(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図におい
ては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際と
は異ならせている。
また、
図1から
図4では、説明の便宜上、互いに直交する三軸として、X軸、Y軸及び
Z軸を図示しており、軸方向を図示した矢印の先端側を「+側」、基端側を「−側」とし
ている。X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平
行な方向を「Z軸方向」という。
【0022】
(実施形態)
<印刷装置の概略構成>
図1は、実施形態に係る印刷装置の概略全体構成を示す模式図である。
図2は、印刷装
置の要部を示す平面図である。まず、本実施形態に係る印刷装置100の概略構成につい
て
図1及び
図2を参照して説明する。なお、本実施形態では、媒体95に画像などを形成
することで媒体95に捺染を行うインクジェット式の印刷装置100を例に上げて説明す
る。
【0023】
図1に示すように、印刷装置100は、媒体搬送部20、媒体密着部60、印刷部40
、乾燥ユニット27、ベルト移動量計測部70、洗浄ユニット50などを備えている。そ
して、これらの各部を制御する制御部1を有している。印刷装置100の各部は、フレー
ム部90に取り付けられている。
【0024】
媒体搬送部20は、媒体95を搬送方向に搬送するものである。媒体搬送部20は、媒
体供給部10、搬送ローラー22、搬送ベルト23、ベルト回転ローラー24、ベルト駆
動ローラー25、搬送ローラー26,28、及び媒体回収部30を備えている。まず、媒
体供給部10から媒体回収部30に至る媒体95の搬送経路について説明する。なお、本
実施形態では、重力に沿う方向をZ軸とし、印刷部40において媒体95が搬送される方
向をX軸とし、Z軸及びX軸の双方と交差する媒体95の幅方向をY軸とする。また、媒
体95の搬送方向又は搬送ベルト23の移動方向に沿う位置関係を「上流側」「下流側」
ともいう。
【0025】
媒体供給部10は、画像を形成させる媒体95を印刷部40側に供給するものである。
媒体95としては、例えば、綿、ウール、ポリエステルなどの布帛が用いられる。媒体供
給部10は、供給軸部11及び軸受部12を有している。供給軸部11は、円筒状又は円
柱状に形成されており、円周方向に回転可能に設けられている。供給軸部11には、帯状
の媒体95がロール状に巻かれている。供給軸部11は、軸受部12に対して着脱可能に
取り付けられている。これにより、予め供給軸部11に巻かれた状態の媒体95は、供給
軸部11と共に軸受部12に取り付けできるようになっている。
【0026】
軸受部12は、供給軸部11の軸方向の両端を回転可能に支持している。媒体供給部1
0は、供給軸部11を回転駆動させる回転駆動部(図示せず)を有している。回転駆動部
は、媒体95が送り出される方向に供給軸部11を回転させる。回転駆動部の動作は、制
御部1によって制御される。搬送ローラー22は、媒体95を媒体供給部10から搬送ベ
ルト23まで中継する。
【0027】
搬送ベルト23は、搬送ベルト23を回転させる少なくとも2つのローラー間に保持さ
れ、搬送ベルト23が回転移動することで媒体95を搬送方向(+X軸方向)に搬送させ
る。詳しくは、搬送ベルト23は、帯状のベルトの両端部が接続されて無端状に形成され
、ベルト回転ローラー24及びベルト駆動ローラー25の2つのローラー間に掛けられて
いる。搬送ベルト23は、ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25との間の部
分が水平になるように、所定の張力が作用した状態で保持されている。搬送ベルト23の
表面(支持面)23aには、媒体95を粘着させる粘着層29が設けられている。搬送ベ
ルト23は、搬送ローラー22から供給され、後述する媒体密着部60で粘着層29に密
着された媒体95を支持(保持)している。これにより、伸縮性のある布帛などを媒体9
5として扱うことができる。
【0028】
ベルト回転ローラー24及びベルト駆動ローラー25は、搬送ベルト23の内周面23
bを支持する。なお、ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25との間に、搬送
ベルト23を支持するローラーなどの支持部が設けられた構成であってもよい。
【0029】
ベルト駆動ローラー25は、搬送ベルト23を回転移動させる駆動部であり、ベルト駆
動ローラー25を回転駆動させるモーター(図示せず)を有している。駆動部としてのベ
ルト駆動ローラー25は、媒体95の搬送方向に対して印刷部40よりも下流側に設けら
れ、ベルト回転ローラー24は、印刷部40よりも上流側に設けられている。ベルト駆動
ローラー25が回転駆動されるとベルト駆動ローラー25の回転に伴って搬送ベルト23
が回転し、搬送ベルト23の回転によりベルト回転ローラー24が回転する。搬送ベルト
23の回転により、搬送ベルト23に支持された媒体95が搬送方向(+X軸方向)に搬
送され、後述する印刷部40で媒体95に画像が形成される。
【0030】
本実施形態では、搬送ベルト23の表面23aが印刷部40と対向する側(+Z軸側)
において媒体95が支持され、媒体95が搬送ベルト23と共にベルト回転ローラー24
側からベルト駆動ローラー25側に搬送される。また、搬送ベルト23の表面23aが洗
浄ユニット50と対向する側(−Z軸側)においては、搬送ベルト23のみがベルト駆動
ローラー25側からベルト回転ローラー24側に移動する。なお、搬送ベルト23は、媒
体95を密着させる粘着層29を備えているものと説明したが、これに限定するものでは
ない。例えば、搬送ベルトは、静電気で媒体をベルトに吸着させる静電吸着式のベルトで
あってもよい。
【0031】
搬送ローラー26は、画像の形成された媒体95を搬送ベルト23の粘着層29から剥
離させる。搬送ローラー26,28は、媒体95を搬送ベルト23から媒体回収部30ま
で中継する。
【0032】
媒体回収部30は、媒体搬送部20によって搬送された媒体95を回収する。媒体回収
部30は、巻取り軸部31及び軸受部32を有している。巻取り軸部31は、円筒状又は
円柱状に形成されており、円周方向に回転可能に設けられている。巻取り軸部31には、
帯状の媒体95がロール状に巻き取られる。巻取り軸部31は、軸受部32に対して着脱
可能に取り付けられている。これにより、巻取り軸部31に巻き取られた状態の媒体95
は、巻取り軸部31と共に取り外せるようになっている。
【0033】
軸受部32は、巻取り軸部31の軸線方向の両端を回転可能に支持している。媒体回収
部30は、巻取り軸部31を回転駆動させる回転駆動部(図示せず)を有している。回転
駆動部は、媒体95が巻き取られる方向に巻取り軸部31を回転させる。回転駆動部の動
作は、制御部1によって制御される。
【0034】
次に、媒体搬送部20に沿って設けられている媒体密着部60、ベルト移動量計測部7
0、印刷部40、乾燥ユニット27、洗浄ユニット50の各部について説明する。
【0035】
媒体密着部60は、媒体95を搬送ベルト23に密着させるものである。媒体密着部6
0は、印刷部40より上流側(−X軸側)に設けられている。媒体密着部60は、押圧ロ
ーラー61、押圧ローラー駆動部62及びローラー支持部63を有している。押圧ローラ
ー61は、円筒状又は円柱状に形成されており、円周方向に回転可能に設けられている。
押圧ローラー61は、搬送方向に沿った方向に回転するように、軸線方向が搬送方向と交
差するように配置されている。ローラー支持部63は、搬送ベルト23を挟んで押圧ロー
ラー61と対向する搬送ベルト23の内周面23b側に設けられている。
【0036】
押圧ローラー駆動部62は、押圧ローラー61を鉛直方向の下方側(−Z軸側)に押圧
しながら搬送方向(+X軸方向)、及び搬送方向と逆向きの方向(−X軸方向)に押圧ロ
ーラー61を移動させる。搬送ベルト23に重ね合された媒体95は、押圧ローラー61
とローラー支持部63との間で搬送ベルト23に押し当てられる。これにより、搬送ベル
ト23の表面23aに設けられている粘着層29に媒体95を確実に粘着させることがで
き、搬送ベルト23上での媒体95の浮きの発生を防止することができる。
【0037】
ベルト移動量計測部70は、媒体密着部60と印刷部40との間に設けられている。ベ
ルト移動量計測部70については、後で詳述する。
【0038】
印刷部40は、搬送ベルト23の配置位置に対して上方(+Z軸側)に配置され、搬送
ベルト23の表面23a上に載置された媒体95に印刷を行うものである。印刷部40は
、ヘッドユニット42、ヘッドユニット42が搭載されるキャリッジ43、キャリッジ4
3を搬送方向と交差する媒体95の幅方向(Y軸方向)に移動させるキャリッジ移動部4
5などを有している。本実施形態のヘッドユニット42は、4つのサブユニット42aで
構成され、さらに、サブユニット42aには、搬送ベルト23に載置された媒体95に図
示しないインク供給部から供給されたインク(例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブ
ラックなど)を液滴に吐出する複数の吐出ヘッド(図示せず)が備えられている。
【0039】
キャリッジ移動部45は、搬送ベルト23の上方(+Z軸側)に設けられている。キャ
リッジ移動部45は、Y軸方向に沿って延在する一対のガイドレール45a,45bを有
している。ガイドレール45a,45bは、搬送ベルト23の外側に垂直に設けられてい
るフレーム部90a,90bの間に架け渡されている。ヘッドユニット42は、キャリッ
ジ43と共にY軸方向に沿って往復移動可能な状態でガイドレール45a,45bに支持
されている。
【0040】
キャリッジ移動部45は、図示しない移動機構及び動力源を備えている。移動機構とし
ては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構な
どを採用することができる。さらに、キャリッジ移動部45は、キャリッジ43をガイド
レール45a,45bに沿って移動させるための動力源として、モーター(図示せず)を
有している。モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモータ
ーなどの種々のモーターを採用することができる。制御部1の制御によりモーターが駆動
されると、ヘッドユニット42は、キャリッジ43と共にY軸方向に沿って移動する。
【0041】
乾燥ユニット27は、搬送ローラー26と搬送ローラー28との間に設けられている。
乾燥ユニット27は、媒体95上に吐出されたインクを乾燥するものであり、乾燥ユニッ
ト27には、例えば、IRヒーターが含まれ、IRヒーターを駆動させることにより媒体
95上に吐出されたインクを短時間で乾燥させることができる。これにより、画像などの
形成された帯状の媒体95を巻取り軸部31に巻き取ることができる。
【0042】
洗浄ユニット50は、X軸方向においてベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー
25の間に配置されている。洗浄ユニット50は、洗浄部51、押圧部52及び移動部5
3を有している。移動部53は、床面99に沿って洗浄ユニット50を一体的に移動させ
て所定の位置に固定させる。
【0043】
押圧部52は、例えば、エアーシリンダー56とボールブッシュ57とで構成された昇
降装置であり、その上部に備えられている洗浄部51を搬送ベルト23の表面23aに当
接させるものである。洗浄部51は、ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25
との間で所定の張力が作用した状態で掛けられ、ベルト駆動ローラー25からベルト回転
ローラー24に向かって移動する搬送ベルト23の表面(支持面)23aを下方(−Z軸
方向)から洗浄する。
【0044】
洗浄部51は、洗浄槽54、洗浄ローラー58及びブレード55を有している。洗浄槽
54は、搬送ベルト23の表面23aに付着したインクや異物の洗浄に用いる洗浄液を貯
留する槽であり、洗浄ローラー58及びブレード55は洗浄槽54の内側に設けられてい
る。洗浄液としては、例えば、水や水溶性溶剤(アルコール水溶液など)を用いることが
でき、必要に応じて界面活性剤や消泡剤を添加させてもよい。
【0045】
洗浄ローラー58が回転すると、洗浄液が搬送ベルト23の表面23aに供給されると
共に、洗浄ローラー58と搬送ベルト23とが摺動する。これにより、搬送ベルト23に
付着したインクや媒体95としての布帛の繊維などが洗浄ローラー58で取り除かれる。
【0046】
ブレード55は、例えば、シリコンゴムなどの可撓性の材料で形成することができる。
ブレード55は、搬送ベルト23の搬送方向において洗浄ローラー58よりも下流側に設
けられている。搬送ベルト23とブレード55とが摺動することにより、搬送ベルト23
の表面23aに残っている洗浄液が除去される。
【0047】
図3は、ベルト移動量計測部の構成を示す斜視図である。
図4は、
図2におけるA−A
線での断面図である。次に、ベルト移動量計測部70の構成について
図2から
図4を参照
して説明する。
【0048】
ベルト移動量計測部70は、印刷部40の上流側に設けられ、搬送ベルト23の幅方向
(Y軸方向)における両端のいずれか一方の端に沿って設けられる。本実施形態のベルト
移動量計測部70は、搬送ベルト23の+Y軸側に設けられている。ベルト移動量計測部
70は、媒体95の搬送方向(X軸方向)に沿って長い直方体状の基台71、基台71の
上方に設けられているスケール貼付け部73、基台71上に設けられX軸方向に延在する
ガイドレール72に沿って移動する把持部80、把持部80を搬送方向の上流側に移動さ
せる戻し部76などを含んでいる。
【0049】
スケール貼付け部73は、基台71の長手方向(X軸方向)の両端に垂直に設けられて
いる柱部73a,73bの間に架け渡されている。スケール貼付け部73は、−Y軸方向
に庇状に突出する突出部を有し、その一部が平面視にて搬送ベルト23と重なっている。
スケール貼付け部73の突出部の下面(−Z軸側の面)には、媒体95の搬送方向に沿っ
てスケール部75が設けられている。本実施形態のスケール部75には、極性の異なる磁
石が交互に配置された磁気スケールが用いられている。
【0050】
本実施形態の把持部80は、印刷部40よりも搬送方向の上流側で搬送ベルト23を把
持する。把持状態の把持部80を搬送ベルト23と共に搬送方向に移動させるためにベル
ト駆動ローラー25を回転駆動した場合、搬送ベルト23は弾性を有しているため、搬送
ベルト23の回転移動方向においてベルト駆動ローラー25から把持部までの間で搬送ベ
ルト23に緩みが生じる恐れがある。印刷部40は、搬送ベルト23の回転移動方向にお
いて把持部80からベルト駆動ローラー25までの間に設けられているので、印刷部40
における搬送ベルト23の緩みによる影響を軽減できる。これにより、媒体95の搬送精
度が向上される。
【0051】
把持部80は、把持基板81、ガイドブロック82、検出部85などを含んでいる。把
持基板81は、搬送ベルト23の幅方向(Y軸方向)に長い長方形の板状をなしている。
把持基板81の−Y軸側の端部81cは、平面視にてスケール貼付け部73の−Y軸側の
側壁73cと略一致し、搬送ベルト23と重なっている。把持基板81の+Y軸側の端部
81dは、平面視にて基台71の+Y軸側の側壁71dよりも+Y軸方向に突出している
。把持基板81の底面(−Z軸側の面)には、ガイドブロック82が設けられている。ガ
イドブロック82には、凸状に突出するガイドレール72の形状に倣った、−Z軸側に開
口する凹状の溝が形成されている。ガイドブロック82とガイドレール72とが係合する
ことで、把持部80は搬送方向(X軸方向)に沿って往復移動可能に構成されている。
【0052】
把持部80は、少なくとも一部が弾性部材83によって構成されている。詳しくは、把
持基板81の上面(+Z軸側の面)には、弾性部材83が設けられている。弾性部材83
は、把持基板81よりも短い長方形の板状をなしている。弾性部材83の+Y軸側の端部
83dは、把持基板81の略中央で把持基板81と接合されている。弾性部材83の−Y
軸側の端部83cは、平面視にて把持基板81の−Y軸側の端部81cと略一致している
。把持基板81の端部81cと弾性部材83の端部83cとは、搬送ベルト23の厚さよ
りも僅かに広い隙間を有している。把持部80は、弾性部材83の弾性力によって把持基
板81の端部81cと弾性部材83の端部83cとの間で搬送ベルト23を挟持可能に構
成されている。弾性部材83は、炭素繊維又は炭素繊維を含む複合材料であることが好ま
しい。炭素繊維は、金属材料よりも比重が軽く、強度、弾性率や耐摩耗性に優れているの
で、把持部80の弾性部材83に求められる弾性と強度とを確保することができる。
【0053】
把持部80は、搬送ベルト23を把持して搬送ベルト23と共に移動する把持状態と、
搬送ベルト23を把持しない非把持状態とに状態変更可能になっている。詳しくは、把持
部80は、強磁性体84を有している。強磁性体84は、平面視にて搬送ベルト23と重
ならない弾性部材83の上面(+Z軸側の面)に設けられている。強磁性体84としては
、鉄、ニッケル、コバルトなどを用いることができる。
【0054】
また、把持部80の把持基板81の下面であって強磁性体84と対向する位置には、把
持部80を把持状態と非把持状態とに切り替える切替え部74が設けられている。切替え
部74は、電磁石を含んでおり、電磁石に電流が流れる場合に生じる磁力によって強磁性
体84が切替え部74(電磁石)に引き寄せられる。この時、弾性部材83が把持基板8
1側に弾性変形し、その弾性力によって搬送ベルト23が把持基板81と弾性部材83と
の間に把持される。これにより、把持部80は非把持状態から把持状態に状態変更される
。また、電磁石に流れる電流が遮断された場合、把持部80は把持状態から非把持状態に
状態変更される。したがって、切替え部74は、弾性部材83の弾性を利用して把持部8
0を把持状態と非把持状態とのうちの一方から他方に切り替える機能を有している。把持
部80は、切替え部74の電磁石と強磁性体84との簡単な構成で状態変更されるので、
切替え部74及び把持部80を小型化することができる。
【0055】
弾性部材83の端部83cの上面であって、スケール部75と対向する位置には、検出
部85が設けられている。検出部85は、磁界の変化を電気信号に変化する素子(例えば
、ホール素子やMR素子など)を備えており、スケール部75に対して相対的な移動量を
検出する。本実施形態の検出部85は、スケール部75に近接配置させるための台座の上
に設けられている。検出部85は、把持部80と一体に移動するように構成されているの
で、把持状態の把持部80が搬送ベルト23と共に移動する時に搬送ベルト23の移動量
を検出することができる。
【0056】
戻し部76は、非把持状態の把持部80を搬送方向と逆方向に移動させるものである。
戻し部76は、移動レバー78と、移動レバー78を搬送方向に沿って往復移動させるレ
バー移動部77とを含んでいる。レバー移動部77は、搬送方向に長い直方体形状をなし
、基台71の+Y軸側の側壁71dに固定されている。レバー移動部77の上面(+Z軸
側の面)及び下面(−Z軸側の面)には、搬送方向に延びる凹状のガイド溝が形成されて
いる。
【0057】
移動レバー78は、ガイド溝の形状に倣った凸状の突起を有する台座78aと台座78
aから鉛直方向(+Z軸方向)に延びる長柄部78bとを有している。移動レバー78は
、レバー移動部77のガイド溝に沿って往復移動可能に構成されている。レバー移動部7
7は、移動レバー78を搬送方向に往復移動させる図示しない移動機構を備えている。移
動機構としては、例えば、エアーシリンダーなどを採用することができる。移動レバー7
8が、レバー移動部77によって搬送方向の上流側に移動されると、移動レバー78の長
柄部78bと把持部80の把持基板81とが当接し、非把持状態の把持部80が搬送方向
と逆方向の上流側に戻される。これにより、把持状態の把持部80を搬送ベルト23と共
に繰り返し移動させることが可能となり、搬送ベルト23の移動量を検出部85で繰り返
し検出することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、検出部85が把持部80と一体で移動し、スケール部75が固
定された構成を示したが、スケール部が把持部と一体で移動し、検出部が固定された構成
であってもよい。
また、本実施形態では、スケール部75と検出部85との相対的移動量を磁界の変化に
よって求める所謂磁気式エンコーダーを例示したが、光学的変化によって移動量を求める
光学式エンコーダーであってもよい。
【0059】
<電気的構成>
図5は、印刷装置の電気的な構成を示す電気ブロック図である。次に、印刷装置100
の電気的構成について
図5を参照して説明する。
【0060】
印刷装置100は、印刷条件などが入力される入力装置6や印刷装置100の各部の制
御を行う制御部1などを備えている。入力装置6としては、デスクトップ型あるいはラッ
プトップ型のパーソナルコンピューター(PC)や、タブレット型端末、携帯型端末等を
使用することができる。入力装置6は、印刷装置100と別体で設けられていてもよい。
【0061】
制御部1は、インターフェイス部(I/F)2、CPU(Central Processing Unit)
3、記憶部4、制御回路5などを含んで構成されている。インターフェイス部2は、入力
信号や画像を取り扱う入力装置6と制御部1との間でデータの送受信を行うためのもので
ある。CPU3は、検出部85を含む各種の検出器群7からの入力信号処理や、印刷装置
100の印刷動作の制御を行うための演算処理装置である。例えば、CPU3は、検出部
85から出力されCPU3に入力された入力信号から搬送ベルト23の移動量を算出する
。
記憶部4は、CPU3のプログラムを格納する領域や作業領域などを確保するための記
憶媒体であり、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasabl
e Programmable Read Only Memory)などの記憶素子を有している。
【0062】
制御部1は、制御回路5から出力する制御信号によってヘッドユニット42に備えられ
ている吐出ヘッドの駆動を制御して媒体95に向かってインクを吐出させる。制御部1は
、制御回路5から出力する制御信号によってキャリッジ移動部45に備えられているモー
ターの駆動を制御してヘッドユニット42が搭載されているキャリッジ43を主走査方向
(Y軸方向)に往復移動させる。制御部1は、制御回路5から出力する制御信号によって
ベルト駆動ローラー25に備えられているモーターの駆動を制御して搬送ベルト23を回
転移動させる。これにより、搬送ベルト23上に載置された媒体95が搬送方向(+X軸
方向)に移動される。
【0063】
制御部1が、キャリッジ移動部45及びヘッドユニット42を制御して吐出ヘッドから
インクを吐出させながらヘッドユニット42(キャリッジ43)を移動させる主走査と、
ベルト駆動ローラー25を制御して媒体95を搬送方向に搬送させる副走査と、を交互に
繰り返す印刷動作によって媒体95に画像などが形成される。
【0064】
制御部1は、制御回路5から出力する制御信号によって切替え部74に備えられている
電磁石に流す電流を制御して把持部80を把持状態と非把持状態とに切り替える。制御部
1は、制御回路5から出力する制御信号によってレバー移動部77の移動機構を制御して
移動レバー78を搬送方向に沿って往復移動させる。また、制御部1は、図示しない各装
置を制御する。
【0065】
<印刷方法>
図6は、印刷方法を説明するフローチャート図である。次に、印刷装置100の印刷方
法について
図6を参照して説明する。
【0066】
ステップS1は、印刷データを受信する印刷データ受信工程である。制御部1は、入力
装置6から媒体95に画像を記録する印刷データを受信し記憶部4に格納する。
【0067】
ステップS2は、把持部80を搬送ベルト23に把持させる把持工程である。制御部1
は、切替え部74の電磁石に電流を流して電磁石に磁力を発生させる。これにより、把持
部80は、把持状態となり搬送ベルト23を把持する。
【0068】
ステップS3は、搬送ベルト23を搬送方向に搬送させる副走査工程である。制御部1
は、ベルト駆動ローラー25を制御して把持状態の把持部80を搬送ベルト23と共に移
動させる。そして、制御部1は、検出部85で検出される移動量にしたがって、把持部8
0が、第1位置(初期位置)から第1位置よりも搬送方向の下流側に位置する第2位置ま
で移動した場合に搬送ベルト23の回転を停止させる。なお、最初の副走査工程では、第
1位置と第2位置との間隔は印刷動作を開始させる所定位置までの搬送量である。2回目
以降の副走査工程では、第1位置と第2位置との間隔は印刷動作中の改行量である。
【0069】
ステップS4では、搬送ベルト23の位置ずれ量は許容範囲内かを判定する。搬送ベル
ト23は、弾性を有しているため、搬送ベルト23の移動を停止した後に僅かな位置ずれ
を生じる恐れがある。このため、制御部1は、搬送ベルト23の移動を停止させた後、検
出部85での検出結果に基づいて第1位置からの搬送ベルト23の実移動量を再確認する
。そして、制御部1は、第1位置と第2位置との間隔と、搬送ベルト23の実移動量とを
比較して搬送ベルト23の位置ずれ量を算出し、搬送ベルト23の位置ずれ量が所定の許
容範囲内かを判定する。搬送ベルト23の位置ずれ量が許容範囲内(ステップS4:Ye
s)の場合は、ステップS6に進む。搬送ベルト23の位置ずれ量が許容範囲外(ステッ
プS4:No)の場合は、ステップS5に進む。
【0070】
ステップS5では、搬送ベルト23の位置を調整するベルト位置調整工程である。制御
部1は、ステップS4で算出した位置ずれ量に基づいて、ベルト駆動ローラー25を制御
して搬送ベルト23の送り動作又は戻し動作を行い搬送ベルト23の位置を修正する。こ
こで、送り動作は搬送ベルト23を搬送方向に移動させる動作であり、戻し動作は搬送ベ
ルト23を搬送方向と逆方向に移動させる動作である。なお、送り動作及び戻し動作にお
ける搬送ベルト23の移動量は、印刷動作の副走査における搬送ベルト23移動量よりも
微小な量となる場合が多い。ステップS4及びステップS5によって、制御部1は検出部
85の検出された移動量に基づいて搬送ベルト23の位置を調整する調整動作を実行する
。これにより、搬送ベルト23の位置ずれが修正されるので、次ステップで吐出されるイ
ンクが媒体95上に着弾する位置の精度が向上する。
【0071】
ステップS6は、媒体95に向かってインクを吐出する主走査工程である。制御部1は
ヘッドユニット42及びキャリッジ移動部45を制御して、ヘッドユニット42の搭載さ
れたキャリッジ43を搬送方向と交差する媒体95の幅方向(Y軸方向)に移動させなが
らヘッドユニット42から媒体95に向かってインクを吐出する主走査を行う。
【0072】
ステップS7は、搬送ベルト23を把持している把持部80を非把持状態にさせる非把
持工程である。制御部1は、切替え部74の電磁石に流れていた電流を遮断して電磁石の
磁力を消磁させる。これにより、把持部80は、非把持状態となる。
【0073】
ステップS8は、戻し部76を搬送方向の上流側に戻す戻し工程である。制御部1は、
レバー移動部77を制御して把持部80よりも搬送方向の下流側の所定位置に待機してい
る移動レバー78を搬送方向の上流側に移動させる。これにより、把持部80と移動レバ
ー78とが当接し、第2位置に位置している非把持状態の把持部80が第1位置に戻され
る。これにより、把持状態の把持部80を搬送ベルト23と共に第1位置から第2位置へ
繰り返し移動させることができる。その後、移動レバー78は、第2位置よりも搬送方向
の下流側に移動され、所定位置に待機する。したがって、ステップS3において、把持状
態の把持部80が搬送ベルト23と共に移動する際、戻し部76の移動レバー78は把持
部80と離間しているので、戻し部76が搬送ベルト23の回転駆動に負荷を与えること
を抑制することができる。なお、説明の便宜上、ステップS6の主走査工程からステップ
S8の戻し工程までを異なるステップで説明したが、ステップS7及びステップS8はス
テップS6と略同時に行われる。
【0074】
ステップS9では、次行の印刷データがあるかを判断する。制御部1は、記憶部4に格
納されている印刷データを参照して次行の印刷データがあるかを判断する。次行の印刷デ
ータがある場合(ステップS9:Yes)は、ステップS2に戻りステップS2からステ
ップS9を繰り返す。これにより、主走査と副走査とが繰り返され媒体95に画像などが
印刷される。次行の印刷データがない場合(ステップS9:No)は、制御部1は、印刷
装置100の印刷動作を終了する。
【0075】
なお、本実施形態では、ステップS4及びステップS5によって検出部85で検出され
た移動量に基づいて搬送ベルト23の位置を調整する調整動作を実行可能な印刷方法を示
したが、この調整動作を行うか否か(ON/OFF)は、受信した印刷データ(印刷画質
)に応じて制御部1に判断させるようにしてもよい。また、印刷装置100は、ユーザー
に調整動作のON/OFFを選択させる機能を備えた構成であってもよい。調整動作を行
うことで画質は向上するが、印刷スピードが低下するので、要求される画質に応じて、調
整動作の実行可否を決定することで、好適に印刷装置100を制御することができる。ま
とめると、制御部1は、調整動作を実行するか否かを切り替えることができる構成でもよ
い。そして、調整動作を実行するか否かの切り替えは、制御部1によって自動で行っても
よいし、ユーザーが手動で行ってもよい。これにより、要求される画質に応じて、好適に
印刷装置100を制御することができる。
【0076】
本実施形態では、1度の副走査工程及び主走査工程ごとに戻し工程を行うフローを示し
たが、副走査工程及び主走査工程を複数回繰り返した後に、把持部80が複数回で移動し
た移動量を1度の戻し工程で戻すフローとしてもよい。
また、本実施形態では、ステップS3の後にステップS4及びS5を実行する構成とし
たが、ステップS3を行っている間に並行してステップS4及びS5を実行する構成とし
てもよい。すなわち、搬送ベルト23を搬送方向に搬送させている間に、搬送ベルト23
の位置ずれ量が許容範囲内か否かを判定すること、及び搬送ベルト23の位置を調整する
こと、を実行してもよい。このようにすれば、搬送ベルト23の移動量を、搬送ベルト2
3が移動している間にリアルタイムで調整することができる。
【0077】
以上述べたように、本実施形態に係る印刷装置100によれば、以下の効果を得ること
ができる。
印刷装置100のベルト移動量計測部70は、搬送ベルト23を把持する把持部80と
、把持部80を把持状態と非把持状態とに状態変更させる切替え部74とを有している。
把持部80の一部は弾性部材83によって構成され、切替え部74は、弾性部材83の弾
性を利用して把持部80を状態変更させるので、把持部80及び切替え部74を簡素な構
成にすることができる。これにより、印刷装置100の小型化が図れる。
【0078】
弾性部材83は、炭素繊維又は炭素繊維を含む複合材料で形成されている。炭素繊維は
、金属材料よりも比重が軽く、強度、弾性率や耐摩耗性に優れているので、把持部80の
弾性部材83に求められる弾性と強度とを確保することができる。
把持部80は磁石に吸着する強磁性体84を弾性部材83の上に備え、電磁石を含む切
替え部74は弾性部材83及び把持基板81を介して強磁性体84と対向する位置に設け
られている。電磁石に電流が流れる場合に生じる磁力によって強磁性体84が切替え部7
4(電磁石)に引き寄せられることで、把持部80は搬送ベルト23を把持する。把持部
80は、切替え部74の電磁石と強磁性体84との簡単な構成で状態変更が可能なので、
切替え部74及び把持部80を小型化することができる。
【0079】
搬送ベルト23のベルト駆動ローラー25は印刷部40よりも下流側に設けられ、把持
部80は印刷部40より上流側で搬送ベルト23を把持する。把持状態の把持部80を搬
送ベルト23と共に搬送方向に移動させるためにベルト駆動ローラー25を回転駆動した
場合、搬送ベルト23の回転移動方向においてベルト駆動ローラー25から把持部80ま
での間で搬送ベルト23に緩みが生じる恐れがある。印刷部40は、搬送ベルト23の回
転移動方向において把持部80からベルト駆動ローラー25までの間に設けられているの
で、印刷部40における搬送ベルト23の緩みによる影響が軽減され、媒体95の搬送精
度が向上される。
【0080】
制御部1は、検出部85で検出された移動量に基づき搬送ベルト23の位置を調整する
調整動作を実行する。これにより、搬送ベルト23の位置ずれが修正されるので、インク
が媒体95に着弾する位置精度を向上させることができる。
ベルト移動量計測部70は、非把持状態の把持部80を搬送方向の上流側に移動させる
戻し部76を有している。非把持状態の把持部80は、戻し部76によって下流側から上
流側に戻される。これにより、把持状態の把持部80を搬送ベルト23と共に繰り返し移
動させることが可能となり、搬送ベルト23の移動量を検出部85で繰り返し検出するこ
とができる。
把持状態の把持部80が搬送ベルト23と共に移動する際、戻し部76の移動レバー7
8は把持部80と離間しているので、戻し部76が搬送ベルト23の回転駆動に負荷を与
えることを抑制することができる。