特許第6925982号(P6925982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6925982
(24)【登録日】2021年8月6日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】電子素子のための材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 327/08 20060101AFI20210812BHJP
   C07D 307/77 20060101ALI20210812BHJP
   C07D 307/91 20060101ALI20210812BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20210812BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20210812BHJP
   C07D 409/12 20060101ALI20210812BHJP
   C07D 409/04 20060101ALI20210812BHJP
   C07D 339/08 20060101ALI20210812BHJP
   C07D 333/50 20060101ALI20210812BHJP
   C07D 411/04 20060101ALI20210812BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210812BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   C07D327/08
   C07D307/77CSP
   C07D307/91
   C07D405/12
   C07D405/04
   C07D409/12
   C07D409/04
   C07D339/08
   C07D333/50
   C07D411/04
   H05B33/22 D
   H05B33/14 B
   C09K11/06 635
   C09K11/06 645
【請求項の数】21
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2017-560873(P2017-560873)
(86)(22)【出願日】2016年1月19日
(65)【公表番号】特表2018-507909(P2018-507909A)
(43)【公表日】2018年3月22日
(86)【国際出願番号】EP2016000084
(87)【国際公開番号】WO2016131521
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2019年1月18日
(31)【優先権主張番号】15000455.4
(32)【優先日】2015年2月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】プフィスター、ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】ムジカ−フェルナウド、テレサ
(72)【発明者】
【氏名】モンテネグロ、エルビラ
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6567520(JP,B2)
【文献】 国際公開第2015/174682(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02799515(EP,A1)
【文献】 国際公開第2015/012618(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/010910(WO,A1)
【文献】 特開2012−229195(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/111927(WO,A2)
【文献】 国際公開第2014/058232(WO,A2)
【文献】 国際公開第2016/013184(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/017919(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H05B33/14−33/22
C09K11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
式(I)の基本構造上で非置換として示される1以上の位置で、R基により夫々置換されてよく;
および
可変基の以下の定義を有する:
Yは、単結合、O、SおよびSeから選ばれ;
Zは、O、SおよびSeから選ばれ;
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合または1以上のR基により置換されてよい6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Aは、出現毎に同一であるか異なり、♯により示される結合を介して結合する式(A1)、(A2)または(A3)の基であり;
【化2】
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上のR基により置換されてよい6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Xは、出現毎に同一であるか異なり、単結合であるか、またはBR、C(R、Si(R、C=O、O、S、S=O、SO、NR、PRおよびP(=O)(R)から選ばれる基であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)R、CN、Si(R、P(=O)(R、OR、S(=O)R、S(=O)、1〜20個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上のR基は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;ここで、上記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基と上記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、夫々1以上のR基により置換されてよく、上記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基中の1以上のCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOで置き代えられてよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)R、CN、Si(R、N(R、P(=O)(R、OR、S(=O)R、S(=O)、1〜20個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上のR基は、たがいに結合してよく、環を形成してよく;ここで、上記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基と上記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、夫々1以上のR基により置換されてよく、上記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基中の1以上のCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOで置き代えられてよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)R、CN、Si(R、N(R、P(=O)(R、OR、S(=O)R、S(=O)、1〜20個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上のRもしくはR基は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;ここで、上記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基と上記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、夫々1以上のR基により置換されてよく、上記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基中の1以上のCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOで置き代えられてよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上のR基は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;上記アルキル基と上記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、FもしくはCNで置き代えられてよく;
qは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、式(A2)中の少なくとも1つのqは、1であり;
a、b、c、およびdは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり;
ここで、添え字a、b、c、およびdの少なくとも1つは、1であり、ここで、添え字a、b、c、およびdの1以上が0である場合には、R基はその位置に付属する;
ただし、以下の化合物は、除外する;
【化3】
【化4】
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
【化5-5】
【請求項2】
Yは、単結合であり、Zは、OおよびSから選ばれることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Yは、OおよびSから選ばれ、Zは、OおよびSから選ばれることを特徴とする、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合および夫々随意に1以上のR基により置換されてよいベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、インデノフルオレン、カルバゾール、ジベンゾフランもしくはジベンゾチオフェンまたは2以上のこれらの基の組み合わせから誘導される2価基から選ばれ、ここで30個を超えない芳香族環原子が、E基内に存在することを特徴とする、請求項1〜3何れか1項記載の化合物。
【請求項5】
Xは、単結合であることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項記載の化合物。
【請求項6】
Aは、出現毎に同一であるか異なり、式(A1)または(A3)の基であることを特徴とする、請求項1〜5何れか1項記載の化合物。
【請求項7】
Arは、出現毎に同一であるか異なり、夫々、1以上のR基により置換されてよいフェニル、ビフェニル、テルフェニル、フルオレニル、スピロビフルオレニル、インデノフルオレニル、ナフチル、フェナントレニル、フラニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、カルバゾリル、インドロカルバゾリルおよびインデノカルバゾリルから選ばれることを特徴とする、請求項1〜6何れか1項記載の化合物。
【請求項8】
は、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CN、メチル、tert-ブチル、フェニル、ビフェニル、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンおよびカルバゾールから選ばれることを特徴とする、請求項1〜7何れか1項記載の化合物。
【請求項9】
は、Hであることを特徴とする、請求項1〜8何れか1項記載の化合物。
【請求項10】
添え字a、b、cおよびdの丁度1個は1であり、その他の添え字は0であるか、または添え字a、b、cおよびdの丁度2個は1であり、その他の添え字は0であることを特徴とする、請求項1〜9何れか1項記載の化合物。
【請求項11】
添え字dは、0であること、および添え字a、bおよびcの丁度1個もしくは2個は、1であることを特徴とする、請求項1〜10何れか1項記載の化合物。
【請求項12】
以下の式(I)の態様に対応することを特徴とする、請求項1〜11何れか1項記載の化合物:
【化6】
ここで、出現する可変基は、請求項1〜11何れか1項により定義されるとおりである。
【請求項13】
まず、スピロビフルオレン基本骨格が調製され、その後の工程で、アリールアミノもしくはカルバゾール基またはアリールアミノもしくはカルバゾール基で置換されたアリールもしくはヘテロアリール基が、有機金属カップリング反応により導入されることを特徴とする、請求項1〜12何れか1項記載の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項14】
ポリマー、オリゴマーもしくはデンドリマーへの結合が、式(I)中でRもしくはRにより置換された任意の所望の位置に局在してよい、請求項1〜12何れか1項記載の1以上の式(I)の化合物を含むオリゴマー、ポリマーまたはデンドリマー。
【請求項15】
請求項1〜12何れか1項記載の少なくとも一つの化合物と、少なくとも一つの溶媒とを含む調合物。
【請求項16】
請求項1〜12何れか1項記載の少なくとも一つの化合物を含む電子素子。
【請求項17】
アノード、カソードおよび少なくとも一つの発光層を含み、発光層であってよい素子の少なくとも一つの層、正孔輸送層もしくは他の層が、少なくとも一つの化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項16記載の電子素子。
【請求項18】
少なくとも一つの有機層が、正孔輸送層および発光層から選ばれることを特徴とする、請求項17記載の電子素子。
【請求項19】
正孔輸送層が、電子ブロック層であることを特徴とする、請求項18記載の電子素子。
【請求項20】
発光層が、1以上の燐光エミッターを含む発光層であることを特徴とする、請求項18記載の電子素子。
【請求項21】
請求項1〜12何れか1項記載の化合物の電子素子での使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電子素子での、特別に、有機エレクトロルミッセンス素子(OLED)での使用に適する今後定義される式(I)のスピロビフルオレン誘導体に関する。
【0002】
本出願の文脈での電子素子は、機能性材料として有機半導体材料を含む、いわゆる有機電子素子を意味すると理解される。より特に、これらは、OLEDを意味すると理解される。
【0003】
有機化合物が機能性材料として使用されるOLEDの構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。一般的に、用語OLEDは、有機化合物を含む1以上の層を含み、電圧の印加により発光する電子素子を意味すると理解される。
【0004】
電子素子、特に、OLEDにおいては、特性データ、特別に、寿命、効率と駆動電圧を改善することに多大な関心がある。任意の完全に満足できる解決を見出すことは、これらの面で未だ可能ではなかった。
【0005】
電子素子の性能データに関する大きな影響は、たとえば、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層と発光層等の正孔輸送機能を有する層により所有されている。正孔輸送特性を有する新規な材料の連続的な探索が、これらの層での使用のために存在する。
【0006】
これらの層中で正孔輸送特性を有する材料として、トリアリールアミンを使用し得ることが、先行技術から知られている。トリアリールアミンは、たとえば、JP1995/053955、WO2006/123667およびJP2010/222268に記載されたとおりのモノトリアリールアミン、または、たとえば、US 7504163またはUS 2005/0184657に記載されたとおりのビス-もしくは他のオリゴアミンであり得る。OLEDのための正孔輸送特性を有する材料としてのトリアリールアミン化合物の公知例は、トリス-p-ビフェニルアミン、N,N'-ジ-1-ナフチル-N,N'-ジフェニル-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン(NPB)と4,4',4"-トリス-(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)である。先行技術は、さらに、たとえば、WO2012/034627およびWO 2013/12057に開示されたとおりに、この目的のためのスピロビフルオレン-アリールアミノ化合物を開示している。
【0007】
同様に、スピロビフルオレン基本構造に特定の位置で縮合したベンゾフランもしくはベンゾチオフェン単位を有し、スピロビフルオレンに結合した1以上のアリールアミノ基を有するスピロビフルオレン誘導体が、この使用のために先行技術に開示されている((WO 2013/100467)。
【0008】
OLEDでの使用のための新規な材料に関する研究中に、スピロビフルオレン基本構造に異なる位置で縮合したベンゾフランもしくはベンゾチオフェン単位を有する上記化合物とは異なる化合物が、OLEDでの、特別に、正孔輸送機能を有する材料としての使用のために極めて適していることが、驚くべきことに、今回見出された。特に、それらは、OLEDでの使用の場合にそれらの性能データに関して、非常に特に、OLEDの寿命、駆動電圧と量子効率に関して、上記化合物より優れている。見出された新規な化合物は、さらに、非常に良好な正孔伝導特性、非常に良好な電子ブロック特性、高いガラス転移温度、高い酸化安定性、良好な溶解性と高い温度安定性から選ばれる1以上の特性を有する。
【0009】
したがって、本発明は、式(I)の化合物を提供し、
【0010】
【化1】
【0011】
式(I)の基本構造上で非置換として示される1以上の位置で、R基により夫々置換されてよく;および
可変基の以下の定義を有する:
Yは、単結合、O、SおよびSeから選ばれ;
Zは、O、SおよびSeから選ばれ;
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合または1以上のR基により置換されてよい6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Aは、出現毎に同一であるか異なり、♯により示される結合を介して結合する式(A1)、(A2)または(A3)の基であり;
【0012】
【化2】
【0013】
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上のR基により置換されてよい6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Xは、出現毎に同一であるか異なり、単結合またはBR、C(R、Si(R、C=O、O、S、S=O、SO、NR、PRおよびP(=O)(R)から選ばれる基であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)R、CN、Si(R、P(=O)(R、OR、S(=O)R、S(=O)、1〜20個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上のR基は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;ここで、上記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基と上記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、夫々1以上のR基により置換されてよく、上記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基中の1以上のCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOで置き代えられてよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)R、CN、Si(R、N(R、P(=O)(R、OR、S(=O)R、S(=O)、1〜20個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上のR基は、たがいに結合してよく、環を形成してよく;ここで、上記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基と上記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、夫々1以上のR基により置換されてよく、上記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基中の1以上のCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOで置き代えられてよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)R、CN、Si(R、N(R、P(=O)(R、OR、S(=O)R、S(=O)、1〜20個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上のRもしくはR基は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;ここで、上記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基と上記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、夫々1以上のR基により置換されてよく、上記アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル基中の1以上のCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOで置き代えられてよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上のR基は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;上記アルキル基と上記芳香族環構造および複素環式芳香族環構造は、FもしくはCNで置き代えられてよく;
qは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、式(A2)中の少なくとも1つのqは、1であり;
a、b、c、およびdは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり;ここで、添え字a、b、c、およびdの少なくとも1つは、1であり、ここで、添え字a、b、c、およびdの1以上が0である場合には、R基はその位置に付属する。
【0014】
本発明の文脈でのアリール基は、ヘテロ原子のない6〜40個の芳香族環原子を含む。本発明の文脈でのアリール基は、簡単な芳香族環すなわちベンゼン、または、縮合芳香族ポリ環状基、たとえば、ナフタレン、フェナントレンもしくはアントラセンを意味すると理解される。本願の文脈での縮合芳香族ポリ環状基は、互いに縮合した2以上の単純芳香族環から成る。ここで、環間の縮合は、環が互いに少なくとも一つの端部を共有することを意味すると理解される。
【0015】
本発明の文脈でのヘテロアリール基は、5〜40個の芳香族環原子を含み、そのうちの少なくとも1個は、ヘテロ原子である。ヘテロアリール基のヘテロ原子は、好ましくは、N、OおよびSから選ばれる。本発明の文脈でのヘテロアリール基は、簡単な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジンもしくはチオフェン等、または、縮合複素環式芳香族ポリ環状基、たとえば、キノリンもしくはカルバゾールを意味すると理解される。本願の文脈での縮合複素環式芳香族ポリ環状基は、互いに縮合した2以上の単純複素環式芳香族環から成る。ここで、環間の縮合は、環が互いに少なくとも一つの端部を共有することを意味すると理解される。
【0016】
本発明の文脈での芳香族環構造は、環構造中に6〜40個の炭素原子を含むが、芳香族環原子として如何なるヘテロ原子をも含まない。したがって、本発明の文脈での芳香族環構造は、如何なるヘテロアリール基をも含まない。本発明の文脈での芳香族環構造は、必ずしもアリールも基のみを含む構造ではなく、加えて、複数のアリール基が、単結合により、たとえば、1以上の随意に置換されたC、Si、N、OもしくはS原子のような非芳香族単位により結合されていてもよい構造を意味すると理解されるべきである。この場合に、非芳香族単位は、好ましくは、構造中にH以外の原子の合計数を基礎として、H以外の原子を10%未満含む。たとえば9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテルおよびスチルベン等のような構造も、2個以上のアリール基が、たとえば、直鎖あるいは環状アルキル、アルケニルもしくはアルキニル基により、もしくはシリル基により連結される構造であるから、本発明の文脈での芳香族環構造とみなされるべきである。さらに、たとえば、ビフェニルおよびテルフェニル等の2個以上のアリール基が、単結合を介して互いに結合する構造も、本発明の文脈での芳香族環構造とみなされるべきである。
【0017】
本発明の文脈での複素環式芳香族環構造は、5〜40個の芳香族環原子を含み、そのうちの少なくとも1個はヘテロ原子である。複素環式芳香族環構造のヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。複素環式芳香族環構造は、芳香族環構造の上記定義に対応するが、芳香族環原子として少なくとも一つのヘテロ原子を含む。こうして、本願の定義の意味で、如何なるヘテロアリール基をも含まない芳香族環構造とは異なる。
【0018】
アリールもしくはヘテロアリール基は、特別に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、トリフェニレン、フルオランテン、ベンズアントラセン、ベンズフェナントレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナンスリイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナンスロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味すると理解される。
【0019】
6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造または5〜40個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造は、特別に、アリールもしくはヘテロアリール基の元で上記言及した基から、およびビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、インデノフルオレン、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、インデノカルバゾールまたはこれらの基の組み合わせから誘導される基を意味すると理解される。
【0020】
本発明の文脈では、1〜20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基または3〜20個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキル基または2〜40個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基は、個々の水素原子もしくはCH基は、基の定義の元で上記言及した基により置換されていてよく、好ましくは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、ネオヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルまたはオクチニルを意味すると理解される。
【0021】
1〜20個の炭素原子を有するアルコキシもしくはチオアルキル基は、個々の水素原子もしくはCH基は、基の定義の元で上記言及した基により置換されていてよく、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチチオル、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニルチオル、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオまたはオクチニルチオを意味すると理解される。
【0022】
2個以上の基が、一緒に環を形成してもよいという表現は、本出願の文脈では、特に、2個の基が化学結合により互いに結合することを意味すると理解される。しかしながら、さらに、上記言及した表現は、2個の基の1つが水素である場合には、第2の基は、水素原子が結合した位置で結合して環を形成する意味で使用される。
【0023】
本発明によれば、Yは、単結合、OおよびSから選ばれることが好ましい。本発明によれば、Zは、OおよびSから選ばれることがさらに好ましい。Yが、単結合で、Zは、OおよびSから選ばれることが特に好ましい。本発明のさらなる1態様によれば、Yは、OおよびSから選ばれ、Zは、OおよびSから選ばれることが好ましい。
【0024】
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合および随意に1以上のR基により置換されてよいベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、インデノフルオレン、カルバゾール、ジベンゾフランまたはジベンゾチオフェンまたは2以上のこれらの基の組み合わせから誘導される2価基から選ばれ、ここで30個を超えない芳香族環原子がE基内に存在することが、さらに好ましい。
【0025】
E基は、好ましくは、単結合からまたは以下の式の基から選ばれる。
【0026】
【化3-1】
【0027】
【化3-2】
【0028】
【化3-3】
【0029】
ここで、破線は、式の基への結合であり、基は、自由な位置で1以上のR基により置換されてよいが、好ましくは、自由な位置で置換されない。
【0030】
式(E−23)および(E−24)の基において、Rは、好ましくは、同一か異なり、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、特別に、メチルまたは1以上のR基により置換されてよく、好ましくは、置換されないフェニル基である。2個のアルキル基Rは、スピロ基の形成により、環、好ましくは、シクロヘキシル環もしくはシクロヘプチル環を形成してもよい。
【0031】
Aは、出現毎に同一であるか異なり、式(A−1)または(A−3)の基、より好ましくは、式(A−1)の基であることが好ましい。
【0032】
式(A−3)の基の好ましい1態様は、以下の式(A−3−1)の基であり、
【0033】
【化4】
【0034】
ここで、Ar基は、上記定義されるとおりであり、好ましくは、その好ましい態様により定義される。
【0035】
式(A−3−1)の基の好ましい態様は、以下の式に対応し、
【0036】
【化5】
【0037】
ここで、基は、占有されない位置でR基により夫々置換されてよく、および
Wは、出現毎に同一であるか異なり、単結合またはBR、C(R、Si(R、C=O、O、S、S=O、SO、NR、PRおよびP(=O)(R)から選ばれ、好ましくは、C(RO、SおよびNRから、より好ましくは、C(Rから選ばれる。
【0038】
式(A−3−1a)〜(A−3−1g)の基の中で、特に好ましいのは、基(A−3−1c)と(A−3−1g)である。
【0039】
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上のR基により置換されてよい6〜25個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造から選ばれることが好ましい。特に好ましいのは、1以上の基Rにより置換されてよいフェニル、ビフェニル、テルフェニル、フルオレニル、スピロビフルオレニル、インデノフルオレニル、ナフチル、フェナンスレニル、フラニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、カルバゾリル、インドロカルバゾリルおよびインデノカルバゾリルである。
【0040】
Ar基は、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、以下の式の基から選ばれる:
【0041】
【化6-1】
【0042】
【化6-2】
【0043】
【化6-3】
【0044】
【化6-4】
【0045】
【化6-5】
【0046】
【化6-6】
【0047】
【化6-7】
【0048】
【化6-8】
【0049】
【化6-9】
【0050】
【化6-10】
【0051】
式中、破線の結合は、窒素への結合であり、基は自由な位置で1以上のR基により置換されてよいが、好ましくは、自由な位置で置換されない。
【0052】
式(Ar-68)〜(Ar-82)および(Ar-85)〜(Ar-87)の基中のRは、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、特別に、メチルまたはフェニル基であり、1以上の基Rにより置換されてよいが、好ましくは、非置換である。2個のアルキル基Rは、スピロ基の形成と共に環、好ましくは、シクロヘキシル環もしくはシクロペンチル環を形成してもよい。
【0053】
Xは、出現毎に同一であるか異なり、単結合またはC(R、C=O、O、SおよびNRより選ばれる基から選ばれることが好ましく、より好ましくは、Xは、単結合である。
【0054】
好ましくは、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、Si(R、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族環もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、2個以上のR基は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;ここで、上記アルキルおよびアルコキシ基と上記芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、夫々1以上のR基により置換されてよく、上記アルキルおよびアルコキシ基中の1以上のCH基は、-C≡C-、-RC=CR-、Si(R、C=O、C=NR、-NR、-O-、-S-、-C(=O)O-もしくは-C(=O)NR-で置き代えられてよい。より好ましくは、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、6〜25個の芳香族環原子を有する芳香族環もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、上記アルキル基と上記芳香族環構造もしくは複素環式芳香族環構造は、夫々1以上のR基により置換されてよい。さらにより好ましくは、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CN、メチル、tert-ブチル、フェニル、ビフェニル、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンもしくはカルバゾールであり、さらになおより好ましくは、Hである。
【0055】
好ましくは、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、Si(R、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族環もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、2個以上のR基は、たがいに結合してよく、および環を形成してよく;ここで、上記アルキルおよびアルコキシ基と上記芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、夫々1以上のR基により置換されてよく、上記アルキルおよびアルコキシ基中の1以上のCH基は、-C≡C-、-RC=CR-、Si(R、C=O、C=NR、-NR、-O-、-S-、-C(=O)O-もしくは-C(=O)NR-で置き代えられてよい。より好ましくは、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、6〜25個の芳香族環原子を有する芳香族環もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、上記アルキル基と上記芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、夫々1以上のR基により置換されてよい。最も好ましくは、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CN、メチル、tert-ブチル、フェニル、ビフェニル、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンもしくはカルバゾールである。
【0056】
好ましくは、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、Si(R、N(R、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、上記アルキルおよびアルコキシ基と上記芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、夫々1以上のR基により置換されてよく、上記アルキルおよびアルコキシ基中の1以上のCH基は、-C≡C-、-RC=CR-、Si(R、C=O、C=NR、-NR-、-O-、-S-、-C(=O)O-もしくは-C(=O)NR-で置き代えられてよい。
【0057】
本発明にしたがって、添え字a、b、cおよびdの丁度1個は1であり、その他の添え字は0であるか、または添え字a、b、cおよびdの丁度2個は1であり、その他の添え字は0であることが好ましい。
【0058】
さらに、添え字dは0であること、および添え字a、bおよびcの1以上、好ましくは、丁度1個もしくは2個は、1であることが好ましい。
【0059】
さらに、Yが単結合である場合には、ZがOであり、添え字aが1であり、添え字b、cとdの少なくとも一つが1であことが好ましい。添え字aが1である場合には、添え字b、cとdの少なくとも一つが1であことが好ましい。
【0060】
式(I)の好ましい1態様は、以下の式に対応し、
【0061】
【化7】
【0062】
ここで、上記定義されるとおりに出現する可変基は、好ましくは、その好ましい態様に対応する。水素原子だけが、「H」により示される位置に存在することができる。好ましくは、式(I−A)において、Rは、水素である。
【0063】
この場合にも、Yが単結合である場合には、ZがOであり、添え字aが1であり、添え字b、cとdの少なくとも一つが1であことが好ましい。添え字aが1である場合には、添え字b、cとdの少なくとも一つが1であことが好ましい。
【0064】
式(I)の好ましい態様は、以下の式に対応し、
【0065】
【化8】
【0066】
式中、可変基は上記定義されるとおりに出現し、好ましくは、その好ましい態様に対応し、式(I−1)〜(I−6)の基本構造は、夫々、Rにより置換されないとして示される1以上の位置で置換されてよい。
【0067】
式(I−1)に対して、Yが単結合である場合には、同時にZがOであることが排除されることが好ましい。
【0068】
式(I−1)〜(I−6)の中では、好ましいのは、式(I−1)〜(I−4)であり、特に好ましいのは、式(I−1)および(I−2)であり、非常に特に好ましいのは、式(I−2)である。
【0069】
式((I−1)〜(I−6)の好ましい態様は、以下の式に対応し、
【0070】
【化9-1】
【0071】
【化9-2】
【0072】
【化9-3】
【0073】
【化9-4】
【0074】
式中、出現する記号は、上記定義のとおりであり、好ましくは、その好ましい態様に対応する。水素原子だけが、「H」により示される位置に存在することができる。好ましくは、式(I−A−1)〜(I−A−6)において、Rは、水素である。
る。
【0075】
式(I−A−1)〜(I−A−6)の中では、好ましいのは、式(I−A−1)〜(I−A−4)であり、特に好ましいのは、式(I−A−1)および(I−A−2)であり、非常に特に好ましいのは、式(I−A−2)である。
【0076】
式(I−A−1)に対して、Yが単結合である場合には、同時にZがOであることが排除されることが好ましい。
【0077】
さらに、式(I−1)〜(I−6)の好ましい態様は、以下の式に対応し、
【0078】
【化10-1】
【0079】
【化10-2】
【0080】
【化10-3】
【0081】
【化10-4】
【0082】
式中、出現する記号は、上記定義のとおりであり、好ましくは、その好ましい態様に対応し、式(I−1−1)〜(I−6−2)の基本構造は、夫々、R基により置換されないとして示される1以上の位置で置換されてよい。
【0083】
上記式の中では、好ましいのは、式(I−1−1)〜(I−4−2)である。
【0084】
さらにその場合に、式(I)の化合物の非常に特に好ましい態様は、式(I−A−1)〜(I−A−6)の一つのまたは式(I−1−1)〜(I−6−2)の一つに対応する。
【0085】
Yは、存在するならば、単結合、OおよびSから選ばれる。
【0086】
Zは、存在するならば、OおよびSから選ばれる。
【0087】
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合および夫々、随意に夫々R基により置換されてよいベンゾル、ビフェニル、テルフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、インデノフルオレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンまたは1以上のこれらの基の組み合わせから選ばれる2価基であり、30個を超えない芳香族環原子が、E基中に存在する。
【0088】
Aは、式(A−1)または(A−3)の基、好ましくは、式(A−1)の基である。
【0089】
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上のR基により置換されてよい6〜25個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造から選ばれ、好ましくは、夫々、1以上のR基により置換されてよいフェニル、ビフェニル、テルフェニル、フルオレニル、スピロビフルオレニル、インデノフルオレニル、ナフチル、フェナンスレニル、フラニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、カルバゾリル、インドロカルバゾリルおよびインデノカルバゾリルから選ばれる。
【0090】
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個の炭素原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、6〜25個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、上記アルキルおよびアルコキシ基と上記芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、夫々1以上のR基により置換されてよい。好ましくは、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CN、メチル、tert-ブチル、フェニル、ビフェニル、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンもしくはカルバゾールであり、なおより好ましくは、Hである。
【0091】
以下の表は、式(I)の化合物の例を示す。
【0092】
【化11-1】
【0093】
【化11-2】
【0094】
【化11-3】
【0095】
【化11-4】
【0096】
【化11-5】
【0097】
【化11-6】
【0098】
【化11-7】
【0099】
【化11-8】
【0100】
【化11-9】
【0101】
【化11-10】
【0102】
式(I)の化合物の合成を、先行技術から知られたプロセスと反応のタイプ、たとえば、ハロゲン化、有機金属付加、ブッフバルトカップリングおよびスズキカップリングにより実行することができる。
【0103】
スキーム1〜3は、本発明の化合物の調製のための可能な合成経路を示す。それらは、当業者に本発明を説明するために役立つが、制限的に解釈すべきではない。当業者は、一般的専門知識の範囲内で、示された合成経路を変更し、より有利であろうならば、他の経路を開発することができるであろう。
【0104】
以下の合成スキームにおいて、化合物は、非置換形態で示されている。これは、プロセスにおいて任意の所望の置換基の存在を排除するものではない。
【0105】
スキーム1は、式(Z−I)の中間体のための適切な合成を示す。
【0106】
【化12】
【0107】
同様の方法で、式(Z−II)の中間体を調製することができる(スキーム2)。
【0108】
【化13】
【0109】
スキーム1または2の変形により、2個以上の反応性Hal基を担持する中間体を調製することができる。この目的のために、Hal-置換フルオレン単位もしくは3個のHal基で置換されたフェニル基の何れかを使用することができる。代替として、Halにより2置換または多置換されたフルオレン単位を使用することができる。
【0110】
式(Z−I)と(Z−II)による反応性Z基により提供された中間体は、以下のスキームにより示されるとおりに、式(II)の化合物に変換することができる多目的単位である。
【0111】
【化14】
【0112】
したがって、本発明は、また、まず、スピロビフルオレン基本骨格が調製され、その後の工程で、アリールアミノもしくはカルバゾール基またはアリールアミノもしくはカルバゾール基で置換されたアリールもしくはヘテロアリール基が、有機金属カップリング反応により導入されることを特徴とする、式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0113】
有機金属カップリング反応は、好ましくは、ブッフバルトカップリングまたはスズキカップリングである。
【0114】
上記記載された化合物、特別に、臭素、沃素、塩素、ボロン酸もしくはボロン酸エステル等の反応性脱離基により置換された化合物は、対応するオリゴマー、デンドリマーまたはポリマーの製造のためのモノマーとしての使用を見出すことができる。適切な反応性脱離基は、たとえば、臭素、沃素、塩素、ボロン酸、ボロン酸エステル、アミン、末端C-C二重結合もしくはC-C三重結合を有するアルケニルまたはアルキニル基、オキシラン、オキセタン、環付加、たとえば、1,3-双極子環付加に入る基、たとえば、ジエンもしくはアジド等、カルボン酸誘導体、アルコールおよびシランである。
【0115】
したがって、本発明は、さらに、1以上の式(I)の化合物を含むオリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーを提供し、ポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーへの結合は、式(I)中でRまたはRにより置換される任意の所望の位置に局在してよい。式(I)の化合物の結合に応じて、化合物は、オリゴマーもしくはポリマーの側鎖の部分であるか、または主鎖の部分である。本発明の文脈でオリゴマーは、少なくとも3個のモノマー単位から形成される化合物の意味であると理解される。本発明の文脈でポリマーは、少なくとも10個のモノマー単位から形成される化合物の意味であると理解される。本発明のポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーは、共役、部分共役もしくは非共役であってよい。本発明のオリゴマーまたはポリマーは、直鎖、分岐鎖もしくは樹状であってよい。直鎖で結合する構造において、式(I)の単位は、互いに直接結合してもよいか、2価基を介して、たとえば、置換あるいは非置換アルキレン基を介して、ヘテロ原子を介して、または2価の芳香族もしくは複素環式芳香族基を介して、互いに結合してよい。分岐および樹状構造においては、たとえば、3個以上の式(I)の単位は、3価基を介して、あるいはより多価の基を介して、たとえば、3価あるいはより多価の芳香族もしくは複素環式芳香族基を介して、結合してよく、分岐もしくは樹状オリゴマーまたはポリマーを形成する。
【0116】
式(I)の化合物に対する上記記載したのと同じ選好が、オリゴマー、デンドリマーおよびポリマー中の式(I)の繰り返し単位にあてはまる。
【0117】
オリゴマーまたはポリマーの調製のために、本発明のモノマーは、さらなるモノマーとホモ重合するか共重合する。適切で好ましいコモノマーは、フルオレン(たとえば、EP842208もしくはWO2000/22026によるもの)、スピロビフルオレン(たとえば、EP707020、EP894107もしくはWO2006/061181によるもの)、パラ-フェニレン(たとえば、WO1992/18552によるもの)、カルバゾール(たとえば、WO2004/070772もしくはWO2004/113468によるもの)、チオフェン(たとえば、EP1028136によるもの)、ジヒドロフェナントレン(たとえば、WO 2005/014689もしくはWO2007/006383によるもの)、cis-およびtrans-インデノフルオレン(たとえば、WO2004/041901もしくはWO2004/113412によるもの)、ケトン(たとえば、WO2005/040302によるもの)、フェナントレン(たとえば、WO2005/104264もしくはWO0207/017066によるもの)または複数のこれらの単位から選ばれる。ポリマー、オリゴマーおよびデンドリマーは、さらなる単位、たとえば、発光(蛍光もしくは燐光)単位、たとえば、ビニルトリアリールアミン(たとえば、WO2007/068325によるもの)または燐光金属錯体(たとえば、WO2006/003000によるもの)等および/または電荷輸送単位、特別に、トリアリールアミン系のものをも含んでもよい。
【0118】
本発明のポリマーおよびオリゴマーは、1以上の型のモノマーの重合により一般的に調製され、少なくとも一つのモノマーは、ポリマー中に式(I)の繰り返し単位を生じる。適切な重合反応は、当業者に知られ、文献に記載されている。C-CまたはC-N結合を生じる、特に適切で好ましい重合反応は、スズキ重合、ヤマモト重合、スチル重合およびハートウイッグ-ブッフバルト重合である。
【0119】
液相からの、たとえば、スピンコーティングによるまたは印刷法による本発明の化合物の加工のためには、本発明の化合物の調合物が必要である。これらの調合物は、たとえば、溶液、分散液もしくはエマルジョンであり得る。2以上の溶媒の混合物を使用することが、この目的のために好ましいこともある。適切で好ましい溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、メチルベンゾエート、メシチレン、テトラリン、ベラトール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサン、フェノキシトルエン、特別に、3-フェノキシトルエン、(-)-フェンコンヌ、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、ブチルベンゾエート、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、エチルベンゾエート、インダン、メチルベンゾエート、NMP、p-シメン、フェネトール、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエ−テル、トリプロピレングリコールジメチルエ−テル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンもしくはこれら溶媒の混合物である。
【0120】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも一つの式(I)の化合物と少なくとも一つの溶媒、好ましくは、有機溶媒を含む調合物、特別に、溶液、分散液もしくはエマルジョンを提供する。このような溶液を調製することができる方法は、当業者に知られており、たとえば、WO 2002/072714、WO 2003/019694とそこに引用された文献に記載されている。
【0121】
本発明の化合物は、電子素子、特別に、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)での使用のために適している。化合物は、置換に応じて、種々の機能と種々の層に用いられる。
【0122】
したがって、本発明は、さらに、式(I)の化合物の電子素子での使用を提供する。この電子素子は、好ましくは、有機集積回路(OIC)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機ソーラーセル(OSC)、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子(OFQD)、有機発光電子化学セル(OLEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)から選ばれ、より好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)から選ばれる。
【0123】
本発明は、さらに、既に上記示したとおりに、少なくとも一つの式(I)の化合物を含む電子素子を提供する。この電子素子は、好ましくは、上記素子から選ばれる。
【0124】
より好ましくは、アノード、カソードと少なくとも一つの発光層を含む有機エレクトロルミッセンス素子(OLED)であり、少なくとも一つの有機層は、発光層、正孔輸送層または別の層であってよく、少なくとも一つの式(I)の化合物を含む。
【0125】
カソード、アノードおよび発光層とは別に、有機エレクトロルミッセンス素子は、さらなる層を含んでよい。これらは、たとえば、各場合に、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、電子ブロック層、励起子ブロック層、中間層、電荷生成層(IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5), T. Matsumoto, T. Nakada, J.Endo, K. Mori, N. Kawamura, A. Yokoi, J.Kido, Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)および/または有機あるいは無機p/n接合から選ばれる。
【0126】
式(I)の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の層配列は、好ましくは、以下のとおりである:アノード−正孔注入層−正孔輸送層−随意にさらなる正孔輸送層−随意に電子ブロック層−発光層−随意に正孔ブロック層−電子輸送層−電子注入層−カソード。さらなる層が追加的に存在してもよい。
【0127】
本発明の有機エレクトロルミネセンス素子は、2以上の発光層を含んでもよい。この場合にこれらの発光層は、より好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光波長を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光もしくは燐光を発し、青色、緑色、黄色、オレンジ色もしくは赤色発光することができる種々の発光化合物が、発光層で使用される。特別に好ましいものは、3個の層、すなわち、3個の発光層を有する構造であり、その3層は、青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈する(基本構造については、たとえば、WO 2005/011013参照。)。本発明の化合物は、好ましくは、正孔輸送層、正孔注入層または電子ブロック層に存在する。
【0128】
本発明にしたがうと、式(1)の化合物は、1以上の燐光発光化合物を含む電子素子で使用されることが好ましい。この場合に、化合物は、種々の層に、好ましくは、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔注入層または発光層に存在してよい。
【0129】
用語「燐光発光化合物」は、その発光が、スピン禁制遷移、たとえば、励起三重項状態またはより高いスピン量子数を有する状態、たとえば、五重項状態からの遷移により生じる化合物を典型的に包含する。
【0130】
適切な燐発光化合物(=三重項発光化合物)は、特別に、可視域で、適切な励起により発光する化合物は、また、20より大きい原子番号、好ましくは、38〜84の原子番号、より好ましくは、56〜80の原子番号を有する少なくとも一つの原子を含む。燐光発光化合物として使用される好ましいものは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含む化合物、特に、イリジウム、白金または銅を含む化合物である。本発明の文脈において、すべてのルミネッセントイリジウム、白金または銅錯体が、燐光化合物とみなされるべきである。
【0131】
上記記載された発光化合物の例は、出願WO 00/70655、WO 01/41512、WO 02/02714、WO 02/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 05/033244、WO 05/019373およびUS2005/0258742に見出すことができる。一般的には、先行技術により燐光発光OLEDのために使用され、有機エレクトロルミネッセンス素子分野の当業者に知られるようなすべての燐光発光錯体が適切である。当業者は発明力を行使することなく、有機エレクトロルミッセンス素子において式(I)の化合物と組み合わせて、さらなる燐光発光化合物を使用することができよう。さらなる例は、後の表に挙げられる。
【0132】
式(I)の化合物は、本発明にしたがって、1以上の蛍光発光化合物を含む電子素子で使用されることもできる。
【0133】
本発明の好ましい1態様では、式(I)の化合物は、正孔輸送材料として使用される。その場合に、化合物は。好ましくは、正孔輸送層、電子ブロック層または正孔注入層に存在する。特に好ましいのは、電子ブロック層での使用である。
【0134】
本願による正孔輸送層は、アノードと発光層との間の正孔輸送機能を有する層である。
【0135】
本願の文脈での正孔注入層と電子ブロック層は、正孔輸送層の特定の態様を意味すると理解される。アノードと発光層との間の複数の正孔輸送層の場合、正孔注入層は、アノードに直接隣接するかまたはアノードの単一の被覆により分離されただけである正孔輸送層である。アノードと発光層との間の複数の正孔輸送層の場合、電子ブロック層は、アノード側の発光層に直接隣接する正孔輸送層である。
【0136】
式(I)の化合物が、正孔輸送層、正孔注入層もしくは励起子ブロック層中で正孔輸送材料として使用されるならば、化合物は、純粋材料として、すなわち正孔輸送層中で100%の割合で使用することができるか、または1以上のさらなる化合物と組み合わせて使用することができる。好ましい1態様によれば、式(I)の化合物を含む有機層は、1以上のp-ドーパントを追加的に含む。本発明により使用されるp-ドーパントは、好ましくは、混合物中の1以上のその他の化合物を酸化することができる有機電子受容性化合物である。
【0137】
p-ドーパントの、特に好ましい態様は、WO2011/073149、EP1968131、EP2276085、EP2213662、EP1722602、EP2045848、DE102007031220、US8044390、US8057712、WO2009/003455、WO2010/094378、WO2011/120709、US2010/0096600、WO2012/095143およびDE 102012209523に開示された化合物である。
【0138】
特に好ましいp-ドーパントはキノジメタン化合物、アザインデノフルオレンジオン、アザフェナレン、アザトリフェニレン、I、金属ハロゲン化物、好ましくは、遷移金属ハロゲン化物、金属酸化物、好ましくは、少なくとも一つの遷移金属もしくは第3主属からの金属を含む金属酸化物および遷移金属錯体、好ましくは、結合位置として少なくとも一つの酸素原子を含むリガンドをもつCu、Co、Ni、PdもしくはPtの錯体である。ドーパントとしてさらに好ましいのは、遷移金属酸化物、好ましくは、レニウム、モリブデンおよびタングステンの酸化物、より好ましくは、Re、MoO、WOおよびReOである。
【0139】
p-ドーパントは、好ましくは、p-ドープ層に実質的に均一に分配される。これは、たとえば、p-ドーパントと正孔輸送マトリックス材料の共蒸発により実現することができる。
【0140】
好ましいp-ドーパントは、特別に、以下の化合物である:
【0141】
【化15-1】
【0142】
【化15-2】
【0143】
本発明のさらに好ましい1態様では、式(I)の化合物は、US2007/0092755に記載されたとおりのヘキサアザトリフェニレン誘導体と組み合わせて、正孔輸送材料として使用される。ここで、ヘキサアザトリフェニレン誘導体は、特に好ましくは、別の層中で使用される。
【0144】
本発明のさらなる1態様では、式(I)の化合物は、1以上の発光化合物、好ましくは、燐光発光化合物と組み合わせてマトリックス材料として使用される。
【0145】
発光層中のマトリックス材料の割合は、この場合、蛍光発光層に対しては、50.0〜99.9体積%、好ましくは、80.0〜99.5体積%、より好ましくは、92.0〜99.5体積%であり、燐光発光層に対しては、85.0〜97.0体積%である。
【0146】
対応して、発光化合物の割合は、蛍光発光層に対しては、0.1〜50.0体積%、好ましくは、0.5〜20.0体積%、より好ましくは、0.5〜8.0体積%であり、燐光発光層に対しては、3.0〜15.0体積%である。
【0147】
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層は、また、複数のマトリックス材料(混合マトリックス系)および/または複数の発光化合物を含んでもよい。この場合にも、発光化合物は、一般的には、系中でより少ない割合を有するものであり、マトリックス材料は、系中でより多い割合を有するものである。しかしながら、個々の場合では、系中の単一のマトリックス材料の割合は、単一の発光化合物の割合よりも少なくてよい。
【0148】
式(I)の化合物は、混合マトリックス系の成分として使用されることが好ましい。混合マトリックス系は、好ましくは、2または3種の異なるマトリックス材料、より好ましくは、2種の異なるマトリックス材料を含む。ここで、2種の材料の1つは、好ましくは、正孔輸送特性を有する材料であり、その他の材料は、電子輸送特性を有する材料である。式(I)の化合物は、好ましくは、正孔輸送特性を有するマトリックス材料である。しかしながら、混合マトリックス成分の所望の電子輸送および正孔輸送特性は、単一の混合マトリックス成分中で主としてまたは完全に結合されてもよく、その場合には、さらなる混合マトリックス成分が他の機能を果たす。ここで、2種の異なるマトリックス材料は、1:50〜1:1、好ましくは、1:20〜1:1、より好ましくは、1:10〜1:1、最も好ましくは、1:4〜1:1の比で存在してよい。混合マトリックス系は、好ましくは、燐光有機エレクトロルミッセンス素子中で用いられる。混合マトリックス系に関するより正確な情報源は、出願WO 2010/108579である。
【0149】
混合マトリックス系は、1以上の発光化合物、好ましくは1以上の燐光発光化合物を含んでよい。一般的に、混合マトリックス系は、好ましくは、燐光有機エレクトロルミッセンス素子で使用される。
【0150】
本発明の化合物と組み合わせて混合マトリックス系のマトリックス成分として使用することができる特に適切なマトリックス材料は、どの型の発光化合物が混合マトリックス系で使用されるかに応じて、燐光発光化合物のために以下に示される好ましいマトリックス材料または蛍光発光化合物のための好ましいマトリックス材料から選ばれる。
【0151】
混合マトリックス系での使用のための好ましい燐光発光化合物は、一般的に好ましい燐光発光材料として以下に詳細に示されるものと同じである。
【0152】
電子素子での種々な機能性材料の好ましい態様は、以下に挙げられる。
【0153】
好ましい燐光発光化合物は、上記言及されたものである。
【0154】
好ましい蛍光発光化合物は、アリールアミンのクラスから選ばれる。本発明の文脈でのアリールアミンもしくは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3個の置換もしくは非置換芳香族または複素環式芳香族環構造を含む化合物を意味すると理解される。これら芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の少なくとも1個は、好ましくは、縮合環構造であり、より好ましくは、少なくとも14個の芳香族環原子を有する。それらの好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミンもしくは芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンアミンは、1個のジアリールアミノ基が、アントラセン基に直接、好ましくは、9-位で結合する化合物を意味すると理解される。芳香族アントラセンジアミンは、2個のジアリールアミノ基が、アントラセン基に直接、好ましくは、9.10-位で結合する化合物を意味すると理解される。芳香族ピレンアミン、ピレンジアミン、クリセンアミンおよびクリセンジアミンは、同様に定義され、ここで、ジアリールアミノ基は、好ましくは、ピレンに、1位もしくは1.6-位で結合する。さらに好ましい発光化合物は、たとえば、WO 2006/108497もしくはWO 2006/122630によるインデノフルオレンアミンあるいはインデノフルオレンジアミン、たとえば、WO 2008/006449によるベンゾインデノフルオレンアミンあるいはベンゾインデノフルオレンジアミン、および、たとえば、WO 2007/140847によるジベンゾインデノフルオレンアミンあるいはジベンゾインデノフルオレンジアミンおよび、WO 2010/012328に開示された縮合アリール基を含むインデノフルオレン誘導体である。好ましいのは、同様に、WO2014/037077に開示されたベンゾインデノフルオレンアミンとWO2014/106522に開示されたベンゾフルオレンアミンとWO2014/111269に開示された拡張ベンゾインデノフルオレンである。
【0155】
好ましくは、蛍光発光化合物のための有用なマトリックス材料は、種々の物質クラスの材料を含む。好ましいマトリックス材料は、オリゴアリーレン(たとえば、EP 676461による2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレンもしくはジナフチルアントラセン)、特別に、縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(たとえば、DPVBiもしくはEP 676461によるスピロ-DPVBi)、ポリポダル金属錯体(たとえば、WO 2004/081017によるもの)、正孔伝導化合物(たとえば、WO 2004/058911によるもの)、電子伝導化合物、特別に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(たとえば、WO 2005/084081およびWO 2005/084082によるもの)、アトロプ異性体(たとえば、WO 2006/048268によるもの)、ボロン酸誘導体(たとえば、WO 2006/177052によるもの)またはベンズアントラセン(たとえば、WO2008/145239によるもの)のクラスから選択される。特に好ましいマトリックス材料は、ナフタレン、アントラセン、ベンゾアントラセンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体、オリゴアリーレンビニレン、ケトン、ホスフィンオキシドおよびスルホキシドのクラスから選択される。非常に特に好ましいマトリックス材料は、アントラセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体のクラスから選択される。本発明の文脈でのオリゴアリーレンは、少なくとも3個のアリールもしくはアリーレン基が互いに結合した化合物を意味すると理解されるべきである。さらに好ましいのは、WO2006/097208、WO2006/131192、WO2007/065550、WO2007/110129、WO2007/065678、WO2008/145239、WO2009/100925、WO2011/054442およびEP 1553154に開示されたアントラセン誘導体とEP1749809、EP1905754およびUS2012/0187826に開示されたピレン化合物である。
【0156】
燐光発光化合物のための好ましいマトリックス材料は、式(I)の化合物と同じく、たとえば、WO2004/013080、WO2004/093207、WO2006/005627もしくはWO2010/006680による芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシドまたは芳香族スルホキシドもしくはスルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)または、WO 2005/039246、US 2005/0069729、JP 2004/288381、EP1205527もしくはWO2008/086851に開示されたカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746によるインドロカルバゾール誘導体、たとえば、WO2010/136109、WO2011/000455もしくはWO2013/041176によるインデノカルバゾール誘導体、たとえば、EP 1617710、EP 1617711、EP 1731584、JP 2005/347160によるアザカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/137725によるバイポーラーマトリックス材料、たとえば、WO 2005/111172によるシラン、たとえば、WO2006/117052によるアザボロールもしくはボロン酸エステル、たとえば、WO2010/15306、WO2007/063754もしくはWO2008/056746によるトリアジン誘導体、たとえば、EP652273もしくはWO2009/062578による亜鉛錯体、たとえば、WO2010/054729によるジアザシロールもしくはテトラアザシロール誘導体、たとえば、WO2010/054730によるジアザホスホール誘導体、たとえば、US2009/0136779、WO2010/050778、WO2011/042107、WO2011/088877もしくはWO2012/143080による架橋カルバゾール誘導体、たとえば、WO2012/048781によるトリフェニレン誘導体、たとえば、WO2011/116865もしくはWO2011/137951によるラクタムである。
【0157】
本発明の電子素子の正孔注入もしくは正孔輸送層中で、または電子ブロック層中でまたは電子輸送層中で使用することができる適切な電荷輸送材料は、たとえば、Y. Shirota et al., Chem. Rev. 2007, 107(4), 953-1010に開示された化合物または先行技術によりこれらの層に使用される他の材料である。
【0158】
好ましくは、本発明のOLEDは、2以上の相異なる正孔輸送層を含む。ここで、式(I)の化合物は、1以上の正孔輸送層または全正孔輸送層で使用されてよい。好ましい1態様によると、式(I)の化合物は、丁度1個の正孔輸送層で使用され、他の化合物、好ましくは、芳香族アミン化合物は、存在するさらなる正孔輸送層で使用される。
【0159】
電子輸送層のために使用される材料は、電子輸送層中で電子輸送材料として先行技術により使用されるとおりの任意の材料であってよい。特別に適切なものは、アルミニウム錯体、たとえば、Alq、ジルコニウム錯体、たとえば、Zrq、リチウム錯体、たとえば、Liq、ベンズイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、芳香族ケトン、ラクタム、ボラーン、ジアザホスホール誘導体およびホスフィンオキシド誘導体である。さらに、適切な材料は、JP2000/053957、WO2003/060956、WO 2004/028217、WO 2004/080975およびWO 2010/072300に開示されたとおりの上記言及した化合物の誘導体である。
【0160】
電子素子の好ましいカソードは、低い仕事関数を有する金属、種々の金属を含む金属合金もしくは多層構造、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属あるいはランタノイド金属(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)を含む。また、適切なのは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と銀を含む合金、たとえば、マグネシウムと銀とから成る合金である。多層構造の場合、たとえば、AgもしくはAlのような比較的高い仕事関数を有するさらなる金属を前記金属に加えて使用することもでき、その場合、たとえば、Ca/Ag、Mg/AgもしくはBa/Agのような金属の組み合わせが一般的に使用される。高い誘電定数を有する材料の薄い中間層を金属カソードと有機半導体との間に挿入することも好ましいこともある。この目的のために有用な材料の例は、アルカリ金属フッ化物もしくはアルカリ土類金属フッ化物だけでなく対応する酸化物もしくは炭酸塩である(たとえば、LiF、LiO、BaF、MgO、NaF、CsF、CsCO等)。さらに、リチウムキノリナート(LiQ)をこの目的のために使用することができる。この層の層厚は、好ましくは、0.5〜5nmである。
【0161】
好ましいアノードは、高い仕事関数を有する材料である。アノードは、好ましくは、真空に対して4.5eVより高い仕事関数を有する。まず、たとえば、Ag、PtもしくはAuのような高い還元電位を有する金属が、この目的に適する。第2に、金属/金属酸化物電極(たとえば、Al/Ni/NiO、Al/PtO)も好ましいこともある。いくつかの用途のためには、少なくとも一つの電極は、有機材料の照射(有機ソーラーセル)もしくは発光(OLED、O−LASER)の何れかを可能とするために、透明または部分的に透明でなければならない。ここで、好ましいアノード材料は、伝導性混合金属酸化物である。特に好ましいものは、インジウム錫酸化物(ITO)もしくはインジウム亜鉛酸化物(IZO)である。さらに好ましいものは、伝導性のドープされた有機材料、特別に、伝導性のドープされたポリマーである。さらに、アノードは、複数の層、たとえば、ITOの内部層と金属酸化物の外部層、好ましくは、タングステン酸化物、モリブデン酸化物またはバナジウムから成ってもよい。
【0162】
素子は(用途に応じて)適切に構造化され、接点を供され、水と空気の有害な作用を排除するために、最後に封止される。
【0163】
好ましい1態様では、電子素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用されることを特徴とする。この場合に、材料は、10−5mbar未満、好ましくは、10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華システム中で気相堆積される。しかしながら、この場合に、初期圧力は、さらにより低くても、たとえば、10−7mbar未満でも可能である。
【0164】
同様に好ましい電子素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)法もしくはキャリアガス昇華により適用されることを特徴とする。この場合に、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で適用される。この方法の特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、そしてそれにより構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0165】
さらに、好ましい電子素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、または、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷、ノズル印刷もしくはオフセット印刷、より好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、もしくはインクジェット印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。可溶性の式(I)の化合物が、この目的のために必要である。高い溶解性は、化合物の適切な置換により実現することができる。
【0166】
本発明の電子素子が、1以上の層を溶液からまた1以上の層を昇華プロセスにより適用することにより製造されることが、さらに好ましい。
【0167】
本発明によれば、1以上の式(I)の化合物を含む電子素子は、照明用途の光源として、医療および/または美容用途(たとえば、光治療)の光源として、表示装置において使用することができる。
【0168】

A)合成例
例1:化合物(1−1)〜(1−26)の合成
【0169】
【化16】
【0170】
1-(2-ブロモフェニル)ジベンゾチオフェンA−1の合成
80g(351ミリモル)のジベンゾチオフェン-1-ボロン酸(CAS:1245943-60-5)と、83g(351ミリモル)の1,2-ジブロモベンゼンと、8.2g(7.02ミリモル)のPd(PhP)とを、700mlのジオキサンに懸濁させる。この懸濁液に対して、440ml(877ミリモル)の2Mの炭酸カリウム溶液を徐々に添加し、反応混合物を還流下で18時間加熱する。冷却後、有機相を除去し、シリカゲルを通して濾過し、200mlの水で三度洗浄し、次いで濃縮乾固させる。残留物をシリカゲルにおいてクロマトグラフィにより精製する。収率:101g(297ミリモル)、理論値の85%、HPLCによる純度>97%。
【0171】
前述の化合物A−1の合成と同じような方法で、以下の化合物を調製する:
【0172】
【化17】
【0173】
中間体B−1の合成
56.3g(166ミリモル)の1-(2-ブロモフェニル)ジベンゾチオフェンA−1を最初に、700mlのTHFに−78℃で入れる。この温度で、70mlのBuLi(ヘキサン中2.5M)を滴下する。1時間後、200mlのTHF中、45.2g(174ミリモル)の2-ブロモフルオレン-9-オンを滴下する。混合物を室温で終夜、撹拌し、氷水へ添加し、ジクロロメタンで抽出する。結合した有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水させる。溶媒を減圧下で除去し、残留物をさらに精製せずに、90mlのHClと1lのAcOHとともに、75℃で終夜加熱する。冷却後、沈殿した固形物を吸引濾過し、150mlの水で二度、各回150mlのエタノールで三度洗浄し、最後にヘプタンから再結晶化させる。収率:59g(117ミリモル)、71%;H NMRによる純度約98%。
【0174】
前述の化合物B−1の合成と同じような方法で、以下の化合物を調製する:
【0175】
【化18-1】
【0176】
【化18-2】
【0177】
【化18-3】
【0178】
【化18-4】
【0179】
化合物(1−1)の合成
13.7g(38ミリモル)のビフェニル-4-イル(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミンと、17.4g(38モル)のブロモ-スピロ誘導体B−1とを、300mlのトルエンに溶解させる。溶液を脱気し、Nで飽和させる。その後、1.52ml(1.52ミリモル)の1Mのトリ-tert-ブチルホスフィン溶液と、170mg(0.76ミリモル)のPd(AcO)とをそこに添加し、次いで9.0gのナトリウムtert-ブトキシド(94.2ミリモル)を添加する。反応混合物を保護雰囲気下で5時間、加熱して沸騰させる。その後、混合物をトルエンと水との間で分画し、有機相を水で三度洗浄し、NaSOで脱水させ、ロータリー蒸発により濃縮させる。粗生成物をシリカゲルを通してトルエンとともにろ過した後、残された残留物をヘプタン/トルエンから再結晶化させ、最後に、高真空で昇華させる。純度は99.9%(HPLC)である。化合物(1−1)の収率は22.7g(理論値の77%)である。
【0180】
化合物(1−2)〜(1−26)の合成
例1で前述した化合物(1−1)の合成と同じような方法で、以下の化合物(1−2)〜(1−26)も調製する:
【0181】
【化19-1】
【0182】
【化19-2】
【0183】
【化19-3】
【0184】
【化19-4】
【0185】
【化19-5】
【0186】
【化19-6】
【0187】
例2:化合物2−1〜2−9の合成
【0188】
【化20】
【0189】
スピロフルオレン-ボロン酸エステル誘導体(C−1)
36g(74.2ミリモル)のスピロフルオレン-ブロモ誘導体B11と、22.6g(89ミリモル)のビス(ピナコラート)ジボランと、21.8g(222ミリモル)の酢酸カリウムとを、400mlのDMFに懸濁させる。この懸濁液に対して、1.82g(2.23ミリモル)の1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)錯体をDCMとともに添加する。反応混合物を還流下で16時間、加熱する。冷却後、有機相を除去し、400mlの水で三度洗浄し、次いで濃縮乾固させる。反応混合物を還流下で16時間、加熱する。冷却後、有機相を除去し、400mlの水で三度洗浄し、次いで濃縮乾固させる。残留物をヘプタンから再結晶化させる(37g、94%の収率)。
【0190】
これと同じような方法で、以下の化合物を調製する:
【0191】
【化21-1】
【0192】
【化21-2】
【0193】
ビフェニル-2-イル(ビフェニル-4-イル)(4-クロロフェニル)アミン(D−1)
【0194】
【化22】
【0195】
23.8gのビフェニル-2-イル(ビフェニル-4-イル)アミン(74ミリモル)と、21.2gの4-クロロヨードベンゼン(89ミリモル)とを、500mlのトルエンに溶解させる。溶液を脱気し、Nで飽和させる。その後、3ml(3ミリモル)の1Mのトリ-tert-ブチルホスフィン溶液と、0.33g(1.48ミリモル)の酢酸パラジウム(II)とをそこに添加し、次いで10.7gのナトリウムtert-ブトキシド(111ミリモル)を添加する。反応混合物を保護雰囲気下で12時間、加熱して沸騰させる。その後、混合物をトルエンと水との間で分画し、有機相を水で三度洗浄し、NaSOで脱水させ、ロータリー蒸発により濃縮させる。粗生成物をシリカゲルを通してトルエンとともにろ過した後、残された残留物をヘプタン/トルエンから再結晶化させる。収率は29g(理論値の90%)である。
【0196】
これと同じような方法で、以下の化合物を調製する:
【0197】
【化23-1】
【0198】
【化23-2】
【0199】
化合物(2−1)の合成
18.0g(32ミリモル)のスピロフルオレンピナコールボロン酸エステル誘導体C−1と、15.3g(32ミリモル)のクロロ誘導体D−1とを、360mlのジオキサンと、9.8gのフッ化セシウム(64ミリモル)とに懸濁させる。1.19g(1.6ミリモル)のビス(トリシクロヘキシルホスフィン)二塩化パラジウムをこの懸濁液に添加し、反応混合物を還流下で16時間、加熱する。冷却後、有機相を除去し、シリカゲルを通して濾過し、100mlの水で三度洗浄し、次いで濃縮乾固させる。粗生成物をシリカゲルを通してトルエンとともにろ過した後、残された残留物をヘプタン/トルエンから再結晶化させ、最後に、高真空で昇華させる。純度は99.9%である。収率は18g(理論値の70%)である。
【0200】
化合物(2−2)〜(2−9)の合成
前述の化合物(2−1)の合成と同じような方法で、以下の化合物(2−2)〜(2−9)も調製する:
【0201】
【化24-1】
【0202】
【化24-2】
【0203】
【化24-3】
【0204】
例3:化合物3−1〜3−4の合成
【0205】
【化25】
【0206】
12.2g(50ミリモル)の3-フェニルカルバゾールと、21g(42ミリモル)のブロモ-スピロ誘導体とを、300mlのトルエンに溶解させる。溶液を脱気し、Nで飽和させる。その後、1.68ml(1.68ミリモル)の1Mのトリ-tert-ブチルホスフィン溶液と、770mg(0.84ミリモル)のPd(dba)とをそこに添加し、次いで6.18gのナトリウムtert-ブトキシド(63ミリモル)を添加する。反応混合物を保護雰囲気下で26時間、加熱して沸騰させる。その後、混合物をトルエンと水との間で分画し、有機相を水で三度洗浄し、NaSOで脱水させ、ロータリー蒸発により濃縮させる。粗生成物をシリカゲルを通してトルエンとともにろ過した後、残された残留物をヘプタン/トルエンから再結晶化させ、最後に、高真空で昇華させる。純度は99.9%(HPLC)である。化合物(3−1)の収率は13.5g(理論値の58%)である。
【0207】
化合物(3−2)〜(3−4)の合成
例1で前述した化合物(3−1)の合成と同じような方法で、以下の化合物(3−2)〜(3−4)も調製する:
【0208】
【化26】
【0209】
B)素子の例
本発明のOLEDと先行技術によるOLEDとが、WO 04/058911による一般的方法により製造されるが、ここに記載される状況(たとえば材料)に適合される。
【0210】
以下の本発明の例においては、種々のOLEDについてのデータが提示されている。使用する基板は、厚さ50nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆されたガラス板である。OLEDは、次の一般的な層構造を有する:基板/p-ドープされた正孔輸送層(HIL)/正孔輸送層(HTL)/電子ブロック層(EBL)/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/電子注入層(EIL)および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。OLEDの製造に必要とする材料を表1に示している。
【0211】
すべての材料は、真空室において、熱気相堆積により適用される。この場合、発光層は、常に、少なくとも一種のマトリックス材料(ホスト材料)と、このマトリックス材料に共蒸発により一定の体積割合で添加される発光ドーパント(エミッター)とからなる。ここで、H1:SEB(5%)のような形で与えられている詳細は、材料H1が95体積%の割合で層中に存在し、SEBが5体積%の割合で層中に在在することを意味する。同じように、電子輸送層または正孔注入層もまた、2種の材料の混合物からなることができる。材料の後ろの括弧内の番号は、その材料が存在する特定の層の厚さを示している。
【0212】
OLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、ランベルト放射特性を仮定して、電流-電圧-輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としての、外部量子効率(EQE、パーセントで測定)、ならびに寿命が測定される。パラメータ「10mA/cmにおけるEQE」は、10mA/cmでの電流密度における外部量子効率を示している。「60mA/cmにおけるLD80」は、OLEDが、所与の60mA/cmの定電流の開始輝度で、開始強度の80%に低下する前までの寿命である。
【0213】
【表1-1】
【0214】
【表1-2】
【0215】
例1
本発明の化合物HTM1と比較化合物HTMv1とを、青色スタックで相互に比較する。スタックの構造は、次のようになっている:HIM:F4TCNQ(5%)(20nm)/HIM(175nm)/HTM1(20nm)/H1:SEB(5%)(20nm)/ETM:LiQ(50%)(30nm)/LiQ(1nm)。比較例では、HTM1ではなく、HTMv1が問題の層で蒸発される。実施された実験では、10mA/cmにおける外部量子効率の評価は、次の結果を示す:HTM1は8.1%のEQEを実現し、HTMv1は6.6%に達するのみである。3.86Vにおける本発明の材料を含むOLEDの駆動電圧も、10mA/cmにおける比較材料の場合の、ダイオードを横切る電圧を十分上回る。これは比較例の場合、4.08Vであり、よって、6%高い。
【0216】
例2
さらに本発明の材料HTM2を、捻れたジベンゾフランユニットを有する直接相似のHTMv2と比較する。このOLED素子は次の構造を有する:HIM:F4TCNQ(5%)(20nm)/HIM(175nm)/HTM2(20nm)bzw.HTMv2(20nm)/H1:SEB(5%)(20nm)/ETM:LiQ(50%)(30nm)/LiQ(1nm)。ここでも、本発明の化合物の優位性は明らかである。HTM2を含む試料の場合の外部量子効率は7.5%であり、比較試料は10mA/cmの電流密度で7.2%のみのEQEを実現する。
【0217】
例3
層構造HIM:F4TCNQ(5%)(20nm)/HIM(175nm)/HTM3(20nm)/H1:SEB(5%)(20nm)/ETM:LiQ(50%)(30nm)/LiQ(1nm)を有するさらなる素子を製造する。比較実験では、HTM3をHTMv3で置き代える。EBLに本発明の物質を含む素子は、10mA/cmで7.3%の外部量子効率を実現する。同じ機能層に比較物質を有する素子は、7.0%のみを実現する。
【0218】
例4
最後に、化合物HTM4とHTMv4も、一重項青色スタックで試験した:HIM:F4TCNQ(5%)(20nm)/HIM(175nm)/HTM4(20nm)/H1:SEB(5%)(20nm)/ETM:LiQ(50%)(30nm)/LiQ(1nm)。比較試験では、HTM4ではなく、HTMv4をEBLに導入した。本発明の物質は、10mA/cmで7.5%の外部量子効率を示す。比較化合物は、10mA/cmで7.2%のみのEQEを実現する。