特許第6927118号(P6927118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927118
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】車載用電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20210812BHJP
【FI】
   F04B39/00 106A
   F04B39/00 106Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-65980(P2018-65980)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-173739(P2019-173739A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
(72)【発明者】
【氏名】江波 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】矢野 順也
(72)【発明者】
【氏名】加生 茂寛
(72)【発明者】
【氏名】塚原 正人
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−040548(JP,A)
【文献】 特開2004−171832(JP,A)
【文献】 特開2002−198127(JP,A)
【文献】 特開2008−041600(JP,A)
【文献】 特開2013−160092(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第2003−0092395(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載電源から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータと、
前記インバータから出力される交流電力で駆動するモータと、
互いに嵌め合わせられることで、前記車載電源と前記モータとを電気的に接続する第1コネクタ及び第2コネクタと、を備えた車載用電動圧縮機であって、
前記第1コネクタは、
樹脂製であり、筒状の被挿入部と、
前記被挿入部の内側に配置される第1導電部と、
前記被挿入部と前記第1導電部との間に配置される金属製の第1シールドと、を備え、
前記第2コネクタは、
樹脂製であり、前記被挿入部内に挿入可能な筒状の挿入部と、
前記挿入部の内側に配置され、前記第1導電部に接続される第2導電部と、
前記挿入部と前記第2導電部との間に配置される金属製の第2シールドと、を備え、
前記第1シールド、及び、前記第2シールドのうちの一方は、他方に向けて突出する凸部を備え、
前記被挿入部の内面と前記挿入部の外面との間には、前記内面及び前記外面のうち一方に一体であり、他方に接触し、前記挿入部の挿入方向に延設されたリブが配置され
前記第1コネクタ、及び、前記第2コネクタのうちの一方は、前記凸部の突出方向に位置し、前記第1シールド及び前記第2シールドのうち前記凸部を備えていないシールドを前記凸部とともに挟み、前記第1シールドと前記第2シールドとを接触させて電気的に接続するシールド支持部を備え、
前記シールド支持部は、前記リブに対して前記挿入部を介して重なり合って延在し、前記凸部に向かって突出する突起である車載用電動圧縮機。
【請求項2】
記インバータは、インバータケースに収容され、
前記インバータケースは、
前記第2シールドと一体である金属製のケースシールドと、
前記ケースシールドに重ねて設けられた樹脂製のケース樹脂部と、を備え、
前記挿入部、及び、前記リブは、前記ケース樹脂部に一体である請求項1に記載の車載用電動圧縮機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用電動圧縮機は、車載電源から供給される直流電力を交流電力に変換して出力するインバータと、インバータから出力される交流電力で駆動するモータと、を備える。特許文献1に記載の車載用電動圧縮機は、パワー線により車載電源に接続された第1コネクタに嵌め合わせされる第2コネクタを備える。第2コネクタは、インバータに電気的に接続されている。第1コネクタと第2コネクタとが嵌め合わされることで、車載電源とインバータとは、電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−40548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、第1コネクタに接続されるパワー線が車両の走行などによる振動で揺動すると、第1コネクタと第2コネクタに相対ずれが生じる。すると、第1コネクタ、及び、第2コネクタには摩耗が生じることになる。
【0005】
本発明の目的は、第1コネクタと第2コネクタとの相対ずれを抑制できる車載用電動圧縮機を提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車載用電動圧縮機は、車載電源から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータから出力される交流電力で駆動するモータと、互いに嵌め合わせられることで、前記車載電源と前記モータとを電気的に接続する第1コネクタ及び第2コネクタと、を備えた車載用電動圧縮機であって、前記第1コネクタは、樹脂製であり、筒状の被挿入部と、前記被挿入部の内側に配置される第1導電部と、を備え、前記第2コネクタは、樹脂製であり、前記被挿入部内に挿入可能な筒状の挿入部と、前記挿入部の内側に配置され、前記第1導電部に接続される第2導電部と、を備え、前記被挿入部の内面と前記挿入部の外面との間には、前記内面及び前記外面のうち一方に一体であり、他方に接触しているリブが配置されている。
【0007】
これによれば、被挿入部と挿入部との間にリブが設けられることで、第1コネクタと第2コネクタの接点が増える。これにより、第1コネクタと第2コネクタとの相対ずれを抑制することができる。特に、被挿入部と挿入部との間には、挿入部の挿入性を考慮して、隙間が区画されている。この隙間を埋めるようにリブを設けることで、第1コネクタと第2コネクタとの相対ずれを好適に抑制できる。
【0008】
上記車載用電動圧縮機について、前記被挿入部と前記第1導電部との間に配置される金属製の第1シールドと、前記挿入部と前記第2導電部との間に配置される金属製の第2シールドと、前記インバータが収容されているインバータケースと、を備え、前記インバータケースは、前記第2シールドと一体である金属製のケースシールドと、前記ケースシールドに重ねて設けられた樹脂製のケース樹脂部と、を備え、前記挿入部、及び、前記リブは、前記ケース樹脂部に一体であってもよい。
【0009】
これによれば、挿入部、及び、リブがケース樹脂部に一体であるため、挿入部及びリブの剛性が増す。挿入部、及び、リブの耐震性が向上し、第1コネクタと第2コネクタとの相対ずれを更に抑制できる。金属製のケースシールドと樹脂製のケース樹脂部とからなるインバータケースは耐ノイズ性を低下させることなく軽量かつ剛性に優れる。
【0010】
上記車載用電動圧縮機について、前記第1シールド、及び、前記第2シールドのうちの一方は、他方に向けて突出する凸部を備え、前記第1コネクタ、及び、前記第2コネクタのうちの一方は、前記凸部の突出方向に位置し、前記第1シールド及び前記第2シールドのうち前記凸部を備えていないシールドを前記凸部とともに挟むシールド支持部を備えていてもよい。
【0011】
凸部は、一方のシールドから他方のシールドへの押し付け力を高めるために設けられている。凸部が押し付けられると、シールドは撓もうとする。シールド支持部を設けてシールドが撓むことを抑制することで、第1シールドと第2シールドとが押し付け合う力が強くなる。これにより、第1コネクタと第2コネクタの保持力を高めることができる。
【0012】
上記車載用電動圧縮機について、前記リブと、前記シールド支持部とは、前記挿入部を介して重なり合って配置されていてもよい。
これによれば、シールド支持部をリブによって支持することができる。このため、第1コネクタと第2コネクタの保持力を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1コネクタと第2コネクタとの相対ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車載用電動圧縮機の一部を破断して示す概略図。
図2】車両側コネクタ、及び、圧縮機側コネクタの斜視図。
図3】車両側コネクタ、及び、圧縮機側コネクタの断面図。
図4】シールド支持部の斜視図。
図5】リブ、及び、シールド支持部を示す図3の5−5線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、車載用電動圧縮機の一実施形態について説明する。本実施形態の車載用電動圧縮機は、例えば、車載用空調装置に用いられる。なお、以下の説明において、車載用電動圧縮機を電動圧縮機と称する。
【0016】
図1、及び、図2に示すように、電動圧縮機10は、ハウジング11と、モータ12と、流体として冷媒を圧縮する圧縮部13と、を備える。モータ12、及び、圧縮部13は、ハウジング11に収容されている。電動圧縮機10は、モータ12への電力供給によって駆動する圧縮部13で冷媒を圧縮するものである。
【0017】
電動圧縮機10は、モータ12に交流電力を供給するためのインバータ14を備える。インバータ14は、車載電源15から供給される直流電力を交流電力に変換して出力する三相インバータである。インバータ14とモータ12とは、図示しない気密端子によって接続されている。モータ12は、インバータ14から供給される電力によって駆動する三相交流モータである。
【0018】
電動圧縮機10は、車載電源15に電気的に接続された第1コネクタとしての車両側コネクタ31と、インバータ14に電気的に接続された第2コネクタとしての圧縮機側コネクタ71と、を備える。車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71との接続により、車載電源15とインバータ14とは電気的に接続される。
【0019】
図3に示すように、車両側コネクタ31には、パワー線22が接続されている。パワー線22は、パワー線22の中心軸から外側に向けて導線23、絶縁層24、及び、シールド層25を備える。なお、パワー線22は、断熱層や、緩衝層などを備えるものであってもよい。導線23は、車載電源15に電気的に接続されている。絶縁層24は、導線23とシールド層25とを絶縁している。シールド層25は、導線23から外部へのノイズの流出、及び、外部から導線23へのノイズの流入を抑制している。
【0020】
車両側コネクタ31は、四角筒状の被挿入部32と、四角筒状の線挿入部33と、四角柱状の第1支持部34と、四角筒状の突出部35と、突出部35の外周を囲むシール部材36と、を備える。被挿入部32の軸線方向と、線挿入部33の軸線方向とは同一方向である。被挿入部32と、線挿入部33とは、被挿入部32の軸線方向に隣り合って設けられている。突出部35は、線挿入部33から被挿入部32の内部に突出している。線挿入部33の内面と突出部35の内面とは連続している。第1支持部34は、突出部35内から被挿入部32内に突出している。被挿入部32、線挿入部33、及び、突出部35は樹脂製であり、互いに一体である。第1支持部34は、樹脂製である。パワー線22は、車両側コネクタ31の外部から線挿入部33に挿入され、線挿入部33内を通っている。
【0021】
車両側コネクタ31は、金属製の第1導電部41と、金属製の第1シールド42と、シールド層25と第1シールド42とを電気的に接続する接続体43と、を備える。第1導電部41の一部は、第1支持部34に埋め込まれており、一部は第1支持部34から被挿入部32の内部に突出している。第1シールド42は、四角筒状である。第1シールド42は、線挿入部33内から被挿入部32内まで延びている。詳細にいえば、第1シールド42は、線挿入部33内では内周面に沿って設けられており、被挿入部32内では第1支持部34を囲むように設けられている。第1シールド42の一部は、突出部35の先端から突出している。第1シールド42は、被挿入部32と第1導電部41との間に配置されている。
【0022】
図2に示すように、第1シールド42は、板状のシールド本体44と、シールド本体44から突出する凸部45と、を備える。第1シールド42は、ノイズをシールドする。凸部45は、シールド本体44の板厚方向のうち、第1支持部34から離れる方向に突出している。凸部45は、被挿入部32の内面M1に向けて突出しているともいえる。第1シールド42は、凸部45の周囲にシールド本体44を貫通している切欠46を備える。本実施形態の切欠46は、U字状である。凸部45、及び、切欠46は、第1支持部34のうち突出部35外に位置している部分に向かい合って配置されている。凸部45、及び、切欠46は、シールド本体44の周方向に間隔を空けて複数設けられている。例えば、凸部45、及び、切欠46は、四角筒状の第1シールド42を構成する4つの壁部のそれぞれに1つずつ設けられている。
【0023】
接続体43は、金属製であり、筒状の部材である。接続体43は、線挿入部33内に配置されている。接続体43には、パワー線22が挿通されている。接続体43の内面にはパワー線22のシールド層25が接触しており、接続体43の外面には第1シールド42が接している。これにより、シールド層25と第1シールド42とは、電気的に接続されている。
【0024】
図1に示すように、圧縮機側コネクタ71は、インバータ14を収容するインバータケース52と一体に設けられている。詳細にいえば、電動圧縮機10は、コネクタ一体ケース51を備え、コネクタ一体ケース51は、インバータケース52と、圧縮機側コネクタ71と、を備える。
【0025】
コネクタ一体ケース51は、板状であり、金属製のシールド部53と、シールド部53に重ねて設けられた樹脂製の第1樹脂部54及び樹脂製の第2樹脂部55と、第2樹脂部55に埋め込まれた接続部材56と、を備える。
【0026】
インバータケース52は、有底筒状の収容部57と、収容部57の軸線方向に交差する方向に向けて収容部57から突出するケース突出部58と、を備える。インバータケース52は、シールド部53の一部であるケースシールド59と、第1樹脂部54の一部である第1ケース部60と、第2樹脂部55の一部である第2ケース部61と、接続部材56の一部である接続端子62と、を備える。
【0027】
ケースシールド59は、収容部57内に向けて延びる筒状の延設部63を備える。接続端子62は、延設部63内を通り、収容部57内に延びている。接続端子62は、インバータ14に電気的に接続されている。ケースシールド59は、ノイズをシールドしている。
【0028】
図2、及び、図3に示すように、圧縮機側コネクタ71は、ケース突出部58から、収容部57の軸線方向に突出している。圧縮機側コネクタ71は、ケース突出部58から、ハウジング11側に向けて突出している。
【0029】
圧縮機側コネクタ71は、四角筒状の挿入部72と、挿入部72の外面M2から突出するリブ73と、挿入部72の内部に配置された第2支持部74と、シールド支持部75と、を備える。挿入部72、シールド支持部75、及び、リブ73は、第1樹脂部54の一部であり、第1ケース部60と一体である。第1ケース部60は、挿入部72及びリブ73と一体のケース樹脂部である。第2支持部74は、第2樹脂部55の一部であり、第2ケース部61と一体である。
【0030】
挿入部72は、軸線方向において、ケース突出部58に連続する基端部81と、基端部81よりもケース突出部58から離間して位置する先端部82と、を備える。基端部81の内周の寸法は、先端部82の内周の寸法よりも短い。即ち、挿入部72の軸線方向に直交する方向での基端部81内の断面積は、挿入部72の軸線方向に直交する方向での先端部82内の断面積よりも小さい。
【0031】
図3、及び、図4に示すように、シールド支持部75は、基端部81から先端部82内に向けて突出している。シールド支持部75は、基端部81から挿入部72の軸線方向に延びている。シールド支持部75は、複数設けられている。
【0032】
図3に示すように、リブ73は、挿入部72の軸線方向に延びている。リブ73は、例えば、挿入部72の軸線方向に直交する方向に間隔を空けて、複数設けられている。リブ73の外面M2からの突出長は、挿入部72を被挿入部32に挿入したときに内面M1と外面M2との間に区画される隙間を埋めることができるように設定されている。
【0033】
図5に示すように、シールド支持部75は、挿入部72を介してリブ73と重なり合う位置に配置されている。挿入部72の軸線方向に直交する方向にリブ73とシールド支持部75とは重なり合うことになる。
【0034】
図3に示すように、第2支持部74は、挿入部72のうち基端部81内に位置している。第2支持部74は、先端面に開口する接続孔83を備える。本実施形態の接続孔83は、四角状である。接続孔83は、第1導電部41を挿入可能な大きさである。
【0035】
圧縮機側コネクタ71は、金属製の第2導電部84と、金属製の第2シールド85と、を備える。第2導電部84は、接続部材56の一部であり、接続端子62と一体である。第2導電部84は、第2支持部74に埋め込まれている。第2導電部84は、互いに向かい合う挟持部86を備える。
【0036】
第2シールド85は、シールド部53の一部であり、ケースシールド59と一体である。第2シールド85は、四角筒状である。第2シールド85は、ケース突出部58から先端部82内まで延びている。詳細にいえば、第2シールド85の一部は、基端部81の内面と第2支持部74の外面との間に設けられており、第2シールド85の一部は第2支持部74の先端面よりも先端部82内に突出している。第2シールド85は、第2導電部84と挿入部72との間に配置されている。
【0037】
車両側コネクタ31と、圧縮機側コネクタ71とは、互いに嵌め合わせられる。第1導電部41は、接続孔83を介して第2導電部84に接触する。第1導電部41と第2導電部84とが電気的に接続されることで、車載電源15とインバータ14とが電気的に接続される。車両側コネクタ31と、圧縮機側コネクタ71とが互いに嵌め合わせられると、挿入部72は被挿入部32に挿入される。
【0038】
リブ73は、被挿入部32の内面M1に接している。詳細にいえば、リブ73のうち、被挿入部32の内面M1に向かい合う面の一部は、被挿入部32の内面M1に接している。図示は省略するが、被挿入部32の内面M1は、互いに向かい合う内面M1同士の離間距離が被挿入部32の開口から線挿入部33に向けて、短くなるように傾斜している。これは、車両側コネクタ31を製造する際に、離型を行うために要する傾斜、即ち、抜き勾配に起因するものである。被挿入部32の内面M1と、挿入部72の外面M2との離間距離も被挿入部32の軸線方向の位置に応じて変化し、被挿入部32の内面M1と挿入部72の外面M2との離間距離と、リブ73の外面M2からの突出長とが均衡する位置でリブ73は被挿入部32に接することになる。リブ73が被挿入部32に接することで、リブ73が接する部分では被挿入部32と挿入部72との間の隙間が埋められることになる。
【0039】
第1シールド42は、第2シールド85に挿入される。第1シールド42と第2シールド85とは接触する。第1シールド42の凸部45は、第2シールド85に向けて突出することになり、凸部45は第2シールド85に押しつけられることになる。凸部45には、第2シールド85からの反力が作用することになり、凸部45の周囲のシールド本体44は、板厚方向に撓むことになる。
【0040】
ここで、シールド支持部75は、車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71とが互いに嵌め合わされた状態で、第2シールド85のうち凸部45に接触する部分と向かい合うように配置されている。即ち、シールド支持部75は、凸部45の突出方向に位置しており、凸部45とともに第2シールド85を挟むように配置されていることになる。シールド支持部75と、リブ73とは、被挿入部32を挟んで向かい合っているため、凸部45、シールド支持部75、及び、リブ73は被挿入部32の軸線方向に直交する方向に重なり合うことになる。
【0041】
本実施形態の作用について説明する。
仮に、圧縮機側コネクタ71がリブ73を備えていないとすると、第1シールド42と第2シールド85、シール部材36と挿入部72の内面、第1導電部41と第2導電部84の3つが車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71の接点となる。この状態で、パワー線22が揺動すると、3つの接点のみでは保持力が不足するおそれがある。特に、パワー線22に用いられる導線23は、銅などの金属製であり、パワー線22の重量は重い。したがって、パワー線22の揺動により車両側コネクタ31に加わる力は大きい。また、電動圧縮機10が、ハイブリッド自動車に搭載される場合で、エンジンに取り付けられる場合、電動圧縮機10にはエンジンからの振動も加わることになる。これらの相対振動により、車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71との接点には摩耗が生じることになる。
【0042】
本実施形態の電動圧縮機10では、圧縮機側コネクタ71がリブ73を備える。リブ73は、挿入部72の外面M2に一体であり、被挿入部32の内面M1に接している。リブ73は、車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71の接点になるといえる。これにより、車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71との保持力が向上されている。
【0043】
また、被挿入部32に挿入部72を挿入する際に、被挿入部32と挿入部72との隙間がない場合、挿入部72を挿入しにくい。このため、被挿入部32と挿入部72との間に隙間ができるように車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71は製造される。一方で、この隙間は、車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71との相対ずれを許容する空間となり、相対ずれが生じる一因となる。リブ73は、この隙間を埋めるように設けられるため、両コネクタ31,71の相対ずれを抑制できる。また、リブ73により、被挿入部32と挿入部72との間の隙間の一部を埋めることで、隙間をなくす場合に比べて、挿入部72の挿入性の低下を抑えられる。
【0044】
圧縮機側コネクタ71は、シールド支持部75を備える。仮に、シールド支持部75を設けない場合、凸部45からの力が第2シールド85に加わると、第2シールド85が挿入部72の内面に向けて撓むことになる。第2シールド85が撓むと、第1シールド42と第2シールド85の接点に生じる力が小さくなり、第1シールド42と第2シールド85が互いに押し付け合う力が小さくなる。これに対して、シールド支持部75を設けて、第2シールド85が撓むことを抑制することで、保持力の低下を抑制することができる。
【0045】
本実施形態の効果について説明する。
(1)リブ73により、車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71との接点が増加している。これにより、リブ73を設けない場合に比べて、車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71との相対ずれを抑制することができる。特に、リブ73は、被挿入部32と挿入部72との間の隙間を埋めるように設けられているため、車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71との相対ずれを好適に抑制することができる。
【0046】
(2)挿入部72、及び、リブ73がインバータケース52に一体であるため、挿入部72及びリブ73の剛性が増す。挿入部72、及び、リブ73の耐震性が向上することで、車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71との相対ずれを更に抑制することができる。金属製のケースシールド59と樹脂製の第1ケース部60を備えるインバータケース52は耐ノイズ性を低下させることなく軽量かつ剛性に優れる。
【0047】
(3)圧縮機側コネクタ71は、シールド支持部75を備える。シールド支持部75により、第2シールド85が撓むことを抑制できるため、第1シールド42と第2シールド85とが押し付け合う力が強くなる。これにより、車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71との保持力を更に高めることができる。
【0048】
(4)リブ73と、シールド支持部75とは、挿入部72を介して重なり合っている。シールド支持部75をリブ73により支持することができるため、シールド支持部75が変形しにくい。このため、車両側コネクタ31と圧縮機側コネクタ71との保持力を更に高めることができる。
【0049】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○リブ73と、シールド支持部75とは、挿入部72を介して重なり合っていなくてもよい。即ち、リブ73とシールド支持部75とは、挿入部72の軸線方向に直交する方向での異なる位置に配置されていてもよい。
【0050】
○シールド支持部75は設けられていなくてもよい。
○圧縮機側コネクタ71と、インバータケース52とは、一体でなくてもよい。例えば、インバータケースを金属製として、このインバータケースとは別体の圧縮機側コネクタ71がインバータケースに取り付けられるようにしてもよい。
【0051】
○インバータケース52は、挿入部72及びリブ73と一体の第1ケース部60を備えていればよく、第2ケース部61を備えていなくてもよい。
○凸部45は、第2シールド85から第1シールド42に突出するように設けられていてもよい。即ち、凸部45は、第1シールド42に設けられていてもよいし、第2シールド85に設けられていてもよい。第2シールド85に凸部45が設けられる場合、車両側コネクタ31は、凸部45の突出方向に位置し、凸部45とともに第1シールド42を挟んで設けられるシールド支持部を備える。シールド支持部は、第1シールド42、及び、第2シールド85のうち、凸部45を備えないシールドを凸部45とともに挟んでいるといえる。
【0052】
○リブ73は、被挿入部32の内面M1に一体であり、挿入部72の外面M2に接するものであってもよい。即ち、リブ73は、車両側コネクタ31に設けられていてもよいし、圧縮機側コネクタ71に設けられていてもよい。
【0053】
○リブ73の数は、適宜変更してもよい。なお、リブ73の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
○車両側コネクタ31を第2コネクタとし、圧縮機側コネクタ71を第1コネクタとし、車両側コネクタ31が圧縮機側コネクタ71に挿入されるようにしてもよい。即ち、実施形態の両コネクタとオスメスの関係を反転させてもよい。この場合、圧縮機側コネクタ71が、被挿入部32、第1導電部41、及び、第1シールド42などを備え、車両側コネクタ31が挿入部72、第2導電部84、及び、第2シールド85などを備える。
【0054】
○電動圧縮機としては、流体として空気を圧縮して、燃料電池に供給するものでもよい。
【符号の説明】
【0055】
M1…内面、M2…外面、10…電動圧縮機(車載用電動圧縮機)、11…ハウジング、12…モータ、14…インバータ、15…車載電源、31…車両側コネクタ(第1コネクタ)、32…被挿入部、41…第1導電部、42…第1シールド、45…凸部、52…インバータケース、59…ケースシールド、60…第1ケース部(ケース樹脂部)、71…圧縮機側コネクタ、72…挿入部、73…リブ、75…シールド支持部、84…第2導電部、85…第2シールド。
図1
図2
図3
図4
図5