特許第6926103号(P6926103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6926103リングギヤ切断と同期−ロック機構とを有する後輪駆動モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6926103
(24)【登録日】2021年8月6日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】リングギヤ切断と同期−ロック機構とを有する後輪駆動モジュール
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/34 20120101AFI20210812BHJP
   F16D 27/115 20060101ALI20210812BHJP
   B60K 17/344 20060101ALI20210812BHJP
   F16H 48/22 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   F16H48/34
   F16D27/115 Z
   B60K17/344 B
   F16H48/22
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-545103(P2018-545103)
(86)(22)【出願日】2016年11月14日
(65)【公表番号】特表2018-534510(P2018-534510A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】US2016061831
(87)【国際公開番号】WO2017083821
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年11月13日
(31)【優先権主張番号】62/254,279
(32)【優先日】2015年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518167114
【氏名又は名称】リナマー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】エコネン トッド アール
(72)【発明者】
【氏名】クック デニス
(72)【発明者】
【氏名】モンケイバ ゲアリー
(72)【発明者】
【氏名】大野 峻
【審査官】 筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0143878(US,A1)
【文献】 特開昭63−195449(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0054913(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02161155(EP,A2)
【文献】 特公平05−054574(JP,B2)
【文献】 特開昭61−112844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/22,48/34
B60K 17/344
F16D 27/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全輪駆動自動車のための後輪駆動モジュールであって、
外側差動ハウジングと内側差動ハウジングとを有する差動アセンブリであって、前記内側差動ハウジングが前記差動アセンブリの出力シャフトと共に回転するように固定された前記差動アセンブリと、
前記外側差動ハウジングに装着されてそれと共に回転するように固定されたリングギヤを有するリングギヤアセンブリと、
前記内側差動ハウジング及び前記外側差動ハウジングを同期してロックするように作動可能であり、且つ、前記内側差動ハウジング及び前記外側差動ハウジングを切断して前記外側差動ハウジング及び前記リングギヤの回転を防止するように作動可能な切断及び同期−ロック機構と、
を含み、
前記切断及び同期−ロック機構は、同期装置クラッチと、クラッチアクチュエータと、空洞を有する印加プレートと、前記印加プレートの前記空洞内に受け入れられるバネ及びボールと、を含み、
前記同期装置クラッチは、前記外側差動ハウジングと共に回転するように固定されたドラムと、前記ドラムに接続された第1の板セットと、前記内側差動ハウジングに接続された第2の板セットと、を有する多板クラッチを含み、
前記クラッチアクチュエータは、前記同期装置クラッチを起動するために、前記差動アセンブリに向けて第1の方向に軸線方向力を発生させるように作動可能であり、前記クラッチアクチュエータは、ボールランプ機構を含み、
前記ボールランプ機構は、第1の溝を形成する第1のカムプレートと、前記第1の溝に面する第2の溝を形成し、且つ、前記印加プレートの前記空洞内に受け入れられる前記ボールに係合するための1又は2以上の戻り止めを形成する第1の面を有する第2のカムプレートと、前記第1及び第2の溝内で前記第1のカムプレートと前記第2のカムプレートの間に配置された少なくとも1つのアクチュエータボールと、を含み、
前記第1及び第2のカムプレートの相対回転が、隣接する前記印加プレートの軸線方向移動のために前記第2のカムプレートの前記第1の方向における軸線方向平行移動を引き起こして、前記同期装置クラッチを起動する、
ことを特徴とする後輪駆動モジュール。
【請求項2】
前記切断及び同期−ロック機構は、前記第2のカムプレートを前記第1のカムプレートに向けて付勢するように構成されたバネを更に含むことを特徴とする請求項に記載の後輪駆動モジュール。
【請求項3】
前記内側差動ハウジング及び前記外側差動ハウジングを同期してロックするために、前記第1及び第2の溝及び前記少なくとも1つのアクチュエータボールは、まず、前記同期装置クラッチを起動するために前記第2のカムプレートの前記第1の方向における軸線方向移動を引き起こし、そして、前記第2のカムプレート及び前記ドラムを接続するために、前記第2のカムプレートの前記第1の方向と反対の第2の方向における軸線方向移動を可能にするように構成されることを特徴とする請求項に記載の後輪駆動モジュール。
【請求項4】
前記第2のカムプレートの外側部分が、前記内側差動ハウジング及び前記外側差動ハウジングがロックされた時に前記同期装置クラッチの前記ドラムに係合するようにスプライン式接続を用いて構成されることを特徴とする請求項に記載の後輪駆動モジュール。
【請求項5】
前記内側差動ハウジング及び前記外側差動ハウジングを切断するために、前記第1及び第2の溝及び前記少なくとも1つのアクチュエータボールは、前記第1の方向の前記第2のカムプレートの軸線方向移動を引き起こして、前記第2のカムプレート及び前記ドラムを係合解除するように構成されることを特徴とする請求項に記載の後輪駆動モジュール。
【請求項6】
前記クラッチアクチュエータは、正面カム機構を含むことを特徴とする請求項に記載の後輪駆動モジュール。
【請求項7】
前記リングギヤと前記切断及び同期−ロック機構とは、前記差動アセンブリの両側面上に装着されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の後輪駆動モジュール。
【請求項8】
前記リングギヤアセンブリは、片持ち式リングギヤアセンブリを含むことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の後輪駆動モジュール。
【請求項9】
前記クラッチアクチュエータは、電磁的に起動されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の後輪駆動モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、後輪駆動系アセンブリ及び後輪駆動系アセンブリ内でリングギヤを同期させる及び切断するための機構に関する。
【0002】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、2015年11月12日出願の米国仮特許出願第62/254,279号に対する優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
車両は、二輪及び四輪駆動モード間で車両作動の切り換えを可能にする切断可能な動力伝達ユニット(PTU)及び後輪駆動系モジュール(RDM)を含むことができる。二輪駆動モード中に、RDM及びPTUは、エネルギ損失を最小にしてより良い燃費を与えるために切断される場合がある。RDMを再接続する前に駆動系を切断して同期させるためのカプリング機構を後輪駆動系車軸上に設けることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
潤滑流体中に浸漬又は部分浸漬される場合があるハイポイドギヤセットのリングギヤのようなRDM内の構成要素が回転した時に攪拌損失及び寄生損失のようなエネルギ損失が発生する場合がある。ギヤセットは、トルクを後輪のシャフトに伝達する時に連続回転する場合がある。ギヤセットはまた、PTUが切断された時に回転し続ける場合があり、車輪は動いているが、ギヤセットはトルクを伝達していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の一実施形態により、全輪駆動自動車のための後輪駆動モジュールを提供する。後輪駆動モジュールは、外側差動ハウジングと内側差動ハウジングとを有する差動アセンブリであって、内側差動ハウジングが差動アセンブリの出力シャフトと共に回転するように固定された上記差動アセンブリと、外側差動ハウジングに装着されてそれと共に回転するように固定されたリングギヤを有するリングギヤアセンブリと、内側差動ハウジング及び外側差動ハウジングを同期してロックし、かつ内側差動ハウジング及び外側差動ハウジングを切断して外側差動ハウジング及びリングギヤの回転を防止するように作動可能な切断及び同期−ロック機構(disconnect and synch-lock mechanism)とを含む。
【0006】
一部の実施形態では、切断及び同期−ロック機構は、同期装置クラッチ及びクラッチアクチュエータを含む。
【0007】
同期装置クラッチは、外側差動ハウジングと共に回転するように固定されたドラムと、ドラムに接続された第1の組の板と、内側差動ハウジングに接続された第2の組の板とを有する多板クラッチを含むことができる。
【0008】
一部の実施形態では、クラッチアクチュエータは、同期装置クラッチを起動するために差動アセンブリに向う第1の方向に軸線方向力を発生させるように作動可能である。
【0009】
一部の実施形態では、クラッチアクチュエータは、ボールランプ機構(ball ramp mechanism)である。ボールランプ機構は、第1の溝を定める第1のカムプレートと、第1の溝に面する第2の溝を定める第2のカムプレートと、第1及び第2の溝内で第1のカムプレートと第2のカムプレートの間に配置された少なくとも1つのアクチュエータボールとを含むことができる。第1及び第2のカムプレートの相対回転は、隣接する印加プレートの軸線方向移動のための第1の方向の第2のカムプレートの軸線方向平行移動を引き起こして同期装置クラッチを起動することができる。一部の実施形態では、印加プレートは、第2のカムプレートを第1のカムプレートに向けて付勢するように構成されたバネを更に含む。
【0010】
一部の実施形態では、印加プレートは、バネ及びボールを更に含み、第2のカムプレートの第1の面は、印加プレートのボールに係合するための1又は2以上の戻り止め(detent)を定める。
【0011】
後輪駆動モジュールの一部の実施形態では、内側差動ハウジング及び外側差動ハウジングを同期かつロックするために、第1及び第2の溝とボールランプ機構の少なくとも1つのアクチュエータボールとは、最初に第1の方向の第2のカムプレートの軸線方向移動を引き起こして同期装置クラッチを起動し、次に第1の方向と反対の第2の方向の第2のカムプレートの軸線方向移動を可能にして第2のカムプレート及びドラムを接続するように構成される。
【0012】
一部の実施形態では、第2のカムプレートの外側部分は、内側差動ハウジング及び外側差動ハウジングがロックされた時に同期装置クラッチのドラムに係合するようにスプライン式接続(splined connection)を用いて構成される。
【0013】
一部の実施形態では、内側差動ハウジング及び外側差動ハウジングを切断するために、第1及び第2の溝と少なくとも1つのアクチュエータボールとは、第1の方向の第2のカムプレートの軸線方向移動を引き起こして第2のカムプレート及びドラムを係合解除(解放)するように構成される。
【0014】
一部の実施形態では、クラッチアクチュエータは、正面カム機構(face cam mechanism)を含む。内側差動ハウジング及び外側差動ハウジングを同期かつロックするために、正面カム機構は、最初に第1の方向の第2のカムプレートの軸線方向移動を引き起こして同期装置クラッチを起動し、次に第1の方向と反対の第2の方向の第2のカムプレートの軸線方向移動を可能にして第2のカムプレート及びドラムを接続するように構成される。
【0015】
上述の実施形態のいずれにおいても、リングギヤと切断及び同期−ロック機構とは、差動アセンブリの両側面(対向する側面)上に装着することができる。上述の実施形態のいずれにおいても、リングギヤアセンブリは、片持ち式リングギヤアセンブリ(cantilevered ring gear assembly)である。上述の実施形態のいずれにおいても、クラッチアクチュエータは、電磁的に起動される。
【0016】
ここで本出願の例示的実施形態を示す添付図面を一例として以下に参照する。
【0017】
類似の構成要素を示すために類似の参照番号が異なる図に使用されている場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の開示の実施形態による後輪駆動系アセンブリを有する車両駆動系を示す図である。
図2】本発明の開示の実施形態による後輪駆動系アセンブリ及び後輪駆動モジュールを示す図である。
図3】切断及び同期−ロック機構が第1の位置にある図2の後輪駆動モジュールの一部分の拡大部分図である。
図4】切断及び同期−ロック機構が第2の位置にある図2の後輪駆動モジュールの一部分の拡大部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の開示は、後輪駆動系アセンブリに関し、具体的には、差動アセンブリの回転構成要素を有するハイポイドギヤセットのリングギヤを選択的と同期してロックし、かつ切断する機構を有する後輪駆動系モジュールに関する。
【0020】
トルクを車両の車輪の第1の組12及び車輪の第2の組14に伝達する例示的車両駆動系アセンブリ10が図1に示されている。駆動系アセンブリ10は、前輪駆動系16及び後輪駆動系18を含む。前輪駆動系16は、他の構成要素の中でもエンジン20、トランスミッション22、及び動力伝達ユニット24(PTU)を含む。PTU24は、後輪14を駆動するためにプロペラシャフト28を通してトルクを後輪駆動モジュール30(RDM)に伝達する出力26を含む。全輪駆動(AWD)カプリングアセンブリ32が、前輪及び後輪駆動系14、16間のカプリング及びトルク分布を制御するためにRDM30と前輪駆動系16の間に設けられる。AWDカプリングアセンブリ32は、標準的ハング−オンカプリングとすることができる。一実施形態では、AWDカプリングアセンブリ32は、インテリジェントトルク制御カプリング(ITCC)を含む。コントローラ(図示せず)は、前輪駆動系16及び後輪駆動系18内の構成要素と通信し、同じく車両全体を通して位置付けられた1又は2以上のセンサと通信することができる。
【0021】
RDM30及びAWDカプリングアセンブリ32の断面図が図2に示されている。RDM30は、RDM30の様々な構成要素を受け入れかつ閉じ込めて車両へのRDM30の装着を容易にすることができるケース40を含む。RDM30は、右出力シャフト42を通してトルクを車両の右後輪14に、かつ左出力シャフト44を通して車両の左後輪14に伝達する。ピニオンシャフト46は、AWDカプリングアセンブリ32を通して受け入れられ、ピニオンギヤ48で終端する。ピニオンギヤ48は、ピニオンギヤ48と噛み合い係合する片持ち装着式リングギヤ50を含むハイポイドギヤセットの一部である。
【0022】
リングギヤ50は、差動アセンブリ54のハウジング52に装着されてハウジング52と共に回転するように固定される。差動アセンブリ54は、標準的なアセンブリとすることができ、かつ様々なギヤ配置を含むことができる。差動アセンブリ54は、図2に示されており、第1及び第2のピニオンギヤ56、58は、差動ピン60と共に回転するように固定される。右及び左サイドギヤ62、64は、第1及び第2のピニオンギヤ56、58と噛み合い係合している。右及び左サイドギヤ62、64は、トルクを左右の後輪14に伝達するためにそれぞれの右及び左出力シャフト42、44と共に回転するように固定される。差動アセンブリ54のハウジング52は、複数の軸受66上のRDM30内に支持される。
【0023】
図3及び図4の拡大図にも見ることができる一実施形態では、ハウジング52は、外側差動ハウジング70及び内側差動ハウジング72を含む。リングギヤ50は、外側差動ハウジング70に装着され、かつそれと共に回転するように固定される。差動ピン60が、内側差動ハウジング72に装着される。内側差動ハウジング72は、右出力シャフト42と共に回転するように固定される。外側差動ハウジング70と内側差動ハウジング72の間にニードル軸受74のような1又は2以上の軸受を位置決めすることができる。切断及び同期−ロック機構76は、外側及び内側差動ハウジング70、72を選択的に切断し、かつ同期かつロックするように起動される。切断及び同期−ロック機構76は、リングギヤ50の装着と横方向に反対の側面上に差動アセンブリ54の出力シャフトと同心に装着される。
【0024】
外側及び内側差動ハウジング70、72が互いに同期してロックされた時に、ピニオンシャフト46、ピニオンギヤ48、及びリングギヤ50を通して受け入れられたトルクは、差動アセンブリ54及び右及び左出力シャフト42、44を通して後輪14に伝達される。後輪14を駆動するためのトルクが前輪駆動系16から供給されていない時のような外側及び内側差動ハウジング70、72が切断された時に、これは、外側差動ハウジング70及びリングギヤ50の回転、及びそれに関連付けられた攪拌及び寄生軸受損失を防止する。
【0025】
一実施形態では、切断及び同期−ロック機構76は、外側及び内側差動ハウジング70、72を同期かつロックするか又は切断するように作動可能である同期クラッチ又はsynchクラッチ80を含む。クラッチアクチュエータ82は、同期クラッチ80を起動するために軸線方向力を差動アセンブリ54に向けて内向きに印加するように作動可能である。同期クラッチ80は、多板湿式クラッチとすることができ、RDM30の同期クラッチ80及び他の構成要素に潤滑化するのに同じ流体を使用することができる。これに代えて、同期クラッチ80は、密封されて個別の潤滑油が供給される場合がある。
【0026】
一実施形態では、クラッチアクチュエータ82は、図2図3、及び図4に示すように電磁起動式パイロットクラッチ84及びボールランプ機構86を含む。ボールランプ機構86は、以下に説明するように、内側差動ハウジング72と共に回転するように固定される。パイロットクラッチ84は、パイロットクラッチ板90に隣接するコイルアセンブリ88及び電機子92から構成される。パイロットクラッチ板90は、スプライン及び接地式接続を通じてなどでRDM30のケース40に接続される。パイロットクラッチ84の内側部材(図示せず)は、ボールランプ機構86の第1のカムプレート96に接続される。
【0027】
第2のカムプレート98は、第1のカムプレート96から離間してそれに面している。1又は2以上の溝が、第1及び第2のカムプレート96、98の各々の内面に定められる。対応する溝の各対によって定められた空洞内にアクチュエータボール100が位置決めされる。溝の第1の対及びアクチュエータボール100は、一実施形態では、図3及び図4に示すように、右出力シャフト42の上方で第1及び第2のカムプレート96、98に位置決めされる。溝の第2の対及びアクチュエータボール100は、右出力シャフト42の下で第1及び第2のカムプレート96、98に位置決めされる。溝の各々は、ボールランプ機構86及びクラッチアクチュエータ82の作動を構成するように周方向に傾斜を付ける、先細にする、又は成形することができる。クラッチアクチュエータ82は、他の実施形態では、電磁起動式パイロットクラッチ84及び正面カム機構(図示せず)を含む。正面カム機構は、第1及び第2のカムプレートを含み、傾斜した又は成形された面は、同期クラッチ80に向けた第2のカムプレートの軸線方向移動を制御するように構成される。
【0028】
第1及び第2のカムプレート96、98の相対回転又は移動は、同期クラッチ80に向けて右出力シャフトの長手軸の方向に沿った第2のカムプレート98の軸線方向移動を引き起こす。具体的には、以下で更に説明するように、第2のカムプレート98の軸線方向移動は、同期クラッチ80を起動するために印加プレート102に軸線方向力を印加する。同期クラッチ80は、外側差動ハウジング70と共に回転するように固定されたドラム110を含む。第1の組の板112が、ドラム110に接続され、第2の組の板114が、内側差動ハウジング72に接続される。端板116が、内側差動ハウジング72に接続される。端板116は、印加プレート102に隣接している。
【0029】
印加プレート102は、内側差動ハウジング72に接続されてそれと共に回転するように固定される。印加プレート102は、バネ120及びボール122を受け入れるための空洞を定める。空洞は、右出力シャフト42の長手軸に対して横断方向に外向きに面している。第2のカムプレート98の第1の部分124も、一実施形態では、右出力シャフト42の長手軸に対して横断方向に外向きに延びる。第2のカムプレート98の第2の部分126は、第2のカムプレート98の第2の部分126が印加プレート102に向けてかつそれにわたって延びてボール122に係合するように、第1の部分124から角度を成して延びている。具体的には、カムプレート98の第2の部分126の底面又は内面は、ボール122に係合し、かつボール122を受け入れるための少なくとも1つの戻り止め130を定めている。
【0030】
図3は、ボールランプ機構86が閉鎖されて同期かつロックされた状態にある切断及び同期−ロック機構76と外側及び内側差動ハウジング70、72とを示している。バネ132は、ボールランプ機構86を閉鎖位置に付勢するために印加プレート102と第2のカムプレート98の間で内側差動ハウジング72の外端に配置される。図4は、ボールランプ機構86が開いた切断状態にある切断及び同期−ロック機構76と外側及び内側差動ハウジング70、72とを示している。
【0031】
作動中に、外側及び内側差動ハウジング70、72は、ドラム110と第2のカムプレート98の第2の部分126との間のスプライン式接続を通じて1つの状態で互いに接続される。第2のカムプレート98も、外側及び内側差動ハウジング70、72が一緒に回転するようにロックかつ同期されるような内側差動ハウジング72とのスプライン式接続を有する。外側及び内側差動ハウジング70、72を切断するために、コイルアセンブリ88が活性化され、これは、電機子92をパイロットクラッチ84に引き入れ、第1のカムプレート96の回転を第2のカムプレート98の回転に対して僅かに減速させる。その結果、アクチュエータボール100は、第1及び第2のカムプレート96、98に構成された溝の第1の部分内で移動し、差動アセンブリ54に向けた第2のカムプレート98の軸線方向移動をもたらす。第2のカムプレート98が移動すると、第2の部分126は、ボール122がカムプレート98の第2の部分96内で第1の戻り止め130aと位置合わせされるまでボール122及びバネ120に対して押圧する。図4に示すように、この位置では、同期クラッチ80と、カムプレート98の第2の部分126とドラム110間のスプラインとは係合解除され、この状態は、コイルアセンブリ88が不活性化された状態で留まる。外側及び内側差動ハウジング70、72は、車輪14の移動と右出力シャフト42の回転とに関連付けられた内側差動ハウジング72の回転が外側差動ハウジング70及びリングギヤ50に変換されないように切断される。
【0032】
コイルアセンブリ88は、外側及び内側差動ハウジング70、72を同期かつロックするために再び活性化され、第1のカムプレート96の回転を第2のカムプレート98の回転に対して僅かに減速させる。その結果、アクチュエータボール100は、第1及び第2のカムプレート96、98に構成された溝の第2の部分内で移動する。第1及び第2のカムプレート96、98内の溝は、第1のアクチュエータボール100の位置が差動アセンブリ54に向けた第2のカムプレート98の僅かな軸線方向移動を最初に引き起こすように構成される。同期クラッチ80を起動するために、小さい力が第2のカムプレート98によってボール122及びバネ120を通じて印加プレート102上に印加される。同期クラッチ80が噛み合って内側及び外側差動ハウジング72、70の回転の差がゼロに近づくと、アクチュエータボール100は、第1及び第2のカムプレート96、98に構成された溝の第3の部分内で更に遠くに移動する。この第3の部分は、鋭い移行部を用いて構成され、これは、バネ132が、差動アセンブリ54から離れて第1のカムプレート96に向う第2のカムプレート98の軸線方向移動を強制するので、第1及び第2のカムプレート96、98間の空間を急速に減少させる。この位置では、外側及び内側差動ハウジング70、72は、図3に示すようにドラム110と第2のカムプレート98の第2の部分126との間のスプライン式接続を通じて再び互いに接続される。この移行中に説明される第2のカムプレート98の軸線方向移動はまた、第2のカムプレート98の第2の部分126とボール122及びバネ120との間の位置の変化を引き起こす。ボール122は、第2の部分126に定められた第2の戻り止め130b内で静止する。これらの位置は、コイルアセンブリ88が不活性化された状態で維持される。
【0033】
切断及び同期−ロック機構76を外側及び内側差動ハウジング70、72間に追加することにより、リングギヤ50の回転は、車両の望ましい作動モードで停止させることができる。これは、標準AWDカプリングアセンブリ32を用いてかつRDM30のケース40の右側及び差動アセンブリ54の内部構成要素の一部に対する変更のみによって達成することができる。
【0034】
コイルアセンブリ88を通した電磁起動によって切断及び同期−ロック機構76及びクラッチアクチュエータ82を上述した。コイルアセンブリ88は、車両内の1又は2以上のセンサ140から受信したデータに応答して車両のコントローラによって起動することができる。この実施形態では、高電力モータ又は高電力コントローラは不要であり、従って、切断及び同期−ロック機構76を作動させるのに要求される電力を低減し、かつ外側及び内側差動ハウジング70、72の同期のためのより良い応答を与える。
【0035】
他の実施形態では、同期クラッチ80に力を印加する他の機構を使用することができることは認められるであろう。そのような他の機構は、以下に限定されるものではないが、電気機械式起動機構又は油圧ピストンのような電気油圧式起動機構を含むことができる。
【0036】
同期クラッチ80の異なる構成(図示せず)を有する他の実施形態では、印加プレート102はまた、外側又は内側差動ハウジング70、72のいずれかの末端部分に係合する噛み合いクラッチを含むことができる。
【0037】
説明した実施形態のある一定の適応化及び修正を行うことができる。従って、上記で議論した実施形態は、例示的であり、制限ではないと見なされる。本明細書に説明した駆動系構成要素の他の組合せ及び構成は、RDM30及び切断及び同期−ロック機構76を本発明の開示の範囲内に含むことができる。
【符号の説明】
【0038】
30 後輪駆動系モジュール(RDM)
32 全輪駆動(AWD)カプリングアセンブリ
42 右出力シャフト
40 ケース
46 ピニオンシャフト
図1
図2
図3
図4