特許第6925894号(P6925894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6925894光装置、通信システム及び合波/分波方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6925894
(24)【登録日】2021年8月6日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】光装置、通信システム及び合波/分波方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/26 20060101AFI20210812BHJP
   G02B 6/28 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   G02B6/26
   G02B6/28 V
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-134751(P2017-134751)
(22)【出願日】2017年7月10日
(65)【公開番号】特開2019-15910(P2019-15910A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2019年4月5日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成21年度 国立研究開発法人科学技術振興機構研究成果展開事業 戦略的イノベーション創出推進プログラム、 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000101385
【氏名又は名称】アダマンド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】各務 学
(72)【発明者】
【氏名】中尾 朱里
(72)【発明者】
【氏名】山下 達弥
(72)【発明者】
【氏名】水野 充彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘幸
【審査官】 佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−089810(JP,A)
【文献】 特開昭62−014609(JP,A)
【文献】 特開2004−101657(JP,A)
【文献】 特開2007−047320(JP,A)
【文献】 特開2013−113890(JP,A)
【文献】 特開昭62−215209(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0219621(US,A1)
【文献】 韓国特許第10−2012−0122095(KR,B1)
【文献】 米国特許第4889403(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00−6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線光導波路に対して合波又は分波を行う光装置において、
グレーデッドインデックス型マルチモード光導波路であって、モード群毎に伝搬する信号のチャネルが形成されるモード群分割多重伝送路を構成する幹線光導波路と、
前記幹線光導波路に連続し、屈曲したマルチモード光導波路から成るモード変換光導波路と、
前記モード変換光導波路に連続しその屈曲方向に伸びたグレーデッドインデックス型マルチモード光導波路から成る第1光導波路と、
マルチモード光導波路から成り前記モード変換光導波路の外周屈曲面に前記幹線光導波路の軸方向に接合した接続光導波路と、
前記接続光導波路に連続したグレーデッドインデックス型マルチモード光導波路から成る第2光導波路と、
を有し、
前記幹線光導波路における複数の前記モード群を高次モード群と低次モード群とに2分する時、前記モード変換光導波路は、前記低次モード群の信号は伝搬させ、前記高次モード群の信号は前記接続光導波路の側に漏洩させて、より低次のモード群の信号として前記接続光導波路とこれに続く前記第2光導波路に伝搬させ、逆に、前記接続光導波路を前記第2光導波路から前記モード変換光導波路に向けて伝搬する低次のモード群の信号は、前記高次モード群の信号に変換して前記モード変換光導波路に結合させる光導波路であり、 前記モード変換光導波路のコアは前記幹線光導波路の軸に垂直な断面における前記低次モード群の信号が伝搬する領域に接続され、前記モード変換光導波路のコアの直径は前記領域の直径に等しく、
前記第1光導波路はグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバであり、前記モード変換光導波路は、前記第1光導波路の先端から連続して前記幹線光導波路の先端に接合して屈曲した自己形成光導波路、又は、前記幹線光導波路の先端から連続して前記第1光導波路の先端に接合して屈曲した自己形成光導波路、又は、前記第1光導波路の先端に連続した自己形成光導波路と前記幹線光導波路の先端に連続した自己形成光導波路とが接続されて屈曲した状態の自己形成光導波路である
ことを特徴とする光装置。
【請求項2】
幹線光導波路に対して合波又は分波を行う光装置において、
グレーデッドインデックス型マルチモード光導波路であって、モード群毎に伝搬する信号のチャネルが形成されるモード群分割多重伝送路を構成する幹線光導波路と、
前記幹線光導波路に連続し、屈曲したマルチモード光導波路から成るモード変換光導波路と、
前記モード変換光導波路に連続しその屈曲方向に伸びたグレーデッドインデックス型マルチモード光導波路から成る第1光導波路と、
マルチモード光導波路から成り前記モード変換光導波路の外周屈曲面に前記幹線光導波路の軸方向に接合した接続光導波路と、
前記接続光導波路に連続したグレーデッドインデックス型マルチモード光導波路から成る第2光導波路と、
を有し、
前記幹線光導波路における複数の前記モード群を高次モード群と低次モード群とに2分する時、前記モード変換光導波路は、前記低次モード群の信号は伝搬させ、前記高次モード群の信号は前記接続光導波路の側に漏洩させて、より低次のモード群の信号として前記接続光導波路とこれに続く前記第2光導波路に伝搬させ、逆に、前記接続光導波路を前記第2光導波路から前記モード変換光導波路に向けて伝搬する低次のモード群の信号は、前記高次モード群の信号に変換して前記モード変換光導波路に結合させる光導波路であり、 前記接続光導波路のコアの直径は、前記幹線光導波路の軸に垂直な断面における前記低次モード群の信号が伝搬する領域の直径に等しく、
前記第2光導波路と前記幹線光導波路はグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバであり、前記第1光導波路及び前記モード変換光導波路は前記幹線光導波路の一部として構成され、前記接続光導波路のコアは前記モード変換光導波路のクラッドに接続されており、
前記接続光導波路のコアの中心軸の前記モード変換光導波路の前記外周屈曲面の前記クラッドに対する接続位置は、前記幹線光導波路のコア半径をr c 、前記接続光導波路のコア半径をr1 とする時、r c −r1 よりも小さい範囲で、前記幹線光導波路の中心軸から屈曲の外側方向に変位している
ことを特徴とする光装置。
【請求項3】
前記接続光導波路のコアの直径は前記幹線光導波路のコアの直径に等しく、前記接続光導波路は前記モード変換光導波路の外周屈曲面及び前記幹線光導波路の前記高次モード群の信号が伝搬する領域に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光装置。
【請求項4】
前記モード変換光導波路の前記外周屈曲面は、前記低次モード群は前記モード変換光導波路において導波モードを維持し、前記高次モード群は前記モード変換光導波路において漏洩モードとなるように曲げられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の光装置。
【請求項5】
前記接続光導波路は前記第2光導波路の先端から伸びて前記モード変換光導波路の前記外周屈曲面に接続された自己形成光導波路であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の光装置。
【請求項6】
前記接続光導波路は前記モード変換光導波路の前記外周屈曲面から伸びた自己形成光導波路と前記第2光導波路の先端から伸びた自己形成光導波路とが接続された自己形成光導波路であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光装置。
【請求項7】
前記接続光導波路は、前記第2光導波路の先端部の一部分であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の光装置。
【請求項8】
前記接続光導波路のコアの屈折率は、前記モード変換光導波路のコアの屈折率よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の光装置。
【請求項9】
前記接続光導波路のコアの屈折率は、前記モード変換光導波路のコアの屈折率よりも小さく、前記接続光導波路のコアと前記モード変換光導波路のコアとが、直接、接合していることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の光装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の光装置をA端光装置とし、請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の光装置をB端光装置とし、前記A端光装置の前記幹線光導波路と前記B端光装置の前記幹線光導波路とが連続して幹線光導波路を構成し、
前記A端光装置の前記第2光導波路と、前記B端光装置の前記第2光導波路とに、前記モード変換光導波路により前記高次モード群と相互変換され前記幹線光導波路に結合する、より低次のモード群の信号を伝送させ、
前記A端光装置の前記第1光導波路と、前記B端光装置の前記第1光導波路とに、前記低次モード群の信号を伝送させることにより、
前記A端光装置と前記B端光装置との間でモード群分割多重通信を行うようにした通信システム。
【請求項11】
グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバから成る幹線光導波路の一部分を屈曲させた第1屈曲部の外周屈曲面に他の第1グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを直接接合させ、又は、前記第1屈曲部の前記外周屈曲面に前記第1グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを前記第1グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバに連続したマルチモード光導波路から成る第1接続光導波路を介して接合させ、前記幹線光導波路の他の部分を屈曲させた第2屈曲部の外周屈曲面に他の第2グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを直接接合させ、又は、前記第2屈曲部の前記外周屈曲面に前記第2グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを前記第2グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバに連続したマルチモード光導波路から成る第2接続光導波路を介して接合させた光導波路を有し、
前記第1屈曲部及び前記第2屈曲部において、前記幹線光導波路と前記第1グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバ又は前記第1接続光導波路との間、及び、前記幹線光導波路と前記第2グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバ又は前記第2接続光導波路との間で、モード群の次数を変化させて、分波又は合波することにより、前記第1屈曲部及び前記第2屈曲部間の幹線光導波路を伝搬する信号をモード群分割多重化して通信を行うことを特徴とするモード群分割多重通信システム。
【請求項12】
グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバから成る幹線光導波路の一部分を屈曲させた屈曲部の外周屈曲面に他のグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを直接接合させ、又は、前記屈曲部の前記外周屈曲面に前記他のグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを前記他のグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバに連続したマルチモード光導波路から成る接続光導波路を介して接続させて、
前記屈曲部により、前記幹線光導波路を伝搬するモード群分割多重信号から低次モード群の信号を前記幹線光導波路方向に分波する一方、高次モード群の信号を、より低次のモード群にモード変換して前記他のグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバの方向に分波し、
又は、前記屈曲部により、低次モード群の信号を前記幹線光導波路方向に合波する一方、他のグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを伝搬するより低次のモード群の信号を高次モード群にモード変換して前記幹線光導波路に合波させたことを特徴とするモード群分割多重通信方法における合波/分波方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モード群分割多重通信を実現するための光装置、通信システム及び合波/分波方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非特許文献1に開示されているように、グレーデッド・インデックス・マルチモード・光ファイバ(以下、「GI−MMF」という)を用いて、コアの中心軸に近い程、低次モード群信号、中心軸から離れるに連れて高次モード群信号を伝搬させるモード群分割多重方式が知られている。
【0003】
そして、GI−MMFから低次モード群信号と、高次モード群信号を分波して検出するために、GI−MMFを2分岐させ、一方のGI−MMFの出力端面に、その中心軸に軸を一致させてシングルモード・ファイバ(以下、「SMF」という)を配置して低次モード群信号を抽出している。分岐された他方のGI−MMFは出力端面から光を出射させて光学レンズにより平行光線とした後、中心軸付近の光をマスクで除去した後に、集光レンズで集光させた後に、他のGI−MMFに入射させることで高次モード群信号を抽出している。
【0004】
一方、特許文献1、非特許文献2に開示のように、光ファイバーを屈曲させて、屈曲部の外周屈曲面から光を分岐させることは知られている。さらに、特許文献2に開示されているように、自己形成光導波路も確立した技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】平成10−54915
【特許文献2】特開2000−347043
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Y.Li, J.D.Ingham, V.F.Olle, G,Gordon, R,V,Penty, and I,H,White"20 Gb/s Mode-Group-Division Multiplexing employing Hermite-Gaussian Launches over Worst-Case Multimode Fiber Links," OFC, Optical Society of America, 2014.
【非特許文献2】M.Kagami, Y.Sakai and H.Okada, "Variable-ratio tao for plastic optical fiber," Applied Optics, Vol.30, No.6 pp.645-649, 1991.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記非特許文献1に開示されたGI−MMFを用いたモード分割多重方式では、高次モード群信号を抽出するのに、一旦、GI−MMFの端面から光を出射して光学系を用いて低次モード群信号を除去しているので、分波の構成が複雑となり現実的ではない。また、GI−MMFの光出力端面にリング状に分布する高次モード群信号を分波するのに、光出力端面の一部にSMFの端面を配設する方法も考えられるが、結合効率が小さく高次モード群の受信電力が小さいという問題がある。また、位置合わせも困難である。
【0008】
また、合波する信号送信端においては、SMFを伝搬した光信号をSMFの端面から、一旦、出射させて、レンズ、マスク等を用いた光学系により伝搬角を制御して高次モード群信号に変換して、GI−MMFに入射させている。そして、ビームスプリッタを用いて、他のSMFを伝搬した光信号を低次モード群信号として、これに高次モード群信号を合波している。
【0009】
このように、光を送信する側においても、レンズ、マスク、ビームスプリッタ等の光学系を用いていることから、機構が複雑となる。結局、従来提案されているGI−MMFを用いたモード群分割多重通信システムは、送信側、受信側の双方において、レンズ等の光学系が使用され、使用環境の厳しい自動車等に搭載される信号伝送路として用いる場合には実用的ではない。
【0010】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的はGI−MMFを用いてモード群分割多重通信システム及びモード群の分波及び合波を簡単な構成で実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための第1の発明の構成は、幹線光導波路に対して合波又は分波を行う光装置において、グレーデッドインデックス型マルチモード光導波路であって、モード群毎に伝搬する信号のチャネルが形成されるモード群分割多重伝送路を構成する幹線光導波路と、幹線光導波路に連続し、屈曲したマルチモード光導波路から成るモード変換光導波路と、モード変換光導波路に連続しその屈曲方向に伸びたグレーデッドインデックス型マルチモード光導波路から成る第1光導波路と、マルチモード光導波路から成りモード変換光導波路の外周屈曲面に幹線光導波路の軸方向に接合した接続光導波路と、接続光導波路に連続したグレーデッドインデックス型マルチモード光導波路から成る第2光導波路と、を有し、幹線光導波路における複数のモード群を高次モード群と低次モード群とに2分する時、モード変換光導波路は、低次モード群の信号は伝搬させ、高次モード群の信号は接続光導波路の側に漏洩させて、より低次のモード群の信号として接続光導波路とこれに続く第2光導波路に伝搬させ、逆に、接続光導波路を第2光導波路からモード変換光導波路に向けて伝搬する低次のモード群の信号は、高次モード群の信号に変換してモード変換光導波路に結合させる光導波路であり、モード変換光導波路のコアは幹線光導波路の軸に垂直な断面における低次モード群の信号が伝搬する領域に接続され、モード変換光導波路のコアの直径はその領域の直径に等しく、第1光導波路はグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバであり、モード変換光導波路は、第1光導波路の先端から連続して幹線光導波路の先端に接合して屈曲した自己形成光導波路、又は、幹線光導波路の先端から連続して第1光導波路の先端に接合して屈曲した自己形成光導波路、又は、第1光導波路の先端に連続した自己形成光導波路と幹線光導波路の先端に連続した自己形成光導波路とが接続されて屈曲した状態の自己形成光導波路であることを特徴とする光装置である。
また、他の第2の発明は、幹線光導波路に対して合波又は分波を行う光装置において、グレーデッドインデックス型マルチモード光導波路であって、モード群毎に伝搬する信号のチャネルが形成されるモード群分割多重伝送路を構成する幹線光導波路と、幹線光導波路に連続し、屈曲したマルチモード光導波路から成るモード変換光導波路と、モード変換光導波路に連続しその屈曲方向に伸びたグレーデッドインデックス型マルチモード光導波路から成る第1光導波路と、マルチモード光導波路から成りモード変換光導波路の外周屈曲面に幹線光導波路の軸方向に接合した接続光導波路と、接続光導波路に連続したグレーデッドインデックス型マルチモード光導波路から成る第2光導波路と、を有し、幹線光導波路における複数のモード群を高次モード群と低次モード群とに2分する時、モード変換光導波路は、低次モード群の信号は伝搬させ、高次モード群の信号は接続光導波路の側に漏洩させて、より低次のモード群の信号として接続光導波路とこれに続く第2光導波路に伝搬させ、逆に、接続光導波路を第2光導波路からモード変換光導波路に向けて伝搬する低次のモード群の信号は、高次モード群の信号に変換してモード変換光導波路に結合させる光導波路であり、接続光導波路のコアの直径は、幹線光導波路の軸に垂直な断面における低次モード群の信号が伝搬する領域の直径に等しく、第2光導波路と幹線光導波路はグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバであり、第1光導波路及びモード変換光導波路は幹線光導波路の一部として構成され、接続光導波路のコアはモード変換光導波路のクラッドに接続されており、接続光導波路のコアの中心軸のモード変換光導波路の外周屈曲面のクラッドに対する接続位置は、幹線光導波路のコア半径をr c 、接続光導波路のコア半径をr1 とする時、r c −r1 よりも小さい範囲で、幹線光導波路の中心軸から屈曲の外側方向に変位していることを特徴とする光装置である。
【0012】
以下の説明は各発明に共通の事項である。幹線光導波路をある伝搬角(光導波路の中心軸と成す角)で伝搬する光の光路を表す伝搬モードを意味する。したがって、モード群は、所定範囲の伝搬角を有する光束を意味し、モードの次数は伝搬角に対応している。伝搬角が大きい程、モード次数は高くなる。したがって、高次モード群と低次モード群は、幹線光導波路における光の伝搬角範囲に対応している。
【0013】
上記発明において、接続光導波路はステップインデックス型マルチモード光導波路であってもグレーデッドインデックス型マルチモード光導波路であっても良い。接続光導波路は、モード変換光導波路に至る前の幹線光導波路の中心軸の方向に、モード変換光導波路の外周屈曲面に接合している。接続光導波路のコア径と幹線光導波路のコア径とが等しい場合には、接続光導波路は幹線光導波路と同軸であることが最も望ましいが、多少、軸がずれていても良い。同軸である場合には、モード変換光導波路と接続光導波路との結合は概ね最大となるので望ましい。外周屈曲面の半径方向ベクトルに垂直な接面が幹線光導波路の軸に平行に近くなる領域(以下、「高変換領域」という)ほど、モード変換に係わるモード群のモード変換光導波路と接続光導波路との結合が大きくなる。また、接続光導波路のコア径が幹線光導波路のコア径よりも小さい場合には、接続光導波路のモード変換光導波路の外周屈曲面に対する接合位置は、限定されないが、上記の高変換領域に接合させることが望ましい。
【0014】
本発明において、光装置は、次の場合を含んでいる。第1は、図1に示すように、幹線光導波路、モード変換光導波路、第1光導波路、接続光導波路及び第2光導波路で構成され、必要により、外部光導波路を接続するためのコネクタを有した分波又は合波する装置である。第2は、図10図11に示すようにA端局とB端局とを幹線光導波路で接続した通信システムにおけるA端局又はB端局での合波又は分波を行う光コネクタを有さない上記構成を有する部分である。第3は、合波又は分波を行う部分と幹線光導波路が他の端局まで延長されている構成とする場合である。
【0015】
上記の発明において、高次モード群と低次モード群とは単一チャネルとは限らない。それぞれのモード群は複数のチャネルで多重化されていても良い。すなわち、第1光導波路又は/及び第2光導波路を、幹線光導波路と見なして本発明の光装置を接続することを繰り返して、樹枝路を形成すれば、単一チャネル毎の信号に分波し、単一チャネル毎の信号を順次合波することができる。
【0016】
上記の発明において、低次モード群はモード変換光導波路において導波モードが維持され、高次モード群はモード変換光導波路において漏洩モードとなるように、モード変換光導波路の外周屈曲面は曲げられていることが望ましい。モード変換光導波路の外周屈曲面は一定の曲率であっても、光の進行方向に沿って分布した曲率であっても良い。
幹線光導波路を伝搬するある一定の伝搬角を有する一つの光線に関して、モード変換光導波路の外周屈曲面の曲率(1/曲率半径)が大きい程、コアとクラッドとの境界面(以下、単に、「屈曲面」という)に入射するその光線の入射角(屈曲面の法線に対する角)は小さくなる。この入射角が臨界角より小さくなると、その光は漏洩モードとなり外周屈曲面から外部に漏れ、モード変換光導波路を伝搬しない。
【0017】
外周屈曲面に対する入射角が臨界角に等しくなる光線の幹線光導波路における伝搬角をモード分離伝搬角と定義する。すなわち、モード分離伝搬角は、モード変換光導波路を伝搬することができる光線の幹線光導波路における最大伝搬角を意味する。上述したことにより、外周屈曲面の曲率が大きくなる程、モード分離伝搬角は小さくなる。すなわち、外周屈曲面の曲率が大きくなる程、幹線光導波路おける低次モード群の伝搬角範囲は狭くなり、高次モード群の伝搬角範囲は広くなる。したがって、モード変換光導波路の外周屈曲面の曲率が大きい程、より低次モードの光が外周屈曲面から接続光導波路の中心軸方向に漏れるようになる。光は外周屈曲面から接続光導波路の中心軸方向に漏れて第2光導波路を伝搬するので、高次モードが、より低次のモードに変換されることになる。漏れない次数モードの光は屈曲面に対する入射角が臨界角以上であり、導波モードが維持されてモード変換光導波路を伝搬する。
【0018】
したがって、モード変換光導波路の導波モードと漏洩モードの次数は、モード変換光導波路の外周屈曲面の曲率により決定される。曲率が大きい程、伝搬モードの次数は少なくなり、漏洩モードの次数は多くなる。導波モードと漏洩モードの概念は、完全に伝送と漏洩とがある次数で分離されるだけではなく、復調が可能な混信が起こらない程度に分離している場合を含む。
【0019】
また、上記発明において、接続光導波路は第2光導波路の先端から伸びてモード変換光導波路の外周屈曲面に接続された自己形成光導波路とすることができる。この自己形成光導波路はステップインデックス型光導波路であっても、グレーディッドインデックス型光導波路であっても良い。自己形成光導波路は、光硬化すると屈折率が高くなる光硬化性樹脂液に直線状の光を照射することで、新たに形成された硬化部分に光を閉じ込めながら硬化部分を伸長させて形成される光導波路である。自己形成光導波路は、既に、製造技術が確立されており、形成された光導波路は自己形成であることが分析可能である。したがって、自己形成光導波路は、光導波路の性状を表し、構造特定用語として確立している。この構造を採用することで、モード変換光導波路と接続光導波路との接続構造を確実且つ容易に実現できる。外周屈曲面のうち接続光導波路が接続される部分は、クラッドがあってもなくとも良い。モード変換光導波路のコアに直接接続する場合には、接続光導波路のコアの屈折率をモード変換光導波路のコアの屈折率よりも小さくすることが必要である。
【0020】
また、接続光導波路はモード変換光導波路の外周屈曲面から伸びた自己形成光導波路と第2光導波路の先端から伸びた自己形成光導波路とが接続された自己形成光導波路としても良い。モード変換光導波路の外周屈曲面のうち接続光導波路が接続される部分は、クラッドがあってもなくととも良い。モード変換光導波路のコアに、直接、自己形成光導波路が接続される場合、自己形成光導波路(コア)の屈折率はモード変換光導波路のコアの屈折率よりも小さくする。外周屈曲面にクラッドがなくとも光硬化性樹脂の屈折率がモード変換光導波路のコアの屈折率よりも小さいならば、樹脂がクラッドの作用をするので、次数の高いモードの光がより多く光硬化性樹脂に漏れる。製造過程においては、モード変換光導波路のコアの屈折率よりも光硬化性樹脂液の屈折率が小さいならば、次数の高いモードの硬化光が外周屈曲面から外部の樹脂液に漏れ、漏れた光は、低次のモードとなり幹線光導波路の中心軸方向に光硬化性樹脂液中を進行する。これにより、外周屈曲面から外部に向かって形成される自己形成光導波路は直線状となる。
【0021】
また、接続光導波路は、第2光導波路の先端部の一部分であっても良い。例えば、第2光導波路をグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバとするとき、その光ファイバーの先端領域を接続光導波路とすることができる。この場合には、第2光導波路の光ファイバーをモード変換光導波路の外周屈曲面に、直接、接合することになる。
【0022】
また、接続光導波路のコアとモード変換光導波路のコアとが、直接、接合しており、接続光導波路のコアの屈折率は、モード変換光導波路のコアの屈折率よりも小さくしても良い。この場合には接続光導波路のコアが、モード変換光導波路との接合部においてクラッドの作用をする。接続光導波路を自己形成光導波路とする時は、その自己形成光導波路のコアがモード変換光導波路のコアに直接、接合することになる。
【0023】
また、上記発明において、第1光導波路と第2光導波路と幹線光導波路はグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバである。第1光導波路及びモード変換光導波路は幹線光導波路の一部として構成され、接続光導波路のコアはモード変換光導波路のクラッドに接続されていても良い。接続光導波路が自己形成光導波路であれば、この自己形成光導波路のコアがモード変換光導波路のクラッドに接続される。接続光導波路が第2光導波路の光ファイバであれば、その光ファイバのコアがモード変換光導波路のクラッドに接続される。
また、外周屈曲面に接続された接続光導波路のコアの屈折率は、モード変換光導波路のコアの屈折率よりも小さいことが望ましい。この場合、外周屈曲面から漏れ出た高次モードの光は、より低次モードの光に変換されて接続光導波路に入射することになるので望ましい。
【0024】
上記第1の発明においては、モード変換光導波路は第1光導波路の先端から連続して幹線光導波路の先端に接合し、又は、幹線光導波路の先端から連続して第1光導波路の先端に接合して、屈曲した自己形成光導波路としている。
または、モード変換光導波路は、第1光導波路の先端に連続した自己形成光導波路と幹線光導波路の先端に連続した自己形成光導波路とが接続されて屈曲した状態の自己形成光導波路としている。
【0025】
また、モード変換光導波路のコアは幹線光導波路の軸に垂直な断面における低次モード群の信号が伝搬する領域(以下、「低次モード群伝搬領域」という)に接続され、モード変換光導波路のコアの直径(以下、光導波路の如何に係わらずコアの直径を「コア径」という)は低次モード群伝搬領域の直径に等しくしている(第1の発明)。また、接続光導波路のコア径は、低次モード群伝搬領域の直径に等しくしている(第2の発明)。
【0026】
モード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径との関係は、次の4つの組み合わせの場合がある。第1の場合は、モード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径と幹線光導波路のコア径とが共に等しい場合である。第2の場合は、モード変換光導波路のコア径が低次モード群伝搬領域の直径に等しく、接続光導波路のコア径が幹線光導波路のコア径に等しい場合である。第3の場合は、モード変換光導波路のコア径が幹線光導波路のコア径に等しく、接続光導波路のコア径が低次モード群伝搬領域の直径に等しい場合である。第4の場合は、モード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径は、共に、低次モード群伝搬領域の直径に等しい場合である。なお、モード変換光導波路のコア径が低次モード群伝搬領域の直径に等しい場合には、当然に、モード変換光導波路のコアは幹線光導波路の低次モード伝搬領域に接合される。第1の場合と第2の場合と第4の場合は、接続光導波路は幹線光導波路と同軸に配設される。第3の場合には、コア径の小さい接続光導波路のコアの先端は、コア径の大きいモード変換光導波路の外周屈曲面の任意の位置に接合しても良いが、上述の高変換領域に接合されることが最も望ましい。
【0027】
他の第3の発明は、上述した光装置を用いたモード群分割多重通信システムである。
すなわち、他の発明は、上記の光装置(請求項1乃至請求項9の何れか)をA端光装置とし、上記の光装置(請求項1乃至請求項9の何れか)をB端光装置とし、A端光装置の幹線光導波路とB端光装置の幹線光導波路とが連続して幹線光導波路を構成し、A端光装置の第2光導波路と、B端光装置の第2光導波路とに、モード変換光導波路により高次モード群と相互変換され幹線光導波路に結合する、より低次のモード群の信号を伝送させ、A端光装置の第1光導波路と、B端光装置の第1光導波路とに、低次モード群の信号を伝送させることにより、A端光装置とB端光装置との間でモード群分割多重通信を行うようにした通信システムである。
【0028】
また、他の第4の発明は、グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバから成る幹線光導波路の一部分を屈曲させた第1屈曲部の外周屈曲面に他の第1グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを直接接合させ、又は、第1屈曲部の外周屈曲面に第1グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバをその第1グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバに連続したマルチモード光導波路から成る第1接続光導波路を介して接合させ、幹線光導波路の他の部分を屈曲させた第2屈曲部の外周屈曲面に他の第2グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを直接接合させ、又は、第2屈曲部の外周屈曲面に第2グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを第2グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバに連続したマルチモード光導波路から成る第2接続光導波路を介して接合させた光導波路を有し、第1屈曲部及び第2屈曲部において、幹線光導波路と第1グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバ又は第1接続光導波路との間、及び、幹線光導波路と第2グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバ又は第2接続光導波路との間で、モード群の次数を変化させて、分波又は合波することにより、第1屈曲部及び第2屈曲部間の幹線光導波路を伝搬する信号をモード群分割多重化して通信を行うことを特徴とするモード群分割多重通信システムである。
【0029】
上記の通信システムの発明は、図10図11に示すように、A端光装置とB端光装置の幹線光導波路を連続させた通信システムである。この発明においては、A端光装置又は一方の屈曲部において異なるチャネルの信号を合波して、B端光装置又は他方の屈曲部においてそれらのチャネルの信号を分波して通信を行うことができる。また、A端光装置又は一方の屈曲部において、あるaチャネルの信号を合波し他のbチャネルの信号を分波し、B端光装置又は他方の屈曲部において、aチャネルの信号を分波し他のbチャネルの信号を合波しても良い。この場合には、aチャネルとbチャネルとを用いて双方向全二重通信を行うことができる。
【0030】
また、他の第5の発明は、グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバから成る幹線光導波路の一部分を屈曲させた屈曲部の外周屈曲面に他のグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを直接接合させ、又は、屈曲部の外周屈曲面に他のグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを他のグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバに連続したマルチモード光導波路から成る接続光導波路を介して接続させて、屈曲部により、幹線光導波路を伝搬するモード群分割多重信号から低次モード群の信号を幹線光導波路方向に分波する一方、高次モード群の信号を、より低次のモード群にモード変換して他のグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバの方向に分波し、又は、屈曲部により、低次モード群の信号を幹線光導波路方向に合波する一方、他のグレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバを伝搬するより低次のモード群の信号を高次モード群にモード変換して幹線光導波路に合波させたことを特徴とするモード群分割多重通信方法における合波/分波方法である。
この方法により低次モード群と高次モード群との合波と分波とを実現できるので、安価なグレーデッドインデックス型マルチモード光導波路を用いた実用的なモード群分割多重通信方法が可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、簡単な構成で、グレーデッドインデックス型マルチモード光導波路を用いたモード群分割多重通信を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施例1に係る光装置の構成図。
図2】実施例1の装置における幹線光導波路に多重化されるモード群を示した説明図。
図3】実施例1の自己形成光導波路の他の例の構成図。
図4】実施例1の自己形成光導波路の他の例の構成図。
図5】実施例1のGI−MMFの屈折率分布を示した特性図。
図6】実施例1のモード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径との関係を示した構成図。
図7】モード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径とが図6の関係にある場合であって、幹線光導波路の高次モード群の光が幹線光導波路から第2光導波路に向けて伝搬したときの第2光導波路における光のEAF特性。
図8】実施例1のモード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径との他の関係を示した構成図。
図9】実施例1のモード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径との他の関係を示した構成図。
図10】本発明の実施例2に係るモード群分割多重通信システムの構成図。
図11】本発明の実施例2に係る他のモード群分割多重通信システムの構成図。
図12】実施例3に係る通信システムにおいて、グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバの開口数とモード群幅の増加の様子を示した説明図。
図13】実施例3に係る通信システムにおいて、グレーデッドインデックス型マルチモード光ファイバの開口数とモード群幅の増加の様子を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照して説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
1.光装置の構成
図1は本発明の具体的な一実施例に係る光装置1の構成を示している。幹線光導波路10と第1光導波路20とモード変換光導波路40とは一本のグレーデッドインデックス型マルチモードファイバ(以下、「GI−MMF」と記す)11で形成されている。GI−MMF11が屈曲され、その屈曲部がモード変換光導波路40である。モード変換光導波路40の外周屈曲面41のクラッド42に第2光導波路30の先端から伸びた接続光導波路である自己形成光導波路32のコアが接合されている。第2光導波路30はGI−MM31である。幹線光導波路10の中心軸15と第2光導波路30の中心軸35は一致している。GI−MMF11、31のコア直径は50〜80μm、クラッドを含めたGI−MMF11、31の直径は125〜500μmである。いわゆる大口径光ファイバーである。本発明で使用できる大口径光ファイバのNAは、0.15〜0.35が使用可能である。
【0035】
2.光装置の製法
自己形成光導波路32は次のように形成される。GI−MMF11を所定の位置で所定の曲率で曲げた状態にして、枠体50に固定する。GI−MMF31の中心軸35を幹線光導波路10の中心軸15に一致させ、GI−MMF31の先端端面がモード変換光導波路40の外周屈曲面41に対向するように、GI−MMF31を枠体50に固定する。次に、枠体50に光硬化性樹脂液を充填し、GI−MMF31の他の端面から光硬化性樹脂液を光硬化させる波長の光を入射させる。GI−MMF31の先端端面から硬化光が出射され、その光の光路に沿って樹脂が硬化する。硬化した樹脂は屈折率が樹脂液よりも高くなるように光硬化樹脂液が選択されている。また、光硬化樹脂液には、硬化波長や屈折率の異なる数種類の混合液を用いて、ある種類の樹脂だけ硬化させて、硬化物の屈折率を混合液の屈折率よりも高くすることも可能である。この他、自己形成光導波路の製法はいろいろ知られている。
【0036】
硬化した光硬化樹脂の屈折率は、周囲の未硬化光硬化樹脂液の屈折率よりも高いので、形成された光硬化物がコア、周囲の光硬化樹脂液がクラッドの作用をして、光は光硬化物に閉じ込められて直進する。これにより、GI−MMF31の先端端面から光硬化物によるコアが直線状に伸びてモード変換光導波路40の外周屈曲面41のクラッド42に接合する。この直線状の光硬化物が自己形成光導波路32(接続光導波路)のコアとなる。なお、硬化光はGI−MMF31を伝搬可能な最高次数モード以下の全次数モード群の光とする。これによりGI−MMF31のコアと同径のコアを有した自己形成光導波路32を形成することができる。
【0037】
その後、枠体50内の光硬化樹脂液を、屈折率の低い別の光硬化性樹脂液と交換して、枠体50の内部の光硬化性樹脂液を光硬化させる。これにより、自己形成光導波路32のコアの周囲には、クラッドが形成されることになる。また、異なる種類の光硬化性樹脂液を混合した樹脂液を用いる場合には、混合液の硬化物の屈折率が、自己形成光導波路32のコアの屈折率よりも小さくなるように材料を選択して、樹脂液を交換することなく、枠体50内の樹脂液全体を硬化させるようにしても良い。また、自己形成光導波路32のコアの周囲だけクラッドを形成するようにしても良い。また、自己形成光導波路は屈折率が一定のコアとすることも、屈折率が半径方向外周に向かって徐々に小さくなるグレーデッドインデックス型とすることも可能である。グレーデッドインデックス型の自己形成光導波路の製法は、例えば、特開2004−149579号公報に開示の技術が知られている。
【0038】
以上のように形成された幹線光導波路10、第1光導波路20、第2光導波路30の先端と枠体50との固定部に、それぞれ、光コネクタ16、26、36を設ける。これにより、モード群分割多重通信を実現するための合波、分波を行う部品としての光装置を得ることができる。
【0039】
3.モード変換光導波路の作用
GI−MMF11とGI−MMF31にNA=0.2のGI−MMFを用いた場合について説明する。幹線光導波路10の端面から伝搬角約4.0°以下の低次モード群信号と、伝搬角約7.5°以上11.5°以下の高次モード群信号をモード変換光導波路40に向けて入射させる。ここでの伝搬角の値は、空気中から光ファイバの入射端面に入射する光の入射角、又は出射端面から空気中に出射される光の出射角の値であり、この入射角又は出射角に対応する光ファイバ内での伝搬角はスネルの法則に従ってより小さな値である。伝搬角は多重反射する光の進行方向と光導波路の中心軸との成す角で定義する。11.5°は、GI−MMF11、31の最大伝搬角であり、最大モード次数に対応する。伝搬角4.0°から7.5°の範囲は干渉を回避するためのバッファ空間(伝搬角範囲)である。
【0040】
図2は伝搬角θとθ以下の伝搬角を有する伝搬光の光エネルギーEAF(Encircled Angular Flux)との関係を示す。図2に示すように、全次数モード群を、伝搬角5.8°以下の低次モード群、伝搬角5.8°以上、11.5°以下の高次モード群に2分する。伝搬角5.8°が上記したモード分離伝搬角である。外周屈曲面41の曲率は、モード変換光導波路40において低次モード群の屈曲面に対する入射角が臨界角以上となり、高次モード群の屈曲面に対する入射角が臨界角より小さくなる値に設定されている。したがって、低次モード群はモード変換光導波路40において導波モードを維持し、伝搬角約4.0°以下の低次モード群信号はモード変換光導波路40を伝搬する。
【0041】
一方、高次モード群信号のモード変換光導波路40における屈曲面に対する入射角は臨界角より小さくなり、モード変換光導波路40のクラッド42に漏れる。したがって、高次モード群信号は、第1光導波路20側には伝搬しない。すなわち、モード変換光導波路40において、高次モード群信号は漏洩モードとなる。
【0042】
モード変換光導波路40の外周屈曲面41の曲率の半径方向ベクトルに直交する外周屈曲面41の接面を想定する。この接面が幹線光導波路10の中心軸15と平行に近い領域、すなわち、図1における外周屈曲面41が幹線光導波路10に続いて曲がり始める部分(図1において、外周屈曲面41と自己形成光導波路32との接触面のうち中心軸15、35より上方向に位置する高変換領域)に注目する。この高変換領域において、モード変換光導波路40のクラッド42に漏洩した高次モード群信号は、伝搬角が小さくなり、その進行方向は第2光導波路30の中心軸35に対しより平行な向きに変化する。すなわち、高次モード群信号はより低次のモード群信号にモード変換されることになる。外周屈曲面41のこの高変換領域において、高次モードから低次モードへの変換効率が高くなる。
【0043】
一方、第2光導波路30から接続光導波路である自己形成光導波路32を介してモード変換光導波路40の外周屈曲面41に入射する光は、幹線光導波路10から第2光導波路30に向かう光の光路と同一光路となる。したがって、第2光導波路30を伝搬する低次モード群信号は、この高変換領域においてモード変換光導波路40に、最も効率的に高次モード群信号へと変換されて、変換された高次モード群信号は幹線光導波路10を伝搬する。
【0044】
図2に示される低次モード群信号と高次モード群信号の多重化信号が、幹線光導波路10をモード変換光導波路40に向けて伝搬している場合を考える。モード変換光導波路40の上記した作用により、低次モード群信号だけが導波モードを維持し第1光導波路20に向けて伝搬する。高次モード群信号はモード変換光導波路40の外周屈曲面41のクラッド42に漏洩して低次モードに変換されて自己形成光導波路32を介して第2光導波路30を伝搬する。このようにして、この光装置1は、モード群多重化された信号を、低次モード群信号と高次モード群信号とに分波することができる。
【0045】
逆に、第1光導波路20をモード変換光導波路40に向かう低次モード群信号と、第2光導波路30をモード変換光導波路40に向かう低次モード群信号とを考える。第1光導波路20を伝搬する低次モード群信号は、上記作用により、導波モードを維持しモード変換光導波路40を通過して、幹線光導波路10を伝搬する。一方、第2光導波路30を伝搬する低次モード群信号は、上記作用により、モード変換光導波路40の外周屈曲面41により高次モード群信号に変換されて、幹線光導波路10を伝搬する。このようにして、この光装置1は、2つのチャネルの低次モード群信号を、一方のチャネルの信号は高次モード群信号に変換することにより、幹線光導波路10において低次モード群と高次モード群とに多重化することができる。すなわち、本光装置1は、モード分割多重通信において、合波装置とすることができる。
【0046】
さらに、低次モード群信号が幹線光導波路10をモード変換光導波路40に向けて伝搬している場合を考える。この低次モード群信号は導波モードを維持しモード変換光導波路40を通過して第1光導波路20を伝搬する。この状態において、第2光導波路30から接続光導波路である自己形成光導波路32を介してモード変換光導波路40に向けて低次モード群信号を伝搬させる。この低次モード群信号はモード変換光導波路40において高次モード群信号に変換されて、幹線光導波路10を伝搬する。このようにすれば、2つの端局装置の間での全二重通信を実現できる。本光装置1はこのような場合の合波/分波装置として用いることができる。
【0047】
さらに、高次モード群信号が幹線光導波路10をモード変換光導波路40に向けて伝搬している場合を考える。この高次モード群信号はモード変換光導波路40により低次モード群信号にモード変換されて、自己形成光導波路32を介して第2光導波路30を伝搬する。この状態において、第1光導波路20からモード変換光導波路40に向けて低次モード群信号を伝搬させる。この低次モード群信号は導波モードを維持しモード変換光導波路40を通過し、幹線光導波路10を伝搬する。このようにすれば、同様に、2つの端局装置の間での全二重通信を実現できる。本光装置1はこのような場合の合波/分波装置として用いることができる。
【0048】
モード変換光導波路40が、そのコアの屈折率より小さい屈折率を有したクラッド42を有する限り、自己形成光導波路32のコアの屈折率は任意である。ただし、自己形成光導波路32のコアの屈折率はクラッド42の屈折率と等しいか、以下にすることが望ましい。すなわち、自己形成光導波路32のコアの屈折率は、モード変換光導波路40のコアの屈折率よりも小さくすることが望ましい。このようにすると、モード変換光導波路40の高次モードと、より低次のモードとの相互変換を実現することができる。屈折率の低い媒体に入力する光は、伝搬角が小さくなる方向に屈折するからである。
【0049】
4.第1光導波路への漏光
モード変換光導波路40において、高次モード群信号を完全には遮断できない。そのため、モード変換光導波路40で低次モード群信号を分波するときに、高次モード遮断フィルタを用いることで、低次モード群信号を精度良く分波できる。
【0050】
5.自己形成光導波路の他の例
図3に示すように、モード変換光導波路40の外周屈曲面41から自己形成光導波路32bを形成し、第2光導波路30の先端から自己形成光導波路32aを形成して両者を接合して、接続光導波路である自己形成光導波路32としても良い。幹線光導波路10、モード変換光導波路40、第1光導波路20は、1本のGI−MMF11である。この場合、自己形成光導波路32bの形成は、幹線光導波路10から高次モード群の硬化光をモード変換光導波路40に入射させることで行う。高次モード群の硬化光はモード変換光導波路40により低次モード群の硬化光に変換されて、硬化光は第2光導波路30(GI−MMF31)の中心軸31に沿って直線状に出射される。この硬化光により自己形成光導波路32bが形成される。同時に、第2光導波路30に上述したように全次数モード群の硬化光を入射させて、第2光導波路30の先端から直線状の自己形成光導波路32aを成長させる。自己形成光導波路32aの先端が自己形成光導波路32bに接触すると、光閉じ込め効果により1本の直線状の自己形成光導波路32が形成される。これにより、幹線光導波路10及び第2光導波路30のコア径と同一のコア径を有した自己形成光導波路32を得ることができる。光ファイバの両端から硬化光を出射させて、自己形成光導波路を結合させる技術は既に確立されている。
【0051】
6.モード変換光導波路の他の例
上述の実施例では、モード変換光導波路40はGI−MMF11の一部で、それを屈曲させた部分で構成されている。このモード変換光導波路40を自己形成光導波路で構成しても良い。図4(a)に示すように、2本のGI−MMF11aとGI−MMF11bとを同軸にして先端端面を対向させる。両GI−MMF11a、11bの端面から全次数モード群の硬化光を出射させて、直線状の自己形成光導波路40a、40bを形成して先端を結合させて1本の直線状の自己形成光導波路とする。次に、図4(b)に示すように、この直線状の自己形成光導波路を屈曲させて、モード変換光導波路40とする。
なお、モード変換光導波路40を自己形成光導波路で構成する場合に、GI−MMF11a、11bの一方の端面からのみ硬化光を光硬化性樹脂液に放射させて直線状の自己形成導波路を成長させ、その先端を他方のGI−MMFの端面に接合するようにしても良い。
このようにモード変換光導波路40は、自己形成光導波路で構成しても良い。この他、モード変換光導波路40は、成形品やパターン転写で作成した光部品で構成しても良い。
【0052】
このモード変換光導波路40の外周屈曲面41に第2光導波路30から伸びた自己形成光導波路32を接続するのは、上記の実施例で述べた通りである。このとき、モード変換光導波路40はコアのみで形成され、クラッドを有していない。そのため、モード変換光導波路40に接合される自己形成光導波路32のコアの屈折率はモード変換光導波路40のコアの屈折率よりも小さくする必要がある。自己形成光導波路32のコアがモード変換光導波路40のコアに対するクラッドの作用をする。次に、枠体50の全体に充填されている光硬化樹脂液を光硬化させて、モード変換光導波路40のコアの露出部と、自己形成光導波路32の周囲にクラッドを形成する。
なお、屈曲させた自己形成光導波路でモード変換光導波路40を形成するとき、図4(a)のように直線状の自己形成光導波路40a、40bを形成して先端を結合させた後にこの周囲にクラッドを形成しても良い。
【0053】
上記の実施例において、接続光導波路は自己形成光導波路32で構成しているが、第2光導波路30のGI−MMFの先端をモード変換光導波路40の外周屈曲面に接着剤等で接合するようにしても良い。この場合には接続光導波路はGI−MMFの先端部で構成されることになる。
【0054】
7.モード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径との関係
GI−MMFの半径方向の屈折率分布は図5に示すように分布している。コアの中心軸では最大屈折率n0 、クラッドでは最小屈折率nd である。コアの半径をrc とすると、半径rc の全領域Aが高次モード群の伝搬領域である。そして、半径rc より小さい半径r1 以下の領域Bが低次モード群の伝搬領域である。半径r1 図2の5.8°のモード分離伝搬角で伝搬する光の光路の最大振幅を与える。半径r1 の位置でのコアの屈折率をn1 とする。nd <n1 <n0 である。
モード変換光導波路40のコア径と接続光導波路である自己形成光導波路32のコア径との関係は、以下の場合がある。
(1)モード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径と幹線光導波路のコア径とが共に等しい場合
上述した図1、3、4の場合である。
【0055】
(2)モード変換光導波路のコア径が低次モード群伝搬領域の直径に等しく、接続光導波路のコア径が幹線光導波路のコア径に等しい場合
モード変換光導波路40のコアと接続光導波路32のコアとは図6に示す関係にある。モード変換光導波路40の半径r1 のコアを形成するには、図4で示した方法を用いることができる。この場合にGI−MMF11a、11bの一方又は両方に入射させる硬化光は低次モード群の光とする。これによりGI−MMFの端面から出射する硬化光束は半径r1 以下の領域に拘束されて、自己形成光導波路のコアの半径はr1 となる。この時に形成されるモード変換光導波路40のコアの屈折率は屈折率n0 とn1 との平均値とする。半径rc の接続光導波路は、第2光導波路30のGI−MMFの先端から硬化光を光効果性樹脂液に出射させて形成される自己形成光導波路32により形成される。この場合にはGI−MMFに入射させる硬化光はGI−MMFを伝搬可能な全次数モード群(広次数モード群)の光とする。この接続光導波路である自己形成光導波路32の屈折率はn1 とnd との平均値とする。モード変換光導波路40のコアの外周にはクラッドが形成されていても良い。
【0056】
この構成においても、モード変換光導波路40に入射する光は、モード変換光導波路40の作用により幹線光導波路10と接続光導波路(自己形成光導波路32)との間で高次モード群と低次モード群とのモードの相互変換が実行される。また、モード変換光導波路40のコア径は接続光導波路のコア径より小さいので、幹線光導波路10のコアと接続光導波路のコアとの接続部断面では、モード変換光導波路40のコアが存在しないリング状の領域が存在する。以下、この領域を「高次モード漏れ領域」という。幹線光導波路10から接続光導波路に向かって伝搬する高次モード群の多くの光は、高次モード漏れ領域から高次モード群のまま接続光導波路に伝搬することになる。したがって、幹線光導波路10から接続光導波路を介して第2光導波路30を伝搬する光のEAF特性は図7に示すようになる。すなわち、幹線光導波路10における高次モード群の光がモード変換光導波路40により低次モード群に変換された光と、高次モード漏れ領域からそのまま漏れた高次モード群の光とが混在することになる。図7は、低次モード群に変換された光のエネルギーと漏れた高次モード群のエネルギーとが等しいと仮定した模式図である。この構成を採用する合波/分波器では、第2光導波路30の出力端における光信号は、このモード群が混在した光信号とすれば良い。逆に、第2光導波路30から接続光導波路に向けて伝搬させる光は低次モード群とする。モード変換光導波路40の外周屈曲面の高変換領域から入射した低次モード群の光は高次モード群に変換されて幹線光導波路10を伝搬する。
【0057】
(3)モード変換光導波路のコア径が幹線光導波路のコア径に等しく、接続光導波路のコア径が低次モード群伝搬領域の直径に等しい場合
図8に示すようにモード変換光導波路40は図1と同様に幹線光導波路10、第1光導波路20と一体的に連続してGI−MMFで構成されている。接続光導波路である自己形成光導波路32のコア径は低次モード群の伝搬領域のコア径r1 である。この自己形成光導波路32の製造は図1に示した方法と同様である。ただし、硬化光を第2光導波路30のGI−MMFの端面に入射させる時、低次モード群の光束とする。そして、第2光導波路30の光出射端面から半径r1 のコアを有した直線状の自己形成光導波路32の最外周(幹線光導波路10の中心軸との距離が最大の位置)をモード変換光導波路40の外周屈曲面の高変換領域に接合させる。すなわち、幹線光導波路10の中心軸と自己形成光導波路32及び第2光導波路30の中心軸は、(rc −r1 )だけオフセットしている。自己形成光導波路32のコアの屈折率はn1 とnd の平均値とする。この構成の場合にはモード変換光導波路40により高次モード群と低次モード群の相互変換が実行される。上記の(2)の図6の構成とは異なり、幹線光導波路10から高次モード群の光が接続光導波路の自己形成光導波路32の側に高次モード群のまま漏れ出ることはない。また、(2)の場合よりもモード変換の効率は高い。この構成においてもモード変換光導波路40を自己形成光導波路で構成してクラッドがない構成でも良い。
なお、自己形成光導波路32の先端は幹線光導波路10の中心軸の位置に接合させても良いし、中心軸から図8の高変換領域との間の任意の位置に接合させても良い。すなわち、幹線光導波路10の中心軸と自己形成光導波路32及び第2光導波路30の中心軸のオフセット量は(rc −r1 )以下の範囲で任意である。図8の場合に比べてモード変換の効率が低下するが、モード変換の機能は実現される。
【0058】
(4)モード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径は、共に、低次モード群伝搬領域の直径に等しい場合
図9に示すようにモード変換光導波路40のコア径はr1 であり、接続光導波路である自己形成光導波路32のコア径もr1 である。この場合には幹線光導波路10の中心軸と自己形成光導波路32及び第2光導波路30の中心軸は一致している。モード変換光導波路40のコアの形成方法と屈折率は(2)で、自己形成光導波路32の形成方法と屈折率は(3)で述べた通りである。幹線光導波路10と接続光導波路の自己形成光導波路32との間において高次モード群が直接、相互に伝搬することはない。この場合のモード変換の効率は(3)の場合と同一である。また、モード変換光導波路40のコアの外周にクラッドが存在しても良い。
【0059】
8.幹線光導波路、第1光導波路、第2光導波路の他の例
上記実施例では、幹線光導波路、第1光導波路、第2光導波路は、GI−MMFとしたが、樹脂を硬化させたグレーディッドインデックス型光導波路であっても良いし、枠体50の内部に存在する全ての光導波路をグレーディッドインデックス型自己形成光導波路として、コネクタ16、26、36に接続するようにしても良い。
【0060】
9.その他
枠体50又はコネクタ16、26、36が存在しない光装置も本発明に含まれる。
【実施例2】
【0061】
本実施例は、上記の光装置を用いて、モード群分割多重通信を実現した通信システムである。
図10、11は通信システムの構成を示している。実施例1の図1に示す構成の2台の光装置をA端光装置、B端光装置とする。そして、A端光装置の幹線光導波路10とB端光装置の幹線光導波路10とを1本の共通の幹線光導波路10とする。この通信システムにおいて、幹線光導波路10同士を接続する光コネクタ16はあっても良いが、なくとも良い。すなわち、A端光装置の幹線光導波路10を長い共通の幹線光導波路としてその他端をB端光装置としても良い。この場合には、A端光装置のモード変換光導波路40の外周屈曲面41に第2光導波路30を接続し、B端光装置のモード変換光導波路40の外周屈曲面41に第2光導波路30を接続することになる。同様に、枠体50、光コネクタ26、36はあっても良いがなくとも良い。
【0062】
図10に示す通信システムは、A端光装置を合波装置、B端光装置を分波装置とした例である。A端光装置と、B端光装置におけるモード変換光導波路40の作用により、次のようにモード群分割多重通信が実現できる。A端光装置は送信端局、B端光装置が受信端局である。A端光装置のポート#2(第1光導波路20)とポート#3(第2光導波路30)から低次モード群信号を送信する。A端光装置のモード変換光導波路40によりポート#3の信号が高次モード群信号に変換され、ポート#2の信号は低次モード群信号のまま、幹線光導波路10に出力される。これにより、幹線光導波路10では、低次モード群信号は低次モード群、高次モード群信号は高次モード群として多重化されて、B端光装置に向けて伝搬する。
【0063】
B端光装置では、その光装置のモード変換光導波路40において、低次モード群信号はそのままポート#2(第1光導波路20)から出力される。一方、高次モード群信号はモード変換光導波路40により低次モード群信号に変換されて、ポート#3(第2光導波路30)から出力される。これにより、A端光装置を送信端末、B端光装置を受信端末としたモード群分割多重通信が実現される。
【0064】
図11に示す通信システムは、A端光装置とB端光装置を共に送受信端末としたシステムである。
低次モード群信号に対しては、B端光装置は送信端末、A端光装置は受信端末となる。また、高次モード群信号に対しては、A端光装置は送信端末、B端光装置は受信端末となる。B端光装置のポート#2(第1光導波路20)から入力された低次モード群信号は、モード変換光導波路40を通過して、幹線光導波路10を伝搬し、A端光装置のモード変換光導波路40を通過して、ポート#2(第1光導波路20)から出力される。これにより、B端光装置からA端光装置への送信が実現される。
【0065】
一方、A端光装置のポート#3(第2光導波路30)から入力された低次モード群信号は、モード変換光導波路40により高次モード群信号に変換されて、高次モード群信号として幹線光導波路10を伝搬し、B端光装置のモード変換光導波路40により低次モード群信号に変換されてポート#3(第2光導波路30)から出力される。これにより、A端光装置からB端光装置への送信が実現される。すなわち、両端末間で1本のGI−MMFを用いて全二重通信が可能となる。
【0066】
上記の例では、2チャンネル多重であるが、これを次のように多チャンネル多重とすることも可能である。A端光装置、B端光装置は、共に、光コネクタ16、26、36を有する装置とする。A端光装置の第1光導波路20のポート#2又は/及び第2光導波路30のポート#3に、他のC端光装置の幹線光導波路10を接続する。同様に、B端光装置の第1光導波路20のポート#2又は/及び第2光導波路30のポート#3に、他のD端光装置の幹線光導波路10を接続する。ただし、A端光装置及びB端光装置と、C端光装置及びD端光装置のモード変換光導波路40の外周屈曲面41の曲率は、図2に示すような、チャネル数に応じたモード群に分割できるように、調整することが必要である。
【実施例3】
【0067】
1.モード群幅の変化の態様
図10のシステムにおいて、伝搬するモード群幅の変化の様子を測定した。
GI−MMFはOM−3を用いた。コア径は50μm、NAは0.2である。このファイバの光軸に対する最大伝搬角(最大モード群幅)θMAX は、sin -1(NA)により、11.5°である。
【0068】
送信端末であるA端光装置のポート#2から入力される低次モード群信号を考える。この低次モード群信号において、EAFが75%となる伝搬角(モード群幅)をθ#2と定義する。この低次モード群信号はモード変換光導波路40に入力して、幹線光導波路10に出力される。このとき、モード変換光導波路40を通過するとき、光散乱などで、モード群幅は拡大する。この拡大幅をΔθbendとする。また、低次モード群信号が幹線光導波路10を伝搬して、B端光装置に伝搬する間に、その経路に存在する光コネクタや光導波路での散乱により、モード群幅が拡大される。それらを総合して拡大幅をΔθhlowとする。A端光装置のポート#2から入力された光の低次モード群幅θ#2は、B端光装置のポート#2から出力されるまでの間に、図12に示すように変化する。
【0069】
したがって、B端光装置のモード変換光導波路40の入力端でのモード群幅が最大モード群幅の1/2以下であれば、低次モード群と高次モード群とで、クロストークは生じない。したがって、A端光装置におけるポート#2から送信する低次モード群信号のモード群幅θ#2は、以下の式を満たせば良い。
【数1】
【0070】
次に、送信端末であるA端光装置のポート#3から入力される低次モード群信号を考える。この低次モード群信号において、EAFが75%となる伝搬角(モード群幅)をθ#3と定義する。この低次モード群信号はモード変換光導波路40に入力して、高次モード群信号に変換されて、幹線光導波路10に出力される。このとき、モード変換光導波路40によるモード変換によるモード群幅の拡大幅をΔθtranとする。また、幹線光導波路10をB端光装置に向けて伝搬する高次モード群信号のモード群幅は、B端光装置に伝搬する間に、その経路に存在する光コネクタや光導波路での散乱により拡大される。それらを総合して拡大幅をΔθhhigh とする。ただし、Δθhhigh はEAFが小さい程大きくなるので、EAFが25%をとるときの値としている。B端光装置のポート#3から入力された低次モード群信号のモード群幅θ#3は、B端光装置のモード変換光導波路40の入力端に至るまでの間に、図13に示すように変化する。
【0071】
したがって、B端光装置のモード変換光導波路40の入力端での高次モード群のモード群幅が幹線光導波路10の最大伝搬角(最大モード群幅)θMAX の1/2以下であれば、低次モード群と高次モード群とで、クロストークは生じない。したがって、A端光装置におけるポート#3から送信する低次モード群信号のモード群幅θ#3は、以下の式を満たせば良い。
【数2】
【0072】
(1)、(2)式は、低次モード群幅と高次モード群幅が等しく、それらの占有モード群幅が最大伝搬角(最大モード群幅)θMAX の1/2以下となる条件である。しかし、低次モード群と高次モード群とを分離するモード分離伝搬角はθMAX /2とする必要はない。低次モード群幅と高次モード群幅の何れか一方が、θMAX /2よりも小さいならば、他方のモード群幅はθMAX /2より大きくても良いことになる。そこで、A端光装置のポート#2、#3から入力される光の低次モード群幅θ#2、θ#3は、(1)、(2)の両辺を加算した下記の式を満たせば良いことが分かる。
【数3】
【0073】
図10の幹線光導波路10の長さを15m、コアの中心部の屈折率n0 を1.41とし、モード変換光導波路40の外周屈曲面41の曲率半径は3mm、上記のモード群幅及びその拡大幅を測定したところ、θ#2=θ#3=2.2°、Δθbend=0.5°、Δθhlow=0.9°、Δθhhigh =1.1°、Δθtran=0.7°であった。よって、(3)式の左辺は、7.6°となる。この値は、最大伝搬角(θMAX )11.5°以下であり、幹線光導波路10において低次モード群信号と高次モード群信号とが混信されることはない。OM−3の場合には光散乱は殆どなく、300m程度は低次モード群、高次モード群ともに伝搬角の増加は見られない。モード変換光導波路40の外周屈曲面41の曲率半径は3mmと可なり小さいため、自己形成光導波路など高分子光導波路で形成することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、モード群分割多重通信システムに用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
1…光装置
10…幹線光導波路
15…中心軸
20…第1光導波路
30…第2光導波路
32…自己形成光導波路(接続光導波路)
35…中心軸
40…モード変換光導波路
41…外周屈曲面
42…クラッド
50…枠体
16,26,36…光コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13