特許第6927096号(P6927096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927096
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/063 20060101AFI20210812BHJP
   F04D 17/10 20060101ALI20210812BHJP
   F04B 39/02 20060101ALI20210812BHJP
   F04D 29/70 20060101ALI20210812BHJP
   F04B 39/16 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   F04D29/063
   F04D17/10
   F04B39/02 D
   F04D29/70 N
   F04B39/16 F
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-43245(P2018-43245)
(22)【出願日】2018年3月9日
(65)【公開番号】特開2019-157707(P2019-157707A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福山 了介
(72)【発明者】
【氏名】國枝 享仁
(72)【発明者】
【氏名】光田 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 將弘
(72)【発明者】
【氏名】楳山 亮
(72)【発明者】
【氏名】中根 芳之
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−186238(JP,A)
【文献】 特開2003−193975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/063
F04D 17/10
F04B 39/02
F04D 29/70
F04B 39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低速側シャフトと、
高速側シャフトと一体回転して気体を圧縮するインペラと、
前記低速側シャフトの動力を前記高速側シャフトに伝達する増速機と、
前記インペラを収容するインペラ室、及び前記増速機を収容する増速機室が形成されたハウジングと、
前記インペラ室と前記増速機室とを仕切る仕切壁と、
前記仕切壁に形成されるとともに前記高速側シャフトが挿通されるシャフト挿通孔と、
前記高速側シャフトの外周面と前記シャフト挿通孔の内周面との間に設けられるシール部材と、
前記増速機及び前記シール部材に供給されるオイルが貯留されるオイルパンと、
前記オイルパンに貯留されたオイルを前記増速機及び前記シール部材に供給し、前記オイルパンに戻すオイル通路と、を備えた遠心圧縮機であって、
前記オイル通路は、
前記オイルパンと前記増速機室とに連通するとともに前記増速機及び前記シール部材にオイルを供給する第1オイル通路と、
前記増速機室に連通するとともに前記増速機室内に貯留されるオイルが流入する第2オイル通路と、
前記第2オイル通路における前記増速機室とは反対側の端部から重力方向上側に延びる第3オイル通路と、
前記第3オイル通路における前記第2オイル通路とは反対側の端部と前記オイルパンとを連通するとともに水平方向に延びる第4オイル通路と、を有し、
前記オイルが前記第3オイル通路を通過する際に、前記オイルを含む流体が気体層とオイル層とに分離され、
前記第4オイル通路における前記気体層が通過する部位、及び前記オイルパンにおける前記気体層が貯められる部位の少なくとも一方には、外部と連通する圧抜き通路が設けられ
前記オイル通路を流れるオイルを冷却するオイルクーラを備え、
前記オイルクーラは、前記オイル通路の一部を形成する冷却配管を有し、
前記冷却配管は、前記第2オイル通路、前記第3オイル通路、及び前記第4オイル通路それぞれの少なくとも一部を形成し、
前記冷却配管は、前記冷却配管における前記増速機側の一端から前記冷却配管における前記オイルパン側の他端に向けて重力方向上側及び水平方向にのみ延びることを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記圧抜き通路は、前記オイルパンにおける前記気体層が貯められる部位に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記圧抜き通路には、気体は通過し、液体は通過させない換気膜が配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記第1オイル通路は、互いに分岐するシール部材側供給通路と増速機側供給通路とを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、低速側シャフトと、高速側シャフトと一体回転して気体を圧縮するインペラと、低速側シャフトの動力を高速側シャフトに伝達する増速機と、を備えている。遠心圧縮機のハウジング内には、インペラを収容するインペラ室と、増速機を収容する増速機室とが形成されている。インペラ室と増速機室とは仕切壁によって仕切られている。仕切壁には、シャフト挿通孔が形成されている。高速側シャフトは、増速機室内からシャフト挿通孔を通過してインペラ室内に突出している。
【0003】
このような遠心圧縮機においては、高速側シャフトと増速機との摺動部分の摩擦や焼き付きを抑制するために、例えば特許文献1のように、増速機にオイルが供給されている。増速機に供給されたオイルは、増速機室内に貯留されるため、増速機室内に貯留されるオイルが、シャフト挿通孔を介してインペラ室内へ洩れ出すことを抑制するために、高速側シャフトの外周面とシャフト挿通孔の内周面との間にはシール部材が設けられている。この場合、高速側シャフトとシール部材との摺動部分の摩擦や焼き付きを抑制する必要があるため、シール部材にはオイルが供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−186238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インペラの回転に伴って気体が圧縮されて、インペラ室の圧力が高くなると、高速側シャフトの外周面とシャフト挿通孔の内周面との間を介したインペラ室から増速機室への気体の洩れが生じ、増速機室内の圧力が上昇する場合がある。そして、例えば、インペラが低速で回転している場合や、遠心圧縮機の運転が停止している場合のように、インペラ室の圧力が増速機室の圧力よりも低くなる条件となると、増速機室内のオイルが高速側シャフトの外周面とシャフト挿通孔の内周面との間を介してインペラ室に洩れ出してしまう虞がある。
【0006】
そこで、例えば、増速機室内の圧力が所定の圧力に達すると開弁して、増速機室内の気体を外部へ排出することで、増速機室内の圧力の上昇を抑える圧抜き弁を設けることが考えられるが、この場合、気体と共にオイルも外部へ排出される虞があり、増速機及びシール部材に供給されるオイルの量が少なくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、増速機及びシール部材に供給されるオイルの量が少なくなってしまうことを抑制しつつも、増速機室内の圧力の上昇を抑えることができる遠心圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する遠心圧縮機は、低速側シャフトと、高速側シャフトと一体回転して気体を圧縮するインペラと、前記低速側シャフトの動力を前記高速側シャフトに伝達する増速機と、前記インペラを収容するインペラ室、及び前記増速機を収容する増速機室が形成されたハウジングと、前記インペラ室と前記増速機室とを仕切る仕切壁と、前記仕切壁に形成されるとともに前記高速側シャフトが挿通されるシャフト挿通孔と、前記高速側シャフトの外周面と前記シャフト挿通孔の内周面との間に設けられるシール部材と、前記増速機及び前記シール部材に供給されるオイルが貯留されるオイルパンと、前記オイルパンに貯留されたオイルを前記増速機及び前記シール部材に供給し、前記オイルパンに戻すオイル通路と、を備えた遠心圧縮機であって、前記オイル通路は、前記オイルパンと前記増速機室とに連通するとともに前記増速機及び前記シール部材にオイルを供給する第1オイル通路と、前記増速機室に連通するとともに前記増速機室内に貯留されるオイルが流入する第2オイル通路と、前記第2オイル通路における前記増速機室とは反対側の端部から重力方向上側に延びる第3オイル通路と、前記第3オイル通路における前記第2オイル通路とは反対側の端部と前記オイルパンとを連通するとともに水平方向に延びる第4オイル通路と、を有し、前記オイルが前記第3オイル通路を通過する際に、前記オイルを含む流体が気体層とオイル層とに分離され、前記第4オイル通路における前記気体層が通過する部位、及び前記オイルパンにおける前記気体層が貯められる部位の少なくとも一方には、外部と連通する圧抜き通路が設けられている。
【0009】
これによれば、増速機室内の圧力が上昇しても、圧抜き通路から圧力を抜くことができるため、増速機室内の圧力の上昇を抑えることができる。増速機室から第2オイル通路に流入するオイルには、気体が混合している。第3オイル通路は重力方向上側に延びており、第4オイル通路は水平方向に延びている。これによれば、オイルが第3オイル通路を通過する際に、オイルを含む流体が気体層とオイル層とに分離され、第4オイル通路内では、オイルと気体との比重差によって、オイル層が重力方向下側を通過し、気体層が重力方向上側を通過する。そして、オイルパンには、第4オイル通路内で気体層とオイル層とに分離された気体及びオイルが流入されるため、オイルパン内では、重力方向上側に気体層が貯められ、重力方向下側にオイル層が貯められる。圧抜き通路は、第4オイル通路における気体層が通過する部位、及びオイルパンにおける気体層が貯められる部位の少なくとも一方に設けられているため、気体層を形成する気体が圧抜き通路から外部へ排出される。したがって、気体と共にオイルも外部へ排出されてしまうことを抑制することができ、増速機及びシール部材に供給されるオイルの量が少なくなってしまうことを抑制しつつも、増速機室内の圧力の上昇を抑えることができる。
【0010】
上記遠心圧縮機において、前記圧抜き通路は、前記オイルパンにおける前記気体層が貯められる部位に設けられているとよい。
これによれば、オイルパン内は、比較的広い空間であるため、オイルパン内において、気体層とオイル層とに分離し易く、気体層を形成する気体を圧抜き通路から外部へ排出し易くすることができる。
【0011】
上記遠心圧縮機において、前記圧抜き通路には、気体は通過し、液体は通過させない換気膜が配置されているとよい。これによれば、圧抜き通路を介して外部から遠心圧縮機内に異物や水分が侵入してしまうことを換気膜によって抑制することができる。
【0012】
上記遠心圧縮機において、前記オイル通路を流れるオイルを冷却するオイルクーラを備え、前記オイルクーラは、前記オイル通路の一部を形成する冷却配管を有し、前記冷却配管は、前記第2オイル通路、前記第3オイル通路、及び前記第4オイル通路それぞれの少なくとも一部を形成しているとよい。
【0013】
これによれば、既存の構成であるオイルクーラの冷却配管を用いて、第2オイル通路、第3オイル通路、及び第4オイル通路それぞれの少なくとも一部を形成することができるため、第2オイル通路、第3オイル通路、及び第4オイル通路を形成するための別の構成を新たに追加する必要が無く、遠心圧縮機の構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、増速機及びシール部材に供給されるオイルの量が少なくなってしまうことを抑制しつつも、増速機室内の圧力の上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態における遠心圧縮機を示す側断面図。
図2図1における2−2線断面図。
図3】オイルクーラ及びオイルパン周辺を拡大して示す断面図。
図4】別の実施形態における第3供給通路を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、遠心圧縮機を具体化した一実施形態を図1図3にしたがって説明する。本実施形態の遠心圧縮機は、燃料電池を電力源として走行する燃料電池車両(FCV)に搭載され、燃料電池に対して空気を供給する。
【0017】
図1に示すように、遠心圧縮機10のハウジング11は、モータハウジング12と、モータハウジング12に連結される増速機ハウジング13と、増速機ハウジング13に連結されるプレート14と、プレート14に連結されるコンプレッサハウジング15と、を備えている。モータハウジング12、増速機ハウジング13、プレート14、及びコンプレッサハウジング15は、例えばアルミニウムにより形成された金属材料製である。ハウジング11は略筒状である。モータハウジング12、増速機ハウジング13、プレート14、及びコンプレッサハウジング15は、ハウジング11の軸線方向にこの順序で配列されている。
【0018】
モータハウジング12は、円板状の底壁12aと、底壁12aの外周縁から円筒状に延設された周壁12bと、を有する有底円筒状である。増速機ハウジング13は、円板状の底壁13aと、底壁13aの外周縁から円筒状に延設された周壁13bと、を有する有底円筒状である。
【0019】
モータハウジング12の周壁12bにおける底壁12aとは反対側の端部は、増速機ハウジング13の底壁13aに連結されている。そして、モータハウジング12の周壁12bにおける底壁12aとは反対側の開口は、増速機ハウジング13の底壁13aによって閉塞されている。底壁13aの中央部には、貫通孔13hが形成されている。
【0020】
増速機ハウジング13の周壁13bにおける底壁13aとは反対側の端部は、プレート14に連結されている。そして、増速機ハウジング13の周壁13bにおける底壁13aとは反対側の開口は、プレート14によって閉塞されている。プレート14の中央部には、シャフト挿通孔14hが形成されている。
【0021】
コンプレッサハウジング15は、プレート14における増速機ハウジング13とは反対側の面に連結されている。コンプレッサハウジング15には、気体である空気が吸入される吸入口15aが形成されている。吸入口15aは、コンプレッサハウジング15におけるプレート14とは反対側の端面の中央部に開口するとともに、コンプレッサハウジング15におけるプレート14とは反対側の端面の中央部からハウジング11の軸線方向に延びている。
【0022】
遠心圧縮機10は、低速側シャフト16と、低速側シャフト16を回転させる電動モータ17と、を備えている。ハウジング11内には、電動モータ17を収容するモータ室12cが形成されている。モータ室12cは、モータハウジング12の底壁12aの内面、周壁12bの内周面、及び増速機ハウジング13の底壁13aの外面によって区画されている。低速側シャフト16は、低速側シャフト16の軸線方向がモータハウジング12の軸線方向に一致した状態でモータハウジング12内に収容されている。低速側シャフト16は、例えば鉄又は合金で形成された金属材料製である。
【0023】
モータハウジング12の底壁12aの内面には、筒状のボス部12fが突出している。低速側シャフト16の一端部は、ボス部12f内に挿入されている。低速側シャフト16の一端部とボス部12fとの間には、第1軸受18が設けられている。そして、低速側シャフト16の一端部は、第1軸受18を介してモータハウジング12の底壁12aに回転可能に支持されている。
【0024】
低速側シャフト16の他端部は、貫通孔13hに挿入されている。低速側シャフト16の他端部と貫通孔13hとの間には、第2軸受19が設けられている。そして、低速側シャフト16の他端部は、第2軸受19を介して増速機ハウジング13の底壁13aに回転可能に支持されている。よって、低速側シャフト16は、ハウジング11に回転可能に支持されている。低速側シャフト16の他端は、モータ室12cから貫通孔13hを通過して増速機ハウジング13内に突出している。
【0025】
低速側シャフト16の他端部と貫通孔13hとの間には、シール部材20が設けられている。シール部材20は、低速側シャフト16の他端部と貫通孔13hとの間において、第2軸受19よりもモータ室12c寄りに配置されている。シール部材20は、低速側シャフト16の外周面と貫通孔13hの内周面との間をシールする。
【0026】
電動モータ17は、筒状のステータ21と、ステータ21の内側に配置されるロータ22とからなる。ロータ22は、低速側シャフト16に固定されるとともに低速側シャフト16と一体的に回転する。ステータ21は、ロータ22を取り囲んでいる。ロータ22は、低速側シャフト16に止着された円筒状のロータコア22aと、ロータコア22aに設けられた複数の永久磁石(図示せず)と、を有している。ステータ21は、モータハウジング12の周壁12bの内周面に固定された筒状のステータコア21aと、ステータコア21aに捲回されたコイル21bと、を有している。そして、コイル21bに電流が流れることによって、ロータ22と低速側シャフト16とが一体的に回転する。
【0027】
遠心圧縮機10は、高速側シャフト31と、低速側シャフト16の動力を高速側シャフト31に伝達する増速機30と、を備えている。ハウジング11内には、増速機30を収容する増速機室13cが形成されている。増速機室13cは、増速機ハウジング13の底壁13aの内面、周壁13bの内周面、及びプレート14によって区画されている。増速機室13c内にはオイルが貯留されている。シール部材20は、増速機室13c内に貯留されているオイルが、低速側シャフト16の外周面と貫通孔13hの内周面との間を介してモータ室12cに洩れ出すことを抑制している。
【0028】
高速側シャフト31は、例えば鉄又は合金で形成された金属材料製である。高速側シャフト31は、高速側シャフト31の軸線方向が増速機ハウジング13の軸線方向に一致した状態で増速機室13cに収容されている。高速側シャフト31におけるモータハウジング12とは反対側の端部は、プレート14のシャフト挿通孔14hを通過してコンプレッサハウジング15内に突出している。高速側シャフト31の軸線は、低速側シャフト16の軸線と一致している。
【0029】
遠心圧縮機10は、高速側シャフト31に取り付けられたインペラ24を備えている。ハウジング11内には、インペラ24を収容するインペラ室15bが形成されている。インペラ室15bは、コンプレッサハウジング15とプレート14とによって区画されている。プレート14は、インペラ室15bと増速機室13cとを仕切る仕切壁である。そして、高速側シャフト31が挿通されるシャフト挿通孔14hは、仕切壁であるプレート14に形成されている。
【0030】
高速側シャフト31の外周面とシャフト挿通孔14hの内周面との間には、シール部材23が設けられている。シール部材23は、例えば、メカニカルシールである。シール部材23は、高速側シャフト31の外周面とシャフト挿通孔14hの内周面との間をシールする。そして、シール部材23によって、増速機室13c内に貯留されているオイルが高速側シャフト31の外周面とシャフト挿通孔14hの内周面との間を介してインペラ室15bに洩れ出すことが抑制されている。
【0031】
インペラ室15bと吸入口15aとは連通している。インペラ室15bは、吸入口15aから離れるにつれて徐々に拡径していく略円錐台孔形状になっている。高速側シャフト31におけるコンプレッサハウジング15内に突出している突出端部は、インペラ室15bに突出している。
【0032】
インペラ24は、基端面24aから先端面24bに向かうに従って徐々に縮径した筒状である。インペラ24は、インペラ24の回転軸線方向に延び、且つ、高速側シャフト31が挿通可能な挿通孔24cを有している。インペラ24は、高速側シャフト31におけるコンプレッサハウジング15内に突出している突出端部が挿通孔24cに挿通された状態で、高速側シャフト31と一体的に回転可能に高速側シャフト31に取り付けられている。これにより、高速側シャフト31が回転することによってインペラ24が回転して、吸入口15aから吸入された空気が圧縮される。よって、インペラ24は、高速側シャフト31と一体回転して空気を圧縮する。
【0033】
また、遠心圧縮機10は、インペラ24によって圧縮された空気が流入するディフューザ流路25と、ディフューザ流路25を通過した空気が流入する吐出室26と、を備えている。
【0034】
ディフューザ流路25は、コンプレッサハウジング15におけるプレート14と対向する面と、プレート14とによって区画されている。ディフューザ流路25は、インペラ室15bよりも高速側シャフト31の径方向外側に位置するとともにインペラ室15bに連通している。ディフューザ流路25は、インペラ24及びインペラ室15bを囲む環状に形成されている。
【0035】
吐出室26は、ディフューザ流路25よりも高速側シャフト31の径方向外側に位置するとともにディフューザ流路25に連通している。吐出室26は環状である。インペラ室15bと吐出室26とはディフューザ流路25を介して連通している。インペラ24によって圧縮された空気は、ディフューザ流路25を通ることによって、更に圧縮されて吐出室26に流れ、吐出室26から吐出される。
【0036】
増速機30は、低速側シャフト16の回転を増速させて高速側シャフト31に伝達する。増速機30は、所謂トラクションドライブ式(摩擦ローラ式)である。増速機30は、低速側シャフト16の他端に連結されたリング部材32を備えている。リング部材32は金属製である。リング部材32は、低速側シャフト16の回転に伴って回転する。リング部材32は、低速側シャフト16の他端に連結された円板状のベース33と、ベース33の外縁部から円筒状に延設された筒部34と、を有する有底円筒状である。ベース33は、低速側シャフト16に対して低速側シャフト16の径方向に延びている。筒部34の軸線は、低速側シャフト16の軸線と一致している。
【0037】
図2に示すように、高速側シャフト31の一部は、筒部34の内側に配置されている。また、増速機30は、筒部34と高速側シャフト31との間に設けられる3つのローラ35を備えている。3つのローラ35は、例えば金属製であり、高速側シャフト31と同一金属、例えば鉄又は鉄の合金で構成されている。3つのローラ35は、高速側シャフト31の周方向に互いに所定の間隔(例えば120度ずつ)をあけて配置されている。3つのローラ35は同一形状である。3つのローラ35は、筒部34の内周面及び高速側シャフト31の外周面の双方と当接する。
【0038】
図1に示すように、各ローラ35は、円柱状のローラ部35aと、ローラ部35aの軸線方向の第1端面35bから突出する円柱状の第1突起35cと、ローラ部35aの軸線方向の第2端面35dから突出する円柱状の第2突起35eと、を有している。ローラ部35aの軸心、第1突起35cの軸心、及び第2突起35eの軸心は一致している。各ローラ35のローラ部35aの軸心が延びる方向(回転軸線方向)と高速側シャフト31の軸線方向とは一致している。ローラ部35aの外径は、高速側シャフト31の外径よりも大きい。
【0039】
図1及び図2に示すように、増速機30は、プレート14と協働して各ローラ35を回転可能に支持する支持部材39を備えている。支持部材39は、筒部34の内側に配置されている。支持部材39は、円板状の支持ベース40と、支持ベース40から立設された柱状の3つの立設壁41と、を有している。支持ベース40は、プレート14に対して各ローラ35の回転軸線方向に対向配置されている。3つの立設壁41は、支持ベース40におけるプレート14側の面40aからプレート14に向けてそれぞれ延びている。そして、3つの立設壁41は、筒部34の内周面と、隣り合う2つのローラ部35aの外周面とによって区画された3つの空間を埋めるようにそれぞれ配置されている。
【0040】
支持部材39には、ボルト44が挿通可能なボルト挿通孔45が3つ形成されている。各ボルト挿通孔45は、3つの立設壁41それぞれをローラ35の回転軸線方向に貫通している。図1に示すように、プレート14における支持部材39側の面14aには、各ボルト挿通孔45に連通する雌ねじ孔46がそれぞれ形成されている。そして、支持部材39は、各ボルト挿通孔45に挿通された各ボルト44が各雌ねじ孔46に螺合されることによってプレート14に取り付けられている。
【0041】
プレート14における支持部材39側の面14aは、3つの凹部51(図1では一つの凹部51のみ図示)を有している。3つの凹部51は、高速側シャフト31の周方向に互いに所定の間隔(例えば120度ずつ)をあけて配置されている。3つの凹部51それぞれの配置位置は、3つのローラ35それぞれの配置位置に対応している。3つの凹部51内には、円環状のローラ軸受52がそれぞれ配置されている。
【0042】
支持ベース40におけるプレート14側の面40aは、3つの凹部53(図1では一つの凹部53のみ図示)を有している。3つの凹部53は、高速側シャフト31の周方向に互いに所定の間隔(例えば120度ずつ)をあけて配置されている。3つの凹部53それぞれの配置位置は、3つのローラ35それぞれの配置位置に対応している。3つの凹部53内には、円環状のローラ軸受54が配置されている。
【0043】
各ローラ35の第1突起35cは、各凹部51内のローラ軸受52内に挿入され、ローラ軸受52を介してプレート14に回転可能に支持されている。各ローラ35の第2突起35eは、各凹部53内のローラ軸受54内に挿入され、ローラ軸受54を介して支持部材39に回転可能に支持されている。
【0044】
高速側シャフト31には、高速側シャフト31の軸線方向に離間して対向配置された一対のフランジ部31fが設けられている。3つのローラ35のローラ部35aは、一対のフランジ部31fによって挟持されている。これにより、高速側シャフト31の軸線方向における高速側シャフト31と3つのローラ35のローラ部35aとの位置ずれが抑制されている。
【0045】
図2に示すように、3つのローラ35、リング部材32、及び高速側シャフト31は、3つのローラ35と高速側シャフト31及び筒部34とが互いに押し付けあっている状態でユニット化されている。そして、高速側シャフト31は、3つのローラ35によって回転可能に支持されている。
【0046】
3つのローラ35のローラ部35aの外周面と筒部34の内周面との当接箇所であるリング側当接箇所Paには押し付け荷重が付与されている。また、3つのローラ35の外周面と高速側シャフト31の外周面との当接箇所であるシャフト側当接箇所Pbには、押し付け荷重が付与されている。リング側当接箇所Pa及びシャフト側当接箇所Pbは、高速側シャフト31の軸線方向に延びている。
【0047】
そして、電動モータ17が駆動して、低速側シャフト16及びリング部材32が回転すると、リング部材32の回転力が、各リング側当接箇所Paを介して3つのローラ35に伝達されて3つのローラ35が回転し、3つのローラ35の回転力が、各シャフト側当接箇所Pbを介して高速側シャフト31に伝達される。その結果、高速側シャフト31が回転する。このとき、リング部材32は、低速側シャフト16と同一速度で回転し、3つのローラ35は低速側シャフト16よりも高速で回転する。そして、3つのローラ35の外径よりも外径が小さい高速側シャフト31は、3つのローラ35よりも高速で回転する。これにより、増速機30によって、高速側シャフト31が低速側シャフト16よりも高速で回転する。
【0048】
図1に示すように、遠心圧縮機10は、増速機30及びシール部材23にオイルを供給するオイル通路60を備えている。また、遠心圧縮機10は、オイル通路60を流れるオイルを冷却するオイルクーラ55と、増速機30及びシール部材23に供給されるオイルが貯留されるオイルパン56と、オイルパン56に貯留されたオイルを吸い上げて吐出するオイルポンプ57と、を備えている。オイル通路60は、オイルパン56に貯留されたオイルを増速機30及びシール部材23に供給する。
【0049】
オイルクーラ55は、モータハウジング12の周壁12bの外周面に取り付けられる有底筒状のカバー部材55aを有している。そして、カバー部材55aの内面とモータハウジング12の周壁12bの外周面とによって空間55bが区画されている。また、オイルクーラ55は、空間55b内に配置される冷却配管58を有している。冷却配管58の両端部は、モータハウジング12に支持されている。冷却配管58は、オイル通路60の一部を形成する。
【0050】
図3に示すように、冷却配管58は、第1直線部58a、第1屈曲部58b、第2直線部58c、第2屈曲部58d、及び第3直線部58eを有している。第1直線部58aの一端は、冷却配管58の入口を形成している。第1直線部58aの他端は、第1屈曲部58bの一端に連通している。第1屈曲部58bは、第1直線部58aの他端から半円弧状に屈曲している。第1屈曲部58bの他端は、第2直線部58cの一端に連通している。第2直線部58cの他端は、第2屈曲部58dの一端に連通している。第2屈曲部58dは、第2直線部58cの他端から第1直線部58aに対して離間する方向へ半円弧状に屈曲している。第2屈曲部58dの他端は、第3直線部58eの一端に連通している。第3直線部58eの他端は、冷却配管58の出口を形成している。第1直線部58a、第2直線部58c、及び第3直線部58eは、それぞれ平行に延びている。
【0051】
遠心圧縮機10は、第1直線部58aが、第2直線部58c及び第3直線部58eよりも重力方向下側に位置するとともに、第1直線部58a、第2直線部58c、及び第3直線部58eが水平に延びるように燃料電池車両に搭載されている。よって、冷却配管58の入口は、冷却配管58の出口よりも重力方向下側に位置している。第1屈曲部58bは、第1直線部58aの他端から重力方向上側に屈曲している。第2屈曲部58dは、第2直線部58cの他端から重力方向上側に屈曲している。
【0052】
また、カバー部材55aには、導入配管55d及び排出配管55eが設けられている。空間55bには、導入配管55dから低温流体が導入される。空間55bに導入された低温流体は、排出配管55eから排出されて図示しない冷却装置によって冷却された後、再び導入配管55dを介して空間55bに導入される。低温流体は、例えば、水である。
【0053】
図1に示すように、オイルパン56は、モータハウジング12の底壁12aの内部に形成されている。オイルパン56は、モータハウジング12の底壁12aにおける外周側の部位に位置している。また、オイルポンプ57は、モータハウジング12の底壁12aの内部に設けられている。オイルポンプ57は、例えば、トロコイドポンプである。オイルポンプ57は、低速側シャフト16の一端部に連結されている。そして、オイルポンプ57は、低速側シャフト16の回転に伴って駆動する。
【0054】
オイル通路60は、増速機室13cとオイルクーラ55とを接続する第1接続通路61を有している。第1接続通路61は、増速機ハウジング13を貫通してモータハウジング12の周壁12bの内部まで延びている。第1接続通路61の一端は、増速機室13c内に開口している。第1接続通路61の他端は、冷却配管58の第1直線部58aの一端に接続されている。
【0055】
遠心圧縮機10は、第1接続通路61における増速機室13c内に開口する部分が重力方向下側に位置するように燃料電池車両に搭載されている。よって、増速機室13c内のオイルは、第1接続通路61に流入する。
【0056】
オイル通路60は、オイルクーラ55とオイルパン56とを接続する第2接続通路62を有している。第2接続通路62は、モータハウジング12の内部に形成されている。第2接続通路62の一端は、冷却配管58の第3直線部58eの他端に接続されている。第2接続通路62の他端は、オイルパン56内における重力方向上側に開口している。第2接続通路62は、水平方向に延びている。
【0057】
増速機室13c内に貯留されているオイルは、第1接続通路61に流入して、第1接続通路61、冷却配管58、及び第2接続通路62を通過する。ここで、冷却配管58を通過するオイルは、オイルクーラ55の空間55bに導入される低温流体との熱交換が行われることにより冷却される。そして、オイルクーラ55によって冷却されたオイルが、オイルパン56に貯留される。
【0058】
オイル通路60は、オイルパン56とオイルポンプ57とを接続する第3接続通路63を有している。第3接続通路63は、モータハウジング12の内部に形成されている。第3接続通路63の一端は、オイルパン56内に突出している。第3接続通路63の他端はオイルポンプ57の吸入口57aに接続されている。
【0059】
オイル通路60は、オイルポンプ57の吐出口57bに接続される第4接続通路64を有している。第4接続通路64は、モータハウジング12の底壁12a及び周壁12bを貫通して増速機ハウジング13の周壁13bの内部まで延びている。第4接続通路64の一端は、オイルポンプ57の吐出口57bに接続されている。第4接続通路64の他端は、増速機ハウジング13の周壁13bの内部に位置している。
【0060】
オイル通路60は、第4接続通路64の他端から分岐する第1分岐通路65及び第2分岐通路66を有している。第1分岐通路65は、第4接続通路64の他端からモータハウジング12に向けて延びており、増速機ハウジング13の周壁13b及び増速機ハウジング13の底壁13aを貫通している。第1分岐通路65の一端は、第4接続通路64の他端に連通している。第1分岐通路65の他端は、貫通孔13hに開口している。
【0061】
第2分岐通路66は、第4接続通路64の他端からプレート14に向けて延びており、増速機ハウジング13の周壁13bを貫通してプレート14の内部まで延びている。第2分岐通路66の一端は、第4接続通路64の他端に連通している。第2分岐通路66の他端は、プレート14の内部に位置している。
【0062】
オイル通路60は、第2分岐通路66の他端に連通する共通通路67を有している。共通通路67は、第2分岐通路66に対して直交する方向であって、且つ第2分岐通路66の他端から重力方向下側へ直線状に延びている。また、オイル通路60は、共通通路67から分岐するシール部材側供給通路69及び増速機側供給通路70を有している。シール部材側供給通路69は、共通通路67から重力方向下側へ直線状に延びてシャフト挿通孔14hに開口している。シール部材側供給通路69におけるシャフト挿通孔14hに対する開口は、シール部材23と対向している。増速機側供給通路70は、共通通路67からコンプレッサハウジング15とは反対側に向けて直線状に延びてプレート14を貫通し、立設壁41を貫通して立設壁41におけるローラ部35aの外周面と向かい合う位置に開口している。よって、増速機側供給通路70は、増速機室13cに連通している。
【0063】
第3接続通路63、第4接続通路64、第2分岐通路66、共通通路67、シール部材側供給通路69、及び増速機側供給通路70は、オイルパン56と増速機室13cとに連通するとともに増速機30及びシール部材23にオイルを供給する第1オイル通路71を形成している。よって、オイル通路60は、オイルパン56と増速機室13cとに連通するとともに増速機30及びシール部材23にオイルを供給する第1オイル通路71を有している。
【0064】
図3に示すように、オイル通路60は、増速機室13cに連通するとともに増速機30及びシール部材23に供給されて増速機室13c内に貯留されるオイルが流入する第2オイル通路72を有している。第2オイル通路72は、第1接続通路61、冷却配管58の第1直線部58a、第1屈曲部58b、及び第2直線部58cにより構成されている。
【0065】
また、オイル通路60は、第2オイル通路72における増速機室13cとは反対側の端部から重力方向上側に延びる第3オイル通路73を有している。第2直線部58cの他端部は、第2オイル通路72における増速機室13cとは反対側の端部である。そして、本実施形態において、第2直線部58cの他端から重力方向上側に屈曲して延びる第2屈曲部58dは、第3オイル通路73を構成している。
【0066】
さらに、オイル通路60は、第3オイル通路73における第2オイル通路72と反対側の端部とオイルパン56とを連通するとともに水平方向に延びる第4オイル通路74を有している。第2屈曲部58dの他端部は、第3オイル通路73における第2オイル通路72とは反対側の端部である。そして、本実施形態において、第2屈曲部58dの他端から水平方向に延びる第3直線部58e及び第2接続通路62は、第4オイル通路74を構成している。
【0067】
よって、冷却配管58は、第1直線部58a、第1屈曲部58b、及び第2直線部58cが第2オイル通路72の一部を形成し、第2屈曲部58dが第3オイル通路73を形成し、第3直線部58eが第4オイル通路74の一部を形成している。そして、第1オイル通路71、第2オイル通路72、第3オイル通路73、及び第4オイル通路74を有するオイル通路60は、オイルパン56に貯留されたオイルを増速機30及びシール部材23に供給し、オイルパン56に戻す。
【0068】
オイルパン56における重力方向上側の部位には、外部と連通する圧抜き通路75が設けられている。圧抜き通路75には、換気膜76が配置されている。換気膜76は、気体は通過し、液体は通過させない膜である。
【0069】
電動モータ17が駆動されると、低速側シャフト16の回転によりオイルポンプ57が駆動されて、オイルパン56内に貯留されているオイルが第3接続通路63及び吸入口57aを介してオイルポンプ57内に吸入され、吐出口57bを介して第4接続通路64に吐出される。オイルポンプ57は、低速側シャフト16の回転数の増加に伴い、吐出口57bから吐出されるオイルの量が比例的に増加するように駆動される。そして、第4接続通路64に吐出されたオイルは、第4接続通路64を流れて第1分岐通路65及び第2分岐通路66にそれぞれ分配される。
【0070】
第4接続通路64から第1分岐通路65に分配されたオイルは、第1分岐通路65を流れて貫通孔13h内に流入し、シール部材20及び第2軸受19に供給される。これにより、シール部材20と低速側シャフト16との摺動部分、及び第2軸受19と低速側シャフト16との摺動部分の潤滑が良好なものとなる。
【0071】
第4接続通路64から第2分岐通路66に分配されたオイルは、第2分岐通路66を介して共通通路67に流入する。共通通路67を流れるオイルは、その一部がシール部材側供給通路69に分配され、その他のオイルが増速機側供給通路70を流れる。共通通路67からシール部材側供給通路69に分配されたオイルは、シール部材側供給通路69を流れてシャフト挿通孔14hに流入し、シール部材23に供給される。これにより、シール部材23と高速側シャフト31との摺動部分の潤滑が良好なものとなる。また、増速機側供給通路70を流れるオイルは、ローラ部35aの外周面に供給される。これにより、ローラ部35aと高速側シャフト31との摺動部分の潤滑が良好なものとなる。シール部材23と高速側シャフト31との摺動部分、及びローラ部35aと高速側シャフト31との摺動部分の潤滑に寄与したオイルは、増速機室13c内に戻される。
【0072】
次に、本実施形態の作用について説明する。
増速機室13cから第2オイル通路72に流入するオイルには、空気が混入している。第3オイル通路73は重力方向上側に延びており、第4オイル通路74は水平方向に延びている。このため、オイルが第3オイル通路73を通過する際に、オイルを含む流体が気体層である空気層A1とオイル層A2とに分離され、図3において拡大して示すように、第4オイル通路74内では、オイルと空気との比重差によって、オイル層A2が重力方向下側を通過し、空気層A1が重力方向上側を通過する。
【0073】
そして、オイルパン56には、第4オイル通路74内で空気層A1とオイル層A2とに分離された空気及びオイルが流入されるため、オイルパン56内では、重力方向上側に空気層A1が貯められ、重力方向下側にオイル層A2が貯められる。
【0074】
圧抜き通路75は、オイルパン56における重力方向上側の部位、すなわち、オイルパン56における空気層A1が貯められる部位に設けられているため、空気層A1を形成する空気が圧抜き通路75から外部へ排出される。したがって、空気と共にオイルも外部へ排出されてしまうことが抑制される。そして、増速機室13c内の圧力の上昇が抑えられる。
【0075】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)オイルパン56における空気層A1が貯められる部位には、圧抜き通路75が設けられている。これによれば、インペラ24の回転に伴って空気が圧縮されて、インペラ室15bの圧力が高くなり、高速側シャフト31の外周面とシャフト挿通孔14hの内周面との間を介したインペラ室15bから増速機室13cへの空気の洩れが生じて、増速機室13c内の圧力が上昇したとしても、圧抜き通路75から圧力を抜くことができる。これにより、増速機室13c内の圧力の上昇を抑えることができる。また、オイルが第3オイル通路73を通過する際に、オイルを含む流体が空気層A1とオイル層A2とに分離され、オイルパン56には、重力方向上側に空気層A1が貯められ、重力方向下側にオイル層A2が貯められる。圧抜き通路75は、オイルパン56における空気層A1が貯められる部位に設けられているため、空気層A1を形成する空気が圧抜き通路75から外部へ排出される。したがって、空気と共にオイルも外部へ排出されてしまうことを抑制することができ、増速機30及びシール部材23に供給されるオイルの量が少なくなってしまうことを抑制しつつも、増速機室13c内の圧力の上昇を抑えることができる。
【0076】
(2)圧抜き通路75は、オイルパン56における空気層A1が貯められる部位に設けられている。これによれば、オイルパン56内は、比較的広い空間であるため、オイルパン56内において、空気によって重力方向上側に形成される空気層A1と、オイルによって重力方向下側に形成されるオイル層A2とに分離し易く、空気層A1を形成する空気を圧抜き通路75から外部へ排出し易くすることができる。
【0077】
(3)圧抜き通路75には、気体は通過し、液体は通過させない換気膜76が配置されている。これによれば、圧抜き通路75を介して外部から遠心圧縮機10内に異物や水分が侵入してしまうことを換気膜76によって抑制することができる。
【0078】
(4)オイルクーラ55の冷却配管58は、第2オイル通路72、第3オイル通路73、及び第4オイル通路74それぞれの一部を形成している。これによれば、既存の構成であるオイルクーラ55の冷却配管58を用いて、第2オイル通路72、第3オイル通路73、及び第4オイル通路74の一部を形成することができるため、第2オイル通路72、第3オイル通路73、及び第4オイル通路74を形成するための別の構成を新たに追加する必要が無く、遠心圧縮機10の構成を簡素化することができる。
【0079】
(5)増速機室13c内の圧力の上昇を抑えることができるため、例えば、インペラ24が低速で回転している場合や、遠心圧縮機10の運転が停止している場合のように、インペラ室15bの圧力が増速機室13cの圧力よりも低くなる条件となっても、増速機室13c内の圧力とインペラ室15b内の圧力との差を小さくすることができる。よって、増速機室13c内のオイルが高速側シャフト31の外周面とシャフト挿通孔14hの内周面との間を介してインペラ室15bに洩れ出してしまうことを抑制することができる。
【0080】
(6)増速機室13c内からインペラ室15b内へのオイルの洩れが抑制されるため、遠心圧縮機10によって圧縮された空気と共にオイルが燃料電池に供給されてしまうことが抑制され、燃料電池の発電効率が低下してしまうことを回避することができる。
【0081】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図4に示すように、第4オイル通路74における重力方向上側の部位、すなわち、第4オイル通路74における空気層A1が通過する部位に、外部と連通する圧抜き通路75が設けられていてもよい。これによれば、空気層A1を形成する空気が圧抜き通路75から外部へ排出される。したがって、空気と共にオイルも外部へ排出されてしまうことを抑制することができる。また、この場合、圧抜き通路75が、オイルパン56における空気層A1が貯められる部位にも設けられていてもよいし、オイルパン56における空気層A1が貯められる部位に圧抜き通路75が設けられていなくてもよい。要は、圧抜き通路75は、第4オイル通路74における空気層A1が通過する部位、及びオイルパン56における空気層A1が貯められる部位の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0082】
○ 実施形態において、第2オイル通路72、第3オイル通路73、及び第4オイル通路74が、オイルクーラ55の冷却配管58のみによって形成されていてもよい。要は、冷却配管58は、第2オイル通路72、第3オイル通路73、及び第4オイル通路74それぞれの少なくとも一部を形成していればよい。
【0083】
○ 実施形態において、オイルクーラ55の冷却配管58を用いて、第2オイル通路72、第3オイル通路73、及び第4オイル通路74の一部を形成しなくてもよく、例えば、ハウジング11の内部に、第2オイル通路72、第3オイル通路73、及び第4オイル通路74を形成してもよい。
【0084】
○ 実施形態において、圧抜き通路75に、増速機室13c内の圧力が所定の圧力に達すると開弁する圧抜き弁を設けてもよい。また、圧抜き弁は、電気信号により開閉するとともに遠心圧縮機10の運転中のみに開弁する電磁弁であってもよい。
【0085】
○ 実施形態において、遠心圧縮機10の適用対象及び圧縮対象の気体は任意である。例えば、遠心圧縮機10は空調装置に用いられていてもよく、圧縮対象の気体は冷媒ガスであってもよい。また、遠心圧縮機10の搭載対象は、車両に限られず任意である。
【符号の説明】
【0086】
A1…気体層としての空気層、A2…オイル層、10…遠心圧縮機、11…ハウジング、13c…増速機室、14…仕切壁であるプレート、14h…シャフト挿通孔、15b…インペラ室、16…低速側シャフト、23…シール部材、24…インペラ、30…増速機、31…高速側シャフト、55…オイルクーラ、56…オイルパン、58…冷却配管、60…オイル通路、71…第1オイル通路、72…第2オイル通路、73…第3オイル通路、74…第4オイル通路、75…圧抜き通路、76…換気膜。
図1
図2
図3
図4