【実施例1】
【0034】
1.光装置の構成
図1は本発明の具体的な一実施例に係る光装置1の構成を示している。幹線光導波路10と第1光導波路20とモード変換光導波路40とは一本のグレーデッドインデックス型マルチモードファイバ(以下、「GI−MMF」と記す)11で形成されている。GI−MMF11が屈曲され、その屈曲部がモード変換光導波路40である。モード変換光導波路40の外周屈曲面41のクラッド42に第2光導波路30の先端から伸びた接続光導波路である自己形成光導波路32のコアが接合されている。第2光導波路30はGI−MM31である。幹線光導波路10の中心軸15と第2光導波路30の中心軸35は一致している。GI−MMF11、31のコア直径は50〜80μm、クラッドを含めたGI−MMF11、31の直径は125〜500μmである。いわゆる大口径光ファイバーである。本発明で使用できる大口径光ファイバのNAは、0.15〜0.35が使用可能である。
【0035】
2.光装置の製法
自己形成光導波路32は次のように形成される。GI−MMF11を所定の位置で所定の曲率で曲げた状態にして、枠体50に固定する。GI−MMF31の中心軸35を幹線光導波路10の中心軸15に一致させ、GI−MMF31の先端端面がモード変換光導波路40の外周屈曲面41に対向するように、GI−MMF31を枠体50に固定する。次に、枠体50に光硬化性樹脂液を充填し、GI−MMF31の他の端面から光硬化性樹脂液を光硬化させる波長の光を入射させる。GI−MMF31の先端端面から硬化光が出射され、その光の光路に沿って樹脂が硬化する。硬化した樹脂は屈折率が樹脂液よりも高くなるように光硬化樹脂液が選択されている。また、光硬化樹脂液には、硬化波長や屈折率の異なる数種類の混合液を用いて、ある種類の樹脂だけ硬化させて、硬化物の屈折率を混合液の屈折率よりも高くすることも可能である。この他、自己形成光導波路の製法はいろいろ知られている。
【0036】
硬化した光硬化樹脂の屈折率は、周囲の未硬化光硬化樹脂液の屈折率よりも高いので、形成された光硬化物がコア、周囲の光硬化樹脂液がクラッドの作用をして、光は光硬化物に閉じ込められて直進する。これにより、GI−MMF31の先端端面から光硬化物によるコアが直線状に伸びてモード変換光導波路40の外周屈曲面41のクラッド42に接合する。この直線状の光硬化物が自己形成光導波路32(接続光導波路)のコアとなる。なお、硬化光はGI−MMF31を伝搬可能な最高次数モード以下の全次数モード群の光とする。これによりGI−MMF31のコアと同径のコアを有した自己形成光導波路32を形成することができる。
【0037】
その後、枠体50内の光硬化樹脂液を、屈折率の低い別の光硬化性樹脂液と交換して、枠体50の内部の光硬化性樹脂液を光硬化させる。これにより、自己形成光導波路32のコアの周囲には、クラッドが形成されることになる。また、異なる種類の光硬化性樹脂液を混合した樹脂液を用いる場合には、混合液の硬化物の屈折率が、自己形成光導波路32のコアの屈折率よりも小さくなるように材料を選択して、樹脂液を交換することなく、枠体50内の樹脂液全体を硬化させるようにしても良い。また、自己形成光導波路32のコアの周囲だけクラッドを形成するようにしても良い。また、自己形成光導波路は屈折率が一定のコアとすることも、屈折率が半径方向外周に向かって徐々に小さくなるグレーデッドインデックス型とすることも可能である。グレーデッドインデックス型の自己形成光導波路の製法は、例えば、特開2004−149579号公報に開示の技術が知られている。
【0038】
以上のように形成された幹線光導波路10、第1光導波路20、第2光導波路30の先端と枠体50との固定部に、それぞれ、光コネクタ16、26、36を設ける。これにより、モード群分割多重通信を実現するための合波、分波を行う部品としての光装置を得ることができる。
【0039】
3.モード変換光導波路の作用
GI−MMF11とGI−MMF31にNA=0.2のGI−MMFを用いた場合について説明する。幹線光導波路10の端面から伝搬角約4.0°以下の低次モード群信号と、伝搬角約7.5°以上11.5°以下の高次モード群信号をモード変換光導波路40に向けて入射させる。ここでの伝搬角の値は、空気中から光ファイバの入射端面に入射する光の入射角、又は出射端面から空気中に出射される光の出射角の値であり、この入射角又は出射角に対応する光ファイバ内での伝搬角はスネルの法則に従ってより小さな値である。伝搬角は多重反射する光の進行方向と光導波路の中心軸との成す角で定義する。11.5°は、GI−MMF11、31の最大伝搬角であり、最大モード次数に対応する。伝搬角4.0°から7.5°の範囲は干渉を回避するためのバッファ空間(伝搬角範囲)である。
【0040】
図2は伝搬角θとθ以下の伝搬角を有する伝搬光の光エネルギーEAF(Encircled Angular Flux)との関係を示す。
図2に示すように、全次数モード群を、伝搬角5.8°以下の低次モード群、伝搬角5.8°以上、11.5°以下の高次モード群に2分する。伝搬角5.8°が上記したモード分離伝搬角である。外周屈曲面41の曲率は、モード変換光導波路40において低次モード群の屈曲面に対する入射角が臨界角以上となり、高次モード群の屈曲面に対する入射角が臨界角より小さくなる値に設定されている。したがって、低次モード群はモード変換光導波路40において導波モードを維持し、伝搬角約4.0°以下の低次モード群信号はモード変換光導波路40を伝搬する。
【0041】
一方、高次モード群信号のモード変換光導波路40における屈曲面に対する入射角は臨界角より小さくなり、モード変換光導波路40のクラッド42に漏れる。したがって、高次モード群信号は、第1光導波路20側には伝搬しない。すなわち、モード変換光導波路40において、高次モード群信号は漏洩モードとなる。
【0042】
モード変換光導波路40の外周屈曲面41の曲率の半径方向ベクトルに直交する外周屈曲面41の接面を想定する。この接面が幹線光導波路10の中心軸15と平行に近い領域、すなわち、
図1における外周屈曲面41が幹線光導波路10に続いて曲がり始める部分(
図1において、外周屈曲面41と自己形成光導波路32との接触面のうち中心軸15、35より上方向に位置する高変換領域)に注目する。この高変換領域において、モード変換光導波路40のクラッド42に漏洩した高次モード群信号は、伝搬角が小さくなり、その進行方向は第2光導波路30の中心軸35に対しより平行な向きに変化する。すなわち、高次モード群信号はより低次のモード群信号にモード変換されることになる。外周屈曲面41のこの高変換領域において、高次モードから低次モードへの変換効率が高くなる。
【0043】
一方、第2光導波路30から接続光導波路である自己形成光導波路32を介してモード変換光導波路40の外周屈曲面41に入射する光は、幹線光導波路10から第2光導波路30に向かう光の光路と同一光路となる。したがって、第2光導波路30を伝搬する低次モード群信号は、この高変換領域においてモード変換光導波路40に、最も効率的に高次モード群信号へと変換されて、変換された高次モード群信号は幹線光導波路10を伝搬する。
【0044】
図2に示される低次モード群信号と高次モード群信号の多重化信号が、幹線光導波路10をモード変換光導波路40に向けて伝搬している場合を考える。モード変換光導波路40の上記した作用により、低次モード群信号だけが導波モードを維持し第1光導波路20に向けて伝搬する。高次モード群信号はモード変換光導波路40の外周屈曲面41のクラッド42に漏洩して低次モードに変換されて自己形成光導波路32を介して第2光導波路30を伝搬する。このようにして、この光装置1は、モード群多重化された信号を、低次モード群信号と高次モード群信号とに分波することができる。
【0045】
逆に、第1光導波路20をモード変換光導波路40に向かう低次モード群信号と、第2光導波路30をモード変換光導波路40に向かう低次モード群信号とを考える。第1光導波路20を伝搬する低次モード群信号は、上記作用により、導波モードを維持しモード変換光導波路40を通過して、幹線光導波路10を伝搬する。一方、第2光導波路30を伝搬する低次モード群信号は、上記作用により、モード変換光導波路40の外周屈曲面41により高次モード群信号に変換されて、幹線光導波路10を伝搬する。このようにして、この光装置1は、2つのチャネルの低次モード群信号を、一方のチャネルの信号は高次モード群信号に変換することにより、幹線光導波路10において低次モード群と高次モード群とに多重化することができる。すなわち、本光装置1は、モード分割多重通信において、合波装置とすることができる。
【0046】
さらに、低次モード群信号が幹線光導波路10をモード変換光導波路40に向けて伝搬している場合を考える。この低次モード群信号は導波モードを維持しモード変換光導波路40を通過して第1光導波路20を伝搬する。この状態において、第2光導波路30から接続光導波路である自己形成光導波路32を介してモード変換光導波路40に向けて低次モード群信号を伝搬させる。この低次モード群信号はモード変換光導波路40において高次モード群信号に変換されて、幹線光導波路10を伝搬する。このようにすれば、2つの端局装置の間での全二重通信を実現できる。本光装置1はこのような場合の合波/分波装置として用いることができる。
【0047】
さらに、高次モード群信号が幹線光導波路10をモード変換光導波路40に向けて伝搬している場合を考える。この高次モード群信号はモード変換光導波路40により低次モード群信号にモード変換されて、自己形成光導波路32を介して第2光導波路30を伝搬する。この状態において、第1光導波路20からモード変換光導波路40に向けて低次モード群信号を伝搬させる。この低次モード群信号は導波モードを維持しモード変換光導波路40を通過し、幹線光導波路10を伝搬する。このようにすれば、同様に、2つの端局装置の間での全二重通信を実現できる。本光装置1はこのような場合の合波/分波装置として用いることができる。
【0048】
モード変換光導波路40が、そのコアの屈折率より小さい屈折率を有したクラッド42を有する限り、自己形成光導波路32のコアの屈折率は任意である。ただし、自己形成光導波路32のコアの屈折率はクラッド42の屈折率と等しいか、以下にすることが望ましい。すなわち、自己形成光導波路32のコアの屈折率は、モード変換光導波路40のコアの屈折率よりも小さくすることが望ましい。このようにすると、モード変換光導波路40の高次モードと、より低次のモードとの相互変換を実現することができる。屈折率の低い媒体に入力する光は、伝搬角が小さくなる方向に屈折するからである。
【0049】
4.第1光導波路への漏光
モード変換光導波路40において、高次モード群信号を完全には遮断できない。そのため、モード変換光導波路40で低次モード群信号を分波するときに、高次モード遮断フィルタを用いることで、低次モード群信号を精度良く分波できる。
【0050】
5.自己形成光導波路の他の例
図3に示すように、モード変換光導波路40の外周屈曲面41から自己形成光導波路32bを形成し、第2光導波路30の先端から自己形成光導波路32aを形成して両者を接合して、接続光導波路である自己形成光導波路32としても良い。幹線光導波路10、モード変換光導波路40、第1光導波路20は、1本のGI−MMF11である。この場合、自己形成光導波路32bの形成は、幹線光導波路10から高次モード群の硬化光をモード変換光導波路40に入射させることで行う。高次モード群の硬化光はモード変換光導波路40により低次モード群の硬化光に変換されて、硬化光は第2光導波路30(GI−MMF31)の中心軸31に沿って直線状に出射される。この硬化光により自己形成光導波路32bが形成される。同時に、第2光導波路30に上述したように全次数モード群の硬化光を入射させて、第2光導波路30の先端から直線状の自己形成光導波路32aを成長させる。自己形成光導波路32aの先端が自己形成光導波路32bに接触すると、光閉じ込め効果により1本の直線状の自己形成光導波路32が形成される。これにより、幹線光導波路10及び第2光導波路30のコア径と同一のコア径を有した自己形成光導波路32を得ることができる。光ファイバの両端から硬化光を出射させて、自己形成光導波路を結合させる技術は既に確立されている。
【0051】
6.モード変換光導波路の他の例
上述の実施例では、モード変換光導波路40はGI−MMF11の一部で、それを屈曲させた部分で構成されている。このモード変換光導波路40を自己形成光導波路で構成しても良い。
図4(a)に示すように、2本のGI−MMF11aとGI−MMF11bとを同軸にして先端端面を対向させる。両GI−MMF11a、11bの端面から全次数モード群の硬化光を出射させて、直線状の自己形成光導波路40a、40bを形成して先端を結合させて1本の直線状の自己形成光導波路とする。次に、
図4(b)に示すように、この直線状の自己形成光導波路を屈曲させて、モード変換光導波路40とする。
なお、モード変換光導波路40を自己形成光導波路で構成する場合に、GI−MMF11a、11bの一方の端面からのみ硬化光を光硬化性樹脂液に放射させて直線状の自己形成導波路を成長させ、その先端を他方のGI−MMFの端面に接合するようにしても良い。
このようにモード変換光導波路40は、自己形成光導波路で構成しても良い。この他、モード変換光導波路40は、成形品やパターン転写で作成した光部品で構成しても良い。
【0052】
このモード変換光導波路40の外周屈曲面41に第2光導波路30から伸びた自己形成光導波路32を接続するのは、上記の実施例で述べた通りである。このとき、モード変換光導波路40はコアのみで形成され、クラッドを有していない。そのため、モード変換光導波路40に接合される自己形成光導波路32のコアの屈折率はモード変換光導波路40のコアの屈折率よりも小さくする必要がある。自己形成光導波路32のコアがモード変換光導波路40のコアに対するクラッドの作用をする。次に、枠体50の全体に充填されている光硬化樹脂液を光硬化させて、モード変換光導波路40のコアの露出部と、自己形成光導波路32の周囲にクラッドを形成する。
なお、屈曲させた自己形成光導波路でモード変換光導波路40を形成するとき、
図4(a)のように直線状の自己形成光導波路40a、40bを形成して先端を結合させた後にこの周囲にクラッドを形成しても良い。
【0053】
上記の実施例において、接続光導波路は自己形成光導波路32で構成しているが、第2光導波路30のGI−MMFの先端をモード変換光導波路40の外周屈曲面に接着剤等で接合するようにしても良い。この場合には接続光導波路はGI−MMFの先端部で構成されることになる。
【0054】
7.モード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径との関係
GI−MMFの半径方向の屈折率分布は
図5に示すように分布している。コアの中心軸では最大屈折率n
0 、クラッドでは最小屈折率n
d である。コアの半径をr
c とすると、半径r
c の全領域Aが高次モード群の伝搬領域である。そして、半径r
c より小さい半径r
1 以下の領域Bが低次モード群の伝搬領域である。半径r
1 は
図2の5.8°のモード分離伝搬角で伝搬する光の光路の最大振幅を与える。半径r
1 の位置でのコアの屈折率をn
1 とする。n
d <n
1 <n
0 である。
モード変換光導波路40のコア径と接続光導波路である自己形成光導波路32のコア径との関係は、以下の場合がある。
(1)モード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径と幹線光導波路のコア径とが共に等しい場合
上述した
図1、3、4の場合である。
【0055】
(2)モード変換光導波路のコア径が低次モード群伝搬領域の直径に等しく、接続光導波路のコア径が幹線光導波路のコア径に等しい場合
モード変換光導波路40のコアと接続光導波路32のコアとは
図6に示す関係にある。モード変換光導波路40の半径r
1 のコアを形成するには、
図4で示した方法を用いることができる。この場合にGI−MMF11a、11bの一方又は両方に入射させる硬化光は低次モード群の光とする。これによりGI−MMFの端面から出射する硬化光束は半径r
1 以下の領域に拘束されて、自己形成光導波路のコアの半径はr
1 となる。この時に形成されるモード変換光導波路40のコアの屈折率は屈折率n
0 とn
1 との平均値とする。半径r
c の接続光導波路は、第2光導波路30のGI−MMFの先端から硬化光を光効果性樹脂液に出射させて形成される自己形成光導波路32により形成される。この場合にはGI−MMFに入射させる硬化光はGI−MMFを伝搬可能な全次数モード群(広次数モード群)の光とする。この接続光導波路である自己形成光導波路32の屈折率はn
1 とn
d との平均値とする。モード変換光導波路40のコアの外周にはクラッドが形成されていても良い。
【0056】
この構成においても、モード変換光導波路40に入射する光は、モード変換光導波路40の作用により幹線光導波路10と接続光導波路(自己形成光導波路32)との間で高次モード群と低次モード群とのモードの相互変換が実行される。また、モード変換光導波路40のコア径は接続光導波路のコア径より小さいので、幹線光導波路10のコアと接続光導波路のコアとの接続部断面では、モード変換光導波路40のコアが存在しないリング状の領域が存在する。以下、この領域を「高次モード漏れ領域」という。幹線光導波路10から接続光導波路に向かって伝搬する高次モード群の多くの光は、高次モード漏れ領域から高次モード群のまま接続光導波路に伝搬することになる。したがって、幹線光導波路10から接続光導波路を介して第2光導波路30を伝搬する光のEAF特性は
図7に示すようになる。すなわち、幹線光導波路10における高次モード群の光がモード変換光導波路40により低次モード群に変換された光と、高次モード漏れ領域からそのまま漏れた高次モード群の光とが混在することになる。
図7は、低次モード群に変換された光のエネルギーと漏れた高次モード群のエネルギーとが等しいと仮定した模式図である。この構成を採用する合波/分波器では、第2光導波路30の出力端における光信号は、このモード群が混在した光信号とすれば良い。逆に、第2光導波路30から接続光導波路に向けて伝搬させる光は低次モード群とする。モード変換光導波路40の外周屈曲面の高変換領域から入射した低次モード群の光は高次モード群に変換されて幹線光導波路10を伝搬する。
【0057】
(3)モード変換光導波路のコア径が幹線光導波路のコア径に等しく、接続光導波路のコア径が低次モード群伝搬領域の直径に等しい場合
図8に示すようにモード変換光導波路40は
図1と同様に幹線光導波路10、第1光導波路20と一体的に連続してGI−MMFで構成されている。接続光導波路である自己形成光導波路32のコア径は低次モード群の伝搬領域のコア径r
1 である。この自己形成光導波路32の製造は
図1に示した方法と同様である。ただし、硬化光を第2光導波路30のGI−MMFの端面に入射させる時、低次モード群の光束とする。そして、第2光導波路30の光出射端面から半径r
1 のコアを有した直線状の自己形成光導波路32の最外周(幹線光導波路10の中心軸との距離が最大の位置)をモード変換光導波路40の外周屈曲面の高変換領域に接合させる。すなわち、幹線光導波路10の中心軸と自己形成光導波路32及び第2光導波路30の中心軸は、(r
c −r
1 )だけオフセットしている。自己形成光導波路32のコアの屈折率はn
1 とn
d の平均値とする。この構成の場合にはモード変換光導波路40により高次モード群と低次モード群の相互変換が実行される。上記の(2)の
図6の構成とは異なり、幹線光導波路10から高次モード群の光が接続光導波路の自己形成光導波路32の側に高次モード群のまま漏れ出ることはない。また、(2)の場合よりもモード変換の効率は高い。この構成においてもモード変換光導波路40を自己形成光導波路で構成してクラッドがない構成でも良い。
なお、自己形成光導波路32の先端は幹線光導波路10の中心軸の位置に接合させても良いし、中心軸から
図8の高変換領域との間の任意の位置に接合させても良い。すなわち、幹線光導波路10の中心軸と自己形成光導波路32及び第2光導波路30の中心軸のオフセット量は(r
c −r
1 )以下の範囲で任意である。
図8の場合に比べてモード変換の効率が低下するが、モード変換の機能は実現される。
【0058】
(4)モード変換光導波路のコア径と接続光導波路のコア径は、共に、低次モード群伝搬領域の直径に等しい場合
図9に示すようにモード変換光導波路40のコア径はr
1 であり、接続光導波路である自己形成光導波路32のコア径もr
1 である。この場合には幹線光導波路10の中心軸と自己形成光導波路32及び第2光導波路30の中心軸は一致している。モード変換光導波路40のコアの形成方法と屈折率は(2)で、自己形成光導波路32の形成方法と屈折率は(3)で述べた通りである。幹線光導波路10と接続光導波路の自己形成光導波路32との間において高次モード群が直接、相互に伝搬することはない。この場合のモード変換の効率は(3)の場合と同一である。また、モード変換光導波路40のコアの外周にクラッドが存在しても良い。
【0059】
8.幹線光導波路、第1光導波路、第2光導波路の他の例
上記実施例では、幹線光導波路、第1光導波路、第2光導波路は、GI−MMFとしたが、樹脂を硬化させたグレーディッドインデックス型光導波路であっても良いし、枠体50の内部に存在する全ての光導波路をグレーディッドインデックス型自己形成光導波路として、コネクタ16、26、36に接続するようにしても良い。
【0060】
9.その他
枠体50又はコネクタ16、26、36が存在しない光装置も本発明に含まれる。
【実施例3】
【0067】
1.モード群幅の変化の態様
図10のシステムにおいて、伝搬するモード群幅の変化の様子を測定した。
GI−MMFはOM−3を用いた。コア径は50μm、NAは0.2である。このファイバの光軸に対する最大伝搬角(最大モード群幅)θ
MAX は、sin
-1(NA)により、11.5°である。
【0068】
送信端末であるA端光装置のポート#2から入力される低次モード群信号を考える。この低次モード群信号において、EAFが75%となる伝搬角(モード群幅)をθ
#2と定義する。この低次モード群信号はモード変換光導波路40に入力して、幹線光導波路10に出力される。このとき、モード変換光導波路40を通過するとき、光散乱などで、モード群幅は拡大する。この拡大幅をΔθ
bendとする。また、低次モード群信号が幹線光導波路10を伝搬して、B端光装置に伝搬する間に、その経路に存在する光コネクタや光導波路での散乱により、モード群幅が拡大される。それらを総合して拡大幅をΔθ
hlowとする。A端光装置のポート#2から入力された光の低次モード群幅θ
#2は、B端光装置のポート#2から出力されるまでの間に、
図12に示すように変化する。
【0069】
したがって、B端光装置のモード変換光導波路40の入力端でのモード群幅が最大モード群幅の1/2以下であれば、低次モード群と高次モード群とで、クロストークは生じない。したがって、A端光装置におけるポート#2から送信する低次モード群信号のモード群幅θ
#2は、以下の式を満たせば良い。
【数1】
【0070】
次に、送信端末であるA端光装置のポート#3から入力される低次モード群信号を考える。この低次モード群信号において、EAFが75%となる伝搬角(モード群幅)をθ
#3と定義する。この低次モード群信号はモード変換光導波路40に入力して、高次モード群信号に変換されて、幹線光導波路10に出力される。このとき、モード変換光導波路40によるモード変換によるモード群幅の拡大幅をΔθ
tranとする。また、幹線光導波路10をB端光装置に向けて伝搬する高次モード群信号のモード群幅は、B端光装置に伝搬する間に、その経路に存在する光コネクタや光導波路での散乱により拡大される。それらを総合して拡大幅をΔθ
hhigh とする。ただし、Δθ
hhigh はEAFが小さい程大きくなるので、EAFが25%をとるときの値としている。B端光装置のポート#3から入力された低次モード群信号のモード群幅θ
#3は、B端光装置のモード変換光導波路40の入力端に至るまでの間に、
図13に示すように変化する。
【0071】
したがって、B端光装置のモード変換光導波路40の入力端での高次モード群のモード群幅が幹線光導波路10の最大伝搬角(最大モード群幅)θ
MAX の1/2以下であれば、低次モード群と高次モード群とで、クロストークは生じない。したがって、A端光装置におけるポート#3から送信する低次モード群信号のモード群幅θ
#3は、以下の式を満たせば良い。
【数2】
【0072】
(1)、(2)式は、低次モード群幅と高次モード群幅が等しく、それらの占有モード群幅が最大伝搬角(最大モード群幅)θ
MAX の1/2以下となる条件である。しかし、低次モード群と高次モード群とを分離するモード分離伝搬角はθ
MAX /2とする必要はない。低次モード群幅と高次モード群幅の何れか一方が、θ
MAX /2よりも小さいならば、他方のモード群幅はθ
MAX /2より大きくても良いことになる。そこで、A端光装置のポート#2、#3から入力される光の低次モード群幅θ
#2、θ
#3は、(1)、(2)の両辺を加算した下記の式を満たせば良いことが分かる。
【数3】
【0073】
図10の幹線光導波路10の長さを15m、コアの中心部の屈折率n
0 を1.41とし、モード変換光導波路40の外周屈曲面41の曲率半径は3mm、上記のモード群幅及びその拡大幅を測定したところ、θ
#2=θ
#3=2.2°、Δθ
bend=0.5°、Δθ
hlow=0.9°、Δθ
hhigh =1.1°、Δθ
tran=0.7°であった。よって、(3)式の左辺は、7.6°となる。この値は、最大伝搬角(θ
MAX )11.5°以下であり、幹線光導波路10において低次モード群信号と高次モード群信号とが混信されることはない。OM−3の場合には光散乱は殆どなく、300m程度は低次モード群、高次モード群ともに伝搬角の増加は見られない。モード変換光導波路40の外周屈曲面41の曲率半径は3mmと可なり小さいため、自己形成光導波路など高分子光導波路で形成することが望ましい。