特許第6926468号(P6926468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6926468
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】音処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20210812BHJP
【FI】
   H04R3/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-249495(P2016-249495)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-107511(P2018-107511A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077539
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 義仁
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 康祐
【審査官】 冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−311513(JP,A)
【文献】 特開2011−109554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04H 60/00−60/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ入力された信号に対して信号処理を行う複数のチャンネルと、
それぞれ、前記複数のチャンネルの何れか1つに対応付けられ、且つ、任意のパラメータを割当可能な多機能操作子を含む複数のチャンネルストリップを備える操作部と、
前記複数のチャンネルの何れか1つのチャンネルの信号処理を制御するための複数のパラメータを一画面内に表示する表示部であって、前記複数のチャンネルのうち何れか1つのチャンネルの信号処理を制御するための全てのパラメータを一画面内に表示する前記表示部と、
前記表示部において何れか1つのパラメータが選択されたとき、各チャンネルストリップの前記多機能操作子に、それぞれ対応付けられたチャンネルの前記選択されたパラメータを割り当てる割り当て制御部
を備える音処理装置。
【請求項2】
それぞれ入力された信号に対して信号処理を行う複数のチャンネルと、それぞれ、前記複数のチャンネルの何れか1つに対応付けられ、且つ、任意のパラメータを割当可能な多機能操作子を含む複数のチャンネルストリップを備える操作部と、表示部を備える音処理装置において、該音処理装置のコントローラが実行する割当方法であって、
前記複数のチャンネルの何れか1つのチャンネルの信号処理を制御するための複数のパラメータを一画面内に表示する詳細画面を、前記表示部に表示するステップであって、前記複数のチャンネルのうち何れか1つのチャンネルの信号処理を制御するための全てのパラメータを一画面内に表示する前記ステップと、
前記詳細画面において何れか1つのパラメータが選択されたとき、各チャンネルストリップの前記多機能操作子に、それぞれ対応付けられたチャンネルの前記選択されたパラメータを割り当てるステップ
からなる方法。
【請求項3】
それぞれ入力された信号に対して信号処理を行う複数のチャンネルと、それぞれ、前記複数のチャンネルの何れか1つに対応付けられ、且つ、任意のパラメータを割当可能な多機能操作子を含む複数のチャンネルストリップを備える操作部と、表示部を備える音処理装置において、該音処理装置が具備するコンピュータに、
前記複数のチャンネルの何れか1つのチャンネルの信号処理を制御するための複数のパラメータを一画面内に表示する詳細画面を、前記表示部に表示する手順であって、前記複数のチャンネルのうち何れか1つのチャンネルの信号処理を制御するための全てのパラメータを一画面内に表示する前記手順と、
前記詳細画面において何れか1つのパラメータが選択されたとき、各チャンネルストリップの前記多機能操作子に、それぞれ対応付けられたチャンネルの前記選択されたパラメータを割り当てる手順
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばオーディオミキサなどに用いて好適な音処理装置及び方法に関する。
【0002】
オーディオミキサ(以下単に「ミキサ」とも言う)は、大略、各チャンネルにおいて、入力された音信号の音特性調整処理を行い、処理後の音信号をバスに選択的に出力し、各バスにおいて、1又は複数のチャンネルから供給された音信号を混合して、混合結果を出力先に出力するように構成される。デジタルミキサは、専ら、デジタル音信号に対するデジタル信号処理により、チャンネル毎の音特性処理や音信号の経路設定処理などの各種信号処理を行う。ミキサのメモリには、それら信号処理に用いる全てのパラメータの値が記憶される。
【0003】
デジタルミキサの操作パネルには、複数のチャンネルストリップが備わり、操作者は、各チャンネルストリップに備わる操作子を用いて、そのチャンネルストリップに割り当てられたチャンネルの信号処理を制御するパラメータの値を調整できる。1つのチャンネルの信号処理を制御するパラメータは、例えば、入力ゲイン、アッテネータ、イコライザの周波数帯域やゲイン、コンプレッサのスレッショルドやレシオ、フェーダレベル、バス毎のセンドレベル、パン、チャンネルオン・オフなど、多数である。これらのパラメータの1つずつに対応する物理的操作子を備えるように構成したのでは、部品点数が膨大になり、ミキサ筐体サイズも大きくなってしまう。この点、従来よりデジタルミキサは、チャンネルストリップ毎に任意のパラメータを割り当て可能な多機能操作子を備えることにより、部品点数の削減や、ミキサ筐体サイズの小型化等を図っている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、多機能操作子に割り当てるパラメータの選択を、例えばディスプレイに表示されたチャンネルストリップ画面から行うことが記載されている。具体的には、チャンネルストリップ画面は、物理的操作パネル上の複数のチャンネルストリップにそれぞれ対応する複数のチャンネルストリップ画像を備え、各チャンネルストリップ画像内に、対応するチャンネルストリップに割り当てられているチャンネルのパラメータを示すパラメータ画像が表示される。この画面において、何れか1つのチャンネルストリップ画像内で何れか1つのパラメータ画像を選択すると、全てのチャンネルストリップ画像内で、選択されたパラメータに対応するパラメータ画像が選択状態になり、且つ、全てのチャンネルストリップの多機能操作子に、選択されたパラメータが割り当てられる(特許文献1の段落[0035]等を参照)。
【0005】
上記の従来チャンネルストリップ画面は、複数のチャンネルの設定状況を一覧できるが、1つのチャンネル分の情報を表示する領域サイズが狭くなり、1チャンネル分の信号処理を制御するパラメータ群のうちの一部しか表示できない。従って、従来のチャンネルストリップ画面からパラメータを選択する方法では、1つのチャンネルの信号処理を制御する全てのパラメータのうちから、所望のパラメータを選択することはできなかった。
【0006】
また、多機能操作子に割り当てるパラメータを選択する別の方法として、ディスプレイにパラメータのリスト画面を表示し、そのリストからパラメータを選択する方法もあった。しかし、この方法は、パラメータ選択を行うだけのために別途リスト画面の表示を行い、表示されたリスト画面から所望のパラメータを探し出す、という作業を要し、直感性に欠ける。また、多機能操作子に割り当てるパラメータの切り替えを素早く行うことが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006‐311514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、直感的で操作性に優れた方法で、所望のパラメータを、複数のチャンネルストリップの多機能操作子にまとめて割り当てることができるようにした音処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る音処理装置は、それぞれ入力された信号に対して信号処理を行う複数のチャンネルと、それぞれ、前記複数のチャンネルの何れか1つに対応付けられ、且つ、任意のパラメータを割当可能な多機能操作子を含む複数のチャンネルストリップを備える操作部と、前記複数のチャンネルの何れか1つのチャンネルの信号処理を制御するための複数のパラメータを一画面内に表示する表示部であって、前記複数のチャンネルのうち何れか1つのチャンネルの信号処理を制御するための全てのパラメータを一画面内に表示する前記表示部と、前記表示部において何れか1つのパラメータが選択されたとき、各チャンネルストリップの前記多機能操作子に、それぞれ対応付けられたチャンネルの前記選択されたパラメータを割り当てる割り当て制御部を備える。
【0010】
この発明によれば、1つのチャンネルの信号処理を制御する複数のパラメータを一画面内に表示した表示部において何れか1つのパラメータが選択されたとき、各チャンネルストリップの多機能操作子に、それぞれ対応付けられたチャンネルの前記選択されたパラメータが割り当てられる。従って、1チャンネルのパラメータを表示した表示部にてパラメータを選択するだけで、表示部に表示中のチャンネルのチャンネルストリップの多機能操作子のみならず、表示部に表示されていない複数のチャンネルのチャンネルストリップも含めた全てのチャンネルストリップの多機能操作子にまとめてパラメータ割当を行うことができる。このとき、表示部は、1つのチャンネルの信号処理を制御するための複数のパラメータを一画面内に表示するので、複数のチャンネルのパラメータを一画面内に並べて表示する従来技術に比べて、多種多様なパラメータを選択肢として提示し得る。従って、操作者は、リスト画面等の別画面を表示させる手間をかけることなく、多数の選択肢のなかから所望のパラメータを選択できる。
【0011】
また、この発明は、装置の発明として構成及び実施し得るのみならず、前記装置を構成する各構成要素に対応するステップを備える方法の発明として実施及び構成されてよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、直感的で操作性に優れた方法で、所望のパラメータを、全てのチャンネルストリップの多機能操作子にまとめて割り当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明に係る音処理装置の構成例を示す概念的ブロック図。
図2図1の音処理装置を適用したオーディオミキサの電気的ハードウェア構成例を示すブロック図。
図3図2のオーディオミキサの信号処理構成例を説明するブロック図。
図4】1チャンネルの信号処理構成例を説明するブロック図。
図5図2のオーディオミキサの操作パネル構成例を説明する図。
図6】タッチパネルに表示される詳細画面の一例を説明する図。
図7】詳細画面を表示する処理例を示すフローチャート。
図8】タッチに応じた処理例を示すフローチャート。
図9】値調整処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、この発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、この発明に係る音処理装置の構成例を説明する概念的ブロック図を示す。図1において音処理装置10は、それぞれ入力された信号に対して信号処理を行う複数のチャンネル11と、それぞれ、複数のチャンネル11の何れか1つに対応付けられ、且つ、任意のパラメータを割当可能な多機能操作子を含む複数のチャンネルストリップを備える操作部12と、複数のチャンネル11の何れか1つのチャンネルの信号処理を制御するための複数のパラメータを一画面内に表示する表示部13と、表示部13において何れか1つのパラメータが選択されたとき、各チャンネルストリップの前記多機能操作子に、それぞれ対応付けられたチャンネルの前記選択されたパラメータを割り当てる割り当て制御部14を備える。
【0016】
図1の音処理装置10は、例えば、複数チャンネルの音信号に対して混合等の信号処理を行うデジタルオーディオミキサ(以下単に「ミキサ」とも言う)に適用した例について説明する。
【0017】
図2は、ミキサ20の電気的ハードウェア構成例を示すブロック図を示す。図2において、ミキサ20は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)21、メモリ22、タッチパネル23、操作子群24、及び、ミキシング部(図において「MIX」)25を含み、各部21〜25がバス26を介して接続される。
【0018】
CPU21は、メモリ22に記憶された各種のプログラムを実行して、ミキサ20を制御する。メモリ22は、CPU21が実行する各種のプログラムや各種のデータなどを不揮発に格納するほか、CPU21が実行するプログラムのロード領域やワーク領域に使用される。メモリ22は、リードオンリーメモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリあるいはハードディスク等の各種メモリ装置を適宜組み合わせて構成されてよい。また、メモリ22は、後述するミキシング部25による信号処理を制御するために用いる全てのパラメータの値を記憶する。
【0019】
タッチパネル23は、CPU21の制御に基づき各種表示を行う表示機構と、操作者の指等による画面への接触を検出する検出機構とを含む。表示機構は、例えば、液晶パネルや、有機ELディスプレイなど周知のディスプレイ装置であってよい。検出機構は、タッチパネル23の画面への接触位置を検出し、検出された位置に対応する検出信号をCPU21へ出力する。この明細書では、タッチパネル23の画面への接触による入力操作を「タッチ」という。タッチパネル23が、図1の表示部13を構成する。
【0020】
操作子群24は、ミキサ20の操作パネル上に配置された複数の操作子および関連するインターフェース回路等である。操作パネルの構成例は後述の図4に示す。
【0021】
ミキシング部25は、例えばDSP(Digital Signal Processor)や、CPU21およびメモリ22に記憶されたソフトウェアにより仮想的に実現された信号処理装置で構成される。ミキシング部25は、信号処理用のプログラムを実行することにより、図示しない入力機器から供給された1又は複数の音信号を処理して、該処理した音信号を、図示しない出力機器へ出力する。
【0022】
図3は、ミキシング部25による信号処理の構成例を示すブロック図を示す。ミキサ20は、図3に示す通り、複数のチャンネル30と、複数のバス40を有する。各チャンネル30は、入力された音信号に対して音量調整を含む各種信号処理を施し、処理された音信号を操作者により選択された1又は複数のバス40に供給する。各バス40は、1又は複数チャンネル30から供給された音信号を混合して、混合された音信号を、対応する出力チャンネル(不図示)を介して、出力する。ミキシング部25による信号処理は、メモリ22に記憶された各種のパラメータの値に基づいて制御される。
【0023】
図4は、1つのチャンネルの信号処理の構成例を示す。1つのチャンネル30は、信号処理を制御するための制御要素として、入力ゲイン(図において「ゲイン」)31、ハイパスフィルタ(図において「HPF」)32、アッテネータ(図において「ATT」)33、イコライザ(図において「EQ」)34、コンプレッサ(図において「COMP.」)35、フェーダレベル(図において「レベル」)36、チャンネルオン/オフ(図において「オン」)37、バス毎のセンドレベル(図において「センド」)38、及び、パン39などを備えている。これら複数の制御要素31〜39を制御するための複数のパラメータが、「1つのチャンネルの信号処理を制御する複数のパラメータ」である。これら制御要素31〜39は、それぞれ1又は複数のパラメータにより制御される。例えば、イコライザ34は、複数(例えば4つ)の周波数帯域、帯域毎のゲイン、帯域毎の帯域幅という複数のパラメータにより制御され、また、センドレベル38は、複数のバス40のそれぞれに対応する複数の値を持つ。従って、1チャンネルの信号処理を制御するパラメータの数は、非常に多くなる。
【0024】
図5は、ミキサ20の操作パネルの構成例を示す。操作パネルは、タッチパネル23と、該タッチパネル23の下方(操作者の位置から見て手前側)に横方向に並設された複数n個(例えば12本)のチャンネルストリップ50a、50b・・・50nとを備える。この明細書において、上下方向(縦方向)とは、操作パネルの手前側(操作者の位置)から見た奥行き方向、すなわち、図5における上下方向を表す。各チャンネルストリップ50a、50b・・・50nには、それぞれ、1つのチャンネルが対応付けられている。例えば、各チャンネルストリップ50a、50b・・・50nには、図において左から順に、チャンネル「CH13」〜「CH24」が割り当てられる。
【0025】
各チャンネルストリップ50a、50b・・・50nは、対応付けられたチャンネルの信号処理を制御するパラメータの値を調整するための複数の物理的操作子51〜55を備える。物理的操作子は、例えば、音量調整用のフェーダ操作子51、任意のパラメータを割当可能な多機能操作子52、CUEオン/オフを切り替えるCUEキー53、当該チャンネルのオン/オフを切り替えるオンオフキー54、及び、当該チャンネルを選択する選択キー55である。図示及び説明の便宜上、1つのチャンネルストリップ50aの操作子51〜55にのみ符号を付与した。操作子51〜55は、図2の操作子群24に含まれる。
【0026】
フェーダ操作子51、CUEキー53、オンオフキー54、及び、当選択キー55には、制御対象のパラメータが固定的に割り当てられている。多機能操作子52は、操作者により選択されたパラメータが制御対象に割り当てられる。多機能操作子52に割り当てるパラメータの選択は、タッチパネル23に表示された画面から行われる。言い換えれば、多機能操作子52は、基本的には、タッチパネル23に表示された画面内で選択されたパラメータの値を調整するものである。
【0027】
図6は、多機能操作子52に割り当てるパラメータの選択を行うための画面の一例であって、1つのチャンネルの信号処理の制御に用いる全てのパラメータ(以下、「チャンネルのパラメータ」とも言う)を、一括して詳細に表示する詳細画面60である。この実施例に係るミキサ20は、以下に、詳しく説明する通り、図6のような1チャンネルのパラメータ群を表示する詳細画面60内でのパラメータの選択に応じて、全てのチャンネルストリップ50a、50b・・・50nの多機能操作子52に、パラメータをまとめて割り当てることに特徴がある。詳細画面60は、1つのチャンネルの信号処理を制御するための複数のパラメータ(例えば1チャンネルの全てのパラメータ)を一画面内に並べて表示しているので、複数のチャンネルのパラメータをチャンネル毎に一画面内に並べて表示する画面に比べて、数多くのパラメータを選択肢として提示し得る。
【0028】
図7は、或る1チャンネルの詳細画面60を表示するための処理例を示すフローチャートである。操作者が、操作パネル上の物理的操作子等を用いて、所望の1つのチャンネルを選択して、表示指示を行うと、CPU21は、図7の処理を開始する。ステップS1において、CPU21は、選択されたチャンネルの全てのパラメータを特定し、該特定された各パラメータの値をメモリ22から取得する。ステップS2において、CPU21は、取得した各パラメータの値に基づいて、前記選択されたチャンネルの詳細画面60を、タッチパネル23に表示する。詳細画面60に表示するチャンネルは、一例として、ミキサ20に備わる全てのチャンネルから選択できる。別の例として、詳細画面60に表示するチャンネルは、チャンネルストリップ50a、50b・・・50nに対応付けられている複数のチャンネルの中から選択される。
【0029】
図6において、詳細画面60内に表示された様々なパラメータ画像61、62、63、64・・・は、それぞれ、選択されたチャンネルのパラメータに対応付けられている。具体的には、パラメータ画像61、62、63、64・・・は、それぞれ、入力ゲイン、ハイパスフィルタのカットオフ周波数と帯域幅、アッテネータ、イコライザの複数周波数帯域と帯域毎のゲインと帯域毎の帯域幅、コンプレッサのスレッショルドとレシオ、チャンネルオン/オフ、バス毎のセンドレベル、或いは、パンなど、前記図4に示す各制御要素31〜39を制御するための複数のパラメータに対応付けられている。これらパラメータ画像61、62、63、64・・・により、選択されたチャンネルのの信号処理を制御する全てのパラメータが表示される。パラメータ画像61、62、63、64・・・は、例えば、操作子の形状を模擬した操作子画像、数値画像、フィルタの特性を示すグラフ画像など、様々な形状で表現されており、それぞれ、対応付けられたパラメータの現在値を表す。なお、図示及び説明の便宜上、詳細画面60中の一部のパラメータ画像にのみ符号61、62、63、64・・・を付与した。
【0030】
パラメータ画像61、62、63、64・・・は、それぞれ、対応するパラメータを選択するためのボタン画像として機能する。詳細画面60は、選択された1つのチャンネルの全てのパラメータを一画面内に並べて表示しているので、操作者は、例えば所望のパラメータを見つけ出すために別の画面に切り替えたり、或いは、リスト画面を表示させたりといった手間をかけることなく、1チャンネルの信号処理を制御する全てのパラメータの中から所望のパラメータを選択することができる。
【0031】
図8は、詳細画面60へのタッチに応じて、CPU21が実行する処理例を示すフローチャートである。CPU21は、ステップS10において、タッチの位置に基づいて、そのタッチがパラメータ画像61、62、63、64・・・に対するタッチか否かを判断する。何れかのパラメータ画像がタッチされた場合(ステップS10のYes)、CPU21は、ステップS11において、タッチされたパラメータ画像に対応付けられたパラメータを特定する。これにより、詳細画面60に表示中の1チャンネルの当該タッチされたパラメータが選択される。例えば、チャンネル番号「CH14」の詳細画面60がタッチパネル23に表示されているときに、パンに対応するパラメータ画像がタッチされた場合、CH14のパンが選択される。
【0032】
ステップS12において、CPU21は、各チャンネルストリップ50a、50b・・・50nに対応付けられているチャンネル群を特定する。そして、ステップS13において、CPU21は、全てのチャンネルストリップ50a〜50nの多機能操作子52に、それぞれ対応付けられているチャンネルの前記選択されたパラメータを割り当てて、処理を終了する。これにより、1チャンネルの全てのパラメータを表示する詳細画面60内でのパラメータ選択に応じて、全てのチャンネルストリップ50a、50b・・・50nの多機能操作子52へのパラメータ割当をまとめて行うことができる。なお、パラメータ画像以外の位置がタッチされた場合(ステップS10のNo)、CPU21は、タッチされた位置に応じた処理を行い(ステップS14)、処理を終了する。CPU21によるステップS13の処理が、図1の「表示部13において何れか1つのパラメータが選択されたとき、各チャンネルストリップの前記多機能操作子に、それぞれ対応付けられたチャンネルの前記選択されたパラメータを割り当てる割り当て制御部14」の動作に相当する。
【0033】
図8の処理後、操作者によりチャンネルストリップ50a、50b・・・50nの多機能操作子52が操作されたとき、CPU21は、多機能操作子52の操作量(例えばつまみ部の回転角度)に応じて、その操作子52に割り当てられているパラメータの値を変更する(図9のステップS15)。これにより、メモリ22に記憶されているパラメータの値が更新され、更新結果がミキシング部25の信号処理に反映する。なお、詳細画面60が、前記変更されたパラメータの属するチャンネルを表示するものである場合は、前記ステップS15の値変更に応じて、CPU21は、詳細画面60内の、対応するパラメータ画像61、62、63、64・・・の表示を更新する。詳細画面60が、前記変更されたパラメータの属するチャンネルを表示するものでない場合は、表示更新は行われない。
【0034】
例えば、チャンネルストリップ50a、50b・・・50nに、チャンネル「CH13」〜「CH24」が割り当てられており、チャンネル番号「CH14」の詳細画面60がタッチパネル23に表示されているものとする。このとき、詳細画面60で、例えばパンに対応付けられたパラメータ画像63がタッチされた場合、チャンネルストリップ50aの多機能操作子52にはCH13のパン、チャンネルストリップ50bの多機能操作子52にはCH14のパン、チャンネルストリップ50cの多機能操作子52にはCH15のパン・・・という具合に、12本のチャンネルストリップ50a、50b・・・50nの多機能操作子52に、それぞれ対応するチャンネル(「CH13」〜「CH24」)のパンが割り当てられる。
【0035】
このように、1チャンネルの詳細画面60でのパラメータ選択に応じて、全てのチャンネルストリップ50a、50b・・・50nの多機能操作子52のパラメータ割り当てを行う構成によれば、1画面内に1チャンネル分の全てのパラメータが選択肢として提示されているので、画面切り替えやリスト表示等の面倒な手間をかけることなく直感的な操作で、1つのチャンネルの信号処理を制御する全てのパラメータの中から所望のパラメータを選択し、各チャンネルストリップ50a、50b・・・50nの多機能操作子52に、それぞれ対応付けられたチャンネルの該選択されたパラメータをまとめて割り当てることができる。また、或るチャンネルに関する詳細画面60にてパラメータを選択するだけで、その詳細画面60に表示されているチャンネルのチャンネルストリップの多機能操作子52のみならず、詳細画面60に表示されていない複数のチャンネルのチャンネルストリップの多機能操作子52にも、それぞれ、そのチャンネルの選択されたパラメータを割り当てることができる。このため、操作者は、1つのチャンネルに関する詳細な調整作業を詳細画面60を参照して行いつつ、同時並行的に、他のチャンネルでも詳細画面60にて選択されたパラメータを調整する、といった操作を素早く簡単に行うことができる。
【0036】
別の実施形態において、1つの多機能操作子52に対して、複数のパラメータの組み合わせを割り当て、該1つの多機能操作子52により該複数のパラメータの各値を調整するようにしてもよい。その場合、詳細画面60において、1つのパラメータ画像は、複数のパラメータの組み合わせに対応付けられており、そのパラメータ画像へのタッチに応じて、各チャンネルストリップ50a、50b・・・50nの多機能操作子52に、それぞれ対応付けられたチャンネルの該選択された複数のパラメータの組み合わせが割り当てられる。具体的には、例えば、コンプレッサ35に対応付けられたパラメータ画像には、そのコンプレッサ35のスレッショルドとレシオとの2つのパラメータが対応付けられる。そのパラメータ画像へのタッチに応じて、CPU21は、各チャンネルストリップ50a、50b・・・50nの多機能操作子52に、それぞれ対応付けられたチャンネルのコンプレッサ35のスレッショルドとレシオとを割り当てる(前記ステップS13)。この場合、1つの多機能操作子52の操作に応じて、CPU21は、対応付けられたチャンネルの、コンプレッサ35のスレッショルドの値とレシオの値とを変更する(前記ステップS15)。すなわち、この明細書において、タッチパネル23の詳細画面60(表示部13)において選択されるパラメータ(パラメータ画像に対応付けられたパラメータ)、あるいは、多機能操作子52に割り当てられるパラメータとは、1つの多機能操作子52により制御される「複数のパラメータの組み合わせ」を含む。
【0037】
また、別の実施形態において、詳細画面60は、1つのチャンネルの複数のパラメータ群を1画面内に表示する画面であれば、1つのチャンネルの全てのパラメータを表示するものに限らない。例えば、1つのチャンネルに関するエフェクタの設定を詳細に表示する画面など、その他のどのような詳細画面であってもよい。
【0038】
また、タッチパネル23は、ミキサ20の筐体に組み込まれたものに限らず、例えばミキサ20に外部接続されたタブレット端末など、外部機器に備わるタッチパネルであってもよい。
【0039】
また、別の実施形態において、表示部13は、画面への接触による操作入力機能を持たないディスプレイにより構成されてもよい。その場合、画面上でのパラメータの選択は、例えば、操作子群24の物理的操作子や、マウス、キーボード等の操作入力装置を用いて行われてよい。
【0040】
また、別の実施形態において、ミキサ20は、例えばタッチパネル23を備えたコンピュータ装置(いわゆるスレートデバイス)など、図3の信号処理(ミキシング処理)の動作を行うためのプログラムを実装したコンピュータ装置により構成されてもよい。
【0041】
また、音処理装置10は、ミキサ20に限らず、レコーダ、プロセッサなど、どのような音処理装置に適用されてもよく、また、ビデオ映像をミキシング等処理するビデオミキサであってもよい。音処理装置10は、パーソナルコンピュータ上で実行されるDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)ソフトウェアアプリケーションに適用され得る。
【0042】
また、音処理装置10は、図1に示す各部11、12、13及び14の動作を実行するように構成された専用ハードウェア装置(集積回路等)からなっていてもよい。また、音処理装置10は、図1に示す各部11、12、13及び14の動作を行なうためのプログラムを実行する機能を持つプロセッサ装置により構成されてよい。
【0043】
また、この発明は、それぞれ入力された信号に対して信号処理を行う複数のチャンネルと、それぞれ、前記複数のチャンネルの何れか1つに対応付けられ、且つ、任意のパラメータを割当可能な多機能操作子を含む複数のチャンネルストリップを備える操作部と、表示部を備える音処理装置において、該音処理装置のコントローラが実行する割当方法であって、前記複数のチャンネルの何れか1つのチャンネルの信号処理を制御するための複数のパラメータを一画面内に表示する詳細画面を、前記表示部に表示するステップと、前記詳細画面において何れか1つのパラメータが選択されたとき、各チャンネルストリップの前記多機能操作子に、それぞれ対応付けられたチャンネルの前記選択されたパラメータを割り当てるステップからなる方法の発明として、構成及び実施されてもよい。また、前記方法を構成する各ステップを、コンピュータに実行させるプログラムの発明として、構成及び実施されてもよい。その場合、前記ステップS2が詳細画面を表示するステップ、前記ステップS13が割り当てる手順に相当する。
【0044】
以上、この発明の一実施形態を説明したが、この発明は上記各種の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 音処理装置、11 複数のチャンネル、12 操作部、13 表示部、14 割り当て制御部、20 ミキサ、21 CPU、22 メモリ、23 タッチパネル、24 操作子群、25 ミキシング部、30 チャンネル、40 バス、50 チャンネルストリップ、52 多機能操作子、60 詳細画面、61〜64 パラメータ画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9