送管60との接続部分を示す気体置換ユニット1の部分拡大断面図である。なお、図3では、ポンプ20の内部構造の図示を省略し、その断面がハッチングによって図示される。また、図3の矢印Dは、返送管60から排出される酸素の移動経路を表している。
【0039】
図3に示すように、返送管60は、取水管10の側面に貫通する態様で取水管10の内部に挿入される。この取水管10に挿入される返送管60の端部(他端)は、ポンプ20の圧送方向(図3の右側)に屈曲して形成され、その端部の開口62がポンプ20の吸引口21側に向けられた姿勢で配設される。これにより、返送管60の開口62からポンプ20の吸引口21に向けて酸素が排出されるので(移動経路D)、返送管60から排出される酸素をポンプ20に吸引させやすくすることができる。
【0040】
即ち、例えば、返送管60の開口62がポンプ20の圧送方向とは逆向き(図3の左側)に向く姿勢で屈曲される構成や、返送管60の開口62がポンプ20の圧送方向とは垂直な方向(図3の上側または下側)に向く姿勢で配設される構成(返送管60が屈曲することなく、取水管10の外周面を貫通する構成)の場合、取水管10を流れる原水が返送管60を逆流し、ポンプ20による気体置換装置40への酸素の圧送が阻害される恐れがある。
【0041】
これに対して、本参考例の気体置換ユニット1によれば、返送管60の開口62がポンプ20の圧送方向に向く姿勢で配設されるので、取水管10を流れる原水が返送管60を逆流することを抑制できる。よって、消泡装置50から回収した酸素をポンプ20によって確実に気体置換装置40に圧送することができる。
【0042】
ここで、請求項1における「第3配管(返送管60)は、その他端が第1配管(取水管10)に接続される」とは、少なくとも返送管60(第3配管)から排出される酸素(気体)が直接ポンプ20によって吸引されることを要件とするものであり、返送管60から排出される酸素が直接ポンプ20によって吸引される構成であれば、本参考例のように返送管60がポンプ20の吸引口21から離間して配設される構成でも良いし、返送管60がポンプ20の吸引口21に直接接続される構成でも良い。
【0043】
図2に戻って説明する。上述した通り、消泡装置50の内部領域は隔壁52によって分断され、その送出管44側の領域を溶解水が隔壁52に沿って上昇し(移動経路A)、酸素の気泡も同様に(溶解水の流れに沿って)天井面51側に上昇する。よって、酸素の気泡を天井面51側に移動させやすくすることができるので、天井面51に接続される返送管60から酸素の気泡を効率よく回収することができる。
【0044】
この場合、消泡装置50の内部空間の高さ寸法が1100mmに設定され、天井面51と隔壁52の上端との離間寸法が200mmに設定される。即ち、消泡装置50の内部空間の鉛直方向における中心よりも上方に隔壁52の上端が位置するので、消泡装置50の内部を上昇する溶解水の流れを天井面51に近接した位置まで形成することができる。よって、溶解水に混入される酸素の気泡をより確実に天井面51側に案内することができるので、天井面51に接続される返送管60から酸素の気泡を効率よく回収することができる。
【0045】
また、天井面51の断面が消泡装置50の鉛直方向上側に突出する湾曲形状に形成されるので、消泡装置50の内部を上昇する酸素は、天井面51の突出先端部分に溜まる。この場合、本参考例の気体置換ユニット1によれば、天井面51の突出先端部分に返送管60が接続されるので、天井面51の突出先端部分に溜まった酸素を返送管60から効率よく回収することができる。
【0046】
また、本参考例では、隔壁52によって分断される送出管44側の内部領域(送出管44から消泡装置50の内部を上昇する溶解水の流路)の断面積に比べ、送出管44の断面積が小さく形成される。よって、送出管44を流れる溶解水の流速に比べ、送出管44から消泡装置50の内部を上昇する溶解水の流速が減速される。これにより、溶解水に混入される気泡が溶解水の流れと共に隔壁52を乗り越えて、流出管53側の領域に流下すること(即ち、酸素が消泡装置50の外部に流出すること)を抑制できる。よって、返送管60によって酸素の気泡を効率よく回収することができる。
【0047】
隔壁52を乗り越えて流出管53側の領域に流下する溶解水は(移動経路B)、流出管53から消泡装置50の外部へ流出されつつ(移動経路C)、溶解水が消泡装置50の内部に貯留され、その水位が水位センサ54によって検知される。
【0048】
この場合、流出管53のうちの消泡装置50の内部側の端部(即ち、流出管53の開口部)を下方に向けた姿勢で流出管53が配設されるので、例えば、溶解水に混入される酸素の気泡が隔壁52を乗り越えて流出管53側に流下したとしても、かかる酸素の気泡が流出管53に流れ込むことを抑制できる。即ち、酸素が消泡装置50の外部に流出することを抑制できるので、返送管60によって酸素の気泡を効率よく回収することができる。
【0049】
水位センサ54は、センサ部と、溶解水の水面を浮遊可能に形成されるフロート部とを備え、フロート部が上昇または下降することでセンサ部によって水位が検知される水位センサである。この水位センサ54は、隔壁52の上端よりも消泡装置50の鉛直方向上側、且つ、天井面51よりも下側に位置する高さに配設され、水位センサ54の検知状態に基づいて電磁弁61の開閉動作が制御される。
【0050】
次いで、図4を参照して、消泡装置50の制御装置55で実行される処理について説明する。図4は、電磁弁制御処理を示すフローチャートである。この電磁弁制御処理は、制御装置55によって定期的(例えば、100ms毎)に実行される。なお、電磁弁制御処理では、水位の上限を規定するための第1の閾値と、水位の下限を規定するための第2の閾値とに基づいて電磁弁61が制御される。
【0051】
図4に示すように、制御装置55は、水位センサ54で検知される消泡装置50内の水位が第1の閾値を上回っているか(天井面51から水面までの距離が、例えば、50mmよりも短いか)否かを確認する(S1)。S1の処理において、水位が第1の閾値を上回っている場合(S1:Yes)、溶解水の水面が揺動することで天井面51に接触する恐れがあるので、返送管60の電磁弁61を閉じて(S2)、一連の処理を終了する。このS2の処理により、消泡装置50の内部に貯留される溶解水が返送管60を介してポンプ20に吸引されることを抑制できる。
【0052】
この場合、天井面51の断面が消泡装置50の上下方向上側に突出する湾曲形状に形成され、その頂点部分に返送管60が接続されるので、消泡装置50の内部に貯留される溶解水が返送管60を介してポンプ20に吸引されることをより確実に抑制できる。このように、溶解水がポンプ20に吸引されて気体置換装置40に再度返送されることを抑制することにより、気体置換装置40での溶解水の生成(原水に対する置換処理)を効率よく行うことができる(溶解水が気体置換装置40に再度返送されると、その分、気体置換装置40に供給される原水の量が減るので、原水に対する置換処理の処理量が減少する)。
【0053】
一方、S1の処理において、水位が第1の閾値を上回っていない場合(S1:No)、水位センサ54で検知される消泡装置50内の水位が第2の閾値を下回っているか(天井面51から水面までの距離が、例えば、150mmよりも長いか)否かを確認する(S3)。S3の処理において、水位が第2の閾値を下回っている場合(S3:Yes)、返送管60の電磁弁61を開放して(S4)、一連の処理を終了する。一方、S3の処理において、水位が第2の閾値を下回っていない場合(S3:No)、一連の処理を終了する。このように、消泡装置50の水位の上限および下限の閾値に幅を持たせることにより、電磁弁61が過剰に開閉動作することを抑制できる。
【0054】
次いで、図5を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。上記参考例では、返送管60が取水管10に接続される場合を説明したが、実施の形態では、第1返送管260及び第2返送管280が流入管30(エアチャンバー290)に接続される場合について説明する。なお、上述した参考例と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図5は、本発明の一実施の形態における気体置換ユニット201の正面図である。なお、図5では、図面を簡素化するために、気体置換ユニット201が模式的に図示される。図5に示すように、気体置換ユニット201は、一端が消泡装置50の上部(図5の上側)に接続される第1返送管260と、その第1返送管260の他端が接続されると共に、気体を圧縮する圧縮機として形成されるコンプレッサ270と、そのコンプレッサ270に一端が接続される第2返送管280と、その第2返送管280の他端に接続されると共に、ポンプ20の脈動を緩衝するための緩衝装置として形成されるエアチャンバー290と、を備える。
【0056】
第1返送管260は、消泡装置50で収集された酸素を回収するための配管であり、その他端がコンプレッサ270の吸引口271に接続され、そのコンプレッサ270の吐出口272に第2返送管280が接続される。
【0057】
第2返送管280は、コンプレッサ270によって圧縮された酸素をエアチャンバー290に返送するための配管である。エアチャンバー290は、その内部に酸素が充填される空間が形成され、その内部空間に酸素が加圧された状態で充填される。このエアチャンバー290の内部空間は、流入管30の内部に連通されており、エアチャンバー290の内部空間に酸素が加圧された状態で充填されることにより、ポンプ20の脈動が緩衝されるので、その脈動による取水管10、ポンプ20及び流入管30の破損を抑制できる。よって、気体置換ユニット201の耐久性が向上する。
【0058】
また、エアチャンバー290の内部に酸素が加圧された状態で充填されることにより、そのエアチャンバー290の内部の原水(流入管30を流れる原水)には酸素が徐々に溶解され、その酸素が溶解された原水が気体置換装置40に供給される。
【0059】
即ち、消泡装置50から回収された酸素をエアチャンバー290における圧縮気体として利用しつつ、エアチャンバー290の内部の原水(流入管30を流れる原水)に溶解させて、気体置換装置40に供給することができる。よって、消泡装置50から回収した酸素を効率よく再利用することができる。
【0060】
以上、参考例および実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した参考例および実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0061】
上記参考例および実施の形態では、気体置換装置40の容器体に充填される気体(即ち、消泡装置50から回収される気体)が酸素である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、気体置換装置40の容器体に充填される気体は、オゾン、窒素、水素または二酸化炭素でも良い。
【0062】
上記参考例および実施の形態では、気体置換ユニット1,201で処理される原水が汚濁水である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、気体置換装置40で置換処理される液体が海水であっても良い。この場合、海水には元より塩が溶解されているので、水(塩分が溶解されない原水)に比べて溶解可能な酸素の量も減少する。即ち、気体置換装置40によって海水から溶解水を生成した場合、溶解水が大気圧の状態に戻されると、溶解水から気泡として放出される酸素の量が増大する(気体置換装置40によって水から溶解水を生成した場合に比べて増大する)。よって、例えば、魚介(例えば、海老)の養殖場に気体置換ユニット1,201の構成を適用すること(養殖場から海水を取水管10から取水し、流出管53から酸素が溶解された溶解水を養殖場に放出すること)が好ましい。これにより、酸素をより効率よく使用することができる。
【0063】
上記参考例および実施の形態では、天井面51の断面が消泡装置50の上下方向上側に突出する湾曲形状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、天井面51の断面が多角形状であっても良い。即ち、少なくとも天井面51の断面形状が消泡装置50の鉛直方向上側に突出する凸形状に形成され、その突出先端部分に返送管60を接続すれば良い。これにより、消泡装置50の内部に貯留される溶解水が返送管60(第1返送管260)を介してポンプ20(コンプレッサ270)に吸引されることを抑制できる。
【0064】
上記参考例および実施の形態では、返送管60及び第1返送管260の連通状態を開閉する弁として電磁弁61を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、電磁弁61を手動の弁、電動弁、又は、シリンダ弁から構成しても良い。
【0065】
上記参考例では、返送管60が取水管10に接続され、上記実施の形態では、第1返送管260及び第2返送管280が流入管30(エアチャンバー290)に接続される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、上記実施の形態の構成と、返送管60が取水管10に接続される構成(参考例の構成)とを組み合わせても良い。この場合には、消泡装置50の天井面51の2個所に返送管60及び第1返送管260をそれぞれ接続させれば良い。
【0066】
ここで、エアチャンバー290における所定時間内での原水への酸素の溶解量は、消泡装置50から所定時間内に回収される酸素の量よりも少ないため、消泡装置50から回収される酸素の量が過剰になる。これに対して、上記実施の形態の構成と、返送管60が取水管10に接続される構成とを組み合わせることにより、かかる過剰となった酸素を気体置換装置40に直接返送することができる。よって、消泡装置50から回収した酸素によってポンプ20の脈動を抑制することができると共に、消泡装置50から回収された酸素を効率よく再利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1,201 気体置換ユニット
10 取水管(第1配管)
20 ポンプ
21 ポンプの吸引口
22 ポンプの吐出口
30 流入管(第2配管)
40 気体置換装置
50 消泡装置
51 天井面
54 水位センサ
60 返送管(第3配管)
61 電磁弁(開閉弁)
62 開口
260 第1返送管(第3配管)
270 コンプレッサ
271 コンプレッサの吸引口
272 コンプレッサの吐出口
280 第2返送管(第4配管)
290 エアチャンバー
S2 閉塞手段
図1
図2
図3
図4
図5