(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記翼環部は、前記第1冷却流路同士を前記軸回り方向に連通する第1連通流路と、前記第2冷却流路同士を前記軸回り方向に連通する第2連通流路と、を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガスタービン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のガスタービンでは、翼環部において、回転軸を中心とした径方向に温度分布が形成されることを抑制することが求められている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、翼環部の径方向に温度分布が形成されることを抑制できるガスタービン、及び翼環部の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、燃料と前記圧縮機が圧縮した圧縮空気とを混合して燃焼する燃焼器と、前記燃焼器が生成した燃焼ガスにより回転するタービンと、前記タービンの回転により回転軸の軸回り方向に回転するロータ本体と、前記回転軸の軸線方向に並んで前記ロータ本体に固定される複数の動翼段とを有するロータと、前記ロータの外周側を覆うケーシングと、前記ケーシングの内周側に固定され、複数の前記動翼段のそれぞれの上流側に配置される複数の静翼段と、前記ケーシングに設けられ、前記回転軸を中心として環状に形成され、前記動翼段及び前記静翼段を覆う複数の翼環部と、を備え、複数の前記翼環部は、前記回転軸を中心とした径方向の外側に配置され、前記軸線方向に延び、前記軸回り方向に並んで配置された複数の第1冷却流路と、前記第1冷却流路よりも前記径方向の内側に配置され、前記軸線方向に延び、前記軸回り方向に並んで配置された複数の第2冷却流路と、前記第1冷却流路及び前記第2冷却流路のうち前記軸線方向の同じ側の端部同士を接続する折り返し流路と、
前記第1冷却流路よりも前記径方向の外側に配置され、前記軸線方向に延び、前記軸回り方向に並んで配置された複数の第3冷却流路と、前記第3冷却流路及び前記第1冷却流路のうち前記軸線方向の同じ側の端部同士を接続する第2折り返し流路と、を有する。
【0008】
本発明によれば、径方向の外側に複数の第1冷却流路が軸回り方向に配置され、径方向の内側に複数の第2冷却流路が軸回り方向に配置され、第1冷却流路と第2冷却流路とが軸方向の同じ側の端部で折り返し流路によって折り返されているため、回転軸の軸回り方向に並ぶ複数の冷却流路を、径方向に複数段に配置することができる。これにより、翼環部が径方向の複数箇所に亘って冷却されるため、翼環部の径方向に温度分布が形成されることを抑制できる。
また、前記第1冷却流路よりも前記径方向の外側に配置され、前記軸線方向に延び、前記軸回り方向に並んで配置された複数の第3冷却流路と、前記第3冷却流路及び前記第1冷却流路のうち前記軸線方向の同じ側の端部同士を接続する第2折り返し流路とが配置されているので、回転軸の軸回り方向に並ぶ複数の冷却流路を、径方向に3段以上に配置することができる。これにより、翼環部が径方向に亘って効率的に冷却されるため、翼環部の径方向に温度分布が形成されることをより効率的に抑制できる。
【0009】
また、上記ガスタービンにおいて、前記第1冷却流路及び前記第2冷却流路は翼環部本体内に形成され、前記第2冷却流路が前記折り返し流路に接続する第1開口の中心は、前記第2冷却流路が前記翼環部本体の軸線方向上流側の端部に開口する第2開口の中心より径方向外側に配置されていてもよい。
【0010】
本発明によれば、第2冷却流路を翼環部本体の内周面に近接させることが出来るので、内周面の冷却が一層強化される。
【0011】
また、上記ガスタービンにおいて、前記第2開口の中心は、前記折り返し流路の径方向内側を向く底面より径方向内側に配置されていてもよい。
【0012】
また、上記ガスタービンにおいて、前記第2冷却流路は、軸線方向に延伸する流路の中間で径方向外側に屈折する折れ曲がり流路であってもよい。
【0013】
本発明によれば、翼環部の円筒部のより内側の内周面近傍に流路を形成することが可能になり、翼環部の内周面の冷却が一層強化される。
【0014】
また、上記ガスタービンにおいて、前記翼環部は、前記第1冷却流路同士を前記軸回り方向に連通する第1連通流路と、前記第2冷却流路同士を前記軸回り方向に連通する第2連通流路と、を有してもよい。
【0015】
本発明によれば、第1連通流路及び第2連通流路を介して軸回り方向に冷却媒体を流通可能であるため、翼環部の軸回り方向に温度分布が形成されることを抑制できる。
【0016】
また、上記ガスタービンにおいて、前記第1連通流路は、冷却媒体が供給される供給配管に接続され、前記第2連通流路は、前記冷却媒体を排出する排出配管に接続されてもよい。
【0017】
本発明によれば、冷却媒体が供給配管から第1連通流路、第1冷却流路、折り返し流路、第2冷却流路、第2連通流路を順に流れて排出配管から排出されるため、翼環部の径方向の外側から内側に向けて効率的に冷却することが可能となる。
【0018】
また、上記ガスタービンにおいて、前記排出配管は、前記燃焼器の冷却流路に接続されてもよい。
【0019】
本発明によれば、翼環部を冷却した冷却媒体が燃焼器の冷却流路に供給されるため、冷却媒体を効率的に利用可能となる。
【0020】
また、上記ガスタービンは、前記翼環部を迂回して前記供給配管と前記排出配管とを接続するバイパス流路と、前記冷却媒体の供給先を前記翼環部と前記バイパス流路とで切り替える供給先切替部と、をさらに備えてもよい。
【0021】
本発明によれば、例えばガスタービンの起動時等のように翼環部の冷却を抑制したい場合には、冷却媒体の供給先を翼環部からバイパス流路に切り替えることにより、翼環部を迂回させて冷却媒体を流すことができる。
【0022】
また、上記ガスタービンにおいて、前記バイパス流路は、翼環部本体から軸線方向に離間して配置されていてもよい。
【0023】
本発明によれば、翼環部内に温度分布が発生するのを抑制できる。
【0024】
また、上記ガスタービンにおいて、前記燃焼器は、前記タービン側に尾筒を有し、前記翼環部は、前記軸回り方向に並んで配置される複数の尾筒接続部を有し、前記尾筒接続部は、前記バイパス流路に連通するバイパス接続孔と、前記尾筒側に連通された尾筒側連通孔とを含んでもよい。
【0025】
本発明によれば、バイパス流路を介して尾筒側に冷却媒体を効率的に流すことができる。
【0026】
また、上記ガスタービンにおいて、前記バイパス流路は、前記翼環部の軸回り方向に配置されたバイパス接続管を有してもよい。
【0027】
本発明によれば、バイパス接続管を介して翼環部の軸回り方向に冷却媒体を流すことができるため、尾筒側に流す冷却媒体の温度を軸回り方向に均一化することができる。
【0028】
また、上記ガスタービンにおいて、前記バイパス接続管は、前記翼環部の熱変形に応じて変形可能な熱伸び吸収部を有してもよい。
【0029】
本発明によれば、翼環部の熱変形に応じてバイパス接続管が変形するため、バイパス接続管と尾筒接続管との間においてバイパス流路の変形を抑制できる。
【0030】
また、上記ガスタービンにおいて、前記翼環部は、前記第1冷却流路と、前記第2冷却流路と、前記折り返し流路と、前記第1連通流路の一部である第1溝部と、前記第2連通流路の一部である第2溝部とが設けられた翼環部本体と、前記翼環部本体に着脱可能に締結され、前記第1溝部を閉塞して前記第1溝部との間に前記第1連通流路を形成する第1閉塞部材と、前記翼環部本体に着脱可能に締結され、前記第2溝部を閉塞して前記第2溝部との間に前記第2連通流路を形成する第2閉塞部材と、を有してもよい。
【0031】
本発明によれば、第1閉塞部材及び第2閉塞部材を翼環部本体から取り外した場合に、第1溝部及び第2溝部を外部に露出させることができる。これにより、冷却流路の内部点検が容易になる。
【0032】
また、上記ガスタービンにおいて、前記翼環部は、前記折り返し流路同士が前記軸回り方向に連通されてもよい。
【0033】
本発明によれば、折り返し流路を介して軸回り方向に冷却媒体を流通可能であるため、翼環部の軸回り方向に温度分布が形成されることを抑制できる。
【0034】
また、上記ガスタービンにおいて、前記第1冷却流路及び前記第2冷却流路は、前記回転軸から前記径方向に延びる仮想直線上に配置されてもよい。
【0035】
本発明によれば、翼環部の径方向の内側に第2冷却流路が密に配置されることになる。これにより、翼環部の径方向の内側を効率的に冷却することができる。
【0036】
また、上記ガスタービンにおいて、前記翼環部は、前記径方向に貫通するキャビティ供給流路を有し、前記第1冷却流路及び前記第2冷却流路は、前記キャビティ供給流路に対応する位置に配置されてもよい。
【0037】
本発明によれば、第1冷却流路及び第2冷却流路を流れる冷却媒体が、キャビティ供給流路側からの入熱を直接冷却して、キャビティ供給流路から翼環部内部への熱移動を遮断する構成であるため、翼環部内に温度分布が生ずるのを抑制できる。
【0038】
また、上記ガスタービンにおいて、前記翼環部は、前記径方向の外側に突出した隔壁部を有し、前記第1連通流路は、前記隔壁部に配置されてもよい。
【0039】
本発明によれば、本発明によれば、隔壁部を有することで翼環部の剛性を向上させることができ、隔壁部の内部に第1連通流路を配置することで突出部に径方向の温度分布が形成されることを抑制できる。これにより、隔壁部の熱変形を効率的に抑制できる。
【0040】
また、上記ガスタービンにおいて、前記翼環部は、前記第1冷却流路よりも前記径方向の外側に配置され、前記軸線方向に延び、前記軸回り方向に並んで配置された複数の第3冷却流路と、前記第3冷却流路及び前記第1冷却流路のうち前記軸線方向の同じ側の端部同士を接続する第2折り返し流路と、を有してもよい。
【0041】
本発明によれば、回転軸の軸回り方向に並ぶ複数の冷却流路を、径方向に3段以上に配置することができる。これにより、翼環部が径方向に亘って効率的に冷却されるため、翼環部の径方向に温度分布が形成されることをより効率的に抑制できる。
【0042】
本発明の一態様に係る翼環部の製造方法は、ガスタービンのロータを覆う筒状のケーシングに複数設けられ、前記ロータの回転軸を中心として環状に形成され、動翼段及び静翼段を覆う翼環部の製造方法であって、前記回転軸を中心とした径方向の外側に配置され、軸線方向に延び、軸回り方向に並んで配置される複数の第1冷却流路と、前記第1冷却流路よりも前記径方向の内側に配置され、前記軸線方向に延び、前記軸回り方向に並んで配置される複数の第2冷却流路と、
前記第1冷却流路よりも前記径方向の外側に配置され、前記軸線方向に延び、前記軸回り方向に並んで配置された複数の第3冷却流路と、前記第1冷却流路及び前記第2冷却流路
及び第3冷却流路のうち前記軸線方向の同じ側の端部同士を接続する折り返し流路と、前記第1冷却流路同士を前記軸回り方向に連通する第1連通流路と、前記第2冷却流路同士を前記軸回り方向に連通する第2連通流路と、
前記第3冷却流路同士を前記軸回り方向に連通する第3連通流路と、を有する翼環部本体を形成する工程と、前記第1連通流路と前記折り返し流路の間に前記第1冷却流路を形成する工程と、前記第2連通流路と前記折り返し流路の間に前記第2冷却流路を2段階で形成する工程と、
前記第3連通流路と前記第1連通流路の間に前記第3冷却流路を形成する工程と、前記第1連通流路を閉塞する第1閉塞部材を前記翼環部に取付けて第1連通流路を形成する工程と、前記第2連通流路を閉塞する第2閉塞部材を前記翼環部に取付ける工程と、を含む
。
【0043】
本発明によれば、第1閉塞部材及び第2閉塞部材を翼環部本体に締結することで容易に第1連通流路及び第2連通流路を形成することができる。第1閉塞部材及び第2閉塞部材を翼環部本体から取り外すことにより、第1溝部及び第2溝部を外部に容易に露出させることができる。
【0044】
本発明の態様によれば、前記第1連通流路は、軸線方向の端部に第1溝部を備え、第2連通流路は軸線方向の端部に第2溝部を備え、前記第1閉塞部材は、前記翼環部本体に着脱可能に締結することで、前記第1溝部を閉塞可能であり、前記第2閉塞部材は、前記翼環部本体に着脱可能に締結することで、前記第2溝部を閉塞可能としてもよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、翼環部の径方向に温度分布が形成されることを抑制できるガスタービン、及び翼環部の製造方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明に係るガスタービン、及び翼環部の製造方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0048】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係るガスタービン100の全体構成を表す概略図である。
図1に示すように、ガスタービン100は、圧縮機11と、燃焼器12と、タービン13とを備える。ガスタービン100は、不図示の発電機が連結され、当該発電機により発電可能となっている。
【0049】
圧縮機11は、空気を取り込む吸気室20を有し、圧縮機車室21内に入口案内翼(IGV:Inlet Guide Vane)22が配置されると共に、複数の静翼23と複数の動翼24が空気の流動方向(後述するロータ32の軸方向)に交互に配置されてなり、その外側に抽気室25が設けられている。この圧縮機11は、吸気室20から取り込まれた空気を圧縮することで高温・高圧の圧縮空気を生成し、車室14に供給する。
【0050】
燃焼器12は、圧縮機11で圧縮され車室14に溜められた高温・高圧の圧縮空気と燃料とが供給され、燃焼することで、燃焼ガスを生成する。タービン13は、タービン車室26内に複数の静翼27と複数の動翼28が燃焼ガスの流動方向(後述するロータ32の軸方向)に交互に配置されている。そして、このタービン車室26は、燃焼ガスの流れ方向の下流側に排気車室29を介して排気室30が配置されており、排気室30は、タービン13に連結する排気ディフューザ31を有している。このタービンは、燃焼器12からの燃焼ガスにより駆動し、同軸上に連結された発電機(図示せず)を駆動する。
【0051】
圧縮機11と燃焼器12とタービン13並びに排気室30の中心部を貫通するように、ロータ(回転軸)32が配置されている。ロータ32は、回転軸Cの軸回り方向(以下、「軸回り方向」と表記する)に回転可能である。具体的には、ロータ32は、圧縮機11側の端部が軸受部33により回転自在に支持されると共に、排気室30側の端部が軸受部34により回転自在に支持される。そして、このロータ32は、圧縮機11にて、各動翼24が装着されたディスクが複数重ねられて固定されている。また、タービン13にて、各動翼28が装着されたディスクが複数重ねられて固定されており、吸気室20側の端部に発電機(図示せず)の駆動軸が連結されている。
【0052】
そして、このガスタービン100は、圧縮機11の圧縮機車室21が脚部35に支持され、タービン13のタービン車室26が脚部36により支持され、排気室30が脚部37により支持されている。
【0053】
従って、圧縮機11にて、吸気室20から取り込まれた空気が、入口案内翼22、複数の静翼23と動翼24を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となる。燃焼器12にて、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給され、燃焼する。タービン13にて、燃焼器12で生成された高温・高圧の燃焼ガスGが、タービン13における複数の静翼27と動翼28を通過することでロータ32を駆動回転し、このロータ32に連結された発電機を駆動する。一方、燃焼ガスGは、運動エネルギーが排気室30の排気ディフューザ31により圧力に変換されて減速されてから大気に放出される。なお、圧縮機11で圧縮された一部の圧縮空気は、圧縮機11の中間段で抽気され、タービン車室26に供給される。タービン車室26に供給された抽気空気は、タービン車室空間26aに溜められ、タービン側の高温部品等の冷却に使用される。
【0054】
図2は、タービン13の翼環部50の近傍を示す断面図である。
図3は、タービン13の翼環部50の一例を示す断面図である。
図2及び
図3に示すように、タービン13は、円筒形状のタービン車室(ケーシング)26を有する。タービン車室26は、燃焼ガスGの流動方向の下流側に円筒形状をなす排気車室29が連結される。排気車室29は、燃焼ガスGの流動方向の下流側に円筒形状をなす排気室30(排気ディフューザ31)が配置される。排気室30は、燃焼ガスGの流動方向の下流側に排気ダクト(図示せず)が設けられる。
【0055】
タービン車室26は、内周部に燃焼ガスGの流動方向の前後に所定間隔をあけて上流側外側隔壁部42a及び下流側外側隔壁部42bが一体に形成されている。この上流側外側隔壁部42a及び下流側外側隔壁部42bの内側には、軸回り方向に2分割されたリング形状をなす翼環部50が支持されている。この翼環部50は、軸回り方向の分割部でボルト締結され、円筒形状の構造物を形成している。
【0056】
図4は、翼環部50の一部を示す斜視図である。
図3及び
図4に示すように、翼環部50は、主に翼環部50の主要部分である翼環部本体50aと、燃焼器12と翼環部50との接続部を形成する尾筒接続部54と、冷却媒体Pが翼環部50を迂回する流路を形成するバイパス流路68と、から形成されている。
【0057】
翼環部本体50aは、内部に冷却流路を有する円筒部51と、下流側内側隔壁部52と、上流側内側隔壁部53と、を有する。円筒部51は、回転軸Cに平行に配置される。円筒部51は、中心軸が回転軸Cにほぼ一致している。下流側内側隔壁部52は、円筒部51の外周面51aから回転軸Cを中心とした径方向(以下、「径方向」と表記する)の外側に突出して、軸回り方向に環状に設けられる。下流側内側隔壁部52は、回転軸Cの軸線方向(以下、「軸線方向」と表記する)について、円筒部51のタービン13側の軸線方向の下流側の端部に配置される。下流側内側隔壁部52の端部の角部には、軸回り方向に断面L字状に形成された環状の端部溝部52aが形成されている。端部溝部52aには、タービン車室26の内周面に形成された下流側外側隔壁部42bが嵌め込まれ、端部溝部52aを形成する下流側内側隔壁部52の軸線方向下流側を向く側面52bと、下流側外側隔壁部42bの軸線方向上流側を向く面が接触する。なお、下流側外側隔壁部42bの径方向の内側を向く内周面と、端部溝部52aを形成する下流側内側隔壁部52の径方向外側を向く内周面52cとの間には、翼環部本体50aの径方向の熱伸び差を吸収する隙間が形成されている。ここで、軸線方向の上流側とは、翼環部50から見て圧縮機11を見る方向を言い、軸線方向の下流側とは翼環部50から見て排気室30を見る方向を言う。
【0058】
上流側内側隔壁部53は、下流側内側隔壁部52より軸線方向の上流側に配置され、円筒部51の外周面51aから径方向の外側に突出して軸回り方向に環状に設けられる。上流側内側隔壁部53には、軸回り方向に形成された隔壁溝部53aが形成され、タービン車室26の内周面に形成された上流側外側隔壁部42aが嵌め込まれる。上流側外側隔壁部42aの軸線方向の上流側を向く面と、隔壁溝部53aを形成する上流側内側隔壁部53の軸線方向下流側を向く側面53bとが接触して、接触面にはシール面が形成される。上流側内側隔壁部53の側面53bにシール面が設けられることにより、車室14内の空気圧力が保持される。なお、端部溝部52aを形成する下流側内側隔壁部52の軸線方向下流側を向く側面52bと下流側外側隔壁部42bの軸線方向上流側を向く面との間の接触面には、バネ等の押圧手段(図示せず)が設けられる。この押圧手段により、側面52bを介して翼環部50を軸線方向の上流側に押すことで、上流側内側隔壁部53のシール面に生ずる隙間から、車室空気が軸線方向下流側のタービン車室空間26aに漏洩することを防止している。
【0059】
また、上流側外側隔壁部42aの径方向の内側を向く内周面と、隔壁溝部53aを形成する上流側内側隔壁部53の径方向外側を向く内周面53cとの間には、タービン車室26と翼環部本体50aの径方向の熱伸び差を吸収する隙間が形成されている。同様に、上流側外側隔壁部42aの軸線方向の下流側を向く側面と、隔壁溝部53aを形成する上流側内側隔壁部53の軸線方向の上流側を向く側面53dとの間には、タービン車室26と翼環部本体50aの軸線方向の熱伸び差を吸収する隙間が形成されている。
【0060】
翼環部本体50aは、冷却媒体Pが流れる冷却流路60を有する。冷却流路60は、円筒部51を冷却する第1冷却流路61と、第1冷却流路61の冷却媒体Pの流れ方向の下流側に配置された第2冷却流路62と、第1冷却流路61と第2冷却流路62を繋ぐ折り返し流路65と、を有する。第1冷却流路61は、円筒部51の径方向の外側に配置され、円筒部51aの外周面51bに近接して配置される。第1冷却流路61は、軸線方向にほぼ平行に延びている。第1冷却流路61は、軸回り方向に複数並んで配置される。
【0061】
第2冷却流路62は、円筒部51のうち第1冷却流路61よりも径方向の内側に配置され、円筒部51の内周面51bに近接して配置される。第2冷却流路62は、軸線方向にほぼ平行に直線状に延びている。したがって、第2冷却流路62は、第1冷却流路61に対してほぼ平行である。第2冷却流路62は、軸回り方向に複数並んで配置される。
【0062】
折り返し流路65は、第1冷却流路61及び第2冷却流路62のうち軸線方向の同じ側の端部同士を接続する。折り返し流路65は、翼環部本体50aの軸線方向下流側の端部に配置される。折り返し流路65は、第1冷却流路61を流れる冷却媒体Pを第2冷却流路62へと折り返す流路であり、
図3に示すように、回転軸Cを通る平面での断面形状が、径方向の外側に延びる矩形状の空間(キャビティ)である。第1冷却流路61は、折り返し流路65の径方向外側で接続され、第2冷却流路62は径方向内側で接続される。また、折り返し流路65(折り返し連通流路75)は、軸回り方向に沿って環状に形成されていてもよい。このため、折り返し流路65は、複数の第1冷却流路61と、複数の第2冷却流路62とを軸回り方向に連通する。なお、折り返し流路65(折り返し連通流路75)を軸回り方向に沿って環状に形成する場合、下流側内側隔壁部52の全体を冷却するため、折り返し流路65の矩形断面の径方向の上端は、下流側内側隔壁部52の内周面52cに近接して形成することが望ましい。
【0063】
翼環部50は、翼環部50の軸回り方向に環状に配置された複数の冷却流路60に冷却媒体Pを供給し又は複数の冷却流路60から冷却媒体Pを集合させ、軸回り方向の各冷却流路に連通する連通流路70を有していてもよい。連通流路70は、第1連通流路71と、第2連通流路72とを有する。第1連通流路71は、軸回り方向に並ぶ第1冷却流路61同士を、軸回り方向に連通する。第1連通流路71は、上流側内側隔壁部53の内部に設けられる。第1連通流路71は、
図3に示すように、回転軸Cを通る平面での断面形状が、径方向の外側に延びる矩形状である。このため、上流側内側隔壁部53の内部は、径方向の外側にも冷媒媒体Pが流通可能となっている。第1連通流路71は、取込流路66を介して冷却媒体Pが供給される供給配管81(後述する)に接続される。なお、上流側内側隔壁部53の全体を冷却するため、第1連通流路71の断面形状は、軸線方向の流路幅より径方向の流路幅を広げて、径方向に延在する細長い流路幅を有する矩形断面形状とすることが望ましい。また、矩形断面の径方向の上端は、上流側内側隔壁部53の内周面53cに近接して形成することが望ましい。
【0064】
第2冷却流路62は、翼環部本体50aの軸線方向上流側の端部に形成された第2連通流路72の内壁に形成された流路開口(第2開口)51eに接続される。第2冷却流路62の軸線方向下流側の端部は、折り返し流路65又は折り返し連通流路75に設けられた流路開口(第1開口)51dに接続する。また、第2冷却流路は、第1冷却流路61と平行ではなく、軸線方向上流側に向かうと共に径方向内側に傾斜する流路であってもよい。その場合、流路開口51dの中心は、流路開口51eの中心より径方向外側に形成される。また、流路開口51eの中心は、折り返し流路65又は折り返し連通流路75の径方向内側の底面65bより径方向内側に形成されてもよい。第2冷却流路62を径方向内側に傾斜させれば、第2冷却流路62は円筒部51の内周面51b側に更に近接して配置され、内周面51bの冷却が一層強化される。
【0065】
第2連通流路72は、軸回り方向に並ぶ第2冷却流路62同士を、軸回り方向に連通する。第2連通流路72は、例えば円筒部51のうち上流側内側隔壁部53よりも軸線方向の上流側で、燃焼器12側に突出する円筒部51の内部に設けられる。また、第2連通流路72は、第1連通流路71より径方向の内側で、円筒部51の内周面51bに近接して配置される。
【0066】
第2連通流路72は、円筒部51の軸線方向上流側の本体上流側端面51fに形成され、本体上流側端面51fから軸線方向下流側に向かって凹む断面を有し、軸回り方向に延びる環状溝状の連通開口72aとして形成されている。第2連通流路72には、流路開口51eを介して第2冷却流路62が接続される。また、第2連通流路72は、軸線方向上流側の本体上流側端面51fに隣接して配置された尾筒接続部54の排出流路54cに接続されている。
【0067】
次に、
図3及び
図4に示すように、尾筒接続部54は、燃焼器11の設置数に対応して軸線方向の下流側に配置され、翼環部本体50aの円筒部51の軸線方向の上流側に隣接して配置されている。尾筒接続部54は、翼環部本体50aの円筒部51の軸線方向上流端の本体上流側端面51fに固定される箱型状ブロック部材である。尾筒接続部54は、翼環部本体50aの軸線方向の上流側に配置された燃焼器12の尾筒12aに隣接して、軸線方向の下流側に配置され、軸回り方向に複数並んで配置される。尾筒接続部54は、尾筒12a(
図2参照)側に形成された冷却流路(図示せず)に排出配管82を介して連通する尾筒側連通孔54aと、バイパス流路(後述する)が接続するバイパス接続孔54bと、前記第2連通流路72に接続し、冷却流路60を冷却した後の冷却媒体Pを集合させ、尾筒側連通孔54aに接続する排出流路54cと、を有する。排出流路54cは、軸線方向上流側に延びる流路であり、尾筒接続部54の軸線方向上流端に形成された尾筒側連通孔54aを介して排出配管82に接続されている。排出配管82は、燃焼器12の冷却流路(図示せず)に接続されている。また、排出流路54cは、バイパス流路68(後述する)を介してバイパス配管83に接続される。翼環部本体50aを迂回してバイパス配管83に供給された冷却媒体Pは、バイパス流路68に供給され、排出流路54cから排出配管82に排出される。
【0068】
次に、ガスタービンの起動時において、冷却媒体Pが翼環部に流入せずに翼環部を迂回させるバイパス流路について、
図2、
図3及び
図4を参照しつつ、以下に説明する。ガスタービン100の起動時において、動翼28は、高速回転に伴う変位と燃焼ガスからの入熱による変位が重なって、径方向外側に向かって変位する。一方、起動時において、翼環部50を迂回(バイパス)することなく翼環部50に冷却媒体Pを供給する場合、翼環部50を流れる冷却媒体Pにより翼環部50が冷却され、径方向内側に変位する。その結果、ガスタービン100が定格運転に到達する前の過渡期においては、動翼28の先端部と翼環部50との間のクリアランスが適正値より小さくなる現象が発生する場合がある。この現象を回避するため、ガスタービン100の起動時は、冷却媒体Pは翼環部50を通さずに翼環部50を迂回させ、定格運転時には翼環部50に冷却媒体Pを供給する方法が望ましい。これにより、ガスタービン100の運転過渡期には、冷却媒体Pによる翼環部50の径方向内側への変位が抑制される。一方、翼環部50は、圧縮機11からの抽気空気の一部がキャビティ供給流路55を通過する過程で、抽気空気により暖気される。これにより、クリアランスが小さくなり過ぎる現象を回避できる。その結果、適正なクリアランスを設定できるので、ガスタービン100の起動時間を短縮させ、ガスタービン100の効率を向上させることが出来る。
【0069】
バイパス流路68は、冷却媒体循環機構80(詳細は、後述する)から冷却媒体Pを受け入れるバイパス入口管68aと、円筒部51の軸線方向の上流側で軸回り方向に環状に配置され、尾筒接続部54に冷却媒体Pを供給するバイパス接続管68bと、バイパス接続管68bの軸回り方向の熱伸びを吸収する熱伸び吸収部68cと、バイパス接続管68bと尾筒接続部54に形成されたバイパス接続孔54bを連結する入口接続管68dと、から形成されている。
【0070】
バイパス入口管68aは、
図4に示す例では、一つの上半部の翼環部50aに対して、軸回り方向の2箇所に、円筒状のバイパス入口管68aが形成されている。バイパス入口管68aは、径方向の外側に冷却媒体循環機構80に接続する開口68aaを備え、径方向の内側には、バイパス接続管68bに接続する開口68abを備える。開口68abは、バイパス接続管68bの外周面に形成される開口68baに接続される。バイパス接続管68bの一部が、バイパス入口管68aに対して直交する方向からバイパス入口管68aに食い込み、バイパス入口管68aの一部とバイパス接続管68bの一部が、互いに貫通するように接合されている。バイパス入口管68aとバイパス接続管68bとは、バイパス入口管68aの開口68abとバイパス接続管68bに形成された開口68baを介して互いに連通する。
【0071】
バイパス接続管68bは、尾筒接続部54の径方向外側の外表面に沿って、軸回り方向に環状に配置され、尾筒接続部54に固定されている。また、バイパス接続管68bは、上流側内側隔壁部53の軸線方向の上流側を向く側面53eに近接して、軸線方向の上流側に配置されているが、両者は互いに接触することなく離間して配置されている。両者を離間するのは、バイパス流路68を流れる冷却媒体Pにより、翼環部本体50aが冷却されるのを防止し、翼環部本体50a内に温度分布が生ずるのを防止するためである。
【0072】
また、軸回り方向に延伸するバイパス接続管68bは、前述のように、複数のバイパス入口管68aと複数の尾筒接続部54に連結された入口接続管68dに接続する。バイパス接続管68bは、複数の接続管で形成されている。バイパス入口管68a及び入口接続管68dを挟んだバイパス接続管68bの軸回り方向の両側には、軸回り方向のバイパス接続管68bの熱伸びを吸収するため、熱伸び吸収部68cが配置されている。熱伸び吸収部68cには、一例としてベローズ又は軸線方向に変形させたU字管等が採用できるが、この例に限定されない。熱伸び吸収部68cを設ける理由は、バイパス入口管68a及び尾筒接続部54は、翼環部本体50aに固定されているため、バイパス接続管68bがバイパス入口管68a及び入口接続管68dに接続する箇所は、バイパス接続管68bの軸回り方向の熱伸びを吸収できないためである。
【0073】
入口接続管68dは、一方の端部は、バイパス接続管68bに連通し、他方の端部は、尾筒接続部54に形成された排出流路54cにバイパス接続孔54bを介して連通している。
【0074】
図5は、翼環部50の冷却流路60の流れを示す系統図である。前述のように、翼環部50の円筒部51の外周面側に配置された第1冷却流路61が、軸線方向の上流側で軸回り方向に環状に形成された第1連通流路71に接続し、軸線方向の下流側で軸回り方向に環状に形成された折り返し連通流路75に接続している。更に、折り返し連通流路75に流入した冷却媒体Pは、折り返し連通流路75内で径方向内側方向に折り返し、第2冷却流路62に流入する。第2冷却流路62は、第1冷却流路61の径方向の内側に配置され、翼環部50の円筒部51の内周面に近接して配置されている。第2冷却流路62は、軸線方向に沿って第1冷却流路61に平行に配置され、軸線方向の下流側で軸回り方向に環状に形成された折り返し連通流路75に接続し、軸線方向の上流側で第2連通流路72に接続する。
【0075】
図5に示す例は、2本の第1冷却流路61と2本の第2冷却流路62を1セットとして配置した例である。第1冷却流路61と第2冷却流路62を組合せた冷却流路の一セットのブロックの軸回り方向の前後には、後述するキャビティ供給流路55(
図7)が軸回り方向に冷却流路のブロックを挟むように近接して配置されている。更に、
図5には示されていないが、軸回り方向に並列した各2本の第1冷却流路61と第2冷却流路62からなる冷却流路のブロックは、軸回り方向に配置された複数のキャビティ供給流路55の位置に合わせて、複数のブロックが配置されている。
【0076】
第1連通流路71は、冷却媒体循環機構80に接続する複数の取込流路66を備える。また、第2連通流路72は、軸線方向の上流側に延びる排出流路54cに接続する。排出流路54cは、燃焼器12の尾筒12aの位置に対応して軸回り方向に複数配置され、軸線方向の上流側で排出配管82に接続する。
【0077】
バイパス流路68は、排出流路54cより径方向の外側に配置され、軸回り方向に環状に形成されている。バイパス流路68は、冷却媒体循環機構80に接続する複数のバイパス入口管68aを備える。また、バイパス流路68は、環状に形成されたバイパス接続管68bを備え、尾筒接続部54の軸回り方向の位置に合わせて接続された、バイパス接続管68bと尾筒接続部54に接続する入口接続管68dを有する。
【0078】
図6は、本実施形態の冷却流路60の流れの変形例を示す系統図である。すなわち、
図6に示す冷却流路60は、
図5に示す冷却流路60から折り返し連通通路75を外した例である。つまり、本変形例では、円筒部51の軸線方向の下流側に、径方向に長く延びた矩形状の空間(キャビティ)として形成された折り返し流路65を備える。第1冷却流路61は、径方向の外側で折り返し流路65に接続し、第2冷却流路62は、径方向の内側で折り返し流路65に接続する。折り返し流路65は、軸回り方向に複数に配置された一組の第1冷却流路61と第2冷却流路62の位置に対応して、回転軸Cを中心に、放射状に複数配置されている。その他の冷却流路60は、第1実施形態と同じ構成で形成される。
【0079】
図7は、
図3におけるA−A断面に沿った構成を示す図である。
図7に示すように、第1冷却流路61及び第2冷却流路62は、回転軸Cから径方向に延びる仮想直線L1上に配置される。翼環部50は、径方向に貫通するキャビティ供給流路55を有する。第1冷却流路61及び第2冷却流路62は、キャビティ供給流路55に対応する位置に配置される。本実施形態では、第1冷却流路61及び第2冷却流路62は、軸回り方向についてキャビティ供給流路55の両側に挟むように近接して配置される。ところで、キャビティ供給流路55の上流側は、タービン車室空間26aに連通している。前述したタービン車室空間26aに供給された抽気空気の一部が、キャビティ供給流路55を流れて、静翼27等の高温部品の冷却に使用される。つまり、キャビティ供給流路55を流れる圧縮空気の温度は、翼環部50の冷却流路60に供給される冷却媒体Pより高い温度になる。この構成により、キャビティ供給流路55を流れる圧縮空気側から翼環部50に移動する熱は、第1冷却流路61及び第2冷却流路62を流れる冷却媒体Pにより直接冷却される。その結果、キャビティ供給流路55から翼環部50の内部への熱移動が遮断され、翼環部50内に温度分布が生ずるのを抑制できる。
【0080】
なお、翼環部50に供給される冷却媒体Pは、
図2に示すように別途設けられた冷却媒体循環機構80から供給される。冷却媒体循環機構80は、クーラー84と、コンプレッサー85と、三方弁(供給先切替部)86とを有する。クーラー84は、燃焼器12の周囲の車室空気(冷却媒体P)を取り込んで冷却し、コンプレッサー85に送出する。コンプレッサー85は、クーラー84からの空気を圧縮して三方弁86に送出する。三方弁86は、上記コンプレッサー85と、供給配管81と、バイパス配管83と、に接続される。供給配管81は、翼環部50の取込流路66に接続され、バイパス配管83は、バイパス入口管68aに接続される。三方弁86は、コンプレッサー85からの空気を供給配管81とバイパス配管83とに切り替えて供給可能である。従って、ガスタービン100が定常運転の場合は、冷却媒体Pが翼環部50に供給されるように、三方弁86は、供給配管81側に冷却媒体Pが流れるように切り替えられる。ガスタービン100が起動時の場合は、翼環部50への冷却媒体Pの供給は不要のため、冷却媒体Pがバイパス配管83側に流れるように三方弁86を切り替える。
【0081】
上記のように構成された翼環部50では、供給配管81から供給される冷却媒体Pが翼環部本体50aの内部に流れ込む。翼環部本体50aの内部に流れ込んだ冷却媒体Pは、冷却流路60及び連通流路70に沿って流れ、翼環部本体50aの熱を吸収して排出配管82から排出される。
【0082】
具体的には、翼環部本体50aの内部に取り込まれた冷却媒体Pは、取込流路66を介して第1連通流路71に供給される。冷却媒体Pは、第1連通流路71の内部を軸回り方向に流れ、第1連通流路71の軸回り方向の全体に亘って供給される。また、冷却媒体Pは、第1連通流路71から第1冷却流路61へと流れる。この冷却媒体Pは、第1冷却流路61を軸線方向に沿ってタービン13側に向けて流れ、折り返し流路65(折り返し連通流路75)に供給される。
【0083】
折り返し連通流路75に供給された冷却媒体Pは、折り返し連通流路75の内部を軸回り方向に流れる。また、
図6に示す折り返し連通流路75を備えていない第1実施形態の変形例の場合は、折り返し流路65に供給された冷却媒体Pは、折り返し流路65に沿って径方向の内側に流れ、第2冷却流路62に供給される。
【0084】
第2冷却流路62に供給された冷却媒体Pは、第2冷却流路62を軸線方向に沿って燃焼器12側に向けて流れ、第2連通流路72に供給される。このように、翼環部50では、径方向に並んで配置された第1冷却流路61と第2冷却流路62とでは、軸線方向の逆向きに冷却媒体Pが流れる対向流路が形成される。このため、翼環部50には、径方向に複数段の冷却媒体Pの流れが形成される。
【0085】
第2連通流路72に供給された冷却媒体Pは、第2連通流路72の内部を軸回り方向に流れ、第2連通流路72の軸回り方向の全体に亘って供給される。また、冷却媒体Pは、第2冷却流路62から排出され、第2連通流路72に集合して排出流路54cへと流れる。この冷却媒体Pは、排出流路54cから排出配管82に流れ、燃焼器12の冷却流路(図示せず)に供給される。
【0086】
また、ガスタービンの起動時は、翼環部本体50aには冷却媒体Pは供給されず、バイパス流路68に流れて、排出流路54cを介して排出配管82に排出する。その際、バイパス流路68が翼環部本体50aに接触することはないので、ガスタービンの起動時は、翼環部本体50aがバイパス流路68により冷却され、翼環部本体50aの内部に温度分布が形成されるおそれはない。
【0087】
本実施形態の翼環部50の製造過程を以下に説明する。まず、翼環部本体50aを鋳造又は板金等により製作する。この工程において、翼環部本体50aを構成する円筒部51及び上流側内側隔壁部53には、各冷却流路が接続する軸線方向の末端に配置する第1連通流路71及び折り返し流路65(折り返し連通流路75)が、機械加工により軸回り方向に環状溝として形成される。次に、第1冷却流路61及び第2冷却流路62を穿孔による機械加工で形成する。第1冷却流路61は、折り返し流路65(折り返し連通流路75)側から第1連通流路71側に向け穿孔加工する。第2冷却流路62は、折り返し流路65(折り返し連通流路75)側から第2連通流路72側に向け穿孔加工され、第2連通流路に形成された流路開口51eで開口する。次に、第1閉塞部材(蓋板71a)及び第2閉塞部材(尾筒接続部54)並びに蓋板65aを翼環部本体50aに溶接加工で取付けて、閉じられた流路である第1連通流路71及び第2連通流路72並びに折り返し流路65(折り返し連通流路75)を形成する。次に、翼環部本体50aに固定された尾筒接続部54上にバイパス流路68を取り付ける。この製作工程により、翼環部50の組立が完了する。
【0088】
以上のように、本実施形態に係るガスタービン100は、翼環部50において径方向の外側に複数の第1冷却流路61が軸回り方向に配置され、径方向の内側に複数の第2冷却流路62が軸回り方向に配置される。更に、第1冷却流路61と第2冷却流路62とが軸線方向の同じ側の端部で折り返し流路65によって折り返されている。そのため、軸回り方向に並ぶ複数の冷却流路60を、径方向に複数段に配置することができる。これにより、翼環部50が径方向の複数箇所に亘って冷却されるため、翼環部50の径方向に温度分布が形成されることを抑制できる。
【0089】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態を説明する。
図8は、第2実施形態に係る翼環部150の一部の例を示す断面図である。
図9は、本実施形態に係る翼環部150の一例を示す斜視図である。
図10は、本実施形態に係る冷却流路の系統図である。
図11は、
図9におけるB−B断面に沿った形状を示す図である。第2実施形態は、翼環部本体150aの上流側内側隔壁部153及び円筒部151の軸線方向の上流側で取込流路66の上流側の領域の一層の冷却の強化を図ることを主たる目的として、径方向に3段に設けられた冷却流路を備える点が第1実施形態とは異なっている。第2実施形態では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態に係る翼環部50と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する。
【0090】
図8に示すように、翼環部150は、翼環部本体150aと、尾筒接続部154と、バイパス流路168を有する。更に、翼環部本体150aは、円筒部151と、下流側内側隔壁部152と、上流側内側隔壁部153と、を有する。本実施形態に係る翼環部150の翼環部本体150aは、第1実施形態に係る翼環部50の翼環部本体50aに比べて、例えば上流側内側隔壁部153の径方向の厚さが径方向の外側に向かって厚くなっている。また、上流側内側隔壁部153の径方向の内側の円筒部151は、軸線方向の上流側に向かうと共に、径方向の内側に向かって厚くなる断面形状を有する。
【0091】
円筒部151は、冷却媒体Pが流れる冷却流路160及び連通流路170を有する。冷却流路160は、第1冷却流路161と、第2冷却流路162と、第1冷却流路161と第2冷却流路162を繋ぐ折り返し流路165(折り返し連通流路175)と、を有する。連通流路170は、第1連通流路171と、第2連通流路172とを有する。なお、本実施形態における第1連通流路171は、第1連通流路171の径方向の内側で第1冷却流路161に接続し、径方向の外側で後述する第3冷却流路163に接続している。また、折り返し流路165(折り返し連通流路175)は、第1実施形態における折り返し流路75と同様に、軸回り方向に延びる環状流路であってもよい。
【0092】
本実施形態において、第2冷却流路162は、折り返し流路165(折り返し連通流路175)に接続される上流側流路162aと、流路開口(第2開口)151eを介して第2連通流路172に接続される下流側流路162bと、を有する点で、第1実施形態とは異なっている。上流側流路162aは、折り返し流路165(折り返し連通流路175)との接続部分である流路開口(第1開口)151dから軸線方向の上流側に向かって、径方向の内側に傾いた状態で直線状に延びている。更に、上流側流路162aは、中間点であるQ点で延伸する方向を変えて径方向外側に屈折して折れ曲がり、下流側流路162bに接続する。下流側流路162bは、軸線方向の上流側に更に延び、流路開口151eを介して第2連通流路172に接続する。すなわち、第2冷却流路162は、中間点Qで径方向の外側に屈折する折れ曲がり流路を形成する。つまり、流路開口151dの中心は、流路開口151eの中心より径方向外側に形成される。また、流路開口151eの中心は、折り返し流路165(折り返し連通流路175)の径方向内側の底面165bより径方向内側に形成されてもよい。この構成では、円筒部151において、第1実施形態の第2冷却流路62より更に径方向の内側に流路を形成することが可能となり、円筒部151の内周面151b近傍の冷却が一層強化される。
【0093】
また、第2冷却流路162は、流路開口151dから流路開口151eまで、直線状に形成された流路であってもよい。このような構成とすれば、折れ曲がり流路よりメンテナンスは容易であり、加工も容易になる。
【0094】
また、本実施形態において、翼環部本体150aの上流側内側隔壁部153は、更に第3冷却流路163を有する。第3冷却流路163は、第1冷却流路161よりも径方向の外側に配置される。第3冷却流路163は、軸線方向に延び、軸回り方向に複数並んで配置される。また、第1連通流路171は、第3冷却流路163及び第1冷却流路161のうち軸線方向の同じ側の端部同士を接続する第2折り返し流路を兼ねている。
図11に示すように、第3冷却流路163、第1冷却流路161及び第2冷却流路162は、回転軸Cから径方向に延びる仮想直線L2上に配置される。なお、第3冷却流路163は、第1冷却流路161より径方向の外側で、軸回り方向に均等に配置されれば良く、仮想直線L2上に配置されなくてもよい。
【0095】
また、本実施形態において、連通流路170は、更に第3連通流路173を有する。第3連通流路173は、軸回り方向に並ぶ第3冷却流路163同士を、軸回り方向に連通する。第3連通流路173は、上流側内側隔壁部153の内部に設けられる。第3連通流路173は、冷却媒体Pが供給される取込流路66に接続される。なお、冷却流路160及び連通流路170の他の構成については、第1実施形態における冷却流路60及び連通流路70とほぼ同様の構成である。
【0096】
本実施形態の冷却流路160の流れの系統図は、
図10に示す。本実施形態の系統図は、第1実施形態の冷却流路60に対して、第3冷却流路163及び第3連通流路173が追加され、第2冷却流路162の形状が折れ曲がり形状(
図8)を有する点が異なるが、他の構成は第1実施形態と同様である。なお、
図10では、第1冷却流路161と第2冷却流路162を接続する流路として、軸線方向下流側の端部に折り返し連通流路175が配置されている。但し、
図6に示す第1実施形態の変形例と同様に、折り返し連通流路175を設けず、径方向に長く延びた矩形状の空間(キャビティ)として形成された折り返し流路165を備えていてもよい。
【0097】
また、本実施形態において、翼環部150は、円筒部151の軸線方向の上流側で、燃焼器12側の端部に尾筒接続部154を有する。尾筒接続部154は、軸回り方向に複数並んで配置される。尾筒接続部154は、尾筒12a側に形成された冷却流路(図示せず)に排気配管82を介して連通する尾筒側連通孔154aと、バイパス流路168(後述する)が接続するバイパス接続孔154bと、冷却流路60を冷却した後の冷却媒体Pを第2連通流路172に集合させ、尾筒側連通孔154aに接続する排出流路154cと、を有する。
【0098】
バイパス流路168は、第1実施形態と同様に、前述した冷却媒体循環機構80から冷却媒体Pを受け入れるバイパス入口管68aと、円筒部151の軸線方向の上流側で軸回り方向に環状に配置され、尾筒接続部154に冷却媒体Pを供給するバイパス接続管168bと、バイパス接続管168bの熱伸びを吸収する熱伸び吸収部168cと、バイパス接続管168bと尾筒接続部154に形成されたバイパス接続孔154bを連結する入口接続管168dと、から形成されている。バイパス接続管168bは、上流側内側隔壁部153の軸線方向上流端の側面153eから軸線方向に離間して配置されている。従って、バイパス流路168を流れる冷却媒体Pの流れが、翼環部本体150aの温度分布に影響を与えるおそれはない。バイパス流路の詳細構造は、第1実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0099】
本実施形態の翼環部150の製造過程を以下に説明する。まず、翼環部本体150aを鋳造又は板金等により製作する。この工程において、翼環部本体150aを構成する円筒部151及び上流側内側隔壁部153は、各冷却流路が接続する軸線方向の末端に配置する連通流路170が機械加工で形成される。すなわち、第1連通流路171及び第2連通流路172並びに折り返し流路(折り返し連通流路175)を形成する軸回り方向に延びる環状溝部を加工する。環状溝部は、円筒部151の軸線方向上流端又は軸線方向下流端から軸線方向の下流側又は上流側に凹む溝状に機械加工で形成される。更に、第3連通流路173を形成する軸回り方向に延びる環状溝部を上流側内側隔壁部153の隔壁溝部153aに機械加工で形成する。第3連通流路173の溝部は、隔壁溝部153aの軸回り方向に沿って底面153cから径方向内側に凹む凹部として形成される。次に、第1冷却流路161及び第3流路173を穿孔による機械加工で形成する。第1冷却流路161は、第1連通流路171側から折り返し流路165(折り返し連通流路175)側に向け穿孔加工する。第3冷却流路173は、第1連通流路171側から第3連通流路173側に向け穿孔加工する。次に、第2冷却流路162を、2段階の穿孔による機械加工で形成する。すなわち、
図8において、第1段階で折り返し流路165又は折り返し連通流路175から軸線方向の上流側のQ点に向けて穿孔による機械加工で第2冷却流路162aを形成する。次に、第2段階として、第2連通流路172側から軸線方向の下流側のQ点に向け機械加工により穿孔加工する。Q点に達したところで、第2冷却流路162a、162bが合体し、第2冷却流路162の全体流路が形成される。次に、第1閉塞部材(蓋板171a)及び第2閉塞部材(尾筒接続部154)並びに蓋板165a又は蓋板175aを翼環部本体150aに溶接加工で取付けて、閉じられた流路である第1連通流路171及び第2連通流路172並びに折り返し流路165又は折り返し連通流路175を形成する。次に、翼環部本体150aに固定された尾筒接続部154上にバイパス流路168を取り付ける。この製作工程により、翼環部150の組立が完了する。
【0100】
以上のように、本実施形態に係る翼環部150は、軸回り方向に並ぶ複数の冷却流路160を、径方向に3段以上に配置することができる。これにより、翼環部150が径方向に亘って効率的に冷却されるため、翼環部150の径方向に温度分布が形成されることをより効率的に抑制できる。
【0101】
また、本実施形態に係る翼環部150は、ガスタービン100の起動時においては、翼環部本体150aを迂回して、バイパス流路168を介して尾筒12a側に冷却媒体Pを効率的に流すことができる。そのため、翼環部本体150aの温度分布に影響せずに運転でき、ガスタービン100の起動時間の短縮が図れる。また、バイパス接続管168bは、熱伸び吸収部168cを備えるため、バイパス接続管168bに生ずる熱応力を抑制できる。
【0102】
<第3実施形態>
続いて、第3実施形態を説明する。
図12は、第3実施形態に係る翼環部250の一部の例を示す断面図である。
図13は、翼環部250の一例を示す斜視図である。第3実施形態では、翼環部250の一部の構成が第2実施形態とは異なるため、第2実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第2実施形態に係る翼環部150と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する。
【0103】
本実施形態に係る翼環部250は、
図12及び
図13に示すように、翼環部本体250aと、尾筒接続部254(第2閉塞部材)と、バイパス流路268を有する。更に、翼環部本体250aは、円筒部251と、下流側内側隔壁部252と、上流側内側隔壁部253と、第1閉塞部材251cと、を有する。本実施形態では、翼環部本体250aの円筒部251又は上流側内側隔壁部253に対して、径方向の第1連通流路271に対応した位置に、閉塞部材251cが、ボルト等の固定部材BTによって軸線方向の上流側から着脱可能に固定された構成となっている。また、尾筒接続部254(第2閉塞部材)は、円筒部251の軸線方向の上流側に突出した端部に接続されているが、円筒部251との接続が、閉塞部材251cと同様に、ボルト等の固定部材BTによって軸線方向の上流側から着脱可能に構成されている。
【0104】
翼環部本体250aの冷却流路260は、第2実施形態と同様に、第1冷却流路261と、第2冷却流路262と、第3冷却流路263と、折り返し流路265(折り返し連通流路275)と、を有する。本実施形態において、第2冷却流路262は、第2実施形態と同様に、折り返し流路265(折り返し連通流路275)に接続される上流側流路262aと、流路開口(第2開口)251eを介して第2連通流路272に接続される下流側流路262bと、を有する。上流側流路262aは、折り返し流路265(折り返し連通流路275)との接続部分である流路開口(第1開口)251dから軸線方向の上流側に向かって、径方向の内側に傾いた状態で直線状に延びている。更に、上流側流路262aは、中間点であるQ点で延伸する方向を変えて径方向外側に屈折して折れ曲がり、下流側流路262bに接続する。下流側流路262bは、軸線方向の上流側に更に延び、流路開口251eを介して第2連通流路272に接続する。すなわち、第2冷却流路262は、中間点Qで径方向の外側に屈折する折れ曲がり流路を形成する。つまり、流路開口251dの中心は、流路開口251eの中心より径方向外側に形成される。また、流路開口251eの中心は、折り返し流路265(折り返し連通流路275)の径方向内側の底面265bより径方向内側に形成されてもよい。この構成では、円筒部251において、第1実施形態の第2冷却流路62より更に径方向の内側に流路を形成することが可能となり、円筒部251の内周面251b近傍の冷却が一層強化される。また、第2冷却流路262は、流路開口251dから流路開口251eまで、直線状に形成された流路であってもよい。このような構成とすれば、折れ曲がり流路よりメンテナンスは容易であり、加工も容易になる。また、翼環部本体250aの連通流路270は、第1連通流路271と、第2連通流路272と、第3連通流路273と、を有する。
【0105】
また、翼環部本体250の第1連通流路271は、円筒部251又は上流側内側隔壁部253の軸線方向の上流側の端部253eにおいて、軸線方向の上流側に向かって開口する第1溝部257として、軸回り方向に環状の溝状に形成されている。第2連通流路272は、円筒部251の軸線方向の上流側の端部である本体上流側端面251fにおいて、軸線方向の上流側に向かって開口する第2溝部258として、軸回り方向に環状の溝状に形成されている。第1溝部257は、第1閉塞部材251cによって閉塞され、第1溝部257との間に環状の第1連通流路271を形成する。同様に、第2溝部258は、尾筒接続部254(第2閉塞部材)によって閉塞され、第2溝部258との間に環状の第2連通流路272を形成する。
【0106】
また、本実施形態における尾筒接続部254と、バイパス流路268の構成は、第2実施形態と同様である。なお、尾筒接続部254は着脱可能な構造とするため、尾筒接続部254に接続するバイパス流路268も着脱可能な構造としている。すなわち、バイパス流路268を構成するバイパス入口管68aと、バイパス接続管268bと、熱伸び吸収部268cと、入口接続管268dも、分解容易な構造で、着脱可能な構造である。また、バイパス接続管268bは、上流側内側隔壁部253の軸線方向上流端の側面253eから軸線方向に離間して配置されている。従って、バイパス流路268を流れる冷却媒体Pの流れが、翼環部本体250aの温度分布に影響を与えるおそれはない。その他の構造は、第2実施形態と同様である。
【0107】
図14は、本実施形態における翼環部の製作工程のフローチャートを示す。まず、鋳造又は板金等により、翼環部本体250aを製作する(S1)。この工程において、翼環部本体250aを構成する円筒部251及び上流側内側隔壁部253は、各冷却流路が接続する軸線方向の末端に配置する連通流路270が機械加工で形成される。具体的には、第1連通流路271を形成する第1溝部257と、第2連通流路272を形成する第2溝部258を機械加工で形成する。第1溝部257及び第2溝部258は、上流側内側隔壁部253の軸線方向上流端である側面253e又は円筒部251の軸線方向の上流端の本体上流側端面251fから軸線方向下流側に凹む凹部であり、軸回り方向に延びる環状の溝状に機械加工で形成される。また、第3連通流路273は、上流側内側隔壁部253の径方向の外表面側の隔壁溝部253aの底面253cから径方向内側に凹む凹部であり、軸回り方向に延びる環状の溝状に機械加工で形成される。折り返し流路265又は折り返し連通流路275は、円筒部251の軸線方向の下流側端面の外表面側から軸線方向上流側に向かって凹む凹部であって、機械加工により軸回り方向に延びる環状溝として形成される。
【0108】
次に、第1冷却流路261及び第3冷却流路263を穿孔による機械加工で形成する(S2)。第1冷却流路261は、第1溝部257側から折り返し連通流路275側に向け穿孔加工される。第3冷却流路263は、第1溝部271側から第3連通流路273側に向け穿孔加工される。また、上流側内側隔壁部253の軸線方向下流側に形成される取込流路66は、下流側内側隔壁部252側から第3連通流路273に向けて穿孔加工により形成される。
【0109】
次に、第2冷却流路262を、2段階の穿孔による機械加工で形成する(S3)。すなわち、
図12において、第1段階で折り返し流路265又は折り返し連通流路275から軸線方向の上流側のQ点に向けて穿孔による機械加工で第2冷却流路262aを形成する。次に、第2段階として、第2溝部258側から軸線方向の下流側のQ点に向け穿孔加工する。Q点に達したところで、第2冷却流路262a、262bが合体し、第2冷却流路262の全体流路が形成される。この段階で、各冷却流路及び各冷却流路を接続するキャビティ(連通流路)が形成される。
【0110】
次に、第1閉塞部材251cを第1溝部257に取付けて、第1連通流路271を形成する(S4)。すなわち、第1閉塞部材251cが、第1連通流路271を形成する第1溝部257の位置に着脱可能にボルト締結され、第1溝部257を閉塞する。更に、各連通流路を形成するキャビティの蓋板273a、265a、275a等を翼環部本体250aに溶接加工で取り付ける。これにより、閉じた第1連通流路271及び第3連通流路273並びに折り返し連通流路275が形成される。
【0111】
次に、第2閉塞部材(尾筒接続部254)を第2溝部258に取付けて、第2連通流路272を形成する(S5)。すなわち、尾筒接続部254を、翼環部本体250aの円筒部251に形成された第2溝部258の位置に対して着脱可能にボルト締結にて取付け、第2溝部258を閉塞する。これにより、閉じた第2連通流路272が形成される。
【0112】
次に、翼環部本体250aに固定された尾筒接続部254上にバイパス流路268を取り付ける。この製作工程により、翼環部250の組立が完了する。
【0113】
なお、本実施形態の翼環部250は、着脱可能に取り付けられ尾筒接続部254(第2閉塞部材)及びバイパス流路268並びに第1閉塞部材251cを取り外すことで、第1溝部257及び第2溝部258が容易に解放される。従って、第1連通流路271側から第1冷却流路261及び第3冷却流路263の内部点検が可能になる。また、第2連通流路272側から第2冷却流路262の内部点検が可能になる。すなわち、第1閉塞部材及び第2閉塞部材を着脱可能な構造としているので、ガスタービンのメンテナンスの際は、全ての冷却流路260(第1冷却流路261、第2冷却流路262、第3冷却流路263)の内部点検が容易になる。
【0114】
このように、本実施形態では、尾筒接続部254(第2閉塞部材)及び第1閉塞部材251cを翼環部本体250aに締結することで容易に翼環部本体250aを形成することができる。また、ガスタービンのメンテナンス等の際には、尾筒接続部254及びバイパス流路268並びに第1閉塞部材251cを翼環部本体250aから取り外すことにより、第1溝部257及び第2溝部258を外部に容易に露出させることができる。このため、全ての冷却流路260(第1冷却流路261、第2冷却流路262、第3冷却流路263)の内部点検が可能となり、メンテナンス作業が容易になる。