特許第6927128号(P6927128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927128
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】液冷ジャケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20210812BHJP
【FI】
   B23K20/12 360
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-70622(P2018-70622)
(22)【出願日】2018年4月2日
(65)【公開番号】特開2019-181472(P2019-181472A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2020年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 久司
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 伸城
(72)【発明者】
【氏名】山中 宏介
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−87649(JP,A)
【文献】 特開2016−215264(JP,A)
【文献】 特開2016−150380(JP,A)
【文献】 特開2010−36230(JP,A)
【文献】 特開2010−201484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備える摩擦攪拌用の本接合用回転ツールであって、前記基端側ピンのテーパー角度は、先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、
前記基端側ピンの外周面には階段状のピン段差部が形成されており、
前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって外側に広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成し、前記封止体の板厚を前記周壁段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくする準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置し、前記周壁段差部の段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合わせた際に隙間があるように第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記回転ツールの先端側ピンと基端側ピンとを前記封止体に挿入し、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の表面に接触させ、前記先端側ピンの外周面を前記周壁段差部の段差側面に接触させない状態で、前記第一突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させる際に前記封止体の第二アルミニウム合金を前記隙間に流入させながら摩擦攪拌を行う第一本接合工程と、を含むことを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。
【請求項2】
前記第一本接合工程において、前記先端側ピンを前記周壁段差部の段差底面にわずかに接触させた状態で、前記第一突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項1に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【請求項3】
底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備える摩擦攪拌用の本接合用回転ツールであって、前記基端側ピンのテーパー角度は、先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、
前記基端側ピンの外周面には階段状のピン段差部が形成されており、
前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって外側に広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成し、前記封止体の板厚を前記周壁段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくする準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置し、前記周壁段差部の段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合わせた際に隙間があるように第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記回転ツールの先端側ピンと基端側ピンとを前記封止体に挿入し、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の表面に接触させ、前記先端側ピンの外周面を前記周壁段差部の段差側面にわずかに接触させた状態で、前記第一突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させる際に前記封止体の第二アルミニウム合金を前記隙間に流入させながら摩擦攪拌を行う第一本接合工程と、を含むことを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。
【請求項4】
前記第一本接合工程において、前記先端側ピンを前記周壁段差部の段差底面にわずかに接触させた状態で、前記第一突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項3に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【請求項5】
前記第一本接合工程において、前記回転ツールを前記第一突合せ部に沿って一周させて摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【請求項6】
前記準備工程では、前記ジャケット本体をダイキャストで形成するとともに前記底部が表面側に凸となるように形成し、かつ、前記封止体が表面側に凸となるように形成することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【請求項7】
前記ジャケット本体の変形量を予め計測しておき、前記第一本接合工程において、前記回転ツールの前記基端側ピン及び前記先端側ピンの挿入深さを前記変形量に合わせて調節しながら摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項6に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【請求項8】
前記第一本接合工程に先だって、前記第一突合せ部を仮接合する仮接合工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【請求項9】
前記第一本接合工程では、冷却媒体が流れる冷却板を前記底部の裏面側に設置し、前記冷却板で前記ジャケット本体及び前記封止体を冷却しながら摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【請求項10】
前記冷却板の表面と前記底部の裏面とを面接触させることを特徴とする請求項9に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【請求項11】
前記冷却板は、前記冷却媒体が流れる冷却流路を有し、
前記冷却流路は、前記第一本接合工程における前記回転ツールの移動軌跡に沿う平面形状を備えることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【請求項12】
前記冷却媒体が流れる冷却流路は、前記冷却板に埋設された冷却管によって構成されていることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【請求項13】
前記第一本接合工程では、前記ジャケット本体と前記封止体とで構成される中空部に冷却媒体を流し、前記ジャケット本体及び前記封止体を冷却しながら摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液冷ジャケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、液冷ジャケットの製造方法が開示されている。図22は、従来の液冷ジャケットの製造方法を示す断面図である。従来の液冷ジャケットの製造方法では、アルミニウム合金製のジャケット本体101の段差部に設けられた段差側面101cと、アルミニウム合金製の封止体102の側面102cとを突き合わせて形成された突合せ部J10に対して摩擦攪拌接合を行うというものである。また、従来の液冷ジャケットの製造方法では、回転ツールF0の攪拌ピンF02のみを突合せ部J10に挿入して摩擦攪拌接合を行っている。また、従来の液冷ジャケットの製造方法では、回転ツールF0の回転中心軸CLを突合せ部J10に重ねて相対移動させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−131321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ジャケット本体101は複雑な形状となりやすく、例えば、4000系アルミニウム合金の鋳造材で形成し、封止体102のように比較的単純な形状のものは、1000系アルミニウム合金の展伸材で形成するというような場合がある。このように、アルミニウム合金の材種の異なる部材同士を接合して、液冷ジャケットを製造する場合がある。このような場合は、ジャケット本体101の方が封止体102よりも硬度が高くなることが一般的であるため、図22のように摩擦攪拌接合を行うと、攪拌ピンが封止体102側から受ける材料抵抗に比べて、ジャケット本体101側から受ける材料抵抗が大きくなる。そのため、回転ツールF0の攪拌ピンによって異なる材種をバランスよく攪拌することが困難となり、接合後の塑性化領域に空洞欠陥が発生し接合強度が低下するという問題がある。
【0005】
このような観点から、本発明は、材種の異なるアルミニウム合金を好適に接合することができる液冷ジャケットの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明は、底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備える摩擦攪拌用の本接合用回転ツールであって、前記基端側ピンのテーパー角度は、先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状のピン段差部が形成されており、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって外側に広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成し、前記封止体の板厚を前記周壁段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくする準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置し、前記周壁段差部の段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合わせた際に隙間があるように第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの先端側ピンと基端側ピンとを前記封止体に挿入し、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の表面に接触させ、前記先端側ピンの外周面を前記周壁部の段差側面に接触させない状態で、前記第一突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させる際に前記封止体の第二アルミニウム合金を前記隙間に流入させながら摩擦攪拌を行う第一本接合工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
かかる製造方法によれば、封止体と基端側ピン及び先端側ピンとの摩擦熱によって第一突合せ部の主として封止体側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部において段差側面と封止体の外周側面とを接合することができる。また、基端側ピン及び先端側ピンを封止体のみに接触させて摩擦攪拌を行うため、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入は殆どない。これにより、第一突合せ部においては主として封止体側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、ジャケット本体の段差側面を外側に傾斜させているため、接合強度の低下を招くことなく基端側ピン及び先端側ピンとジャケット本体との接触を容易に回避することができる。また、封止体の板厚を大きくするとともに、第一突合せ部の隙間に塑性流動材を流入させるため、接合部の金属不足を防止することができる。
【0008】
また、前記第一本接合工程において、前記先端側ピンを前記周壁段差部の段差底面にわずかに接触させた状態で、前記第一突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行うことが好ましい。
【0009】
かかる製造方法によれば、第二突合せ部の接合強度を高めることができる。
【0010】
また、本発明は、底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備える摩擦攪拌用の本接合用回転ツールであって、前記基端側ピンのテーパー角度は、先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状のピン段差部が形成されており、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって外側に広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成し、前記封止体の板厚を前記周壁段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくする準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置し、前記周壁段差部の段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合わせた際に隙間があるように第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの先端側ピンと基端側ピンとを前記封止体に挿入し、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の表面に接触させ、前記先端側ピンの外周面を前記周壁部の段差側面にわずかに接触させた状態で、前記第一突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させる際に前記封止体の第二アルミニウム合金を前記隙間に流入させながら摩擦攪拌を行う第一本接合工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
かかる製造方法によれば、封止体と基端側ピン及び先端側ピンとの摩擦熱によって第一突合せ部の主として封止体側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部において段差側面と封止体の外周側面とを接合することができる。基端側ピン及び先端側ピンの外周面をジャケット本体の段差側面にわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。また、ジャケット本体の段差側面を外側に傾斜させているため、基端側ピン及び先端側ピンがジャケット本体側に大きく侵入することなく第一突合せ部を接合することが可能となる。また、封止体の板厚を大きくするとともに、第一突合せ部の隙間に塑性流動材を流入させるため、接合部の金属不足を防止することができる。
【0012】
また、前記第一本接合工程において、前記先端側ピンを前記周壁段差部の段差底面にわずかに接触させた状態で、前記第一突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行うことが好ましい。
【0013】
かかる製造方法によれば、第二突合せ部の接合強度を高めることができる。
【0014】
また、前記第一本接合工程において、前記回転ツールを前記第一突合せ部に沿って一周させて摩擦攪拌を行うことが好ましい。
【0015】
かかる製造方法によれば、液冷ジャケットの水密性及び気密性を高めることができる。
【0016】
また、前記準備工程では、前記ジャケット本体をダイキャストで形成するとともに前記底部が表面側に凸となるように形成し、かつ、前記封止体が表面側に凸となるように形成することが好ましい。
【0017】
摩擦攪拌接合の入熱によって塑性化領域に熱収縮が発生し、液冷ジャケットの封止体側が凹となるように変形するおそれがあるが、かかる製造方法によれば、ジャケット本体及び封止体を予め凸にしておき、熱収縮を利用することで液冷ジャケットを平坦にすることができる。
【0018】
また、前記ジャケット本体の変形量を予め計測しておき、前記第一本接合工程において、前記回転ツールの前記基端側ピン及び前記先端側ピンの挿入深さを前記変形量に合わせて調節しながら摩擦攪拌を行うことが好ましい。
【0019】
かかる製造方法によれば、ジャケット本体及び封止体を凸状に湾曲させて摩擦攪拌接合を行った場合でも、液冷ジャケットに形成される塑性化領域の長さ及び幅を一定にすることができる。
【0020】
また、前記第一本接合工程に先だって、前記第一突合せ部を仮接合する仮接合工程を含むことが好ましい。
【0021】
かかる製造方法によれば、仮接合を行うことで第一本接合工程の際の第一突合せ部の目開きを防ぐことができる。
【0022】
また、前記第一本接合工程では、冷却媒体が流れる冷却板を前記底部の裏面側に設置し、前記冷却板で前記ジャケット本体及び前記封止体を冷却しながら摩擦攪拌を行うことが好ましい。
【0023】
かかる製造方法によれば、摩擦熱を低く抑えることができるため、熱収縮による液冷ジャケットの変形を小さくすることができる。
【0024】
また、前記冷却板の表面と前記底部の裏面とを面接触させることが好ましい。かかる製造方法によれば、冷却効率を高めることができる。
【0025】
また、前記冷却板は、前記冷却媒体が流れる冷却流路を有し、前記冷却流路は、前記第一本接合工程における前記回転ツールの移動軌跡に沿う平面形状を備えることが好ましい。
【0026】
かかる製造方法によれば、摩擦攪拌される部分を集中的に冷却できるため、冷却効率をより高めることができる。
【0027】
また、前記冷却媒体が流れる冷却流路は、前記冷却板に埋設された冷却管によって構成されていることが好ましい。
【0028】
かかる製造方法によれば、冷却媒体の管理を容易に行うことができる。
【0029】
また、前記第一本接合工程では、前記ジャケット本体と前記封止体とで構成される中空部に冷却媒体を流し、前記ジャケット本体及び前記封止体を冷却しながら摩擦攪拌を行うことが好ましい。
【0030】
かかる製造方法によれば、摩擦熱を低く抑えることができるため、熱収縮による液冷ジャケットの変形を小さくすることができる。また、冷却板等を用いずにジャケット本体自体を利用して冷却することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、材種の異なるアルミニウム合金を好適に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態に係る本接合用回転ツールを示す側面図である。
図2】本接合用回転ツールの拡大断面図である。
図3】本接合用回転ツールの第一変形例を示す断面図である。
図4】本接合用回転ツールの第二変形例を示す断面図である。
図5】本接合用回転ツールの第三変形例を示す断面図である。
図6】本発明の第一実施形態に係る液冷ジャケットを示す分解斜視図である。
図7】第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の載置工程を示す断面図である。
図8】第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の第一本接合工程を示す斜視図である。
図9】第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の第一本接合工程を示す断面図である。
図10】第一実施形態に係る液冷ジャケットに製造方法の第一本接合工程後を示す断面図である。
図11】第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の第二本接合工程を示す斜視図である。
図12】第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の第二本接合工程を示す断面図である。
図13】従来の回転ツールを示す概念図である
図14】従来の回転ツールを示す概念図である。
図15】本発明の第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の第一本接合工程を示す断面図である。
図16】本発明の第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の第一本接合工程を示す断面図である。
図17】本発明の第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の第一本接合工程を示す断面図である。
図18】第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の第一変形例を示す斜視図である。
図19A】第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の第二変形例を示す図であって、テーブルを示す斜視図である。
図19B】第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の第二変形例を示す図であって、ジャケット本体及び封止体をテーブルに固定した状態を示す斜視図である。
図20】第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の第三変形例を示す分解斜視図である。
図21】第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の第三変形例のジャケット本体及び封止体をテーブルに固定する状態を示す斜視図である。
図22】従来の液冷ジャケットの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。まずは、本実施形態に係る接合方法で用いる本接合用回転ツール(回転ツール)について説明する。本接合用回転ツールは、摩擦攪拌接合に用いられるツールである。図1に示すように、本接合用回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されており、基軸部F1と、基端側ピンF2と、先端側ピンF3とで主に構成されている。基軸部F1は、円柱状を呈し、摩擦攪拌装置の主軸に接続される部位である。
【0034】
基端側ピンF2は、基軸部F1に連続し、先端に向けて先細りになっている。基端側ピンF2は、円錐台形状を呈する。基端側ピンF2のテーパー角度Aは適宜設定すればよいが、例えば、135〜160°になっている。テーパー角度Aが135°未満であるか、又は、160°を超えると摩擦攪拌後の接合表面粗さが大きくなる。テーパー角度Aは、後記する先端側ピンF3のテーパー角度Bよりも大きくなっている。図2に示すように、基端側ピンF2の外周面には、階段状のピン段差部F21が高さ方向の全体に亘って形成されている。ピン段差部F21は、右回り又は左回りで螺旋状に形成されている。つまり、ピン段差部F21は、平面視して螺旋状であり、側面視すると階段状になっている。本実施形態では、本接合用回転ツールFを右回転させるため、ピン段差部F21は基端側から先端側に向けて左回りに設定している。
【0035】
なお、本接合用回転ツールFを左回転させる場合は、ピン段差部F21を基端側から先端側に向けて右回りに設定することが好ましい。これにより、ピン段差部F21によって塑性流動材が先端側に導かれるため、被接合金属部材の外部に溢れ出る金属を低減することができる。ピン段差部F21は、段差底面F21aと、段差側面F21bとで構成されている。隣り合うピン段差部F21の各頂点F21c,F21cの距離X1(水平方向距離)は、後記する段差角度C及び段差側面F21bの高さY1に応じて適宜設定される。
【0036】
段差側面F21bの高さY1は適宜設定すればよいが、例えば、0.1〜0.4mmで設定されている。高さY1が0.1mm未満であると接合表面粗さが大きくなる。一方、高さY1が0.4mmを超えると接合表面粗さが大きくなる傾向があるとともに、有効段差部数(被接合金属部材と接触しているピン段差部F21の数)も減少する。
【0037】
段差底面F21aと段差側面F21bとでなす段差角度Cは適宜設定すればよいが、例えば、85〜120°で設定されている。段差底面F21aは、本実施形態では水平面と平行になっている。段差底面F21aは、ツールの回転軸から外周方向に向かって水平面に対して−5°〜15°内の範囲で傾斜していてもよい(マイナスは水平面に対して下方、プラスは水平面に対して上方)。距離X1、段差側面F21bの高さY1、段差角度C及び水平面に対する段差底面F21aの角度は、摩擦攪拌を行う際に、塑性流動材がピン段差部F21の内部に滞留して付着することなく外部に抜けるとともに、段差底面F21aで塑性流動材を押えて接合表面粗さを小さくすることができるように適宜設定する。
【0038】
図1に示すように、先端側ピンF3は、基端側ピンF2に連続して形成されている。先端側ピンF3は円錐台形状を呈する。先端側ピンF3の先端は回転軸に対いて垂直な平坦面F4になっている。先端側ピンF3のテーパー角度Bは、基端側ピンF2のテーパー角度Aよりも小さくなっている。図2に示すように、先端側ピンF3の外周面には、螺旋溝F31が刻設されている。螺旋溝F31は、右回り、左回りのどちらでもよいが、本実施形態では本接合用回転ツールFを右回転させるため、基端側から先端側に向けて左回りに刻設されている。
【0039】
なお、本接合用回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝F31を基端側から先端側に向けて右回りに設定することが好ましい。これにより、螺旋溝F31によって塑性流動材が先端側に導かれるため、被接合金属部材の外部に溢れ出る金属を低減することができる。螺旋溝F31は、螺旋底面F31aと、螺旋側面F31bとで構成されている。隣り合う螺旋溝F31の頂点F31c,F31cの距離(水平方向距離)を長さX2とする。螺旋側面F31bの高さを高さY2とする。螺旋底面F31aと、螺旋側面F31bとで構成される螺旋角度Dは例えば、45〜90°で形成されている。螺旋溝F31は、被接合金属部材と接触することにより摩擦熱を上昇させるとともに、塑性流動材を先端側に導く役割を備えている。
【0040】
本接合用回転ツールFは、適宜設計変更が可能である。図3は、本発明の回転ツールの第一変形例を示す側面図である。図3に示すように、第一変形例に係る本接合用回転ツールFAでは、ピン段差部F21の段差底面F21aと段差側面F21bとのなす段差角度Cが85°になっている。段差底面F21aは、水平面と平行である。このように、段差底面F21aは水平面と平行であるとともに、段差角度Cは、摩擦攪拌中にピン段差部F21内に塑性流動材が滞留して付着することなく外部に抜ける範囲で鋭角としてもよい。
【0041】
図4は、本発明の本接合用回転ツールの第二変形例を示す側面図である。図4に示すように、第二変形例に係る本接合用回転ツールFBでは、ピン段差部F21の段差角度Cが115°になっている。段差底面F21aは水平面と平行になっている。このように、段差底面F21aは水平面と平行であるとともに、ピン段差部F21として機能する範囲で段差角度Cが鈍角となってもよい。
【0042】
図5は、本発明の本接合用回転ツールの第三変形例を示す側面図である。図5に示すように、第三変形例に係る本接合用回転ツールFCでは、段差底面F21aがツールの回転軸から外周方向に向かって水平面に対して10°上方に傾斜している。段差側面F21bは、鉛直面と平行になっている。このように、摩擦攪拌中に塑性流動材を押さえることができる範囲で、段差底面F21aがツールの回転軸から外周方向に向かって水平面よりも上方に傾斜するように形成されていてもよい。上記の本接合用回転ツールの第一〜第三変形例によっても、下記の実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0043】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、図6に示すように、ジャケット本体2と、封止体3とを摩擦攪拌接合して液冷ジャケット1を製造するものである。液冷ジャケット1は、封止体3の上に発熱体(図示省略)を設置するとともに、内部に流体を流して発熱体と熱交換を行う部材である。なお、以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面という意味である。
【0044】
本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。準備工程は、ジャケット本体2と封止体3とを準備する工程である。ジャケット本体2は、底部10と、周壁部11と、複数の支柱15と、で主に構成されている。ジャケット本体2は、第一アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第一アルミニウム合金は、例えば、JISH5302 ADC12(Al-Si-Cu系)等のアルミニウム合金鋳造材を用いている。
【0045】
底部10は、平面視矩形を呈する板状部材である。周壁部11は、底部10の周縁部から矩形枠状に立ち上がる壁部である。底部10及び周壁部11で凹部13が形成されている。周壁部11の内周縁には周壁段差部12が形成されている。周壁段差部12は、段差底面12aと、段差底面12aから立ち上がる段差側面12bとで構成されている。図7に示すように、段差側面12bは、段差底面12aから開口部に向かって外側に広がるように傾斜している。段差側面12bの傾斜角度βは適宜設定すればよいが、例えば、鉛直面に対して3°〜30°になっている。
【0046】
図6に示すように、支柱15は、底部10から垂直に立ち上がっている。支柱15の本数は特に制限がされないが、本実施形態では4本形成されている。また、支柱15の形状は本実施形態では円柱状になっているが、他の形状であってもよい。支柱15の端面15aは、周壁段差部12の段差底面12aと同じ高さ位置に形成されている。なお、ジャケット本体2は、例えば、底部10と周壁部11とを別体で形成し、これらをシール部材でシールして一体形成してもよい。
【0047】
封止体3は、ジャケット本体2の開口部を封止する板状部材である。封止体3は、周壁段差部12に載置される大きさになっている。封止体3の板厚は、段差側面12bの高さ寸法よりも大きくなっている。封止体3は、第二アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第二アルミニウム合金は、第一アルミニウム合金よりも硬度の低い材料である。第二アルミニウム合金は、例えば、JIS A1050,A1100,A6063等のアルミニウム合金展伸材で形成されている。封止体3の板厚は、後記する第一本接合工程後に接合部に金属不足が起らない程度に適宜設定される。
【0048】
載置工程は、図7に示すように、ジャケット本体2に封止体3を載置する工程である。載置工程では、段差底面12aに封止体3の裏面3bを載置する。これにより、段差側面12bと封止体3の外周側面3cとが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。第一突合せ部J1は、段差側面12bと封止体3の外周側面3cとが面接触する場合と、本実施形態のように断面略V字状の隙間をあけて突き合わされる場合の両方を含み得る。また、段差底面12aと、封止体3の裏面3bとが突き合わされて第二突合せ部J2が形成される。また、載置工程によって封止体3の裏面3bと支柱15の端面15aとが突き合わされて第三突合せ部J3が形成される。
【0049】
第一本接合工程は、図8に示すように、本接合用回転ツールFを用いて第一突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。第一本接合工程では、封止体3の表面3aに設定された開始位置Spに右回転した本接合用回転ツールFを挿入し、第一突合せ部J1の隙間に塑性流動材を流入させながら、封止体3に対して右廻りに本接合用回転ツールFを移動させる。本接合用回転ツールFの移動軌跡には摩擦攪拌された金属が硬化することにより塑性化領域W1が形成される。
【0050】
図9に示すように、第一本接合工程では、基端側ピンF2及び先端側ピンF3を封止体3に接触させた状態で、かつ、基端側ピンF2及び先端側ピンF3ピンを段差側面12bに接触させない状態で摩擦攪拌を行う。また、本接合用回転ツールFの挿入深さは、基端側ピンF2の外周面を封止体3の表面3aに接触させつつ、先端側ピンF3を段差底面12aに接触させない状態で摩擦攪拌を行う。基端側ピンF2の外周面と周壁端面11aとは接触させていない。なお、先端側ピンF3の外周面がジャケット本体2に接触していない状態とは、先端側ピンF3と段差側面12bとの距離がゼロである場合も含み得る。
【0051】
段差側面12bから先端側ピンF3の外周面までの距離が遠すぎると第一突合せ部J1の接合強度が低下する。段差側面12bから先端側ピンF3の外周面までの離間距離Lはジャケット本体2及び封止体3の材料によって適宜設定すればよいが、本実施形態のように先端側ピンF3の外周面を段差側面12bに接触させず、かつ、先端側ピンF3の平坦面F4を段差底面12aに接触させない場合は、例えば、0≦L≦0.5mmに設定し、好ましくは0≦L≦0.3mmに設定することが好ましい。
【0052】
本接合用回転ツールFを封止体3の廻りに一周させたら、塑性化領域W1の始端と終端とを重複させる。本接合用回転ツールFは、封止体3の表面3aにおいて、徐々に上昇させて引き抜くようにしてもよい。図10は、本実施形態に係る第一本接合工程後の接合部の断面図である。塑性化領域W1は、第一突合せ部J1を境に封止体3側に形成される。
【0053】
第二本接合工程は、図11及び図12に示すように、本接合用回転ツールFを用いて第三突合せ部J3を摩擦攪拌接合する工程である。第二本接合工程では、図11に示すように、封止体3の表面3aに設定した開始位置Spに右回転した基端側ピンF2及び先端側ピンF3を挿入し、支柱15の外縁の内側に沿って一周させる。本接合用回転ツールFの起動軌跡には摩擦攪拌された金属が硬化することにより塑性化領域W2が形成される。
【0054】
図12に示すように、第二本接合工程では、基端側ピンF2の外周面を封止体3の表面2aに接触させるとともに、先端側ピンF3の先端を支柱15の端面15aに接触させた状態で摩擦攪拌を行う。
【0055】
本接合用回転ツールFを支柱15の廻りに一周させたら、塑性化領域W2の始端と終端とを重複させる。本接合用回転ツールFは、封止体3の表面3aにおいて、徐々に上昇させて引き抜くようにしてもよい。塑性化領域W2は、第三突合せ部J3を超えて支柱15に達するように形成されている。なお、第二本接合工程では、基端側ピンF2の外周面を封止体3の表面3aに接触させつつ、先端側ピンF3が支柱15の端面15aに接触しないように本接合用回転ツールFの挿入深さを設定してもよい。この場合は、先端側ピンF3と封止体3との摩擦熱によって第三突合せ部J3が塑性流動化されて接合される。
【0056】
以上説明した本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、封止体3と基端側ピンF2及び先端側ピンF3との摩擦熱によって第一突合せ部J1の主として封止体3側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部J1において段差側面12bと封止体3の外周側面3cとを接合することができる。また、基端側ピンF2及び先端側ピンF3を封止体3のみに接触させて摩擦攪拌を行うため、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入は殆どない。これにより、第一突合せ部J1においては主として封止体3側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、ジャケット本体2の段差側面12bを外側に傾斜させているため、接合強度の低下を招くことなく基端側ピンF2及び先端側ピンF3とジャケット本体2との接触を容易に回避することができる。また、封止体3の板厚を大きくするとともに、第一突合せ部J1の隙間に塑性流動材を流入させるため、接合部の金属不足を防止することができる。
【0057】
ここで、図13に示すように、従来の回転ツール900であると、ショルダ部で被接合金属部材910の表面を押えないため凹溝(被接合金属部材の表面と塑性化領域の表面とで構成される凹溝)が大きくなるとともに、接合表面粗さが大きくなるという問題がある。また、凹溝の脇に膨出部(接合前に比べて被接合金属部材の表面が膨らむ部位)が形成されるという問題がある。一方、図14の回転ツール901のように、回転ツール901のテーパー角度E2を回転ツール900のテーパー角度E1よりも大きくすると、回転ツール900に比べて被接合金属部材910の表面を押えることはできるため、凹溝は小さくなり、膨出部も小さくなる。しかし、下向きの塑性流動が強くなるため、塑性化領域の下部にキッシングボンドが形成されやすくなる。
【0058】
これに対し、本実施形態の本接合用回転ツールFは、基端側ピンF2と、基端側ピンF2のテーパー角度Aよりもテーパー角度が小さい先端側ピンF3を備えた構成になっている。これにより、封止体3に本接合用回転ツールFを挿入しやすくなる。また、先端側ピンF3のテーパー角度Bが小さいため、封止体3の深い位置まで本接合用回転ツールFを容易に挿入することができる。また、先端側ピンF3のテーパー角度Bが小さいため、回転ツール901に比べて下向きの塑性流動を抑えることができる。このため、塑性化領域W1の下部にキッシングボンドが形成されるのを防ぐことができる。一方、基端側ピンF2のテーパー角度Aは大きいため、従来の回転ツールに比べ、被接合金属部材の厚さや接合の高さ位置が変化しても安定して接合することができる。
【0059】
また、基端側ピンF2の外周面で塑性流動材を押えることができるため、接合表面に形成される凹溝を小さくすることができるとともに、凹溝の脇に形成される膨出部を無くすか若しくは小さくすることができる。また、階段状のピン段差部F21は浅く、かつ、出口が広いため、塑性流動材を段差底面F21aで押さえつつ塑性流動材がピン段差部F21の外部に抜けやすくなっている。そのため、基端側ピンF2で塑性流動材を押えても基端側ピンF2の外周面に塑性流動材が付着し難い。よって、接合表面粗さを小さくすることができるとともに、接合品質を好適に安定させることができる。
【0060】
また、第一本接合工程では、ジャケット本体2の段差側面12bを外側に傾斜させているため、先端側ピンF3とジャケット本体2との接触を容易に回避することができる。また、本実施形態では、段差側面12bの傾斜角度β(図7参照)と、先端側ピンF3の傾斜角度α(図1参照)とを同一(段差側面12bと先端側ピンF3の外周面とを平行)にしているため、先端側ピンF3と段差側面12bとの接触を避けつつ、先端側ピンF3と段差側面12bとを極力近接させることができる。
【0061】
また、第一本接合工程では、本接合用回転ツールFの回転方向及び進行方向は適宜設定すればよいが、本接合用回転ツールFの移動軌跡に形成される塑性化領域W1のうち、ジャケット本体2側がシアー側となり、封止体3側がフロー側となるように本接合用回転ツールFの回転方向及び進行方向を設定した。ジャケット本体2側がシアー側となるように設定することで、第一突合せ部J1の周囲における基端側ピンF2及び先端側ピンF3による攪拌作用が高まり、第一突合せ部J1における温度上昇が期待でき、第一突合せ部J1において段差側面12bと封止体3の外周側面3cとをより確実に接合することができる。
【0062】
なお、シアー側(Advancing side)とは、被接合部に対する回転ツールの外周の相対速度が、回転ツールの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側を意味する。一方、フロー側(Retreating side)とは、回転ツールの移動方向の反対方向に回転ツールが回動することで、被接合部に対する回転ツールの相対速度が低速になる側を言う。
【0063】
また、第二本接合工程を行うことにより、ジャケット本体2と封止体3との接合強度を高めることができる。また、第一本接合工程と同様に、第二本接合工程によれば、本接合用回転ツールFの基端側ピンF2で、封止体3の表面3aを押さえながら摩擦攪拌を行うため、接合表面粗さを小さくすることができるとともに、接合品質を好適に安定させることができる。
【0064】
また、封止体3の板厚を段差側面12bの高さ寸法よりも大きくしているため、第一突合せ部J1の金属不足を防ぐことができる。また、封止体3の板厚を大きくすることにより、板厚が薄い場合に比べて発熱体との熱交換効率を高めることができる。
【0065】
また、ジャケット本体2の第一アルミニウム合金は、封止体3の第二アルミニウム合金よりも硬度の高い材料になっている。これにより、液冷ジャケット1の耐久性を高めることができる。また、ジャケット本体2の第一アルミニウム合金をアルミニウム合金鋳造材とし、封止体3の第二アルミニウム合金をアルミニウム合金展伸材とすることが好ましい。第一アルミニウム合金を例えば、JISH5302 ADC12等のAl−Si−Cu系アルミニウム合金鋳造材とすることにより、ジャケット本体2の鋳造性、強度、被削性等を高めることができる。また、第二アルミニウム合金を例えば、JIS A1000系又はA6000系とすることにより、加工性、熱伝導性を高めることができる。
【0066】
なお、第一本接合工程及び第二本接合工程は、どちらを先に行ってもよい。また、第一本接合工程を行う前に、第一突合せ部J1に摩擦攪拌又は溶接によって仮接合を行ってもよい。仮接合工程を行うことにより、第一本接合工程、第二本接合工程の際に各突合せ部の目開きを防ぐことができる。
【0067】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。第二実施形態では、準備工程、載置工程及び第二本接合工程は第一実施形態と同等であるため説明を省略する。また、第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0068】
第二実施形態の第一本接合工程では、図15に示すように、本接合用回転ツールFを第一突合せ部J1に沿って相対移動させる際に、先端側ピンF3を段差側面12bにわずかに接触させつつ、基端側ピンF2の外周面を封止体3の表面3aに接触させた状態で摩擦攪拌を行う。また、第一本接合工程では、基端側ピンF2は周壁端面11aに接触させておらず、先端側ピンF3は段差底面12aに接触させていない。
【0069】
ここで、段差側面12bに対する先端側ピンF3の外周面の接触代をオフセット量Nとする。本実施形態のように、先端側ピンF3の外周面を段差側面12bにわずかに接触させ、かつ、先端側ピンF3の平坦面F4を段差底面12aに接触させない場合は、オフセット量Nを、0<N≦0.5mmの間で設定し、好ましくは0<N≦0.25mmの間で設定することが好ましい。
【0070】
本実施形態の第一本接合工程では、先端側ピンF3の外周面と段差側面12bとをわずかに接触させるに留めるため、第一突合せ部J1を確実に接合することができるとともに、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。
【0071】
また、本実施形態の第一本接合工程では、段差側面12bと先端側ピンF3の外周面とを平行にしているため、先端側ピンF3と段差側面12bとの接触代を高さ方向に亘って均一にすることができる。これにより、先端側ピンF3の外周面を周壁段差部12の段差側面12bにわずかに接触させた場合でも、塑性流動材がバランス良く攪拌されるため、接合部の強度低下を抑制することができる。
【0072】
また、第一実施形態と同様に、基端側ピンF2の外周面で塑性流動材を押えることができるため、接合表面に形成される凹溝を小さくすることができるとともに、凹溝の脇に形成される膨出部を無くすか若しくは小さくすることができる。また、接合表面粗さを小さくすることができるとともに、接合品質を好適に安定させることができる。
【0073】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。第三実施形態では、準備工程、載置工程及び第二本接合工程は第一実施形態と同等であるため説明を省略する。また、第三実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0074】
第三実施形態の第一本接合工程では、図16に示すように、本接合用回転ツールFを第一突合せ部J1に沿って相対移動させる際に、先端側ピンF3の外周面を段差側面12bに接触させず、かつ、先端側ピンF3の平坦面F4を段差底面12aにわずかに接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。
【0075】
第三実施形態によれば、第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。さらに、先端側ピンF3の平坦面F4を段差底面12aに接触させた状態で摩擦攪拌接合を行うため、第二突合せ部J2の接合強度を高めることができる。また、先端側ピンF3と段差底面12aとはわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入を極力防ぐことができる。
【0076】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法では、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。第四実施形態では、準備工程、載置工程及び第二本接合工程は第一実施形態と同等であるため説明を省略する。また、第四実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0077】
図17に示すように、第四実施形態に係る第一本接合工程において、先端側ピンF3の外周面を段差側面12bにわずかに接触させつつ、先端側ピンF3の平坦面F4を段差底面12aにわずかに接触させた状態で摩擦攪拌を行う。また、本実施形態に係る第一本接合工程では、基端側ピンF2の外周面で封止体3の表面3aを押さえた状態で摩擦攪拌を行う。先端側ピンF3と段差側面12bとのオフセット量Nは第二実施形態と同じように設定すればよい。
【0078】
第四実施形態によれば、第二実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、先端側ピンF3の平坦面F4を段差底面12aに接触させた状態で摩擦攪拌を行うことで、第二突合せ部J2の接合強度を高めることができる。また、平坦面F4と段差底面12aとはわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入を極力防ぐことができる。
【0079】
[第一実施形態の第一変形例]
次に、第一実施形態の第一変形例に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。図18に示すように、第一変形例では、冷却板を用いて仮接合工程、第一本接合工程及び第二本接合工程を行う点で第一実施形態と相違する。第一実施形態の第一変形例では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0080】
第一実施形態の第一変形例では、固定工程を行う際に、ジャケット本体2をテーブルKに固定する。テーブルKは、直方体を呈する基板K1と、基板K1の四隅に形成されたクランプK3と、基板K1の内部に配設された冷却管WPによって構成されている。テーブルKは、ジャケット本体2を移動不能に拘束するとともに、特許請求の範囲の「冷却板」として機能する部材である。
【0081】
冷却管WPは、基板K1の内部に埋設される管状部材である。冷却管WPの内部には、基板K1を冷却する冷却媒体が流通する。冷却管WPの配設位置、つまり、冷却媒体が流れる冷却流路の形状は特に制限されないが、当該第一変形例では第一本接合工程における本接合用回転ツールFの移動軌跡に沿う平面形状になっている。即ち、平面視した際に、冷却管WPと第一突合せ部J1とが略重なるように冷却管WPが配設されている。
【0082】
第一変形例の仮接合工程、第一本接合工程及び第二本接合工程では、ジャケット本体2をテーブルKに固定した後、冷却管WPに冷却媒体を流しながら摩擦攪拌接合を行う。これにより、摩擦攪拌の際の摩擦熱を低く抑えることができるため、熱収縮に起因する液冷ジャケット1の変形を小さくすることができる。また、当該第一変形例では、平面視した場合に、冷却流路と第一突合せ部J1(仮接合用回転ツール及び本接合用回転ツールFの移動軌跡)とが重なるようになっているため、摩擦熱が発生する部分を集中的に冷却できる。これにより、冷却効率を高めることができる。また、冷却管WPを配設して冷却媒体を流通させるため、冷却媒体の管理が容易となる。また、テーブルK(冷却板)とジャケット本体2とが面接触するため、冷却効率を高めることができる。
【0083】
なお、テーブルK(冷却板)を用いてジャケット本体2及び封止体3を冷却するとともに、ジャケット本体2の内部にも冷却媒体を流しつつ摩擦攪拌接合を行ってもよい。
【0084】
[第一実施形態の第二変形例]
次に、第一実施形態の第二変形例に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。図19A,19Bに示すように、第一実施形態の第二変形例では、ジャケット本体2の表面側及び封止体3の表面3aが凸状となるように湾曲させた状態で第一本接合工程及び第二本接合工程を行う点で第一実施形態と相違する。当該第二変形例では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0085】
当該第二変形例では、図19Aに示すように、テーブルKAを用いる。テーブルKAは、直方体を呈する基板KA1と、基板KA1の中央に形成されたスペーサKA2と、基板KA1の四隅に形成されたクランプKA3とで構成されている。スペーサKA2は、基板KA1と一体でも別体でもよい。
【0086】
当該第二変形例の固定工程では、図19Bに示すように、仮接合工程を行って一体化したジャケット本体2及び封止体3をクランプKA3によってテーブルKAに固定する。仮接合工程によって、塑性化領域Wが形成されている。
ジャケット本体2及び封止体3をテーブルKAに固定すると、ジャケット本体2の底部10、周壁端面11a及び封止体3の表面3aが上方に凸状となるように湾曲する。より詳しくは、ジャケット本体2の壁部11Aの第一辺部21、壁部11Bの第二辺部22、壁部11Cの第三辺部23及び壁部11Dの第四辺部24が曲線となるように湾曲する。
【0087】
当該第二変形例の第一本接合工程及び第二本接合工程では、本接合用回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行う。第一本接合工程及び第二本接合工程では、ジャケット本体2及び封止体3の少なくともいずれか一方の変形量を計測しておき、基端側ピンF2及び先端側ピンF3の挿入深さを前記変形量に合わせて調節しながら摩擦攪拌接合を行う。つまり、ジャケット本体2の周壁端面11a及び封止体3の表面3aの曲面に沿って本接合用回転ツールFの移動軌跡が曲線となるように移動させる。このようにすることで、塑性化領域の深さ及び幅を一定にすることができる。
【0088】
摩擦攪拌接合の入熱によって塑性化領域に熱収縮が発生し、液冷ジャケット1の封止体3側が凹状に変形するおそれがあるが、当該第二変形例の第一本接合工程及び第二本接合工程によれば、周壁端面11a及び表面3aに引張応力が作用するようにジャケット本体2及び封止体3を予め凸状に固定しているため、摩擦攪拌接合後の熱収縮を利用することで液冷ジャケット1を平坦にすることができる。
また、従来の回転ツールで本接合工程を行う場合、ジャケット本体2及び封止体3が凸状に反っていると回転ツールのショルダ部がジャケット本体2及び封止体3に接触し、操作性が悪いという問題がある。しかし、当該第二変形例の本接合用回転ツールFには、ショルダ部が存在しないため、ジャケット本体2及び封止体3が凸状に反っている場合でも、本接合用回転ツールFの操作性が良好となる。
【0089】
なお、ジャケット本体2及び封止体3の変形量の計測については、公知の高さ検知装置を用いればよい。また、例えば、テーブルKAからジャケット本体2及び封止体3の少なくともいずれか一方までの高さを検知する検知装置が装備された摩擦攪拌装置を用いて、ジャケット本体2又は封止体3の変形量を検知しながら第一本接合工程及び第二本接合工程を行ってもよい。
【0090】
また、当該第二変形例では、第一辺部21〜第四辺部24の全てが曲線となるようにジャケット本体2及び封止体3を湾曲させたがこれに限定されるものではない。例えば、第一辺部21及び第二辺部22が直線となり、第三辺部23及び第四辺部24が曲線となるように湾曲させてもよい。また、例えば、第一辺部21及び第二辺部22が曲線となり、第三辺部23及び第四辺部24が直線となるように湾曲させてもよい。
【0091】
また、当該第二変形例ではジャケット本体2又は封止体3の変形量に応じて基端側ピンF2及び先端側ピンF3の高さ位置を変更したが、テーブルKAに対する基端側ピンF2及び先端側ピンF3の高さを一定にして第一本接合工程及び第二本接合工程を行ってもよい。
【0092】
また、スペーサKA2は、ジャケット本体2及び封止体3の表面側が凸状となるように固定することができればどのような形状であってもよい。また、ジャケット本体2及び封止体3の表面側が凸状となるように固定することができればスペーサKA2は省略してもよい。また、本接合用回転ツールFは、例えば、先端にスピンドルユニット等の回転駆動手段を備えたロボットアームに取り付けてもよい。かかる構成によれば、本接合用回転ツールFの回転中心軸を様々な角度に容易に変更することができる。
【0093】
[第一実施形態の第三変形例]
次に、第一実施形態の第三変形例に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。図20に示すように、第一実施形態の第三変形例では、準備工程において、ジャケット本体2及び封止体3を予め表面側に凸状に湾曲するように形成する点で第一実施形態と相違する。第一実施形態の第三変形例では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0094】
第一実施形態の第三変形例に係る準備工程では、ジャケット本体2及び封止体3の表面側が凸状に湾曲するようにダイキャストで形成する。これにより、ジャケット本体2は、底部10、周壁部11がそれぞれ表面側に凸状となるように形成される。また、封止体3の表面3aが凸状となるように形成される。
【0095】
図21に示すように、第三変形例では、固定工程を行う際に、仮接合されたジャケット本体2及び封止体3をテーブルKBに固定する。テーブルKBは、直方体を呈する基板KB1と、基板KB1の中央に配設されたスペーサKB2と、基板KB1の四隅に形成されたクランプKB3と、基板KB1の内部に埋設された冷却管WPとで構成されている。テーブルKBは、ジャケット本体2を移動不能に拘束するとともに、特許請求の範囲の「冷却板」として機能する部材である。
【0096】
スペーサKB2は、上方に凸状となるように湾曲した曲面KB2aと、曲面KB2aの両端に形成され基板KB1から立ち上がる立面KB2b,KB2bとで構成されている。スペーサKB2の第一辺部Ka及び第二辺部Kbは曲線になっており、第三辺部Kc及び第四辺部Kdは直線になっている。
【0097】
冷却管WPは、基板KB1の内部に埋設される管状部材である。冷却管WPの内部には、基板KB1を冷却する冷却媒体が流通する。冷却管WPの配設位置、つまり、冷却媒体が流れる冷却流路の形状は特に制限されないが、当該第三変形例では第一本接合工程における本接合用回転ツールFの移動軌跡に沿う平面形状になっている。即ち、平面視した際に、冷却管WPと第一突合せ部J1とが略重なるように冷却管WPが配設されている。
【0098】
当該第三変形例の固定工程では、仮接合を行って一体化したジャケット本体2及び封止体3をクランプKB3によってテーブルKBに固定する。より詳しくは、ジャケット本体2の底部10の裏面が曲面KB2aと面接触するようにテーブルKBに固定する。ジャケット本体2をテーブルKBに固定すると、ジャケット本体2の壁部11Aの第一辺部21、壁部11Bの第二辺部22が曲線となり、壁部11Cの第三辺部23及び壁部11Dの第四辺部24が直線となるように湾曲する。
【0099】
当該第三変形例の第一本接合工程及び第二本接合工程では、本接合用回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行う。第一本接合工程及び第二本接合工程では、ジャケット本体2及び封止体3の少なくともいずれか一方の変形量を計測しておき、基端側ピンF2及び先端側ピンF3の挿入深さを前記変形量に合わせて調節しながら摩擦攪拌接合を行う。つまり、ジャケット本体2の周壁端面11a及び封止体3の表面3aに沿って本接合用回転ツールFの移動軌跡が曲線又は直線となるように移動させる。このようにすることで、塑性化領域の深さ及び幅を一定にすることができる。
【0100】
摩擦攪拌接合の入熱によって塑性化領域に熱収縮が発生し、液冷ジャケット1の封止体3側が凹状に変形するおそれがあるが、当該第三変形例の第一本接合工程及び第二本接合工程によれば、ジャケット本体2及び封止体3を予め凸状に形成しているため、摩擦攪拌接合後の熱収縮を利用することで液冷ジャケット1を平坦にすることができる。
【0101】
また、当該第三変形例では、ジャケット本体2の底部10の凹状となっている裏面に、スペーサKB2の曲面KB2aを面接触させている。これにより、ジャケット本体2及び封止体3をより効果的に冷却しながら摩擦攪拌接合を行うことができる。摩擦攪拌接合における摩擦熱を低く抑えることができるため、熱収縮に起因する液冷ジャケットの変形を小さくすることができる。これにより、準備工程において、ジャケット本体2及び封止体3を凸状に形成する際に、ジャケット本体2及び封止体3の曲率を小さくすることができる。
【0102】
なお、ジャケット本体2及び封止体3の変形量の計測については、公知の高さ検知装置を用いればよい。また、例えば、テーブルKBからジャケット本体2及び封止体3の少なくともいずれか一方までの高さを検知する検知装置が装備された摩擦攪拌装置を用いて、ジャケット本体2又は封止体3の変形量を検知しながら本接合工程を行ってもよい。
【0103】
また、当該第三変形例では、第一辺部21及び第二辺部22が曲線となるようにジャケット本体2及び封止体3を湾曲させたがこれに限定されるものではない。例えば、球面を具備するスペーサKB2を形成し、当該球面にジャケット本体2の底部10の裏面が面接触するようにしてもよい。この場合は、テーブルKBにジャケット本体2を固定すると、第一辺部21〜第四辺部24のすべてが曲線となる。
【0104】
また、当該第三変形例ではジャケット本体2又は封止体3の変形量に応じて基端側ピンF2及び先端側ピンF3の高さ位置を変更したが、テーブルKBに対する基端側ピンF2及び先端側ピンF3の高さを一定にして本接合工程を行ってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 液冷ジャケット
2 ジャケット本体
3 封止体
3a 表面
3b 裏面
3c 外周側面
10 底部
11 周壁部
11a 周壁端面
12 周壁段差部
12a 段差底面
12b 段差側面
13 凹部
15 支柱
15a 端面
F 本接合用回転ツール(回転ツール)
F1 基軸部
F2 基端側ピン
F3 先端側ピン
F4 平坦面
J1 第一突合せ部
J2 第二突合せ部
J3 第三突合せ部
K テーブル(冷却板)
W1 塑性化領域
W2 塑性化領域
WP 冷却管
図1
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図19B
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図22