特許第6925863号(P6925863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6925863
(24)【登録日】2021年8月6日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】車載器、噴霧システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/00 20060101AFI20210812BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   B60H3/00 J
   B60H1/00 101Q
   B60H1/00 101S
   B60H1/00 102G
   B60H3/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-97891(P2017-97891)
(22)【出願日】2017年5月17日
(65)【公開番号】特開2018-192897(P2018-192897A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中辻 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 佳成
(72)【発明者】
【氏名】黒田 倫太郎
【審査官】 瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−306369(JP,A)
【文献】 特開平04−056625(JP,A)
【文献】 特開2005−231493(JP,A)
【文献】 特開平02−249719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00− 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物を噴霧する噴霧器に接続される車載器であって、
前記噴霧器による噴霧についての車両の搭乗者からの開始指示を検出する検出部と、
前記検出部により開始指示が検出された場合に、車載ネットワークから車両の状態に関する情報を取得し、車内が密室状態にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により、車内が密室状態にないと判定された場合に、密室状態にないために前記噴霧器による噴霧が開始できないことをメッセージ画面に表示したうえで、所定時間待機し、
前記所定時間内に密室状態になった場合には、前記噴霧器による噴霧を開始するよう制御し、
前記所定時間内に密室状態にならなかった場合には、前記噴霧器による噴霧を開始しないよう制御するとともに、密室状態にないために開始しなかったことを前記メッセージ画面に表示する制御部と
を有することを特徴とする車載器。
【請求項2】
前記判定部により、車内が密室状態にないと判定された場合、車内を密室状態にするための指示を、前記車載ネットワークに送信することを特徴とする請求項1に記載の車載器。
【請求項3】
前記車両の状態に関する情報には、少なくとも、前記車両のドアの開閉状態に関する情報、前記車両の窓の開閉状態に関する情報、前記車両のエアコンディショナの空気循環モードに関する情報、のいずれかを含み、
前記車内を密室状態にするための指示には、前記車両の窓を閉状態にするための指示、前記車両のエアコンディショナの空気循環モードを内気循環モードにするための指示、のいずれかを含むことを特徴とする請求項2に記載の車載器。
【請求項4】
収容物を噴霧する噴霧器と、
前記噴霧器に接続される車載器と、
を有する噴霧システムであって、
前記噴霧器による噴霧についての車両の搭乗者からの開始指示を検出する検出部と、
前記検出部により開始指示が検出された場合に、車載ネットワークから車両の状態に関する情報を取得し、車内が密室状態にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により、車内が密室状態にないと判定された場合に、密室状態にないために前記噴霧器による噴霧が開始できないことをメッセージ画面に表示したうえで、所定時間待機し、
前記所定時間内に密室状態になった場合には、前記噴霧器による噴霧を開始するよう制御し、
前記所定時間内に密室状態にならなかった場合には、前記噴霧器による噴霧を開始しないよう制御するとともに、密室状態にないために開始しなかったことを前記メッセージ画面に表示する制御部と
を有することを特徴とする噴霧システム。
【請求項5】
収容物を噴霧する噴霧器に接続される車載器のコンピュータに、
前記噴霧器による噴霧についての車両の搭乗者からの開始指示を検出する検出工程と、
前記検出工程において開始指示が検出された場合に、車載ネットワークから車両の状態に関する情報を取得し、車内が密室状態にあるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程において、車内が密室状態にないと判定された場合に、密室状態にないために前記噴霧器による噴霧が開始できないことをメッセージ画面に表示したうえで、所定時間待機し、
前記所定時間内に密室状態になった場合には、前記噴霧器による噴霧を開始するよう制御し、
前記所定時間内に密室状態にならなかった場合には、前記噴霧器による噴霧を開始しないよう制御するとともに、密室状態にないために開始しなかったことを前記メッセージ画面に表示する制御工程と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器、噴霧システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車内にアロマオイル等を噴霧する車両用の噴霧器(アロマディフューザ)が知られている。当該噴霧器によれば、車両の搭乗者は、車内で芳香療法の効能(覚醒効果、鎮静効果等)を享受することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−231493号公報
【特許文献2】特開平6−227248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用の噴霧器の場合、搭乗者が噴霧開始の指示を入力すると、車内が密室状態にあるか否かに関わらず(例えば、ドアや窓が開いた状態であっても)、噴霧が開始される可能性があった。
【0005】
一方で、車内が密室状態にないにも関わらず噴霧を開始してしまうと、噴霧されたアロマオイルが車外に流出することとなり、搭乗者は芳香療法の効能を十分に享受することができない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、噴霧開始の際、車内が密室状態にあるか否かに応じて噴霧を制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、収容物を噴霧する噴霧器に接続される車載器は、
収容物を噴霧する噴霧器に接続される車載器であって、
前記噴霧器による噴霧についての車両の搭乗者からの開始指示を検出する検出部と、
前記検出部により開始指示が検出された場合に、車載ネットワークから車両の状態に関する情報を取得し、車内が密室状態にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により、車内が密室状態にないと判定された場合に、密室状態にないために前記噴霧器による噴霧が開始できないことをメッセージ画面に表示したうえで、所定時間待機し、
前記所定時間内に密室状態になった場合には、前記噴霧器による噴霧を開始するよう制御し、
前記所定時間内に密室状態にならなかった場合には、前記噴霧器による噴霧を開始しないよう制御するとともに、密室状態にないために開始しなかったことを前記メッセージ画面に表示する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0008】
噴霧開始の際、車内が密室状態にあるか否かに応じて、噴霧を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態における噴霧システムのシステム構成の一例を示す図である。
図2】車両における噴霧システムの搭載例を示す図である。
図3】車載器のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】車載器の噴霧器制御部の機能構成の一例を示す図である。
図5】開始指示検出処理の流れを示す第1のフローチャートである。
図6】判定処理の流れを示すフローチャートである。
図7】制御処理の流れを示すフローチャートである。
図8】第2の実施形態における噴霧システムのシステム構成の一例を示す図である。
図9】開始指示検出処理の流れを示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
[第1の実施形態]
<噴霧システムのシステム構成>
はじめに、車両に搭載される噴霧システムのシステム構成について説明する。図1は、第1の実施形態における噴霧システムのシステム構成の一例を示す図である。図1に示すように、噴霧システム100は、車載器110と、噴霧器120とを有する。なお、本実施形態において、噴霧システム100は、車両の搭乗者の指示に基づいて起動、停止が行われるものとする。
【0012】
車載器110は、例えば、ナビゲーション装置により実現される。車載器110には、噴霧器制御プログラムがインストールされており、車載器110は、当該噴霧器制御プログラムを実行することで、噴霧器制御部111として機能する。
【0013】
噴霧器制御部111は、CAN、Flexray等の車載ネットワーク130と通信可能に接続され、車両状態情報を取得する。噴霧器制御部111が車載ネットワーク130から取得する車両状態情報には、例えば、ドアの開閉状態、窓の開閉状態、エアコンディショナ(以下、エアコンと略す)の空気循環モードに関する情報が含まれる。
【0014】
噴霧器制御部111は、噴霧器120による噴霧についての開始指示を検出した場合に車両状態情報を取得し、取得した車両状態情報に基づいて、車内が密室状態にあるか否かを判定する。また、噴霧器制御部111は、車内が密室状態にあると判定した場合に、噴霧器120に対して、噴霧器制御情報(開始)を送信する。
【0015】
一方、噴霧器制御部111は、車内が密室状態にないと判定した場合には、噴霧器120に対して、噴霧器制御情報(開始)を送信しない(噴霧器120による噴霧の開始を制限する)。ただし、窓を閉状態にすることで密室状態が実現できる場合、噴霧器制御部111は、車載ネットワーク130に対して、車両制御情報として窓の閉指令を送信する。また、エアコンの空気循環モードを内気循環モードにすることで密室状態が実現できる場合、噴霧器制御部111は、車載ネットワーク130に対して、車両制御情報として、内気循環モードへの移行指令を送信する。これにより、所定時間内に密室状態が実現できた場合、噴霧器制御部111は、噴霧器120に対して、噴霧器制御情報(開始)を送信する。
【0016】
噴霧器120は、例えば、赤外線通信等により車載器110と接続される。噴霧器120は、噴霧器制御部111より噴霧器制御情報(開始)を受信した場合に、収容物の噴霧を開始する。なお、本実施形態において、噴霧器120には、収容物として、アロマオイルが収容されているものとする。これにより、噴霧器120は、アロマオイルを噴霧することができる。
【0017】
このように、噴霧器120による噴霧についての開始指示を検出した場合であっても、噴霧器制御部111は、車内が密室状態にないと判定した場合、噴霧器制御情報(開始)を噴霧器120に対して送信しない(噴霧器120による噴霧の開始を制限する)。この結果、噴霧器制御部111によれば、車両の搭乗者が入力する開始指示に従って噴霧器120が噴霧を開始してしまい、アロマオイルが車外に流出してしまうといった事態を回避することができる。また、噴霧器制御部111によれば、アロマオイルが噴霧されるのは密室状態に限られるため、搭乗者はアロマオイルが噴霧された場合に、芳香療法の効能を十分に享受することができる。
【0018】
<噴霧システムの搭載例>
次に、噴霧システム100の車両への搭載例について説明する。図2は、車両における噴霧システムの搭載例を示す図である。車載器110がナビゲーション装置により実現される場合、車載器110は、例えば、図2に示すように、ダッシュボード210内に組み込まれる。一方、噴霧器120は、例えば、図2に示すように、センタコンソール230のドリンクフォルダ240に載置される。図2に示すように、噴霧器120は円筒形状を有しており、ドリンクフォルダ240によって固定される。なお、噴霧器120は、ドリンクフォルダ240によって固定された状態でアロマオイルを車内に噴霧できるよう、上部側面に噴霧口220を有している。
【0019】
<車載器のハードウェア構成>
次に、車載器110のハードウェア構成について説明する。図3は、車載器のハードウェア構成の一例を示す図である。図3に示すように、車載器110は、CPU(Central Processing Unit)301、ROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303を有する。CPU301、ROM302、RAM303は、いわゆるコンピュータを形成する。また、車載器110は、補助記憶デバイス304、操作デバイス305、表示デバイス306、I/F(Interface)デバイス307を有する。なお、車載器110の各部は、バス308を介して相互に接続されている。
【0020】
CPU301は、補助記憶デバイス304にインストールされている各種プログラム(例えば、噴霧器制御プログラム等)を実行するデバイスである。ROM302は、不揮発性メモリであり、補助記憶デバイス304にインストールされた各種プログラムをCPU301が実行するために必要な各種プログラムを格納する、主記憶デバイスとして機能する。RAM303は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM303は、補助記憶デバイス304にインストールされている各種プログラムがCPU301によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0021】
補助記憶デバイス304は、車載器110にインストールされた各種プログラムを記憶する補助記憶デバイスである。操作デバイス305は、車両の搭乗者が、車載器110に対して各種指示を入力する際に用いるデバイスである。表示デバイス306は、車両の搭乗者に対して各種表示画面を表示するためのデバイスである。I/Fデバイス307は、車載器110が、車載ネットワーク130や噴霧器120と通信を行うための通信デバイスである。
【0022】
<車載器の噴霧器制御部の機能構成>
次に、車載器110の噴霧器制御部111の機能構成について説明する。図4は、車載器の噴霧器制御部の機能構成の一例を示す図である。噴霧器制御プログラムが実行されることで実現される噴霧器制御部111には、開始指示検出部410、判定部420、制御部430、表示部440が含まれる。
【0023】
開始指示検出部410は、車両の搭乗者が、噴霧器120によるアロマオイルの噴霧についての開始指示を入力するための開始スイッチを押圧した場合に、これを検出する。開始指示検出部410は、開始指示を検出すると、当該開始指示を判定部420に通知する。
【0024】
判定部420は、開始指示検出部410より開始指示が通知されると、車両状態情報を取得し、車内が密室状態にあるか否かを判定することで、現在の車両の状態がアロマオイルの噴霧に適した状態であるか否かを判断する。判定部420は、車両状態情報に、
・ドアが開状態であることを示す情報、
・窓が開状態であることを示す情報、
・エアコンの空気循環モードが外気循環モードであることを示す情報、
の少なくともいずれか1つが含まれていた場合、車内が密室状態にないと判定し、車両がアロマオイルの噴霧に適した状態でないと判断する。
【0025】
一方、判定部420は、車内が密室状態にあると判定し、アロマオイルの噴霧に適した状態であると判断した場合には、制御部430に対して噴霧可能であることを通知する。なお、判定部420は、車内が密室状態にないと判定し、アロマオイルの噴霧に適した状態でないと判断した場合でも、所定時間内に密室状態になったと判定し、噴霧に適した状態であると判断した場合には、制御部430に対して噴霧可能であることを通知する。
【0026】
更に、判定部420は、制御部430に対して噴霧可能であることを通知した後も、継続的に車両状態情報を取得する。この結果、車内が密室状態にないと判定し、アロマオイルの噴霧に適した状態でなくなったと判断した場合には、制御部430に対して噴霧継続不可能であることを通知する。
【0027】
制御部430は、判定部420より噴霧可能通知を受信した場合には、噴霧器120に対して、噴霧器制御情報(開始)を送信する。また、制御部430は、噴霧器制御情報(開始)を送信してから所定時間が経過した場合、あるいは判定部420より噴霧継続不可能通知を受信した場合には、噴霧器120に対して、噴霧器制御情報(停止)を送信する。
【0028】
表示部440は、噴霧器120による噴霧についての開始指示を入力するための初期画面を表示する。また、表示部440は、判定部420が、アロマオイルの噴霧に適した状態でないと判断した場合に、車両の搭乗者に対してメッセージを提供するメッセージ画面を表示する。また、表示部440は、制御部430により、噴霧器制御情報(開始)が送信された場合、または噴霧器制御情報(停止)が送信された場合に、車両の搭乗者に対して、それぞれ、対応するメッセージを提供するメッセージ画面を表示する。
【0029】
<噴霧器制御処理の流れ>
次に、噴霧器制御部111による噴霧器制御処理の流れについて説明する。車両の搭乗者の指示に基づいて噴霧システム100が起動し、噴霧器制御プログラムが実行されると、噴霧器制御処理が開始される。なお、噴霧器制御処理には、開始指示検出処理と、判定処理と、制御処理とが含まれる。以下、これらの処理の詳細な流れについてそれぞれ説明する。
【0030】
(1)開始指示検出処理の流れ
図5は、開始指示検出処理の流れを示す第1のフローチャートである。ステップS501において、開始指示検出部410は、車載器110の表示デバイス306に表示された初期画面510において、開始スイッチ511が押圧されたか否かを判定する。なお、初期画面510は、車両の搭乗者により"アロマ"スイッチ520が押圧されることで、噴霧システム100が起動し、噴霧器制御プログラムが実行されることで、表示部440によって表示される。
【0031】
ステップS501において、開始スイッチ511が押圧されていないと判定された場合には(ステップS501においてNoの場合には)、ステップS504に進む。一方、ステップS501において、開始スイッチ511が押圧されたと判定された場合には(ステップS501においてYesの場合には)、ステップS502に進む。
【0032】
ステップS502において、表示部440は、開始スイッチ511が押圧されたことに応じて初期画面510の表示態様を変更する(開始スイッチ511の表示態様を変更する)。また、ステップS503において、開始指示検出部410は、検出した開始指示を判定部420に通知し、ステップS504に進む。
【0033】
ステップS504において、開始指示検出部410は、噴霧器制御部111以外の車載器110の機能を実行するための他モードへの移行スイッチが押圧されたか否かを判定する。なお、図5の例において他モードとは、ナビ機能、AV(Audio Visual)機能、TV(Television)機能のいずれかを実行するモードを指す。
【0034】
ステップS504において、他モードへの移行スイッチが押圧されていないと判定した場合には、ステップS501に戻る。一方、ステップS504において、他モードへの移行スイッチが押圧されたと判定した場合、開始指示検出部410は、判定部420及び制御部430に対して、他モードへの移行通知を送信した後に、開始指示検出処理を終了する。これにより、噴霧器制御プログラムが終了するとともに、噴霧システム100が停止し、他モードに移行する。
【0035】
(2)判定処理の流れ
図6は、判定処理の流れを示すフローチャートである。ステップS601において、判定部420は、開始指示検出部410より、開始指示が通知されたか否かを判定する。ステップS601において、開始指示が通知されていないと判定した場合には(ステップS601においてNoの場合には)、ステップS613に進む。一方、ステップS601において、開始指示が通知されたと判定した場合には(ステップS601においてYesの場合には)、ステップS602に進む。
【0036】
ステップS602において、判定部420は、開始指示フラグをオンにする。ステップS603において、判定部420は、車載ネットワーク130より車両状態情報を取得する。これにより、判定部420は、車両状態情報に、ドアが開状態であることを示す情報、窓が開状態であることを示す情報、エアコンの空気循環モードが外気循環モードであることを示す情報のいずれかの情報が含まれているかを判定する。
【0037】
ステップS604において、判定部420は、車内が密室状態にあるか否かを判定する。ステップS603において、いずれの情報も含まれていなかった場合、ステップS604において判定部420は、車内が密室状態にあると判定し(ステップS604においてYes)、アロマオイルの噴霧に適した状態であると判断する。この場合、ステップS605に進み、判定部420は、アロマオイルの噴霧が可能と判定し、制御部430に対して、噴霧可能通知を送信した後、ステップS606に進む。
【0038】
ステップS606において、判定部420は、開始指示フラグがオフになったか否かを判定する。ステップS606において、開始指示フラグがオフになっていないと判定した場合には(ステップS606においてNoの場合には)、ステップS603に戻る。一方、ステップS606において、開始指示フラグがオフになったと判定した場合には、ステップS613に進む。
【0039】
一方、ステップS603において、いずれかの情報が含まれていた場合、ステップS604において、判定部420は、車内が密室状態にないと判定し(ステップS604においてNo)、アロマオイルの噴霧に適した状態でないと判断する。この場合、判定部420は、ステップS607に進み、制御部430に対して、噴霧可能通知を送信済みか否かを判定し、噴霧可能通知を送信済みでないと判定した場合には(ステップS607においてNoの場合には)、ステップS608に進む。
【0040】
ステップS608において、判定部420は、アロマオイルの噴霧に適した状態でないため噴霧を開始できない(噴霧不可能)と判定する。ここで、アロマオイルの噴霧に適した状態でないと判断した理由が、窓が開状態であること、またはエアコンの空気循環モードが外気循環モードであることによるものであったとする。この場合、判定部420は、車載ネットワーク130に対して、車両制御情報として、窓の閉指令または内気循環モードへの移行指令を送信する。また、表示部440は、メッセージ画面620を表示デバイス306に表示する。なお、メッセージ画面620は、車両制御情報として、窓の閉指令を送信した場合のメッセージ画面の一例を示している。
【0041】
このように、判定部420が車両制御情報を送信する構成とすることで、本実施形態によれば、車両の搭乗者の操作回数を減らすことができる。例えば、車両制御情報を送信する構成としなかった場合には、アロマオイルの噴霧を開始するために、搭乗者は、以下のような操作を行う必要がある。
・開始スイッチ511を押圧する操作。
・窓を閉状態にするための操作(あるいは、内気循環モードにするための操作)。
・密室状態になった後に再度行う開始スイッチ511を押圧する操作。
【0042】
これに対して、本実施形態では、判定部420が車両制御情報を送信する構成とすることで、車両の搭乗者は、アロマオイルの噴霧を開始するために、開始スイッチ511を1回押圧するだけで済む。つまり、噴霧開始の際の車両の搭乗者の操作回数を減らすことができる。
【0043】
一方で、アロマオイルの噴霧に適した状態でないと判断した理由が、ドアが開状態であることによるものであったとする。この場合、表示部440は、メッセージ画面630を表示デバイス306に表示する。
【0044】
ステップS609において、判定部420は、ステップS608において表示部440がメッセージ画面620または630の表示を行ってから所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS609において所定時間が経過していないと判定した場合には(ステップS609においてNoの場合には)、ステップS606に進む。一方、ステップS609において、所定時間が経過したと判定した場合には(ステップS609においてYesの場合には)、ステップS610に進む。
【0045】
ステップS610において、判定部420は、開始指示フラグをオフにする。この場合、表示部440は、メッセージ画面640を表示デバイス306に表示する。更に、ステップS611において、表示部440は、表示デバイス306に初期画面510を表示する。
【0046】
このように、開始指示が通知された際に、車内が密室状態になっていない場合、判定部420により、車内が密室状態になるように制御するか、または、表示部440により、車内が密室状態になるように搭乗者に依頼する。この結果、所定時間内に車内が密室状態になれば、判定部420は噴霧可能と判定する。一方、所定時間内に車内が密室状態にならなければ、判定部420は噴霧不可能と判定し、表示部440は、所定のメッセージを表示した後、初期画面510を表示し、ステップS613に進む。
【0047】
一方、ステップS607において、噴霧可能通知を送信済みであると判定した場合には(ステップS607においてYesの場合には)、ステップS612に進む。ステップS612において、判定部420は噴霧継続不可能と判定し、制御部430に通知した後、ステップS613に進む。
【0048】
ステップS613において、判定部420は、開始指示検出部410より、他モードへの移行通知を受信したか否かを判定する。ステップS613において、受信していないと判定した場合には(ステップS613においてNoの場合には)、ステップS601に戻る。一方、ステップS613において、受信したと判定した場合には(ステップS613においてYesの場合には)、判定処理を終了する。
【0049】
(3)制御処理の流れ
図7は、制御処理の流れを示すフローチャートである。ステップS701において、制御部430は、判定部420より、噴霧可能通知を受信したか否かを判定する。ステップS701において、受信していないと判定した場合には(ステップS701においてNoの場合には)、ステップS708に進む。
【0050】
一方、ステップS701において、受信したと判定した場合には(ステップS701においてYesの場合には)、ステップS702に進む。ステップS702において、制御部430は、噴霧器120に対して、噴霧器制御情報(開始)を送信する。これにより、表示部440は、実行中画面710を表示デバイス306に表示する。
【0051】
ステップS703において、制御部430は、判定部420より、噴霧継続不可能通知を受信したか否かを判定する。ステップS703において、噴霧継続不可能通知を受信していないと判定した場合には(ステップS703においてNoの場合には)、ステップS704に進む。
【0052】
ステップS704において、制御部430は、噴霧器制御情報(開始)を送信してから所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS704において、所定時間が経過していないと判定した場合には(ステップS704においてNoの場合には)、ステップS703に戻る。一方、ステップS704において、所定時間が経過したと判定した場合には(ステップS704においてYesの場合には)、ステップS705に進む。
【0053】
ステップS705において、制御部430は、噴霧器120に対して、噴霧器制御情報(停止)を送信するとともに、開始指示フラグをOFFにする。これにより、表示部440は、メッセージ画面730を表示デバイス306に表示する。更に、ステップS706において、表示部440は、初期画面510を表示デバイス306に表示する。
【0054】
このように、噴霧可能通知を受信して噴霧器制御情報(開始)を送信した場合、制御部430は、所定時間の噴霧が完了するまで、判定部420からの噴霧可能/噴霧継続不可能通知を監視する。これにより、制御部430によれば、密室状態のもとでのアロマオイルの噴霧を実現することが可能となる。
【0055】
一方、ステップS703において、噴霧継続不可能通知を受信したと判定した場合には(ステップS703においてYesの場合には)、ステップS707に進む。ステップS707において、制御部430は、噴霧器120に対して、噴霧器制御情報(停止)を送信するとともに、開始指示フラグをオフにする。これにより、表示部440は、メッセージ画面720を表示デバイス306に表示する。なお、メッセージ画面720は、窓が開状態となったことで、噴霧継続不可能通知が送信された場合を示している。更に、ステップS706において、表示部440は、初期画面510を表示デバイス306に表示する。
【0056】
このように、噴霧可能通知を受信して噴霧器制御情報(開始)を送信した場合でも、制御部430は、所定時間の噴霧が完了するまで、判定部420からの噴霧可能/噴霧継続不可能通知を監視する。これにより、アロマオイルの噴霧が開始された後に車内が非密室状態になった場合に、直ちに噴霧を停止することが可能となり、アロマオイルが車外に流出するといった事態を回避することができる。
【0057】
ステップS708において、制御部430は、開始指示検出部410より、他モードへの移行通知を受信したか否かを判定する。ステップS708において、受信していないと判定した場合には(ステップS708においてNoの場合には)、ステップS701に戻る。一方、ステップS708において、受信したと判定した場合には(ステップS708においてYesの場合には)、制御処理を終了する。
【0058】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、第1の実施形態における噴霧システム100は、
・アロマオイルの噴霧を開始するための開始スイッチが押圧された場合に、車載ネットワークにより車両状態情報を取得し、車内が密室状態にあるか否かを判定する。そして、密室状態にあると判定した場合に、噴霧を開始する。
・一方、密室状態にないと判定した場合には、密室状態にするための車両制御情報を車載ネットワークを介して送信し、密室状態になるように制御する。あるいは、密室状態にするように搭乗者にメッセージを表示する。その後、所定時間内に密室状態になった場合には、噴霧を開始する。
【0059】
このように、第1の実施形態における噴霧システム100では、噴霧開始の際、車内が密室状態にあるか否かに応じて噴霧を制御することが可能となる。この結果、第1の実施形態における噴霧システム100によれば、アロマオイルが車外に流出してしまうといった事態を回避することが可能となる。更に、アロマオイルの噴霧により、搭乗者は車内で芳香療法の効能を十分に享受することが可能となる。
【0060】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、搭乗者が初期画面510において開始スイッチ511を押圧したことを、噴霧についての開始指示として検出する構成について説明した。しかしながら、噴霧についての開始指示を検出する構成はこれに限定されず、例えば、生体センサにより搭乗者の生体情報を測定し、アロマオイルを噴霧するための条件を満たした場合に、噴霧についての開始指示を検出したと判定するように構成してもよい。以下、第2の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0061】
<噴霧システムのシステム構成>
図8は、第2の実施形態における噴霧システムのシステム構成の一例を示す図である。図1に示す噴霧システム100との相違点は、図8に示す噴霧システム800の場合、生体センサ810が車載器110に対して、Bluetooth(登録商標)通信等により通信可能に接続されている点である。
【0062】
生体センサ810は、例えば、脳波を測定するセンサであり、運転者に装着される。生体センサ810は、測定により得られた生体情報(例えば、脳波データ)を、車載器110に入力する。なお、生体センサ810は、脳波を測定するセンサに限定されず、例えば、脈波を測定するセンサであってもよい。つまり、生体センサ810は、運転者の生体情報を測定するためのセンサであれば、任意のセンサが適用可能である。
【0063】
また、測定により得られた生体情報に基づいて、噴霧についての開始指示を検出したと判定するケースとして、例えば、運転者の眠気を検出するケースが挙げられる。この場合、噴霧器120により噴霧されるアロマオイルには、覚醒効果のあるアロマオイルが用いられるものとする。なお、生体情報に基づいて噴霧についての開始指示を検出したと判定するケースは、運転者の眠気を検出するケースに限定されず、眠気以外の運転者の状態を検出してもよい。また、生体情報に基づいて噴霧についての開始指示を検出したか否かを判定するにあたっては、例えば、アロマオイルの効能を参照するようにしてもよい。つまり、開始指示検出部410は、車両の運転者の生体情報から、アロマオイルの効能によって変化が見込まれる運転者の状態を検出した場合に、開始指示を検出したと判定する構成としてもよい。
【0064】
<開始指示検出処理の流れ>
図9は、開始指示検出処理の流れを示す第2のフローチャートである。図5に示した第1のフローチャートとの相違点は、ステップS901である。ステップS901において、開始指示検出部410は、車載器110の表示デバイス306に初期画面910が表示されている状態において、開始指示が検出されたか否かを判定する。具体的には、開始指示検出部410は、生体センサ810より送信された生体情報が、所定の条件を満たすか否かを判定する。
【0065】
ステップS901において、所定の条件を満たさないと判定した場合には(ステップS901においてNoの場合には)、ステップS504に進む。一方、ステップS901において、所定の条件を満たすと判定した場合には(ステップS901においてYesの場合には)、ステップS502に進む。この場合、表示部440は、初期画面910に運転者の眠気が検出されたこと示すメッセージを表示する。
【0066】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、第2の実施形態における噴霧システム800は、上記第1の実施形態に加えて、運転者の生体情報を測定し、アロマオイルの効能によって変化が見込まれる状態か否かを判定する。
【0067】
これにより、第2の実施形態における噴霧システム800によれば、上記第1の実施形態における効果に加え、搭乗者が開始スイッチ511を押圧しなくても、必要に応じて自動でアロマオイルの噴霧を開始することが可能になるという効果を享受できる。
【0068】
[その他の実施形態]
上記第1及び第2の実施形態では、噴霧器120が噴霧する収容物として、アロマオイルを例に挙げたが、アロマオイル以外の収容物を噴霧してもよいことはいうまでもない。
【0069】
また、上記第2の実施形態では、生体センサ810を運転者に装着するものとして説明したが、生体センサ810は、運転者以外の他の搭乗者に装着してもよいことはいうまでもない。
【0070】
また、上記第1及び第2の実施形態では、車載器110と噴霧器120との間を赤外線通信により接続するものとして説明したが、他の近距離無線通信により接続してもよい。あるいは有線により接続してもよい。同様に、第2の実施形態では、生体センサ810と車載器110との間をBluetooth(登録商標)通信により接続するものとして説明したが、他の近距離無線通信により接続してもよい。あるいは有線により接続してもよい。
【0071】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0072】
100 :噴霧システム
110 :車載器
111 :噴霧器制御部
120 :噴霧器
220 :噴霧口
410 :開始指示検出部
420 :判定部
430 :制御部
440 :表示部
510 :初期画面
620〜640 :メッセージ画面
710 :実行中画面
720、730 :メッセージ画面
810 :生体センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9