特許第6927085号(P6927085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927085
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】歩行者用エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/36 20110101AFI20210812BHJP
【FI】
   B60R21/36
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-37517(P2018-37517)
(22)【出願日】2018年3月2日
(65)【公開番号】特開2019-151203(P2019-151203A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】尾関 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇至
【審査官】 鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−159971(JP,A)
【文献】 特開2015−145147(JP,A)
【文献】 特開2017−171269(JP,A)
【文献】 特開2007−038754(JP,A)
【文献】 特開2011−173502(JP,A)
【文献】 特開2007−55361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張完了時に車両のフードパネルの後端付近におけるカウルの上面側を覆う本体部と、該本体部の左右方向の端部側から延びてフロントピラーの上面側を覆うピラーカバー部と、を備えて構成されるとともに、
外周壁が、上面側の上面側パネルと下面側の下面側パネルとの外周縁相互を結合させて構成される歩行者用エアバッグであって、
膨張完了時の前記ピラーカバー部が、略前後方向に沿って配設される隔壁により、車両の左右方向の中央側に位置する内側チャンバと車両の左右方向の外方側に位置する外側チャンバとの2室だけに区画されるとともに、
前記隔壁が、それぞれ、前記上面側パネルと前記下面側パネルとを重ねて平らに展開した状態として、上縁側の前記上面側パネルへ結合させた上縁結合部を、下縁側の前記下面側パネルへ結合させた下縁結合部より、車両の左右方向の中央側にずれた位置に配置させて、配設されていることを特徴とする歩行者用エアバッグ。
【請求項2】
膨張完了時に車両のフードパネルの後端付近におけるカウルの上面側を覆う本体部と、該本体部の左右方向の端部側から延びてフロントピラーの上面側を覆うピラーカバー部と、を備えて構成されるとともに、
外周壁が、上面側の上面側パネルと下面側の下面側パネルとの外周縁相互を結合させて構成される歩行者用エアバッグであって、
膨張完了時の前記ピラーカバー部が、略前後方向に沿って配設される隔壁により、車両の左右方向の中央側に位置する内側チャンバと車両の左右方向の外方側に位置する外側チャンバとの2室だけに区画されるとともに、
前記隔壁が、それぞれ、前記上面側パネルと前記下面側パネルとを重ねて平らに展開した状態として、上縁側の前記上面側パネルへ結合させた上縁結合部を、下縁側の前記下面側パネルへ結合させた下縁結合部より、車両の左右方向の中央側にずれた位置に配置させて、配設されるとともに、
前記下面側パネルと結合される前記下縁結合部が、直線状として、前記フロントピラーの上方へ突出する頂部付近に配設され、
該頂部から左右方向の内側に、前記内側チャンバが配設され、
前記頂部から左右方向の外側に、前記外側チャンバが配設される構成としていることを特徴とする歩行者用エアバッグ。
【請求項3】
膨張完了時に車両のフードパネルの後端付近におけるカウルの上面側を覆う本体部と、該本体部の左右方向の端部側から延びてフロントピラーの上面側を覆うピラーカバー部と、を備えて構成されるとともに、
外周壁が、上面側の上面側パネルと下面側の下面側パネルとの外周縁相互を結合させて構成される歩行者用エアバッグであって、
膨張完了時の前記ピラーカバー部が、略前後方向に沿って配設される隔壁により、車両の左右方向の中央側に位置する内側チャンバと車両の左右方向の外方側に位置する外側チャンバとの2室だけに区画されるとともに、
前記隔壁が、それぞれ、前記上面側パネルと前記下面側パネルとを重ねて平らに展開した状態として、上縁側の前記上面側パネルへ結合させた上縁結合部を、下縁側の前記下面側パネルへ結合させた下縁結合部より、車両の左右方向の中央側にずれた位置に配置させて、配設されるとともに、
前記上面側パネルと前記下面側パネルとを重ねて平らに展開した状態として、前記上縁結合部と前記下縁結合部との左右方向へのずれ寸法が、隔壁の幅寸法と同等としていることを特徴とする歩行者用エアバッグ。
【請求項4】
前記隔壁に、前記内側チャンバからの膨張用ガスの前記外側チャンバへの流入を許容し、前記外側チャンバから前記内側チャンバへの逆流を抑制する逆流防止手段が、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の歩行者用エアバッグ。
【請求項5】
前記隔壁が、前記本体部の前縁側まで延設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の歩行者用エアバッグ。
【請求項6】
前記ピラーカバー部が、それぞれ、車両の左右の前記フロントピラーの上面側を覆えるように、一つの前記本体部の左右両側から延びるように配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の歩行者用エアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフードパネル後端の下側に搭載される歩行者用エアバッグ装置に使用される歩行者用エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者用エアバッグ装置のエアバッグは、膨張完了時に車両のフードパネルの後端付近のカウルの上面側を覆う本体部(カウルカバー部)と、本体部から延びてフロントピラーの上面側を覆うピラーカバー部と、を備えて構成されるとともに、外周壁が、上面側の上面側パネルと下面側の下面側パネルとの外周縁相互を結合させて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。そして、ピラーカバー部には、前後方向に沿う隔壁が配設され、ピラーカバー部が、隔壁により、車両の左右方向の中央側の内側チャンバと車両の左右方向の外方側の外側チャンバとに区画されるとともに、膨張時のバタツキを抑制できるように、膨張用ガスが内側チャンバから外側チャンパに流入するように、構成されていた。さらに、膨張完了時のピラーカバー部が、フロントピラーの上面側に安定して支持されるように、隔壁の下縁側の下面側パネルと結合される下結合部が、フロントピラーの上方(前方)への突出位置と一致するように、配設されて、ピラーカバー部における下縁結合部の左右両側の内側チャンバと外側チャンバとの部位が、フロントピラーの突出位置の両側に支持されて、左右方向へずれることを抑制されて、膨張を完了させるように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−134566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の歩行者用エアバッグでは、膨張完了時に、ピラーカバー部が、ピラーカバー部における隔壁の下縁結合部の両側の部位を、フロントピラーの突出位置の両側に支持される構成、すなわち、ピラーカバー部の内側チャンバと外側チャンバとが、隔壁の近傍部位で、ピラーカバー部の左右の上面側に当接する構成であって、ピラーカバー部が、歩行者を受け止める前に、既に、フロントピラーの上面に接触しており、歩行者を受け止めてフロントピラーに接近する距離、すなわち、歩行者の受止ストローク、が短くなり易く、歩行者の運動エネルギーの吸収量を増大させる点に、改善の余地があった。この場合、エアバッグの内圧を高めるように大きな出力のインフレーターを使用したり、あるいは、膨張完了時のピラーカバー部を厚くするようにピラーカバー部の容積を大きくする等して対処することができるが、共に、歩行者用エアバッグ装置の重量や容積を増加させることから、好ましくない。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便な構成により、ピラーカバー部における歩行者の運動エネルギーの吸収量を増大させることができる歩行者用エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歩行者用エアバッグでは、膨張完了時に車両のフードパネルの後端付近におけるカウルの上面側を覆う本体部と、該本体部の左右方向の端部側から延びてフロントピラーの上面側を覆うピラーカバー部と、を備えて構成されるとともに、
外周壁が、上面側の上面側パネルと下面側の下面側パネルとの外周縁相互を結合させて構成される歩行者用エアバッグであって、
膨張完了時の前記ピラーカバー部が、略前後方向に沿って配設される隔壁により、車両の左右方向の中央側に位置する内側チャンバと車両の左右方向の外方側に位置する外側チャンバとに区画されるとともに、
前記隔壁が、それぞれ、前記上面側パネルと前記下面側パネルとを重ねて平らに展開した状態として、上縁側の前記上面側パネルへ結合させた上縁結合部を、下縁側の前記下面側パネルへ結合させた下縁結合部より、車両の左右方向の中央側にずれた位置に配置させて、配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る歩行者用エアバッグでは、膨張完了時、ピラーカバー部の内側チャンバと外側チャンバとを区画する隔壁が、上面側パネルと結合される上縁結合部より下面側パネルと結合される下縁結合部を、車外側にずらして傾斜して配設されている。すなわち、外側チャンバは、傾斜した隔壁の上方側に配設される構造となって、隔壁と略直交方向として、内側チャンバから斜め上方向に突出する形態となる。そのため、外側チャンバが、内側チャンバからの突出寸法分、歩行者を早く受け止めて、受止ストロークを長く確保できることから、歩行者の運動エネルギーの吸収量を増加させることができる。そして、このような構成は、単に、隔壁を傾斜して配設するだけで、簡便に対処できる。
【0008】
したがって、本発明に係る歩行者用エアバッグでは、簡便な構成により、ピラーカバー部における歩行者の運動エネルギーの吸収量を増大させることができる。
【0009】
そして、本発明に係る歩行者用エアバッグでは、前記隔壁に、前記内側チャンバからの膨張用ガスの前記外側チャンバへの流入を許容し、前記外側チャンバから前記内側チャンバへの逆流を抑制する逆流防止手段が、配設されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、内側チャンバからの膨張用ガスにより外側チャンバが膨張を完了させれば、外側チャンバから内側チャンバへの膨張用ガスの流れが規制されて、外側チャンバは、膨張完了時の高い内圧を維持できる。そのため、外側チャンバが歩行者を受け止める際、高い内圧を維持できており、受止ストロークに略比例する歩行者の運動エネルギーの吸収量を、一層、増大させることができる。また、ピラーカバー部における厚さが薄くなり易い外側チャンバの外縁付近で、歩行者を受け止めることとなっても、高い内圧を維持しており、十分な反力を確保できることから、歩行者を的確に受け止めて保護できる。そのため、例えば、内圧を高めるような大きな出力のインフレーターを使用したり、ピラーカバー部の厚さ(容積)を大きくせずに、歩行者を的確に受け止めて保護することができる。
【0011】
また、本発明に係る歩行者用エアバッグでは、前記隔壁が、前記本体部の前縁側まで延設されている構成としてもよい。
【0012】
このような構成では、エアバッグ本体部の前縁側まで外側チャンバが延びていれば、その前縁付近は、フードパネルの後端側における左右の縁やその近傍のフェンダーパネルの上方に、外側チャンバを配設させることができて、その付近に歩行者が移動してきても、外側チャンバが早く歩行者を受け止めて保護することができる。
【0013】
そして、本発明に係る歩行者用エアバッグでは、前記ピラーカバー部が、それぞれ、車両の左右の前記フロントピラーの上面側を覆えるように、一つの前記本体部の左右両側から延びるように配設されて、車両に、一つ配設される構成としてもよいし、車両の左右方向の片側ずつのカウルとフロントピラーとの上面側を覆えるように、車両に、左右両側の計二つ配設される構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態である歩行者用エアバッグが使用される歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の概略部分平面図であり、併せて、膨張完了時の歩行者用エアバッグを二点鎖線で示す。
図2】第1実施形態の歩行者用エアバッグ装置の作動時の概略縦断面図であり、図1のII−II部位に対応する。
図3】第1実施形態の歩行者用エアバッグ装置の作動時におけるインフレーター付近の概略拡大縦断面図である。
図4】第1実施形態の歩行者用エアバッグにおける逆流防止手段の作動を説明する概略部分断面図であり、図1のIV-IV部位に対応する。
図5】第1実施形態の歩行者用エアバッグにおける逆流防止手段の作動を説明する概略部分斜視図である。
図6】第1実施形態の歩行者用エアバッグの前縁側の膨張時を説明する概略部分断面図であり、図1のVI-VI部位に対応する。
図7】第1実施形態の歩行者用エアバッグにおけるインフレーターを挿入した状態での平面図である。
図8】第1実施形態の歩行者用エアバッグの構成部材を示す平面図である。
図9】第2実施形態の歩行者用エアバッグにおけるインフレーターを挿入した状態での平面図である。
図10】第2実施形態の歩行者用エアバッグにおける逆流防止手段の作動を説明する概略部分斜視図である。
図11】第2実施形態の歩行者用エアバッグにおける逆流防止手段の作動を説明する概略部分断面図である。
図12】第3実施形態の歩行者用エアバッグにおけるインフレーターを挿入した状態での平面図である。
図13】第3実施形態の歩行者用エアバッグにおける逆流防止手段の作動を説明する概略部分斜視図である。
図14】第3実施形態の歩行者用エアバッグにおける逆流防止手段の作動を説明する概略部分断面図である。
図15】第4実施形態の歩行者用エアバッグにおけるインフレーターを挿入した状態での平面図である。
図16】第4実施形態の歩行者用エアバッグの構成部材を示す平面図である。
図17】第4実施形態の歩行者用エアバッグにおける逆流防止手段の作動を説明する概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の歩行者用エアバッグ(以下、適宜、「エアバッグ」と略す)23は、図1,2に示すように歩行者用エアバッグ装置(以下、適宜、「エアバッグ装置」と略す)Mに使用されるものである。エアバッグ装置Mは、車両Vのフードパネル9の後端9a付近における下方側のエンジンルームER側に搭載されて、エアバッグ23と、エアバッグ23に膨張用ガスを供給するインフレーター15と、折り畳んだエアバッグ23を収納するケース10と、を備えて構成されている。
【0016】
なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、及び、左右の方向は、それぞれ、車両Vの前後、上下、及び、左右の方向と一致させて、説明する。
【0017】
エアバッグ装置Mのケース10は、金属製(板金製)として、車両Vのボディ1側のフードリッジリインホースから延びるフランジ等から構成される取付部2に対し、インフレーター15の取付ブラケット18のボルト19を利用して、ナット20止めされて、固定されている。ケース10は、上方に、膨張時のエアバッグ23を突出させるための開口13を備えた略直方体の箱形状として、車両Vの左右方向に沿って延びた長方形板状の底壁部11と、底壁部11の外周縁から上方に延びる略四角筒形状の周壁部12とを備えて構成されている。なお、ケース10は、フロントウインドシールド(フロントガラスとも言う。以下、単に、ウインドシールドとする)4の前端4a側の下方から前方に延びるカウル6の前方側の上側位置に、搭載されている。また、図1に示す符号7の部材は、ワイパである。カウル6は、剛性の高い金属製のカウルパネル6aとカウルパネル6aより剛性を低くする合成樹脂製のカウルルーバ6bとから構成されている。
【0018】
インフレーター15は、図7に示すように、車両Vの左右方向に沿って、軸方向を配置させた円柱状として、先端に、膨張用ガスを吐出するガス吐出部16を配設させて構成されている。インフレーター15は、複数(実施形態では3個)の取付ブラケット18に保持され、インナチューブ39に包まれた状態でエアバッグ23内に挿入され、取付ブラケット18のボルト19を利用して、ケース10の底壁部11に固定されている(図2,3参照)。既述したように、取付ブラケット18のボルト19は、底壁部11を貫通して、車両Vのボディ1側の取付部2にナット20止めされ、インフレーター15とともに、ケース10を取付部2に固定し、そしてさらに、インフレーター15がエアバッグ23内に挿入された状態としており、エアバッグ23も、ケース10の底壁部11に取付固定されることとなる。
【0019】
なお、実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ3には、歩行者との衝突を検知可能なセンサ3aが、配設されており、センサ3aからの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ3aからの信号に基づいて車両Vの歩行者との衝突を検知した際に、エアバッグ装置Mのインフレーター15を作動させるように構成されている。
【0020】
エアバッグ23は、図1〜7に示すように、膨張完了時に、フードパネル9の後端9aからカウル6やウインドシールド4の前縁4aの上方を覆う本体部24と、本体部24の左右両端24a側から後方に延びて左右のフロントピラー5(5L,5R)の上方を覆うピラーカバー部28(L,R)と、を備えて構成されている。エアバッグ23の外周壁30は、上面側の歩行者を受け止める上面側パネル31と、下面側におけるフードパネル9、ウインドシールド4、及び、フロントピラー5に、支持される下面側パネル32と、を備えて構成されている。実施形態の場合、上面側パネル31と下面側パネル32とは、図8に示すように、外形形状を等しくしたエアバッグ用基布70,71から構成されており、エアバッグ23の外周壁30は、エアバッグ用基布70,71を重ねて、外周縁70a,71a相互を縫合して、形成されている。
【0021】
また、エアバッグ23は、膨張完了時の本体部24の上面側パネル31と下面側パネル32との離隔距離を規制するように、本体部24の中央付近の前後に配設される前テザー34及び後テザー35と、本体部24の左右両端付近に配設される左テザー36及び右テザー37と、左右のピラーカバー部28L,28Rのそれぞれの後端28aから本体部24の左右両端24a付近の前縁24b付近まで延びるように配設される隔壁40(L,R)と、を備えて構成されている。
【0022】
前テザー34は、図2,8に示すように、上面側パネル31と下面側パネル32とに別々に結合されるテザー用基布72,73を相互に結合させて構成されている。後テザー35は、図2,8に示すように、上面側パネル31と下面側パネル32とに別々に結合されるテザー用基布74,75を相互に結合させて構成されている。左右のテザー36,37は、上面側パネル31と下面側パネル32とに別々に結合されるテザー用基布76,77を相互に結合させて構成されている。隔壁40は、一部(非結合部)50を除き、外周縁40aの全周を、上面側パネル31と下面側パネル32との内周面31a,32aに結合させている。
【0023】
なお、インフレーター15は、エアバッグ23内の前テザー34と後テザー35との間に収納される。前テザー34と後テザー35とは、左右両端側からインフレーター15からの膨張用ガスを前方や後方へ流し可能に、本体部24の左右方向の全長より、左右方向の幅寸法を短くして、配設されている。
【0024】
左右の隔壁40L,40Rは、それぞれ、左右のテザー36,37より、左右方向の外方側にずれた位置として、エアバッグ23におけるピラーカバー部28の後端28a側から本体部24における左右両端24a付近の前縁24bまでの領域を、左右で区画するように、直線状として略前後方向に沿うように配設されている。そして、左右の隔壁40L,40Rは、ピラーカバー部28L,28Rを、それぞれ、車両Vの左右方向の中央側に位置する内側チャンバ44と、車両Vの左右方向の外方側に位置する外側チャンバ45(L,R)と、の2室だけに区画している。内側チャンバ44は、本体部24の左右両端24a,24a付近を除く中央部24cと、左右のピラーカバー部28L,28Rにおける車両Vの左右方向の中央側となる内側部28bと、から構成され、外側チャンバ45は、本体部24の左右両端24aと、左右のピラーカバー部28L,28Rにおける車両Vの左右方向の外側となる外側部28cと、から構成されている。内側チャンバ44には、インフレーター15が配設されることから、膨張用ガスの上流側室となり、外側チャンバ45は、膨張用ガスの下流側室となる。
【0025】
また、左右の隔壁40L,40Rは、それぞれ、上面側パネル31と下面側パネル32とを重ねて平らに展開した状態として、上縁40aa側の上面側パネル31へ結合させた上縁結合部41を、下縁40ab側の下面側パネル32へ結合させた下縁結合部42より、車両Vの左右方向の中央側にずれた位置に配置させて、配設されている。
【0026】
そして、隔壁40L,40Rには、内側チャンバ44からの膨張用ガスの外側チャンバ45への流入を許容し、外側チャンバ45から内側チャンバ44への逆流を抑制する逆流防止手段47が、配設されている。実施形態の逆流防止手段47は、外側チャンバ45と内側チャンバ44とを区画する隔壁40が、外周縁40aの全周を、エアバッグ23の外周壁30を形成する上面側パネル31と下面側パネル32との内周面31a,32aに結合させるのではなく、隔壁40の外周縁40aの縫製部40cから延びる縫代部40dを外側チャンバ45の内周面側(図例の場合は、下面側パネル32の内周面32a側)に長く接触できるような長さ寸法分、延ばすヒレ部51を設け、すなわち、外周縁40aの下縁40ab側における下面側パネル32との結合部49の間に、部分的に、非結合部50を設けて、縫代部40dを逆止弁を構成するヒレ部51とし、下面側パネル32の内周面32aに接触可能として、左右方向の外方に延ばして、形成されている。
【0027】
この逆流防止手段47では、インフレーター15が作動されて、内側チャンバ44が内圧を高めて膨張すると、図4のA,5のAに示すように、非結合部50のヒレ部51が、膨張用ガスGの圧力により、下面側パネル32の内周面32a側から浮き上がって、内側チャンバ44から外側チャンバ45に膨張用ガスGを流入させる供給口52を開口させることとなり、内側チャンバ44からの膨張用ガスGにより、外側チャンバ45が膨張を完了させることとなる。その後、外側チャンバ45から内側チャンバ44に膨張用ガスGが逆流しようとしても、図4のB,5のBに示すように、逆止弁を構成するヒレ部51が、下面側パネル32の内周面32aに圧接されて、供給口52を閉塞させることから、外側チャンバ45の膨張用ガスGが内側チャンバ44に逆流せず、外側チャンバ45は、膨張完了時の内圧を維持できる。そのため、外側チャンバ45は、内側チャンバ44に比べて、内圧の低下が抑制されて、良好なクッション作用を奏して、歩行者PDを受け止めて保護することができる。
【0028】
また、本体部24の前後のテザー34,35の間の下面側パネル32には、左右方向に延びるスリット25と、各取付ブラケット18のボルト19を貫通させる取付孔26と、が配設されている。スリット25は、インナチューブ39に包んだ状態のインフレーター15をエアバッグ23内に挿入させるためのものであり、スリット25の外表面側には、スリット25を覆うカバー布33が配設されている。
【0029】
カバー布33は、後縁33a側がスリット25の後方側の下面側パネル32に縫合されるとともに、各取付ブラケット18のボルト19を貫通させる取付孔33bが形成されている。
【0030】
インナチューブ39は、取付ブラケット18を取付済みのインフレーター15を挿入させる挿入筒部39cと、ガス吐出部16の配置部位から両側に延びて、先端に、膨張用ガスを流出させる流出口39a,39bと、を備えた三叉状の筒形状として構成されている。挿入筒部39cには、各取付ブラケット18のボルト19を貫通させる取付孔39dが形成されている。インナチューブ39は、図8に示すように、チューブ用基布79から形成されるものであり、チューブ用基布79を、折目79aを付けて二つ折りし、重ねた所定の外周縁相互を縫合すれば、インナチューブ39を形成することができる。
【0031】
なお、上面側パネル31や下面側パネル32を構成するエアバッグ用基布70,71、テザー用基布72,73,74,75,75,76,77、隔壁40を構成する隔壁用基布78、チューブ用基布79、及び、カバー布33は、可撓性を有したシート状のポリエステル糸やポリアミド糸等の織布から形成されている。
【0032】
第1実施形態のエアバッグ23では、縫合糸81(図7参照)を使用して、エアバッグ用基布70にテザー用基布72,74,76を縫合し、エアバッグ用基布71にテザー用基布73,75,77を縫合し、テザー用基布72,73相互、テザー用基布74,75相互、及び、テザー用基布76,77相互を縫合する。そして、エアバッグ用基布70,71を重ねて平らにして、外周縁70a,71a相互を縫合しつつ、隔壁40の配設部位において、隔壁用基布78の外周縁78aの所定部位(結合部49)をエアバッグ用基布70,71に縫合して、隔壁40を形成し、残りの外周縁70a,71a相互を縫合すれば、エアバッグ23を形成することができる。なお、下面側パネル32を構成するエアバッグ用基布71には、予め、スリット25と取付孔26とを形成しておくとともに、カバー布33を所定位置に縫合しておく。
【0033】
その後、エアバッグ23をケース10に収納可能に折り畳み、インナチューブ39に挿入させた状態の取付ブラケット18を組付済みのインフレーター15を、スリット25を利用して、エアバッグ23内に挿入する。そして、各取付ブラケット18のボルト19を、インナチューブ39の取付孔39d、エアバッグ23の取付孔26から突出させておき、さらに、カバー布33がスリット25を覆えるように、カバー布33の取付孔33bを各ボルト19に嵌めて、エアバッグ組付体を形成するとともに、ケース10に収納し、ついで、ケース10の開口13を覆うようにエアバッグカバー14をケース10に組み付ける。そして、車両Vの所定位置にケース10を配置させて、ケース10から突出しているボルト19を取付部2にナット20止めし、インフレーター15から延びる作動用の信号線を、所定の作動回路に接続すれば、エアバッグ装置Mを、車両Vに搭載することができる。
【0034】
その後、インフレーター15に作動信号が入力されれば、ガス吐出部16から膨張用ガスGが吐出されて、折り畳まれたエアバッグ23が、展開膨張し、エアバッグカバー14を押し開いて、エアバッグ23の本体部24が、フードパネル9の後端9aの上面9bやカウル6・ウインドシールド4の前端4aの上方を覆い、ピラーカバー部28(L,R)がフロントピラー5(L,R)の上面5aを覆うこととなる。
【0035】
第1実施形態のエアバッグ23では、膨張完了時、ピラーカバー部28(L,R)の内側チャンバ44と外側チャンバ45とを区画する隔壁40が、上面側パネル31と結合される上縁結合部41より下面側パネル32と結合される下縁結合部42を、車外側にずらして傾斜して配設されている。すなわち、外側チャンバ45は、図4のA,Bや図6のA,Bに示すように、ヒレ部51が浮き上がって形成された供給口52を経て、内側チャンバ44から流入する膨張用ガスGにより、膨張を完了させた際、傾斜した隔壁40の上方側に配設される構造となって、隔壁40と略直交方向として、内側チャンバ44から斜め上方向に突出する形態となる。そのため、図4のBに示すように、外側チャンバ45が、内側チャンバ44から、突出寸法H分、上方側(フロントピラー5が後上がりに傾斜していること前方側とも言える)に突出する形態となり、その突出寸法H分、歩行者PDを早く受け止めて、受止ストロークを長く確保できることから、歩行者PDの運動エネルギーの吸収量を増加させることができる。そして、このような構成は、単に、隔壁40を傾斜して配設するだけで、簡便に対処できる。
【0036】
したがって、第1実施形態の歩行者用エアバッグ23では、簡便な構成により、ピラーカバー部28における歩行者PDの運動エネルギーの吸収量を増大させることができる。
【0037】
なお、実施形態の場合、上縁結合部41と下縁結合部42との左右方向へのずれ寸法S0(図7参照)は、150〜220mmの範囲内の約180mmとしている。このずれ寸法S0は、小さすぎては、内側チャンバ44からの突出寸法Hを確保し難く、大きすぎては、内側チャンバ44の外側に外側チャンバ45を配設し難くなって、フロントピラー5を覆うピラーカバー部28の面積を確保し難くなる。そして、ピラーカバー部28の膨張時の厚さ寸法を決定する隔壁用基布78の実質的な幅寸法B0(図7,8参照)によっても、隔壁40の傾斜が変わることから、上縁結合部41と下縁結合部42との左右方向へのずれ寸法S0は、隔壁用基布78の実質的な幅寸法B0、すなわち、隔壁40の幅寸法B0(図7,8参照)と同等程度とすることが望ましい。ちなみに、実施形態の隔壁用基布78の実質的な幅寸法B0は、ずれ寸法S0と同等の約180mmとしている。
【0038】
そして、第1実施形態の歩行者用エアバッグ23では、隔壁40に、内側チャンバ44からの膨張用ガスGの外側チャンバ45への流入を許容し、外側チャンバ45から内側チャンバ44への逆流を抑制する逆流防止手段47が、配設されている。
【0039】
そのため、第1実施形態では、内側チャンバ44からの膨張用ガスGにより外側チャンバ45が膨張を完了させれば、供給口52を開口させていた逆止弁としてのヒレ部51が、下面側パネル32の内周面32aに押し付けられて、供給口52を塞いで、外側チャンバ45から内側チャンバ44への膨張用ガスGの流れが規制されて、外側チャンバ45は、膨張完了時の高い内圧を維持できる。その結果、外側チャンバ45が歩行者PDを受け止める際、高い内圧を維持できており、受止ストロークに略比例する歩行者PDの運動エネルギーの吸収量を、一層、増大させることができる。すなわち、歩行者PDを受け止める際、歩行者PDの運動エネルギーが同等としていても、図4のBに示すように、外側チャンバ45により受け止める際には、小さい受止ストロークSSとして受け止めることができるものの、内側チャンバ44では、内圧の低下が発生することから、大きな受止ストロークSLとして、受け止めることとなる。
【0040】
また、ピラーカバー部28における厚さが薄くなり易い外側チャンバ45の外縁28ca付近で、歩行者PDを受け止めることとなっても、その外縁28ca付近でも、高い内圧を維持しており、十分な反力を確保できることから、歩行者PDを的確に受け止めて保護できる。
【0041】
そのため、例えば、内圧を高めるような大きな出力のインフレーターを使用したり、ピラーカバー部の厚さ(容積)を大きくせずに、歩行者を的確に受け止めて保護することができる。
【0042】
なお、外側チャンバ45の膨張完了を促進させるために、逆止弁を形成するヒレ部51を有してなる逆流防止手段47は、隔壁40の外周縁40aに複数個所設けても良い。
【0043】
また、第1実施形態の歩行者用エアバッグ23では、隔壁40が、本体部24の前縁24b側まで延設されている。
【0044】
そのため、第1実施形態では、エアバッグ23の本体部24における前縁24b側まで外側チャンバ45が延びていることから、その前縁24b付近は、図6に示すように、フードパネル9の後端9a側における左右の縁9dやその近傍のフェンダーパネル8の上方に、外側チャンバ45を配設させることができて、その付近に歩行者PDが移動してきても、外側チャンバ45の前端45a(図1,7参照)が早く歩行者PDを受け止めて保護することができる。
【0045】
さらに、第1実施形態の歩行者用エアバッグ23では、膨張完了時、図4のBに示すように、隔壁40が、上面40b側を斜め外向きとするように、傾斜して配設されるとともに、下面側パネル32と結合される直線状の下縁結合部42を、フロントピラー5の上方へ突出する頂部5b付近に配設させ、その頂部5bから左右方向の内側に、内側チャンバ44を配設させ、その頂部5bから左右方向の外側に、外側チャンバ45を配設させる構成としている。そのため、外側チャンバ45が膨張を完了させると、上面40b側を斜め外向きに傾斜させた隔壁40から、その直交方向に突出するように、外側チャンバ45が膨張を完了させることとなる。その結果、図4のBに示すように、ピラーカバー部28は、膨張完了時、車体側のフロントシールド4やフロントピラー5に対して、外側チャンバ45側の下面側パネル32の部位32cを非接触の状態とし、内側チャンバ44側の下面側パネル32の部位32bを接触状態として、配設させる形態となる。
【0046】
そのため、第1実施形態では、ピラーカバー部28の膨張完了時、外側チャンバ45が、車体側のフロントピラー5やウインドシールド4の車体側部材から、浮き上がり寸法h分、内側チャンバ44に比べて、浮き上がって膨張することから、一層、フロントピラー5の上面5a側から浮き上がって配設されることとなって、移動してくる歩行者PDを、一層、迅速に受け止めることができる。
【0047】
なお、逆流防止手段としては、第1実施形態の逆流防止手段47の他、図9〜14に示す逆流防止手段47A,47Bが例示できる。
【0048】
図9〜11に示す第2実施形態の歩行者用エアバッグ23Aに使用される逆流防止手段47Aは、内側チャンバ44と外側チャンバ45とを区画する隔壁40Aにおけるピラーカバー部28の後端28a側における後縁40adが、すなわち、上面側パネル31と下面側パネル32との境界部位に配置される後縁側の後縁40adが、非結合部55として、その後縁40adを、外側チャンバ45の内周面側(図例の場合は、上面側パネル31と下面側パネル32との境界部位付近の内周面31a,32a側)に長く接触できるような長さ寸法分、延ばすヒレ部56を設けて構成されている。換言すれば、この逆流防止手段47Aのヒレ部56は、隔壁40Aにおける外周縁40aの上下の縁40aa,40abや前縁40acを上面側パネル31と下面側パネル32との内周面31a,32aに縫合する結合部54とし、上下の結合部54,54の間の後縁40adに、部分的に、非結合部55を設けて、この非結合部55を、逆止弁を構成するヒレ部56としている。そのため、このヒレ部56は、上面側パネル31と下面側パネル32との内周面31a,32aに接触可能として、左右方向の外方に延びて、配設される。
【0049】
この逆流防止手段47Aでは、インフレーター15が作動されて、内側チャンバ44が内圧を高めて膨張すると、図10のA,11のAに示すように、非結合部55のヒレ部56が、膨張用ガスGの圧力により、上面側パネル31と下面側パネル32との境界部位の内周面31a,32a側から内方側に離れて、内側チャンバ44から外側チャンバ45に膨張用ガスGを流入させる供給口57を開口させることとなり、内側チャンバ44からの膨張用ガスGにより、外側チャンバ45が膨張を完了させることとなる。そして、膨張を完了させた外側チャンバ45では、膨張用ガスGが内側チャンバ44側に流れようとしても、図10,11のBに示すように、逆止弁を構成するヒレ部56が、上面側パネル31や下面側パネル32の内周面31a,32aに圧接されて、供給口57を閉塞することから、外側チャンバ45の膨張用ガスGが内側チャンバ44に逆流せず、外側チャンバ45は、膨張完了時の内圧を維持して、良好なクッション作用を奏して、歩行者PDを受け止めて保護することができ、第1実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。
【0050】
なお、この第2実施形態の歩行者用エアバッグ23Aにおいても、外側チャンバ45の膨張完了を促進させるために、逆止弁を形成するヒレ部56を有してなる逆流防止手段47Aは、隔壁40の前縁40ac側にも設けるように構成しても良い。
【0051】
図12〜14に示す第3実施形態の歩行者用エアバッグ23Bの逆流防止手段47Bは、隔壁40Bに設けられた左右方向に貫通した供給口59と、供給口59を覆う逆止弁を形成する弁パネル60と、から構成されている。供給口59は、円形の開口として、隔壁40Bに配設されている。第3実施形態では、弁パネル60は、隔壁40Bの外側チャンバ45側となる外側面(上面)40b側に、供給口59を覆うように配設され、供給口59を間にした上下両縁60aに、隔壁40Bに結合される結合部61,61を設けて、結合部61,61と直交方向の前後両縁60bを、隔壁40Bに結合させない非結合部62として、配設させている。換言すれば、弁パネル60は、可撓性を有した長方形のシート状として、上下の縁60a,60aを隔壁40Bに縫合して結合し、前後の縁60b,60bを隔壁40Bに縫合しない状態として、配設されている。
【0052】
この逆流防止手段47Bでは、内側チャンバ44がインフレーター15からの膨張用ガスGを流入させて内圧を高めれば、図13のA,14のAに示すように、供給口59の外側の弁パネル60の部位が外方に移動し、弁パネル60の非結合部62とした前後両縁60b,60bを潜り抜けて、膨張用ガスGが外側チャンバ45に流入して、外側チャンバ45が膨張を完了させる。その後、膨張用ガスGが外側チャンバ45から内側チャンバ44に逆流しようとすると、図13のB,14のBに示すように、結合部61,61により隔壁40Bに結合されている弁パネル60が、供給口59を塞ぐように、隔壁40B側(内方側)に押し付けれられ、弁パネル60における供給口59に対向する略円形のエリアの弁部60cが、供給口59を閉塞することから、供給口59からの内側チャンバ44への膨張用ガスGの逆流が防止されることとなり、外側チャンバ45は、膨張完了時の内圧を維持して、良好なクッション作用を奏して、歩行者PDを受け止めて保護することができ、第1実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。
【0053】
なお、この第3実施形態の歩行者用エアバッグ23Bにおいても、外側チャンバ45の膨張完了を促進させるために、供給口59と逆止弁を形成する弁パネル60とを有してなる逆流防止手段47Bは、隔壁40Bに複数設けるように構成しても良い。
【0054】
また、各実施形態の歩行者用エアバッグ23,23A,23Bでは、左右の各ピラーカバー部28に略前後方向に沿って配設される隔壁40,40A,40Bとして、その前縁40ac側を、本体部24の左右両端24a付近の前縁24bまで延びるように配設させた。しかし、図15〜17に示す第4実施形態の歩行者用エアバッグ23Cに示すように、隔壁40Cを車両の前後方向に沿わせて配設させてもよい。すなわち、この隔壁40Cは、ピラーカバー部28の後端28aに結合された後縁40adから真直ぐ前方に延ばした前縁40acを、本体部24の左右両端24a付近における前縁24bから外方にずれた位置、すなわち、ピラーカバー部28の前縁28d側の側縁28e付近に、配設させている。
【0055】
なお、このエアバッグ23Cでは、隔壁用基布78Cからなる隔壁40Cを、前後方向に沿わせて配設させている点を除いて、図16に示すように、第1実施形態のエアバッグ23と同様な構成としており、第1実施形態と同じ部材には、第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0056】
隔壁40Cに設けた逆流防止手段47Cも、第1実施形態の逆流防止手段47と同様として、ヒレ部67を設けて構成されている。すなわち、外側チャンバ45と内側チャンバ44とを区画する隔壁40Cが、外周縁40aの全周を、エアバッグ23の外周壁30を形成する上面側パネル31と下面側パネル32との内周面31a,32aに結合させるのではなく、隔壁40Cの外周縁40aの縫製部40cから延びる縫代部40dを外側チャンバ45の内周面側(図例の場合は、下面側パネル32の内周面32a側)に長く接触できるような長さ寸法分、延ばすヒレ部67を設け、このヒレ部67から逆流防止手段47Cが構成されている。換言すれば、隔壁40Cの外周縁40aの下縁40ab側における下面側パネル32との結合部65の間に、部分的に、非結合部66を設けて、この非結合部66が、縫代部40dを逆止弁を構成するヒレ部67を形成している。そして、このヒレ部67は、下面側パネル32の内周面32aに接触可能として、左右方向の外方に延ばして、配設されている。
【0057】
この逆流防止手段47Cでも、第1実施形態の逆流防止手段47と同様に、インフレーター15が作動されて、内側チャンバ44が内圧を高めて膨張すると、図17のAに示すように、非結合部66のヒレ部67が、膨張用ガスGの圧力により、下面側パネル32の内周面32a側から浮き上がって、内側チャンバ44から外側チャンバ45に膨張用ガスGを流入させる供給口68を開口させることとなり、内側チャンバ44からの膨張用ガスGにより、外側チャンバ45が膨張を完了させることとなる。その後、外側チャンバ45から内側チャンバ44へ膨張用ガスGが逆流しようとすると、図17のBに示すように、逆止弁を構成するヒレ部67が、下面側パネル32の内周面32aに圧接されて、供給口68を閉塞させることから、外側チャンバ45の膨張用ガスGが内側チャンバ44に逆流せず、外側チャンバ45は、膨張完了時の内圧を維持して、良好なクッション作用を奏して、歩行者PDを受け止めて保護することができる。
【0058】
なお、このエアバッグ23Cにおいても、外側チャンバ45の膨張完了を促進させるために、逆止弁を形成するヒレ部67を有してなる逆流防止手段47Cは、隔壁40Cの外周縁40aに複数個所設けても良い。
【0059】
そして、この第4実施形態のエアバッグ23Cでも、膨張完了時、ピラーカバー部28(L,R)の内側チャンバ44と外側チャンバ45とを区画する隔壁40Cが、上面側パネル31と結合される上縁結合部41より下面側パネル32と結合される下縁結合部42を、車外側にずらして傾斜して配設されている。すなわち、外側チャンバ45は、図17のA,Bに示すように、ヒレ部67が浮き上がって形成された供給口68を経て、内側チャンバ44から流入する膨張用ガスGにより、膨張を完了させた際、傾斜した隔壁40Cの上方側に配設される構造となって、隔壁40Cと略直交方向として、内側チャンバ44から斜め上方向に突出する形態となる。そのため、図17のBに示すように、外側チャンバ45が、内側チャンバ44から、突出寸法H分、上方側(前方側)に突出する形態となり、その突出寸法H分、歩行者PDを早く受け止めて、受止ストロークを長く確保できることから、歩行者PDの運動エネルギーの吸収量を増加させることができる。
【0060】
さらに、この第4実施形態のエアバッグ23Cでも、膨張完了時、隔壁40Cが、上面40b側を斜め外向きとするように、傾斜して配設されるとともに、下面側パネル32と結合される直線状の下縁結合部42を、フロントピラー5の上方へ突出する頂部5b付近に配設させ、その頂部5bから左右方向の内側に、内側チャンバ44を配設させ、その頂部5bから左右方向の外側に、外側チャンバ45を配設させる構成としている。そのため、外側チャンバ45が膨張を完了させると、上面40b側を斜め外向きに傾斜させた隔壁40から、その直交方向に突出するように、外側チャンバ45が膨張を完了させることとなる。その結果、図17のBに示すように、ピラーカバー部28は、膨張完了時、車体側のフロントシールド4やフロントピラー5に対して、外側チャンバ45側の下面側パネル32の部位32cを非接触の状態とし、内側チャンバ44側の下面側パネル32の部位32bを接触状態として、配設させる形態となる。
【0061】
そのため、第4実施形態のエアバッグ23Cでも、第1実施形態と同様に、ピラーカバー部28の膨張完了時、外側チャンバ45が、車体側のフロントピラー5やウインドシールド4の車体側部材から、内側チャンバ44に比べて、浮き上がり寸法h分、浮き上がって膨張することから、一層、フロントピラー5の上面5a側から浮き上がって配設されることとなって、移動してくる歩行者PDを、一層、迅速に受け止めることができる。
【0062】
なお、各実施形態のエアバッグ23,23A,23B,23Cでは、左右のフロントピラー5L,5Rを覆えるように、左右両側にピラーカバー部28L,28Rを配設させたものを示したが、左右方向の片側ずつのフロントピラー5とカウル6を覆うように、歩行者用エアバッグを構成しても良く、その場合の構成としては、左右方向の一方側のカウル6の上方を覆う本体部24と、本体部の左右方向の端部から後方に延びてフロントピラー5の上方を覆うピラーカバー部28を設け、ピラーカバー部28に、隔壁40,40A,40B,40Cを配設して、本体部24側の内側チャンバ44に、インフレーターを配設するように構成すればよい。
【0063】
また、各実施形態の歩行者用エアバッグ23,23A,23B,23Cでは、内側チャンバ44の内部に膨張用ガスGを供給するインフレーター15を配設させたものを例示したが、歩行者用エアバッグとしては、筒状の接続口部を内側チャンバからエアバッグ外に突出させて、その接続口部にインフレーターを接続させ、エアバッグの外側に配設させたインフレーターから、接続口部を利用して、内側チャンバが膨張用ガスを流入させる構成としてもよい。
【0064】
さらに、歩行者用エアバッグ23が使用される歩行者用エアバッグ装置Mとして、フードパネル9の後端9aの下方のカウル6の前方側に、搭載されるものを例示したが、本発明のエアバッグは、フードパネル9の後端9a自体の下面側に搭載する歩行者用エアバッグ装置に使用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
5(5L,5R)…フロントピラー、5a…上面、5b…頂部、6…カウル、15…インフレーター、16…ガス吐出部、23,23A,23B,23C…(歩行者用)エアバッグ、24…本体部、28(L,R)…ピラーカバー部、30…外周壁、31…上面側パネル、32…下面側パネル、40,40A,40B,40C…隔壁、41…上縁結合部、42…下縁結合部、44…内側チャンバ、45…外側チャンバ、47,47A,47B,47C…逆流防止手段、51,56,67…(逆止弁)ヒレ部、52,57,59,68…供給口、60…(逆止弁)弁パネル、PD…歩行者、G…膨張用ガス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17