(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の構成を示す図である。本実施形態の液体噴射装置100は、液体であるインクを媒体12に噴射するインクジェット方式記録装置である。媒体12としては、例えば、紙や樹脂フィルム、布等が挙げられる。
【0022】
液体噴射装置100には、インクを貯留する液体容器14が固定されている。液体容器14としては、例えば液体噴射装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。また、特に図示していないが、液体容器14には、色や種類の異なる複数種類のインクが貯留されている。
【0023】
また、液体噴射装置100は、制御部である制御ユニット20と搬送機構22と液体噴射ヘッド24とを具備する。
制御ユニット20は、特に図示していないが、例えばCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と半導体メモリ等の記録装置とを含んで構成され、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することで液体噴射装置100の各要素を統括的に制御する。
【0024】
搬送機構22は、制御ユニット20によって制御されて媒体12をY方向に搬送するものであり、例えば、搬送ローラーを有する。なお、媒体12を搬送する搬送機構は、搬送ローラーに限らず、ベルトやドラムによって媒体12を搬送するものであってもよい。
【0025】
移動機構26は、制御ユニット20によって制御されて液体噴射ヘッド24をX方向に往復させる。移動機構26によって液体噴射ヘッド24が往復するX方向は、媒体12が搬送されるY方向に交差する方向である。また、X方向及びY方向の双方に交差する方向を本実施形態では、Z方向と称する。本実施形態では、各方向(X、Y、Z)の関係を直交とするが、各構成の配置関係が必ずしも直交するものに限定されるものではない。
【0026】
具体的には、本実施形態の移動機構26は、搬送体262と搬送ベルト264とを具備する。搬送体262は、液体噴射ヘッド24を支持する略箱形の構造体、所謂、キャリッジであり、搬送ベルト264に固定される。搬送ベルト264は、X方向に沿って架設された無端ベルトである。制御ユニット20による制御のもとで搬送ベルト264が回転することで液体噴射ヘッド24が搬送体262と共にX方向に沿って往復する。なお、液体容器14を液体噴射ヘッド24と共に搬送体262に搭載することも可能である。
【0027】
液体噴射ヘッド24は、液体容器14から供給されたインクを制御ユニット20による制御のもとで媒体12に液滴として噴射する。なお、液体噴射ヘッド24からのインク滴の噴射は、Z方向の正側に向かって行われる。そして、搬送機構22によって媒体12がY方向に搬送されると共に移動機構26によって液体噴射ヘッド24がX方向に搬送される際に、液体噴射ヘッド24が媒体12にインク滴を噴射することで、媒体12には所望の画像が形成される。
【0028】
ここで、本実施形態の液体噴射ヘッド24について
図2を参照してさらに詳細に説明する。なお、
図2は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
図2に示すように、本実施形態の液体噴射ヘッド24は、第1支持体242と複数の組立体244とを具備する。第1支持体242は、複数の組立体244を支持する板状部材である。複数の組立体244は、X方向に並設された状態で第1支持体242に固定されている。
【0029】
複数の組立体244の各々は、接続ユニット32と第2支持体34と分配流路36と複数、本実施形態では6個の液体噴射モジュール38とを具備する。なお、液体噴射ヘッド24を構成する組立体244の数や組立体244を構成する液体噴射モジュール38の数は上述したものに限定されるものではない。
【0030】
接続ユニット32のZ方向の正側に位置する第2支持体34に複数の液体噴射モジュール38がY方向に並設された列がX方向に2列で配置され、複数の液体噴射モジュール38のX方向の側方に分配流路36が配置される。分配流路36は、液体容器14から供給されるインクを複数の液体噴射モジュール38の各々に分配する流路が内部に形成された構造体であり、複数の液体噴射モジュール38に亘ってY方向に長尺に構成される。
【0031】
このような液体噴射モジュール38は、液体噴射ユニット40と連結ユニット50とを具備する。液体噴射ユニット40は、液体容器14から分配流路36を介して供給されるインクを媒体12にインク滴として噴射する。
【0032】
本実施形態の液体噴射ユニット40についてさらに
図3を参照して説明する。なお、
図3は、本実施形態の流路ユニットを示す断面図である。
図3に示すように、本実施形態の液体噴射ユニット40は、流路部材である流路ユニット41と脱泡流路ユニット42と液体噴射部44とを具備する。
【0033】
ここで、液体噴射部44についてさらに
図4を参照して説明する。なお、
図4は、液体噴射ヘッドのうち任意の1個のノズルNに対応した部分の断面図である。
図4に示すように、本実施形態の液体噴射部44は、圧力室基板482と振動板483と圧電アクチュエーター484と筐体部485と保護基板486とが流路基板481の一方側に配置されると共に、他方側にノズル板487および緩衝板488が配置された構造体である。
【0034】
流路基板481と圧力室基板482とノズル板487とは例えばシリコンの平板材で形成され、筐体部485は例えば樹脂材料の射出成形で形成される。複数のノズルNはノズル板487に形成される。ノズル板487のうち流路基板481とは反対側の表面が噴射面となっている。
【0035】
流路基板481には、開口部481Aと絞り流路である分岐流路481Bと連通流路481Cとが形成される。分岐流路481Bおよび連通流路481CはノズルN毎に形成された貫通孔であり、開口部481Aは複数のノズルNに亘って連続する開口である。緩衝板488は、流路基板481のうち圧力室基板482とは反対側の表面に設置されて開口部481Aを閉塞する平板材からなるコンプライアンス基板である。開口部481A内の圧力変動は緩衝板488が可撓変形することによって吸収される。
【0036】
筐体部485には、流路基板481の開口部481Aに連通する共通液室であるマニホールドSRが形成される。マニホールドSRは、複数のノズルNに供給されるインクを貯留する空間であり、複数のノズルNに亘って連続して設けられている。また、マニホールドSRには、上流側から供給されるインクが流入する流入口Rinが形成される。
【0037】
圧力室基板482には、ノズルN毎に開口部482Aが形成されている。振動板483は、圧力室基板482のうち流路基板481とは反対側の表面に設置された弾性変形可能な平板材である。圧力室基板482の各開口部482Aの内側で振動板483と流路基板481とに挟まれた空間は、マニホールドSRから分岐流路481Bを介して供給されるインクが充填される圧力室(キャビティ)SCとして機能する。各圧力室SCは、流路基板481の連通流路481Cを介してノズルNに連通する。
【0038】
振動板483の圧力室基板482とは反対側の表面には、ノズルN毎に圧電アクチュエーター484が形成される。各圧電アクチュエーター484は、相互に対向する電極間に圧電体を介在させた駆動素子である。圧電アクチュエーター484は、駆動信号に基づいて変形することで振動板483を振動させて、圧力室SC内のインクの圧力を変動させることで、圧力室SC内のインクがノズルNから噴射される。また、保護基板486は、複数の圧電アクチュエーター484を保護する。
【0039】
ここで、液体噴射ユニット40の流路ユニット41についてさらに
図5〜
図8を参照して説明する。なお、
図5は、可撓膜の平面図であり、
図6は、
図3のうち流路ユニットの加圧動作を解除した状態を示す要部断面図であって
図5のA−A′線に準ずる断面図であり、
図7は、流路ユニットの加圧動作を解除した状態を示す要部断面図であって、
図5のB−B′線に準ずる断面図であり、
図8は、流路ユニットの加圧動作を解除した状態を示す要部断面図であって、
図5のC−C′線に準ずる断面図である。また、
図9〜
図11は、
図6〜
図8のそれぞれの加圧動作を示す断面図である。
【0040】
図3及び
図6に示すように、流路ユニット41は、弁機構70と可撓膜機構80とを内包する。流路ユニット41の内部には、空間R1と空間R2と制御室RCと空間R3とが形成される。本実施形態では、弁機構70に空間R1と空間R2とが形成され、可撓膜機構80に空間R3が形成され、弁機構70と可撓膜機構80との間に制御室RCが形成されている。
【0041】
弁機構70は、弁機構筐体71と開閉弁B[1]とフィルム72とを有する。弁機構筐体71には、液体圧送機構16に接続された空間R1が設けられている。液体圧送機構16は、液体容器14に貯留されたインクを加圧状態で液体噴射ユニット40に供給、すなわち、圧送する機構である。また、弁機構筐体71には、脱泡流路ユニット42と接続された空間R2が設けられている。弁機構筐体71の可撓膜機構80側、すなわち、Z方向の負側には、可動膜であるフィルム72が設けられており、空間R2の壁面の一部はフィルム72によって構成されている。また、空間R1と空間R2との間に開閉弁B[1]が設置されている。
【0042】
開閉弁B[1]は、弁座721と弁体722と受圧板723とバネ724とを具備する。弁座721は、弁機構筐体71の一部であって空間R1と空間R2とを仕切る平板状の部分である。弁座721には、空間R1と空間R2とを連通させる連通孔HAが形成される。受圧板723は、フィルム72のうち弁座721との対向面に設置された略円形状の平板材である。すなわち、受圧板723は、フィルム72上に設けられている。このようにフィルム72に受圧板723を設けることで、弁体722が直接フィルム72に当接する場合に比べてフィルム72の破れや変形を抑制することができる。なお、受圧板723は、フィルム72と接合されていてもよく、また、接合されていなくてもよい。つまり、受圧板723がフィルム72上に設けられているとは、フィルム72に接合された状態も、接合されずに接触可能に配置された状態も含むものである。受圧板723がフィルム72と接合されている場合には、詳しくは後述する可撓膜83がフィルム72を介してインクから受ける圧力は、受圧板723の面積に依存する。また、受圧板723がフィルム72と接合されていない場合には、可撓膜83の先端がフィルム72を介してインクから受ける圧力は可撓膜83の先端の面積となる。本実施形態では、受圧板723は、フィルム72と接合されていない。
【0043】
弁体722は、基部725と弁軸726と封止部727とを包含する。基部725の表面から弁軸726が垂直に突起し、平面視で弁軸726を包囲する円環状の封止部727が基部725の表面に設置される。弁体722は、連通孔HAに弁軸726が挿入された状態で空間R1内に配置され、バネ724により弁座721側、すなわち、Z方向の負側に付勢される。弁軸726の外周面と連通孔HAの内周面との間には隙間が形成される。
【0044】
可撓膜機構80は、蓋部材81とスペーサー82と可撓膜83とを有する。蓋部材81には、弁機構70側、すなわち、Z方向の正側に開口する凹部811が設けられており、凹部811の開口は可撓膜83によって覆われることで内部に空間R3が形成されている。凹部811は、Z方向からの平面視において長尺形状を有する。本実施形態では、凹部811は、Z方向からの平面視において、Y方向が長手方向となり、X方向が短手方向となる長手方向の両端部を半円形状とした形状となっている。なお、凹部811は、長尺形状を有するものであれば、特に限定されず、楕円形状やこれに似た形状等であってもよい。もちろん、凹部811は、長尺形状ではない形状、例えば、円形状や正方形状などのアスペクト比が1となる形状であってもよい。ちなみに、凹部811を長尺形状とすることで、複数の凹部811を短手方向に並設した際に、凹部811の容積を確保しつつ、小型化を図ることができる。
【0045】
スペーサー82は蓋部材81のフィルム72側に設けられている。すなわち、スペーサー82は、弁機構70のフィルム72側において蓋部材81との間に設けられている。スペーサー82には、Z方向において空間R3に重なる位置に、Z方向に亘って貫通した貫通部821が設けられており、貫通部821の内部に制御室RCが形成されている。すなわち、制御室RCと空間R3との間には、可撓膜83が介在する。また、制御室RCの壁面の一部はフィルム72と可撓膜83とによって構成されている。空間R3は、流体供給源である圧力調整機構18に接続された流体流路である脱泡経路75に接続されている。本実施形態では、脱泡経路75は、空間R3のZ方向において可撓膜83に対向する壁に開口する開口部75aによって接続されている。
【0046】
可撓膜83は、ゴムやエラストマー等の弾性材料で形成されている。可撓膜83は、本実施形態では、圧力調整機構18の加圧動作によって脱泡経路75を介して空間R3が加圧された際に制御室RCの内側に、すなわち、フィルム72側に向かって凸状に突出するように弾性変形する。
【0047】
このような可撓膜83は、
図6、
図7及び
図8に示すように、蓋部材81とこの蓋部材81の凹部811が開口する面側に設けられた部材、本実施形態では、スペーサー82との間で挟まれて固定された固定部84と固定部84から空間R3内に延設された可撓部85とを有する。そのため、固定部84は空間R3外で固定される。また、可撓部85は、
図6〜
図8に示すように、加圧動作が行われていない場合において、空間R3側に凸となり、凸の反対側であるフィルム72側に凹となる突出部850を有する。
【0048】
本実施形態では、可撓部85は、当接部851と第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854と第2接続部855とを有する。可撓部85を構成する当接部851と第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854と第2接続部855とは略同じ厚さを有し、固定部84は可撓部85よりも厚くなっている。
【0049】
当接部851は、本実施形態では、可撓膜83が弾性変形した際に、開閉弁B[1]に当接する部分であり、受圧板723にZ方向で対向する位置、すなわち、Z方向からの平面視において受圧板723に重なる位置に設けられている。本実施形態では、Z方向から平面視した際に制御室RCの中心に受圧板723の中心が位置するように設けられているため、当接部851は制御室RCの中心となる位置に配置されている。このような当接部851は、本実施形態では、X方向及びY方向を含む方向に沿って延設されている。また、当接部851は、受圧板723の面積よりも小さな面積を有する。当接部851が、受圧板723の面積よりも小さな面積を有するとは、X方向及びY方向の両方向において、当接部851が受圧板723よりも狭い幅を有することをいう。このように、当接部851を受圧板723の面積よりも小さな面積とすることで、当接部851の位置ずれが生じた場合であっても、当接部851によって受圧板723を確実に押圧することができる。
【0050】
また、当接部851は、
図5に示すように、Z方向からの平面視において、凹部811の長尺形状に合わせた長尺形状を有する。すなわち、当接部851は、Z方向からの平面視において、Y方向が長手方向となり、X方向が短手方向となる長手方向の両端部を半円形状とした形状となっている。なお、当接部851は、長尺形状を有するものであれば、特に限定されず、楕円形状やこれに似た形状等であってもよい。もちろん、当接部851は、長尺形状ではない形状、例えば、円形状や正方形状などのアスペクト比が1となる形状であってもよい。ちなみに、当接部851を長尺形状とすることで、長尺形状を有する凹部811に対して、当接部851を広く形成することができる。
【0051】
第1壁部852は、
図5に示すように、当接部851の周囲に亘って連続した環状に設けられている。第1壁部852は、
図6〜
図8に示すように、当接部851よりもフィルム72とは反対側に立設されている。具体的には、第1壁部852は、一端が当接部851に接続され、他端が当接部851よりもフィルム72とは反対側である蓋部材81側に位置するようにZ方向に沿って延設されている。
【0052】
第1接続部853は、
図5に示すように、第1壁部852の周囲に亘って連続した環状に設けられている。第1接続部853は、
図6〜
図8に示すように、一端が第1壁部852の蓋部材81側に位置する他端に接続されており、他端が第1壁部852よりも外側にX方向及びY方向を含む方向に延設されている。
【0053】
第2壁部854は、
図5に示すように、第1接続部853の周囲に亘って連続した環状に設けられている。第2壁部854は、
図6〜
図8に示すように、第1接続部853よりもフィルム72側に立設されている。具体的には、第2壁部854は、一端が第1接続部853に接続され、他端が第1接続部853よりもフィルム72側で、且つ当接部851よりも蓋部材81側の位置となるようにZ方向に沿って延設されている。
【0054】
第2接続部855は、
図5に示すように、第2壁部854の周囲に亘って連続した環状に設けられている。第2接続部855は、
図6〜
図8に示すように、一端が第2壁部854の他端に接続されており、他端が第2壁部854よりも外側に第1の方向X及び第2の方向Yを含む方向に延設されている。また、第2接続部855は、第2壁部854に接続された一端とは反対側の他端において、固定部84に接続されている。すなわち、第2接続部855は固定部84と第2壁部854とを接続する。
【0055】
このように当接部851の周囲には、中心が同一である環状の第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854と第2接続部855とによって蛇腹が形成されている。すなわち、本実施形態の可撓部85には、当接部851と当接部851の周囲に設けられた第1壁部852とによって蓋部材81側に開口する第1凹部861が設けられている。また、第1凹部861の周囲には、第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854とによってフィルム72側に開口する第2凹部862が周方向に亘って連続した環状に設けられている。さらに、第2凹部862の周囲には、第2壁部854と第2接続部855と固定部84とによって蓋部材81側に開口する第3凹部863が周方向に亘って連続した環状に設けられている。これら第1凹部861と第2凹部862と第3凹部863とは、Z方向から平面視した際に互いに重ならない位置に設けられており、これにより蛇腹が形成されている。つまり、本実施形態では、可撓部85の第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854とが蓋部材81側に凸となりフィルム72側に凹(第2凹部862)となる突出部850となっている。ちなみに、可撓膜において蓋部材81側が凸となり、フィルム72側が凹となっていないものは突出部が形成されているとはいわない。つまり、板状の可撓膜の一部の厚みを変えることで、可撓膜の蓋部材81側に凸が形成されていても、フィルム72側が平坦面となっている場合には、突出部が形成されているとはいわない。同様に、可撓膜のフィルム72側に凹となる溝が形成されており、蓋部材81側が平坦面となっている場合には、突出部が形成されているとはいわない。
【0056】
このような可撓膜83は、弁機構70と当接する部分の外側、すなわち、当接部851の外側に、変形し易い領域と変形し難い領域とを有する。本実施形態では、
図5に示すように、突出部850において、長手方向であるY方向の両端部を変形し難い領域とし、長手方向であるY方向の両端部以外の領域、すなわち、中央部を変形し易い領域とした。なお、突出部850の変形し易さとは、Z方向に同じ圧力で押圧した際の変形量の違いのことをいう。つまり、Z方向に同じ圧力で押圧した際の変形により突出した量が大きい部分が変形し易い部分となり、変形により突出した量が小さい部分が変形し難い部分となる。また、変形し難い領域と変形し易い領域とは、両者を比較した際の相対的な変形のし易さを示すものである。本実施形態では、突出部850のY方向の両端部の変形し難い領域を第1領域870と称し、両端部以外の中央部の変形し易い領域を第2領域871と称する。また、本実施形態では、
図6及び
図7に示すように、X方向の端部の突出部850の蓋部材81側への突出量H1を、中央部の突出部850の蓋部材81側への突出量H2よりも小さくすることで、Y方向の両端部に第1領域870を形成し、Y方向の両端部以外の中央部に第2領域871を形成した。すなわち、第1領域870の突出部850の突出量H1は、第2領域871の突出部850の突出量H2よりも小さい。なお、本実施形態の突出部850の突出量H1、H2とは、第2接続部855からの第2壁部854及び第1壁部852のZ方向における蓋部材81側への長さのことである。第1領域870では、第2壁部854及び第1壁部852のZ方向の長さは、第2領域871の第2壁部854及び第1壁部852の長さよりも短い。したがって、第1領域870の突出部850の突出量H1は、第2領域871の突出部850の突出量H2よりも小さい。
【0057】
このように、第1領域870の突出部850の突出量H1を、第2領域871の突出部850の突出量H2よりも小さくすることで、第1領域870は、第2領域871よりも変形し難くなっている。つまり、詳しくは後述するが、圧力調整機構18の加圧動作によって、可撓膜83の可撓部85が弾性変形する際に、第2壁部854及び第1壁部852の長さが短い第1領域870では、第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854とで形成された第2凹部862が浅いため、第2凹部862が広がるように弾性変形し難いのに対し、第2領域871では、第2凹部862が深く、第2凹部862が広がるように弾性変形し易いからである。
【0058】
ここで空間R3に接続された脱泡経路75は、
図3に示すように、分配流路36内の流路を介して流体供給源である圧力調整機構18に接続される。圧力調整機構18は、当該圧力調整機構18に接続された流路に流体である空気を供給する加圧動作と、当該流路から流体である空気を排出して流路内を大気圧とする大気開放動作と、流路から流体である空気を吸引する減圧動作とを、制御ユニット20からの指示に応じて選択的に実行可能である。圧力調整機構18から内部空間に空気が供給されること(すなわち加圧)で可撓膜83はフィルム72側に突出するように変形し、大気開放動作によって空気が排出されることで可撓膜83の変形が解除されて元の状態、すなわち、
図6〜
図8に示す元の姿勢に戻る。また、圧力調整機構18による空気の吸引(すなわち減圧)により可撓膜83は、元の姿勢から蓋部材81側に変形する。なお、減圧動作によって加圧動作による可撓膜83の変形が解除されて元の姿勢に戻ってもよい。
【0059】
ここで、圧力調整機構18の加圧動作が行われると、可撓膜83の可撓部85の第2領域871では、
図9に示すように当接部851がフィルム72に向かって移動するように弾性変形する。すなわち、可撓部85は、蛇腹に形成された第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854とが第2凹部862を広げるように弾性変形して、当接部851が開閉弁B[1]に向かって移動する。なお、第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854とで形成された第2凹部862が広がるように弾性変形するとは、第2接続部855からZ方向の負側に延設された第2壁部854が、Z方向の正側に屈曲して広がるように弾性変形することをいう。つまり、第2凹部862が裏返ることで当該第2凹部862がなくなるように弾性変形する。このような可撓部85の第2領域871の弾性変形によって、本実施形態では、第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854と第2接続部855とが、固定部84と可撓部85との境界、すなわち、可撓部85の根元からフィルム72に向かって略一直線上に配置されて、当接部851をフィルム72側に移動させる。そして、フィルム72側に移動した当接部851がフィルム72に当接してフィルム72をZ方向の正側に押圧することで開閉弁B[1]が開弁される。
【0060】
また、圧力調整機構18の加圧動作が行われると、可撓膜83の可撓部85の第1領域870では、
図10に示すように、第1領域870は変形し難いことから、第2凹部862が裏返ることなく弾性変形する。すなわち、圧力調整機構18の加圧動作によって空間RC内が同じ圧力で加圧されても、変形し易い第2領域871は、
図9に示すように第2凹部862が裏返るように弾性変形し、変形し難い第1領域870は、
図10に示すように第2凹部862が裏返ることなく弾性変形する。つまり、
図11に示すように、加圧動作が行われると、Y方向の両端部の第1領域870は、第2凹部862が裏返ることなく、Y方向の中央部の第2領域871が第2凹部862を裏返すように変形して、当接部851がフィルム72を押圧することができる。
【0061】
つまり、本実施形態では、可撓膜83を変形させる変形工程と、可撓膜83を弁機構70に当接させる当接工程と、を具備し、変形工程では、可撓膜83のうち弁機構70と当接する部分である当接部851の外側に、裏返る第2領域871と裏返らない第1領域870とがあるように、可撓膜83を変形させるように制御する。なお、可撓膜83の制御は、本実施形態では、圧力調整機構18の加圧動作における流路の圧力を調整することで行われる。つまり、圧力調整機構18の加圧動作によって加圧した流路の圧力が低すぎると、変形し易い第2領域871も裏返ることなく変形する虞があり、加圧した流路の圧力が高すぎると、変形し難い第1領域870も裏返るように変形してしまう虞があるからである。本実施形態では、変形し難い第1領域870と変形し易い第2領域871とを設けることで、圧力調整機構18による加圧動作の圧力を適宜調整するだけで、第1領域870を裏返るように変形させることができると共に第2領域871を裏返らないように変形させる制御を容易に行うことができる。
【0062】
そして、圧力調整機構18による加圧動作を解除した際に、可撓膜83は、第1領域870をきっかけとして第2領域871を
図6〜
図8に示す元の姿勢に戻すことができる。つまり、加圧動作時に第1領域870が第2領域871と同じように裏返るように変形してしまうと、加圧動作を解除した際に第2領域871だけが元の姿勢に戻り、第1領域870が裏返ったままになってしまう虞がある。これは、第1領域870は、空間R3の長尺方向であるY方向の端部に近い位置に配置されているため、第1領域870の周方向から固定部84が蓋部材81とスペーサー82との間で挟持された際の変形のしわ寄せが大きく、復元力を阻害することが原因の一つであると考えられる。そして、加圧動作を解除しても、第1領域870が裏返ったように変形した状態が維持されると、可撓膜83がフィルム72を押圧し続けることになり、開閉弁B[1]の開弁状態が維持されてしまう。このように加圧動作を解除した際に可撓膜83が裏返った状態が維持されたとしても、開閉弁B[1]を閉弁させるためには、可撓膜83とフィルム72とのZ方向における間隔を大きくとる必要がある。すなわち、可撓膜83が裏返ったままで可撓膜83にかかる圧力が解除された際に、可撓膜83が裏返ったままで開閉弁B[1]を開弁しない位置まで蓋部材81側に後退するように変形させるには、可撓膜83とフィルム72とのZ方向における間隔を大きくとる必要があり、可撓膜機構80がZ方向に大型化してしまう。また、可撓膜83の裏返りを元の姿勢に戻すには、加圧動作を解除した後に、空間RCを大気開放して大気圧に戻す(加圧動作の解除)だけではなく、空間RCを大気圧よりも負圧となるように減圧、特に大きく減圧する減圧動作が必要になり、開閉弁B[1]の閉弁までに時間がかかってしまう。本実施形態では、加圧動作時に第1領域870が裏返らないため、加圧動作を解除するだけで、すなわち、空間RCを大気開放して大気圧とする大気開放動作を行うだけで、可撓膜83を元の姿勢に戻すことができるため、可撓膜83とフィルム72とのZ方向における間隔を大きくとる必要がなく、可撓膜機構80をZ方向に小型化することができる。また、減圧動作を行うことなく開閉弁B[1]の閉弁までの時間を短縮することができるため、開閉弁B[1]の開弁から閉弁に至る反応性を向上することができる。もちろん、本実施形態においても、加圧動作を解除した後、大気開放動作を行うだけではなく、減圧動作を行うことで、可撓膜83を元の姿勢に戻すようにしてもよい。減圧動作を行う場合であっても、可撓膜83は、第1領域870をきっかけとして第2領域871が元の姿勢に戻るため、減圧動作に大きな負圧が不要となり、短時間で可撓膜83を元の姿勢に戻すことができる。
【0063】
また、上述したように、加圧動作時において、可撓膜83の可撓部85の当接部851がフィルム72側に移動することによって、当接部851のみがフィルム72に当接して開閉弁B[1]を開弁する。このため、可撓部85のフィルム72を押す先端、すなわち、当接部851のフィルム72に当接する部分の面積は、供給圧を受ける可撓部85の空間R3側の後端の面積より小さい。このように、可撓部85の供給圧を受ける脱泡経路75側の後端面の面積を大きくすることで、圧力調整機構18からの圧力を比較的広い面積で受けて圧力を受け易くし、可撓部85のフィルム72に当接する当接部851の面積を小さくすることで、フィルム72を押圧する空間R2内のインクの圧力による反発を小さくすることができる。例えば、可撓部85のフィルム72に当接する当接部851の面積と後端面の面積とを1:5とした場合、圧力調整機構18による空気の圧力Pa(Pa)、インク圧力Pi(Pa)、バネ力Fs(N)、フィルム72の反力F(N)、可撓部85の後端面の受圧面積A(m
2)、可撓部85の当接部851のフィルム72から受ける受圧面積Af(m
2)(=1/5・A)、可撓部85のゴム反力Fg(N)とすると、開閉弁B[1]を開くために必要な条件はPa・A−Fg>Pi(1/5・A)+Fs+Fとなり、Pa>(1/5)Pi+(Fs+F+Fg)/Aで表される。この式に表されるように、本実施形態の当接部851を設けた場合に開閉弁B[1]を開くのに必要な圧力調整機構18の圧力Paは、フィルム72によって区切られた空間R2内のインクの圧力Piの影響を1/5に低減したものとすることができる。したがって、当接部851がフィルム72によって反発される力が弱くなることから、圧力調整機構18による脱泡経路75の圧力が小さくても、可撓部85の変形を維持することができる。このため、圧力調整機構18が脱泡経路75に大きな圧力を供給する必要がなく、圧力調整機構18が脱泡経路75を高い圧力に加圧するまでの時間が不要となって加圧動作に必要な時間を短縮することができると共に、圧力調整機構18の耐久性を向上することができる。また、圧力調整機構18として大きな圧力を出力可能な装置が不要となり、圧力調整機構18を小型化することができると共にコストを低減することができる。また、開閉弁B[1]を開くために必要な圧力調整機構18の圧力は、空間R2内のインクの圧力変化に対する影響が小さいため、圧力調整機構18の設計を簡便化することができる。
【0064】
また、本実施形態では、
図6に示すように、加圧動作を解除した状態では、突出部850の凹である第2凹部862の相対向する内壁面同士は、互いに当接することなく間隔を空けて配置されている。すなわち、第1壁部852と第2壁部854とは、互いに当接することなく、所定の間隔を空けて配置されている。このように、第2凹部862の相対向する内壁面同士を互いに当接させずに間隔を空けて配置することで、
図9に示すように、加圧動作を行って可撓膜83を弾性変形させる際に、可撓部85の変形、特に第2壁部854の変形が阻害されるのを抑制することができる。例えば、第2凹部862の内壁面同士が当接している場合、すなわち、第2壁部854の第2接続部855側の端部(第2接続部855の端部)が、第1壁部852に当接している場合には、当接部851が開閉弁B[1]側に向かってZ方向に移動する際に、第2接続部855からZ方向の負側に延設された第2壁部854がZ方向の正側に屈曲するように変形する際のスペースが少なくなり、第2壁部854の変形が阻害されてしまうからである。なお、第1壁部852の当接部851側の端部が第2壁部854の側面に当接している場合であっても、可撓膜83の変形が阻害される。本実施形態では、第1壁部852と第2壁部854との側面を、互いに当接することなく所定の間隔を空けて配置することで、可撓膜83の変形が阻害されるのを抑制することができ、比較的低い圧力で可撓膜83を変形させることが可能である。
【0065】
なお、本実施形態では、第1凹部861においても同様に、相対向する内壁面同士が互いに当接することなく所定の間隔を空けて配置されている。すなわち、当接部851のX方向及びY方向の両側に設けられた第1壁部852の内壁面同士が互いに当接することなく所定の間隔を空けて配置されている。これにより、加圧動作時に可撓膜83が、第2接続部855からZ方向の負側に延設された第2壁部854がZ方向の正側に屈曲するように変形する際のスペースを確保することができ、可撓膜83の変形を容易に行わせることができる。
また、本実施形態では、第3凹部863においても同様に、相対向する内壁面同士が互いに当接することなく所定の間隔を空けて配置されている。
【0066】
なお、
図6に示すように、大気開放動作や減圧動作等によって加圧動作が解除されて可撓膜83の変形が解除された状態では、空間R2内の圧力が所定の範囲内に維持されている場合には、弁体722をバネ724が付勢することで封止部727が弁座721の表面に密着する。したがって、空間R1と空間R2とは遮断される。他方、液体噴射部44によるインクの噴射や外部からの吸引に起因して空間R2内の圧力が所定の閾値を下回る数値まで低下すると、フィルム72が弁座721側に変位することで受圧板723が弁軸726を押圧し、弁体722がバネ724による付勢に対抗して移動することで封止部727が弁座721から離間する。したがって、空間R1と空間R2とが連通孔HAを介して相互に連通する。すなわち、フィルム72は、貯留室である空間R2内の第1圧力と、貯留室外である制御室RCの第2圧力との差に応じて動く。なお、制御室RCは、大気開放されていてもよい。これにより、フィルム72を、大気圧と空間R2内の圧力との差に応じて動かすことができる。
【0067】
また、上述のように圧力調整機構18による加圧で可撓膜83が変形すると、可撓膜83による押圧でフィルム72が弁座721側に変位する。したがって、受圧板723による押圧で弁体722が移動して開閉弁B[1]が開放される。すなわち、空間R2内の圧力の高低に関わらず、圧力調整機構18による加圧で強制的に開閉弁B[1]を開放することが可能である。すなわち、フィルム72は、貯留室である空間R2内の第1圧力と、制御室RCの第2圧力との差に応じて動き、且つ可撓膜83に押されることで動く。
【0068】
本実施形態では、圧力調整機構18による加圧で可撓膜83を変形させて、可撓膜83によってフィルム72を変形させるようにしたため、可撓膜83は圧力調整機構18の圧力を受け易く、圧力調整機構18による加圧を比較的小さくしても可撓膜83を動作させることができる。
【0069】
ちなみに、可撓膜83を設けずに、制御室RC内の空気を加圧して直接フィルム72を押圧する場合、制御室RCの圧力を、空間R2内のインクの圧力よりも大きくしないとフィルム72によって弁体722を押圧することができない。また、空間R2内のインクの圧力が変化すると、必要な圧力調整機構18の圧力の変化も大きく、圧力調整機構18の設計が困難になってしまう。ここで、圧力調整機構18による空気の圧力Pa(Pa)、インク圧力Pi(Pa)、バネ力Fs(N)、フィルム72の反力F(N)、フィルム72の受圧面積A(m
2)とすると、開閉弁B[1]を開くために必要な条件はPa・A>Pi×A+Fs+F、すなわち、Pa>Pi+(Fs+F)/Aで表される。この式に表されるように、フィルム72を直接圧力調整機構18の圧力によって変形させるには、圧力調整機構18の圧力Paをインクの圧力Piよりも大きくする必要があった。
【0070】
これに対して、本実施形態では、突出部850を有する可撓膜83を設けることで、可撓膜83の圧力調整機構18からの供給圧を受ける空間R3側の面積を広くすることができ、可撓膜83を比較的小さな圧力で動作させることができる。したがって、圧力調整機構18が脱泡経路75及び空間R3に大きな圧力を供給する必要がなく、圧力調整機構18が脱泡経路75及び空間R3を高い圧力に達するまで加圧する時間が不要となって加圧動作に必要な時間を短縮することができると共に、圧力調整機構18の耐久性を向上することができる。また、圧力調整機構18として大きな圧力を出力可能な装置が不要となり、圧力調整機構18を小型化することができると共にコストを低減することができる。
【0071】
一方、
図3に示すように、脱泡流路ユニット42は、流路ユニット41を経由したインクを液体噴射部44に供給する流路が内部に形成された構造体である。
具体的には、本実施形態の脱泡流路ユニット42は、脱泡空間QとフィルターF[1]と鉛直空間RVと逆止弁74とを包含する。脱泡空間Qは、インクから抽出された気泡が一時的に滞留する空間である。
【0072】
フィルターF[1]は、液体噴射部44にインクを供給するための内部流路を横断するように設置され、インクに混入した気泡や異物を捕集する。具体的には、フィルターF[1]は、空間RF1と空間RF2とを仕切るように設置される。上流側の空間RF1は流路ユニット41の空間R2に連通し、下流側の空間RF2は鉛直空間RVに連通する。
【0073】
空間RF1と脱泡空間Qとの間には気体透過膜MC(第2気体透過膜の例示)が介在する。具体的には、空間RF1の天井面が気体透過膜MCで構成される。気体透過膜MCは、気体(空気)は透過させるがインク等の液体は透過させない気体透過性の膜体(気液分離膜)であり、例えば公知の高分子材料で形成される。フィルターF[1]で捕集された気泡は、浮力による上昇で空間RF1の天井面に到達し、気体透過膜MCを透過することで脱泡空間Qに排出される。すなわち、インクに混入した気泡が分離される。
【0074】
鉛直空間RVは、インクを一時的に貯留するための空間である。第1実施形態の鉛直空間RVには、フィルターF[1]を通過したインクが空間RF2から流入する流入口Vinと、インクがノズルN側に流出する流出口Voutとが形成される。すなわち、空間RF2内のインクは、流入口Vinを介して鉛直空間RVに流入し、鉛直空間RV内のインクは流出口Voutを介して液体噴射部44(マニホールドSR)に流入する。
図3に例示される通り、流出口Voutと比較して鉛直方向の上方(Z方向の負側)に流入口Vinが位置する。
【0075】
鉛直空間RVと脱泡空間Qとの間には気体透過膜MA(第1気体透過膜の例示)が介在する。具体的には、鉛直空間RVの天井面が気体透過膜MAで構成される。気体透過膜MAは、前述の気体透過膜MCと同様に気体透過性の膜体である。したがって、フィルターF[1]を通過して鉛直空間RVに進入した気泡は浮力により上昇し、鉛直空間RVの天井面の気体透過膜MAを透過して脱泡空間Qに排出される。前述の通り、流入口Vinは流出口Voutと比較して鉛直方向の上方に位置するから、鉛直空間RV内での浮力を利用して気泡を効果的に天井面の気体透過膜MAに到達させることが可能である。
【0076】
液体噴射部44のマニホールドSRには、前述の通り、鉛直空間RVの流出口Voutから供給されるインクが流入する流入口Rinが形成される。すなわち、鉛直空間RVの流出口Voutから流出したインクは流入口Rinを介してマニホールドSRに流入し、開口部481Aを経由して各圧力室SCに供給される。また、第1実施形態のマニホールドSRには排出口Routが形成される。排出口Routは、マニホールドSRの天井面49に形成された流路である。
図3に例示される通り、マニホールドSRの天井面49は、流入口Rin側から排出口Rout側にかけて高くなる傾斜面(平面または曲面)である。したがって、流入口Rinから進入した気泡は浮力の作用で天井面49に沿って排出口Rout側に誘導される。
【0077】
マニホールドSRと脱泡空間Qとの間には気体透過膜MB(第1気体透過膜の例示)が介在する。気体透過膜MBは、気体透過膜MAや気体透過膜MCと同様に気体透過性の膜体である。したがって、マニホールドSRから排出口Routに進入した気泡は浮力により上昇し、気体透過膜MBを透過して脱泡空間Qに排出される。前述の通り、マニホールドSR内の気泡は天井面49に沿って排出口Routに誘導されるから、例えばマニホールドSRの天井面49を水平面とした構成と比較してマニホールドSR内の気泡を効果的に排出することが可能である。なお、気体透過膜MAと気体透過膜MBと気体透過膜MCとを単一の膜体で形成することも可能である。
【0078】
以上に説明した通り、本実施形態では、鉛直空間RVと脱泡空間Qとの間に気体透過膜MAが介在し、マニホールドSRと脱泡空間Qとの間に気体透過膜MBが介在し、空間RF1と脱泡空間Qとの間に気体透過膜MCが介在する。すなわち、気体透過膜MAと気体透過膜MBと気体透過膜MCとの各々を透過した気泡が共通の脱泡空間Qに到達する。したがって、液体噴射ユニット40の各部にて抽出された気泡が別個の空間に供給される構成と比較して、気泡の排出のための構造が簡素化されるという利点がある。
【0079】
図3に例示される通り、脱泡空間Qは脱泡経路75に連通する。脱泡経路75は、脱泡空間Qに滞留した空気を装置外部に排出するための経路である。脱泡空間Qと脱泡経路75との間には逆止弁74が介在する。逆止弁74は、脱泡空間Qから脱泡経路75に向かう空気の流通を許可する一方、脱泡経路75から脱泡空間Qに向かう空気の流通を阻害する弁機構である。
【0080】
図12は、脱泡流路ユニット42のうち逆止弁74の近傍に着目した説明図である。
図12に例示される通り、第1実施形態の逆止弁74は、弁座741と弁体742とバネ743とを包含する。弁座741は、脱泡空間Qと脱泡経路75とを仕切る平板状の部分である。弁座741には、脱泡空間Qと脱泡経路75とを連通させる連通孔HBが形成される。弁体742は、弁座741に対向するとともにバネ743により弁座741側に付勢される。脱泡経路75内の圧力が脱泡空間Q内の圧力以上に維持された状態(脱泡経路75内が大気開放または加圧された状態)では、バネ743からの付勢により弁体742が弁座741に密着することで連通孔HBが閉塞される。したがって、脱泡空間Qと脱泡経路75とは遮断される。他方、脱泡経路75内の圧力が脱泡空間Q内の圧力を下回る状態(脱泡経路75内が減圧された状態)では、弁体742がバネ743による付勢に対抗して弁座741から離間する。したがって、脱泡空間Qと脱泡経路75とが連通孔HBを介して相互に連通する。
【0081】
本実施形態の脱泡経路75は、圧力調整機構18と流路ユニット41の制御室RCとを連結する経路に接続される。すなわち、圧力調整機構18に接続された経路が2系統に分岐し、一方が制御室RCに接続されるとともに他方が脱泡経路75に接続される。
【0082】
図3に示すように、液体噴射ユニット40から流路ユニット41を経由して分配流路36の内部に至る排出経路76が形成される。排出経路76は、液体噴射ユニット40の内部流路(具体的には液体噴射部44にインクを供給するための流路)に連通する経路である。具体的には、排出経路76は、各液体噴射部44のマニホールドSRの排出口Routと鉛直空間RVとに連通する。
【0083】
排出経路76のうち液体噴射ユニット40とは反対側の端部は閉塞弁78に接続される。閉塞弁78が設置される位置は任意であるが、分配流路36内に閉塞弁78を設置した構成が
図3では例示されている。閉塞弁78は、通常状態では排出経路76を閉塞し(ノーマリークローズ)、一時的に排出経路76を大気に開放可能な弁機構である。
【0084】
内部流路からの気泡の排出に着目した液体噴射ユニット40の動作を説明する。
図13に例示される通り、液体噴射ユニット40に最初にインクを充填(以下「初期充填」という)する段階では、圧力調整機構18が加圧動作を実行する。すなわち、弁機構70の脱泡経路75内が空気の供給により加圧される。したがって、制御室RC内の可撓膜83がフィルム72側に弾性変形してフィルム72および受圧板723が変位し、受圧板723からの押圧により弁体722が移動して空間R1と空間R2とが連通する。脱泡経路75が加圧された状態では逆止弁74により脱泡空間Qと脱泡経路75とが遮断されるため、脱泡経路75内の空気は脱泡空間Qには流入しない。他方、初期充填の段階では閉塞弁78が開放される。
【0085】
以上の状態において、液体圧送機構16は、液体容器14に貯留されたインクを液体噴射ユニット40の内部流路に圧送する。具体的には、液体圧送機構16から圧送されたインクは、開放状態にある開閉弁B[1]を介して鉛直空間RVに供給され、鉛直空間RVからマニホールドSRおよび各圧力室SCに供給される。前述の通り閉塞弁78は開放されているため、初期充填の実行前に内部流路に存在していた空気は、内部流路および排出経路76に対するインクの充填とともに排出経路76と閉塞弁78とを通過して装置外部に排出される。したがって、液体噴射ユニット40のマニホールドSRと各圧力室SCとを含む内部流路の全体にインクが充填され、圧電アクチュエーター484の動作によりノズルNからインクを噴射可能な状態となる。以上に例示した通り、第1実施形態では、液体圧送機構16から液体噴射ユニット40にインクが圧送されるときに閉塞弁78が開放されるから、液体噴射ユニット40の内部流路にインクを効率的に充填することが可能である。以上に説明した初期充填が完了すると、圧力調整機構18による加圧動作が停止するとともに閉塞弁78が閉塞される。
【0086】
図14に例示される通り、初期充填が完了して液体噴射装置100が使用可能な状態では、液体噴射ユニット40の内部流路に存在する気泡が常時的に脱泡空間Qに排出される。具体的には、空間RF1内の気泡は気体透過膜MCを介して脱泡空間Qに排出され、鉛直空間RV内の気泡は気体透過膜MAを介して脱泡空間Qに排出され、マニホールドSR内の気泡は気体透過膜MBを介して脱泡空間Qに排出される。他方、開閉弁B[1]は、空間R2内の圧力が所定の範囲内に維持された状態では閉塞され、空間R2内の圧力が所定の閾値を下回ると開放される。開閉弁B[1]が開放されると、液体圧送機構16から供給されるインクが空間R1から空間R2に流入し、結果的に空間R2の圧力が上昇することで開閉弁B[1]は閉塞される。
【0087】
図14に例示した動作状態で脱泡空間Qに滞留した空気は、脱泡動作により装置外部に排出される。脱泡動作は、例えば液体噴射装置100の電源投入の直後や印刷動作の間等の任意の時期に実行される。
図15は、脱泡動作の説明図である。
図15に例示される通り、脱泡動作を開始すると、圧力調整機構18は減圧動作を実行する。すなわち、空間R3と脱泡経路75とが空気の吸引により減圧される。
【0088】
脱泡経路75が減圧されると、逆止弁74の弁体742がバネ743による付勢に対抗して弁座741から離間し、脱泡空間Qと脱泡経路75とが連通孔HBを介して相互に連通する。したがって、脱泡空間Q内の空気は脱泡経路75を介して装置外部に排出される。他方、内部空間の減圧により可撓膜83はフィルム72とは反対側に変形するが、制御室RC内の圧力(ひいてはフィルム72)には影響しないから、開閉弁B[1]は閉塞した状態に維持される。
【0089】
以上説明したように、本実施形態では、弁機構70に用いる可撓膜機構80として、蓋部材81と、蓋部材81との間で空間R3を形成する可撓膜83と、空間R3に連通する流体流路である脱泡経路75と、を備え、可撓膜83は、当該可撓膜83の変形により弁機構70の開閉弁B[1]を開閉させ、可撓膜83は凹部811側に凸となり、凸の反対側に凹(第2凹部862)となる突出部850を有し、弁機構70と当接する部分である当接部851の外側に、変形し易い第2領域871と変形し難い第2領域871とを有する。このように、可撓膜83に突出部850を設けることで、可撓膜83が流体流路である脱泡経路75からの圧力を受ける面積を増大させて、可撓膜83を比較的低い圧力で動作させることができる。特に、可撓膜83の凹凸となる突出部850を広げるように変形させることができるため、可撓膜83を厚さが薄くなるように伸長させて変形させるのに比べて、比較的低い圧力で変形させて、開閉弁B[1]を動作させることができる。したがって、供給圧として比較的高い圧力が不要となり、圧力調整機構18が脱泡経路75及び空間R3を高い圧力に達するまで加圧する時間が不要となって加圧動作に必要な時間を短縮することができると共に、圧力調整機構18の耐久性を向上することができる。
【0090】
また、可撓膜83の当接部851の外側に、変形し易い第2領域871と変形し難い第1領域870とを設けることで、加圧動作時に第2領域871を裏返るように変形させて、第1領域870を裏返らせないように変形させることができる。これにより、可撓膜83の第2領域871によって確実に弁機構70を動作させることができる。また、加圧動作を解除した際に、可撓膜83は、第1領域870をきっかけとして第2領域871を元の姿勢に戻すことができる。したがって、加圧動作によって可撓膜83の裏返った状態が加圧動作を解除した後も維持されるのを抑制することができる。このため、可撓膜83とフィルム72とのZ方向における間隔を大きくとる必要がなく、可撓膜機構80をZ方向に小型化することができると共に、減圧動作を行わずに、または、減圧動作を行う時間を短縮して、開閉弁B[1]の閉弁までの時間を短縮することができ、開閉弁B[1]の開弁から閉弁に至る反応性を向上することができる。
【0091】
また、本実施形態では、可撓膜83のうち、変形し難い第1領域870に設けられた突出部850は、変形し易い第2領域871に設けられた突出部850よりも蓋部材81側への突出量が小さい。このように、突出部850の突出量H1、H2によって第1領域870と第2領域871とを容易に形成することができる。また、突出部850の突出量H1、H2を調整することで、第1領域870と第2領域871との変形し易さを容易に制御することができる。
【0092】
また、本実施形態では、可撓膜83と蓋部材81との積層方向であるZ方向から平面視した際に、空間R3は長尺形状を有し、変形し難い第1領域870は、長尺形状の長手方向の端部である。可撓膜83の空間R3の長手方向であるY方向の端部は、固定部84が蓋部材81とスペーサー82とによって挟まれた際の変形のしわ寄せが集まりやすく、Y方向の端部において加圧動作時に裏返ると、加圧動作を解除した際に裏返ったままになり易い部分となっているが、このように裏返ったままになり易い部分に変形し難い第1領域870を設けることで、裏返りを抑制すると共に、裏返ったままになるのを抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態では、可撓膜83は、空間R3外で固定された固定部84と固定部84から空間R3内に延設された可撓部85とを具備し、可撓部85の固定部84側の根元から可撓部85と弁機構70の開閉弁B[1]との当接位置までの長さL2は、可撓膜83の可撓部85の固定部84側の根元から可撓部85が開閉弁B[1]に当接する位置までの最短距離L1よりも長い。すなわち、本実施形態では、可撓部85のうち固定部84から当接部851までの長さ、すなわち、第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854と第2接続部855とを合計した長さL2が、最短距離L1よりも長くなるようにした(
図6参照)。このように、可撓部85の固定部84側の根元から可撓部85と弁機構70の開閉弁B[1]との当接位置までの長さL2を、最短距離L1よりも長くすることで、可撓膜83の可撓部85の突出部850が広がるように変形した際に、可撓部85によって開閉弁B[1]を確実に押圧して動作させることができる。また、可撓部85の突出部850が広がるように変形するだけで開閉弁B[1]を動作させることができるため、可撓部85を厚さが薄くなるように伸長させる場合に比べて低い圧力で動作させることができる。もちろん、可撓膜83の長さL2は、最短距離L1よりも短くてもよいが、可撓膜83を変形させて開閉弁B[1]を動作させるためには、突出部850を広げるように変形させると共に、可撓膜83を伸長するように変形させる必要があり、動作圧力が高くなってしまう。ただし、可撓膜83の長さL2が、最短距離L1よりも短い場合であっても、平板状の可撓膜を用いた場合に比べて、低い圧力で弾性変形させることができる。
【0094】
また、本実施形態では、可撓膜83は、蓋部材81とこの蓋部材81の凹部811が開口する側に設けられた部材、本実施形態では、スペーサー82との間で設けられた部材との間で挟まれて固定されており、可撓膜83の凹である第2凹部862の相対向する内壁面同士が互いに当接することなく間隔を空けて配置されている。これにより、可撓膜83の突出部850が広がるように変形する際に、第2凹部862の内壁面同士が当接することによって変形が阻害されるのを抑制することができ、比較的低い圧力で可撓膜83を変形させることができる。
【0095】
もちろん、第2凹部862の相対向する内壁面同士が互いに当接していてもよいが、可撓膜83を変形させるには、第2凹部862の相対向する内壁面同士が互いに当接していない場合に比べて比較的高い圧力が必要になる。
【0096】
また、本実施形態では、可撓膜機構80は開閉弁B[1]に連通する部屋である空間R2と部屋R2の一部を規定するフィルム72であって、変形により開閉弁B[1]を開閉させるフィルム72を具備し、可撓膜機構80は、弁機構70のフィルム72と可撓膜83との距離を一定に保つためのスペーサー82を有する。このようにスペーサー82によってフィルム72と可撓膜83との距離を一定に保つことで、可撓膜83が動作しない状態で、可撓膜83がフィルム72の機能を阻害するのを抑制することができる。また、可撓膜83が変形した際に、フィルム72を確実に押圧することができる。
【0097】
なお、本実施形態では、可撓膜機構80にスペーサー82を設けるようにしたが、スペーサー82は、弁機構70側に設けられていてもよい。また、スペーサー82は、弁機構筐体71や蓋部材81に一体的に設けられていてもよい。
【0098】
また、本実施形形態では、開閉弁B[1]の開閉と逆止弁74の開閉とに圧力調整機構18が共用されるため、開閉弁B[1]と逆止弁74とを別個の機構により制御する構成と比較して、開閉弁B[1]および逆止弁74を制御するための構成を簡素化することができる。
【0099】
さらに、本実施形態では、フィルム72には受圧板723を設けるようにした。このため、可撓膜83がフィルム72を押圧した際にフィルム72が延びてしまうことや破れてしまうなどの変形を抑制することができる。また、受圧板723を弁体722側に設けることで、弁体722が直接フィルム72に接触するのを抑制して、フィルム72の弁体722に接触することによる変形や破損を抑制することができる。もちろん、受圧板723は、設けられていなくてもよい。
【0100】
さらに、本実施形態の液体噴射ユニット40は、流路構造体である流路ユニット41と、貯留室である空間R2内のインクを吐出して第1圧力を変更する液体噴射部44とを備える。液体噴射部44が空間R2内のインクを吐出することで、空間R2内のインクが消費されても、空間R2内の圧力に基づいてフィルム72が動作して開閉弁B[1]を開弁して空間R1から空間R2内にインクを供給することができる。したがって、液体噴射部44に一定の圧力でインクを供給することができる。
【0101】
また、本実施形態では、1つの空間R3に対する可撓膜83について説明したが、特に限定されず、複数の空間R3と空間R3に対する可撓膜83を設けるようにしてもよい。このような例を
図16に示す。なお、
図16は、空間及び可撓膜を示す平面図である。
【0102】
図16に示すように、空間R3が、Z方向からの平面視においてY方向が長手方向となり、X方向が短手方向となる場合には、複数の空間R3を短手方向であるX方向に並設すればよい。このとき、可撓膜83としては、
図17に示すように、複数の空間R3に対して共通する1枚の可撓膜83を設けるようにしてもよく、特に図示していないが、空間R3毎に独立して分割された可撓膜83を設けるようにしてもよい。つまり、可撓膜83は、空間R3毎に設けられていてもよく、空間R3が2つ以上で構成される群毎に設けられていてもよい。
【0103】
(実施形態2)
図17は、本発明の実施形態2に係る流路ユニットの要部断面図であって、
図5のB−B′線に準ずる断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
本実施形態では、可撓膜83のY方向の中央部は、実施形態1の
図6と同様に第2領域871が形成されている。
【0104】
これに対して、
図17に示すように、可撓膜83のY方向の両端部には、第1接続部853の厚さt1を
図6に示す中央部の厚さt2よりも厚くすることで第1領域870が形成されている。すなわち、本実施形態では、突出部850は、当接部851の周方向に亘って同じ突出量となるように設けられている。つまり、突出部850を形成する第1壁部852と第2壁部854とは、当接部851の周方向に亘ってZ方向に同じ長さで形成されている。そして、第1接続部853のZ方向の厚さが、Y方向の両端部において中央部よりも厚く形成されている(t1>t2)。これにより、第1接続部853の厚さt2が厚く変形し難い第1領域870と、第1領域870よりも第1接続部の厚さt2が薄く変形し易い第2領域871とが形成されている。すなわち、本実施形態では、実施形態1のように突出部850の蓋部材81側への突出量H1、H2を変更することなく、第1接続部853の厚さt1、t2を変更することで第1領域870と第2領域871とが形成されている。なお、第1領域870において、第1接続部853の厚さt1が厚いと、第1接続部853が屈曲するように変形し難くなると共に、結果的に第1壁部852及び第2壁部854によって形成される第2凹部862の深さが浅くなるため、第1領域870は第2領域871に比べて変形し難くなる。
【0105】
このように、可撓膜83の当接部851の外側に変形し難い第1領域870と変形し易い第2領域871とを設けることで、上述した実施形態1と同様に、加圧動作時に第1領域870を裏返さずに第2領域871のみを裏返させることができるため、加圧動作を解除した際に、第1領域870を起点として第2領域871を元の姿勢に戻すことができる。
【0106】
なお、本実施形態では、第1接続部853の厚さを変えることで、第1領域870と第2領域871とを形成するようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、第2接続部855の厚さを変えることで、変形し難い第1領域870と変形し易い第2領域871とを設けるようにしてもよい。つまり、第2接続部855の厚さを厚くすることで変形し難い第1領域870を形成してもよい。また、第1接続部853及び第2接続部855の厚さを変えることなく、第1壁部852や第2壁部854の厚さを変えて第1領域870と第2領域871とを形成してもよい。さらに、第1壁部852、第1接続部853、第2壁部854及び第2接続部855から選択される2つ以上を組み合わせて厚さの変更を行ってもよい。すなわち、第1壁部852、第1接続部853、第2壁部854及び第2接続部855から選択される少なくとも1つの厚さを変えることで、第1領域870と第2領域871とを形成すればよい。
【0107】
また、本実施形態の第1接続部853の厚さの調整と上述した実施形態1の突出部850の突出量の調整とを組み合わせて、第1領域870と第2領域871とを形成するようにしてもよい。
【0108】
(実施形態3)
図18は、本発明の実施形態3に係る流路ユニットの要部断面図であって、
図5のC−C′線に準ずる断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0109】
図18に示すように、スペーサー82には、貫通部821内、すなわち、制御室RC内に突出する規制部822が設けられている。規制部822は、制御室RCのY方向の両端部からY方向の中央部に向かって突出して設けられている。すなわち、規制部822は、貫通部821のY方向の両側の壁面からY方向の中央部に向かって突出して設けられており、貫通部821のX方向の壁面には形成されていない。また、規制部822は、当接部851に達する位置まで突出して設けられている。
【0110】
このように規制部822を設けることによって、当接部851の周囲において可撓膜83が規制部822に当接することで開閉弁B[1]側への変形が規制される。すなわち、当接部851の周囲において、Y方向の両端部が規制部822によって変形し難い第1領域870となっており、規制部822によって規制されない部分が変形し易い第2領域871となっている。ちなみに、特に図示していないが、第1領域870と第2領域871とは、突出部850の突出量や第1接続部853の厚さなどは同じとなるように形成されている。もちろん、規制部822に合わせて、上述した実施形態1及び2のように、突出部850の突出量の調整や第1接続部853の厚さの調整を組み合わせてもよい。
【0111】
つまり、可撓膜83が変形し難いとは、上述した実施形態1及び2のように可撓膜83自体の構造によるものだけではなく、本実施形態のスペーサー82に設けられた規制部822のようにその他の部材による影響のものも含まれる。
【0112】
このように規制部822によって可撓膜83に第1領域870と第2領域871とを設けることで、上述した実施形態1と同様に、加圧動作時に第1領域870を裏返さずに第2領域871のみを裏返させることができるため、加圧動作を解除した際に、第1領域870を起点として第2領域871を元の姿勢に戻すことができる。
【0113】
また、本実施形態では、可撓膜83の突出部850の突出量や、可撓膜83の一部の厚みを調整することなく、第1領域870と第2領域871とを形成することができるため、可撓膜83を容易に製造することができると共に、可撓膜83の変形量を高精度に把握することができる。
【0114】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した各実施形態では、可撓膜83の形状を変更すること、及びスペーサー82に規制部822を設けることで、可撓膜83の当接部851の外側に変形し難い第1領域870と変形し難い第2領域871とを設けるようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、可撓膜83の形状を当接部851の周囲に亘って変更することなく、可撓膜83の変形し易い領域と変形し難い領域とは、互いにヤング率の異なる材料で形成されていてもよい。すなわち、ヤング率が大きい材料で形成された部分が変形し易い第1領域870となり、ヤング率が小さい材料で形成された部分が変形し易い第2領域871となる。ちなみに、ヤング率の異なる複数の材料からなる可撓膜83は、例えば、2色成形によって形成することができる。もちろん、上述した各実施形態の可撓膜83の形状を変更すること、スペーサー82に規制部822を設けること、及び、互いにヤング率の異なる材料を用いることから選択される2つ以上を組み合わせるようにしてもよい。
【0115】
また、上述した各実施形態では、空間R3は脱泡経路75を介して圧力調整機構18と連通しているが、空間R3内の圧力を調整できれば、脱泡経路75を介して圧力調整機構18と連通しなくてもよい。例えば、空間R3を脱泡経路75とは連通させず、脱泡経路75以外の流体流路を介して、圧力調整機構18とは異なる機構により、空間R3内の圧力を調整してもよい。
【0116】
また、上述した各実施形態では、空間R3は、蓋部材81の凹部811が可撓膜83で覆われることにより形成されたが、凹部811を蓋部材81に設けなくてもよい。例えば、可撓膜83に凹部を設け、それを蓋部材81で覆うことにより空間R3を形成してもよい。
【0117】
また、上述した実施形態1では、可撓膜83の突出部の突出量を変更することで、第1領域870と第2領域871とを設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、当接部851の周囲の一部に突出部850を設けない領域を形成することで、第1領域870と第2領域871とを形成してもよい。このような例を
図19及び
図20に示す。なお、
図19及び
図20は、可撓膜の変形例を示す平面図である。
【0118】
図19に示すように、第1壁部852、第1接続部853及び第2壁部854は、当接部851のX方向の両側に設けられており、Y方向の両側に設けられていない。このように当接部851の周囲において第1壁部852、第1接続部853及び第2壁部854が設けられていない領域が変形し難い第1領域870となり、第1壁部852、第1接続部853及び第2壁部854が設けられた領域が変形し易い第2領域871となっている。
【0119】
なお、第1壁部852、第1接続部853及び第2壁部854が設けられていない領域は
図19に示すものに限定されず、例えば、
図20に示すように、第1壁部852、第1接続部853及び第2壁部854は、当接部851のX方向の両側とY方向の両側とに設けられているが、当接部851の周囲に周方向で不連続となるように設けられていてもよい。
【0120】
また、突出部850の形状は、上述した実施形態1〜3に限定されるものではない。ここで、突出部850の変形例について
図21〜
図24を参照して説明する。なお、
図21〜
図24は、可撓膜の変形例を示す流路ユニットの要部断面図であって、
図5のA−A′線に準ずる断面図であるが、可撓膜は固定部が挟まれた際の応力によって変形されていない状態を模式的に示すものである。
【0121】
図21に示すように可撓部85は、当接部851と第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854と第2接続部855とを有する。可撓部85を構成する当接部851と第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854と第2接続部855とは略同じ厚さを有し、固定部84は可撓部85よりも厚くなっている。
【0122】
当接部851は、上述した実施形態1と同様にX方向及びY方向を含む面方向に沿って延設されている。
【0123】
第1壁部852は、当接部851の周囲に亘って連続した環状に設けられている。第1壁部852は、当接部851よりもフィルム72側に立設されている。具体的には、第1壁部852は、一端が当接部851に接続され、他端が当接部851よりもフィルム72側に位置するようにZ方向に沿って延設されている。
【0124】
第1接続部853は、第1壁部852の周囲に亘って連続した環状に設けられている。第1接続部853は、一端が第1壁部852のフィルム72側に位置する他端に接続されており、他端が第1壁部852よりも外側にX方向及びY方向を含む方向に延設されている。
【0125】
第2壁部854は、第1接続部853の周囲に亘って連続した環状に設けられている。第2壁部854は、第1接続部853よりもフィルム72とは反対側、すなわち蓋部材81側に立設されている。具体的には、第2壁部854は、一端が第1接続部853に接続され、他端が第1接続部853よりも蓋部材81側で、且つ当接部851よりもフィルム72側の位置となるようにZ方向に沿って延設されている。
【0126】
第2接続部855は、第2壁部854の周囲に亘って連続した環状に設けられている。第2接続部855は、一端が第2壁部854の他端に接続されており、他端が第2壁部854よりも外側に第1の方向X及び第2の方向Yを含む方向に延設されている。また、第2接続部855は、第2壁部854に接続された一端とは反対側の他端において、固定部84に接続されている。すなわち、第2接続部855は固定部84と第2壁部854とを接続する。
【0127】
このように当接部851の周囲には、中心が同一である環状の第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854と第2接続部855とによって蛇腹が形成されている。すなわち、本実施形態の可撓部85には、当接部851と当接部851の周囲に設けられた第1壁部852とによってフィルム72側に開口する第1凹部861が設けられている。また、第1凹部861の周囲には、第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854とによって蓋部材81側に開口する第2凹部862が周方向に亘って連続した環状に設けられている。さらに、第2凹部862の周囲には、第2壁部854と第2接続部855と固定部84とによってフィルム72側に開口する第3凹部863が周方向に亘って連続した環状に設けられている。これら第1凹部861と第2凹部862と第3凹部863とは、Z方向から平面視した際に互いに重ならない位置に設けられており、これにより蛇腹が形成されている。つまり、本実施形態では、可撓部85の当接部851と第1壁部852とが、蓋部材81側に凸となりフィルム72側に凹(第2凹部862)となる突出部850となっている。
【0128】
このような構成であっても、上述した実施形態1〜3と同様に、可撓膜83の形状を変更すること、または、スペーサー82に規制部822を設けることで、第1領域870と第2領域871とを形成すればよい。
【0129】
また、
図22に示すように、可撓部85は、当接部851と第1壁部852と第1接続部853とを有する。すなわち、本実施形態の可撓部85には、第2壁部854と第2接続部855とは設けられていない。可撓部85を構成する当接部851と第1壁部852と第1接続部853とは略同じ厚さを有し、固定部84は可撓部85よりも厚くなっている。
【0130】
このような可撓膜83では、当接部851の周囲には、中心が同一である環状の第1壁部852と第1接続部853とによって蛇腹が形成されている。すなわち、本実施形態の可撓部85には、当接部851と当接部851の周囲に設けられた第1壁部852とによってフィルム72側に開口する第1凹部861が設けられている。また、第1凹部861の周囲には、第1壁部852と第1接続部853と固定部84とによって蓋部材81側に開口する第2凹部862が周方向に亘って連続した環状に設けられている。これら第1凹部861と第2凹部862とは、Z方向から平面視した際に互いに重ならない位置に設けられており、これにより蛇腹が形成されている。つまり、本実施形態では、可撓部85の当接部851と第1壁部852とが、蓋部材81側に凸となりフィルム72側に凹(第2凹部862)となる突出部850となっている。
【0131】
このような構成であっても、上述した実施形態1〜3と同様に、可撓膜83の形状を変更すること、または、スペーサー82に規制部822を設けることで、第1領域870と第2領域871とを形成すればよい。
【0132】
また、
図23に示すように、可撓部85は、当接部851と第3壁部856Aと第4壁部856Bと第3接続部857と第5壁部858と第4接続部859とを有する。可撓部85を構成する当接部851と第3壁部856Aと第4壁部856Bと第3接続部857と第5壁部858と第4接続部859とは略同じ厚さを有し、固定部84は可撓部85よりも厚くなっている。
【0133】
第3壁部856Aは、当接部851のX方向の正側に当接部851から蓋部材81側向かって立設されている。
第4壁部856Bは、当接部851のX方向の負側に当接部851から蓋部材81側に向かって立設されている。第4壁部856Bは、第3壁部856AよりもZ方向に短い。なお、第3壁部856Aと第4壁部856Bとは、Y方向の端部において連続していてもよく、不連続であってもよい。
【0134】
第3接続部857は、一端が第4壁部856Bの蓋部材81側に位置する端部に接続されており、他端が第4壁部856BよりもX方向の負側に向かって延設されている。
第5壁部858は、第3接続部857よりもフィルム72側に向かって立設されている。
第4接続部859は、第3壁部856Aの端部と固定部84とを接続すると共に、第5壁部858の端部と固定部84とを接続するように、第3壁部856A、第4壁部856B、第3接続部857及び第5壁部858の周囲に亘って連続して設けられている。
【0135】
このように可撓膜83には、第3壁部856Aと第4壁部856Bと第3接続部857と第5壁部858とによって蛇腹が形成されている。すなわち、本実施形態の可撓部85には、当接部851と第3壁部856Aと第4壁部856Bとによって蓋部材81側に開口する第1凹部861が設けられている。また、可撓部85には、第1凹部861のX方向の負側に、第4壁部856Bと第3接続部857と第5壁部858とによって第2凹部862が設けられている。さらに、可撓部85には、第3壁部856Aと第4接続部859と固定部84とによってフィルム72側に開口する第3凹部863が設けられている。また、可撓部85には、第4壁部856Bと第4接続部859と固定部84とによって蓋部材81側に開口する第4凹部864が設けられている。第1壁部852と第1接続部853と第2壁部854とによって蓋部材81側に開口する第2凹部862が周方向に亘って連続した環状に設けられている。これら第1凹部861と第2凹部862と第3凹部863と第4凹部864とは、Z方向から平面視した際に互いに重ならない位置に設けられており、これにより蛇腹が形成されている。つまり、本実施形態では、可撓部85の第4壁部856Bと第3接続部857と第5壁部858とが、蓋部材81側に凸となりフィルム72側に凹(第2凹部862)となる突出部850となっている。
【0136】
このような構成であっても、上述した実施形態1〜3と同様に、可撓膜83の形状を変更すること、または、スペーサー82に規制部822を設けることで、第1領域870と第2領域871とを形成すればよい。
【0137】
また、
図24に示すように、可撓部85は、空間R3側に突出するように湾曲して設けられている。すなわち、可撓膜83は、フィルム72側に第1凹部861が開口して設けられており、可撓部85の全体が蓋部材81側に凸となり、開閉弁B[1]側に第1凹部861が設けられて凹となる突出部850となっている。
【0138】
このような構成であっても、上述した実施形態1〜3と同様に、可撓膜83の形状を変更すること、または、スペーサー82に規制部822を設けることで、第1領域870と第2領域871とを形成すればよい。
【0139】
また、上述した各実施形態では、第1領域870は長尺形状を有する空間R3の長手方向であるY方向の両端部に設けるようにしたが、第1領域870は、当接部851の外側であれば周方向の何れの位置に設けられていてもよい。すなわち、加圧動作時に第1領域870が裏返ることなく、加圧動作を解除した際に、第1領域870をきっかけとして第2領域871の裏返りを元の姿勢に戻すことができれば、第1領域870の位置は特に限定されるものではない。ただし、上述した実施形態1〜3のように、長尺形状を有する空間R3に対して、長手方向であるY方向における可撓部85の両端部には、固定部84を挟持することによる変形のしわ寄せが大きく、可撓部85の裏返りが元に戻り難いため、元に戻り難い領域であるY方向の両端部に変形し難い第1領域870を設けることで、第1領域870の裏返りを生じ難くして、裏返りが元に戻らなくなるのを抑制することができる。
【0140】
また、上述した各実施形態では、可撓膜83の当接部851の外側に、変形し難い第1領域870と第2領域871とを設け、加圧動作時に第1領域870が裏返らないようにしたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、可撓膜83に変形し易い第1領域870と変形し難い第2領域871とが設けられていれば、加圧動作時に第1領域870及び第2領域871の両方が裏返るように変形したとしても、加圧動作を解除した際に、変形し易い第2領域871が裏返りから元の姿勢に戻り、元の姿勢に戻った第2領域871をきっかけとして戻り難い第1領域870を元の姿勢に戻すことができる。ちなみに、可撓膜83は、当接部851の外側に当接部851の周囲に亘って変形し易さが同じとなるように設けられていると、加圧動作時に当接部851の周囲の全てが裏返るように変形してしまうと共に、加圧動作を解除した際に裏返りが元の姿勢に戻り難い。
【0141】
また、例えば、
図25に示すように、可撓部85のY方向の両側の固定部84にスリット841を設けるようにしてもよい。スリット841は、固定部84をZ方向に貫通してX方向に沿って設けられている。このように固定部84にスリット841を設けることで、固定部84を蓋部材81とスペーサー82とで挟んだ際に、可撓部85のY方向の両端部に変形のしわ寄せが大きくなるのを抑制することができる。すなわち、固定部84を蓋部材81とで挟んだ際の変形は、スリット841側と可撓部85側との両側に分散されるため、可撓部85のY方向の両端部における変形のしわ寄せが小さくなる。これにより、可撓部85のY方向の両端部において、加圧動作時に裏返るように変形したとしても、加圧動作を解除した際に、しわ寄せによる影響で元の姿勢に戻り難くなるのを抑制することができる。なお、上述した例では、可撓膜83の固定部84にスリット841を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、蓋部材81やスペーサー82にスリットを設けるようにしてもよい。
【0142】
また、上述した各実施形態では、突出部850の形状や厚み、または、スペーサー82に設けられた規制部822によって変形し難い第1領域870と変形し易い第2領域871とを設けるようにしたが、例えば、上述した各実施形態のように、Z方向からの平面視において、Y方向が長手方向となり、X方向が短手方向となる長手方向の両端部を半円形状とした形状とし、その周囲に突出部850を設けた場合には、突出部850の形状や厚みを調整しなくても、Y方向の両端部は、変形し難い第1領域となり、その他の領域が変形し易い第2領域となる。つまり、Z方向から平面視した際に、当接部851の周方向に沿った突出部850の曲率が大きい部分が第2領域871となり、突出部850の曲率が小さい部分が第1領域870となる。このように当接部851をX方向が短手方向となる長手方向の両端部を半円形状とした形状とし、その周囲に亘って突出部850を設けるだけで、変形し難い第1領域870と変形し易い第2領域871とを形成することができる。そして、圧力調整機構18が加圧動作を行う際の圧力を適宜調整することで、加圧動作時に、変形し難い第1領域870を裏返らせることなく、第2領域871のみを裏返らせるように変形させることができ、加圧動作を解除した際に、第1領域870をきっかけとして第2領域871を元の姿勢とすることができる。
【0143】
なお、当接部851の長尺形状は、Y方向が長手方向となり、X方向が短手方向となる長手方向の両端部を半円形状とした形状に限定されるものではなく、例えば、矩形となる長方形状や多角形状等であってもよい。当接部851が何れの長尺形状であっても、当接部851の周囲に亘って同一形状の突出部850を設けるだけで、長手方向の両端部に第1領域870を形成することができる。
【0144】
例えば、上述した各実施形態では、可撓部85の厚さを略同じ厚さとしたが、特にこれに限定されず、可撓部85の開閉弁B[1]に当接する当接部851を他の部分よりも厚くしてもよい。また、当接部851の開閉弁B[1]に当接する一部に、開閉弁B[1]側に突出する凸部を設けるようにしてもよい。
【0145】
また、上述した各実施形態では、第1壁部852、第2壁部854、第3壁部856A、第4壁部856B、第5壁部858は、Z方向に沿って設けられるようにしたが、特にこれに限定されず、Z方向に対して傾斜する方向に沿って設けられていてもよい。また、第1接続部853、第2接続部855、第3接続部857、第4接続部859は、X方向及びY方向を含む方向が面方向となるように設けたが、特にこれに限定されず、X方向及びY方向の何れか一方又は両方に対して傾斜した方向に沿って設けるようにしてもよい。
【0146】
また、上述した各実施形態の開閉弁B[1]は、弁体722をバネ724の付勢力によって付勢することによって閉弁するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、弁体722の自重によって閉弁するようにしてもよい。
【0147】
また、上述した各実施形態では、開閉弁B[1]が設けられた流路が、空間R2に連通した構成を例示したが、特にこれに限定されず、開閉弁B[1]が設けられた流路が、貯留室である空間R2に連通せずに、代わりに貯留室へ液体を圧送するための動力源、つまり、液体圧送機構16に連通しており、開閉弁B[1]が開くことで液体圧送機構16が作動して貯留室である空間R2にインクを圧送し、その結果としてフィルム72の一方側の第1圧力が大きくなるようにしてもよい。すなわち、開閉弁B[1]が開閉する流路は、インク以外の流体の流路であってもよく、開閉弁B[1]が開閉した結果として、インクが流れるようにしてもよい。
【0148】
また、受圧部であるフィルム72は、第1圧力と第2圧力との釣り合いに応じて動くものであればよく、材料は、例えば、膜や金属薄板等であってもよい。また、フィルム72の形状は、平坦なものであってもよく、屈曲が繰り返された、所謂、蛇腹形状であってもよく、さらには袋状体であってもよい。
また、可撓膜83は、ゴム等の弾性部材としたが、特にこれに限定されず、可撓性を有する樹脂や金属等であってもよい。
【0149】
さらに、上述した各実施形態では、脱泡空間Qを減圧することで、脱泡空間Q内の気泡を除去するようにしたが、減圧する用途は特にこれに限定されない。例えば、減圧される空間、一方向弁を介してインクが通過する流路と連通させて、空間の減圧時に一方向弁を開いて流路内のインクを気泡と共に回収するものであってもよい。つまり、減圧される空間は、インクに含まれる気泡を溜める目的に用いることができる。もちろん、減圧される空間は、インクに含まれる気泡を溜める目的に以外の用途にも用いることができる。その他の用途としては、例えば、空間を減圧することで流路内の圧力変動を吸収するためのダンパー室の容積を変更して、ダンパー室の特性を変更するようにしてもよい。さらに、空間をノズルNに臨むように開口させて、空間を減圧することで、ノズルN近傍に付着したゴミを吸引除去するものであってもよい。
【0150】
また、脱泡空間Q内の気泡を除去するために減圧が用いられる場合には、減圧される空間は気体透過性を有するシート状部材(例えば、ポリアセタールやポリプロピレンやポリフェニレンエーテル等の薄膜)や、気体透過性を有する程度の厚さの剛性壁(例えば、透過区画壁を含む脱泡流路ユニット42の材質をPOM(ポリアセタール)、m−PPE(変性ポリフェニレンエーテル)、又はPP(ポリプロピレン)等のプラスチックまたはこれらのアロイとし、剛性壁の厚さを、一般的には0.5mm前後とする)により、少なくともその一部が形成されることが望ましい。あるいは、これらのシート状部材や剛性壁により形成された部屋と弁を介して連通する部屋が減圧する空間に相当する場合には、減圧する空間は熱硬化性樹脂や金属等により形成されてもよい。また、空間への減圧によりノズルN近傍に付着したゴミを吸引除去するために空間が用いられる場合には、空間は熱硬化性樹脂や金属等により、形成されることが好ましい。
【0151】
また、上述した各実施形態では、流体供給源である圧力調整機構18からの流体として空気を例示したが、特にこれに限定されず、流体として、不活性ガスや、インクに用いられる液体、インク以外の液体等を用いるようにしてもよい。
【0152】
さらに、上述した各実施形態では、圧力室SCに圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、圧電アクチュエーター484を用いて説明したが、圧電アクチュエーター484としては、例えば、電極及び圧電材料を成膜及びリソグラフィー法により積層形成した薄膜型、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子を用いることができる。また、圧力発生手段として、圧力室SC内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルから液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆるものなどを使用することができる。
【0153】
また、上述した実施形態では、液体噴射ユニット40が、流路構造体である流路ユニット41を具備するものを例示したが、特にこれに限定されず、液体噴射ユニット40には流路構造体である流路ユニット41が設けられていなくてもよい。すなわち、流路ユニット41を液体噴射部44とは別の場所に設けるようにしてもよい。
【0154】
さらに、上述した各実施形態では、可撓膜機構が、弁機構の開閉弁B[1]を押圧することにより開弁するようにしたが、特にこれに限定されない。ここで、流路ユニットの変形例を
図26及び
図27に示す。なお、
図26及び
図27は、流路ユニットの要部断面図であって、
図26は、加圧動作を解除した状態を示す図であり、
図27は、加圧動作を示す図である。
【0155】
図26に示すように、流路ユニット41は弁機構70と可撓膜機構80とを有する。弁機構70は、弁機構筐体71と開閉弁B[1]とフィルム72とを有する。弁機構筐体71には、空間R1と空間R2とが形成されている。空間R1は、下流側の流路、例えば、脱泡流路ユニット42や液体噴射部44の流路に接続されており、空間R2から脱泡流路ユニット42や液体噴射部44にインクが供給される。空間R2は、上流側の流路、例えば、液体容器14が接続されており、液体容器14からインクが供給される。
【0156】
開閉弁B[1]は、弁座721と弁体722と受圧板723とバネ724とを具備する。弁座721は、弁機構筐体71の一部であって空間R1と空間R2とを仕切る平板状の部分である。弁座721には、空間R1と空間R2とを連通させる連通孔HAが形成される。受圧板723は、フィルム72のうち弁座721との対向面に設置された略円形状の平板材である。
【0157】
弁体722は、基部725と第1弁軸728と封止部727と第2弁軸729とを包含する。基部725は、空間R2内に配置されている。また、第1弁軸726は、基部725の表面からZ方向の正側に垂直に突起して設けられている。また、第2弁軸729は、基部725の表面から受圧板723側に向かって垂直に突起して設けられている。このような弁体722では、第1弁軸728が連通孔HAに挿入され、バネ724により受圧板723側に付勢される。
このような弁機構70のZ方向の負側には、上述した実施形態1と同様の可撓膜機構80が設けられている。
【0158】
そして、
図27に示すように、加圧動作が行われることによって可撓膜83が変形して、可撓膜83がフィルム72及び受圧板723をZ方向の正側に押圧すると、弁体722の封止部727が弁座721に当接して空間R1と空間R2とを遮断、いわゆる閉弁する。また、
図25に示すように、減圧動作が行われることによって、可撓膜83の変形が解除されると、弁体722はバネ724の付勢力によってフィルム72側に移動し、空間R1と空間R2とは連通孔HAを介して連通、すなわち、開弁する。これにより空間R2に供給されたインクは、空間R1から下流側に供給される。このような弁機構70及び可撓膜機構80は、例えば、流路をチョークした状態でノズルNからインクと共に気泡を吸引し、一気に流路のチョークを解除する、所謂チョーククリーニングなどで用いることができる。
【0159】
また、本発明は、広く液体噴射装置全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを用いた液体噴射装置にも用いることが可能である。
【0160】
また、上述した各実施形態では、液体噴射ヘッドに可撓膜機構80を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、液体噴射ヘッド以外の液体噴射装置内に可撓膜機構80を設けるようにしてもよい。
また、本発明は、広く流路部材全般を対象としたものであり、液体噴射装置や液体噴射ヘッド以外のデバイスにも用いることが可能である。