特許第6927145号(P6927145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927145
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】飛灰洗浄装置および飛灰洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20210812BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20210812BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   G21F9/28 521A
   G21F9/30 Z
   G21F9/28 525B
   G21F9/12 501J
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-97593(P2018-97593)
(22)【出願日】2018年5月22日
(65)【公開番号】特開2019-203725(P2019-203725A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2020年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 光宏
(72)【発明者】
【氏名】宮越 靖宏
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−031661(JP,A)
【文献】 特開2014−059285(JP,A)
【文献】 特開2016−186503(JP,A)
【文献】 特開2006−272168(JP,A)
【文献】 特開2013−137289(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0237741(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/28
G21F 9/30
G21F 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質により汚染された廃棄物を焼却した際に生ずる飛灰を洗浄する飛灰洗浄装置において、
放射性物質と塩類を含む飛灰を洗浄液としての有機溶媒で洗浄して飛灰に含まれる放射性物質と塩類を有機溶媒に溶解して移行させるとともに洗浄後の残渣を灰スラリとして生成する洗浄装置と、該洗浄装置に接続され上記灰スラリの飛灰粒子間の有機溶媒に含まれている放射性物質と塩類をリンス液として供給を受ける有機溶媒に溶解して移行させた後に脱液するリンス・脱液装置と、洗浄装置及びリンス・脱液装置に接続され、洗浄装置からの洗浄排液及びリンス・脱液装置からのリンス排液に含まれる放射性物質を吸着剤により吸着除去する吸着装置と、該吸着装置に接続され該吸着装置からの吸着処理排液に含まれる塩類を該吸着処理排液の蒸発により固化する蒸発固化処理装置とを有することを特徴とする飛灰洗浄装置。
【請求項2】
放射性物質により汚染された廃棄物を焼却した際に生ずる飛灰を洗浄する飛灰洗浄方法において、
放射性物質と塩類を含む飛灰を洗浄液としての有機溶媒で洗浄して飛灰に含まれる放射性物質と塩類を有機溶媒に溶解して移行させるとともに洗浄後の残渣を灰スラリとして生成する洗浄工程と、上記灰スラリの飛灰粒子間の有機溶媒に含まれている放射性物質と塩類をリンス液としての有機溶媒に溶解して移行させた後に灰スラリを脱液し洗浄灰を排出するリンス・脱液工程と、洗浄工程からの洗浄排液及びリンス・脱液工程からのリンス排液に含まれる放射性物質を吸着剤により吸着除去する吸着工程と、吸着工程からの吸着処理排液に含まれる塩類を吸着処理排液の蒸発により固化す蒸発固化工程とを有することを特徴とする飛灰洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質により汚染された廃棄物を焼却した際に発生する飛灰を洗浄する飛灰洗浄装置および飛灰洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質(放射性セシウム等)により汚染された廃棄物を焼却した際に発生する飛灰には、上記放射性物質が含まれる。該放射性物質を含む飛灰が規定値以下の低汚染状態のものであれば、既存の最終処分場に埋立処分することが可能であるが、高汚染状態のものである場合には、既存の最終処分場に直接埋立処分することができず、飛灰をセメント固化したり容器に収容したりして放射性物質の溶出防止対策を施してから、管理型埋立処分場に埋立処分することになっている。
【0003】
しかし、実際には、溶出防止対策を施す処分は進んでおらず、放射性物質を含む飛灰は処分されずに保管されたままになっており、膨大な量(体積)となってしまっている。そこで、放射性物質を含む飛灰を既存の最終処分場に埋立処分可能とするために、例えば非特許文献1のように、飛灰を、該最終処分場での埋立処分が可能なレベルにまで放射性物質の濃度を低減するように洗浄して除染する技術が検討されている。
【0004】
非特許文献1に記載の飛灰洗浄を行うための飛灰洗浄装置の構成の概要を図2に示す。図2に見られるように、この飛灰洗浄装置は、放射性物質(セシウム等)と塩類を含む飛灰を洗浄水で洗浄して、飛灰に含まれる放射性物質と塩類を洗浄水に溶解して移行させるとともに飛灰のスラリを生成する洗浄装置11と、該洗浄装置11に接続され上記スラリを脱水するとともに飛灰粒子間の間隙水に含まれている放射性物質と塩類をリンス用水に溶解して移行させる脱水リンス装置12と、洗浄装置11および脱水リンス装置12に接続され、洗浄装置11からの洗浄排水および脱水リンス装置12からのリンス排水に含まれる放射性物質を吸着剤により吸着除去する吸着装置13と、該吸着装置13に接続され該吸着装置13からの吸着処理排水に含まれる放射性物質を固化する固化処理装置14とを有している。
【0005】
固化処理装置14は、後述する逆浸透膜処理装置15を有しており、該逆浸透膜処理装置15で放射性物質と塩類を分離された固化処理排水は、洗浄水およびリンス用水として用いるために戻される。具体的には、上記固化処理排水は、外部からの補給水とともに、洗浄水として洗浄装置11に供給され、また、リンス用水として脱水リンス装置12に供給される。
【0006】
洗浄装置11は、飛灰を受け入れて収容するとともに該飛灰を洗浄するための洗浄水の注入を受ける洗浄槽(図示せず)を有しており、該洗浄槽内にて、飛灰に含まれる放射性物質と塩類を洗浄水に溶解させるとともに上記飛灰のスラリを生成するようになっている。
【0007】
脱水リンス装置12は、スラリを脱水するためのベルトフィルタ、フィルタプレス等の脱水機(図示せず)を有している。該脱水リンス装置12は、洗浄装置11からのスラリを受けて上記脱水機でスラリを脱水する際、リンス用水をスラリに散水して、該スラリの飛灰粒子の間の間隙水に含まれる放射性物質と塩類をリンス用水に溶解して移行させるようになっている。
【0008】
吸着装置13は、放射性物質を吸着するための吸着剤が充填されており、洗浄装置11からの洗浄排水および脱水リンス装置12からのリンス排水を受けて、該洗浄排水および該リンス排水に含まれる放射性物質を上記吸着剤によって吸着除去するようになっている
【0009】
固化処理装置14は、吸着装置13からの吸着処理排水、すなわち該吸着装置13で放射性物質が吸着され放射性物質の含有濃度が低減された洗浄排水およびリンス排水に含まれる放射性物質と塩類を逆浸透膜(RO膜。図示せず)で放射性物質と塩類を分離除去するための逆浸透膜処理装置15と、該逆浸透膜処理装置15で分離除去された放射性物質と塩類を含む濃縮水を加熱器(図示せず)で加熱して水分を蒸発させて放射性物質と塩類を固化させる蒸発固化処理装置16とを有している。
【0010】
また、図2に見られるように、逆浸透膜処理装置15の逆浸透膜処理を施され固化処理装置14外へ排出された排水(固化処理排水)を移送するための移送管は、補給水の供給管に接続されている。これによって、戻された固化処理排水に補給水が補給され、洗浄水またはリンス用水として、それぞれ洗浄装置11または脱水リンス装置12に供給される。
【0011】
このような構成の飛灰洗浄装置によって、飛灰は以下の要領で処理される。まず、洗浄装置11の洗浄槽に、放射性物質と塩類を含む飛灰が供給されるとともに洗浄水が注入される。上記洗浄槽内にて、洗浄水と飛灰との液固比を3〜5程度とした状態で該飛灰を洗浄水中に撹拌しながら浸漬して、該飛灰のスラリを生成するとともに、該飛灰から放射性物質と塩類を洗浄水に溶解させる。このようにして生成されたスラリの飛灰粒子同士間の間隙水には放射性物質と塩類が含まれている。
【0012】
洗浄装置11で生成されたスラリは、脱水リンス装置12へ送られて、脱水機で脱水処理される。この脱水処理の際、リンス用水がスラリに散水され、該スラリの飛灰粒子同士間の間隙水に含まれる放射性物質と塩類がリンス用水に溶解して移行する。スラリが脱水処理された後の飛灰(脱水灰)は、放射性物質の含有濃度が十分に低減されており、既存の埋立処分場で埋立処分される。
【0013】
洗浄装置11からの洗浄排水および脱水リンス装置12からのリンス排水は吸着装置13に送られて、該洗浄排水および該リンス排水に含まれる放射性物質が吸着剤によって吸着除去される。吸着装置13からの排水、すなわち放射性物質の含有濃度が低減された吸着処理排水は、固化処理装置14に送られて、該固化処理装置14の逆浸透膜処理装置15で該吸着処理排水に含まれる放射性物質と塩類が分離される。この分離された放射性物質と塩類を含む濃縮水は蒸発固化処理装置16で加熱され、その結果、水分が蒸発して放射性物質と塩類が固化される。その固化物は、当初の飛灰に比べて放射性物質が大幅に濃縮され減容されており、容器に収容されて保管される。
【0014】
一方、逆浸透膜処理装置15で逆浸透膜処理を施され放射性物質が分離除去された排水は、固化処理排水として固化処理装置14から排出される。この固化処理排水は、洗浄水やリンス用水として利用可能な程度まで、放射性物質と塩類が十分に除去されており、図2に見られるように帰還され、補給水とともに、洗浄水またはリンス用水として洗浄装置11または脱水リンス装置12へ供給される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「飛灰中セシウムの洗浄分離に関する研究」、第23回廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集、廃棄物資源循環学会、2012年10月22日、E2-2、p.573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
非特許文献1では、既述したように、脱水リンス装置12は、飛灰のスラリを脱水する際、飛灰粒子同士間の間隙水に含まれる放射性物質と塩類を除去するために、リンス用水を散水しながら脱水する。洗浄装置で飛灰を洗浄した洗浄排水、そして脱水リンス装置でスラリをリンス処理したリンス排水に溶解して含まれている放射性物質を吸着剤により吸着除去処理した後の吸着処理排水中には、飛灰に含まれていた重金属類と塩類が溶解している。重金属類はpH調整を行い凝集沈殿させ分離することができる。一方、塩類は逆浸透膜処理により濃縮することはできるが、除去することはできない。したがって、吸着処理排水は下水放流や海洋放流することができないので、蒸発固化処理装置で濃縮水を加熱して水分を蒸発させ、乾燥固化して残った塩類を固化物とする蒸発固化処理を行い、この固化物を埋立処分する必要がある。しかし、蒸発固化処理のためには、濃縮水の水分を蒸発させるために加熱するエネルギーが多大に必要であるという問題がある。
【0017】
本発明では、このような事情に鑑みて、洗浄排水とリンス排水を蒸発固化処理する際の加熱エネルギーを削減して、運転費を低く抑えて、飛灰から放射性物質と塩類を除去できる飛灰洗浄装置および飛灰洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、上記課題は、次のような構成の飛灰洗浄装置そして飛灰洗浄方法によって解決される。
【0019】
<飛灰洗浄装置>
放射性物質により汚染された廃棄物を焼却した際に生ずる飛灰を洗浄する飛灰洗浄装置において、
放射性物質と塩類を含む飛灰を洗浄液としての有機溶媒で洗浄して飛灰に含まれる放射性物質と塩類を有機溶媒に溶解して移行させるとともに洗浄後の残渣を灰スラリとして生成する洗浄装置と、該洗浄装置に接続され上記灰スラリの飛灰粒子間の有機溶媒に含まれている放射性物質と塩類をリンス液として供給を受ける有機溶媒に溶解して移行させた後に脱液するリンス・脱液装置と、洗浄装置及びリンス・脱液装置に接続され、洗浄装置からの洗浄排液及びリンス・脱液装置からのリンス排液に含まれる放射性物質を吸着剤により吸着除去する吸着装置と、該吸着装置に接続され該吸着装置からの吸着処理排液に含まれる塩類を該吸着処理排液の蒸発により固化する蒸発固化処理装置とを有することを特徴とする飛灰洗浄装置。
【0020】
<飛灰洗浄方法>
放射性物質により汚染された廃棄物を焼却した際に生ずる飛灰を洗浄する飛灰洗浄方法において、
放射性物質と塩類を含む飛灰を洗浄液としての有機溶媒で洗浄して飛灰に含まれる放射性物質と塩類を有機溶媒に溶解して移行させるとともに洗浄後の残渣を灰スラリとして生成する洗浄工程と、上記灰スラリの飛灰粒子間の有機溶媒に含まれている放射性物質と塩類をリンス液としての有機溶媒に溶解して移行させた後に灰スラリを脱液し洗浄灰を排出するリンス・脱液工程と、洗浄工程からの洗浄排液及びリンス・脱液工程からのリンス排液に含まれる放射性物質を吸着剤により吸着除去する吸着工程と、吸着工程からの吸着処理排液に含まれる塩類を吸着処理排液の蒸発により固化す蒸発固化工程とを有することを特徴とする飛灰洗浄方法。
【0021】
<飛灰洗浄手順>
本発明の飛灰洗浄装置として飛灰洗浄方法では、飛灰の洗浄そして洗浄後の残渣(灰スラリ)のリンスのいずれにも有機溶媒を用いる。有機溶媒は、洗浄液として洗浄装置で飛灰を洗浄して、飛灰に含まれる放射性物質と塩類を洗浄液に溶解して移行させる。洗浄により飛灰から移行してきた放射線物質と塩類を含むこととなった有機溶媒は洗浄排液として洗浄装置から排出され、残る残渣は飛灰と有機溶媒の灰スラリとしてリンス・脱液装置へもたらされ、灰スラリの飛灰粒子間の有機溶媒に含まれる放射性物質と塩類をリンス液としての有機溶媒に溶解して移行させ、リンスした後の灰スラリを脱液して、放射性物質と塩類を含むリンス排液がリンス・脱液装置から排出される。脱液後の放射性物質が許容量以下となった洗浄灰は、適宜処分される。
【0022】
洗浄排液とリンス排液は吸着装置で吸着剤により放射性物質が吸着・除去されて吸着処理排液として蒸発固化処理装置へ送られる。上記吸着処理排液には塩類が含まれる。かかる吸着処理排液は蒸発固化装置にて、有機溶媒を蒸発して塩類を含有する固体分が残り、該固体分が固化物として排出され、そして埋立等により適切に処分される。
【0023】
本発明によると、有機溶媒は洗浄能力そして、リンス能力が水とほぼ同等でありながら、蒸発に要する熱量が蒸発固化装置での水に比し少ないので、蒸発固化装置での有機溶媒の蒸発のための加熱に要するエネルギーが低減される。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以上のように、飛灰を洗浄そして洗浄後の残渣(灰スラリ)をリンスする際に有機溶媒を用い、洗浄排液そしてリンス排液中の放射性物質を吸着除去した後の吸着処理排液の有機溶媒を加燃して蒸発させてから固化物を適切に処分することとしたので、有機溶媒の蒸発に要するエネルギーが従来用いられていた水の蒸発に要するエネルギーに比し少なくてよいことから飛灰洗浄装置の運転費を削減できるという効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る飛灰洗浄装置を示す概略構成図である。
図2】従来の飛灰洗浄装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る飛灰洗浄装置を示す概略構成図である。本実施形態に係る飛灰洗浄装置による処理要領を簡単に述べると、放射性物質(セシウム等)と塩類を含む飛灰の該放射性物質の含有濃度を、既存の埋立処分場で埋立処分可能な程度にまで低減させるように、該飛灰を洗浄液により洗浄し、洗浄に供した洗浄液を洗浄排液として排出し、洗浄後の残渣(灰スラリ)をリンス液でリンス処理し、リンス処理に供したリンス液をリンス排液として排出し、リンス処理後の灰スラリが脱液されて洗浄灰として排出され処理されて、放射性物質と塩類を含有する上記洗浄排液とリンス排液から放射性物質を吸着剤により吸着除去処理し、吸着除去処理した後の洗浄排液とリンス排液を吸着処理排液として排出し、吸着処理排液を蒸発固化処理し、蒸発固化後の塩類を含む固化物を保管する。
【0028】
図1に見られるように、飛灰洗浄装置は、放射性物質と塩類を含む飛灰を洗浄液としての有機溶媒で洗浄して飛灰に含まれる放射性物質と塩類を有機溶媒に溶解して移行させるとともに洗浄後の残渣(灰スラリ)を生成する洗浄装置1と、該洗浄装置1に接続され上記灰スラリの飛灰粒子間の有機溶媒に含まれている放射性物質と塩類をリンス液として供給を受ける有機溶媒に溶解して移行させた後に、灰スラリを脱液するリンス・脱液装置2と、洗浄装置1及びリンス・脱液装置2に接続され、洗浄装置1からの洗浄排液及びリンス・脱液装置2からのリンス排液に含まれる放射性物質を吸着剤により吸着除去する吸着装置3と、該吸着装置3に接続され該吸着装置3からの吸着処理排液に含まれる塩類を該吸着処理排液の液分蒸発により固化する蒸発固化処理装置4とを有している。本発明では、洗浄液そしてリンス液には有機溶媒が用いられている。本実施形態では、好ましい例として、吸着装置3と蒸発固化処理装置4との間には、逆浸透膜処理装置5が配設されている。以下、図1における各装置について説明する。
【0029】
洗浄装置1は、放射性物質を含む飛灰を受入れる洗浄槽(図示せず)を有し、該洗浄槽には洗浄液として有機溶媒が供給されるようになっている。該洗浄槽内にて、飛灰に含まれる放射性物質と塩類を洗浄液に溶解させるとともに灰スラリを生成するようになっている。
【0030】
上記洗浄槽内では、飛灰に含まれる放射性物質と塩類が洗浄液に溶解して洗浄された飛灰が沈降して下層を占め灰スラリを形成し、洗浄液としての有機溶媒は放射性物質と塩類を溶解して含み上層を形成し、洗浄排液として排出される。また、本実施形態では、上記洗浄槽は、後述するリンス・脱液装置2と配管を介して接続されており、洗浄された後に有機溶媒を含む飛灰は灰スラリとして上記リンス・脱液装置2へ送られるようになっている。
【0031】
上記洗浄装置1には、本実施形態の飛灰洗浄装置の運転開始に先立ち洗浄液としての所要量の有機溶媒が供給され、後続の諸装置を経て洗浄装置へ帰還して循環するようになっているが、装置の運転が長期間に及ぶにしたがい、有機溶媒が残渣(灰スラリ)に含まれて排出されてしまうことから、洗浄装置1の有機溶媒が次第に減少して不足分が生ずるので、この不足分を補うために、適宜時期に有機溶媒の補給を受けるようになっている。したがって、洗浄装置1は、循環する有機溶媒に加え、不足分に相当する有機溶媒の補給を受けて有機溶媒を所要量に保っている。
【0032】
リンス・脱液装置2は、洗浄装置1の洗浄槽と配管を介して接続されており、該洗浄槽の沈降している飛灰を洗浄後の灰スラリとして受けて該灰スラリのリンス液としての有機溶媒の供給を受ける。リンス・脱液装置2は、灰スラリを脱液するためのベルトフィルタ、フィルタプレス等の脱液機(図示せず)を有している。該リンス・脱液装置2は、洗浄装置1からの灰スラリを受けて上記脱液機でスラリを脱液する際、リンス液を灰スラリに散液して、該灰スラリの飛灰粒子の間の間隙液に含まれる放射性物質と塩類をリンス液に溶解させて移行させるようになっている。放射性物質と塩類を溶解して含むリンス液がリンス排液として排出され、上記灰スラリから放射性物質と塩類が除去され脱液され放射性物質の濃度が低くなった洗浄灰が排出される。上記リンス・脱液装置2には、洗浄装置1と同様に、補給有機溶媒と後述する循環有機溶媒とをリンス液として受けるようになっている。
【0033】
上記、洗浄装置1と、リンス・脱液装置2には、洗浄排液とリンス排液とを受ける吸着装置3が配管を介して接続されている。該吸着装置3は、放射性物質を吸着するための吸着剤が充填された充填層を有しており、上記洗浄排液そしてリンス排液に含まれる放射性物質を上記吸着剤によって吸着除去し、放射性物質の吸着除去後の洗浄排液とリンス排液を吸着処理排液として排出するようになっている。本実施形態では、上記吸着剤として、例えばゼオライト等が使用されている。
【0034】
上記吸着装置3には、吸着処理排液を受け、RO膜等の逆浸透膜により膜処理する逆浸透膜処理装置5が接続され、該逆浸透膜処理装置5に蒸発固化処理装置4が接続されている。上記逆浸透膜処理装置5は、吸着処理排液に含まれる塩類を分離した膜処理排液と塩類が濃縮された濃縮液とを生じ、塩類を含まない膜処理排液を、上記洗浄装置1そしてリンス・脱液装置2へ有機溶媒を供給する配管に供給するように接続されている。
【0035】
上記蒸発固化処理装置4は、逆浸透膜処理装置5で膜処理した後の濃縮液を受けるように該逆浸透膜処理装置5に接続されており、逆浸透膜処理装置5で塩類が濃縮された濃縮液を加熱器(図示せず)で加熱して液分を蒸発させることにより塩類を固化し、固化物として排出するようになっている。
【0036】
このような構成を有する本実施形態の飛灰洗浄装置によって、放射性物質と塩類を含む飛灰は以下の要領で処理される。まず、洗浄装置1の洗浄槽に、放射性物質と塩類を含む飛灰が供給されるとともに洗浄液としての有機溶媒が注入される。ここでは、図2に示した従来の洗浄装置11と同様に、上記洗浄槽内にて、有機溶媒と飛灰との液固比を適宜設定した状態で該飛灰を有機溶媒中に撹拌しながら浸漬して、飛灰に含まれる放射性物質と塩類が有機溶媒に溶解される。飛灰が洗浄槽内の下部に沈降し灰スラリを形成し、有機溶媒は上層を形成する。灰スラリの飛灰粒子同士間の間隙の有機溶媒には放射性物質と塩類が含まれている。
【0037】
上記洗浄槽で飛灰を洗浄した後の放射性物質と塩類を含む有機溶媒は、洗浄排液として排出されて吸着装置3へ送られる。一方、洗浄槽の下層に沈降した灰スラリが抜き出されリンス・脱液装置2へ送られる。灰スラリは、リンス・脱液装置2で、リンス液としての有機溶媒によりリンスされて、灰スラリの飛灰粒子同士間の間隙液に含まれる放射性物質と塩類がリンス液としての有機溶媒に移行され、さらに、リンスされた灰スラリは脱液される。この結果、該放射性物質と塩類が溶解した有機溶媒と上記飛灰よりも放射性物質の濃度が低い洗浄灰が生成される。洗浄灰は放射性物質の含有濃度が十分に低減されており、既存の埋立処分場で埋立処分される。
【0038】
上記リンス・脱液装置2で生成されたリンス後の放射性物質と塩類を含む有機溶媒は、リンス排液としてリンス・脱液装置2から排出されて、洗浄装置1からの洗浄排液とともに一つの排液をなして、吸着装置3へ送られる。吸着装置3へ送られたリンス排液そして上記洗浄排液から成る排液は、吸着装置3における吸着剤の充填層を透過することにより、排液をなす有機溶媒に含まれる放射性物質が上記充填層における吸着剤によって吸着除去される。
【0039】
吸着装置3で放射性物質が除去されたリンス排液そして洗浄排液から成る排液は、吸着処理排液として逆浸透膜処理装置5へ送られて、該逆浸透膜処理装置5で逆浸透膜処理されて塩類が濃縮された濃縮液を生成する。塩類が濃縮された濃縮液は、蒸発固化処理装置4へ送られて、加熱器で加熱され、液分が蒸発することにより、塩類が固化される。固化物は適宜処理される。
【0040】
逆浸透膜処理装置3で塩類が分離された洗浄排液およびリンス排液は、洗浄液あるいはリンス液として再利用可能な程度までに放射性物質と塩類が除去された有機溶媒となっており、膜処理排液として逆浸透処理装置5から排出され洗浄装置1へ供給されて洗浄液として用いられ、あるいはリンス・脱液装置2へ供給されてリンス液として用いられる。
【0041】
逆浸透膜処理装置3からの膜処理排液は、洗浄装置1そしてリンス・脱液装置2へ帰還して洗浄液又はリンス液として再利用されるので、再利用を繰り返す過程で次第に不足する分(例えば、蒸発固化処理装置4での蒸発分)を補給有機溶媒で補えばよい。したがって、外部から洗浄装置1そしてリンス・脱液装置2へ新たに補給する上記補給有機溶媒の補給量を少なくすることができる。
【0042】
本実施形態では、逆浸透膜処理装置5からの膜処理排液としての有機溶媒を洗浄装置1そしてリンス・脱液装置2へ帰還させて再利用することとしているが、本発明では、逆浸透膜処理装置5を設けること、そして膜処理排液を洗浄装置そしてリンス・脱液装置へ帰還させることは好ましい形態であるが必須ではない。
【0043】
本発明における最大の特徴は、洗浄液そしてリンス液として有機溶媒を用いることにある。有機溶媒は、水と同等の洗浄能力そしてリンス能力を有しながら、蒸発固化処理装置での蒸発のための加熱に要するエネルギーが水に比し格段に小さい。したがって、蒸発固化処理装置の運転、ひいては、飛灰洗浄装置全体についての運転のため費用を大幅に低減させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 洗浄装置
2 リンス・脱液装置
3 吸着装置
4 蒸発固化処理装置
図1
図2