(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6926897
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】着座用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/64 20060101AFI20210812BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20210812BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20210812BHJP
A47C 7/14 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
B60N2/64
B60N2/90
A47C7/40
A47C7/14
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-186679(P2017-186679)
(22)【出願日】2017年9月27日
(65)【公開番号】特開2019-59397(P2019-59397A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐孝 寛
(72)【発明者】
【氏名】川野 健二
【審査官】
西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−135835(JP,A)
【文献】
特開2002−199963(JP,A)
【文献】
特開2009−160111(JP,A)
【文献】
国際公開第02/052991(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第04405595(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 7/00− 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者を支える着座面を備える着座用シートであって、
前記着座面を形成するようにマトリックス状に複数個並べて設けられ、当該着座用シートの支持部材に対するそれぞれの支持点を中心に各方向へ揺動自在に継手を介して支持されたブロック体と、
前記各ブロック体を互いに連結し、前記着座面に対向する方向に変形自在とされた連結体とを備え、
前記各ブロック体間に形成される前記着座面上の隙間を埋めるように前記ブロック体に隣接して配置され、前記着座面に沿って設けられた支持面体を備え、
該支持面体は、前記各ブロック体と同様に前記連結体により連結して支持されている着座用シート。
【請求項2】
請求項1において、
前記連結体は、前記各ブロック体を連結する方向に伸縮自在の弾性体により構成されている着座用シート。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記各ブロック体又は前記各ブロック体及び前記支持面体は、前記連結体に対し、前記各ブロック体を連結する方向に移動自在に支持する通路を備える着座用シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記各ブロック体又は前記各ブロック体及び前記各支持面体は、それらに対応する位置で互いに交差するように設けられた複数本の前記連結体により支持されている着座用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、飛行機、船、電車等の乗物、若しくは映画館等で使用される着座用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
着座者毎の体格や体形の違いに合わせるようにシートの形状を調整する技術が各種提案されている。特許文献1には、体形の違いに対応するためのシートが提案されている。特許文献1の技術は、着座者の脊柱部分は高剛性の支持部材により支持し、その周辺部分は低剛性の支持部材により支持する構成としている。周辺部分では、着座者の体形に沿って支持部材が変形するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−144660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術は、着座者の支持は脊柱部分にて行い、周辺部分では着座者の支持を行わない思想で構成されている。そのため、着座者の体形に合わせて周辺部分の支持部材を変形させようとすると、周辺部分の支持部材の剛性は充分に低くする必要があり、周辺部分での着座者の支持を安定して行うことができない問題が生じる。
【0005】
本発明の課題は、着座者を支える着座面を備える着座用シートにおいて、着座者を支持する機能と着座者の体形に合わせて変形する機能とを、着座面内で領域毎に分離することなく、一つの領域内で両機能を併せ持たせることにある。それにより、着座者の支持を不安定にすることなく、着座者の体形の違いに合わせて着座面の形状を調整可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、着座者を支える着座面を備える着座用シートであって、前記着座面を形成するようにマトリックス状に複数個並べて設けられ、当該着座用シートの支持部材に対するそれぞれの支持点を中心に各方向へ揺動自在に継手を介して支持されたブロック体と、前記各ブロック体を互いに連結し、前記着座面に対向する方向に変形自在の連結体とを備える。
【0007】
第1発明において、着座面は、座部を成すシートクッション及び背凭れを成すシートバックのいずれか一方、若しくは両方の着座面である。継手は、ボールジョイント、ユニバーサルジョイント等により構成することができる。連結体は、紐状又は帯状のものとすることができる。また、連結体は、布、樹脂、金属等の各種材料を使用することができる。各ブロック体の着座面を成す側には、表皮材及びクッションパッドが被せられてもよい。
【0008】
第1発明によれば、複数個のブロック体により着座面が複数領域に分割され、それらのブロック体が支持部材に支持された状態で自由に揺動する。そのため、着座者の支持を不安定にすることなく、着座者の体形の違いに合わせて着座面の形状を調整可能とすることができる。
【0009】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記各ブロック体間に形成される前記着座面上の隙間を埋めるように前記ブロック体に隣接して配置され、前記着座面に沿って設けられた支持面体を備え、該支持面体は、前記各ブロック体と同様に前記連結体により連結して支持されている。
【0010】
第2発明において、支持面体は、ブロック体に対して任意の配置及び個数とすることができる。
【0011】
第2発明によれば、ブロック体間の隙間を支持面体により埋めるので、ブロック体の数を多くすることなく着座面を滑らかな面とすることができる。
【0012】
本発明の第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記連結体は、前記各ブロック体を連結する方向に伸縮自在の弾性体により構成されている。
【0013】
第3発明において、連結体の伸縮弾性率は、着座面内の場所によって変更することができる。
【0014】
第3発明によれば、連結体が弾性体により構成されているため、連結体の伸縮により各ブロック体又は各ブロック体及び支持面体が着座者の体形に応じて動き易くなり、着座面の形状を着座者の体形に合わせ易くなる。
【0015】
本発明の第4発明は、上記第1〜第3発明のいずれかにおいて、前記各ブロック体又は前記各ブロック体及び前記支持面体は、前記連結体に対し、前記各ブロック体を連結する方向に移動自在に支持する通路を備える。
【0016】
第4発明によれば、各ブロック体又は各ブロック体及び支持面体は、連結体に対し移動自在とされているため、各ブロック体又は各ブロック体及び支持面体が着座者の体形に応じて動き易くなり、着座面の形状を着座者の体形に合わせ易くなる。
【0017】
本発明の第5発明は、上記第1〜第4発明のいずれかにおいて、前記各ブロック体又は前記各ブロック体及び前記各支持面体は、それらに対応する位置で互いに交差するように設けられた複数本の前記連結体により支持されている。
【0018】
第5発明によれば、各ブロック体又は各ブロック体及び支持面体は、それらに対応する位置で互いに交差する連結体により支持されるため、各ブロック体又は各ブロック体及び支持面体は、交差方向で着座者の体形の違いに合わせて変形する着座面を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】上記実施形態におけるシートバックの主要部の縦断面図である。
【
図3】上記実施形態におけるシートバックの主要部の拡大斜視図である。
【
図4】上記実施形態における一つの伸縮体の分解斜視図である。
【
図5】上記実施形態における一つの支持面体の分解斜視図である。
【
図6】上記実施形態における制御回路のブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<全体構成>
各図は、本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、自動車用シート(本発明の着座用シートに相当する。以下、単にシートという)に本発明を適用した例である。各図中、矢印によりシートを自動車に搭載した状態における各部の方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
【0021】
図1のように、シート1は、座部を成すシートクッション3と背凭れを成すシートバック2とを備える。シートクッション3の上面及びシートバック2の前面は、着座者を支える着座面となる。着座面は、複数列・複数行のマトリックス状に複数個並べて設けられた伸縮体10の先端部及び伸縮体10に隣接して配置された支持面体21の先端部により形成されている。
【0022】
<伸縮体10の構成>
図2、4のように、伸縮体10は、ロッド12の先端部を支持点として、ここを中心にブロック体14が継手13により各方向へ揺動自在に結合されて成る。ロッド12は、その基端部(図示略)がケース11内に格納されていて、ケース11内に設けられたモータ(図示略)によりロッド12と共にブロック体14が前後方向に移動可能に構成されている。即ち、伸縮体10は、前後方向に伸縮自在とされている。また、継手13は、ボールジョイントとされており、継手13の球状部13aがブロック体14のソケット部14d内に滑動自在に嵌合されて成る。
【0023】
また、ブロック体14の先端部には、クッション体15を挟んだ状態でカバー体16が固定されている。カバー体16は、概ね6面体の容器形状とされており、容器形状の内部にクッション体15を挿入した状態で、容器形状の開放縁部がブロック体14の先端部の周囲を巡る溝14cに嵌合して、ブロック体14に固定されている。カバー体16は、着座者の座圧を受けて前後方向に潰れるように変形可能とされており、着座者にクッション体15によるクッション感を与えるようにされている。なお、カバー体16は、着座者との間の摩擦抵抗を低減するため、摩擦抵抗の小さい樹脂により構成されている。勿論、カバー体16の材質がこれに限定されるものではない。また、カバー体16を設けず、クッション体15をブロック体14の先端に接着等にて直接固定してもよい。
【0024】
<支持面体21の構成>
図3のように、ブロック体14は、着座面上で互いに間隔をあけて配置されており、着座面に沿う方向でブロック体14の周りには、支持面体21が配置されている。
図5のように、支持面体21は、その先端部にクッション体22を挟んだ状態でカバー体23が固定して構成されている。この支持面体21とクッション体22とカバー体23との組合せ方は、ブロック体14とクッション体15とカバー体16との組合せ方と同じである。
図5の溝21cは、
図4の溝14cに対応している。支持面体21は、ブロック体14同士の間に形成される着座面上の隙間を埋めるようにブロック体14の周りを囲んで配置されている。なお、
図3は、ブロック体14及び支持面体21の先端部にカバー体16、23を被せない状態で示している。
【0025】
<帯体(連結体)30、40による連結構成>
図2〜5のように、各ブロック体14及び各支持面体21は、シートバック2及びシートクッション3の着座面に沿って上下方向及び左右方向に張設された複数本の帯体30、40(本発明の連結体に相当する)により互いに連結されている。図示は省略したが、各帯体30、40は、各端部がシートバック2及びシートクッション3の骨格部材に弛みのない状態で固定されている。各帯体30、40は、長手方向に伸縮可能な柔軟な布帯により構成されている。そのため、各帯体30、40は、着座面に対向する方向に変形自在とされている。
【0026】
図4、5のように、各ブロック体14及び各支持面体21には、帯体30が貫通する通路14a、21aが設けられ、帯体40が貫通する通路14b、21bが設けられている。各通路14a、21a、14b、21bは、前後方向で互いにずれた位置にあって、シートバック2の前方視及びシートクッション3の上方視で互いに直交する方向に構成されている。従って、
図3のように各ブロック体14及び各支持面体21がシートバック2及びシートクッション3の着座面に沿って並べられた状態で各帯体30、40が各通路14a、21a、14b、21bに貫通されると、各帯体30、40は、各ブロック体14及び各支持面体21に対応する位置で交差することになり、各ブロック体14及び各支持面体21は、各帯体30、40により互いに連結された状態となる。
【0027】
<動作説明>
図6のように、伸縮体10のロッド12を動作させるモータ53は、制御回路51に接続されて動作される。一方、制御回路51には、入力操作部52から制御回路51の動作を制御するための信号が入力されている。入力操作部52では、着座者の体格情報が入力される。ここでの入力は、例えば、体の大きさが大、中、小の区別で入力される。勿論、体格の入力の仕方としては、実際の着座者の体格を測定して入力するなど他の方法を採用することも可能である。
【0028】
入力操作部52の入力に基づいて制御回路51では、各モータ53を動作させて各伸縮体10のブロック体14の位置を着座者の体格に応じた位置に移動する。その結果、シートバック2及びシートクッション3の着座面は、着座者の体格に応じた形状とされる。
【0029】
伸縮体10のブロック体14は、継手13により揺動自在とされているため、着座者の体形に沿って揺動される。このとき、各支持面体21は、各帯体30、40により各ブロック体14及び隣接する支持面体21に連結されている。そのため、各支持面体21は、隣接するブロック体14同士を滑らかに繋ぐ位置に移動される。その結果、シートバック2及びシートクッション3の着座面は、伸縮体10のブロック体14の位置によって着座者の体格に応じた形状とされ、しかも各伸縮体10のブロック体14及び各支持面体21の傾きにより着座者の体形に沿って滑らかに連続した形状とされる。
【0030】
<作用効果>
上記実施形態によれば、着座面を形成するようにマトリックス状に配置された複数の伸縮体10が着座者の体格に応じて伸縮する。そのため、着座者の体格の違いに合わせて着座面の一部のみならず着座面全体を調整可能とすることができる。
【0031】
伸縮体10のブロック体14がクッション体15を介してカバー体16により覆われている。そのため、着座者が伸縮体10のブロック体14に直接触れる場合に比べて着座感を柔らかくすることができる。また、カバー体16が摩擦抵抗の小さい樹脂により構成されているため、着座者との間の摩擦抵抗を低減して着座者が着座面上で体を動かし易くすることができる。
【0032】
伸縮体10のブロック体14が着座面上で互いに離間していて、その離間による隙間が形成されていても、隙間を帯体30、40により繋ぎ、支持面体21により隙間を埋めている。そのため、伸縮体10の数を多くすることなく着座面を凹凸の少ない滑らかな面とすることができる。また、各伸縮体10のブロック体14が帯体30、40によって連結されるため、各伸縮体10の基端部の支持部材1aへの支持強度を強くしなくても、各伸縮体10のブロック体14がぐらつくことを抑制することができる。
【0033】
複数個の伸縮体10により着座面が複数領域に分割され、それらの伸縮体10が支持部材1aに支持された状態でブロック体14が自由に揺動する。そのため、着座者の支持を不安定にすることなく、着座者の体形の違いに合わせて着座面の形状を調整可能とすることができる。
【0034】
帯体30、40が弾性体により構成されているため、帯体30、40の伸縮により各ブロック体14及び支持面体21が着座者の体形に応じて動き易くなり、着座面の形状を着座者の体形に合わせ易くなる。
【0035】
各ブロック体14及び支持面体21は、各通路14a、21a、14b、21bにより帯体30、40に対し移動自在とされている。そのため、各ブロック体14及び支持面体21が着座者の体形に応じて動き易くなり、着座面の形状を着座者の体形に合わせ易くなる。
【0036】
各ブロック体14及び支持面体21は、それらに対応する位置で交差する帯体30、40により支持されている。そのため、各ブロック体14及び支持面体21は、交差方向で着座者の体形の違いに合わせて変形する着座面を形成することができる。
【0037】
<他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明を自動車のシートに適用したが、飛行機、船、電車等の乗物に搭載されるシート、若しくは映画館等で使用されるシートに適用しても良い。
【0038】
上記実施形態では、着座面に伸縮体10の先端のカバー体16及び支持面体21の先端のカバー体23が露出する構成としたが、それらが露出しないように、各カバー体16、23を全体として覆うようにシートカバーを被せてもよい。その際、シートカバーの裏面側にはクッション性を備えたパッドが一体又は別体として備えられていてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 自動車用シート(着座用シート、シート)
1a 支持部材
2 シートバック
3 シートクッション
10 伸縮体
11 ケース
12 ロッド
13 継手
13a 球状部
14 ブロック体
14a 通路
14b 通路
14c 溝
14d ソケット部
15 クッション体
16 カバー体
21 支持面体
21a 通路
21b 通路
21c 溝
22 クッション体
23 カバー体
30 帯体(連結体)
40 帯体(連結体)
51 制御回路
52 入力操作部
53 モータ