(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス瓶またはプラスチックボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途の他、弁当箱等の容器を結束するバンディング等の用途にポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる延伸フィルム(いわゆる、熱収縮性フィルム)が使用されている。このような熱収縮性フィルムのうち、ポリ塩化ビニル系フィルムは耐熱性が低い上、焼却時に塩化水素ガスが発生する;ダイオキシンの原因となる等の問題がある。また、ポリスチレン系フィルムは、耐溶剤性に劣り、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない上、高温で焼却する必要があり、焼却時に異臭を伴って多量の黒煙が発生するという問題がある。一方、ポリエステル系の熱収縮性フィルムは、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性にも優れるため、熱収縮ラベルとして広範に利用されており、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル等の流通量の増大に伴って、使用量が益々増加する傾向にある。
【0003】
従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、例えば特許文献1に記載されているように、非晶質のポリエステル原料(非晶質原料)を用いることが一般的である。これは、収縮率の発現には非晶質分子が関与していると考えられているためである。例えば特許文献1の実施例には、非晶質成分となるモノマーの含有量が増加するに伴って収縮率も増加する傾向が示されている。しかし、非晶質原料を用いた熱収縮性ポリエステル系フィルムは、耐熱性が低く、厚み斑が悪いという問題がある。
【0004】
ところで、通常、熱収縮性フィルムをボトルラベルとして使用する際、フィルムの端部同士を溶剤や接着剤等によって固定して輪状(チューブ状)のラベルを作製し、これをボトルに被せて収縮させる方法が採用されている。収縮方向を幅方向とすることで、収縮ラベルを連続的に作製することができるため効率的である。
【0005】
そこで特許文献2には、横(幅)方向に熱収縮し縦(長手)方向には殆ど熱収縮が起こらない熱収縮性フィルムおよびその製造方法が開示されている。特許文献2の実施例では、ポリエチレンテレフタレートを原料とし、縦方向に皺曲処理されたフィルムを横一軸延伸することにより所望とする熱収縮特性を示すフィルムを製造している。
【0006】
また、本願出願人は、非晶質成分となりうるモノマー成分を多く含まなくても、長手方向(機械方向)である主収縮方向に十分な熱収縮特性を有し、前記主収縮方向と直交する幅方向(垂直方向)においては熱収縮率が低く、且つ、長手方向の厚み斑が小さい熱収縮性ポリエステル系フィルムを特許文献3に開示している。上記特許文献では、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、全ポリエステル樹脂成分中において非晶質成分となりうるモノマー成分が0モル%以上5モル%以下含有されたポリエステル系未延伸フィルムを用い、横延伸の後、縦延伸する二軸延伸方法によって上記フィルムを製造しており、例えば延伸方式Aとして、
図1に示す同時二軸延伸機を用いて、フィルムTg以上(Tg+40℃)以下の温度で3.5倍以上6倍以下の倍率で幅方向に延伸(横延伸)した後、フィルムTg以上(Tg+40℃)以下の温度でクリップの間隔を広げることで1.5倍以上から2.5倍以下の倍率で長手方向に延伸(縦延伸)しながら、テンター幅を横延伸後から5%以上30%以下狭めることで幅方向に弛緩する方法が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステル原料
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステル原料は、エチレンテレフタレートユニットを全エステルユニット100モル%中、90モル%以上有する。好ましくは95モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。エチレンテレフタレートユニットは、エチレングリコールおよびテレフタル酸を主な構成成分として含有する。エチレンテレフタレートを用いることにより、熱収縮性ポリエステル系フィルムとして優れた耐熱性と透明性を得ることができる。
【0016】
本発明に用いるポリエステル原料は、非晶質成分(非晶質アルコール成分および非晶質酸成分)を含み得るが、全アルコール成分100モル%中の非晶質アルコール成分の割合と、全酸成分100モル%中の非晶質酸成分の割合との合計が0モル%以上、5モル%以下に抑制されている。本発明では上記のとおり、エチレンテレフタレートユニットのみからなるポリエステルであることが好ましいが、積極的に共重合するわけではなく、エチレンテレフタレートユニット中に、テレフタル酸とジエチレングリコールによる構成ユニットが副生成物として存在しても良い。非晶質成分の含有量は少ない程良く、最も好ましくは0モル%である。
【0017】
非晶質酸成分(カルボン酸成分)のモノマーとしては、例えばイソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0018】
また非晶質アルコール成分(ジオール成分)のモノマーとしては、例えばネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0019】
本発明に用いるポリエステル原料は、上述したエチレンテレフタレートや非晶質成分以外の成分として、エチレングリコール以外のジオール成分である1,4−ブタンジオールを用いても良い。1,4−ブタンジオールは、ポリエステルフィルムの融点を下げ、低Tg成分として有用であるが、本発明の趣旨から言えば出来るだけ含まないことが好ましい。全アルコール成分および全酸成分に占める1,4−ブタンジオールの好ましい含有量は10モル%以下であり、より好ましくは5モル%以下、最も好ましくは0モル%である。
【0020】
本発明に用いるポリエステル原料は、必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。上記添加剤は特に限定されず、例えばワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤などの公知の添加剤が挙げられる。
【0021】
また、上記ポリエステル原料は、フィルムの作業性(滑り性)を良好にするため、滑剤として作用する微粒子を添加することが好ましい。上記微粒子としては、無機系微粒子および有機系微粒子の種類を問わず、任意のものを選択することができる。無機系微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等が挙げられる。有機系微粒子としては、例えばアクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等が挙げられる。上記微粒子の平均粒径は、コールターカウンタにて測定した場合、約0.05〜3.0μmの範囲内であることが好ましい。
【0022】
上記ポリエステル原料中に上記微粒子を配合する方法は特に限定されず、例えば、ポリエステル系樹脂を製造する任意の段階で添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた微粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法;または混練押出し機を用いて、乾燥させた微粒子とポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行っても良い。
【0023】
ポリエステル原料の固有粘度は、0.50〜0.75dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.50dl/gよりも低いと、耐引き裂き性向上効果が低下し、一方、0.75dl/gより大きいと濾圧上昇が大きくなり、高精度濾過が困難となる。上記固有粘度は、より好ましくは0.52dl/g以上、0.73dl/g以下である。
【0024】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルム表面の印刷性や接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
【0025】
2.本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの特性
本発明のフィルムは上記(1)〜(4)の要件を満足する。熱収縮性フィルムをボトルのラベル用途に用いる場合、ラベルの収縮仕上がり性に最も寄与するのが、幅方向では(1)に規定する90℃、長手方向では(2)、(3)に規定する70℃、90℃であり、当該温度帯における収縮率の制御が他の温度帯より技術的に難しい。本発明によれば、(1)に規定する主収縮方向である幅方向の熱収縮率が非常に高く、(2)、(3)における長手方向の熱収縮率が低いフィルムであって、且つ、厚み斑の小さい熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供できた点で非常に有用である。
【0026】
2.1 幅方向の熱収縮率
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記(1)に規定するとおり、90℃の温湯中に10秒間浸漬させたときの幅方向(主収縮方向)における熱収縮率が50%以上75%以下である。ここで「幅方向」とは長手方向(機械方向、Machine Direction;MD)と直交する方向であり、横方向(Transverse Direction;TD)とも呼ばれる。90℃における幅方向の熱収縮率が50%未満であると、容器等に被覆収縮させる際に、フィルムの収縮が不足して容器にきれいに密着せず、外観不良が起こるため好ましくない。一方、90℃における幅方向の熱収縮率が75%を超えると、容器等に被覆収縮させる際に収縮速度が極端に速くなってしまい、フィルムの歪み等が発生するため好ましくない。90℃における幅方向の熱収縮率は、55%以上70%以下が好ましく、60%以上65%以下がより好ましい。
【0027】
2.2.長手方向の熱収縮率
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記(2)に規定するとおり、90℃の温湯中に10秒間浸漬させたときの長手方向(機械方向、MD)における熱収縮率が−6%以上14%以下である。90℃における長手方向の熱収縮率が−6%未満であると、容器等に被覆収縮させる際に、伸びが生じすぎてシワになり易く、良好な収縮外観を得ることができないので好ましくない。一方、90℃における長手方向の熱収縮率が14%を超えると、収縮後に歪みやヒケが生じ易くなるので好ましくない。90℃における長手方向の熱収縮率は、−4%以上12%以下が好ましく、−2%以上10%以下がより好ましい。
【0028】
更に本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記(3)に規定するとおり、70℃の温湯中に10秒間浸漬させたときの長手方向(機械方向、MD)における熱収縮率が−6%以上6%以下である。70℃における長手方向の熱収縮率が−6%未満であると、容器等に被覆収縮させる際に、伸びが生じすぎてシワになり易く、良好な収縮外観を得ることができないので好ましくない。一方、70℃における長手方向の熱収縮率が6%を超えると、収縮後に歪みやヒケが生じ易くなるので好ましくない。70℃における長手方向の熱収縮率は、−4%以上4%以下が好ましく、−2%以上2%以下がより好ましい。
【0029】
2.3.幅方向の厚み斑
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記(4)に規定するとおり、幅方向にわたって測定長さを1mとした場合の厚み斑が1%以上20%以下である。幅方向の厚み斑が20%を超えると、フィルムをロールとして巻き取ったときに端面ズレやシワ等の外観不良が起こるだけでなく、フィルムを印刷するときに印刷不良が発生し易くなるので好ましくない。長手方向の厚み斑は、19%以下が好ましく、18%以下がより好ましい。幅方向の厚み斑は小さいほど好ましいが、製膜装置の性能等を考慮すると1%程度が限界であると考えらえる。
【0030】
2.4.幅方向の最大熱収縮応力
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記(5)に規定するとおり、90℃の熱風中で30秒間収縮させたときの幅方向における最大熱収縮応力が4MPa以上13MPa以下であることが好ましい。熱収縮の際、幅方向の90℃での最大熱収縮応力が13MPaを上回ると、容器等の被包装対象物が変形し易くなるため好ましくない。一方、幅方向における最大熱収縮応力は低いほど被包装対象物の変形が少なくなるため好ましいが、現状の技術水準では4MPaが下限である。
【0031】
2.5.密度から算出した結晶化度
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記(6)に規定するとおり、密度から算出した結晶化度が1%以上15%以下であることが好ましい。上記結晶化度が15%を上回ると、幅方向における熱収縮率が増加する。幅方向における熱収縮率と結晶化度との関係については、後述する。上記結晶化度は低ければ低いほど、幅方向における熱収縮率が増加するため良く、13%以下がより好ましく、11%以下が更に好ましい。なお上記結晶化度は、現在の技術水準では1%程度が下限である。結晶化度の測定方法は、実施例の欄に記載する。
【0032】
2.6.その他の特性
本発明に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、ボトルのラベル用途や弁当箱等の結束目的で使用するバンディングフィルム用途等に用いられることを考慮すると、5μm以上200μm以下が好ましく、20μm以上100μmがより好ましい。厚みが200μmを超えると、単にフィルムの面積あたりの重量が増加するだけで経済的でない。一方、厚みが5μmを下回るとフィルムが極端に薄くなるため、チューブ状ラベルにする等の工程で扱い難く(ハンドリング性が悪く)なってしまう。
【0033】
また、ヘイズ値は2%以上13%以下が好ましい。ヘイズ値が13%を超えると、透明性が不良となり、ラベル作製の際に見栄えが悪くなる虞があるので好ましくない。ヘイズ値は、11%以下がより好ましく、9%以下が更に好ましい。なおヘイズ値は小さいほど好ましいが、実用上必要な滑り性を付与する目的でフィルムに所定量の滑剤を添加せざるを得ないこと等を考慮すると、2%程度が下限になる。
【0034】
3.本発明に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記ポリエステル原料を押出機により溶融押し出しして得られた未延伸フィルムを用いて、下記条件で横延伸することによって製造することができる。具体的には、(Tg+40℃)以上(Tg+70℃)以下の温度(T1)で予熱し、前記予熱されたフィルムを(Tg+5℃)以上(Tg+40℃)以下の温度(T2)で横延伸し、前記横延伸されたフィルムを(Tg−10℃)以上(Tg+15℃)以下の温度(T3)で更に延伸する。ここで前記T1、T2、T3はT1>T2>T3の関係を満足する。必要に応じて、前記T3での第2横延伸の後、(Tg−30℃)以上Tg以下の温度で熱処理しても良い。なお、ポリエステルは、前述した好適なジカルボン酸成分とジオール成分とを公知の方法で重縮合させることによって得ることができる。また通常は、チップ状のポリエステルを2種以上混合してフィルムの原料として使用する。
【0036】
3.1.溶融押し出し
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。このようにしてポリエステル原料を乾燥した後、押出機を利用して200〜300℃の温度で溶融し、フィルム状に押し出す。押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0037】
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金から回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法が好適に用いられる。
【0038】
得られた未延伸フィルムを、以下に詳述する方法で幅(横)方向へ延伸することにより、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることができる。
【0039】
3.2.横延伸
以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための延伸方法について、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製膜方法、および非特許文献1及び2を引用して分子構造との差異を考慮しつつ、詳細に説明する。
【0040】
フィルムの収縮挙動を支配する分子構造の詳細は、未だ明らかになっていない部分が多いが、大まかには配向した非晶質分子が収縮特性に関与していると考えられている。そのため、通常、熱収縮性ポリエステル系フィルムは非晶質原料を使用し、収縮させたい方向(主収縮方向、通常は幅方向)へ延伸することによって製造される。従来の非晶質原料を用いた熱収縮性ポリエステル系フィルムは、一般的にはガラス転移温度(Tg)からTg+30℃の温度で、3.5倍から5.5倍程度の延伸倍率(最終延伸倍率)で延伸して製造されている。この延伸条件によって非晶質分子が配向し、フィルムに収縮率が備わると考えられており、延伸温度が低いほど、または延伸倍率が高いほど収縮率は高くなる(すなわち非晶質分子が配向し易くなる)。
【0041】
一方、本発明のように非晶質成分となり得るモノマー成分(非晶質原料)が0モル%以上5モル%以下と、実質的に非晶質原料を含まない場合、上記と同じ温度、すなわちTgからTg+30℃の温度で延伸すると、2倍から2.5倍までの倍率で延伸すればフィルムは収縮するものの、上記と同じ倍率、すなわち3.5倍から5.5倍程度の延伸を施すとフィルムの収縮率は逆に低下してしまう。例えば後記する表2の比較例1、3は、いずれもTg=75℃のポリエステル原料を用いて、85〜90℃(比較例1)または80℃(比較例3)の温度で、3.6倍(比較例1)または2.4倍(比較例3)で横延伸してフィルムを製造した例である。延伸倍率が2.4倍と低い比較例3では幅方向の収縮率は55.3%と高いが、延伸倍率が3.6倍と高い比較例1では幅方向の収縮率は26.8%と大幅に低下した。
この理由は、延伸によって配向した分子が結晶化(配向結晶化)し、フィルムの収縮(すなわち、非晶質分子の収縮)を阻害するためと考えられている。例えば非特許文献1の
図4には、ポリエチレンテレフタレート繊維の一軸延伸における応力(横軸)と複屈折(縦軸)との関係が示されており、この図から分子配向の変化の様子を読み取ることができる。すなわち、延伸倍率DRが約2倍までの領域では応力と複屈折は線形関係にあり、延伸を停止すると応力が緩和されると共に複屈折が低下する。複屈折の低下は分子鎖の緩和を示しており、フィルムに置き換えた場合、フィルムの収縮を示している(収縮率の発現)と考えられる。一方、延伸倍率DRが2倍を超えると、応力と複屈折の線形関係は成立し難くなり、延伸を停止しても複屈折の低下は見られなくなる。この現象が配向結晶化による収縮率の低下を示していると考えられる。このことより、本発明のように非晶質原料を実質的に含まない場合であっても、延伸による配向結晶化が発生しない条件であればフィルムに収縮率を発現させることができると考えられる。
【0042】
ここで、延伸しても配向結晶化しない延伸条件は、例えば非特許文献2の
図2の写真に示されている。ここには、85℃(=Tg+10℃)の低温延伸では結晶ピークが見られたのに対し、130℃(=Tg+55℃)程度の高温延伸では結晶ピークが見られず、分子が全く配向結晶化しないことが示されている。これは、高温延伸では延伸中に起こる分子の緩和が配向する速度よりも速いためと考えられている。実際のところ本発明者らがフィルムの製造ラインで130℃の一定温度にて高温延伸を実施したところ、上記メカニズムの通り、分子が配向しないため収縮率が発現しなかった。更に収縮率が見られないだけでなく、延伸中の応力が増加しないため厚み斑が悪い(大きくなる)ことも判明した。
【0043】
そこで、本発明者らは延伸工程全般を上記のように高温延伸(一定)とするのではなく、高温延伸によって分子をほとんど配向させない工程と、低温延伸によって分子を積極的に配向させる工程とに分けて行えば、配向結晶化による収縮率の低下を抑制しつつ、非晶質分子のみを配向させて収縮率を発現できると共に、厚み斑も低く抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下に詳述するとおり温度T1で予熱し、温度T2で横延伸した後、温度T3で横延伸する(T1>T2>T3)方法により、非晶質分子のみをフィルム中に存在させ、長手方向と幅方向の熱収縮率をコントロールできること、しかも幅方向の厚み斑も低減できることが判明した。
【0044】
以下、各工程について、順次説明する。
【0045】
まず、(Tg+40℃)以上(Tg+70℃)以下の温度T1で予熱ゾーンを予熱する。予熱温度T1が(Tg+40℃)未満であると、次工程のT2での横延伸時に分子が配向結晶化し易くなってフィルム幅方向の熱収縮率が下限の50%を下回り易くなってしまう(後記する表2の比較例1を参照)。また、予熱温度T1が(Tg+40℃未満)であると、横延伸で生じるネックインによって縦方向へかかる応力が大きくなり、長手方向の熱収縮率が上限の6%を超え易くなるため好ましくない。一方、予熱温度T1が(Tg+70℃)を超えると、幅方向の厚み斑が悪化して上限の20%を超え易くなるため好ましくない。予熱温度T1は、(Tg+45℃)以上(Tg+65℃)以下がより好ましく、(Tg+50℃)以上(Tg+60℃)以下が更に好ましい。
【0046】
具体的には、上記予熱温度T1となるように、予熱ゾーンの通過時間を2秒以上10秒以下に制御することが好ましい。予熱ゾーンの通過時間が2秒未満であると、フィルムが上記の予熱温度T1に達しないうちに次工程のT2での横延伸が開始されてしまう。そのため、予熱温度T1が(Tg+40℃)未満の場合と同様の問題が生じてしまう。予熱ゾーンの通過時間が長いほど、フィルムの温度が上記予熱温度T1に達し易くなるため好ましいが、通過時間が長くなり過ぎると、予熱ゾーンの温度が冷結晶化温度を超えて設定されるため、未延伸フィルムの結晶化が過度に促進されてしまうため好ましくない。さらに、予熱ゾーンの通過時間が長いほど生産設備は増大するため好ましくない。予熱ゾーンの通過時間は10秒あれば十分である。
【0047】
次に、上記温度T1で予熱されたフィルムを、(Tg+5℃)以上(Tg+40℃)以下の温度T2で横延伸する(第1横延伸と呼ぶ場合がある)。第1横延伸では前述したように延伸による分子配向を抑制する必要があり、第1横延伸での温度T2を、予熱温度T1よりも低くして、(Tg+5℃)以上(Tg+40℃)以下に制御する。第1横延伸での温度T2が(Tg+5℃)未満であると、予熱時と同様の問題が生じ、フィルム幅方向の熱収縮率が下限の50%を下回り易くなるだけでなく、長手方向の熱収縮率が上限の6%を超え易くなるため好ましくない。一方、第1横延伸での温度T2が(Tg+40℃)を超えると、幅方向の厚み斑が上限の20%を超え易くなってしまうため好ましくない。第1横延伸での温度T2は、(Tg+10℃)以上(Tg+35℃)以下がより好ましく、(Tg+15℃)以上(Tg+30℃)以下が更に好ましい。
【0048】
また、第1横延伸での延伸倍率は1.5倍以上2.5倍以下が好ましい。第1横延伸での延伸倍率が1.5倍未満であると、配向結晶化の抑制効果が小さくなり、フィルム幅方向の収縮率が50%を下回り易くなる他、長手方向の収縮率が6%を超え易くなるため好ましくない。一方、第1横延伸での延伸倍率5倍を超えると、幅方向の厚み斑が20%を超え易くなってしまうため好ましくない。第1横延伸での延伸倍率は、1.6倍以上2.4倍以下がより好ましく、1.7倍以上2.3倍以下が更に好ましい。
【0049】
前記横延伸されたフィルムを、(Tg−10℃)以上(Tg+15℃)以下の温度T3で更に延伸する(第2横延伸と呼ぶ場合がある。)。上述したように第1横延伸では分子配向が抑制されるように高温で延伸するが、その後の第2横延伸では反対に、延伸によって積極的に分子配向を生じさせる必要がある。そのため、本発明ではT2>T3となるように低温で延伸しており、具体的には第2横延伸での温度T3は(Tg−10℃)以上(Tg+15℃以下)である。第2横延伸での温度T3が(Tg−10℃)を下回ると、横延伸で生じるネックインによって縦方向へかかる応力が大きくなり、長手方向の熱収縮率が上限の6%を超え易くなってしまうため好ましくない。一方、第2横延伸での温度T3が(Tg+15℃)を超えると、分子配向が小さくなり、幅方向の熱収縮率が下限の50%を下回り易くなってしまう(後記する表2の比較例5を参照)。第2横延伸での温度T3は、(Tg−7℃)以上(Tg+12℃)以下がより好ましく、(Tg−4℃)以上(Tg+9℃)以下が更に好ましい。
【0050】
また、第2横延伸での延伸倍率は1.5倍以上2.5倍以下が好ましい。第2横延伸での延伸倍率が1.5倍未満であると、幅方向における厚み斑が悪化してしまう。一方、第2横延伸で延伸倍率が2.5倍を超えると、幅方向の収縮率が低下し易くなるだけでなく、幅方向の収縮応力が増加してしまう。第2横延伸での延伸倍率は、1.6倍以上2.4倍以下がより好ましく、1.7倍以上2.3倍以下が更に好ましい。
【0051】
また最終延伸倍率(第1横延伸での延伸倍率と第2横延伸での延伸倍率の積)は、3倍以上5.5倍以下が好ましい。最終延伸倍率が3倍未満であると、幅方向の収縮率が低下し易くなるだけでなく、幅方向における厚み斑が悪化してしまう。一方、最終延伸倍率が5.5倍を超えると、幅方向への延伸中に破断が発生しやすくなる。最終延伸倍率は、3.1倍以上5.4倍以下がより好ましく、3.2倍以上5.3倍以下が更に好ましい。
【0052】
本発明では、予熱温度T1と、第1延伸での温度T2と、第2延伸での温度T3が、T1>T2>T3の関係を満足する。この関係を満足しつつ、個々のT1、T2、T3が上記範囲を満足するように横延伸を行えば所望とするフィルムが得られる。
【0053】
3.3.熱処理
上記のようにして横延伸を行ったフィルムは、必要に応じて、テンター内で幅方向の両端際をクリップで把持した状態で熱処理しても良い。ここで熱処理とは、(Tg−20℃)以上Tg以下の温度で1秒以上9秒以下、熱処理することを意味する。このような熱処理により、熱収縮率の低下を抑制できる他、経時保管後の寸法安定性が向上するため、好ましく用いられる。熱処理温度が(Tg−20℃)より低いと、熱処理による上記効果が有効に発揮されない。一方、熱処理温度がTgより高いと、幅方向の熱収縮率が下限の50%を下回り易くなる。
なお、熱処理時の温度は、第2延伸での温度T3以下であることが好ましい。
【0054】
上記熱処理の規定に基づけば、後記する実施例1〜6、比較例1〜3、5(いずれもTg=75℃)のうち実施例3を除く例は全て、横延伸後の加熱温度が50℃であり、上記の温度範囲を満足しないため、本発明における熱処理を行った例とはみなされない。これに対し、実施例3では横延伸後の加熱温度を75℃としたため、本発明における熱処理を行った例とみなされる。
【0055】
熱処理時間は長いほど効果を発揮し易くなるが、あまり長いと設備が巨大化するので、1秒以上9秒以下に制御することが好ましい。より好ましくは、5秒以上8秒以下である。
【0056】
また、熱処理工程においては、テンター内の把持用クリップ間の距離を縮めることにより、幅方向へのリラックスを実施することもできる。これにより、経時保管後の寸法変化や熱収縮特性の低下を抑制することができる。
【実施例】
【0057】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例の態様に何ら限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。
【0058】
後記する表2に記載の各ポリエステルフィルムについて、以下の特性を評価した。
【0059】
[熱収縮率(温湯熱収縮率)]
ポリエステル系フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度[(90℃または70℃)±0.5℃]の温湯中に無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒間浸漬し、水中から引き出してフィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下式1に従ってそれぞれの熱収縮率を求めた。熱収縮率の大きい方向を主収縮方向(幅方向)とした。
熱収縮率(%)={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100 式1
【0060】
[幅方向の厚み斑]
フィルムロールから、フィルム長手方向の寸法40mm×フィルム幅方向の寸法1.2mの幅広な帯状のフィルム試料をサンプリングし、ミクロン測定器株式会社製の連続接触式厚み計を用いて、測定速度5m/minで上記フィルム試料の幅方向に沿って連続的に厚みを測定した(測定長さは1m)。測定時の最大厚みをTmax.、最小厚みをTmin.、平均厚みをTave.とし、下式2に従ってフィルムの幅方向の厚み斑を算出した。
厚み斑(%)={(Tmax.−Tmin.)/Tave.}×100 式2
【0061】
[最大熱収縮応力]
ポリエステル系フィルムから、主収縮方向(幅方向)の長さが200mm、幅(長手方向)20mmのサンプルを切り出し、加熱炉付き強伸度測定機(テンシロン、オリエンテック社の登録商標)を用いて測定した。加熱炉は予め90℃に加熱しておき、チャック間距離は100mmとした。加熱炉の送風を一旦止めて加熱炉の扉を開け、上記サンプルをチャックに取付けた後、速やかに加熱炉の扉を閉めて送風を再開した。90℃熱風中で30秒間収縮させたときの幅方向における熱収縮応力を測定し、その最大値を最大熱収縮応力(MPa)とした。
【0062】
[ヘイズ]
JIS K7136に準拠して、ヘイズメータ「500A」(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0063】
[結晶化度]
JIS−K−7112の密度勾配管法により、硝酸カルシウム水溶液を用いて約3mm四方のサンプルの密度dを測定し、下式3に従って結晶化度を測定した。
結晶化度(%)={dc×(d−da)/(d×(dc−da)}×100 式3
dc:1.455g/cm
3(ポリエチレンテレフタレート完全結晶の密度)
da:1.335g/cm
3(ポリエチレンテレフタレート完全非晶の密度)
d: サンプルの密度(g/cm
3)
【0064】
[Tg(ガラス転移点)]
セイコー電子工業株式会社社製の示差走査熱量計(型式:DSC220)を用いて、JIS−K7121−1987に従ってTgを求めた。詳細には未延伸フィルム10mgを、−40℃から120℃まで、昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱曲線を測定した。得られた吸熱曲線の変曲点の前後に接線を引き、その交点をガラス転移点(Tg;℃)とした。
【0065】
[収縮仕上がり性の評価]
ポリエステル系フィルムの端部をインパルスシーラー(富士インパルス社製)で溶着し、幅方向を周方向とした円筒状ラベルを得た。このラベルを、市販のPETボトル(内容物入り;伊藤園社製の「おーいお茶」)に被せて、85℃に調整したスチームに通して熱収縮させた(トンネル通過時間30秒)。ラベルの収縮仕上がり性を、以下の基準に従って目視で5段階評価した。以下に記載の欠点とは、飛び上がり、シワ、収縮不足、ラベル端部折れ込み、収縮白化等を意味する。
5:仕上がり性最良(欠点なし)
4:仕上がり性良(欠点1箇所あり)
3:欠点2箇所あり
2:欠点3〜5箇所あり
1:欠点多数あり(6箇所以上)
【0066】
<ポリエステル原料の合成>
ポリエステル原料Aの合成
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、多価アルコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、エチレングリコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を酸成分に対して0.05モル%、重縮合触媒として三酸化アンチモンを酸成分に対して0.225モル%添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、280℃で26.7Paの減圧下にて重縮合反応を行い、固有粘度0.58dl/gのポリエステル原料Aを得た。なお固有粘度は、ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン(60/40、重量比)の混合溶媒50mLに溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて固有粘度(dl/g)を測定した。このポリエステル原料Aはポリエチレンテレフタレートである。ポリエステル原料Aのモノマー成分の組成を表1に示す。表1中、「酸成分」の欄には全酸成分100モル%に占める各モノマー成分の含有量を、「多価アルコール成分」の欄には全多価アルコール成分100モル%中に占める各モノマー成分の含有量を示している。
【0067】
ポリエステル原料B〜Dの合成
上記ポリエステル原料Aと同様の方法により、表1に示すように、モノマー成分の異なるポリエステル原料B〜Dを得た。なお、ポリエステル原料Bは、滑剤としてSiO
2(富士シリシア社製サイリシア266;平均粒径1.5μm)をポリエステルに対して7,000ppmの割合で添加して製造した。各ポリエステル原料は、適宜チップ状にした。表1において、TPAはテレフタル酸、BDは1,4−ブタンジオール、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタノール、DEGは副生成物のジエチレングリコールである。各ポリエステル原料の固有粘度は、それぞれ、B:0.58dl/g、C:0.80dl/g、D:1.20dl/gであった。
【0068】
【表1】
【0069】
上記ポリエステル原料A〜Dを用いて、表2に記載の各種ポリエステル系フィルムを得た。
【0070】
[実施例1]
ポリエステルAおよびポリエステルBを質量比95:5で混合して押出機に投入した。この混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さ約150μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは75℃であった。
【0071】
得られた未延伸フィルムを横延伸機(テンター)に導き、140℃で5秒間の予熱を行った。予熱後のフィルムは連続して横延伸前半ゾーンに導き、105℃で2.1倍になるまで横延伸した。続いて、横延伸後半ゾーンでは82℃で1.8倍になるまで横延伸した。最終的な横延伸倍率は3.8倍であった。最後に熱処理ゾーンにて50℃で3秒間熱処理した後、冷却し、両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ40μmの横延伸フィルムを所定の長さにわたって連続的に製造し、実施例1のフィルムを得た。
【0072】
[実施例2〜6、比較例1〜3および5]
上記実施例1において、横延伸の条件を表2のように変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2〜6、比較例1〜3および5のフィルムを製造した。
【0073】
[比較例4]
ポリエステル原料A、ポリエステル原料B、ポリエステル原料C、ポリエステル原料Dを質量比18:5:67:10の割合で混合して押出機に投入した。この混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さ約150μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは68℃であった。
【0074】
次いで、横延伸の条件を表2のように変更したこと以外は上記実施例1と同様にして比較例4のフィルムを製造した。
【0075】
このようにして得られた各フィルムの特性を上記の方法で評価した。これらの結果を表2に併記する。
【0076】
【表2A】
【0077】
【表2B】
【0078】
本発明の要件を満足する実施例1〜6の熱収縮性フィルムは、非晶質成分の割合が1モル%と非常に少ないポリエチレンテレフタレートを用いたにもかかわらず、幅方向の熱収縮率が高く、且つ、幅方向の厚み斑が低減されており、長手方向の熱収縮率も低く抑えられて、ラベルに被覆したときの収縮仕上がり性も良好であった(評価4または5)。
【0079】
これに対し、比較例1では、予熱時の温度T1が90℃と低かったため、幅方向における90℃での熱収縮率が26.8%と低くなり、ラベルの収縮仕上がり性が著しく低下した(評価1)。
【0080】
比較例2では、予熱時の温度T1は本発明で規定する高温に制御したが、第1横延伸時の温度T2が70℃と低く、第2横延伸時の温度T3と同じ温度であったため、長手方向における70℃での熱収縮率が16.0%と高くなり、ラベルの収縮仕上がり性が低下した(評価2)。
【0081】
比較例3では、予熱時の温度T1、第1延伸時の温度T2、および第2横延伸時の温度T3が全て80℃と同じであり、最終延伸倍率も2.4倍と低かったため、幅方向の厚み斑が27.7%と大きくなった。
【0082】
比較例4は非晶成分を多く含むポリエステルフィルムを用いたため、幅方向の厚み斑が22.0%と非常に大きくなった。比較例4ではポリエチレンテレフタレート以外の非晶質原料を使用しており、上記式3による結晶化度の算出方法を適用できないため、表2の欄は「−」と記載している。
【0083】
比較例5は、予熱時の温度T1、および第1横延伸時の温度T2を本発明で規定する範囲に制御したが、第2横延伸時の温度T3が95℃と高く、T2=T3で処理した例である。その結果、幅方向における90℃での熱収縮率が23.5%と低くなり、ラベルの収縮仕上がり性が著しく低下した(評価1)。