【文献】
ABHISHEK REGE ET AL,Multiexposure laser speckle contrast imaging of the angiogenic microenvironment,JOURNAL OF BIOMEDICAL OPTICS,2011年 5月,16(5),0056006-1 − 00560006-10
【文献】
LI P ET AL,IMAGINING CEREBRAL BLOOD FLOW THROUGH THE INTACT RAT SKULL WITH TEMPORAL LASER SPECKLE IMAGING,OPTICS LETTERS,OPTICAL SOCIETY OF AMERICA,2006年 6月15日,vol. 31, no. 12,1824-1826
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コヒーレント光が照射された撮像対象から得られる散乱光を、撮像素子を用いて複数回撮像することにより得られた複数枚のスペックル画像の輝度を積算する輝度積算部と、
前記輝度積算部で積算したスペックル積算画像に基づいて、スペックルパターンのコントラストを算出するコントラスト算出部と、を備え、
前記コントラスト算出部は、前記スペックル積算画像の局所的な画像領域における輝度の分散値及び平均値を求め、求めた輝度の分散値及び平均値に基づいて、スペックルパターンのコントラストを算出する、情報処理装置。
前記複数枚のスペックル画像の露光時間を積算した積算露光時間と、前記コントラスト算出部で算出したスペックルパターンのコントラストとに基づいて、前記撮像対象の流体速度を算出する流体速度算出部を更に備える請求項1に記載の情報処理装置。
前記流体速度算出部は、前記積算露光時間と前記スペックルパターンのコントラストに基づいて相関時間を求め、求めた相関時間と、予め定められた相関時間とを比較することによって、前記流体速度を算出する請求項2に記載の情報処理装置。
コヒーレント光が照射された撮像対象から得られる散乱光を、撮像素子を用いて複数回撮像することにより得られた複数枚のスペックル画像の輝度を積算する輝度積算ステップと、
前記輝度積算ステップで積算したスペックル積算画像に基づいて、スペックルパターンのコントラストを算出するコントラスト算出ステップと、を少なくとも行い、
前記コントラスト算出ステップにおいて、前記スペックル積算画像の局所的な画像領域における輝度の分散値及び平均値を求め、求めた輝度の分散値及び平均値に基づいて、スペックルパターンのコントラストを算出する、情報処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、本開示の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本開示の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1実施形態(情報処理装置1)
(1)輝度積算部11
(2)コントラスト算出部12
(3)流体速度算出部13
(4)表示制御部
(5)演算のフロー例
2.第2実施形態(スペックルイメージングシステム10)
(1)光源14
(2)撮像装置15
(3)表示装置16
(4)記憶装置17
(5)撮像対象O
(6)スペックルイメージングの第1フロー例
(7)スペックルイメージングの第2フロー例
3.第3実施形態(情報処理方法)
4.ハードウェア構成
【0014】
<1.第1実施形態(情報処理装置1)>
図1は、本開示の第1実施形態に係る情報処理装置1を模式的に示す模式概念図である。本開示に係る情報処理装置1は、大別して、輝度積算部11、コントラスト算出部12、及び流体速度算出部13を備える。必要に応じて、表示制御部などを更に備えることも可能である。以下、各部について詳細に説明する。
【0015】
(1)輝度積算部11
輝度積算部11は、コヒーレント光が照射された撮像対象から得られる散乱光を、撮像素子を用いて複数回撮像することにより得られた複数枚のスペックル画像の輝度を積算する。
【0016】
(2)コントラスト算出部12
コントラスト算出部12は、前記輝度積算部11で積算したスペックル積算画像に基づいて、スペックルパターンのコントラストを算出する。本開示では、非侵襲、非接触で血流を測定する前提としてスペックルパターンのコントラストが算出される。血液のような散乱体が移動する部分では、スペックルが変化してしまい、輝度の濃淡は低下する。この濃淡の低下具合の指標の一つとしてスペックルパターンのコントラストがある。スペックルパターンのコントラストKは、輝度値をIとすると、以下の式で定義される。
【数1】
【0017】
ここでは、濃淡の低下具合の指標として、スペックルコントラストを挙げたが、この指標はスペックルコントラストに限定するものではない。
【0018】
スペックルコントラストKは、相関時間τcと露光時間Tに依存する。従来、流速を測定する方法として、Multi Exposure Speckle Contrastなどが提案されている(
図2参照)。
図2は、露光時間とスペックルコントラストと流速の関係を示すグラフである。
図2に示されるように、従来の方法(Multi-exposure speckle imaging法)では、露光時間を変えて様々な値に振って測定する必要があった。
【0019】
相関時間τcは、流速や粘性と相関がある物理量であり、流速が速いと小さい値になり、流速が遅いと大きい値になる。上述のように、従来のMulti-exposure speckle imaging法において、スペックルコントラストから流速を求めるには、露光時間を変えて様々な値に振って測定する必要があった。これに対し、本開示では、従来のMulti-exposure speckle imaging法より少ない露光時間のパターンによって流速を算出できるようにした。
【0020】
本開示に係るコントラスト算出部12は、スペックル積算画像の局所的な画像領域における輝度の分散値及び平均値を求め、求めた輝度の分散値及び平均値に基づいて、スペックルコントラストを算出する。コントラスト算出部12は、前記求めた輝度の分散値の平方根をとることで輝度の標準偏差を算出し、上記の式(1)に前記求めた輝度の標準偏差及び平均値を代入することによって、スペックルコントラストを算出する。
【0021】
(3)流体速度算出部13
流体速度算出部13は、前記複数枚のスペックル画像の露光時間を積算した積算露光時間と、前記コントラスト算出部12で算出したスペックルパターンのコントラストとに基づいて、前記撮像対象の流体速度を算出する。前記流体速度は、例えば、血管内における血流速度である。前記複数枚のスペックル画像は、10ms以下の露光時間で撮像された画像である。
【0022】
露光時間の上限値を10msに設定するメリットについては、血流の場合、露光時間15ms程度で撮影すると、1mm/sec程度でスペックルコントラスト(スペックルの分散)が小さくなる。そのため、スペックルコントラストを積算しても値は変わらない。測定したい血流程度の流速では、露光時間10msの場合、既にスペックルの分散が下がっているため、積算のメリットが出にくくなるからである。
【0023】
図2のグラフより10
−3sec,10
−4secの場合、それぞれの流速のスペックルバリアンスの値が十分下がりきっていないので、スペックルコントラストを積算することの効果が現れる。一方、10
−2secよりも大きい値になると、スペックルバリアンスの値が下がりきっていて、積算する効果が得られない。そのため、露光時間を10
−3sec以下,や、10
−4sec程度に設定されることが好ましい。
【0024】
上述のように、流体速度算出部13は、積算露光時間を用いて血流速度を算出する。一般に、露光時間の長さに依存して血流の流速感度は異なる。露光中に血液が移動していないように見えるほど短い露光時間で撮像したスペックル画像を平均した画像から、その領域の血流速度を求めることができる。たとえば、2枚、…、10枚、…、100枚、…、1000枚、…の平均画像からは、その露光時間の2倍、…、10倍、…、100倍、…、1000倍、…で撮像したのとほぼ等価の画像が得られる。
【0025】
流体速度算出部13は、得られた画像の局所的なスペックルパターンのコントラストKと、積算露光時間Tとを下記の式(2)に代入することによって、相関時間τcを求める。
【数2】
【0026】
流体速度算出部13は、前記積算露光時間と前記スペックルコントラストに基づいて相関時間を求め、求めた相関時間と、予め定められた相関時間とを比較することによって、血流速度を算出する。なお、予め定められた相関時間とは、検量線から得られた相関時間や、予め取得しておいた相関時間である。なお、相関時間を予め測定していない場合は、プロットで得られた相関時間を直接比較することで相対的な流速を求めることができる。
【0027】
上記式(2)以外にも、露光時間、スペックルコントラスト、及び、相関時間の関係を示す下記の式(3)を用いることができる。式(3)のβは、既知の流速の血流をプロットした際に決定した値を用いることができる。
【数3】
【0028】
(4)表示制御部
表示制御部は、表示部に画像を表示させる。表示制御部は、前記流体速度算出部13で算出された流体速度をマッピングし、流体速度の分布を前記表示部に更に表示させることも可能である。
【0029】
(5)演算のフロー例
図3は、本開示に係る情報処理装置1を用いて行う演算の一例を示すフローチャートである。以下、時系列に沿って、フロー例を説明する。
【0030】
(a)輝度の積算
まず、ステップST101において、輝度積算部11は、複数枚のスペックル画像の輝度を積算する。
【0031】
(b)スペックルパターンのコントラストの算出
次に、ステップST102において、コントラスト算出部12は、輝度積算部11で積算したスペックル積算画像に基づいて、スペックルパターンのコントラストKを算出する。
【0032】
(c)相関時間の算出
続いて、流体速度算出部13は、積算露光時間Tと、スペックルパターンのコントラストKとに基づいて、撮像対象の流体速度を算出する。ステップST103において、流体速度算出部13は、積算露光時間TとコントラストKとに基づいて、相関時間τcを算出する。具体的には、積算露光時間TとコントラストKとを上記の式(2)に代入し、相関時間τcを算出する。
【0033】
(d)流体速度の算出
そして、ステップST104において、流体速度算出部13は、算出した相関時間τcと、予め定められた相関時間τcとを比較することによって、流体速度を算出する。
【0034】
<2.第2実施形態(スペックルイメージングシステム10)>
図4(A)は、本開示の第2実施形態に係るスペックルイメージングシステム10の配線例を示すブロック図である。
図4(B)は、本開示の第2実施形態に係るスペックルイメージングシステム10の内部構成を示すブロック図である。なお、
図4(A)、(B)においては、前述した本開示に係る情報処理装置1の構成要素と同じものには、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。本開示に係るスペックルイメージングシステム10は、大別して、情報処理装置1、光源14、撮像装置15及び表示装置16を備える。また、必要に応じて、記憶装置17などを更に備えることも可能である。
【0035】
(1)光源14
光源14は、撮像対象Oにコヒーレント光を照射する。コヒーレント光とは、光束内の任意の二点における光波の位相関係が時間的に不変で一定であり、任意の方法で光束を分割した後、大きな光路差を与えて再び重ね合わせても完全な干渉性を示す光をいう。
【0036】
光源14が照射するコヒーレント光の光源の種類は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されない。一例としては、レーザー光等を挙げることができる。レーザー光を発する光源14としては、例えば、アルゴンイオン(Ar)レーザー、ヘリウム−ネオン(He-Ne)レーザー、ダイ(dye)レーザー、クリプトン(Cr)レーザー、半導体レーザー、または、半導体レーザーと波長変換光学素子を組み合わせた固体レーザー等を、1種又は2種以上、自由に組み合わせて用いることができる。
【0037】
(2)撮像装置15
撮像装置15は、コヒーレント光が照射された撮像対象Oから得られる散乱光を、撮像素子を用いて複数回撮像して前記複数枚のスペックル画像を出力する。
【0038】
撮像装置15が行う撮像方法は、本技術の効果が損なわれない限り特に限定されず、公知の撮像方法を1種又は2種以上選択して、自由に組み合わせて用いることができる。例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサー等の撮像素子を用いた撮像方法を挙げることができる。
【0039】
本開示では、上記撮像装置15の露光時間は10ms以下に設定されるが、1ms以下に設定されることが好ましく、100μs程度に設定されることがより好ましい。
【0040】
具体的な方法として、本開示では、レーザーなどコヒーレントな光源を用いて被写体(生体など)を照明し、CCDやCMOSなどの撮像素子を用いて10ms以下の短い露光時間で複数枚(2枚以上)の撮像が行われる。露光時間は、散乱体の動きによりスペックルコントラストが低下しないような露光時間を用いてもよい。この場合、複数枚の画像を平均化することで、露光時間を延長させる効果が得られる。露光時間の最適値が未知の場合、十分短くした露光時間で撮影すれば、後処理によって露光時間を調節することも可能である。例えば、一定の露光時間(10ms)で撮影された画像の場合、2フレーム足し合わせることで20ms相当の画像とし、3フレーム足し合わせることで30ms相当の画像とすることができる(
図5参照)。
図5は、スペックルコントラストの算出概念を示した図面代用写真である。このように、一定の露光時間(10ms)を2、3フレーム分だけ足し合わせる数学的な処理によって得られる積算露光時間(20ms、30ms)は、前記流体速度算出部13における血流速度の算出に用いられる。
【0041】
(3)表示装置16
表示装置16は、前記輝度積算部11で積算したスペックル積算画像などの画像を表示する。また、この表示装置16においては、前記流体速度算出部13で算出された血流速度をマッピングし、血流速度の分布を更に表示することも可能である。
【0042】
(4)記憶装置17
記憶装置17は、前記輝度積算部11で積算したスペックル積算画像、前記コントラスト算出部12によって算出されたスペックルコントラストKなどを記憶する。また、この記憶装置17においては、血流速度の分布を更に記憶することも可能である。
【0043】
(5)撮像対象O
本開示に係るスペックルイメージングシステム10は、様々なものを撮像対象とすることができるが、例えば、流体を含むものを撮像対象とするイメージングに、好適に用いることができる。より具体的には、撮像対象Oを生体とし、流体としては血液を挙げることができる。例えば、本開示に係るスペックルイメージングシステム10を、手術用顕微鏡や手術用内視鏡などに適用すれば、血管の位置を確認しながら手術を行うことが可能である。そのため、より安全で高精度な手術を行うことができ、医療技術の更なる発展にも貢献することができる。
【0044】
(6)スペックルイメージングの第1フロー例
図6は、本開示の第2実施形態に係るスペックルイメージングシステム10を用いて行うスペックルイメージングの第1フロー例を示すフローチャートである。この第1フロー例では、予め測定しておいた相関時間τcと、流体速度算出部13で求めた相関時間τcとを比較することにより血流速度が算出される。以下、時系列に沿って、第1フロー例を説明する。
【0045】
(a)露光時間及びフレームレートの設定
まず、ステップST201では、撮像装置15において、露光時間及びフレームレートが設定される。
【0046】
(b)積算枚数の決定
次に、ステップST202では、撮像装置15において、ステップST201で設定された露光時間及びフレームレートに基づいて、輝度を積算すべき画像の積算枚数が決定される。
【0047】
(c)スペックル画像の撮像
次に、ステップST203において、撮像装置15は、撮像素子を用いて、ステップST202で決定された積算枚数に相当する回数分を、撮像素子を用いて撮像して複数枚のスペックル画像を情報処理装置1に出力する。
【0048】
(d)スペックル画像の記憶
次に、ステップST204では、記憶装置17において複数枚のスペックル画像が記録される。
【0049】
(e)スペックル画像の表示
次に、ステップST205では、表示装置16において複数枚のスペックル画像が表示される。
【0050】
なお、上記ステップST204、ST205は、いずれか一方のみが実施されてもよい。また、スペックル画像の記憶処理(ステップST204)は、スペックル画像の表示処理(ステップST205)の後に行われてもよい。なお、スペックル画像の記憶は、スペックル画像の解析を後に行うために行われる。また、スペックル画像の表示は、撮影したスペックル画像を確認するために行われる。
【0051】
(f)輝度の積算
次に、ステップST206において、情報処理装置1の輝度積算部11は、複数枚のスペックル画像の輝度を積算する。
【0052】
(g)スペックルパターンのコントラストの算出
次に、ステップST207において、情報処理装置1のコントラスト算出部12は、輝度積算部11で積算したスペックル積算画像に基づいて、スペックルパターンのコントラストKを算出する。なお、コントラストKは、記憶装置17に記憶されてもよい。
【0053】
(h)相関時間の算出
次に、情報処理装置1の流体速度算出部13は、積算露光時間Tと、スペックルパターンのコントラストKとに基づいて、撮像対象の流体速度を算出する。ステップST208において、流体速度算出部13は、積算露光時間TとコントラストKとに基づいて、相関時間τcを算出する。具体的には、積算露光時間TとコントラストKとを上記の式(2)に代入し、相関時間τcを算出する。なお、相関時間τcは、記憶装置17に記憶されてもよい。
【0054】
(i)流体速度の算出
次に、ステップST209において、流体速度算出部13は、算出した相関時間τcと、予め定められた相関時間τcとを比較することによって、流体速度を算出する。なお、コントラストKは、記憶装置17に記憶されてもよく、表示装置16に表示されてもよい。
【0055】
(j)流体速度の分布の記憶
次に、ステップST210では、記憶装置17において、前記流体速度算出部13で算出された流体速度をマッピングすることにより得られた流体速度の分布が記憶される。
【0056】
そして、ステップST211では、表示装置16において、マッピングすることにより得られた流体速度の分布が表示される。
【0057】
(7)スペックルイメージングの第2フロー例
図7は、本開示の第2実施形態に係るスペックルイメージングシステム10を用いて行うスペックルイメージングの第2フロー例を示すフローチャートである。この第2フロー例では、輝度の積算を行うべき目的の枚数に到達するまで、スペックル画像の撮像が反復して実行される。以下、時系列に沿って、第2フロー例を説明する。
【0058】
(a)露光時間の設定
まず、ステップST301では、撮像装置15において、露光時間が設定される。
【0059】
(b)積算枚数の決定
次に、ステップST302では、撮像装置15において、ステップST301で設定された露光時間に基づいて、輝度を積算すべき画像の積算枚数が決定される。
【0060】
(c)スペックル画像の撮像
次に、ステップST303では、撮像装置15は、撮像素子を用いて撮像してスペックル画像を情報処理装置1に出力する。
【0061】
(d)スペックル画像の記憶
次に、ステップST304では、記憶装置17において複数枚のスペックル画像が記憶される。なお、記憶装置17には、撮像回数(積算枚数)が記憶されてもよい。
【0062】
(e)スペックル画像の表示
次に、ステップST305では、表示装置16においてスペックル画像が表示される。
【0063】
なお、上記ステップST304、ST305は、いずれか一方のみが実施されてもよい。また、スペックル画像の記憶処理(ステップST304)は、スペックル画像の表示処理(ステップST305)の後に行われてもよい。なお、スペックル画像の記憶は、スペックル画像の解析を後に行うために行われる。また、スペックル画像の表示は、撮影したスペックル画像を確認するために行われる。
【0064】
(f)積算枚数のカウント
次に、ステップST306では、撮像装置15において、撮像回数(積算枚数)のカウントが行われる。目的の撮像回数に到達していない場合は、ステップST303へ戻り、撮像が繰り返される。撮像回数が目的の回数に到達した場合は、ステップST307へ進む。
【0065】
(g)輝度の積算
次に、ステップST307において、情報処理装置1の輝度積算部11は、複数枚のスペックル画像の輝度を積算する。
【0066】
(h)スペックルパターンのコントラストの算出
次に、ステップST308において、情報処理装置1のコントラスト算出部12は、輝度積算部11で積算したスペックル積算画像に基づいて、スペックルパターンのコントラストKを算出する。なお、コントラストKは、記憶装置17に記憶されてもよい。
【0067】
(i)スペックル積算画像の記憶
次に、ステップST309では、記憶装置17においてスペックル積算画像が記憶される。
【0068】
(j)スペックル積算画像の表示
そして、ステップST310では、表示装置16においてスペックル積算画像が表示される。
【0069】
なお、上記ステップST309、ST310は、いずれか一方のみが実施されてもよい。また、スペックル画像の記憶処理(ステップST309)は、スペックル画像の表示処理(ステップST310)の後に行われてもよい。
【0070】
<3.第3実施形態(情報処理方法)>
本開示に係る情報処理方法は、大別して、輝度積算ステップ、及び、スペックルコントラスト算出ステップを少なくとも行う方法である。また、必要に応じて、流体速度算出ステップ、記憶ステップ及び表示ステップなどを更に行うことも可能である。なお、輝度積算ステップ、スペックルコントラスト算出ステップ、流体速度算出ステップ、表示ステップ及び記憶ステップは、前述した本開示に係るスペックルイメージングシステム10の輝度積算部11、コントラスト算出部12、流体速度算出部13、表示装置16及び記憶装置17が、それぞれ行う方法と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0071】
<4.ハードウェア構成>
上述した第1実施形態に係る情報処理装置1の処理は、ソフトウェアと、以下に説明するハードウェアとの協働により実現される。
【0072】
図8は、本開示の第1実施形態に係る情報処理装置1のハードウェア構成を示した説明図である。
図8に示したように、情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、ブリッジ104と、バス105と、インターフェース106と、入力装置107と、出力装置108と、ストレージ装置109と、接続ポート110と、通信装置111とを備える。
【0073】
CPU101は、情報処理装置として機能し、各種プログラムと協働して情報処理装置1内の輝度積算部11、コントラスト算出部12及び流体速度算出部13の動作を実現する。また、CPU101は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM102は、CPU101が使用するプログラムまたは演算パラメータ等を記憶する。RAM103は、CPU101の実行に
おいて使用するプログラムまたは実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。ROM102およびRAM103により、情報処理装置1内のメモリの一部を実現する。CPU101、ROM102およびRAM103は、CPUバスなどから構成される内部バスにより相互に接続されている。
【0074】
入力装置107は、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段、およびユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU101に出力する入力制御回路などから構成されている。情報処理装置1のユーザは、入力装置107を操作することにより、情報処理装置1に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0075】
出力装置108は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置、ランプなどの装置への出力を行う。さらに、ユーザフレンドリーの観点から、出力装置108は、スピーカおよびヘッドフォンなどの音声出力を行ってもよい。
【0076】
ストレージ装置109は、データ格納用の装置である。ユーザフレンドリーの観点から、ストレージ装置109は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置等を含んでもよい。ストレージ装置109は、CPU101が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0077】
接続ポート110は、例えば、情報処理装置1の外部の装置または周辺機器と接続するためのバスである。また、ユーザフレンドリーの観点から、接続ポート110は、USB(Universal Serial Bus)であってもよい。
【0078】
通信装置111は、例えば、ネットワークに接続するための通信デバイスで構成された通信インターフェースである。また、ユーザフレンドリーの観点から、通信装置111は、赤外線通信対応装置であっても、無線LAN(Local Area Network)対応通信装置であっても、LTE(Long Term Evolution)対応通信装置であっても、有線による通信を行うワイヤー通信装置であってもよい。
【0079】
以上、上記第1〜第3実施形態では、流体速度を測定する前提としてスペックルパターンのコントラストを簡便かつ効率的に取得することができる。
【0080】
また、上記第1〜第3実施形態では、コヒーレントな光源の強度を変えることなく(一定の強度)で照明し、一定の露光時間で撮影することが可能である。これにより、血流速度を測定する際に、レーザーを減衰させるための外部制御を必要とせず、装置を簡略化することができ、コストや技術的な難易度を低減させることができる。
【0081】
また、上記第1〜第3実施形態では、血流速度をマッピングした画像を取得することができる。従来、スペックルコントラストによって流速を表示する方法としてMulti-Exposure Speckle Imaging法などが提案されているが、この方法では、様々な露光時間による撮像が必要であり、それに応じた強度のコヒーレントな光源による照明が必要であった。露光時間の調節については容易であるが、コヒーレントな光源の照明強度を幅広く変えることは困難であった。上記第1〜第3実施形態では、従来のMulti-exposure speckle imaging法より少ない露光時間のパターンによって血流速度を算出できるようしたので、血流速度を測定する際に、従来のMulti-exposure speckle imaging法のようにコヒーレントな光源の照明強度を幅広く変える外部制御を必要とせず、装置を簡略化することができ、コストや技術的な難易度を低減させることができる。
【0082】
散乱体の移動(流れ)をスペックルコントラストで観測する場合、ある程度、露光時間を長くする必要がある。例えばデジタルイメージャを用いる場合、散乱体が露光時間中に1画素(スペックルパターンが変わる程度)以上、移動する必要がある。従来手法では、この露光時間を測定対象物に最適な露光時間を設定しないと、スペックルコントラストを算出できなかった。本実施形態のように、後処理によって露光時間を調節できるが、後処理によって露光時間を短くすることは不可能である。後処理で最適な露光時間を設定するためには、短い露光時間を実現する必要がある。
【0083】
また、上記第1〜第3実施形態では、スペックルコントラストを算出するために撮影後の露光時間の最適化をおこなうことが可能である。さらに、スペックル血流イメージでは描画できないような遅いあるいは止まった(但しブラウン運動はしている)などの流速についても描画が可能である(流速感度のダイナミックレンジを広げることができる)。
【0084】
ここでの最適化とは、例えば、以下の用途(A)〜(C)に最適な血流イメージングをすることをいう。つまり、(A)血流が正常に流れている部分と、流れていない部分とを検出したり、(B)血管に狭窄(血流が流れていない箇所)が無くても何かが詰まっていて流れていない部分を検出したり、(C)狭窄のレベル評価を実現可能(ex.画像を何枚重ねたら狭窄を発見できるか等)を行うに当たり、血管の血流に応じて最適な血流イメージが得られる。
【0085】
また、本開示は、以下のような構成をとることもできる。
(1)
コヒーレント光が照射された撮像対象から得られる散乱光を、撮像素子を用いて複数回撮像することにより得られた複数枚のスペックル画像の輝度を積算する輝度積算部と、
前記輝度積算部で積算したスペックル積算画像に基づいて、スペックルパターンのコントラストを算出するコントラスト算出部と、を備える情報処理装置。
(2)
前記複数枚のスペックル画像の露光時間を積算した積算露光時間と、前記コントラスト算出部で算出したスペックルパターンのコントラストとに基づいて、前記撮像対象の流体速度を算出する流体速度算出部を更に備える上記(1)に記載の情報処理装置。
(3)
前記複数枚のスペックル画像は、10ms以下の露光時間で撮像された画像である上記(1)又は(2)に記載の情報処理装置。
(4)
前記コントラスト算出部は、前記スペックル積算画像の局所的な画像領域における輝度の分散値及び平均値を求め、求めた輝度の分散値及び平均値に基づいて、スペックルパターンのコントラストを算出する上記(1)から(3)のいずれかに記載の情報処理装置。
(5)
前記コントラスト算出部は、前記求めた輝度の分散値の平方根をとることで輝度の標準偏差を算出し、スペックルパターンのコントラスト、輝度の標準偏差、及び、輝度の平均値の関係を示す式(1)に前記求めた輝度の標準偏差及び平均値を代入することによって、スペックルパターンのコントラストを算出する上記(4)に記載の情報処理装置。
【数1】
ただし、Kはスペックルパターンのコントラスト、σは輝度Iの標準偏差、<I>は輝度Iの平均値である。
(6)
前記流体速度算出部は、前記積算露光時間と前記スペックルパターンのコントラストに基づいて相関時間を求め、求めた相関時間と、予め定められた相関時間とを比較することによって、前記流体速度を算出する上記(2)に記載の情報処理装置。
(7)
前記流体速度算出部は、露光時間、スペックルパターンのコントラスト、及び、相関時間の関係を示す式(2)に前記積算露光時間と前記スペックルパターンのコントラストとを代入することによって、相関時間を求める上記(6)に記載の情報処理装置。
【数2】
(8)
前記流体速度算出部は、露光時間、スペックルパターンのコントラスト、及び、相関時間の関係を示す式(3)に前記積算露光時間と前記スペックルパターンのコントラストとを代入することによって、相関時間を求める上記(6)に記載の情報処理装置。
【数3】
(9)
表示部に画像を表示させる表示制御部を更に備える上記(2)に記載の情報処理装置。
(10)
前記表示制御部は、前記流体速度算出部で算出された流体速度をマッピングし、流体速度の分布を前記表示部に更に表示させる上記(9)に記載の情報処理装置。
(11)
前記流体速度は、血管内における血流速度である上記(2)に記載の情報処理装置。
(12)
上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の情報処理装置と、
撮像対象にコヒーレント光を照射する光源と、
コヒーレント光が照射された撮像対象から得られる散乱光を、撮像素子を用いて複数回撮像し
て複数枚のスペックル画像を出力する撮像装置と、
画像を表示する表示装置と、を備えるスペックルイメージングシステム。
(13)
前記表示装置は、前記流体速度算出部で算出された流体速度をマッピングし、流体速度の分布を更に表示する上記(12)に記載のスペックルイメージングシステム。
(14)
コヒーレント光が照射された撮像対象から得られる散乱光を、撮像素子を用いて複数回撮像することにより得られた複数枚のスペックル画像の輝度を積算する輝度積算ステップと、
前記輝度積算ステップで積算したスペックル積算画像に基づいて、スペックルパターンのコントラストを算出するコントラスト算出ステップと、を少なくとも行う、情報処理方法。
【0086】
なお、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0087】
以下、本開示の実験例により、本開示の効果について具体的に説明する。
【0088】
<第1実験例>
第1実験例では、波長820nmのコヒーレントなレーザー光源により均一に照明された生体を、ソニー製のグローバルシャッターのCMOSイメージャーを用いて、フレームレート120fps、露光時間100usで撮像した。なお、輝度Iの取得はソニー製のグローバルシャッターのCMOSイメージャーによって実現される。1、10、100、1000枚の時系列のスペックル画像を積算することにより、100us、1ms、10ms、100msの露光時間に相当するスペックル積算画像を求めた。それぞれのスペックル積算画像に基づき、上記式(1)を用い、局所的なスペックルコントラストKを求めた。当該スペックルコントラストKと、積算露光時間Tとでプロットし、上記式(2)でフィッティングを行い、相関時間τcを算出した。当該算出により得られた相関時間τcを、既知の流速によって算出した相関時間τcと比較することにより、局所的な部位の血流速度を求め、求めた血流速度をマッピングした(
図9参照)。
図9は、血流速度をマッピングしたマップ図を示す図面代用写真である。マップ図の色を見れば、血流が正常に流れている部分と、流れていない部分とを検出したり、血流速度を把握したりすることが可能である。
【0089】
<第2実験例>
第2実験例では、波長820nmのコヒーレントなレーザー光源により均一に照明された生体を模したファントムに血液を送液し、ソニー製のグローバルシャッターのCMOSイメージャーを用いて、フレームレート30fps、露光時間500usで撮像した。1枚(比較例)、2枚、・・・、10枚の時系列のスペックル画像を積算することにより、500us(比較例)、1ms、・・・、5msの積算露光時間に相当する各スペックル積算画像を求めた(
図10参照)。そして、
図10に示す各スペックル積算画像の中から、血流速度の測定対象物に応じて最適なスペックル積算画像を選択することができた。
【0090】
スペックルコントラストKは、撮
像対象のエリアごとの移動速度に依存する。第2実施例では、血流速度が1mm/secの場合、500us、1ms、5msの積算露光時間を得るに当たり、スペックルコントラストKの値を、それぞれ、0.6、0.5、0.4程度に設定した。
図11は、500us、1ms、5msの積算露光時間に相当する各スペックル積算画像と、実際の露光時間1ms、5msで撮像した画像と、を示している。
図11に示されるように、1ms、5msの積算露光時間に相当する各スペックル積算画像は、実際の露光時間1ms、5msで撮像した画像とほぼ等価の画像が得られることが分かった。