(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プランジャとヨークとの間に磁束が通る磁気経路を形成するように前記プランジャと前記ヨークに設けられ、互いに向かい合う部分であって互いに沿うような断面形状をなす平行部、を備え、
前記弁体と弁座部(512a)が接触している前記閉弁状態において、前記プランジャの前記平行部は前記ヨークの前記平行部に接触しまたは磁気経路を形成するように前記ヨークの前記平行部に近接し、前記プランジャは前記支持部材に前記軸方向に接触している請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の流体制御弁。
前記プランジャとヨークとの間に磁束が通る磁気経路を形成するように前記プランジャと前記ヨークに設けられ、互いに向かい合う部分であって互いに沿うような断面形状をなす平行部を備え、
前記弁体に対して流体圧力が開弁方向に作用していない状態において、前記弁体が弁座部(512a)に接触してから、前記プランジャの前記平行部が前記ヨークの前記平行部に接触して前記閉弁状態になる請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の流体制御弁。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0011】
(第1実施形態)
流体制御弁の一例を開示する第1実施形態について
図1〜
図9を参照しながら説明する。第1実施形態の流体制御弁5は、冷却水回路1に設置されている。流体制御弁5は、内部を流通する作動流体の圧力が作用する方向と反対の方向を閉弁方向とし、流体通路を開く開弁状態と流体通路を閉じる閉弁状態とを切り換える装置である。流体制御弁5によって制御される作動流体は、水、オイル等の液体である。冷却水回路1は、エンジン冷却水が循環する回路であり、車両に設けられたエンジン2の暖機および冷却を効率良く行う機能を有している。
図1に示すように、冷却水回路1は、エンジン2、ポンプ3、第1流路10、第2流路11、第3流路12、切換弁4、ヒータコア6、流体制御弁5、ラジエータ7、制御装置8等を備えている。
【0012】
冷却水はポンプ3から流出し、エンジン2、第1流路10、第2流路11、第3流路12を流通してポンプ3に戻る。制御装置8は、少なくとも一つの演算処理装置と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体としての少なくとも一つのメモリ装置とを有する。制御装置8は、例えばコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。制御装置8は、一つのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供されうる。プログラムは、制御装置8によって実行されることにより、制御装置8をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される方法を実行するように制御装置8を機能させる。制御装置8は、エンジン2の暖機および冷却を行う種々の処理を行うための機能部がハードウェアまたはソフトウェアまたはその両方で構築されている。
【0013】
ポンプ3は、エンジン2が運転状態である場合に冷却水を駆動させるようにエンジン2の運転と連動する装置である。ポンプ3は、エンジン2が運転状態のときに運転して冷却水を循環させ、エンジン2が停止状態のときに運転しない。ポンプ3には、例えばエンジンの回転によって動作する機械式の流量可変型ポンプが用いられる。ポンプ3は、電動モータを駆動源とし、エンジン2の運転状態とは無関係に作動、停止が可能である装置としてもよい。この場合、ポンプ3は、制御装置8の制御により、吐出する流体の量を変化させることができる。
【0014】
第1流路10は、エンジン2から流出した流体をポンプ3を経由してエンジン2に流入させるように、流体がヒータコア6やラジエータ7を経由しないでエンジン2、切換弁4およびポンプ3を循環する流路である。エンジン2の内部には冷却水を流通させる流路が形成されている。エンジン2の内部を流通する冷却水は、エンジン2の熱を吸収して自らの温度を上昇させることでエンジン2の内部温度を低下させている。第2流路11は、エンジン2から流出した冷却水を、第1流路10の上流部から分岐して流体制御弁5、ヒータコア6を経由して第1流路10の下流部に戻す流路である。第2流路11には流体制御弁5およびヒータコア6が設けられている。第3流路12は、流体制御弁5よりも上流側である第2流路11の上流部から分岐して、ラジエータ7を経由して第1流路10の下流部に戻す流路である。
【0015】
第3流路12にはラジエータ7が設けられている。第3流路12が下流側において第1流路10に接続する合流部には、切換弁4が設けられている。切換弁4は、エンジン2を流出した冷却水の流路を、第1状態と第2状態と第3状態とに切り換え可能に構成されている。第1状態は、冷却水が第1流路10を循環するように第1流路10と第3流路12とを連通させない状態である。第2状態は、冷却水が第3流路12を経由してエンジン2に戻るように切換弁4によって第3流路12とエンジン側の通路とを接続する状態である。第3状態は、切換弁4において接続されている3つの通路をすべて開放する状態である。切換弁4は、例えば冷却水が所定の温度条件を満たす場合に第3状態に流路を切り換え、所定の温度条件を満たさない場合に第1状態に流路を切り換える装置であり、例えばサーモスタット弁によって構成することができる。つまり、切換弁4は、感温ワックスに加えられた熱の量(冷却水温度)に応じて弁開度が変化する。
【0016】
流体制御弁5は、第2流路11においてヒータコア6よりも上流側または下流側に設けられ、その開度を閉状態または開状態の2つの状態に切り換え可能な弁である。流体制御弁5が閉状態である場合、冷却水は第1状態で第2流路11には流れず第1流路10のみに流れ、第2状態で第3流路12のみに流れる。流体制御弁5が開状態である場合、冷却水は第1状態で第1流路10と第2流路11の両方に流れる。以上のように、第2流路11、第3流路12は第1流路10に対して並列状態で構成されている。
【0017】
制御装置8は、冷却水温度センサによって検出される冷却水の温度に基づいて流体制御弁5を制御する。エンジン2の始動後、冷却水温度があらかじめ定めた第1温度未満である場合は、切換弁4によって第1状態に維持され、制御装置8によって流体制御弁5を閉状態に制御する。冷却水は第1流路10のみを循環するので、エンジン2の暖機が促進される。
【0018】
冷却水温度が第1温度以上になると、エンジン2の暖機制御を終了する。冷却水温度が第1温度よりも高温に設定された第2温度以上になると、切換弁4によって第2状態または第3状態に切り換えられて、冷却水は第3流路12を循環しラジエータ7において冷却水の放熱が行われる。制御装置8によって通電が遮断されて流体制御弁5が開状態に制御されると、冷却水は第2流路11を循環し、ヒータコア6においても冷却水の放熱が行われる。また、第1状態である場合に、ヒータコア6において冷却水からの放熱が必要である場合は、制御装置8によって通電が遮断されて流体制御弁5を開状態に制御することがある。
【0019】
また他の形態として、前述した冷却水回路1は、エンジン2から流出した流体がヒータコア6やラジエータ7を経由しないでエンジンに戻る経路をなす第1流路10を備えていない構成であってもよい。切換弁4は、前述の第2状態を実施しないように冷却水回路1の流路を切り換える構成でもよい。制御装置8は、エンジン油温、あるいはトランスミッション等の油温を検出するセンサの検出値に基づいて流体制御弁5を制御するように構成してもよい。
【0020】
以下、流体制御弁5について、
図2〜
図9を参照しながら説明する。
図2は開弁状態を示しており、
図3は閉弁状態を示している。流体制御弁5は、リリーフ弁アセンブリ9、可動コアであるプランジャ55、ヨーク56、電磁ソレノイド部54等を備えている。流体制御弁5は、弁体90が弁座部512aから離間していく方向である開弁方向に作動流体の圧力が作用する構成を有する電磁弁装置である。つまり、流体制御弁5は、流体圧力に抗する方向に弁体90の閉弁方向が設定されている電磁弁装置である。流体制御弁5は、作動流体から受ける流体圧力と通電により発生する磁気力とのバランス状態に応じて、ハウジング内に設けられた流体通路を開閉する。流体通路は、その一例として、流入側ハウジング51の内部に設けられた流入ポート510によって構成されている。
【0021】
リリーフ弁アセンブリ9は、弁体90が開弁状態であるときに過剰な流体圧力になった場合に、流体通路の閉塞状態を解除して流体を流通させるように動作するリリーフ弁機構部を含む部材の一例である。このリリーフ弁機構部は、閉弁状態において所定圧力を上回る流体圧力が作用した場合に、プランジャ55の軸方向位置を維持した状態のまま、流体通路における作動流体の流通を許容するように動作する。リリーフ弁アセンブリ9は、弁体90と付勢部材92と支持部材93とを備えている。リリーフ弁アセンブリ9は、支持部材93によって弁体90と付勢部材92とを一体に備えたリリーフ弁機構ユニットである。弁体90は、ゴム等の弾性変形可能な材質で形成されている弾性部材である。
【0022】
プランジャ55は、軸方向の両端が開口している筒状部551を備えたカップ状体を呈している。プランジャ55は、弁体90側または流入ポート510側である筒状部551の一端部に設けられた上流側環状部550と、流出ポート530側に位置し筒状部551の他端部に設けられた下流側環状部552とを備えている。上流側環状部550は、筒状部551と同じ直径寸法を有し、筒状部551と同軸上である上流側開口部550aを貫通孔として有している。上流側環状部550は、プランジャ55よりも上流側に位置するリリーフ弁アセンブリ9を軸方向に変位可能に支持している。
【0023】
上流側環状部550は、上流側の面で支持部材93の下流端部に接触して支持部材93を軸方向に変位可能に支持している。軸方向は弁体90の移動方向でもある。これにより、支持部材93は、プランジャ55と一緒に軸方向に変位する。下流側環状部552は、筒状部551よりも大きい直径寸法であって筒状部551に対して直交する方向に放射状に広がるフランジ状部である。下流側環状部552には、内側に筒状部551と同軸上である下流側開口部が設けられている。筒状部551の内側には、開弁状態において作動流体が流れる流体通路が設けられている。筒状部551の内側に設けられた流体通路は、流出ポート530に連通している。プランジャ55は、例えば磁性材料で構成されている。
【0024】
プランジャ55は、少なくとも下流側環状部552が、ヨーク56の下流端に位置する第2筒状部565に内挿された状態で、軸方向に摺動可能に支持されている。また、プランジャ55は、少なくとも筒状部551が、ボビン541よりも内側に設けられた摺動支持部に部分的に支持されている構成によって軸方向に摺動可能である構成でもよい。摺動支持部は、ボビン541と同様に、非磁性体材料で形成されている。
【0025】
流体制御弁5において流体通路を形成するハウジング本体は、作動流体が流入する流入通路である流入ポート510が設けられた流入側ハウジング51と、流出通路である流出ポート530が設けられた流出側ハウジング53と、中間ハウジング52とを備える。中間ハウジング52は、流入側ハウジング51と流出側ハウジング53とを連結する。流入側ハウジング51は、下流端部に設けられたフランジ部が中間ハウジング52に一体に結合されている。
【0026】
流入側ハウジング51は、流入ポート510の入口部を形成する上流側環状部512と、上流側環状部512の外周縁から軸方向に延びる筒状部511と、筒状部511の下流端部から筒状部511に対して直交する方向に放射状に広がるフランジ状部とを備える。流入側ハウジング51は、流入ポート510の入口部の周囲であって上流側環状部512における内周縁側の内壁部に、閉弁方向に変位する弁体90が着座する弁座部512aを備えている。閉弁状態において弁座部512aは、環状面または環状線を形成するように弁体90に接触している。流入側ハウジング51は、筒状部511の内側にリリーフ弁アセンブリ9を軸方向に摺動可能に内蔵している。
【0027】
流出側ハウジング53は、上流端部に設けられたフランジ部が中間ハウジング52に一体に結合されている。流入側ハウジング51、中間ハウジング52および流出側ハウジング53は、樹脂材料で形成され、結合部において溶着接合されている。
【0028】
中間ハウジング52は、ヨーク56、プランジャ55、コイル部540、ボビン541等を内蔵している。
図2等に図示するように、中間ハウジング52は、開弁状態や閉弁状態においてリリーフ弁アセンブリ9における下流側の一部を内蔵している。ヨーク56は、プランジャ55と同様に、例えば磁性材料で構成されている。ヨーク56は、磁気回路の一部を構成し、ボビン541、プランジャ55を中間ハウジング52の内部で支持している。ヨーク56は、ボビン541およびコイル部540の外周側を覆うように設けられている。ヨーク56、プランジャ55、コイル部540、ボビン541および摺動支持部は、軸心が同軸をなすように設置されている。
【0029】
電磁ソレノイド部54は、ヨーク56、コイル部540、ボビン541、摺動支持部、コネクタ等を備えて構成されている。コネクタは、ヨーク56の側方または外側に位置するように設けられる。コネクタは、コイル部540に通電するために設けられており、内部のターミナル端子は、コイル部540と電気的に接続されている。電磁ソレノイド部54は、コネクタによってターミナル端子を制御装置8等に電気的に接続することにより、コイル部540に通電する電流を制御できる。ボビン541は、樹脂材により円筒状に形成され、外周面にはコイル部540が巻回されている。コイル部540に通電が行われると、発生した磁束はヨーク56とプランジャ55とを循環するように流れる磁気回路を形成する。
【0030】
ヨーク56は、軸方向の両端が開口している筒状体である。ヨーク56は、流入ポート510側に設けられた上流側の第1環状部560と、プランジャ55の軸心に対して傾斜する傾斜部561と、傾斜部561の下流側部から径外側に延びる第2環状部562と、を備えている。ヨーク56は、さらに第2環状部562の外周縁から軸方向に延びる第1筒状部563と、下流側の端部において軸方向に延びる断面形状である第2筒状部565と、第1筒状部563と第2筒状部565とをつなぐ下流側環状部564とを備えている。下流側環状部564は、第1筒状部563の下流端部から径外側に放射状に延びて外周側において第2筒状部565と一体になっている。
【0031】
第1環状部560は、プランジャ55の上流側環状部550に軸方向に接触可能で、上流側環状部550よりも大きい直径寸法を有し、プランジャ55の上流側開口部550aと同軸上である開口部560aを貫通孔として有している。第1環状部560と上流側環状部550は、軸方向に向かい合う部分であって互いに沿うような断面形状をなす平行部をなしている。以下、傾斜部および平行部に関わる断面形状とは、プランジャ等の軸方向に沿う縦断面形状のことである。第1環状部560は、弁体90が弁座部512aに接触している閉弁状態において、弁体90とは反対側の下流側面560bが上流側環状部550の弁体90側に位置する上流側面550bに接触する位置または近接する位置に設けられている。
【0032】
下流側面560bと上流側面550bとは、軸方向に向かい合う部分であって互いに沿う平行部をなしている。
図3に示すように、閉弁状態では、第1環状部560と上流側環状部550とが接触または近接する部分に磁束が通る第2経路である磁気経路が形成されている。
【0033】
傾斜部561は、上流側の端部が第1環状部560に連結し、下流側の端部が第2環状部562に連結する形状の筒状部である。傾斜部561は、プランジャ55の筒状部551に対して傾斜する断面形状をなす部分である。傾斜部561は、上流側の端部が下流側の端部よりも直径寸法が小さくなるように形成されている。したがって、傾斜部561は、下流側に向かうほど、直径が大きくなるように筒状部551に対して傾斜している。
【0034】
傾斜部561における上流側の端部は、筒状部551よりも直径寸法が大きく構成されている。したがって、筒状部551、特にその上流側部位は、
図2に示す開弁状態から
図3に示す閉弁状態へ移動するにつれて、傾斜部561との距離が少しずつ小さくなるように設けられている。開弁状態における通電開始時には、
図2に示すように、上流側におけるプランジャ55とヨーク56との距離は、傾斜部561と筒状部551との間が最も短くなっている。このように開弁状態かつ通電中では、傾斜部561と筒状部551との間を磁束が通る第1経路である磁気経路が前述の第2経路よりも磁束が大きくなる。以上のように、開弁状態での通電開始時は第1経路の方が第2経路よりも磁束が大きくなる磁気経路を形成し、閉弁状態では第2経路の方が第1経路よりも磁束が大きくなる磁気経路を形成する。
【0035】
図2に示すように開弁状態かつ通電中であると、プランジャ55とヨーク56の下流端部において、下流側環状部552と第2筒状部565との間の第1経路に磁束が通る。開弁状態で下流側におけるプランジャ55とヨーク56との距離は、下流側環状部552と第2筒状部565との距離が最も短くなっている。
【0036】
図2に示す開弁状態から閉状態に近づけていき、
図3に示す閉弁状態になると、第2経路が第1経路よりも支配的となる逆転現象が起こる。これは、互いに平行部を構成する下流側環状部552と下流側環状部564とが接触し、または下流側においてプランジャ55とヨーク56との間において最も近接するからである。下流側において下流側環状部552と下流側環状部564との間が、磁気抵抗が最も小さい部位であり、磁束が最も大きい部位になる。
【0037】
図4に示すように、プランジャ55を吸引する吸引力は、開弁状態から閉弁状態に近づく間は第1経路の方が第2経路よりも大きく、閉弁状態の直前で逆転現象が起きて閉弁状態では第2経路の方が第1経路よりも大きくなるという特性がある。
図4に示すように、流体制御弁5は、弁体90と弁座部512aが大きく離れたストロークの大きい開弁状態ではプランジャ55を吸引する吸引力は、第2経路よりも第1経路の方が大きくなる。したがって、流体制御弁5は、第1経路において吸引し始める構成を採用することによって、弁体90に作用する流体圧力に反してプランジャ55を吸引することができ、通電開始時の吸引性能を強化することができる。
【0038】
流体制御弁5は、
図4の特性図に示すように、ストロークが小さい閉弁状態の直前においてプランジャ55の吸引力が第2経路の方が大きくなるように変化する。したがって、流体制御弁5は、第2経路を通る磁気力によって弁体90を弁座部512aに吸着する構成を採用することにより、弁体90に作用する流体圧力に対して弁体90を締め切ることができ、閉弁時の吸着保持力を強化することができる。以上のように、流体制御弁5は、
図2、
図3において、実線で図示する第1経路と破線で図示する第2経路(破線)の両方の吸引力に係る有利な特性を併せ持った電磁弁を提供している。
【0039】
リリーフ弁アセンブリ9について、
図2、
図3、
図5〜
図9を参照しながら説明する。リリーフ弁アセンブリ9が備える支持部材93は、弁体90の軸部および円盤部の裏面が嵌っている弁体支持部91と付勢部材92とを一体に支持している。支持部材93は、例えば樹脂材料、ステンレス等の磁気を通しにくい材料で形成されている。したがって、支持部材93は磁気回路を形成しないように構成されている。
【0040】
リリーフ弁アセンブリ9において弁体90、弁体支持部91、付勢部材92および支持部材93は、同軸状に設置されている。弁体支持部91は、上流側に位置する環状部と環状部の内周縁から軸方向に延びる筒状部とを備えて形成されている。弁体支持部91は、環状部が弁体90の円盤部の裏面に接触し、筒状部が弁体90の軸部における外周面に接触して、弁体90を支持している。
【0041】
付勢部材92は、弁体90および弁体支持部91を、弁体90が開弁状態へ移動する方向に対して反対向きに付勢する機能を有する。明細書に開示の目的を達成可能な付勢部材92には、少なくともコイルスプリング、板状ばね、その他の弾性変形可能な材質で形成された部材が含まれる。通電の有無にかかわらず、弁体90に付勢力に打ち勝つ流体圧力が作用した場合に、付勢部材92は軸方向寸法が小さくなるように縮んで、弁体90が弁座部512aから離間するリリーフ状態になる。
【0042】
付勢部材92は、弁体支持部91を流入ポート510側または上流側に付勢する部材である。第1実施形態に図示する例では付勢部材92としてコイルスプリングを用いている。
図3、
図5および
図6に示すように、付勢部材92は、内側に弁体支持部91の筒状部が内挿された状態で、弁体支持部91の環状部と支持部材93とによって軸方向長さが自然長の状態よりも軸方向に撓むように拘束されて設置されている。付勢部材92は、軸方向の長さが自然長よりも縮んだ状態で弁体90を軸方向に付勢している。弁体90に流体圧力が作用していない状態で弁体90が弁座部512aに接触してから弁体90が弾性変形して閉弁が完了するまでの閉弁動作において、プランジャ55は弁体90の変形よりも付勢部材92の変形によって軸方向に大きく移動する。付勢部材92は、このような条件を満たすような付勢力を弁体90に提供するように設計されている。
【0043】
付勢部材92は、閉弁状態において所定圧力を上回る流体圧力が作用した場合に、
図7〜
図9に示すように、弁体90が下流側に押されて付勢部材92が軸方向にさらに撓むように弾性変形する。このような弾性変形により、弁体90が下流側に変位するリリーフ状態になり、流体通路における作動流体の流通を許容し配管内の流体圧力が低下するようになる。
【0044】
支持部材93は、弁体90が軸方向に変位可能なように弁体90と付勢部材92とを一体に支持する。支持部材93は、付勢部材92の下流端部を軸方向に支持する基盤部930と、基盤部930から下流側に突出する複数の脚部931と、基盤部930から上流側に延びる複数の側壁部932と、上流端部に位置する連絡部933とを備えている。弁体支持部91は、環状部における外周縁において部分的に径外側に突出する複数の突出片部910を備えている。突出片部910は、連絡部933によって連絡された2個の側壁部932の間において、連絡部933によって上流側への移動を阻止された状態で、支持部材93に係合している。弁体支持部91は、突出片部910が支持部材93に係合して流入ポート510側への移動が規制されていることにより、支持部材93に固定されている。
【0045】
複数の脚部931は、周方向に間隔をあけて設けられている。複数の脚部931は、下流端部においてプランジャ55によって軸方向に支持されている。脚部931は、ヨーク56の第1環状部560に設けられた開口部560aに内挿された状態で、軸方向に摺動可能に支持されている。支持部材93は、脚部931が第1環状部560に接触することにより、径方向の変位が規制されている。支持部材93は、開弁状態において基盤部930が第1環状部560に接触することにより、それ以上、下流側に変位することが規制されている。したがって、支持部材93は、ヨーク56によって、軸方向について所定の範囲で変位可能であり径方向にはほぼ移動不可能に規制されている。周方向に隣り合う脚部931の間は、筒状部551の内側の通路を介して流出ポート530に連通している。リリーフ状態になると、流入ポート510と隣り合う脚部931間とつながるので、流入ポート510と流出ポート530が連通し、配管内の流体圧力が低下する。
【0046】
連絡部933は、少なくとも2個の側壁部932を連結する部分である。支持部材93は、複数または一つの連絡部933を備えている。
図2、
図3、
図5、
図6に図示するように、連絡部933は、閉弁状態において弁体90の外縁部に沿うように外縁部の外側に位置して設けられている。
図7〜
図9に図示するように、複数の側壁部932は、付勢部材92が軸方向に大きく撓んで弁体90が弁座部512aから離間した状態において、弁体90における外縁部の外側に位置するように設けられている。したがって、弁体90は、弁体90に作用する流体圧力に応じて付勢部材92の軸方向長さが変化することに伴い、
図3に示す閉弁状態と
図7に示すリリーフ状態とにわたって軸方向に変位する。
【0047】
次に、第1実施形態の流体制御弁5がもたらす作用効果について説明する。流体制御弁5は、液体である作動流体が流通する流体通路を有するハウジングと、ハウジングの内部に設けられて開弁状態と閉弁状態とに切り換わって流体通路を開閉する弁体90とを備える。流体制御弁5は、ハウジングの内部に設けられて軸方向に変位して弁体90を駆動するプランジャ55と、ハウジングの内部に設けられてプランジャ55を軸方向に変位させる磁気力を発生するコイル部540と、リリーフ弁機構部と、を備える。リリーフ弁機構部は、閉弁状態において所定圧力を上回る流体圧力が作用した場合に、プランジャ55の軸方向位置を維持した状態のまま、流体通路における作動流体の流通を許容するように動作する。
【0048】
流体制御弁5によれば、このように動作するリリーフ弁機構部を備えるため、流体制御弁5に接続されている配管内の圧力が大きくなった場合に過剰な圧力状態になる前に作動流体が流通するようになる。したがって、配管に過剰な負荷がかかることを回避できるので、閉弁状態において過剰な圧力が作用するような流体制御弁であっても配管に必要な耐圧性能を抑えることができる。
【0049】
リリーフ弁機構部は、弁体90が開弁状態へ移動する方向に対して反対向きに弁体90を付勢する付勢部材92を含んでいる。付勢部材92は、閉弁状態において所定圧力を上回る流体圧力が作用した場合に、流体通路における作動流体の流通を許容するように動作する。これによれば、付勢部材92が有する付勢力を設定することにより、閉弁状態における配管の耐圧性能を設定可能な流体制御弁5を提供できる。
【0050】
流体制御弁5は、弁体90が軸方向に変位可能なように弁体90と付勢部材92とを一体に支持する支持部材93を備える。この構成によれば、支持部材93によって弁体90と付勢部材92とを一体に備えたリリーフ弁機構ユニットを提供できる。付勢力等の製品性能が異なる複数のリリーフ弁機構ユニットの中から選択したリリーフ弁機構ユニットを流体制御弁5に搭載することにより、配管の耐圧性能を容易に変更したり、設定したりすることが可能である。
【0051】
さらにプランジャ55は、支持部材93に接触した状態で支持部材93を軸方向に駆動する。この構成によれば、プランジャ55の駆動力を弁体90の挙動に直接的に与えられる流体制御弁5を提供できる。これにより、ヨーク56等とプランジャ55とに関わる吸着力に直接的に関係する閉弁状態が得られる流体制御弁5を提供できる。
【0052】
弁体90、支持部材93、付勢部材92およびプランジャ55は、同軸状に設けられている。この構成によれば、これらの構成要素を同軸状に設置することにより、軸方向に対して直交する方向について流体制御弁5の体格を抑えることができ、作動流体の流通抵抗の抑制に寄与する。
【0053】
弁体90は、ゴム等の弾性変形可能な材質によって形成されている。付勢部材92は軸方向の長さが自然長よりも縮んだ状態で弁体90を軸方向に付勢する部材である。弁体90に流体圧力が作用していない状態で弁体90が弁座部512aに接触してから弁体90が弾性変形して閉弁が完了するまでの閉弁動作において、付勢部材92の変形によって軸方向に移動するプランジャ55の移動量は、弁体90の変形によって軸方向に移動するプランジャ55の移動量よりも大きくなるように設定されていることが好ましい。
【0054】
この流体制御弁5によれば、閉弁完了状態において主として付勢部材92の付勢力によって弁体90を弁座部512aに押し付けた閉弁状態を実現できる。弾性変形容易な材質である弁体90は、付勢部材92よりも、軸方向の変形過程において弁座部512aに作用させる荷重の変化が大きいという性質がある。この荷重変化を抑えて安定した閉弁状態を得るためには弁体90を駆動する磁気力を大きくする方法があるが、この方法ではコイル部540が大型化してしまうという懸念がある。流体制御弁5は、付勢部材92を大きく変形させて弁体90の変形量を抑えた状態で閉弁動作を完了するので、軸方向の変形過程において弁座部512aに与えられる荷重変化量を小さくすることができる。このように流体制御弁5は、弁体90を駆動するための磁気力を抑えることができるので、コイル部540の大型化を抑制できるとともに、安定した閉弁状態を提供できる。
【0055】
流体制御弁5は、プランジャ55とヨーク56との間を磁束が通る磁気経路である第1経路と、第1経路とは異なる部位においてプランジャ55とヨーク56との間を磁束が通る磁気経路である第2経路とを備える。開弁状態での通電開始時は、第1経路の方が第2経路よりも磁束が大きくなる磁気経路を形成し、閉弁状態では第2経路の方が第1経路よりも磁束が大きくなる磁気経路を形成する。
【0056】
この流体制御弁5によれば、開弁状態での通電開始時に、第2経路よりも磁束が大きい第1経路を通る磁気経路によって発生する駆動力を利用してプランジャ55を流体圧力に抗して吸引し始めることができる。さらに開弁状態から閉弁状態に至る過程において、第1経路よりも磁束が大きい第2経路を通る磁気経路によって発生する駆動力を利用して、プランジャ55をヨーク56に吸着し、閉弁状態を維持することができる。このように開弁状態での通電開始時に第1経路を通る磁気経路が支配的になることにより、プランジャ55をヨーク56側に吸引する吸引力を発揮させて作動流体の圧力に抗する方向にプランジャ55を移動させる駆動力を得ることができる。そして閉弁状態では第2経路を通る磁気経路が支配的になることにより、プランジャ55をヨーク56に接触させた状態に維持する吸着力を発揮させて流体通路を閉じ続けることができる。したがって、流体制御弁5は、作動流体の圧力に抗して閉弁する閉弁性能の向上を図ることができる。さらに流体制御弁5は、スプリングなどの付勢力に頼らずに、開弁状態からの閉弁動作と閉弁状態の維持とを両立できるので、スプリングの具備や付勢力の強化などに伴う装置の大型化を抑制できる。
【0057】
流体制御弁5は、プランジャ55とヨーク56とで磁気回路を形成する構成を備えることにより、装置の部品点数抑制に寄与し、さらに磁気回路におけるエアギャップを抑えることができる。
【0058】
流体制御弁5は、開弁状態における通電開始時(吸引開始時)に最大電圧に制御され、閉弁状態である吸着保持時に吸引開始時よりも小さい電圧に制御されるようにしてもよい。この制御を採用した場合には、前述した第1経路と第2経路を備える構成により、通電電圧を抑えても吸引開始と吸着保持とを満足することができる流体制御弁5を提供できる。
【0059】
第2経路は、プランジャ55とヨーク56とにおいて軸方向に向かい合う部分であって互いに沿うような断面形状をなす平行部に形成されている。このような平行部は、プランジャ55とヨーク56との重複面積または接触面積が大きいため、磁束が大きい第2経路を形成することができる。したがって、磁気力による吸着力が作用する部位に弁機能を備えた流体制御弁5を提供でき、弁の締切性能を高めることができる。
【0060】
流体制御弁5において第2経路は複数の部位に設定されている。複数の部位に設定された第2経路の少なくとも一つは、閉弁状態においてプランジャ55とヨーク56とが接触する部位に形成されていることが好ましい。この構成によれば、複数の第2経路の少なくとも一つがプランジャ55とヨーク56とを接触させた部位に設けられていることにより、流体圧力に対して閉弁状態を継続できる吸着力を提供でき、閉弁時の吸着保持力を強化できる。
【0061】
流体制御弁5は、プランジャ55の内側に作動流体が流通する流体通路を備える。この構成によれば、通電によるプランジャ55からの発熱を作動流体によって緩和可能な流体制御弁5を提供できる。
【0062】
流体制御弁5は、コイル部540よりも内側であってかつプランジャ55の内側に作動流体が流通する流体通路を備える。この構成によれば、通電によるコイル部540およびプランジャ55からの発熱を作動流体によって緩和可能な流体制御弁5を提供できる。
【0063】
流体制御弁5は、プランジャ55の外側であってコイル部540の内側に作動流体が流通する流体通路を備えるように構成してもよい。この構成によれば、通電によるコイル部540とプランジャ55からの発熱を両者の間を流れる作動流体によって緩和できる流体制御弁5を提供できる。
【0064】
(第2実施形態)
第2実施形態について
図10および
図11を参照して説明する。第2実施形態の流体制御弁105は、第1実施形態に対して、リリーフ弁アセンブリ109が相違する。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様であり、以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0065】
流体制御弁105は、弁体190と支持部材191と補助弁192とを有したリリーフ弁アセンブリ109を備えている。リリーフ弁アセンブリ109は、弁体190が閉弁状態であるときに過剰な流体圧力になった場合に、流体通路の閉塞状態を解除して流体を流通させるように動作するリリーフ弁機構部を含む部材の一例である。このリリーフ弁機構部は、閉弁状態において所定圧力を上回る流体圧力が作用した場合に、プランジャ55の軸方向位置を維持された状態のまま、弁体190が弁座部512aに着座した状態のまま、流体通路における作動流体の流通を許容するように動作する。
【0066】
支持部材191は、上流端部に設けられた弁支持部1911と、弁支持部1911の外周縁から軸方向に延びる複数の側壁部1912とを備えている。弁支持部1911は円盤状の上流側盤部である。複数の側壁部1912は、周方向に間隔をあけて設置されている。周方向に隣り合う側壁部1912の間は、筒状部551の内側の通路を介して流出ポート530に連通している。
【0067】
弁支持部1911には、上流側の面に弁体190が設置されており、下流側の面に補助弁192が設置されている。弁支持部1911は、盤状の上流側において弁体190を支持し弁体190よりも下流側において補助弁192を支持する。補助弁192は、板状の弁であり、一端側が弁支持部1911に固定され他端側が固定されていない自由端となっている。補助弁192は、
図10に示すように、流体圧力が下流方向に作用していない状態において自由端である他端側が弁支持部1911に接触してリリーフ用通路を塞いでいる。補助弁192は、
図11に示すように、所定圧力を上回る流体圧力が作用している状態には他端側が弁支持部1911から離間するように弾性変形してリリーフ用通路を開放する。
【0068】
弁体190には、軸方向に貫通するリリーフ用通路190aが設けられている。弁支持部1911には、軸方向に貫通するリリーフ用通路1911aが設けられている。リリーフ用通路190aとリリーフ用通路1911aは、軸方向に並ぶように設けられており、補助弁192が開いたときに流入ポート510から流出ポート530への流体の流通を許容するリリーフ用通路として機能する。補助弁192は、弁支持部1911よりも下流側からリリーフ用通路を開閉する機械式弁として機能する。
【0069】
上流側環状部550は、上流側の面で支持部材191における側壁部1912の下流端に接触して支持部材191を軸方向に変位可能に支持している。これにより、支持部材191はプランジャ55と一体となって軸方向に変位する。
【0070】
側壁部1912は、ヨーク56の第1環状部560に設けられた開口部560aに内挿された状態で、軸方向に摺動可能に支持されている。支持部材191は、開弁状態において側壁部1912に形成された段差部が第1環状部560に接触することでそれ以上開弁方向または下流方向に変位することが規制されている。したがって、リリーフ弁アセンブリ109は、ヨーク56によって、軸方向について所定の範囲で変位可能であり径方向にはほぼ移動不可能に規制されている。支持部材191は、例えば樹脂材料、ステンレス等の磁気を通しにくい材料で形成されている。したがって、支持部材191は磁気回路を形成しないように構成されている。
【0071】
第2実施形態によれば、リリーフ弁機構部は、弁体190の閉弁状態において作動流体が流入するリリーフ用通路と、リリーフ用通路を閉塞する補助弁192とを含んでいる。補助弁192は、弁体190の閉弁状態において所定圧力を上回る流体圧力が作用した場合に、流体圧力に押されて動作してリリーフ用通路を開放し、流体通路における作動流体の流通を許容する。この構成によれば、弁体190を閉弁状態に維持したまま、リリーフ状態を実施でき、流体圧力を低下させられる流体制御弁105を提供できる。例えば弁体190やプランジャ55が固着して移動しにくい状態であっても、弁体190とは別個の構成要素である補助弁192がリリーフ用通路を開放する構成を有するので、弁体190にトラブルが生じていても確実にリリーフ状態を得ることができる。
【0072】
補助弁192は、作用する流体圧力によって弾性変形してリリーフ用通路を開放する部材である。この構成によれば、補助弁192を構成する材質、形状、厚さ寸法等を適正に設定することにより、リリーフ状態を実施できるので、簡易な構成を備えたリリーフ弁機構部を提供できる。
【0073】
リリーフ弁機構部は、上流側において弁体190を支持し弁体190よりも下流側において補助弁192を支持する弁支持部1911を有する支持部材191を備える。プランジャ55は、支持部材191に接触した状態で支持部材191を軸方向に駆動する。リリーフ用通路は、弁体190と弁支持部1911を貫通する通路を構成する。これによれば、弁体190が弁座部512aに着座している閉弁状態において、流体が弁体190と弁支持部1911とを貫通するリリーフ用通路に流入して補助弁192を押し開ける構成により、配管内の流体圧力を低下させる流体制御弁105を提供できる。
【0074】
弁体190、支持部材191、補助弁192およびプランジャ55は、作動流体が流れる方向に重なるように設けられている。この構成によれば、ハウジング内の流体通路に沿う方向に対して直交する方向について流体制御弁105の体格を抑えることができるとともに、作動流体の流通抵抗の抑制に寄与する流体制御弁105を提供できる。
【0075】
(第3実施形態)
第3実施形態について
図12を参照して説明する。第3実施形態の流体制御弁205は、第1実施形態に対して、ヨーク156の構成が相違する。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様であり、以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0076】
ヨーク156は、流入ポート510側に設けられた上流側の第1環状部560と、第1環状部560の外周縁から軸方向に延びる第1筒状部563と、下流側環状部564とを備えて形成されている。下流側環状部564は、第1筒状部563の下流端部から径外側に放射状に延びるフランジ状を呈している。
【0077】
流体制御弁205は、ヨーク156の形状により、第1実施形態のような第1経路を形成しない。流体制御弁205は、開弁状態から閉状態に近づけていき、
図12に示す閉弁状態になると、破線で図示する第2経路を形成する。これは、上流側において第1実施形態と同様の第2経路を形成し、下流側において、平行部である下流側環状部552と下流側環状部564とが接触し、または下流側においてプランジャ55とヨーク156との間において最も近接するからである。
【0078】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0079】
第3実施形態は、第1実施形態の流体制御弁だけでなく、第2実施形態のリリーフ弁アセンブリ109を備える流体制御弁にも適用可能である。
【0080】
明細書に開示する目的を達成可能な流体制御弁5は、第1経路と第2経路を前述の各実施形態に記載する位置に限定するものではない。前述の各実施形態は、磁気経路に関するプランジャおよびヨークの形状が上流側と下流側とで逆になるように構成されてもよい。
【0081】
前述の各実施形態の流体制御弁は、通電のオン時間とオフ時間とによって形成される1周期の時間に対するオン時間の比率すなわちデューティ比を制御装置8が制御して電磁コイルに通電を行うデューティコントロールバルブとして構成することができる。このような流体制御弁に対する通電制御によれば、第2流路11を流通する冷却水の流量を自在に調節することが可能である。
【0082】
明細書に開示する目的を達成可能な流体制御弁は、エンジン2の冷却水が循環する冷却水回路1において冷却水の流量等を制御可能な電磁弁に限定するものではない。この流体制御弁は、例えば、モータ、インバータ、半導体装置等を冷却可能な作動流体の流量を制御する電磁弁、冷房または暖房に用いられる作動流体の流量を制御する電磁弁、オートマティックオイル等の作動油の流れ制御する電磁弁に用いることができる。