【0013】
反応は通常、溶媒の存在下に行われる。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ジクロロメタン、THF、ジオキサン等が好ましく挙げられる。これらの溶媒は単独又は組み合わせて用いることができる。また、溶媒の使用量は反応に支障なければ特に制限はないが、通常、ジアミノジフェニルエーテル化合物に対し3〜10重量倍の範囲、好ましくは4〜6重量倍の範囲で用いられる。
反応温度は通常、70〜120℃の範囲である。反応圧力は常圧条件下で行ってもよく、また、加圧下でも、或は減圧下で行ってもよい。
反応を促進するための触媒は特に必要はないが、必要に応じて、酸触媒または塩基触媒を使用することができる。この場合、使用できる酸触媒として、濃塩酸、塩酸ガス、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸およびそれらの混合物等が挙げられ、使用できる塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンおよびそれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
別の態様として、反応中に生成した水を系外に除去する手順を含むことができる。反応溶液から生成した水を除去する手順は特に制限されず、生成した水を反応溶液中の溶媒系と共沸的に蒸留することにより行うことができる。生成した水は、例えばコックを備えた等圧滴下漏斗、ジムロート冷却器、ディーンスターク装置等の使用により反応系外に除去することができる。
このようにして得られた反応終了混合物は、反応終了後、公知の方法によりこの混合物から一般式(I)で表されるベンゾオキサジン化合物を得ることができる。例えば、反応後、反応混合物から残存原料や溶媒を留去することにより残液として目的物を得ることができる。また、残液を貧溶媒に添加して沈殿させたり、反応混合物に溶媒を添加して晶析し、ろ過することにより粉体若しくは粒状の目的物を得ることも考えられる。残存原料がフェノールの場合には、必要に応じて水と分離する溶媒を加え、アルカリ水溶液で洗浄することにより除去することができる。上記方法により、取り出されたベンゾオキサジン化合物は、例えば、溶媒や水での洗浄や再結晶等の通常の精製手段により、高純度品とすることができる。
【0016】
続いて、本発明の硬化物について説明する。
本発明の硬化物は、上記一般式(I)で表されるベンゾオキサジン化合物を含有する樹脂組成物を硬化させて得ることができる。本発明の硬化物は、一般式(I)で表されるベンゾオキサジン化合物を1種のみ硬化させて得られる硬化物であってもよく、異なる2種以上の一般式(I)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる混合物を硬化させて得られる硬化物であってもよい。さらに目的に応じて、上述のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂それぞれの原料を使用して、本発明の硬化物を得ることもできる。
本発明の硬化物の製造方法としては、例えば、所定の温度まで加熱して硬化させる方法、加熱融解させて金型等に注ぎ金型を更に加熱して硬化成型させる方法、上記一般式(I)で表されるベンゾオキサジン化合物の溶融物を予め加熱された金型に注入して硬化させる方法等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物は、組成物中に残存溶媒を含んでいると硬化時に気泡が発生してしまうので、これを防ぐために前処理として真空脱気処理を行うことが好ましい。この真空脱気処理の温度は、本発明の樹脂組成物が溶融状態となる温度であれば特に制限されないが、硬化が進行せず、かつ、脱気がしやすいとの理由により140〜160℃の温度範囲が好適である。真空脱気処理の圧力は、特に制限はないが、低い(減圧度の高い)方がよく、空気中でも窒素置換雰囲気下中の何れで行ってもよい。この真空脱気処理は、気泡が目視で確認できなくなるまで行う。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
<合成例1>
化合物(1)の合成
フェノール176.3g、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル150.0g、トルエン750.0gを2リッター四つ口フラスコに仕込み、撹拌下に内温65℃で35%ホルマリン水溶液257.1gを35分かけて滴下した。滴下終了後、常圧下85℃で単蒸留を行い、水、トルエンを留出させ、留出したトルエンはフラスコ内に戻した。さらにフェノール35.3gを追加後、還流下86℃で2時間反応させた。
反応終了後、内温を室温まで下げ、反応混合液に10%水酸化ナトリウム水溶液300gを加えて20分撹拌し、水層を分離除去した。得られた油層にトルエン200gを追加後、3.75%水酸化ナトリウム水溶液800gを加えて20分撹拌して、静置し、水層を分離除去した。
次いで得られた油層に水300gを加えて撹拌し、水層を除去する洗浄操作を6回繰り返した。洗浄した油層を減圧下でトルエンを留去し、樹脂状の化合物(1)185.1gを得た。この化合物のGPC分析による純度は60.4%であった。また、
1H−NMR分析結果から目的化合物であることを確認した。
【化11】
1H−NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl
3):4.64(s,2H:a) , 4.66(s,2H:a’), 5.37(s,2H:b), 5.39(s,2H:b’), 6.53-6.55(ddd,1H:c), 6.81-7.35(m,15H:others).
【化12】
13C−NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl
3):50.28(A),50.36(A’),79.21(B),80.14(B’),108.15(H),110.60(I),112.23(J),114.69(C),117.06(K),120.20(L),120.96(M),126.85(N),126.85(N),127,97(O),128.33(P),129.14(Q),130.20(R),149.90(D),151.27(E),154.38(F),159.06(G)
【0019】
<実施例1>
上記合成例1で合成した樹脂状の化合物(1)63.2gを200mlビーカーに仕込み、140℃に溶融し、真空脱気処理を行った。
真空脱気処理した化合物(1)をシリコン製の注型に流し込み、140℃で2時間、150℃で2時間、160℃で2時間、180℃で2時間、200℃で2時間加熱して硬化物を得た。
【0020】
<合成例2>
化合物(a)の合成
フェノール65.9g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル70.0g、パラホルム44.7g、トルエン350gを1リッター四つ口フラスコに仕込み、還流下で26時間反応させた。反応終了液を室温まで冷却後、n−ヘプタン700.0gを仕込んだ2リッター四つ口フラスコに滴下し沈殿を生成させた。生じた沈殿をろ過、減圧乾燥することによって、化合物(a)の粉体127.7gを得た。この化合物のGPC分析による純度は59.5%であった。
【0021】
<比較例1>
上記合成例2で合成した化合物(a)63.0gを200mlビーカーに仕込み、140℃に溶融し、真空脱気処理を行った。真空脱気処理した化合物(a)をシリコン製の注型に流し込み、140℃で2時間、150℃で2時間、160℃で2時間、180℃で2時間、200℃で2時間加熱して硬化物を得た。
【0022】
<比較例2>
四国化成工業株式会社製の化合物(b)73gを200mlビーカーに仕込み、150℃で溶融させ、真空脱気処理を行った。真空脱気処理した化合物(b)をシリコン製の注型に流し込み、180℃で2時間、200℃で2時間加熱して硬化物を得た。
【0023】
<ガラス転移温度(tanδ値)>
実施例1、比較例1、2により得られた硬化物について、動的粘弾性測定によりガラス転移温度(tanδ値)を測定し、得られた測定結果を表1に示す。
動的粘弾性測定条件は以下のとおりである。
動的粘弾性測定装置:Rheogel−E4000FZ(UBM Co.,Ltd)
昇温速度 :2℃/min
周波数 :1Hz
測定モード :曲げ
【0024】
【表1】
【0025】
表1の結果より、本発明の硬化物は、従来公知のベンゾオキサジン樹脂組成物の硬化物より、高いガラス転移温度を有し、優れた耐熱性を有することが明らかとなった。
本発明のベンゾオキサジン樹脂組成物及びその硬化物が奏するこれらの効果は、本発明者が多くの実験を行い初めて確認した格別顕著な効果である。