(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エアコンのコンプレッサと、駆動力を前記コンプレッサに伝達可能な内燃機関、及び、駆動力を前記コンプレッサに伝達可能な電動機を有し前記内燃機関及び前記電動機の少なくともいずれかを走行の動力源とする動力部と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記ハイブリッド車両がコースト走行中であり、かつ、前記コンプレッサを駆動するとき、前記コンプレッサの駆動に必要となる駆動力を燃料カット中の惰性回転をしている前記内燃機関及び前記電動機が前記コンプレッサに供給するように制御を行う制御手段を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
前記制御手段は、前記ハイブリッド車両がコースト走行中であり、かつ、前記コンプレッサを駆動するとき、前記コンプレッサの駆動の開始時から所定時間、前記コンプレッサの駆動に必要となる駆動力を前記電動機が前記コンプレッサに供給するように制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
前記内燃機関の回転数に基づいて、前記電動機が供給する駆動力の大きさであるアシスト量を決定するアシスト量決定手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
前記ハイブリッド車両の車速、及び、前記エアコンで使われる冷媒の冷媒圧の少なくともいずれかに基づいて、前記所定時間を決定する時間決定手段をさらに備えることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
前記時間決定手段は、少なくとも前記ハイブリッド車両の車速に基づいて前記所定時間を決定し、前記ハイブリッド車両の車速が大きい程、前記所定時間を短くすることを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置。
前記時間決定手段は、少なくとも前記冷媒圧に基づいて前記所定時間を決定し、前記冷媒圧が高い程、前記所定時間を長くすることを特徴とする請求項5又は6に記載のハイブリッド車両の制御装置。
前記制御手段は、前記所定時間の経過後、前記電動機が供給する駆動力を所定の減少率で減少させる制御を行うことを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
前記ハイブリッド車両の減速度に基づいて前記減少率を決定する減少率決定手段をさらに備え、前記減少率決定手段は、前記減速度が大きい程、前記減少率を大きくすることを特徴とする請求項8に記載のハイブリッド車両の制御装置。
エアコンのコンプレッサと、駆動力を前記コンプレッサに伝達可能な内燃機関、及び、駆動力を前記コンプレッサに伝達可能な電動機を有し前記内燃機関及び前記電動機の少なくともいずれかを走行の動力源とする動力部と、を備えるハイブリッド車両の制御装置を制御するためのプログラムであって、
前記ハイブリッド車両がコースト走行中であり、かつ、前記コンプレッサを駆動するとき、前記コンプレッサの駆動に必要となる駆動力を燃料カット中の惰性回転をしている前記内燃機関及び前記電動機が前記コンプレッサに供給するように制御を行うステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ハイブリッド車両の構成]
はじめに、
図1Aを参照して、ハイブリッド車両1の構成について説明する。
図1Aは、ハイブリッド車両1の構成図である。
ハイブリッド車両1は、動力部100、主伝達部110、エアコン120、ECU130、車速検知部140、回転数検知部150、バッテリ160、及び、車室内温度検知部170を備える。
動力部100は、ハイブリッド車両1の走行の動力源となるものであり、内燃機関101、及び、電動機103を備える。内燃機関101及び電動機103の少なくともいずれかが走行の動力源となる。
【0010】
内燃機関101は、内燃機関101が備えるシリンダに燃料を供給し、燃料を燃焼させて駆動力を得て内燃機関101が備えるクランクシャフトを回転させる装置である。内燃機関101は、クランクシャフトの回転がハイブリッド車両1の走行やコンプレッサ121の駆動のためにドライブシャフトやコンプレッサ121に伝達可能なようなように配置される。内燃機関101は第1伝達部102を備える。第1伝達部102は、内燃機関101の回転を外部に伝達する部材であり、例えば、内燃機関101の回転軸であるクランクシャフトに取り付けられたプーリーである。
電動機103は、バッテリ160から供給される電気エネルギから駆動力を得て電動機103が備える回転軸を回転させる装置である。電動機103は、回転軸の回転がハイブリッド車両1の走行やコンプレッサ121の駆動のためにドライブシャフトやコンプレッサ121に伝達可能なように配置される。電動機103は第2伝達部104を備える。第2伝達部104は、電動機103の回転を外部に伝達する部材であり、例えば、電動機103の回転軸に取り付けられたプーリーである。電動機103は、内燃機関101により駆動されて発電する発電機としても機能する。電動機103の発電により、電動機103に接続されたバッテリ160が充電される。
【0011】
エアコン120は、ハイブリッド車両1の車室内を冷暖房する装置であり、冷房を行うためにコンプレッサ121、コンデンサ123、エバポレータ124、通路125、及び、冷媒圧検知部126を備える。
コンプレッサ121は、ガスになった冷媒を吸入及び圧縮して、コンデンサ123に送る。コンプレッサ121は、第3伝達部122を備え、第3伝達部122から伝達される駆動力によって駆動する。
コンデンサ123は、冷媒を冷却して液化する。コンデンサ123は、冷媒を通す通路、放熱用のフィン等を備える。冷媒は、コンデンサ123内の通路を通りながら、不図示の放熱用のフィンや内燃機関101のクーリングファン等で冷却されて液化し、エバポレータ124に送られる。
【0012】
エバポレータ124は、減圧により液化した冷媒を蒸発させる。この蒸発による気化熱で、ハイブリッド車両1の車室内を冷却できる。蒸発してガスになった冷媒はコンプレッサ121に送られる。
通路125は、内部に冷媒を通して、エアコン120内で冷媒を循環させる。通路125Aは冷媒をコンプレッサ121からコンデンサ123に運ぶ。通路125Bは冷媒をコンデンサ123からエバポレータ124に運ぶ。通路125Cは冷媒をエバポレータ124からコンプレッサ121に運ぶ。
冷媒圧検知部126は、エアコン120内の冷媒の圧力(冷媒圧)を検知する。本実施形態では、冷媒圧検知部126は通路125Bに取り付けられ、通路125B内の冷媒圧を検知する。ただし、冷媒圧検知部126は、エアコン120の他の部分の冷媒圧を検知するようにしてもよい。
【0013】
主伝達部110は、内燃機関101及び電動機103の回転をコンプレッサ121に伝達する。主伝達部110にはベルトが使われるが他の部材を用いてもよい。内燃機関101に駆動力が生じると、主伝達部110は内燃機関101の回転をコンプレッサ121に伝達する。なお、内燃機関101が惰性回転しているときでも、主伝達部110は内燃機関101の回転をコンプレッサ121に伝達できる。また、電動機103に駆動力が生じると、主伝達部110は電動機103の回転を内燃機関101に伝達する。したがって、電動機103の駆動力は、内燃機関101に伝達されて、内燃機関101からコンプレッサ121に伝達されるといえる。
【0014】
ECU(エレクトロニックコントロールユニット)130は、ハイブリッド車両1の各種の制御や処理を行うコンピュータである。ECU130は、例えば、CPU、ROM、RAM等を備える。ROMは、各種の制御や処理を実現するプログラムを格納する。このプログラムには、後述のECUが備える各機能を実現するプログラムが含まれる。CPUは、ROMが格納するプログラムに従って各種の制御や処理を実行する。ECU130は、例えば、内燃機関101への燃料の供給の制御や、コンプレッサ121の駆動の制御等を行う。なお、CPUが実行するプログラムは、ROM以外の記憶手段に格納するようにしてもよい。
車速検知部140は、ハイブリッド車両1の車速を検知する。
回転数検知部150は、内燃機関101の回転数を検知する。
バッテリ160は、電動機103に電気エネルギを供給して電動機103を駆動したり、電動機103の発電により充電されたりする。バッテリ160は、ハイブリッド車両1が備える電動機103以外の機器等に電気エネルギを供給するようにしてもよい。
車室内温度検知部170は、ハイブリッド車両1の車室内の温度を検知する。
【0015】
ハイブリッド車両1の動力部100は、
図1Aを参照して説明した構成以外の構成であってもよい。一例として、
図1Bを参照して、
図1Aの動力部100とは異なる動力部200を備えるハイブリッド車両2について説明する。
図1Bは、ハイブリッド車両2の構成図である。なお、上記のハイブリッド車両1と同様の点に付いては同じ符号を付して説明を省略する。
ハイブリッド車両2は、動力部200、主伝達部210、エアコン120、ECU130、車速検知部140、回転数検知部150、バッテリ160、及び、車室内温度検知部170を備える。
動力部200は、ハイブリッド車両2の走行の動力源となるものであり、内燃機関201、電動機203、及び、変速機204を備える。内燃機関201及び電動機203の少なくともいずれかが走行の動力源となる。
【0016】
内燃機関201、及び、電動機203は、それぞれ、ハイブリッド車両1の内燃機関101、及び、電動機103と同様に、燃料、及び、電気エネルギから駆動力を得る装置である。内燃機関201、及び、電動機203は、同軸に配置され、同じ回転軸205を共有する。そして、内燃機関201、及び、電動機203は、それぞれの駆動力で生じる回転がハイブリッド車両1の走行やコンプレッサ121の駆動のためにドライブシャフトやコンプレッサ121に伝達可能なようなように配置される。
回転軸205には、第1伝達部202が取り付けられている。第1伝達部202は、内燃機関101や電動機203の駆動力で生じた回転を外部に伝達する部材であり、第1伝達部202には、例えば、プーリーが使われる。
変速機204は、回転軸205に接続し、内燃機関201、及び、電動機203のトルク、回転数、及び、回転方向等を変えて、ドライブシャフト等に伝達する。
【0017】
主伝達部210は、内燃機関201、及び、電動機203の回転をコンプレッサ121に伝達する。主伝達部210にはベルトが使われるが他の部材を用いてもよい。内燃機関201に駆動力が生じると、主伝達部210は内燃機関201の回転をコンプレッサ121に伝達する。なお、内燃機関201が惰性回転しているときでも、主伝達部210は内燃機関201の回転をコンプレッサ121に伝達できる。また、電動機203に駆動力が生じると、回転軸205は電動機203の回転を内燃機関201に伝達する。したがって、電動機203の駆動力は、内燃機関201に伝達されて、内燃機関201からコンプレッサ121に伝達されるといえる。
【0018】
なお、ハイブリッド車両2では、内燃機関201及び電動機203は同軸に配置されるが、内燃機関201及び電動機203は同軸に配置されていなくてもよい。この場合、内燃機関201の回転軸と電動機203の回転軸とは分配機構に接続する。分配機構は、内燃機関201及び電動機203の駆動力をコンプレッサ121等に伝達する。
以降では
図1Aのハイブリッド車両1を前提にして説明するが、
図1Bのハイブリッド車両2についても同様である。
【0019】
[コンプレッサ駆動時のハイブリッド車両の状態]
次に、
図2、
図3を参照して、ハイブリッド車両1がコースト走行しているときにコンプレッサ121を駆動した場合のハイブリッド車両1の状態について、比較例となるハイブリッド車両と比較して説明する。比較例となるハイブリッド車両の構成は、
図1Aを参照して説明したハイブリッド車両1と同様であるものとする。コースト走行は、ハイブリッド車両1のアクセルがオフであり、かつ、内燃機関101が燃料カット中であり、かつ、内燃機関101の回転数が所定の復帰回転数以上であるときの走行のことである。内燃機関101が燃料カット中とは、内燃機関101のシリンダへの燃料の供給量が、通常の走行時の供給量より少ない状態のことである。本実施形態において、内燃機関101が燃料カット中のときは、内燃機関101のシリンダに燃料が供給されていないものとする。ただし、内燃機関101が燃料カット中のとき、内燃機関101のシリンダに所定量の燃料が供給されるようにしてもよい。なお、
図2、
図3では、ハイブリッド車両1、及び、比較例となるハイブリッド車両は共にコースト走行中であること前提とする。
【0020】
まず、
図2を参照して、コースト走行中にコンプレッサ121を駆動した場合の、比較例となるハイブリッド車両の状態について説明する。
図2は、比較例となるハイブリッド車両の状態を表す図である。
図2の上段は、コンプレッサ121の駆動状態の時間変化を示すコンプレッサ駆動状態グラフである。
図2の中段は、電動機103のトルクの時間変化を示す電動機トルクグラフの図である。
図2の下段は、内燃機関101の回転数の時間変化を示す内燃機関回転数グラフの図である。
【0021】
コンプレッサ駆動状態グラフ(
図2の上段)に示すように、比較例となるハイブリッド車両において、ECU130は、時間T1で、コンプレッサ121をオフからオンにし、コンプレッサ121の駆動を開始したものとする。
比較例となるハイブリッド車両は、コースト走行中のときに、コンプレッサ121の駆動を開始しても、電動機103のトルクを上げる制御は行われない。このため、電動機トルクグラフ(
図2の中段)に示すように、電動機103のトルクは、時間T1を経過しても0のままである。
【0022】
このような比較例における内燃機関101の回転数は、内燃機関回転数グラフ(
図2の下段)に示すようになる。すなわち、時間T1以前では、アクセルがオフであり、内燃機関101が燃料カット中のため、内燃機関101の回転数が漸減する。このときの回転数の減少率は、ほぼ一定である。なお、回転数の減少率は、単位時間あたりの回転数の減少量を表す。
時間T1になると、内燃機関101の回転数に脈動が発生する。内燃機関101の回転数の脈動は、時間の経過とともに収まっていき、内燃機関101の回転数は最終的にほぼ一定の減少率で漸減するようになる。
【0023】
このような脈動は、次のように生じると考えられる。すなわち、
図2に示す状態では、内燃機関101は燃料カット中であるため、コンプレッサ121の駆動は内燃機関101の惰性回転によって開始する。すると、内燃機関101のピストンの上下運動により発生する慣性力を原因とするトルク変動に対し、コンプレッサ121の負荷がかかることで、内燃機関101の回転数に脈動が生じると考えられる。内燃機関101の回転数に脈動が生じると、ハイブリッド車両に振動が生じて、車両の搭乗者に不快感を与えることがある。
そして、時間の経過とともにコンプレッサ121の駆動がスムーズになっていき、内燃機関101に対する負荷が減少していく。このため、内燃機関101の回転数の脈動は、時間の経過とともに収まっていくと考えられる。
【0024】
次に、
図3を参照して、コースト走行中にコンプレッサ121を駆動した場合の、本実施形態に係るハイブリッド車両1の状態について説明する。
図3は、本実施形態に係るハイブリッド車両1の状態を表す図である。
図3の上段は、コンプレッサ121の駆動状態の時間変化を示すコンプレッサ駆動状態グラフの図である。
図3の中段は、電動機103のトルクの時間変化を示す電動機トルクグラフの図である。
図3の下段は、内燃機関101の回転数の時間変化を示す内燃機関回転数グラフの図である。
【0025】
コンプレッサ駆動状態グラフ(
図3の上段)に示すように、ハイブリッド車両1において、ECU130は、時間T1で、コンプレッサ121をオフからオンにし、コンプレッサ121の駆動を開始したものとする。
ハイブリッド車両1では、コースト走行中にコンプレッサ121の駆動を開始すると、電動機103の駆動力について次のような制御が行われる。
まず、コンプレッサ121の駆動の開始時から所定時間、コンプレッサ121の駆動に必要となる所定量の駆動力を電動機103がコンプレッサ121に供給するように制御が行われる。この所定時間をアシスト時間C(s)と呼び、所定量をアシスト量B(Nm)と呼ぶ。なお、本実施形態ではアシスト量Bをトルクで表す。
次に、アシスト時間Cの経過後、電動機103が供給する駆動力を所定の減少率D(Nm/s)で漸減させる制御が行われる。なお、駆動力の減少率は、単位時間あたりの駆動力の減少量を表す。
ここで説明した電動機103の駆動力の制御を図示したものが電動機トルクグラフ(
図3の中段)である。
【0026】
このように電動機103が制御された結果、本実施形態における内燃機関101の回転数は、内燃機関回転数グラフ(
図3の下段)に示すようになる。すなわち、時間T1以前では、比較例の内燃機関回転数グラフ(
図2の下段)と同様に、アクセルがオフであり、内燃機関101が燃料カット中のため、内燃機関101の回転数が漸減する。
しかし、時間T1になっても、比較例の内燃機関回転数グラフとは異なり、内燃機関101の回転数に脈動は生じない。時間T1から時間(T1+C)までの内燃機関101の回転数は、時間T1以前の回転数の減少率と同等以下の減少率で漸減する。時間(T1+C)以降の内燃機関101の回転数は、時間T1以前の減少率に近づきながら漸減していく。
【0027】
本実施形態における内燃機関101の回転数には脈動が生じず、内燃機関回転数グラフ(
図3の下段)に示すようになるのは、次の理由によるものと考えられる。すなわち、内燃機関101は燃料カット中であるが、コンプレッサ121の駆動と同時に、電動機103のアシスト量Bの駆動力が、アシスト時間Cの間、コンプレッサ121に供給される。したがって、コンプレッサ121の駆動開始後のコンプレッサ121の駆動による内燃機関101への負荷は、アシスト量Bの駆動力で軽減される。したがって、内燃機関101に対する負荷が低減して、内燃機関101の回転数の脈動が抑制される。
【0028】
また、電動機103のアシスト量Bの駆動力がアシスト時間Cの間コンプレッサ121に供給される。したがって、時間T1から時間(T1+C)までの内燃機関101の回転数は、時間T1以前の回転数の減少率と同等以下の減少率で漸減する。
また、アシスト時間Cの経過後、電動機103が供給する駆動力を所定の減少率D(Nm/s)で漸減させる制御が行われる。したがって、時間(T1+C)以降では、内燃機関101の回転数は、時間T1以前の減少率に近づきながら漸減していく。
このように、内燃機関101の回転数の脈動を抑制できるため、ハイブリッド車両1の振動を防止でき、車両の搭乗者に不快感を与えるおそれを低減できる。
【0029】
[ECUの構成]
次に、
図4を参照してハイブリッド車両1のECU130の機能構成について説明する。
図4は、ECU130の構成図である。
ECU130は、アシスト制御部131、アシスト量決定部132、アシスト時間決定部133、減少率決定部134、及び、コンプレッサ制御部135を備える。なお、ECU130は、内燃機関101を制御する機能等、
図4に示す機能以外の機能を備えていてもよい。
【0030】
アシスト制御部131は、アシスト処理の制御を行う。アシスト処理は、ハイブリッド車両1がコースト走行中であり、コンプレッサ121を駆動するときに、電動機103を制御して、電動機103からコンプレッサ121に駆動力を供給し、内燃機関101をアシストする処理である。アシスト処理により、
図3を参照して説明したハイブリッド車両1の状態が実現される。アシスト処理の詳細は後述する。アシスト制御部131は、本発明の制御手段の一例である。
アシスト量決定部132は、
図3を参照して説明したアシスト量Bを、回転数検知部150から取得した内燃機関101の回転数に基づいて決定する。上記の通り、本実施形態ではアシスト量Bをトルクで表す。アシスト量決定部132は、内燃機関101の回転数が低い程、アシスト量Bが大きくする。アシスト量決定部132は、本発明のアシスト量決定手段の一例である。
【0031】
アシスト時間決定部133は、
図3を参照して説明したアシスト時間Cを、車速検知部140から取得したハイブリッド車両1の車速、及び、冷媒圧検知部126から取得したエアコン120の冷媒圧に基づいて決定する。アシスト時間決定部133は、ハイブリッド車両1の車速が大きい程、アシスト時間Cが短くなるように決定し、エアコン120の冷媒圧が高い程、アシスト時間Cが長くなるように決定する。アシスト時間決定部133は、本発明の時間決定手段の一例である。
【0032】
減少率決定部134は、
図3を参照して説明した減少率Dを、ハイブリッド車両1の減速度に基づいて決定する。減少率決定部134は、ハイブリッド車両1の減速度が大きい程、減少率Dが大きくなるように決定する。ハイブリッド車両1の減速度は、車速検知部140から取得したハイブリッド車両1の車速に基づいて減少率決定部134が算出する。ハイブリッド車両1が別途ハイブリッド車両1の減速度を検知する減速度検知部を備えるとき、減少率決定部134は減速度検知部からハイブリッド車両1の減速度を取得してもよい。減少率決定部134は、本発明の減少率決定手段の一例である。
【0033】
上記の各決定部(アシスト量決定部132、アシスト時間決定部133、減少率決定部134)は、決定関数を用いて値を算出してもよく、決定テーブルを用いて値を決定してもよい。
決定関数は、決定する値の元になる値を引数とし、決定する値の元になる値と決定する値とを対応付ける関数である。例えば、アシスト量決定部132が使う決定関数は、アシスト量Bの決定の元になる内燃機関101の回転数を引数とする。
決定テーブルは、決定する値の元になる値の範囲を示す情報と、決定する値との組み合わせからなるデータを複数備えるテーブルである。例えば、アシスト量決定部132が使う決定テーブルは、アシスト量Bの決定の元になる内燃機関101の回転数の範囲を示す情報と、アシスト量Bとの組み合わせからなるデータを複数備えるテーブルである。また、アシスト時間決定部133が使う決定テーブルは、ハイブリッド車両1の車速の範囲と、エアコン120の冷媒圧の範囲と、アシスト時間Cとの組み合わせからなるデータを複数備えるテーブルである。
決定関数や決定テーブルは、例えば、ECU130が備えるROMに格納される。
【0034】
コンプレッサ制御部135は、車室内温度検知部170から取得したハイブリッド車両1の車室内温度、及び、ハイブリッド車両1の車室に備えられたエアコン120の操作機器に基づいて、コンプレッサ121の駆動を制御する。コンプレッサ制御部135は、例えば、エアコン120の操作機器でエアコン120がオンに指定され、この操作機器で指定された車室内温度がハイブリッド車両1の車室内温度より低いとき、コンプレッサ121を駆動するように制御する。
【0035】
[アシスト処理]
次に、
図5を参照してハイブリッド車両1のECU130の制御で実現されるアシスト処理について説明する。
図5は、アシスト処理のフローチャートである。
ステップS100において、アシスト制御部131は、ハイブリッド車両1がコースト走行中か否かを判断する。アシスト制御部131は、ハイブリッド車両1のアクセルがオフであり、かつ、ハイブリッド車両1の車速が所定の速度以上であり、かつ、内燃機関101が燃料カット中のとき、ハイブリッド車両1がコースト走行中であると判断する。アシスト制御部131は、ハイブリッド車両1がコースト走行中のとき処理をステップS101に進め、コースト走行中ではないとき再度ステップS100を実行する。
【0036】
ステップS101において、アシスト制御部131は、コンプレッサ制御部135に問い合わせて、コンプレッサ121がオフからオンになりコンプレッサ121の駆動を開始することになったか否かを判断する。アシスト制御部131は、コンプレッサ121がオフからオンになったとき処理をステップS102に進め、コンプレッサ121がオフからオンになっていないとき処理をステップS100に戻す。
ステップS102において、アシスト量決定部132は、アシスト量Bを決定する。上記の通り、アシスト量Bは、回転数検知部150から取得した内燃機関101の回転数に基づいて決定される。
ステップS103において、アシスト制御部131は、アシスト量決定部132が算出したアシスト量Bを電動機103に設定する。これにより、アシスト量Bの駆動力が電動機103からコンプレッサ121に供給される。
【0037】
ステップS104において、アシスト時間決定部133は、アシスト時間Cを決定する。上記の通り、アシスト時間Cは、車速検知部140から取得したハイブリッド車両1の車速、及び、冷媒圧検知部126から取得したエアコン120の冷媒圧に基づいて決定される。
ステップS105において、アシスト制御部131は、ハイブリッド車両1のアクセルがオンになったか否かを判断する。アシスト制御部131は、ハイブリッド車両1のアクセルがオンのとき
図5に示すアシスト処理を終了し、アクセルがオフのとき処理をステップS106に進める。
なお、ステップS105において、アシスト制御部131は、ハイブリッド車両1のアクセルがオンになったか否かを判断する代わりに、ハイブリッド車両1がコースト走行中か否かを判断してもよい。この場合、アシスト制御部131は、ハイブリッド車両1がコースト走行中のとき処理をステップS106に進め、コースト走行中ではないとき
図5に示すアシスト処理を終了する。
【0038】
ステップS106において、アシスト制御部131は、電動機103によるアシスト量Bの駆動力がコンプレッサ121に供給され始めてから、アシスト時間決定部133が決定したアシスト時間Cが経過したか否かを判断する。アシスト制御部131は、アシスト時間Cが経過したとき処理をステップS107に進め、経過していないとき処理をステップS105に戻す。
ステップS107において、アシスト制御部131は、ハイブリッド車両1がコースト走行中であり、かつ、コンプレッサ121が駆動中であるか否かを判断する。アシスト制御部131は、ハイブリッド車両1がコースト走行中であり、かつ、コンプレッサ121が駆動中のとき、処理をステップS108に進め、それ以外のとき
図5に示すアシスト処理を終了する。
【0039】
ステップS108において、減少率決定部134は、
図3を参照して説明した減少率Dを決定する。減少率Dは、減少率決定部134が算出等して得られたハイブリッド車両1の減速度に基づいて決定される。
ステップS109において、アシスト制御部131は、減少率決定部134が決定した減少率Dで電動機103の駆動力を減量する。
ステップS110において、アシスト制御部131は、電動機103の駆動力が0以下になったか否かを判断する。本実施形態では、駆動力をトルクで表すため、アシスト制御部131は、電動機103のトルクが0(Nm)以下になったか否かを判断する。アシスト制御部131は、電動機103の駆動力が0以下になったとき
図5に示すアシスト処理を終了し、電動機103の駆動力が0より大きいとき処理をステップS107に戻す。
ここで説明したアシスト処理により、
図3を参照して説明したハイブリッド車両1の状態が実現される。
【0040】
[効果]
以上説明したように、アシスト制御部131は、ハイブリッド車両1がコースト走行中であり、かつ、コンプレッサ121を駆動するとき、コンプレッサ121の駆動に必要となる駆動力を電動機103がコンプレッサ121に供給するように制御を行う。したがって、ハイブリッド車両1がコースト走行中でも電動機103によってコンプレッサ121を駆動させられる。また、
図3を参照して説明したように、内燃機関101の回転数の脈動を抑制でき、ハイブリッド車両1の振動を防止できるため、車両の搭乗者に不快感を与えるおそれを低減できる。このため、コースト走行中であるハイブリッド車両の車室内の快適性を向上させることができる。
また、ハイブリッド車両1では、ハイブリッド車両1がコースト走行中のとき内燃機関101の回転数の脈動を抑制するために、内燃機関101に燃料を供給するのではなく、電動機103がコンプレッサ121に駆動力を供給する。したがって、内燃機関101の燃料カット時間を維持できる。
【0041】
また、アシスト制御部131は、ハイブリッド車両1がコースト走行中であり、かつ、コンプレッサ121の駆動を開始するとき、次の制御を行う。すなわち、アシスト制御部131は、コンプレッサ121の駆動の開始時からアシスト時間Cの間、コンプレッサ121を駆動させるアシスト量Bの駆動力を電動機103がコンプレッサ121に供給する。そして、アシスト制御部131は、アシスト時間Cの経過後、電動機103が供給する駆動力を減少率Dで漸減させる。よって、内燃機関101の回転数の脈動が生じない範囲で、必要以上に駆動力を電動機103が供給することを回避できる。したがって、バッテリ160の消費電力を抑制できる。
【0042】
また、内燃機関101の回転数に応じて、内燃機関101の脈動を抑制するために必要なアシスト量Bが変わる。そこで、アシスト量決定部132は内燃機関101の回転数に基づいてアシスト量Bを決定することで、必要以上のアシスト量が発生することを抑えてバッテリ160の消費電力を抑制する。
具体的には、内燃機関101の回転数が低い程、内燃機関101はコンプレッサ121の駆動による負荷を吸収できなくなるため、アシスト量決定部132は内燃機関101の回転数が低い程、アシスト量Bを大きくする。これにより、コンプレッサ121の駆動による内燃機関101への負荷を好適に緩和して、バッテリ160の消費電力を抑制する。
【0043】
また、ハイブリッド車両1の車速に応じて定まるハイブリッド車両1が持つエネルギを、コンプレッサ121の駆動によって内燃機関101にかかる負荷を軽減するために使うことができる。そこで、アシスト時間決定部133はハイブリッド車両1の車速に基づいてアシスト時間Cを決定することで、必要な時間以上、電動機103がコンプレッサ121に駆動力を供給することを回避できる。したがって、バッテリ160の消費電力を抑制できる。
具体的には、ハイブリッド車両1の車速が大きいと、ハイブリッド車両1が持つエネルギが大きくなる。そこで、アシスト時間決定部133はハイブリッド車両1の車速が大きい程アシスト時間Cが短くなるようにする。これにより、コンプレッサ121の駆動による内燃機関101への負荷を好適に緩和して、バッテリ160の消費電力を抑制する。
【0044】
また、エアコン120の冷媒圧に応じてコンプレッサ121の駆動に必要な駆動力が異なる。そこで、アシスト時間決定部133はエアコン120の冷媒圧に基づいてアシスト時間Cを決定することで、コンプレッサ121の駆動による内燃機関101への負荷を緩和するために必要なアシスト時間Cを確保する。これにより、電動機103による駆動力の補助を必要な時間供給させることができる。したがって、ハイブリッド車両1によるコースト走行の走行距離を延長でき、ハイブリッド車両1の減速を抑制して、エアコン120の駆動時間を確保できる。
具体的には、エアコン120の冷媒圧が高いときは、コンプレッサ121の負荷が高い。このようなときに、コンプレッサ121を駆動させる駆動力を十分な時間、電動機103に供給させないと、ハイブリッド車両1のコースト距離が減少したりハイブリッド車両1が減速したりするおそれがある。そこで、アシスト時間決定部133は、エアコン120の冷媒圧が高い程、アシスト時間Cが長くなるようにする。これにより、電動機103による駆動力の補助を必要な時間供給させることができる。したがって、ハイブリッド車両1によるコースト走行の走行距離を延長でき、ハイブリッド車両1の減速を抑制して、エアコン120の駆動時間を確保できる。
【0045】
また、アシスト制御部131は、アシスト時間Cの経過後、減少率Dで電動機103が供給する駆動力を減少させる。したがって、アシスト時間Cの経過後、電動機103の駆動力がなだらかに0に近づいていき、コンプレッサ121の安定した駆動が可能になる。
ハイブリッド車両1の減速度に応じて、コンプレッサ121の駆動による内燃機関101への負荷を軽減するために使うことができるハイブリッド車両1や内燃機関101の慣性エネルギが異なる。そこで、減少率決定部134は、ハイブリッド車両1の減速度に基づいて減少率Dを決定することで、ハイブリッド車両1や内燃機関101の慣性エネルギを十分に使用でき、バッテリ160の電力を節約できる。
具体的には、減少率決定部134は、ハイブリッド車両1の減速度が大きい程、減少率Dを大きくする。よって、ハイブリッド車両1や内燃機関101の慣性エネルギを十分に使用でき、好適にハイブリッド車両1のバッテリ160の電力を節約できる。
【0046】
<その他の実施形態>
図5を参照して説明したアシスト処理では、ステップS108での減少率Dの決定を複数回行う。しかし、減少率Dの決定は1回のみ行うようにしてもよい。例えば、アシスト時間Cの経過後に1回のみ減少率Dの決定を行い、ステップS109では、この決定した減少率Dを変更せずに、減少率Dで電動機103、203の駆動力を漸減させてもよい。これにより、ECU130の処理の負荷を削減できる。
【0047】
また、アシスト時間決定部133は、ハイブリッド車両1の車速、及び、冷媒圧検知部126から取得したエアコン120の冷媒圧に基づいて、アシスト時間Cを決定する。しかし、アシスト時間決定部133は、ハイブリッド車両1の車速、及び、冷媒圧検知部126から取得したエアコン120の冷媒圧のいずれか一方に基づいて、アシスト時間Cを決定するようにしてもよい。これにより、アシスト時間決定部133の処理の負荷が軽減される。
【0048】
また、ハイブリッド車両1、2は、ECU130を複数備えるようにしてもよい。このとき、
図4を参照して説明したECU130が備える機能のそれぞれは、複数あるECU130に分散されて実現してもよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。